説明

化学センサーの抗酸化剤保護

抗酸化剤保護を有する検体センサーが開示される。抗酸化剤および/または捕捉剤を、センサー部分を含有するポリマーマトリックス中へ組み合わせることにより、センサー部分が、活性酸素種から保護される。検体センサーの作製方法、および水和され、高分子化された検体センサー系における検出成分の酸化劣化を阻止する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、2010年2月8日出願の米国特許仮出願第61/302,470号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、抗酸化剤保護を有する平衡蛍光指示薬系(equilibrium fluorescence indicator systems)を含む、検体センサーに関する。
【背景技術】
【0003】
体液中の検体化合物(例:グルコース)の濃度測定には、蛍光技術が研究者らによって用いられてきた。例えば、Russellは、グルコースと結合してグルコース濃度に依存するシグナルを発生させるボロン酸官能化色素の使用について開示した(特許文献1)。James et al.は、同じ原理を用いたが、蛍光色素、アミン消光官能基、およびボロン酸を単一の複合体部分に組み合わせており、それからの蛍光発光は、グルコース結合の度合いと共に変化する(特許文献2)。蛍光色素、およびボロン酸が付加された単一のビオローゲン部分を有する消光剤を含むグルコースセンサーが合成され、研究されてきた(例:特許文献3、特許文献4、および特許文献5;非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7、および非特許文献8)。
【0004】
8‐ヒドロキシピレン‐1,3,6‐トリスルホン酸(HPTS)およびその誘導体を含む蛍光色素は、公知であり、検体検出に用いられてきた。例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、および特許文献17;特許文献18;ならびに特許文献19、および特許文献20を参照されたい。
【0005】
カタラーゼ酵素は、過酸化水素(H)の酸素(O)および水(HO)への変換を触媒する(非特許文献9;非特許文献10)。カタラーゼ酵素は、過酸化水素除去のために、バイオセンサーのヒドロゲル中にて用いられてきた(例:特許文献21および特許文献22)。特許文献21において、カタラーゼ酵素は、カタラーゼを含まないヒドロゲルと比較して、膨潤応答時間が非常に短い改善されたヒドロゲルを提供することが示された。そのようなバイオセンサーには、固定された検体感受性酵素が用いられており、これは、固定された検体感受性酵素が過酸化水素による分解から保護されることによって、延長された有効寿命を有するものであった。特許文献22では、カタラーゼをグルコースオキシダーゼと共に共固定して含有するヒドロゲルが、固定された検体感受性酵素を過酸化水素による分解から保護することによって延長された有効寿命を有していた。カタラーゼは、コンタクトレンズ溶液から(特許文献23)、および消毒溶液から(特許文献24)、Hを捕捉するために用いられており、この場合は、固体支持体上に固定されていた。合成触媒性抗酸化剤分子は、バイオセンサー中の高分子指示薬への酸化損傷を低減または防止することが報告されている(特許文献25)。
【0006】
貴金属および金属酸化物を用いてHを分解することは、何年も前から公知である(非特許文献11;特許文献26;および非特許文献12)。しかし、金属およびその酸化物を用いて、蛍光に基づくセンサーを酸化劣化から保護することができることを示した者も提案した者もいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,512,246号
【特許文献2】米国特許第5,503,770号
【特許文献3】米国特許第6,627,177号
【特許文献4】米国特許第6,653,141号
【特許文献5】米国特許第7,470,420号
【特許文献6】米国特許第6,653,141号
【特許文献7】米国特許第6,627,177号
【特許文献8】米国特許第5,512,246号
【特許文献9】米国特許第5,137,833号
【特許文献10】米国特許第6,800,451号
【特許文献11】米国特許第6,794,195号
【特許文献12】米国特許第6,804,544号
【特許文献13】米国特許第6,002,954号
【特許文献14】米国特許第6,319,540号
【特許文献15】米国特許第6,766,183号
【特許文献16】米国特許第5,503,770号
【特許文献17】米国特許第5,763,238号
【特許文献18】国際出願第PCT/US2003/030167号
【特許文献19】同時係属米国特許出願第10/456,895号
【特許文献20】同時係属米国特許出願第11/296,898号
【特許文献21】国際出願第01/75089号
【特許文献22】米国特許第6,858,403号
【特許文献23】米国特許第5,521,091号
【特許文献24】米国特許第4,829,001号
【特許文献25】米国特許出願第2007/0014726号
【特許文献26】米国特許第3,423,330号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Suri, J. et al. 2003 Angew Chem Int Ed Engl 42:5857-5859
【非特許文献2】Gamsey, S. et al. 2006 Langmuir 22:9067-9074
【非特許文献3】Thoniyot, P. et al. 2006 Diabetes Technol Ther 8:279-287
【非特許文献4】Cordes, D.B. et al. 2005 Langmuir 21:6540-6547
【非特許文献5】Cordes, D.B. et al. 2005 Org Biomol Chem 3: 1708-1713
【非特許文献6】Cappuccio, E.E. et al. 2004 J Fluoresc 14:521-533
【非特許文献7】Gamsey, S. et al. 2007 J Am Chem Soc 129:1278-1286
【非特許文献8】Cordes, D.B. et al. 2006 Angew Chem Int Ed Engl 45:3829-3832
【非特許文献9】Zamocky, M. et al. 2008 Antioxid Redox Signal 10:1527-1548
【非特許文献10】Chelikani, P, et al. 2004 Cell Mol Life Sci 61: 192-208
【非特許文献11】Maggs & Sutton 1958 Trans Faraday Soc 54:1861-1870
【非特許文献12】McKee, D.W. 1969 J Catalysis 14:355-364
【発明の概要】
【0009】
平衡蛍光指示薬系、および少なくとも1つの抗酸化剤を含む検体センサーが開示され、ここで、平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤の各々は、ポリマーマトリックス中に固定されている。
【0010】
検体センサーに対する1つの変形では、平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤は、共通のポリマーマトリックス内に固定される。別の変形では、平衡蛍光指示薬系は、第一のポリマーマトリックス内に固定され、少なくとも1つの抗酸化剤は、第一のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する第二のポリマーマトリックス内
に固定される。さらに別の変形では、検体センサーは、少なくとも1つの抗酸化剤を含有する第二のポリマーマトリックスをさらに含んでよく、ここで、第二のポリマーマトリックスは、平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤が固定化される共通のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する。
【0011】
少なくとも1つの抗酸化剤は、触媒性抗酸化剤分子、捕捉剤分子、および合成抗酸化剤分子から成る群より選択してよい。触媒性抗酸化剤は、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)、セレングルタチオンペルオキシダーゼ、およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)から成る群より選択してよい。別の選択肢として、触媒性抗酸化剤は、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)、セレングルタチオンペルオキシダーゼ、およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)のバイオコンジュゲート(bioconjugates)から成る群より選択してよい。合成抗酸化剤分子は、テンポールであってよい。捕捉剤抗酸化剤分子は、ビタミンA、レチノール、カロテノイド、リモノイド、植物ステロール、フラボノイド、アントシアニジン、カテキン、イソフラボン、プロアントシアニジンオリゴマー、イソチオシアネート、ジチオールチオン、スルホラファン、イソプレノイド、トコトリエノール、トコフェロール、ビタミンE、リポ酸、ユビキノン、アスコルベート、ビタミンC、2,3‐ジヒドロ‐1‐ベンゾフラン‐5‐オール、クロマノン、水溶性フラーレン抗酸化剤、C60、C70、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびTrolox(商標)などのフェノール系抗酸化剤化合物;コーヒー酸、ヒドロコーヒー酸(hydrocaffeic acid)、桂皮酸、安息香酸、およびバニリン酸などのポリフェノール系抗酸化剤化合物;ならびにピルベートから成る群より選択してよい。1つの好ましい実施形態では、合成抗酸化剤分子は、ポルフィリン系の合成抗酸化剤分子である。別の好ましい実施形態では、合成抗酸化剤は、白金、パラジウム、銀、もしくは金、およびこれらの合金などの貴金属、または二酸化マンガン、酸化ルテニウム、硫化ルテニウム、および酸化銀から成る群より選択される金属酸化物もしくは硫化物である。好ましくは、合成抗酸化剤は、酸化銀の多孔性コーティング、もしくはナノ粒子を含むコロイド状粒子、および白金、銀、もしくは金のナノ粒子の形態である。
【0012】
検体センサーに対する別の変形では、少なくとも1つの抗酸化剤成分が、2つ以上の抗酸化剤のカクテルを含んでよい。2つ以上の抗酸化剤は、カタラーゼおよび抗酸化剤フェノール系化合物であってよい。抗酸化剤フェノール系化合物は、Trolox(商標)またはTrolox(商標)誘導体であってよい。2つ以上の抗酸化剤はまた、カタラーゼ酵素およびビタミンEであってもよい。
【0013】
第一および第二のポリマーマトリックスを含む検体センサーの実施形態では、これらが、半透膜で物理的に分離されていてよい。
【0014】
別の実施形態では、不溶性ポリマーマトリックス内に固定された平衡蛍光指示薬系、および前記不溶性ポリマーマトリックスを取り囲む多孔性金属コーティングを含む検体センサーが開示される。
【0015】
別の実施形態では、検体センサーは、平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤を含み、ここで、平衡蛍光指示薬系は、ポリマーマトリックス内に固定され、少なくとも1つの抗酸化剤は、このポリマーマトリックスを取り囲む半透膜へ共有結合している。
