説明

化学物質を処理するためのシステム及び方法、このようなシステムを制御するためのコンピュータプログラム、並びにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

本発明は、基本的化学操作を行うための構成部品を包含する、実験室領域で化学物質を処理するためのシステムに関する。その場合、構成部品は化学物質を処理するためのプロセス段階の所定の順序に従ってモジュールとして組み合わせることができ、互いに整合するモジュール寸法を有する。さらに構成部品は積み重ね可能な自立するボックスとして形成されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質を処理するためのシステム及び方法、このようなシステムを制御するためのコンピュータプログラム、並びに対応するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。上記のコンピュータプログラムは、合成装置(特に放射性化学薬品又は放射性医薬品のための合成装置)を種々のプロセス順序(プロセスの流れ)に柔軟に適応させ、こうして該合成装置を研究及びルーチン作業に利用できるようにするために使用される。
【背景技術】
【0002】
放射性化学薬品及び特に放射性医薬品の合成においては、一般に「ユニット操作」(unit operation)と呼ばれる一連の化学的プロセス段階が使用される。このようなユニット操作は例えば抽出、加熱/冷却、混合、希釈、計量等である。理想的には、ほとんどすべての化学合成及び物理的プロセス段階はこのようなユニット操作に分解される。中規模及び大規模設備ではユニット操作が大規模部品の形で再現されるが、実験室規模(特に放射性医薬品のための)では、こうした手法はこれまでほとんど採用されたことがない。放射性医薬品では、一般的に、いわゆるPET(PET=陽電子放出型断層撮影)トレーサが、最終製品に到達する前に複雑な化学的プロセス段階を通過しなければならない。また製造元側で予めアセンブルしたキットを使用し適用する前に、混合、希釈、煮沸のようなプロセス段階を実行しなければならない。ところが、ほとんどの場合、これまでは、単一の特定された合成経路、すなわち単一の特定セットのプロセス段階、を実施できるにすぎない完全な装置が設置されてきた。
【0003】
従来の合成装置は例えば、化学物質(例えば、放射性診断薬及び医薬品)の自動遠隔制御製造のために利用される。特に、こうした装置はPETトレーサ、例えばF18-FDGの合成に使用される。その場合サイクロトロンで生産された短寿命の放射性核種が生体分子に結合され、PET検査の際に人体に注射される。PET検査によって、例えば腫瘍細胞の、代謝に関して高精度の診断的結論を得ることができる。この方法は癌の早期検出でますます重要になっているが、癌治療の有効性の検査でも定評がある。PETとCT(=コンピュータトモグラフィー)を組み合わせると、代謝に関する高精度の情報が直ちに解剖学的情報と結び付けられ、優れた腫瘍診断の可能性をもたらす。
【0004】
PET核種の短い半減期(F-18: 110分、C-11: 20分)のため、追加の合成段階が行われる放射化学実験施設はサイクロトロンの直近に設置しなければならない。その場合、例えば製造された製品の品質検査が行われる一方で、製品がすでに患者への途上にあるという具合に、利用できる時間が窮屈である。自動化の必要性のもう一つの側面は、核種からの多量の放射線放出が手操作を不可能にすることである。現在市場で見られるのは、いわばPETトレーサごとに1つの専用合成装置という具合に高度に専門化した装置だけである。この装置は利用者が変更や改良を行い又は異なる反応経路に切り換えることさえ許さない。既存の構想のもう一つの特徴は、プロセス開発又は研究分野に要求される柔軟性を満たすことができない、所定の無菌使い捨て材料を使用して無菌のルーチン生産装置としての使用を強調しており、あるいはまた、再使用可能な部品を備えた装置を用いる無菌のルーチン作業は規制当局が許可しないか、クリーニングプロセスの確認に多額の費用を伴う。
【0005】
利用者に対して両方の要求を満たすシステムは先行技術では知られていない。
【0006】
また放射性物質の分野では、放射性医薬品の自動及び半自動充填のための解決策が必要である。その場合ヨーロッパ及び米国市場の様々な要求に特に注目しなければならない。現在個々ばらばらな解決策があるが、これらは総合的構想の要求を満たすものでない。別の場合には、製薬大企業のために提供される充填システムが設計されているが、中小のPET実験施設の利益とコスト予算は明らかに看過されている。しかも、装置ソフトウエアが上流合成装置の制御ソフトウエアと連絡していない。
【0007】
このように(放射性)医薬品の合成・充填装置の分野の現在の技術水準は、特殊な合成装置には自動化解決策があるが、下流充填プロセスをも含む総合的解決策はないのが現状である。
【0008】
例えば慣用のPETトレーサの1つ、例えば18-F-FDGを製造するための自動合成装置が提供される。さらに、
・ルーチンのFDG 18F合成
・DOPA18F合成
・求核F-18合成
・求電子F-18合成、又は
・[11C]ヨウ化メチル及びメチル化
のための専用装置が供給される。一般に、利用可能なシステムは、特定の合成を目的とした設備を包含する。
【0009】
従来の解決策の欠点はとりわけ次のとおりである。
・既存の構想は所定の合成に結び付けられている。
・多機能合成制御はまったく可能でないか、又はごく制約された条件でしか可能でない。
・利用者によるソフトウエア及びシステムの改良の可能性が不十分であり、極めて時間がかかる。
【0010】
従って、既存のソフトウエア解決策は今あるハードウエアの実行に依存し、このハードウエアを制御するためにもっぱら使用される。拡張のためのオプション、その後の無制限の再プログラミング、又はまったく新しい放射性トレーサのGMP適合医薬品合成のための既存ベースの利用は知られていない(GMP=適正製造規範)。
【0011】
後続のプロセス段階である滅菌ろ過、充填、分配、ラベル付け及び包装については、実行されるハードウエアシステムが同じソフトウエアと互換性になっていないか、又は同じソフトウエアで制御できるように設定されていない。
【0012】
こうした事情のため現在PET合成装置の利用者は、市場への解決策の供給が限られているため、いわば各PETトレーサごとに専用の合成装置を高い費用をかけて購入せざるを得ず、この装置はルーチン生産にしか使用できず、他の用途に利用することはまったくできないか又は非常に困難である。一方、無菌操作のための他のタイプのシステムは、監督官庁の承認を得るのがはなはだ困難である。利用者の中にはこのような装置の組合せを買い込むのに十分な資金を持たないものもいるから、高度の訓練を受けた放射性製剤技術者が既存の旧式設備の予定外の強制的改造に彼の高価な時間を費やしたり、他の即興的な手動的解決策に助けを求めようとしたりする個別的設備技術的事例が現場でしばしば見受けられる。