【0016】
別の実施形態では、近位および遠位末端を有する光ファイバー;励起光シグナルに応答して発光シグナルを発生させる能力を有する化学指示薬系であって、ここで、発光シグナルの強度は、検体濃度と関連し、および化学指示薬系は、ポリマーマトリックスによって光ファイバー中のギャップ内に固定されている、化学指示薬系;ギャップ上に配置された
選択透過膜;ならびに、1つ以上の抗酸化剤を含有する外部コーティング、を含む検体センサーが開示され、ここで、センサーは、血管内に配置されるためのサイズに合わせられることが好ましい。
【0017】
好ましい変形では、検体は、グルコースであり、化学指示薬系は、グルコース結合部分に作動可能にカップリングされたフルオロフォアを含み、ここで、グルコースの結合が、フルオロフォアに見かけ上の光学的変化を引き起こす。
【0018】
平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤を共通のポリマーマトリックス内に固定することを含む、検体センサーを作製する方法が開示される。
【0019】
平衡蛍光指示薬系を第一のポリマーマトリックス内に固定すること;および少なくとも1つの抗酸化剤を第二のポリマーマトリックス内に固定することを含む、検体センサーを作製する別の方法が開示され、ここで、第二のポリマーマトリックスは、第一のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する。
【0020】
平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤を第一のポリマーマトリックス内に固定すること;ならびに、少なくとも1つの抗酸化剤を第二の不溶性マトリックス内に固定することを含む、検体センサーを作製する別の方法が開示され、ここで、第二のポリマーマトリックスは、第一のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する。
【0021】
別の変形に従う検体センサーが開示され、ここで、平衡蛍光指示薬系は、有機蛍光色素、ボロン酸官能化ビオローゲン消光剤、およびヒドロゲルマトリックスを含む。
【0022】
検体センサーに対する1つの変形では、平衡蛍光指示薬系は、過酸化水素によって引き起こされる分解に対して保護されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】様々なセンサー構成の概略図。(A)平衡蛍光指示薬系が、同じポリマーマトリックス内で1つ以上の抗酸化剤と組み合わされている。(B)平衡蛍光指示薬系は、内部ポリマーマトリックス中に位置し、内部ポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングが、少なくとも1つの抗酸化剤を含む。(C)内部ポリマーマトリックスが、平衡蛍光指示薬系および1つ以上の抗酸化剤を含み、内部ポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングも、少なくとも1つの抗酸化剤を含む。
【図2】100μM H添加時のカタラーゼ保護センサーの比較。
【図3】ペルオキシルラジカル添加後の、保護されたヒドロゲルを有する色素のみのセンサー。
【発明を実施するための形態】
【0024】
検出成分の酸化分解を阻止する保護抗酸化ヒドロゲルについて本明細書で述べる。この抗酸化ヒドロゲルは、検体結合部分と組み合わせて用いて、検体レベルのリアルタイム測定を行うことができ、これは、少なくとも8時間、好ましくは24時間を超えて、安定して作動する。
【0025】
定義
移行句「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的または無制限であり、追加的な列挙されていない要素または方法工程を除外しない。
【0026】
移行句「成る(consisting of)」は、請求項で指定されないいずれの要素、工程、ま
たは成分をも除外するが、通常はそれに付随する不純物などの本発明に関連しない追加の成分または工程は除外しない。
【0027】
移行句「本質的に成る(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、指定される物質または工程、および請求される発明の基本的で新規な1もしくは複数の特徴に実質的に影響を与えない物質または工程に限定する。
【0028】
本明細書で用いる場合、「活性酸素種」または「ROS」は、呼吸の際の通常の電子輸送系の過程で生成される、または疾患において、もしくは特定の障害に対するある治療剤による治療の過程にて生成される、高反応性および毒性の酸素化合物を意味する。ROSとしては、限定されないが、スーパーオキシドアニオン(O)、過酸化水素(H)、一重項酸素、過酸化脂質、およびペルオキシナイトライトが挙げられる。
【0029】
本明細書で用いる場合、「活性窒素種」または「RNS」は、窒素含有のイオン、フリーラジカル、さらには非ラジカル種を意味する。活性窒素種のいくつかの限定されない例としては、一酸化窒素(NO・)、二酸化窒素(NO・)、ナイトライト(NO)、およびペルオキシナイトライト(ONOO)が挙げられる。
【0030】
本明細書で用いる場合、「フリーラジカル」とは、奇(不対)電子を有するいずれの原子、またはいずれの分子もしくは化合物をも意味する。この定義により、スーパーオキシドアニオンは、負に荷電したフリーラジカルとも見なされる。スーパーオキシドアニオン以外の最も一般的で潜在的に有害であるフリーラジカルの種類の1つは、ヒドロキシルラジカルである。通常、スーパーオキシドアニオンまたは一重項酸素などのROSの生成は、1つ以上のその他の有害なフリーラジカルも誘導する。従って、本明細書で用いる場合、「ROSおよびフリーラジカル」または「ROSおよびその他のフリーラジカル」などのフレーズは、目的の細胞および組織の特定の代謝状態または条件で生成され得るすべての反応性、酸化性分子種または化合物を包含することを意味する。
【0031】
「酸素ラジカル捕捉剤」または「ラザロイド(lazaroids)」は、ROSおよびフリーラジカルを捕捉し、無害化する能力を有する化合物のクラスである。ビタミンA、C、E、ならびにβ‐カロテンおよびレチノイドなどの関連する抗酸化剤化合物は、この大きな化合物クラスのメンバーであり、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)およびカタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)、およびセレングルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素も同様である。健康な個人の場合、十分なレベルの抗酸化酵素およびその他のラザロイドが細胞内および細胞外の両方に存在して、十分な量のROSおよびフリーラジカルを効率的に捕捉し、細胞および組織に対する著しい酸化損傷が回避される。
【0032】
本明細書で用いる場合、「抗酸化剤」は、酸化性基質分子を含有する混合物または構造中に存在する場合、その基質分子の酸化を著しく遅延させるか、または防止する物質である。抗酸化剤は、活性フリーラジカルまたはその他の活性酸素種(例:O、H、HO・、HOCl、フェリル、ペルオキシル、ペルオキシニトリル、およびアルコキシル)を捕捉することによって、それらの形成を防止することによって、またはフリーラジカルもしくはその他の活性酸素種を活性の低い種に触媒的に変換することによって作用することができる。本発明の抗酸化剤化合物は、検出可能であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、および/またはペルオキシダーゼ(POD)活性を有していてよい。本発明の化合物は、細胞培養物またはアッセイ反応へ添加された場合に、その化合物による処理を行わない並行アッセイ反応と比較して、その複合体が、スーパーオキシドなどのフリーラジカル、または過酸化水素などの非ラジカル活性酸素種の量の検出可能な減少をもたらす場合、抗酸化剤活性を有する。フリーラジカル種の相対
量は、二次指示薬(例:酸化基質、過酸化脂質、チトクロムC)の検出によって測定することができる。
【0033】
検体センサーの劣化
検体センサーは、生体内で生成される酸化剤の作用によって劣化する。このような剤の寿命は、生体外では限定的である。そのような分解は、本質的に無限の酸素供給がどうような条件下においても存在することから、酸素単独に起因するものではない。光も1つの因子ではあるが、酸化剤またはフリーラジカルの攻撃は、暗所であってもセンサーを損傷し得ることから、必須ではない。
【0034】
検体センサーはまた、自己誘発性の分解も起こし得る。例えば、ビオローゲンは、ある条件下において、酸素との反応によってスーパーオキシドおよび過酸化水素を生成し得る酸化剤である。
【0035】
活性酸素種
活性酸素種(ROS)は、ヒト体内に広く存在しており、傷害、外傷、またはその他の生理学的プロセスの結果として発生し得る(Halliwell B and, Gutteridge JMC, Free Radicals in Biology and Medicine 4th ed., Oxford University Press, 2007)。このような種は、本来酸化性であると考えられ、従って、臨床医が「酸化ストレス」と称するものに寄与する。ROSには2つの種類が存在し、すなわち、ラジカルおよび非ラジカルである。過酸化水素などの血漿中のROSは、検出デバイスの透過膜を透過して検出部分と相互作用を起こすことができる。そのようなROSは、特定の特性を有する必要がある。例えば、それらは、血漿中およびヒドロゲル媒体の両方に可溶性である必要がある。それらは、細胞から出て血漿中に入り、続いて検出部分を含有するヒドロゲルの照光領域へと入る輸送を可能とするのに十分に長い寿命を有する必要がある。それらは、青色光により、それ単独で、または色素/消光剤および/もしくは酸素との組み合わせで、活性化され得る。その影響は、センサーの調整が劣化することである。可能性の高い原因としては、検出化学の1もしくは複数のある要素が、直接未知の剤との反応によって、または活性中間体(例:ラジカル)の攻撃によって損傷することである。
【0036】
数多くのROS、活性窒素種(RNS)、および種々のその他の活性種が、ヒトの血漿中に存在する。これらの多くは、フリーラジカルである。フリーラジカルとしては、スーパーオキシド、ヒドロキシル、ヒドロペルオキシル、カーボネート、二酸化炭素、塩素、ペルオキシル、アルコキシル、一酸化窒素、二酸化窒素、ナイトレート、および一重項酸素が挙げられる。加えて、通常はスルフヒドリルおよびジスルフィド中間体から形成される硫黄ラジカルが存在する。これらのラジカルのほとんどは、生体内において非常に短い寿命を有する。留意すべき例外は、フェノール系化合物の酸化によって生成したラジカル、すなわち、抗酸化剤と他のROSとの反応によって形成されたラジカルである。これらは、恐らくはそれ自体がセンサーを損傷することはないが、損傷へと繋がる一連の反応に関与する可能性がある共鳴安定化ラジカルである。
【0037】