【0013】
この問題の部分的側面に取り組むための様々な提案がある。米国特許出願第2004/0028573 A1号では、フラスコ内に入れた化学試薬に基づく放射性医薬品の合成装置が記載される。この装置は下記を含む。すなわち、種々の反応室、フラスコと反応室の間の移送部材、及び化学的成分の移送をモニタリングしかつ機械的に調整するための機械的部材である。ある合成が別の先行合成によって汚染されるのを回避するために、この特許出願では移送部材を取外し可能な部材として形成し、使用後に取り外して、場合によっては廃棄することを提案している。
【0014】
国際特許出願WO 01/85735 A2号は放射性核種の処理装置を開示する。この装置は一般に反応容器とブロックを含み、該ブロックは容器収容タンク、温度を変えるための上側及び下側要素からなる。なるべく迅速な温度変化を達成するために、容器収容タンクが上側及び下側ゾーンを形成し、反応容器をそこに収容できるように設計されており、上側ゾーンには反応容器の外面と容器収容タンクの内壁との間に上側ゾーンスペースが画定されている。同様に、下側ゾーンスペースは反応容器の外面と容器収容タンクの内壁との間の下側ゾーンに画定される。温度を変えるための上側要素は上側ゾーンスペースのガス温度を変えるために使用され、下側要素は上記の下側ゾーンスペースのガス温度を変えるために使用される。熱空気と冷空気による2ゾーン温度調整を備えた特殊な反応器受け器が記述される。
【0015】
米国特許出願第2004/0022696 A1号は、複数バッチの放射性医薬品、例えばFDG(FDG=フルオロデオキシグルコース)の製造方法を記載する。この方法は製造装置への適当な液体の移送、放射性医薬品を製造するための液体の処理、放射性医薬品のタンクへの送り出し、装置の自動クリーニング、及び必要ならば前の段階の繰り返しからなる諸段階を含む。FDGの複数バッチ式製造のための装置は試薬送り出しシステム、反応容器、ろ過システム及び制御システムを含む。これらの構成部品の組合せは、部品(例えばメンブレンフィルタ)の自動(自己)クリーニング及び自動モニタリングのため、複数バッチの放射性医薬品を最小のオペレータ介入、それゆえに最小の放射線曝露により製造することができる方法を提供する。
【0016】
国際特許出願WO 03/064678 A2号では、標識付け部材を用いて化合物に放射性標識を付けるためのシステムが開示される。標識付け部材は溶媒を送り出すための部材、HPLCポンプ(HPLC=高性能液体クロマトグラフィー)及びHPLCカラムに接続されている。標識付け部材はループと弁を有し、システムを通る溶媒、放射性標識剤及び不活性ガスの異なる流路を設けるために、弁は種々の方向を有する(回転ループ弁)。
【0017】
米国特許第5,932,178号は、合成プロセスが簡素化され、合成時間が短縮されるとともに、合成製品の収量が改善されたFDG合成装置を提案する。この装置は、標識付け反応を行うための従来の標識付け反応容器の代わりに、ホスホニウム塩又はピリジニウム塩をポリスチレン樹脂に結合することで得られるポリマー担持相転移触媒樹脂を充填したカラムを使用し、また、従来の加水分解用の反応容器の代わりに、陽イオン交換樹脂を充填したカラムを使用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これまでに提案された解決策は、特殊な合成経路のための補足的構成を備えた個別の装置を提供するが、こうした提案は様々な合成経路のためにこれらの装置を利用できるようにするという問題を解決するものではない。そこで本発明の課題は、上記の欠点を取り除き、特に実験設備を簡単かつ柔軟に改造し、それによって様々な順序のプロセス段階に利用できるようにする、化学物質を処理するための装置及び方法、このような装置を制御するためのコンピュータプログラム、並びに対応するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は請求項1、16、22及び28に記載の構成を有する本発明により解決される。本発明の好ましい実施形態が従属請求項に記載されている。
【0020】
基本的な化学処理操作を行うための構成部品を含んでなる、実験室環境で化学物質を処理するための本発明の装置は、構成部品が化学物質を処理するためのプロセス段階の所定の順序に従ってモジュールとして組み合わせ可能であることによって、該装置を柔軟に拡張及び改造することができるという特別の利点を有する。さらに、構成部品は互いに整合するモジュール寸法及び/又は互いに整合する接続部を有するようになっている。本明細書で用いる「モジュールとして組み合わせ可能」とは、個々の構成部品を自由に互いに組み合わせ、また自由に位置決めできることを意味する。本発明の好ましい実施形態では、構成部品が積み重ね可能な、好ましくは直方体状の、それぞれ自立するボックスとして形成され、そこではボックスごとに又はモジュールごとに1つの基本的化学処理操作が実現されるようになっている。別の好ましい実施形態によれば、構成部品が整合する接続部材を備え、これによって構成部品を安定的に取外し可能に組み合わせることができる。しかし、構成部品を空間的に互いに切り離して位置決めすることもできる。このような整合する接続部材によって、構成部品は、例えば先行技術で慣用の支壁が不要の、自立する独立型システムに組み立てられる。こうした接続部材は例えば構成部品のハウジングの表面から突出する部材及び対応する凹陥部又は開口部である。代表的な実施形態では、突出する部材は、構成部品の運搬を容易にする取っ手として形成される。その場合システムを組み立てたときに、第1の構成部品の取っ手は第2の構成部品の対応する開口部に収容される。こうして構成部品はモジュール式プラグイン型システムとして差し込んで組み立てることができる。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態では、各構成部品が1つの基本的化学処理操作を遂行できるようになっている。これらは、インテリジェント・バス・システム(intelligent bus system)により自由に互いに連結できる、独立して機能する構成部品である。即ち1つのシステムに組み合わされる個々の構成部品が相互連結される順序は前もって決められておらず、自由に選択できるのである。これは例えば少数のワイヤしか必要でなく、軽量な配線が可能になるという利点がある。好ましくは構成部品は、インテリジェント・バス・システムを介して中央制御ユニット(例えば工業用パソコン)と、また互いと連絡する独自の内部回路を有する。この内部回路は例えば、構成部品の相互位置決め及び管理又はフィードバック信号の処理を可能にする。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態では、構成部品のハウジングの中に少なくとも1個のモータ、電子装置及び/又はセンサ装置が配置されるものとする。さらに本発明の別の好ましい実施形態は、例えばハウジングの外側のコックベンチに弁が取り付けられるものとする。さらに個々の構成部品は標準的な使い捨てホースで接続されることが好都合である。これは、例えば、医薬品の無菌作業に必要な滅菌使い捨て部品の使用が可能になるという利点がある。