センサーの劣化がラジカルによる攻撃に起因する状況下では、ラジカルの生成は、局所的に、すなわちセンサーの内部で発生する可能性が高い。典型的なラジカルは、グルコースよりも僅かに速く拡散する可能性があるが、桁が違うほどではない。従って、センサーの照光領域に到達するためには、ラジカルは数分間の寿命を持つ必要がある。ヒドロキシルのような高活性種の場合、長時間安定である可能性は低い。他方、長時間安定であるラジカルは、それほど活性ではない。いずれの場合でも、センサーの劣化に関与するラジカルは、血漿中に存在するすべての成分との平衡状態にて非常に高い濃度で存在し、ヒドロゲル充填膜の細孔を透過するのに十分な寿命を有する必要がある。反応には、酸素、光励起、および金属イオン触媒も関与し得る。
【0038】
様々な非ラジカルROSが生体内に存在することが知られている。例えば、非ラジカルROSとしては、過酸化水素、ペルオキシナイトライト、ペルオキシ亜硝酸、ニトロソペルオキシカーボネート、ヒポクロリット/次亜塩素酸、オゾン、一重項酸素、有機ペルオキシド、および二酸化炭素付加物が挙げられる。
【0039】
過酸化水素は、センサーの劣化に関与していることが考えられるROSである。過酸化水素は、通常は血漿中に存在し、細胞外Hは、0.02μMから2μM、もしくはそれより高い範囲と報告されている。Hのレベルは、傷害によって高められる。Hは、細胞壁を容易に透過し、従って、細胞内および細胞外の濃度は迅速に平衡に達することができる。過酸化水素は、酸化剤であるだけでなく、レドックスシグナル伝達にも関与する(2009 Jacob, C. and Winyard, P.G. (eds) in Redox Signaling and Regulation in Biology and Medicine, John Wiley and Sons, Inc.-VCH)。正常な条件下では、それは細胞によって排泄され、ストレス下ではその速度は加速される。H自体は、それほど活性ではなく、従って、生物媒体中での寿命は長い。しかしながら、Hは、多くの分子を直接酸化することができるか、または生物環境内のほとんどあらゆるものの攻撃が可能であるより活性の高いヒドロキシルラジカルを形成することができる。ヒドロキシルラジカルは、470nm発光ダイオード(LED)からの光でHを照射することによって生成することができる。最後に、過酸化水素は、センサーを劣化させることが示されている(図2参照)。
【0040】
ペルオキシナイトライトは、生体内においてスーパーオキシドと一酸化窒素との反応によって形成される。ペルオキシナイトライトの化学に関する2つの最新のレビューが存在する(Szabo, C. et al. 2007 "Peroxynitrite: biochemistry, pathophysiology, and development of therapeutics" Nature Reviews (Drug Discovery) 6:662-680およびGoldstein et al. 2005 "Chemistry of Peroxynitrites as Compared to Peroxynitrates" Chem Rev 105:2457-2470)。ペルオキシナイトライトは、細胞内で継続的に生成されているが、その生体内での寿命が非常に短いため(10ms)、定常状態の濃度は非常に低く維持されている(ナノモルの範囲)。ペルオキシナイトライトは、高い安定性および高い活性の両方を特徴とする。安定性はpHに依存する。アニオンは安定であるが、遊離酸は安定ではない。生理学的pHでは、約20%が遊離酸であり、これは迅速に分解される。ペルオキシ亜硝酸は、脂質に可溶であり、そこで、ヒドロキシルおよび二酸化窒素ラジカルへと分解し、これらはポリ不飽和酸を攻撃する。
【0041】
ペルオキシナイトライトは、細胞壁を透過し、血漿中に見出すことができる。しかし、水性媒体中では、それは、二酸化炭素と迅速に反応して、非常に寿命の短い高活性酸化性ラジカルであるカーボネートラジカルイオンを形成する(Augusto et al. 2002 Nitrogen
dioxide and carbonate radical ion: Two emerging radicals in biology" Free Radical Biol Med 32:841-859)。ペルオキシナイトライトに帰する生物系における損傷の多くは、恐らくは、カーボネートラジカルに起因するものである。ペルオキシナイトライトは、検出成分と直接接触する可能性は低いであろう。別の選択肢として、その作用機構は、センサー外部でのラジカル誘導体の形成を介するものであり得る。
【0042】
ヒポクロリット/次亜塩素酸は、その検出成分に対する活性が高いものであったとしても、検体センサーの劣化に関与する候補としての可能性は低い。これは、Hと塩素イオンとの反応によって生成される。Hおよび塩素イオンはいずれもセンサー内部へ拡散し得るが、この反応が起こるには、酵素ミエロペルオキシダーゼが必要である。しかし、この酵素もセンサー内に存在する可能性は非常に低い。ヒポクロリットがセンサーの外部で生成される場合、それがセンサー内部へ拡散するのに十分長く生存することができる確率は低い。
【0043】
オゾンは、検出成分を攻撃する可能性のある強力な水溶性酸化剤である。しかし、オゾンは、通常は外来性であることが想定され、従って、生体内または生体外に存在する確率は同等である。
【0044】
一重項酸素も、強力な水溶性酸化剤である。これは、酸素の光感作性の変換によって生体内で生成され得る。センサーには酸素および光の両方が存在する。その結果、一重項酸素の形成は、感光剤も存在する場合に可能である。蛍光指示薬系は、感光剤としては作用せず、それは、もしそうであった場合、血液ループ中でも分解が発生するはずであるが、それは観察されていないからである。感光剤は、生体内にて血漿中にしか存在しない小さく比較的不安定な分子である必要がある。多くの生体分子が、一重項酸素形成の感光剤として知られている。
【0045】
有機ペルオキシドは、遷移金属イオンまたは光によって活性化されてラジカルを生成することができ、次にそれが検出成分を攻撃する可能性がある。これらのペルオキシドは、恐らくは血漿中に存在するが、脂質二重層および分散リポタンパク質と会合しており、センサーへ進入する可能性は低い。
【0046】
ペルオキシモノカーボネートおよびカーボネートラジカルイオンを含む二酸化炭素付加物は、興味深い候補である。ペルオキシモノカーボネートは、過酸化水素および重炭酸イオンの反応によって形成され、これらはいずれもセンサー中に存在する。ペルオキシカーボネートは、Hよりも活性が高く、検出成分を直接攻撃する可能性がある。それはまた、高活性酸化性ラジカルであるカーボネートラジカルイオンも生成し得る。これらの分子の生体内での挙動について分かっていることは、他のROSと比較して非常に少ない。
【0047】
検体センサーの劣化における鉄
遷移金属イオン触媒も、センサーの劣化に関与し得る。Hの化学の大部分が触媒、特に第一鉄イオンによって影響される。Fe2+イオンおよびHの両方がセンサー内へ進入する場合、フェントン反応が発生して、ヒドロキシルラジカルが生成され得る。
【0048】
生物系おける鉄イオンの有害な潜在力は、キレート化によって制御されており、すなわち、生体内の鉄は、その触媒活性を調節する錯体中に拘束されている。血漿中の鉄は、トランスフェリンに強く結合されることによって非触媒性とされている。トランスフェリンは、約80KDaの分子量を有し、これは、センサー内へ進入するには高すぎる。従って、この発生源からの鉄はセンターに問題を起こすことはない。遊離の鉄は、通常、非トランスフェリン結合鉄(NTBI)として定義される。NTBIを測定するためのいくつかの技術が報告されている(Jacobs et al. 2005 "Results of an international round robin for the quantification of serum non-transferrin-bound iron" Anal Biochem 341:241-250)。
【0049】
健康なヒトには、NTBIは実質的に存在しないが、ストレス下にある患者の場合はそうではない。例えば、NTBIは、輸血、病院の集中治療室での頻繁な治療の結果として形成される(Osment and Turly 2009 "Iron overload following red blood cell transfusion and its impact on disease severity" Biochim Biophys Acta 1790:694-701)。それはまた、糖尿病を含む種々の疾患に伴うものでもあり(Rajpathak et al. 2009 "The
role of iron in type 2 diabetes in humans" Biochim Biophys Acta 1790:671-681);化学療法を受けている癌患者にも見られる(Kolb et al. 2009 "Non-transferrin bound iron measurement is influenced by chelator concentration" Anal Biochem 385:13-
19)。一般的に、NTBIと酸化ストレスとの間には関連性があると考えられる。加えて、NTBIが、過酸化水素の場合に示されたように、創傷部位で生成される可能性がある。
【0050】
非常に低いレベルであっても、NTBIが血漿中に存在することは、ある程度のセンサー内への進入を引き起こす可能性がある。完全に遊離であるFeイオンは、血漿中に存在しないと考えられ、それらは、血漿中に存在する他の種により、なんらかの形で錯体形成している必要がある。特に、遊離第一鉄イオンは、生理学的pHでは、水酸化物として析出してしまう。それは、トランスフェリン錯体として血中を輸送される。血漿中の考え得る非タンパク質錯体形成種としては、クエン酸塩および種々のリン酸塩が挙げられる。クエン酸錯体は、膜を透過することができるであろう。
【0051】
関連する課題は、アスコルビン酸のNTBIへの影響、およびそのヒドロキシルラジカル生成における役割である(Daurte and Jones 2007 "Vitamin C modulation of H2O2-induced damage and iron homeostasis in human cell" Free Radical Biology Medicine 43:1165-1175)。血漿中には著しい量のアスコルビン酸が見られる。従って、センサー内にも存在する可能性がある。アスコルビン酸は、Fe3+をFe2+へ還元することができる。従って、Hも存在し、クエン酸第一鉄錯体がセンサー内へ入り込む場合、このことは、ヒドロキシルラジカルを形成させる結果となり得る。
【0052】
抗酸化剤
抗酸化剤および/または捕捉剤を、検出部分を含有するポリマーマトリックス中へ組み合わせることにより、検出部分がROSから保護される。種々の天然、触媒性、または捕捉剤抗酸化剤が本技術分野にて公知である。加えて、活性酸素化学種の様々な合成(模倣)による触媒性捕捉剤が公知である。
【0053】
1.天然
生物学的抗酸化剤としては、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)などの詳細に明らかにされている天然の触媒性金属酵素が挙げられる。
【0054】
カタラーゼタンパク質には3つの大きなファミリーが存在する。これら3つのグループは、同じ反応(2H→2HO+O)を触媒するものの、全体および活性部位の構造、ならびに反応機構に大きな相違を有する。これらのタンパク質ファミリーのうち2つはヘム酵素であり、典型的なカタラーゼおよびカタラーゼ‐ペルオキシダーゼである。典型的なカタラーゼは、過酸化水素の水および酸素への分解を触媒し、真正細菌、古細菌、原生生物、真菌類、植物界、および動物界で最も多く見られるグループを成し、一方、カタラーゼ‐ペルオキシダーゼは、植物および動物には見られず、カタラーゼおよびペルオキシダーゼの両方の活性を示す。第三のグループは、二マンガン活性部位を有する少数の細菌タンパク質ファミリーであり、マンガンカタラーゼと称される。