【0023】
処理される化学物質は例えば放射性物質、特に医薬品及び/又は診断薬である。処理が化学物質の合成をも含むならば、本発明に基づくシステムを使用するのが特に有利である。
【0024】
適切な放射線遮蔽を確実にするため、放射性化学薬品又は放射性医薬品の合成は多くの場合自動化して行われる。そこで本発明の好ましい実施形態では、特にこのような放射性化学薬品又は放射性医薬品合成に使用できる、遠隔制御モジュール式システムが設けられる。特にこのシステムは合成や他の操作を(不連続的)バッチ法で行うのに適しており、その場合反応物質が初めに供給され、その後追加の物質の供給は中断される。しかし、原則として本発明に基づくシステムで連続操作を行うこともできる。
【0025】
基本的化学処理操作は例えば次のとおりである。
・容器/注射器の輸送
・ろ過
・加熱/冷却
・充填、排出及び/又は計量
・混合
・希釈
・攪拌及び/又は振とう
・抽出及び/又はイオン交換
・クロマトグラフィー、特にHPLC
・生成物の性質(例えば圧力、温度、活性、容積、屈折率、光吸収等)の検出
・濃縮
・煮沸
・すすぎ及びクリーニング、及び/又は
・低圧又は過圧の発生
【0026】
本発明に基づくシステムの別の好ましい実施形態では、次のプロセス段階を行うためのシステムが構成される。即ち
・滅菌ろ過
・滅菌ろ過器の完全性の確認
・ラベル付け
・包装、及び/又は
・充填
【0027】
その場合
・弁モジュール
・容器モジュール
・容器輸送モジュール
・容器振とうモジュール
・カートリッジモジュール(抽出又はクロマトグラフィー又はろ過のための)
・分配モジュール
・反応器モジュール
・加熱器モジュール
・計量器モジュール、例えば注射器モジュール
・HPLCユニット
・冷却トラップモジュール
・真空システム又は過圧システム
・充填モジュール、又は
・分析装置
として構成されたモジュール式構成部品が利用可能であるならば好都合である。
【0028】
本発明に基づくシステムの別の好ましい実施形態では、充填のための構成部品と基本的化学処理操作を行うための構成部品を組み合わせることができるようになっている。
【0029】
本発明に基づくシステムの別の好ましい実施形態では、反応器の冷却が液体窒素を使わない反応器冷却として形成され、その場合とりわけペルチエ効果を利用した純電子式冷却が適用されるようにした。無菌及び放射線防護の条件下で取り扱いが極めて面倒な従来の液体窒素冷却を廃止したことは、特に放射性医薬品への応用にとって大きな利点である。
【0030】
さらに一連のプロセス段階でプロセス段階を入れ替えるために、基本的化学処理操作を行う構成部品を交換することができるように、及び/又は一連のプロセス段階に更なるプロセス段階を補充するために、基本的化学処理操作を行う少なくとも1つの構成部品を追加することにより請求項1に記載のシステムを拡張することができるように、構成部品をモジュールとして組み合わせることが有利である。
【0031】
機器構成の複雑性を一層低減させるために、システムが、接続された構成部品を識別するインテリジェント・バス・システムを有するようにした。その場合、異なる長さをもつことによってのみ相違する標準接続ケーブルを使用することが有利である。
【0032】
このようなインテリジェント・バス・システムを使用すると、構成部品を1つの線形配列で自由に接続することが可能であり、構成部品の配列に応じて、明確に規定された最短接続の配線パターンが得られるという利点がある。その場合接続の手落ちがなくなる。インテリジェント・バス・システムを使用すれば、構成部品のタイプに関係なく、追加の構成部品を挿入するために、任意のどの位置でもワイヤを中断することができる。また少ないワイヤで済み、配線が単純になる。本発明の好ましい実施形態では、構成部品が独自の内部回路を装備する。それによってさらにフィードバック信号の処理が可能になる。
【0033】
機器構成の複雑性の別の低減策は、本発明に基づくシステムを制御するためのコンピュータプログラムに、標準反応を制御する予めフォーマット化したプログラムモジュールを組み込むことである。
【0034】
別の実施形態では、接続部がコード化接続ケーブルとして形成され、制御ソケットバーに接続される。
【0035】
使用する物質に応じてシステムをすばやく改装するために、構成部品の少なくとも一部を使い捨て部材と組み合わせることが好都合であり、それによって面倒なクリーニング段階の必要性を回避することができる。
【0036】
基本的化学処理操作を行う構成部品を使用して実験室領域で化学物質を処理するための本発明に基づく方法は、構成部品が化学物質の処理のためのプロセス段階の所定の順序に従ってモジュールとして組み合わされて、適当に配列されること、また、化学物質の処理が少なくとも部分的にコンピュータプログラムによって制御されることを特徴とする。配列と制御は共通のソフトウエアユーザインターフェースのもとで行われることが好ましい。
【0037】
本発明に基づく方法の好ましい実施形態では、コンピュータプログラムはモジュールとして組み合わされる構成部品を配列するための同一標準的データベースを利用するようになっている。
【0038】
ハード又はソフトウエアに故障がある場合は、スタートしたプロセスの流れを手動的に終わらせることができれば好都合である。そのためにコンピュータプログラムがプロセス流れの手動制御のためのモードを準備するようになっている。
【0039】
本発明に基づくシステムを制御するために、
・システムの構成部品の配列
・ユーザインターフェース、プロセススキーム及び制御シーケンスのプログラミング
・システムの操作
・処理のモニタリング
・データの記憶及び/又は記録、及び/又は
・管理
のために利用できるコンピュータプログラムを使用することが好ましい。
【0040】
データ記憶及び/又は記録が監査証跡及びレポート表現のために利用されるならば特に有利である。それによってプロセスの実行のGMP適合文書化が保証されるからである。このことは特に医薬品の試験バッチ及びルーチン生産にとって決定的な条件である。
【0041】