【0055】
スーパーオキシドジスムターゼは、スーパーオキシドアニオンの不均化を効率的に触媒する機能を有する酵素の遍在するファミリーである。スーパーオキシドのSOD触媒不均化は、以下の半反応式で書き記すことができ:M(n+1)+−SOD+O→Mn+−SOD+OおよびMn−SOD+O+2H→M(n+1)+−SOD+H、ここで、M=Cu(n=1);Mn(n=2);Fe(n=2);Ni(n=2)である。独特の非常に区分化された3つの哺乳類スーパーオキシドジスムターゼが、生化学的および分子的に特性決定されている。SOD1、またはCuZn−SODは、最初に特性決定された酵素であり、細胞内の細胞質スペースにほぼ限定して見られる銅および亜鉛含有ホモ二量体である。SOD2、またはMn−SODは、四量体として存在し、この
マンガン含有酵素をミトコンドリアスペースへ限定して標的化するリーダーペプチドを含有してまず合成される。SOD3、またはEC−SODは、銅および亜鉛含有四量体として存在し、この酵素を細胞外スペースへ限定して指向するシグナルペプチドを含有して合成される。
【0056】
グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は、還元グルタチオン(GSH)を電子供与体として用いて、Hまたは有機ヒドロペルオキシドの水および対応するアルコールへの還元を触媒する(H+2GSH→GS−SG+2HO)、複数のアイソザイムのファミリーに対する一般名である。後生動物では、いくつかのGPxは、セレン依存性グルタチオンペルオキシダーゼ活性を有する。哺乳類組織には、6つのセレン依存性GPxアイソザイムが存在する。加えて、リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(PHGPx)が哺乳類で報告されており、これは、セレノシステインではなくシステインを保存触媒モチーフに組み込んでいる。グルタチオンペルオキシダーゼは、植物を含む多くの生物中で特定されている。
【0057】
天然の捕捉剤分子は、フリーラジカル、特にペルオキシルラジカルと、および一重項酸素と反応し、そのプロセスで消費されていく。適切なフリーラジカル捕捉剤としては、ビタミンA(レチノールまたはカロテノイドの生物活性を有する数多くの分子を含む総称である)、リモノイド、植物ステロール、フラボノイド、アントシアニジン、カテキン、イソフラボン、プロアントシアニジンオリゴマー、イソチオシアネート、ジチオールチオン、スルホラファン、イソプレノイド、トコトリエノール、トコフェロール(例:ビタミンE)、リポ酸、ユビキノン、アスコルベート(例:ビタミンC)、2,3‐ジヒドロ‐1‐ベンゾフラン‐5‐オール、クロマノン、C60およびC70を含む水溶性フラーレン、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ビタミンEの水溶性誘導体であるTrolox(商標)などのフェノール系化合物;コーヒー酸、ヒドロコーヒー酸、バニリン酸、桂皮酸、および安息香酸などのポリフェノール系抗酸化剤化合物;ならびにピルベートが挙げられる。
【0058】
2.合成模倣体
活性酸素種に対する合成触媒性捕捉剤を、本発明の種々の実施形態で用いることができる。そのような化合物は、スーパーオキシドジスムターゼおよび/またはカタラーゼおよび/またはペルオキシダーゼ模倣体として効果的であり、これらは、抗酸化および/またはフリーラジカル捕捉特性を有し、生体内にて抗酸化剤として機能する。例えば、合成メタロポルフィリン系抗酸化剤は本技術分野で公知であり、例えば、国際公開第02/04454号に開示されている。このようなポルフィリン系抗酸化剤は、活性酸素種を捕捉する能力を有する合成遷移金属錯体を提供する。
【0059】
テンポール(4‐ヒドロキシ‐2,2,6,6‐テトラメチル‐1‐ピペリジン‐1‐オキシル)は、低分子量の親水性で金属を含まない無毒性窒素酸化物である。テンポールは、ペルオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼ模倣体として作用する。これは、脂質の過酸化およびフェントン反応によるヒドロキシルラジカルの形成を阻止する。
【0060】
3.鉄のキレート化
フェントン反応の触媒には、極僅かな量の第一鉄イオンがあればよい。従って、センサーを安定化させる別の手法は、抗酸化剤の使用に加えて、鉄結合要素を含有させることである。効果的なものとするためには、鉄結合要素は、表面ではなく膜の内部に位置する必要のある可能性が高い。1つの解決策は、鉄を非触媒性とする公知のキレート化剤に重合性基を結合し、それを共重合してヒドロゲルとするものである。その実用性は、キレート化モノマーの合成の難しさに依存する。この手法の1つの問題点は、センサー内のFeイオンが、血漿中の非トランスフェリン結合鉄によって継続的に補充されるであろうという
ことである。抗酸化剤、ビタミンEおよびCと同様に、キレート化剤も時間と共に消費されることになる。従って、その効果は、鉄で飽和されるのに要する時間の長さに依存する。
【0061】
4.金属および金属酸化物
金属および金属酸化物も、過酸化水素の水および酸素への変換のための触媒として用いることができる。金属および金属酸化物触媒の限定されない例としては、白金、パラジウム、銀、もしくは金、およびこれらの合金などの貴金属、または二酸化マンガン、酸化ルテニウム、硫化ルテニウム、および酸化銀から成る群より選択される金属酸化物もしくは硫化物が挙げられる。好ましくは、合成抗酸化剤は、酸化銀の多孔性コーティングもしくはナノ粒子を含むコロイド状粒子、および白金、銀、もしくは金のナノ粒子の形態である。銀は、ヒドロゲルおよび膜で用いられている(Thomas, V. et al. 2007 J Colloid and
Interface Science 315:389-395;Mohan, Y.M. et al. 2006 Macromol Rapid Commun 27:1346-1354)。酸化銀触媒は、希過酸化水素の分解用として開示された(米国特許第3,423,330号)。銀コーティングしたナイロン繊維が、抗菌剤として用いられており(MacKeen, P. et al. 1987 Antimicrobial Agents and Chemotherapy 31:93-99)、銀ナノ粒子でコーティングしたプラスチックカテーテルが、抗菌活性を有することが示された(Roe, D. et al. 2008 J Antimicrobial Chemotherapy 61:869-876)。酸化ルテニウムおよび二酸化マンガンは、透析膜中で過酸化水素を効果的に捕捉することが見出された(米国特許第3.996,141号)。
【0062】
抗酸化剤保護の構成
ある実施形態では、平衡蛍光指示薬系は、同じポリマーマトリックス内にて1つ以上の抗酸化剤と一緒に組み合わせられる。
【0063】
ある実施形態では、平衡蛍光指示薬系は、内部ポリマーマトリックス中に位置し、ここで、内部ポリマーマトリックスの周囲の1つ以上の外部コーティングが、少なくとも1つの抗酸化剤を含む。従って、活性酸素種の内部ポリマーマトリックス領域への進入がブロックされる。
【0064】
ある実施形態では、内部ポリマーマトリックスは、平衡蛍光指示薬系および1つ以上の抗酸化剤を含み、内部ポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングも、少なくとも1つの抗酸化剤を含む。
【0065】
ある実施形態では、半透膜が、ポリマーマトリックスと検体含有サンプルもしくは組織との間に配置され、ここで、ポリマーマトリックスは、平衡蛍光指示薬系および1つ以上の抗酸化剤を含む。
【0066】
ある実施形態では、半透膜が、平衡蛍光指示薬系を含む内部ポリマーマトリックスと内部ポリマーマトリックスの周囲の少なくとも1つの抗酸化剤を含む外部コーティングとの間に配置される。
【0067】
ある実施形態では、半透膜が、抗酸化剤で機能化されるか、または抗酸化剤と共有結合され、平衡指示薬系を含む内部ポリマーマトリックスと検体含有サンプルもしくは組織との間に配置される。半透膜の限定されない例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、および酢酸セルロースから成る多孔性および非多孔性膜である。
【0068】
ある実施形態では、半透膜が、少なくとも1つの抗酸化剤を含む外部ポリマーマトリックスコーティングを取り囲み、ここで、外部ポリマーマトリックスは、平衡蛍光指示薬系
を含む内部ポリマーマトリックスを囲んでおり、ここで、半透膜は、外部ポリマーマトリックスコーティングを検体含有サンプルもしくは組織から分離させている。
【0069】
ある実施形態では、平衡蛍光指示薬系は、内部ポリマーマトリックス中に位置し、ここで、内部ポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングは、多孔性の金属または金属酸化物コーティングを含む。多孔性の金属または金属酸化物コーティングは、蒸着、スプレー、スパッタリングコーティング、および析出を例とする種々の技術によって半透膜上へ適用してよい。
【0070】
検体センサー
本明細書で開示される検体センサーは、通常は少なくとも検体結合部分およびフルオロフォアを含む平衡蛍光指示薬系である。特定の波長の光で照射されると、フルオロフォアは、より波長の長い検出可能な光(すなわち、蛍光)を発する。
【0071】
ある実施形態では、平衡蛍光指示薬系は、検体受容体部位を有する消光剤を含む。特定の実施形態では、検体受容体と結合する検体が存在しない場合、消光剤は、励起光によって色素が励起された際にフルオロフォア系が発光するのを防止する。特定の実施形態では、検体受容体と結合する検体が存在する場合、消光剤は、励起光によって色素が励起された際にフルオロフォア系が発光するのを可能とする。
【0072】
特定の実施形態では、フルオロフォア系によって発生される発光は、溶液(例えば血液)のpH(ならびに温度)によって変動し得るものであり、それにより、異なる励起波長(1つはフルオロフォアの酸の形態を励起するものであり、他方は、フルオロフォアの塩基の形態を励起する)が異なる発光シグナルを発生させる。好ましい実施形態では、フルオロフォアの酸形態からの発光シグナルの、フルオロフォアの塩基形態からの発光シグナルに対する比は、血液のpHレベルに関連する。特定の実施形態では、これら2つの励起光が、確実にフルオロフォアの1つの形態のみ(酸形態または塩基形態)を励起するために、干渉フィルターが用いられる。レシオメトリック測定に基づいてpHおよびグルコースの両方を測定するための化学指示薬系、ハードウェア構成、および方法は、米国特許第7,751,863号および同時係属米国特許出願第12/027,158号(第2008/0188725号として公開)に詳細に記載されており、これらは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
指示薬系(本明細書にてフルオロフォア系とも称する)は、消光剤に作動可能にカップリングされたフルオロフォアを含んでよい。特定の実施形態では、フルオロフォア系は、ビオローゲンによる消光に感受性を有するフルオロフォア、グルコース濃度に依存する消光効果を有するビオローゲン消光剤、およびグルコース透過性ポリマーを含むポリマーマトリックスを有し、ここで、前記マトリックスは、生体内で血液と接触する。好ましくは、フルオロフォアは、蛍光有機色素であり、消光剤は、ボロン酸官能化ビオローゲンであり、マトリックスは、ヒドロゲルである。