またコンピュータプログラムが構成部品の制御、操作及び/又は表示のためのプログラムモジュールを包含するならば、好都合である。
【0042】
本発明を広めるために、このコンピュータプログラムが(有料又は無料で、自由にアクセス可能又はパスワード保護のもとで)通信ネットワークのデータにダウンロードして提供されるならば好都合である。こうして提供されるコンピュータプログラムは、請求項22に記載のコンピュータプログラムを電子データネット(例えばインターネット)から、このデータネットに接続したデータ処理装置にダウンロードするという方法により利用可能にすることができる。これとは別に、又はこれに加えて、請求項22に記載のコンピュータプログラム又は請求項22に記載のコンピュータプログラムの一部が記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することができる。
【0043】
ここで説明した、放射性医薬品及び化学薬品の合成及び充填のためのモジュール式システムは、共通のソフトウエアユーザインターフェースのもとで管理される総合的システムである。利用者には、図表記号の使用により直観的に制御することができるソフトウエアがもっぱらロードされる。
【0044】
このシステムの使用はPETトレーサだけに限らない。このほか一般的放射性医薬品分野及び研究部門での使用がある。
【0045】
本発明に基づくモジュール式システムはさらに、選択的自動操作又は特定ユーザ向け操作、格別の使い勝手のよさ及び可変性(多様性)を特徴とする。その場合特に、柔軟性のコンセプト、事後拡張の可能性、図表で理解しやすい統合的ソフトウエアユーザインターフェースの作成、さらにいくつかの技術的特徴、例えば液体窒素フリーの反応器冷却の設置及びバスシステムで自己認識する構成部品、を強調しなければならない。
【0046】
従来知られているシステム及び解決策と比較して、本構想は新しいアプローチから出発する。それは合成モジュール及び場合によっては充填ユニットを含み、共通のソフトウエアユーザインターフェースのもとで管理される、特に放射性医薬品分野で使用するための、統合的システムを内容とする。本発明は柔軟性、拡張可能性、研究及びルーチン操作、1回使用(使い捨て)構成部品及び個別部材に基づくものである。この点で本発明のモジュール式システムは従来提供された装置と相違する。従来の装置は、後で追加のハードウエア構成部品(例えば反応器等)で改造することができず、ソフトウエアに関してはなおのことできない。後続のプロセス段階(例えば充填等)がソフトウエアにより制御可能であることも、ここで紹介した解決策の他に類のない特徴である。
【0047】
従来提供された装置では、液体窒素供給ラインによって冷却プロセスが実現され、続いて電気的に再加熱される。これは迅速な冷却を可能にするが、しかし極めて問題が多いとされる無菌クリーンルーム区域のホットセル内での液体窒素の取り扱いと規則的補充を必要とする。これに対して、本コンセプトは純電気的冷却要素、例えばペルチエ素子を予定し、これはクリーンルーム環境での真のリモート操作を可能にする。本発明に基づく反応器モジュールの好ましい実施形態は、反応器の液体の実際温度を測定するために内部熱電素子を設ける。また反応容器の状態をモニタリングするために、反応器モジュールにカメラを組み込むことが好都合である。反応器モジュールに、又は他のモジュールに、使用する反応物質(遊離体)及び/又は合成される化合物(生成物)の所定の性質を測定するための装置(例えば、放射能測定用の検出器又は紫外線若しくは赤外線分光測定セル)を設けることが同様に好都合である。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では絞り弁技術、とりわけ電動絞り弁が使用される。その場合ローラ技術を使用することが特に好ましい。これによって非常に穏やかなホース負荷が保証されるからである。絞り弁技術の好ましい実施形態では、旋回可能に支承されたローラが所定の旋回角でホース管路に押し付けられ、それによってシステムを可変ホース径に適応させることができる。こうして絞り力の調整、最大絞り動程の制限及び/又は種々のホース径に対して相互交換可能なホースホルダーの使用が可能である。絞り弁は電流の不在下で閉じたり開いたりするように選択できる。
【0049】
本発明に基づくシステムはモジュールの柔軟な拡張及び改造を可能にする。インテリジェント・バス・システムが提供され、これにモジュール式構成部品(例えば反応器、弁等)を接続することができるが、これらはその後システム自体によって識別される。こうして追加又は変更された構成部品の面倒な位置決め又はハードウエア固有のプログラミングの必要性がなくなる。ソフトウエアユーザインターフェースには常に部品配列の実際規模が知られている。
【0050】
柔軟性コンセプトのもう一つの側面は、本システムの応用がPET分野に限定されず、むしろすべての放射性医薬品製造装置に応用できることである。さらに研究施設や大学での使用が加わる。
【0051】
そこで本発明に基づくモジュール式システムはとりわけ取替え自在かつ相互交換可能な構成部品を特徴とする。本発明の特に有利な特徴は、構成部品がモジュールボックス方式のため自由に位置付けることができ、他の支持部材、例えば支持プラットフォームに固定する必要がないことである。モジュール方式はあらゆる部品を包含し、特に例えば弁及び容器ホルダーユニットも組み合わせ自在なモジュール式構成部品をなす。
【0052】
こうして本発明は先行技術をはるかに超えている。このため利用者にとって時間とコストの大幅な節約が可能である。
【0053】
次に図面を参照して本発明の代表的な実施形態について詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
モジュール式システムの一例は、図1〜3に概略的に図示したように、とりわけ下記の個別モジュールからなる。
反応器モジュール1
カートリッジモジュール2(クロマトグラフィー、抽出又はろ過カートリッジ)
実施形態がコックベンチの弁モジュール3
実施形態がフラスコホルダーの容器モジュール4
実施形態が絞り弁の弁モジュール5
実施形態が3方/2方弁の弁モジュール、それぞれ6及び6a
付属/分析装置、この場合HPLC7
冷却トラップモジュール8
真空/加圧システム、この場合弁付き真空ポンプ9
【0055】
図4は、例えば18F-FDG(2-デオキシ-2-フルオロ-D-グルコース)の製造のためのモジュール式合成システムの配置を示す。ここに図示したHPLC 160は、他の合成又はプロセスパラメータの変更の場合にのみ必要なオプション付属装備である。
【0056】
図5は、Tc-99m-MIBIの調製のための、注射器モジュールをベースとするモジュール式システムの配置を示す。個々のモジュールの任意の組み合わせが可能である。容器輸送モジュール180は容器の輸送と保持のために利用される。このモジュールは様々な容器のための3〜5個のホルダーを装備することができる。1つの直線軸が個別モジュールの位置決めに利用される。さらに容器輸送モジュールには、放射線量の検査のための検出器が設けられる。注射器モジュール181(この場合、二連注射器モジュールとして形成されている)によって、一方の容器から液体が取り出され、他方の容器に給入される。計量される容量は自由に選択することができる。二連注射器モジュールは2個の注射器を受けるためのホルダーを備えている。アダプタがそれぞれの注射器のタイプに対して用意される。この二連注射器モジュールは4つの直線軸を有するから、注射器のピストンと注射器を個別に垂直に移動することができる。
【0057】
容器振とうモジュール182は溶液の混合のための回転可能なグリッパを有する。反応バイアルを把持し、可変角(180°以下)で可変速度により回転し、再び容器輸送軸におろすことができる。加熱モジュール183は溶液を100℃まで加熱するための組込み型加熱装置を有する。
【0058】
図6に68Ga-DOTAコンジュゲートペプチドの製造のためのモジュール式合成システムの配置を示す。このシステムは容器の保持のためのモジュール190、3個の種々の弁モジュール(コックベンチ191、電磁弁192、単独コック193)、反応器モジュール194及びホースポンプからなる。操作は実施例5で説明する。
【0059】
図7は、図1に示したハードウエア配列のユーザインターフェースの一例を示す。
【0060】
ここで、放射性医薬品(又は放射性化学薬品)分野で使用するための、合成モジュールと充填ユニットからなるモジュール式システムの一例を説明しよう。システムは共通のソフトウエアユーザインターフェースのもとで管理される。システムは下記の重要な側面を有する。
【0061】
柔軟性:
・プロセスに関係した基本操作は、利用者が自由に配置可能な空間的配列を有する個々のモジュール及び/又は構成部品で実現される。課題に応じて多種多様な配列を実現することができる。例えば更なる合成段階のために別の反応器モジュール1を追加することができる。代表的な実施形態では、0.5〜20mlの反応スペースを有する反応器を利用することができる。
・システムは、(特にルーチン生産に適した)滅菌使い捨て部品を利用した無菌操作と、再使用可能な構成部品を利用した柔軟な研究又は反復操作のどちらも行うことができる。
・構成部品(例えば、反応器、弁等)の拡張及び改造、さらには構成部品の再編成も可能である。
・基礎をなすのは、自由に設計できる、図式で方向付けしたユーザインターフェースである。
【0062】
本発明の基本的な技術的特徴は次のとおりである:
・プロセスに関係した構成部品又はモジュールは、互いに接して又は互いの上に重なり合って、システムに組み立てることができるように、標準的なモジュール寸法を有する。
・反応器の冷却のために従来使用された液体窒素が制御可能な電気的冷却素子に置き換えられる。こうして温度調整がより正確になり、ホットセル内で液体窒素を扱うことが不要になる。
・インテリジェント・バス・システムがあり、これに構成部品(例えば、反応器、弁等)が接続され、その後該システム自体によって自動的に識別される。こうして追加又は変更された構成部品の面倒な位置決め及びハードウエア固有のプログラミングが回避される。実際の機器配列はソフトウエアユーザインターフェースに常に知られている。
【0063】
モジュール又は構成部品はとりわけ次のものを含む:
・弁モジュール:三/二方電磁弁6、絞り技術(絞り弁5)又はサーボモータ駆動式弁及び/又はサーボモータ駆動式コック又はコックベンチ3
・容器モジュール4:例えば出発物質の小型フラスコの配置/保持のため
・外部センサと装置を接続するためのインターフェースを備えた活動型実施形態の容器モジュール
・分配モジュール:ホース管路の分配/合流のため、一部で弁と組み合わされ、又は多方向弁により実現される
・反応器モジュール1:反応容器、加熱/冷却、攪拌装置、放射能測定、監視カメラを含む
・カートリッジモジュール2:ろ過、クロマトグラフィー又は抽出用カートリッジ、分離カラムの配置/保持のため、一部で弁又は小型フラスコと組み合わされる
・冷却トラップモジュール8:溶媒及び放射能が真空ポンプ9に入り込まないことを保証するため
・真空/加圧システム:管路への溶液の輸送は真空又は過圧によって実現される
・計量器モジュール10:直線駆動により移動させられる1個又は複数個の注射器、又はホースポンプもしくはピストンポンプ等からなり、流体容量の計量のため
・付属品(分析装置、例えばHPLC 7等、又は充填ステーションへの移行・・・)
【0064】
構成部品は下記の共通の特徴を有する:
・柔軟な配列のためのモジュールの統一的モジュール寸法、例えばモジュール寸法の積み重ね可能なボックスとして
・インテリジェント・バス・システムにより接続可能かつ制御可能
・消毒可能、無菌操作に適合
・場合により、使い捨て構成部品を基本モジュールに差し込むことができる。
【0065】
ソフトウエアユーザインターフェース:
ソフトウエアは下記のために利用される:
・合成及び充填システムの構成部品の配列
・ユーザインターフェース/プロセススキーム及び制御フローのプログラミング
・操作及びモニタリング
・データ記憶/記録、及び
・管理
【0066】
ユーザインターフェースは次の一般的要求を満たす:
・自由に図式向きにプログラム可能
・拡張可能
・標準反応(例えばF18-FDG)を予めフォーマット化した形で提供可能
・新しい反応がアップデートとして顧客に提供される。
【0067】
ソフトウエアは次の具体的特徴を有する:
・直観的図式的プログラミング
・ソフトウエアは簡単で分かりやすく、技術パッケージとして目標群に合わせて作成される。
・ソフトウエアは機器配列、プログラミング及び操作のために必要な構成要素を含む。
・ハードウエア配列のイメージとしてシステムのソフトウエアを作成するための同一標準的データベース(図7に併せて図1又は2を参照);ハードウエアの拡張が可能である。
・システムのユーザインターフェース/プロセススキームのプログラミングは機能ユニット(機能ブロック)によって行われ、制御フローのプログラミングは機能ユニット(機能ブロック)により又はテキスト(表又はSCRIPT言語)として行うことができる。
・構成部品(例えば、弁、ポンプ、反応器、ろ過器、攪拌装置、分析装置等)の制御及び操作/表示のためのユニットが存在する。システムのこれら構成部品のそれぞれのために、制御機能を持つユニット及び表示/操作機能を持つユニットがそれぞれある。
・表示ユニットは適当な動的視覚表示の性質を有する。
・制御フローのプログラミングは適当な記述言語(ステップ連鎖、プログラミング・フローチャート又はSCRIPT言語)で行われる。