【0074】
「フルオロフォア」とは、特定の波長の光で照射された場合に波長のより長い光を発する物質を意味し、すなわち、それは蛍光を発する。フルオロフォアとしては、これらに限定されないが、有機色素、有機金属化合物、金属キレート、蛍光共役ポリマー(fluorescent conjugated polymers)、量子ドット、またはナノ粒子、および上記の組み合わせが挙げられる。フルオロフォアは、個別の部分であってよく、またはポリマーに結合された置換基であってもよい。
【0075】
好ましい実施形態において用いてよいフルオロフォアは、約400nm以上の波長の光によって励起することができ、励起および発光の波長が少なくとも10nmで分離可能で
あるようにストークスシフトが十分に大きい。ある実施形態では、励起および発光波長の間の分離は、約30nm以上であってよい。これらのフルオロフォアは、好ましくは、ビオローゲンなどの電子受容体分子による消光に感受性を有し、光退色に対する抵抗性を有する。これらはまた、光酸化、加水分解、および生分解に対して安定であることも好ましい。
【0076】
ある実施形態では、フルオロフォアは、個別の化合物であってよい。
【0077】
ある実施形態では、フルオロフォアは、約10,000ダルトン以上の分子量を有する水溶性もしくは水分散性ポリマーのペンダント基または鎖ユニットであってよく、これによって色素‐ポリマーユニットが形成される。1つの実施形態では、そのような色素‐ポリマーユニットはまた、水不溶性ポリマーマトリックスMと非共有結合によって会合していてもよく、ポリマーマトリックスM内に物理的に固定されており、ここで、Mは、検体溶液に対して透過可能であるか、またはそれと接触している。別の実施形態では、色素‐ポリマーユニット上の色素は、負に荷電していてよく、色素‐ポリマーユニットは、カチオン性水溶性ポリマーとの複合体として固定されていてよく、ここで、前記複合体は、検体溶液に対して透過可能であるか、またはそれと接触している。1つの実施形態では、色素は、ヒドロキシピレントリスルホン酸のポリマー誘導体の1つであってよい。ポリマー色素は、水溶性、水膨潤性、または水分散性であってよい。ある実施形態では、ポリマー色素はまた、架橋されていてもよい。好ましい実施形態では、色素は、負に荷電している。
【0078】
他の実施形態では、色素分子は、水不溶性ポリマーマトリックスMと共有結合によって結合していてよく、ここで、前記Mは、検体溶液に対して透過可能であるか、またはそれと接触している。Mに結合している色素分子は、M‐L‐色素の構造を形成してよい。Lは、検出部分をポリマーまたはマトリックスと共有結合によって連結する、加水分解安定性共有結合リンカーである。Lの例としては、低級アルキレン(例:C‐Cアルキレン)が挙げられ、所望に応じて、スルホンアミド(−SONH−)、アミド −(C=O)N−、エステル −(C=O)−O−、エーテル −O−、スルフィド −S−、スルホン(−SO−)、フェニレン −C−、ウレタン −NH(C=O)−O−、ウレア −NH(C=O)NH−、チオウレア −NH(C=S)−NH−、アミド −(C=O)NH−、アミン −NR−(Rは、1から6個の炭素原子を有するアルキルとして定義される)など、またはこれらの組み合わせ、から選択される1つ以上の二価の連結基が末端部または中間部に存在していてよい。1つの実施形態では、色素は、スルホンアミド官能基を介してポリマーマトリックスと結合している。
【0079】
血管内グルコースモニタリングのためのグルコース検出用化学指示薬系およびグルコースセンサー構成の例としては、米国特許第5,137,033号、同第5,512,246号、同第5,503,770号、同第6,627,177号、同第7,417,164号、同第7,470,420号、および同第7,751,863号、ならびに米国特許公開第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、ならびに同時係属米国特許出願第11/296,898号、同第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、および同第12/424,902号に開示される光学センサーが挙げられ、これらの各々は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
本発明の態様によると、検体結合部分は、検体との結合が可能であること、および検体の結合量に関連する形でフルオロフォアの見かけ濃度を変化させることが可能であること(例:発光シグナル強度の変化として検出)という少なくとも二重の機能を提供する。好
ましい実施形態では、検体結合部分は、消光剤を伴っている。「消光剤」とは、それが存在する状態でのフルオロフォアの発光を減衰させる化合物を意味する。消光剤(Q)は、個別の化合物、または第二の個別の化合物もしくは重合性化合物へ変換可能である反応性中間体から選択されるか、または、Qは、前記反応性中間体もしくは重合性化合物から作製されるポリマー中のペンダント基もしくは鎖ユニットであり、このポリマーは、水溶性もしくは水分散性であるか、または不溶性ポリマーであり、前記ポリマーは、所望に応じて架橋されていてよい。
【0081】
ある実施形態では、実施形態においてグルコースを認識する部分は、芳香族ボロン酸である。このボロン酸は、共役窒素含有ヘテロ環芳香族ビスオニウム構造(例:ビオローゲン)と共有結合している。「ビオローゲン」とは、2,2’‐、3,3’‐、または4,4’‐N,N’ビス‐(ベンジル)ビピリジウム二ハロゲン化物(すなわち、二塩化物、臭化塩化物)などの窒素含有共役N置換ヘテロ環芳香族ビスオニウム塩の基本構造を有する化合物全般を意味する。ビオローゲンはまた、置換フェナントロリン化合物も含む。ボロン酸置換消光剤は、好ましくは、約4から9のpKaを有し、約6.8から7.8のpHの水性媒体中でグルコースと可逆的に反応して、ボロネートエステルを形成する。反応の度合いは、媒体中のグルコース濃度に関連する。ボロネートエステルの形成は、ビオローゲンによるフルオロフォアの消光を低下させ、グルコース濃度に応じて蛍光が強められる結果となる。有用なビスオニウム塩は、検体溶液との混和性を有し、検出すべき検体の存在下において色素の蛍光発光に検出可能な変化を起こすことができるものである。
【0082】
ポリマーマトリックス
生体内で適用する場合、センサーは、1つ以上の検体化合物を含有する生理液流中で用いられるか、または前記検体化合物を含有する筋肉などの組織中に移植される。従って、検出部分のいずれもがセンサーアセンブリーから出て行くことのないことが好ましい。従って、生体内での使用の場合、検出成分は、有機ポリマー検出アセンブリーの一部であることが好ましい。可溶性色素および消光剤を、検体は透過させるが検出部分は透過させない選択透過膜によって閉じ込めてよい。これは、検体分子よりも十分に大きい検出部分の可溶性分子(検体の少なくとも2倍、または1000超、好ましくは5000超の分子量)を用いることにより;および、検出部分が定量的に保持されるような両者間の特定の分子量カットオフを有する透析膜または限外ろ過膜などの選択半透膜を用いることにより、実現することができる。
【0083】
好ましくは、検出部分は、検体は自由に透過できる不溶性ポリマーマトリックスに固定されている。ポリマーマトリックスは、有機、無機、またはこれらのポリマーの組み合わせから成る。マトリックスは、生体適合性材料から成っていてよい。別の選択肢として、マトリックスは、目的の検体に対して透過性である第二の生体適合性ポリマーでコーティングされている。
【0084】
ポリマーマトリックスの機能は、フルオロフォアおよび消光剤部分を一緒に保持して固定し、同時に、検体と接触させて、検体をボロン酸へ結合させることである。この効果を達成するためには、マトリックスは、媒体に不溶性であり、マトリックスおよび検体溶液間の広い表面積の界面を確立することによって媒体と密接に関連している必要がある。例えば、超薄膜または微孔性支持マトリックスが用いられる。別の選択肢として、マトリックスは、検体溶液中にて膨潤性であり、例えば、水性系ではヒドロゲルマトリックスが用いられる。ある場合では、検出ポリマーは、光導管(light conduit)の表面などの表面に結合されるか、または微孔性膜中に含浸される。いずれの場合でも、マトリックスは、結合部位への検体の輸送を干渉してはならず、それにより、この2相間の平衡を確立することができる。超薄膜、多孔性ポリマー、多孔性ゾルゲル、およびヒドロゲルを作製するための技術は、本技術分野で確立されている。有用なマトリックスはすべて、検体透過性
として定義される。
【0085】
ある実施形態では、ヒドロゲルポリマーが用いられる。本明細書で用いる場合、ヒドロゲルの用語は、実質的に膨潤するが、水には溶解しないポリマーを意味する。そのようなヒドロゲルは、可溶性または浸出性成分を含有しない限りにおいて、直鎖状、分岐鎖状、もしくはネットワーク状ポリマー、または高分子電解質複合体であってよい。通常、ヒドロゲルネットワークは、架橋工程によって作製され、これは、膨潤はするが、水性媒体中に溶解しないように、水溶性ポリマーに対して実施される。別の選択肢として、ヒドロゲルポリマーは、親水性および架橋性モノマーの混合物を共重合して、水膨潤性ネットワークポリマーを得ることによって作製される。そのようなポリマーは、付加もしくは縮合重合のいずれかによって、または組み合わせたプロセスによって形成される。このような場合、検出部分は、ネットワーク形成モノマーと組み合わせてモノマー誘導体を用いて共重合することにより、ポリマー中へ組み込まれる。別の選択肢として、反応性部分は、後重合反応を用いて、予め作製されたマトリックスへカップリングされる。前記検出部分は、ポリマー鎖中のユニット、または鎖に結合されたペンダント基である。
【0086】
本発明で有用であるヒドロゲルはまた、色素および消光剤の両方が共有結合した単一ネットワークなどのモノリシックポリマー、または多成分ヒドロゲルでもある。多成分ヒドロゲルとしては、相互侵入ネットワーク、高分子電解質複合体、ならびに、ヒドロゲルマトリックス中の第二のポリマーの分散物および交互微小層アセンブリー(alternating microlayer assemblies)を含む水膨潤性コンポジットが得られる2つ以上のポリマーの種々のその他のブレンドが挙げられる。
【0087】
モノリシックヒドロゲルは、通常、HEMA、PEGMA、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、N‐ビニルピロリドン、アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド[DMAA]などを含むがこれらに限定されない親水性モノマー;メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、スルホプロピルアクリレートナトリウム塩などを含むイオン性モノマー;エチレンジメタクリレート、PEGDMA、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド、N,N’‐メチレンビスメタクリルアミドなどを含む架橋剤の混合物のフリーラジカル共重合によって形成される。モノマーの比率は、透過性、膨潤指数、およびゲル強度を含むネットワーク特性を最適化するように、本技術分野で十分に確立されている原理を用いて選択される。1つの実施形態では、色素部分は、TriCysMAなどの色素分子のエチレン性不飽和誘導体から誘導され、消光剤は、3,3’‐oBBVなどのエチレン性不飽和ビオローゲンから誘導され、マトリックスは、N,N‐ジメチルアクリルアミドおよびN,N’‐メチレンビスアクリルアミドから作製される。色素の濃度は、発光強度が最適となるように選択される。消光剤の色素に対する比は、十分な消光が行われて、所望される測定可能なシグナルが発生されるように調節される。