・マクロレコーダが制御フローの個々の部分(例えば排出、クリーニング等のための)を発生させる。その場合ユニット/構成部品を簡単にクリックすることによってダイアログウインドウが開かれ、プロセスの流れのために必要なパラメータを呼び出す。確認の後に、プロセス段階が一連のプログラムステップに図式記号として直接挿入される。マクロは再使用可能であり、制御フローのプログラミングの際に反復使用することができ、その結果制御プログラムはユーザに分かるように広げられたままである。選択に応じてマクロ又は実行可能なプログラムを作成することができる。作成したプログラムを利用する場合、プログラムしたシーケンスを直ちに実行できるという利点をもたらす。
・ハードウエア又はソフトウエアに故障があるときは、スタートしたプロセス流れを手動モードで確実に終わらせることができる。
・故障、エラー又はその他の重要な事象はメッセージウインドウに表示される。
・ソフトウエアは電子データ管理及び電子署名の利用を規制するガイドラインU.S. FDA 21 CFR Part IIに適合する。
・プロセスの変更及び/又は構成部品の追加/除去の場合に、ソフトウエアはシステムの簡単な再構成並びに制御フロー及びユーザインターフェースの再プログラミングを可能にする。
・アプリケーションの変更(パラメータ及び/又はプログラムの変更に関する)はすべて記憶される(リトレーサビリティー)。
【0068】
充填モジュール:
充填モジュールの特徴は次のとおりである:
・合成モジュールと同じソフトウエアを用いて使用することができ、そのため2つのモジュールは完全に適合する。
・市販の部分解決策の組み入れが可能である。
・適当なアダプタを使用することによって、充填ステーションで様々な形状寸法のバイアルや注射器に充填することができる。
・無菌操作への適性
【0069】
次に放射性医薬品分野での使用の3つの代表的な応用例に基づき、本発明を例示しよう。
【実施例】
【0070】
実施例1: 18F-FDG(2-デオキシ-2-フルオロ-D-グルコース)の製造のためのモジュール式合成システム
PETトレーサ18F-FDGを合成するためのシステムは、例えば容器又はカートリッジを保持するための4個のモジュール111、112、113、114、6個の弁モジュール121、122、123、124、125、126(各々3個の弁がある)、反応器モジュール130及び真空発生用モジュール140(冷却トラップ150及びフィルタを備えた真空ポンプ)から組み立てることができる。媒体の輸送は無菌の使い捨て部品で行うか、又は反復使用のための固定装置を実現することができる。容器又はカートリッジを保持する4個のモジュール111、112、113、114は、各々1個の弁モジュール121、122、123、124、125又は126に接続され、媒体の流れを制御する1つの機能ユニットを形成する。2個の容器と1個のカートリッジを有する第1の機能ユニット111、121はサイクロトロンからくる18フッ化物を水から分離して、反応器内の非プロトン性溶媒中に移す。第2の機能ユニット112、122は、必要な反応物質及び溶媒を反応器に給入するための3個の容器を含む。反応器モジュール130では、3つすべての反応段階、例えば共沸蒸留、求核置換及び保護基の分離が行われる。生成物の精製のため、粗生成物を弁モジュール125からHPLC分離プロセスを経て、第3の機能ユニット113、123に選択的に移すことができる。第3の機能ユニット113、123はHPLCユニット160からくる溶液を受け取るための容器、生成物をHPLC溶媒から分離するためのカートリッジ、及び最終生成物用の容器を含む。HPLC分離プロセスはルーチンな製造では必要でなく、ここではただ合成システムの全容を示すために挙げてある。第4の機能ユニット114、124は精製、カートリッジからの溶出及び生成物の希釈のために必要な溶液を給入するための3個の容器を含む。これらの溶液の輸送は真空モジュール140によりシステムの所定の位置に過圧又は低圧を働かせることによって行われ、弁モジュール126によって制御される。すべての反応段階と反応残留物の精製及び分離は完全自動で行われ、直ちに充填可能な生成物が得られる。
【0071】
実施例2: Zevalin(登録商標)の調製のためのモジュール式合成システム
Zevalin(登録商標)キットからZevalinを調製するためのシステムは、容器を保持するための1個のモジュール、2個の弁モジュール(コックベンチ)、1個の計量器モジュール、1個の反応器モジュール、及び真空発生用の1個のモジュール(フィルタを備えた真空ポンプ)を含む。媒体を輸送するために、個々の部品の接続はホースによって行われる。ホースはクイック継手によって針に接続され、針が隔膜付きの容器の蓋を突き刺すか、又は直接に例えばコック、弁に接続される。これらはすべて無菌の使い捨て部品であり、反応後に廃棄される。反応器モジュールで放射能を測定することにより、反応容器に放射性溶液の所定量を給入する。対応する量の非放射性反応物質が容器から弁モジュール及び計量器モジュールを経て反応容器に配給される。給入の必要量、順序及び時間的経過は制御コンピュータにより上記のソフトウエアで計算され、制御される。溶液の輸送と混合は真空発生モジュールによりシステムの所定の位置で過圧又は低圧を働かせることによって行われ、弁モジュールにより制御される。
【0072】
実施例3: Tc-99m-MIBIの調製のためのモジュール式合成システム
Tc-99m-MIBIキットからTc-99m-MIBIを調製するためのシステムは、容器を保持するためのモジュール、弁モジュール(コックベンチ)、反応器モジュール、及び真空発生モジュール(フィルタを備えた真空ポンプ)を含む。媒体を輸送するために、個々の部品の接続はホースによって行われる。ホースはクイック継手により針に接続され、針が隔膜付きの容器の蓋を突き刺すか、又は直接に例えばコック、弁に接続される。これらはすべて無菌の使い捨て部品であり、反応後に廃棄される。キットのTc-99m-MIBI小瓶を反応器ブロックに挿入し、放射性溶液を給入する。溶液の輸送と混合は真空発生モジュールにより反応容器に過圧又は低圧を働かせることによって行われ、弁モジュールにより制御される。合成を行うために反応器を加熱し、反応終了後に再び室温に冷却する。温度の経過は制御コンピュータにより上記のソフトウエアで制御される。
【0073】
実施例4: Tc-99m-MIBIの調製のための注射器モジュールに基づくモジュール式システム
Tc-99m-MIBIキットからTc-99m-MIBIを調製するためのシステムは、容器の保持、輸送及び放射能測定のためのモジュール、注射器モジュール、容器振とうモジュール、及び加熱モジュールを含む。まず、必要な注射器を注射器モジュールに挿入して固定する。キットからの反応バイアルと放射能を含むバイアルを容器輸送モジュールの所定のホルダーに配置する。放射能バイアルが注射器モジュールの左側の注射器の下に移動し、放射能バイアルから放射能が吸引される。次に反応バイアルが左側の注射器の前方に移動し、反応バイアルに放射能が添加される。検出器により投与量が監視される。続いて反応バイアルが容器振とうモジュールに移動し、そこでグリッパにより取り上げられ、振とうされる。振とう後に加熱モジュールの加熱装置がまだ把持されている容器の下に移動し、反応バイアルが加熱装置の中におろされる。加熱後に反応バイアルは容器輸送モジュールのホルダーに逆送され、冷却後に取り出し位置へ送られる。
【0074】
実施例5: 68Ga-DOTAコンジュゲートペプチドの製造のためのモジュール式合成システム
68Ga-DOTAコンジュゲートペプチドを製造するためのシステムは、容器保持モジュール190、3個の異なる弁モジュール(コックベンチ191、電磁弁192、単独コック193)、反応器モジュール194及びホースポンプを含む。ホースポンプは発生装置から68ガリウム溶液を弁モジュール(電磁弁192)に給送する。この弁モジュールは反応器194への68ガリウム溶液の供給を制御する。反応器194では加熱することによって68ガリウム溶液と予め仕込んだ反応物質との反応が行われ、生成物を生じる。粗生成物は弁モジュール(電磁弁192)を経て弁モジュール(単独コック193)へ送られる。そこで吸着カートリッジ195と滅菌ろ過装置196により生成物の精製と滅菌ろ過が行われる。これらの部品と下記のすべてのホース、コック及び継手は無菌使い捨て部品であり、反応後に廃棄される。最終生成物は容器保持モジュール上に配置された無菌の配給バイアル197に移される。媒体の輸送(68ガリウム溶液を除く)は外部で加えられる圧力によって行われる。システムの加圧状態の制御は弁モジュール(コックベンチ191)によって行われる。システムは媒体と接触するすべての恒久部品のための滅菌ろ過及び完全自動クリーニングの完全性を検査するための試験を含む。
【0075】
本発明の実施形態は上記の好ましい実施例に限定されない。むしろ基本的に別様な構成でも本発明に基づくシステム及び本発明に基づく方法を利用する幾つかの変型が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】モジュール式合成システムの配置、即ち個別モジュール及び組み立てた機器構成の前面図を示す。
【図2】モジュール式合成システムの配置の斜視図を示す。
【図3】モジュール式合成システムの配置の分解図を示す。
【図4】18F-FDG(2-デオキシ-2-フルオロ-D-グルコース)の製造のためのモジュール式合成システムの配置の概略図を示す。
【図5】注射器モジュールをベースとするTc-99m-MIBIの調製のためのモジュール式システムの配置の概略図を示す。
【図6】68Ga-DOTAコンジュゲートぺプチドの製造のためのモジュール式合成システムの配置の概略図を示す。
【図7】図1に示したハードウエア配列を再現したユーザインターフェースの一例の概略図を示す。
【符号の説明】
【0077】
1 反応器モジュール
2 カートリッジモジュール
3 実施形態がコックベンチである弁モジュール
3a 実施形態が3個の個別3方弁である弁モジュール
4 容器モジュール
5 実施形態が絞り弁である弁モジュール
6 実施形態が3方/2方弁である弁モジュール
7 付属/分析装置、この場合はHPLC
8 冷却トラップモジュール
9 真空/加圧システム、この場合は弁を備えた真空ポンプ
10 計量器モジュール(注射器モジュール)
111 容器及びカートリッジ保持モジュール
112 容器及びカートリッジ保持モジュール
113 容器及びカートリッジ保持モジュール
114 容器及びカートリッジ保持モジュール
121 実施形態が2方電磁弁である弁モジュール
122 実施形態が2方電磁弁である弁モジュール
123 実施形態が2方電磁弁である弁モジュール
124 実施形態が絞り弁である弁モジュール
125 実施形態がコックベンチである弁モジュール
126 実施形態がコックベンチである弁モジュール
130 反応器モジュール
140 真空モジュール、真空発生モジュール
150 冷却トラップ
160 HPLCユニット
180 放射能検出器を含む容器輸送モジュール
181 注射器モジュール(この場合は2連注射器モジュールとして構成)
182 容器振とうモジュール
183 加熱モジュール
190 保持モジュール
191 実施形態がコックベンチである弁モジュール
192 実施形態が3方/2方弁である弁モジュール(さらに容器ホルダーが脇に取り付けられる)
193 実施形態が3個の個別3方弁である弁モジュール(さらに容器ホルダーが脇に取り付けられる)
194 反応器モジュール
195 吸着カートリッジ
196 滅菌ろ過器
197 無菌配給バイアル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的な化学処理操作を行うための構成部品を含む、実験室環境で化学物質を処理するためのシステムであって、化学物質を処理するためのプロセス段階の所定の順序に従って構成部品をモジュールとして組み合わせることができ、構成部品が互いに整合するモジュール寸法を有することを特徴とする、上記システム。
【請求項2】
構成部品が積み重ね可能な自立するボックスとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
化学物質が放射性物質であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
化学物質が医薬品又は診断薬であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項5】
処理が化学物質の合成を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項6】
充填用の構成部品が基本的化学処理操作を行うための構成部品と組み合わせ可能であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項7】
基本的化学処理操作が
−容器/注射器の輸送
−ろ過
−加熱/冷却
−充填、排出及び/又は計量
−混合
−希釈
−攪拌及び/又は振とう
−抽出及び/又はイオン交換
−クロマトグラフィー、特にHPLC
−生成物の性質の検出
−濃縮
−煮沸
−すすぎ及びクリーニング、及び/又は
−低圧又は過圧の発生
であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項8】
システムが次のプロセス段階
−滅菌ろ過
−滅菌ろ過器の完全性の確認
−ラベル付け
−包装、及び/又は