【0088】
ある実施形態では、本発明のセンサーを作製するためには、平衡蛍光指示薬系が1つの成分として組み込まれ、1つ以上の抗酸化剤成分がもう1つの成分として組み込まれる多成分ヒドロゲルが好ましい。好ましくは、この多成分系は、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)またはセミ相互貫入ポリマーネットワーク(セミ‐IPN)である。
【0089】
IPNポリマーは、通常、逐次重合によって作製される。まず、消光剤を含有するネットワークが形成される。次にこのネットワークは、色素モノマーを含むモノマー混合物で膨潤され、第二の重合が行われて、IPNヒドロゲルが得られる。この方法により、第二のヒドロゲル層を添加して、ヒドロゲル含有センサーの内部領域をコーティングしてよい。
【0090】
セミ‐IPNヒドロゲルは、フルオロフォアとの複合体形成が可能である消光剤モノマーを含むモノマー混合物中に、色素部分を含有する可溶性ポリマーを溶解することで形成される。ある実施形態では、検出部分は、検体化合物が自由に透過可能である不溶性ポリマーマトリックスによって固定される。ヒドロゲル系についてのさらなる詳細は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0028612および同第2006/0083688号に開示されている。
【0091】
半透膜
本発明のある実施形態で用いられる半透膜は、検体(例:グルコース)および酸素に対して透過性である。しかし、それは、血餅、細胞、およびタンパク質、ならびにその他の血中の高分子量種に対しては不透過性である。
【0092】
半透膜は、ヒト体内に移植された際にその完全性を維持する、不活性で無毒性の材料であることが好ましい。免疫反応を最小限に抑え、タンパク質および細胞の吸収を阻止する適切な生体適合性の半透過性材料は、以下のポリマーの群から選択されることが好ましい:ポリエチレン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、テトラアクリル化ポリ(エチレングリコール)(PEG)、および/またはポリウレタン。
【0093】
半透膜の多孔率は、免疫保護および分子の選択透過の両方に影響を与える。膜厚は、免疫保護、ならびに検体の拡散にとって重要である。細孔体積分率を最大化し、膜厚を可能な限り最小限に抑えることは、半透膜を通る検体および酸素の迅速な拡散を達成するために重要である。また、細孔体積分率、平均細孔径、および細孔壁厚も、膜の機械的強度に影響を与える。最適な膜パラメータを見出すために、様々な多孔率および膜厚(0.01mmから0.5mm)が形成される。
【0094】
検体検出のための光学系
血中検体濃度測定のための光学系および方法の種々の実施形態が本明細書にて開示される。種々の実施形態は、少なくとも2つの特徴を共有することが好ましい。第一に、それらは、励起によって指示薬系から発生された発光シグナルが、血中検体濃度と関連するように、励起光シグナルによる化学指示薬系の励起、および指示薬系の発光シグナルの測定を含んでおり、ここで、指示薬系は、血液と接触し、蛍光色素を含んでいる。第二に、それらは、光学系に起因する考え得るアーチファクトについて、指示薬系からの血中検体濃度測定値を補正することを含み、アーチファクトは、血中検体濃度と関連しない。この補正は、レシオメトリック分析によって行われる。より詳細には、光学系のグルコースに関連しないいずれの寄与をも補正するために、励起光シグナルまたは別の参照光シグナルを例とする光学系を通して伝播する第二の光シグナルに対する発光シグナルの比を用いる。レシオメトリック補正に励起光シグナルが用いられる場合、センサーは、光学系を通った励起光の少なくとも一部が反射して検出器へ戻るように、ミラーを例とする反射表面を、センサーに沿ったいずれかの場所に配置して有することが好ましい。別の参照光シグナルが用いられる場合、参照光シグナルは:(1)別の光源によって発生され、反射して検出器へ戻るか、または(2)センサーに沿ったいずれかの場所に配置された別の色素からの別の発光シグナルとして発生されるかのいずれかであってよい。従って、本発明の好ましい実施形態に従う検体センサーは、反射表面、または参照光シグナルを発光するように適合された第二の色素のいずれかを含む。
【0095】
(1)血液に曝露され、(2)励起光パス内に配置され、および(3)化学指示薬系を血液に曝露するためである適切な位置に化学指示薬系を保持するため、ならびに励起光シグナルを指示薬系に導入するため、指示薬系からの発光シグナルを検出するため、および
光学系のアーチファクトについてグルコース測定のレシオメトリック補正を可能とするためである、種々の構造的構成が提案されており、特に2008/0188725を参照されたい。より詳細には、本発明の態様は、励起光シグナルの一部分を検出器へ戻すように適合された種々のミラー/反射表面構成を介して、または別の色素からの別の発光シグナルの発生を介して、参照光シグナルを発生させるための改善および別の選択肢としての実施形態に関する(2008/0188725で考察されるように)。本発明の態様は、化学指示薬系を信号光パス(interrogation light path)内に配置するための新規で改善された構成に関し、ここで、センサーは、より強固であり、改善された患者の許容度を示す。
【0096】
米国特許公開第2008/0188722号、同第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、ならびに同時係属米国特許出願第11/296,898号、同第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、同第12/612,602号、および同第12/424,902号(各々、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のものなどの光学グルコースセンサーは、通常、光ファイバーの遠位末端に配置される化学指示薬系を用いており、ここで、指示薬系は、ファイバーの遠位へ向かって送られる励起光シグナルが、化学指示薬系によるグルコースの濃度に関連した光シグナルの発光を引き起こすように、血液との接触が維持されている。
【0097】
特定の実施形態では、1つ以上のグルコース検出化学指示薬系を用いて血中グルコース濃度を測定するための光学グルコース測定系が開示される。そのような指示薬系は、グルコース結合部分と作動可能にカップリングしたフルオロフォアを含むことが好ましい。好ましくは、グルコース結合部分は、フルオロファに対する消光剤として作用する(例:フルオロフォアと会合している場合、励起光に応答するフルオロフォアの蛍光発光シグナルを抑制する)。好ましい実施形態では、グルコース結合部分がグルコースと結合すると(例:グルコース濃度が上昇すると)、それはフルオロフォアから解離し、このことは、続いて、励起による蛍光発光シグナルを発生させる。従って、そのような実施形態では、グルコース濃度が高いほど、より多くのグルコースが結合部分へ結合し、消光が減少し、励起によるフルオロフォアの蛍光強度が高くなる。
【0098】
特定の実施形態では、光学グルコース測定系は、そのような化学指示薬系を用いることで、血管内の検体濃度をリアルタイムで測定する。特定の実施形態では、検体検出用化学指示薬系は、ヒドロゲルに固定される。ヒドロゲルは、光がヒドロゲルを通して伝導できるように光ファイバーに挿入してよく、一方、ヒドロゲルの少なくとも一部分は血液と接触している。ヒドロゲルは、好ましくは、血中に存在する検体およびその他の低分子量部分に対して透過性である。特定の実施形態では、光ファイバーがヒドロゲルと一緒になって、哺乳類(ヒトまたは動物)の血管内に配置される検体センサーを構成する。
【0099】
血管内グルコースモニタリングのためのグルコース検出化学指示薬系およびグルコースセンサー構成の例としては、米国特許第5,137,033号、同第5,512,246号、同第5,503,770号、同第6,627,177号、同第7,417,164号、および同第7,470,420号、ならびに米国特許公開第2008/0188722号、同第2008/0188725号、同第2008/0187655号、同第2008/0305009号、同第2009/0018426号、同第2009/0018418号、ならびに同時係属米国特許出願第11/296,898号、同第12/187,248号、同第12/172,059号、同第12/274,617号、および同第12/424,902号に開示される光学センサーが挙げられ、これらの各々は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
光は、光源から光学検体センサー内へ伝導されてよい。特定の実施形態では、光源は、光励起シグナルを発する発光ダイオードである。光励起シグナルは、フルオロフォアが発光波長の光を発するように、1もしくは複数のフルオロフォア系を励起する。特定の実施形態では、フルオロフォア系は、血管内の血中検体濃度と関連する強度を有する第一の波長の発光シグナルを発するように構成される。特定の実施形態では、光は、少なくとも1つの検出器によって検出されるように、検体センサー外へ指向される。少なくとも1つの検出器は、好ましくは、発光シグナルの強度を測定し、これは、血中に存在する検体濃度に関連する。検体検出用化学指示薬系へ1つ以上の励起光シグナルを送り、そして化学指示薬系からの発光シグナルを検出するための様々な光学構成を用いてよく、例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/027,158号(第2008/0188725号として公開)を参照されたい。
【0101】
ある実施形態では、検体センサーは、近位および遠位末端を有する光ファイバー;近位および遠位末端を有する無外傷性先端部であって、ここで、無外傷性先端部の近位末端は、光ファイバーの遠位末端から分離されており、それによって無外傷性先端部と光ファイバーとの間にギャップが存在する、無外傷性先端部;近位および遠位末端を有するロッド部であり、ここで、ロッド部の近位末端は、光ファイバーの遠位末端と接続されており、およびここで、ロッド部の遠位末端は、無外傷性先端部の近位末端と接続されており、それによって、ロッド部は、ギャップを横切る形で光ファイバーと無外傷性先端部とを連結する、ロッド部;励起光シグナルに応答して発光シグナルを発生させる能力を有する化学指示薬系であって、ここで、発光シグナルの強度は、検体濃度と関連しており、およびここで、化学指示薬系は、ギャップ内に配置される、化学指示薬系;ならびに、ギャップ上に配置される選択透過膜、を有し、ここで、センサーは、血管内に配置されるためのサイズに合わせられる。
【0102】
検体センサーの1つの変形では、化学指示薬系は、ヒドロゲルによってギャップ内に固定されている。別の変形では、センサーは、温度センサーをさらに有する。光ファイバーは、好ましくは、約0.005インチから約0.020インチの直径を有する。別の変形では、センサーは、反射領域をさらに有する。好ましくは、反射領域は、ロッド部の近位末端に反射表面を有する。1つの実施形態では、ロッド部の光ファイバーおよび無外傷性先端部への接続は、加熱によって行ってよい。別の実施形態では、ロッド部の光ファイバーへの接続は、反射性または光学的に透明である接着剤によって行ってよい。
【0103】
センサーの変形では、無外傷性先端部の遠位末端の形状は、血管内の外傷を低減するように構成してよい。種々の実施形態では、無外傷性先端部の遠位末端の形状は、半球状、放物線状、および楕円状から成る群より選択されてよい。別の変形では、無外傷性先端部の遠位末端は、可撓性である。別の変形では、無外傷性先端部の遠位末端は、変形可能である。無外傷性先端部の遠位末端は、プラスチック、ポリマー、ゲル、金属、およびコンポジットから成る群より選択される少なくとも1つの材料から形成されてよい。
【0104】
ある実施形態では、センサーは、近位および遠位末端を有する光ファイバー;近位および遠位末端を有する無外傷性先端部であって、ここで、無外傷性先端部の近位末端は、光ファイバーの遠位末端から分離されており、それによって無外傷性先端部と光ファイバーとの間にギャップが存在する、無外傷性先端部;近位および遠位末端を有するハイポチューブであり、ここで、ハイポチューブの近位末端は、光ファイバーの遠位末端と接続されており、およびここで、ハイポチューブの遠位末端は、無外傷性先端部の近位末端と接続されており、それによって、ハイポチューブは、ギャップを横切る形で光ファイバーと無外傷性先端部とを連結し、ここで、ハイポチューブは、ギャップ上に開かれた少なくとも1つの窓部を有する、ハイポチューブ;励起光シグナルに応答して発光シグナルを発生さ
せる能力を有する化学指示薬系であって、ここで、発光シグナルの強度は、検体濃度と関連しており、およびここで、化学指示薬系は、ギャップ内に配置される、化学指示薬系;ならびに、少なくとも1つの窓部上に配置される選択透過膜、を有し、ここで、センサーは、血管内に配置されるためのサイズに合わせられる。好ましい実施形態では、化学指示薬系は、ハイポチューブ内に形成されたキャビティ内のヒドロゲルによって固定される。ハイポチューブを有するセンサーのさらに好ましい実施形態では、センサー内に反射部材が配置される。ハイポチューブを有するセンサーのさらに好ましい実施形態では、センサー内に蛍光部材が配置される。
【0105】
他の実施形態では、センサーは、近位および遠位末端を有する光ファイバー;近位および遠位末端を有する無外傷性先端部であって、ここで、無外傷性先端部の近位末端は、光ファイバーの遠位末端から分離されており、それによって無外傷性先端部と光ファイバーとの間にギャップが存在する、無外傷性先端部;光ファイバーと無外傷性先端部とを接続するケージ部(cage)であって、ここで、光ファイバーは、少なくとも部分的にケージ部内に封入されており、およびここで、ケージ部は、少なくとも1つの窓部を有する、ケージ部;ケージ内に配置される化学指示薬系であって、ここで、化学指示薬系は、窓部に隣接し、選択透過膜によって検体から分離されており、およびここで、化学指示薬系は、励起光シグナルに応答して発光シグナルを発生させる能力を有し、ここで、発光シグナルの強度は、検体濃度と関連している、化学指示薬系;ならびに、参照物質であって、参照物質は、励起光シグナルが化学指示薬系へ入る前に励起光シグナルの一部分を反射するか、または第二の発光シグナルを戻すように構成され、ここで、第二の発光シグナルの強度は、検体濃度と関連していない、参照物質、を有する。
【0106】
グルコースオキシダーゼに基づく電気化学センサーは、経時的にセンサードリフトを受けやすいことが知られている。そのようなセンサーは、最初にあるレベルのグルコース応答を有し、その後続いて別のレベルのグルコース応答を有する場合がある。電気化学センサードリフトは、その設計および開発を行う際の主たる因子であり、それにより、デバイスに対する有望な較正を得る試みが妨げられ、そのような効果を補正するための再較正を頻繁に行うことが必要となる。電気化学センサードリフトの問題は、最近Braukerによって考察され(Brauker J "Continuous Glucose Sensing: Future Technology Developments, DIABETES TECHNOLOGY & THERAPEUTICS, Volume 11, Supplement 1, 2009, S25-S36)、それには以下のように記載されている:
「センサーによるグルコースの測定は、実験台上では、メーターに対して必要である以上の較正の必要なしに、正確で再現性良く行われる。異なる点は、連続センサーは、その体内への配置が、移植後の何時間および何日間という時間経過で大きく変化する注射跡の創傷(needle track wound)内にて行われることである。絶え間なく変化する創傷治癒環境により、創傷部位のグルコースおよび酸素は大きく変動する。その領域中のグルコースは、常に血中グルコースに比例するが、センサー界面のグルコースの血中グルコースに対する比率は、創傷治癒プロセスが進行するに従って細胞による使用が変動することに起因して、経時で変化する。このような変化により、較正を継続して変えていく必要が生ずる。センサーに最も大きい誤差をもたらすのが、この較正プロセスである。」
【0107】
電気化学センサーの公知のドリフト問題はさらに、センサー材料および挿入プロセスに対する身体の炎症応答に伴う内因性の過酸化水素源の存在によっても説明され得る。電気化学センサーは、グルコース酸化反応によって生成される過酸化水素の検出に依存していることから、これらのセンサーは、内因性の過酸化水素源に曝露されると、誤った測定を起こしやすい。カタラーゼまたはグルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素、さらには銀または銀ナノ粒子を使用することで、電気化学センサーの内因性過酸化水素源への曝露が低減される可能性があり、それによってこのようなデバイスにおける誤差の著しいと考えられる原因が軽減または排除される。
【実施例】
【0108】
蛍光指示薬系および抗酸化剤を含有するセンサー
平衡蛍光指示薬系および1つ以上の抗酸化剤が共有結合したヒドロゲルを作製する。ヒドロゲルは、親水性モノマーおよび架橋剤の混合物を、平衡蛍光指示薬系の存在下にてフリーラジカル共重合することで形成する。このセンサーヒドロゲルを、PBSの新鮮な溶液へ移し、平衡蛍光指示薬系の蛍光強度を経時でモニタリングする。PBS溶液を、pH7.4のPBS中の検体溶液で置き換え、蛍光の増加をモニタリングする。この検体溶液に活性酸素種をスパイクし、センサーを活性酸素種と接触させる。活性酸素種溶液を、新鮮な検体溶液で置き換え、蛍光強度を経時でモニタリングする。
【0109】
実施例2
相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)
ヒドロゲル中に重合された平衡蛍光指示薬系を含有する水和されたセンサーを、DMAA、(10体積/体積%)、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド(DMAAの2重量/重量%)、1つ以上の抗酸化剤、過硫化アンモニウム(0.3%)、およびPBS(90体積/体積%、20mM、pH7.0)を含有するモノマー溶液(130μL)中に浸漬する。2時間後、TEMED(50μL、pH7.0 PBS中10%)を添加し、この混合物を室温にて2時間にわたって重合させる。センサーをバルクのヒドロゲルポリマーから回収し、pH7.4 PBS中にて15時間の浸出を行う。このセンサーを、PBSの新鮮な溶液へ移し、その蛍光強度を37℃にて経時でモニタリングする。PBS溶液を、pH7.4 PBS中の検体溶液で置き換え、蛍光の増加をモニタリングする。この検体溶液に活性酸素種をスパイクし、センサーを活性酸素種と接触させる。活性酸素種溶液を、新鮮な検体溶液で置き換え、蛍光強度を経時でモニタリングする。
【0110】
実施例3
カタラーゼ含有外部コーティングを有するTriCysMAおよび3,3’‐oBBV含有IPN
重合されたTriCysMAおよび3,3’‐oBBVを含有する水和されたセンサーを、DMAA、(10体積/体積%)、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド(DMAAの2重量/重量%)、ウシカタラーゼ(0.3%、活性=14000U/mgタンパク質)またはクロコウジカビカタラーゼ(Aspergillus niger catalase)(0.3%、活性=20,000U/mgタンパク質)、過硫化アンモニウム(0.3%)、およびPBS(90体積/体積%、20mM、pH7.0)を含有するモノマー溶液(130μL)中に浸漬した。2時間後、TEMED(50μL、pH7.0 PBS中10%)を添加し、この混合物を室温にて2時間にわたって重合させた。センサーをバルクのヒドロゲルポリマーから回収し、pH7.4 PBS中にて15時間の浸出を行った。このセンサーを、PBSの新鮮な溶液へ移し、その蛍光強度を経時でモニタリングした。PBS溶液を、pH7.4 PBS中の400mg/dL グルコース溶液で置き換え、蛍光の増加をモニタリングした。グルコース溶液を、異なる濃度のグルコース溶液(100mg/dL)で置き換え、蛍光の減少をモニタリングした。このグルコース溶液にH(100μM)をスパイクし、センサーをHと30分間接触させた。H溶液を、新鮮なグルコース溶液(100mg/dL)で置き換え、蛍光強度を経時でモニタリングした。図1に示すように、カタラーゼヒドロゲルで保護されたセンサーは、Hの存在下にて劣化することはなく、一方カタラーゼを含有しなかったセンサーは劣化し、「ディップアンドライズ(dip and rise)」という特徴的なシグナル強度を示した。
【0111】
実施例4
追加の抗酸化剤含有の外部コーティングを有する蛍光指示薬系および抗酸化剤含有センサー
平衡蛍光指示薬系および1つ以上の抗酸化剤を含有する水和されたセンサーを、ヒドロゲル中で重合する。平衡蛍光指示薬系および1つ以上の抗酸化剤を含有するヒドロゲルを、DMAA、(10体積/体積%)、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド(DMAAの2重量/重量%)、1つ以上の抗酸化剤、過硫化アンモニウム(0.3%)、およびPBS(90体積/体積%、20mM、pH7.0)を含有するモノマー溶液(130μL)中に浸漬する。2時間後、TEMED(50μL、pH7.0 PBS中10%)を添加し、この混合物を室温にて2時間にわたって重合させる。センサーをバルクのヒドロゲルポリマーから回収し、pH7.4 PBS中にて15時間の浸出を行う。このセンサーを、PBSの新鮮な溶液へ移し、その蛍光強度を37℃にて経時でモニタリングする。PBS溶液を、pH7.4 PBS中の検体溶液で置き換え、蛍光の増加をモニタリングする。この検体溶液に活性酸素種をスパイクし、センサーを活性酸素種と接触させる。活性酸素種溶液を、新鮮な検体溶液で置き換え、蛍光強度を経時でモニタリングする。
【0112】
実施例5
Troloxまたはカタラーゼ/Trolox混合物含有外部コーティングを有するTriCysMA含有IPN
重合されたTriCysMAを含有する水和されたセンサーを、DMAA、(10体積/体積%)、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド(DMAAの2重量/重量%)、Trolox誘導体(20mg/mL)、過硫化アンモニウム(0.3%)、およびPBS(90体積/体積%、20mM、pH7.0)を含有するモノマー溶液(130μL)中に浸漬した。2時間後、TEMED(50μL、pH7.0 PBS中10%)を添加し、この混合物を2時間にわたって重合させた。センサーをバルクのヒドロゲルポリマーから回収し、pH7.4 PBS中にて15時間の浸出を行った。このセンサーを、PBSの新鮮な溶液へ移し、その蛍光強度を37℃にて経時でモニタリングした。このPBS溶液を、2,2’‐アゾビス[2‐(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]二塩酸塩でスパイクして、最終濃度を10mMとし、センサーをこのフリーラジカル源と5時間接触させ、同時に蛍光強度を経時でモニタリングした。図3に示すように、Trolox誘導体で保護されたセンサーは、フリーラジカルの存在下にて劣化することはなく、一方Troloxを含有しないセンサーは、劣化し、シグナル強度の低下を示した。