−充填
を行うために構成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項9】
構成部品が
−弁モジュール
−容器モジュール
−容器輸送モジュール
−容器振とうモジュール
−カートリッジモジュール
−分配モジュール
−反応器モジュール
−加熱器モジュール
−計量器モジュール、例えば注射器モジュール
−HPLCユニット
−冷却トラップモジュール
−真空システム又は過圧システム
−充填モジュール、又は
−分析装置
として構成されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項10】
構成部品がモジュールとして組み合わせ可能であり、そのため、一連のプロセス段階においてプロセス段階を入れ替えるために、基本的化学処理操作を行う構成部品を交換することができ、及び/又は一連のプロセス段階に更なるプロセス段階を補充するために、基本的化学処理操作を行う少なくとも1つの構成部品を追加することによって請求項1に記載のシステムを拡張することができることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項11】
構成部品がインテリジェント・バス・システムにより線形配列に自由に接続されることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
任意のタイプの構成部品をラインの任意の位置でシステムに組み込むことができることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
反応器の冷却が液体窒素を用いない反応器冷却として構成されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項14】
インテリジェント・バス・システムが接続された構成部品を自動的に認識することを特徴とする、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項15】
構成部品の少なくとも一部を使い捨て部材と組み合わせることができることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項16】
基本的化学処理操作を行うための構成部品を使用して、実験室環境で化学物質を処理するための方法であって、互いに整合するモジュール寸法を有する構成部品が使用され、構成部品が化学物質を処理するためのプロセス段階の所定の順序に従ってモジュールとして組み合わされて配列され、化学物質の処理がコンピュータプログラムによって少なくとも部分的に制御されることを特徴とする、上記方法。
【請求項17】
配列と制御が共通のソフトウエアユーザインターフェースのもとで行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
構成部品が、滅菌した使い捨て部品を用いることにより無菌操作で使用される、及び/又は再使用可能な部材を使用することにより柔軟な多重操作で使用されることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
コンピュータプログラムが、モジュールとして組み合わされる構成部品を配列するための同一標準のデータベースを利用することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
コンピュータプログラムがプロセスの流れの手動制御のためのモードを提供することを特徴とする、請求項16〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
構成部品が充填モジュールと組み合わされ、各種バイアル及び/又は注射器の充填がアダプタを使用することにより行われることを特徴とする、請求項16〜20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか1つに記載のシステムを制御するためのコンピュータプログラム。
【請求項23】
コンピュータプログラムが
−システムの構成部品の配列
−ユーザインターフェース、プロセススキーム及び制御シーケンスのプログラミング
−システムの操作
−処理のモニタリング
−データの記憶及び/又は記録、及び/又は
−管理
のために利用されることを特徴とする、請求項22に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
コンピュータプログラムが構成部品の制御、操作及び/又は表示のためのプログラムモジュールを含むことを特徴とする、請求項22又は23に記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
標準反応を制御する、あらかじめフォーマット化されたプログラムモジュールを、コンピュータプログラムに組み込むことができることを特徴とする、請求項22〜24のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
コンピュータプログラムが図形プログラム可能であることを特徴とする、請求項22〜25のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
コンピュータプログラムが少なくとも1個のマクロレコーダを含むことを特徴とする、請求項22〜26のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
請求項22に記載のコンピュータプログラム又は請求項22に記載のコンピュータプログラムの一部が記憶された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項29】
請求項22に記載のコンピュータプログラムを、インターネットのような電子データネットから、該データネットに接続されたデータ処理装置にダウンロードする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−501138(P2009−501138A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516273(P2008−516273)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062850
【国際公開番号】WO2006/134035
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(599149005)エッケルト ウント ツィーグラー ユーロトープ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】