【0113】
実施例6
膜上へのカタラーゼの共有結合による固定
反応:
以下のようにして、カタラーゼを、高密度ポリエチレン多孔性膜(HDPE MPM)へ結合させた:
【0114】
【化1】

【0115】
手順
pH5 MES(0.1M MES、0.5M NaCl)、Boc‐アミド‐dPEG‐酸(0.1Mを5mL)、NHS(pH5 MES中0.2Mを5mL)、カタラーゼ(pH5 MES中10mg/mLを10mL)、およびEDC(pH5 MES中0.2Mを5mL)のストック溶液を調製し、4℃にて保存した。
【0116】
Boc‐アミド‐dPEG‐酸(1.2mL、0.1M)、NHS(1.2mL、0
.2M)、およびEDC(1.2mL、0.2M)を、4℃にて4mLバイアルへ加え、15分間保持した。アンモニア‐プラズマ処理微孔性膜(MPM)の1cm片を6個バイアルへ投入し、4℃にて15時間反応させた。過剰の試薬を除去し、MPMを水で洗浄した(3×4mL)。このMPMを、シンチレーションバイアル中、70% EtOH/HOによる0.275M HCl中にて、3時間攪拌した。過剰の試薬を除去し、MPMを水で洗浄した(3×4mL)。別個の4mLバイアルへ、カタラーゼ(1.2mL、10mg/mL)、NHS(1.2mL、10mM)、およびEDC(1.2mL、10mM)を加え、バイアルを4℃にて15分間保持した。6個のペグ化脱保護MPMをこの4mLバイアルへ投入し、これを4℃にて15分間保持した。過剰の試薬を除去し、KMnO/H滴定アッセイを用いてカタラーゼ活性を測定した。
【0117】
PEG‐膜上のカタラーゼの活性を、カタラーゼで処理したがカプリング剤を用いない膜と比較した。
【0118】
【表1】

【0119】
このアッセイから、PEGおよびカップリング剤で処理した微孔性膜が、カップリング剤を含有しないコントロールよりも高い活性を有することが分かる。これは、微孔性膜の表面へカタラーゼを共有結合させるための効果的な方法を表すものである。
【0120】
本明細書で述べる例および実施形態が、単に説明を目的とするものであること、ならびに、それらに照らした種々の改変または変更が、当業者に提案され、本出願の趣旨および範囲内、ならびに添付のいずれの請求項の範囲内にも含まれるべきであることは理解される。本明細書で引用されるすべての図、表、および添付物、ならびに刊行物、特許、および特許出願は、その全ての内容があらゆる点において参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡蛍光指示薬系(equilibrium fluorescence indicator systems)および少なくとも1つの抗酸化剤を含み、前記平衡蛍光指示薬系および前記少なくとも1つの抗酸化剤の各々は、ポリマーマトリックス内に固定されている、検体センサー。
【請求項2】
前記平衡蛍光指示薬系および前記少なくとも1つの抗酸化剤が、共通のポリマーマトリックス内に固定されている、請求項1に記載の検体センサー。
【請求項3】
前記平衡蛍光指示薬系が、第一のポリマーマトリックス内に固定され、かつ前記少なくとも1つの抗酸化剤が、前記第一のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する第二のポリマーマトリックス内に固定されている、請求項1に記載の検体センサー。
【請求項4】
少なくとも1つの抗酸化剤を含む第二のポリマーマトリックスをさらに含み、前記第二のポリマーマトリックスは、前記平衡蛍光指示薬系および前記少なくとも1つの抗酸化剤が固定されている前記共通のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する、請求項2に記載の検体センサー。
【請求項5】
前記少なくとも1つの抗酸化剤が、触媒性抗酸化剤、捕捉剤、および合成抗酸化剤から成る群より選択される、請求項1に記載の検体センサー。
【請求項6】
前記触媒性抗酸化剤が、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)、セレングルタチオンペルオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)から成る群より選択される、請求項5に記載の検体センサー。
【請求項7】
前記触媒性抗酸化剤が、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH‐Px)、セレングルタチオンペルオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)のバイオコンジュゲート(bioconjugates)から成る群より選択される、請求項5に記載の検体センサー。
【請求項8】
前記合成抗酸化剤が、テンポールである、請求項5に記載の検体センサー。
【請求項9】
前記捕捉剤抗酸化剤が、ビタミンA、レチノール、カロテノイド、リモノイド、植物ステロール、フラボノイド、アントシアニジン、カテキン、イソフラボン、プロアントシアニジンオリゴマー、イソチオシアネート、ジチオールチオン、スルホラファン、イソプレノイド、トコトリエノール、トコフェロール、ビタミンE、リポ酸、ユビキノン、アスコルベート、ビタミンC、2,3‐ジヒドロ‐1‐ベンゾフラン‐5‐オール、クロマノン、水溶性フラーレン抗酸化剤、C60、C70、フェノール系抗酸化剤化合物、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、Trolox(商標)、ポリフェノール系抗酸化剤化合物、コーヒー酸、ヒドロコーヒー酸(hydrocaffeic acid)、バニリン酸、桂皮酸、安息香酸、およびピルベートから成る群より選択される、請求項5に記載の検体センサー。
【請求項10】
前記合成抗酸化剤が、ポルフィリン系合成抗酸化剤である、請求項5に記載の検体センサー。
【請求項11】
前記合成抗酸化剤が、白金、パラジウム、銀、金、およびこれらの合金から成る群より選択される貴金属、または二酸化マンガン、酸化ルテニウム、硫化ルテニウム、および酸化銀から成る群より選択される金属酸化物もしくは硫化物である、請求項5に記載の検体センサー。
【請求項12】
前記合成抗酸化剤が、酸化銀の、多孔性コーティングの形態、コロイド状粒子もしくはナノ粒子の形態、または、白金、銀もしくは金のナノ粒子である、請求項11に記載の検体センサー。
【請求項13】
前記少なくとも1つの抗酸化剤が、2つ以上の抗酸化剤のカクテルを含む、請求項1に記載の検体センサー。
【請求項14】
前記2つ以上の抗酸化剤が、カタラーゼおよび抗酸化剤フェノール系化合物である、請求項13に記載の検体センサー。
【請求項15】
前記抗酸化剤フェノール系化合物が、Trolox(商標)、またはTrolox(商標)誘導体である、請求項14に記載の検体センサー。
【請求項16】
前記2つ以上の抗酸化剤が、カタラーゼ酵素およびビタミンEである、請求項13に記載の検体センサー。
【請求項17】
前記第一および第二のポリマーマトリックスが、半透膜で物理的に分離されている、請求項3に記載の検体センサー。
【請求項18】
不溶性ポリマーマトリックス内に固定された平衡蛍光指示薬系、および前記不溶性ポリマーマトリックスを取り囲む多孔性金属コーティングを含む、検体センサー。
【請求項19】
近位および遠位末端を有する光ファイバー;
励起光シグナルに応答して発光シグナルを発生させる能力を有する化学指示薬系であって、前記発光シグナルの強度は検体濃度と関連し、かつ、前記化学指示薬系はポリマーマトリックスによって前記光ファイバー中のギャップ内に固定されている、化学指示薬系;
前記ギャップ上に配置された選択透過膜;ならびに、
1つ以上の抗酸化剤を含有する外部コーティング、
を含む検体センサーであって、血管内に配置されるためのサイズに合わせられている、検体センサー。
【請求項20】
前記検体がグルコースであり、前記化学指示薬系がグルコース結合部分と作動可能にカップリングされたフルオロフォアを含み、グルコース結合が前記フルオロフォアの見かけ上の光学的な変化を引き起こす、請求項19に記載の検体センサー。
【請求項21】
平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤を、共通のポリマーマトリックス内へ固定することを含む、請求項2に記載の検体センサーを作製する方法。
【請求項22】
平衡蛍光指示薬系を第一のポリマーマトリックス内に固定すること;および、
少なくとも1つの抗酸化剤を第二のポリマーマトリックス内に固定することを含み、前記第二のポリマーマトリックスは、前記第一のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する、請求項3に記載の検体センサーを作製する方法。
【請求項23】
平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤を第一のポリマーマトリックス内に固定すること;ならびに、
少なくとも1つの抗酸化剤を第二の不溶性マトリックス内に固定することを含み、前記第二のポリマーマトリックスは、前記第一のポリマーマトリックスの周囲の外部コーティングを形成する、請求項4に記載の検体センサーを作製する方法。
【請求項24】
前記平衡蛍光指示薬系が:
有機蛍光色素;
ボロン酸官能化ビオローゲン消光剤;および、
ヒドロゲルマトリックス、
を含む、請求項1に記載の検体センサー。
【請求項25】
前記平衡蛍光指示薬系が、過酸化水素によって引き起こされる分解に対して保護されている、請求項1に記載の検体センサー。
【請求項26】
平衡蛍光指示薬系および少なくとも1つの抗酸化剤を含む検体センサーであって、前記平衡蛍光指示薬系はポリマーマトリックス内に固定され、前記少なくとも1つの抗酸化剤は前記ポリマーマトリックスを取り囲む半透膜へ共有結合している、検体センサー。
【請求項27】
前記半透膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、および酢酸セルロースから成る群より選択される、請求項26に記載の検体センサー。
【請求項28】
前記少なくとも1つの抗酸化剤が、カタラーゼを含む、請求項26に記載の検体センサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−519101(P2013−519101A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552917(P2012−552917)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/023939
【国際公開番号】WO2011/097586
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(505370235)グルメトリクス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】