説明

化学組成物

農薬活性物質、特に低使用量活性物質と、粒状塩基性無機塩を含有する水和性顆粒剤組成物(但し、該組成物の1%水溶液は少なくとも8.0のpHを有する)であって、自由流動性粉末の形状の予備混合物を、ペーストを形成させずに押出すことによって調製される水和性顆粒剤組成物は、活性物質の改良された生体利用性を提供する。本発明は、混合活性物質及び低濃度のスルホンアミド活性物質を有する組成物から活性物質の送達を向上させるのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な農薬組成物及びその使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、農薬活性物質と塩基性無機塩とを含有する組成物であって活性化合物を処理すべき基質(substrate)に効率的に送達する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物活性化合物を含有する組成物は、典型的には活性物質を処理すべき基質、例えば作物に送達させることを必要とする。このような送達は、水性環境において、例えば、活性物質が製剤される組成物を水に分散し、場合により溶解し、得られる溶液又は分散物を基質に施用することによって生じる場合が多い。活性物質の送達において、前記組成物は、典型的には水性媒体に分散し、且つ溶解する場合には溶解し始め、従って分散及び溶解の速度及び程度が、処理すべき基質への活性物質の完全な送達に影響を及ぼし得る。活性物質はまた、固体の状態で基質に又はその近くに施用され、次いで水溶液と混合し得る。従って、固体農薬組成物は、処理すべき植物又は生育場所に施用され、その場で農薬を溶解及び/又は分散させるために水がこの場合に農薬に加えられる。
【0003】
組成物の溶解又は分散が不完全である場合には、組成物中の活性物質の全量が、その標的基質に送達され得ない。従って、送達されるべき活性物質の量は、意図する量よりも少ないものであり得且つ生物学的に利用できる方法で基質に到達する活性物質の実際の量について不確かさを招き得る。従って、ある一定の効果を達成するためにより多い量の使用が必要であり得るが、送達される実際の量の不確かさが残り、製品使用が不十分であり得、悪影響を及ぼし得、且つより大きい費用を要する。活性物質は、典型的には組成物中で最も高価な成分である。また、所定の標的基質に到達する用量の不確かさは、残りの送達されなかった活性物質をその施用の近くに残し得、従って環境被害又は望ましくない局在濃度を招く可能性がある。
【0004】
いったん製剤されると、農薬組成物は、製品を保存し、内容物まで分解することなく分配することができるように合理的な時間にわたって適当な化学的及び物理的安定性を適切に保持するべきである。
【0005】
国際公開第WO01/13721号パンフレットには、組成物の50重量%未満の量で存在する低使用量農薬活性物質と、分散剤、適当には非イオン性又は陰イオン性界面活性剤とを含有する水分散性農薬組成物が開示されている。国際公開第WO01/13721号パンフレットの組成物は、従来の公知組成物と比べて良好な送達特性を示し、適切な安定性を提供する。
【0006】
しかし、前述の不都合を軽減するか又は避けるために製品の安定性を損なうことなく活性物質のさらに改良された送達、従って生体利用性を提供することは、特に組成物又は活性物質が水性媒体に十分に溶解又は分散しない場合には、依然として望ましい。製品の諸成分の他に、諸成分を組み合わせるプロセスは、活性物質の送達に顕著な影響を及ぼし得る。
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、今般、押出し法によって製造される農薬組成物、特に水和性顆粒剤の改良された送達特性が、溶解時に組成物が塩基性溶液を提供するように塩基性無機塩を農薬活性物質と組み合わせて含有させることによって及び諸成分を押出して顆粒を形成する前にペーストの形成を回避することによって確保され得ることを見出した。本発明者らはまた、このような顆粒が許容し得る安定性を示すことを見出した。本発明者らはさらにまた、改良された送達が低濃度の農薬活性物質又は活性物質の組み合わせを含有する組成物について認められ且つ従来知られているよりも高い割合の活性物質が溶解後短時間で送達し得ることを見出した。
【0008】
従って、発明の第一の要旨によれば、ペーストを形成することなく、農薬活性物質と、塩基性無機塩と、場合によっては分散剤とを含有する自由流動性粉末の形の予備混合物を形成し(但し、該予備混合物の成分の少なくとも一つは液体である)、該予備混合物を押出して顆粒を形成し、場合によっては顆粒を乾燥することからなる、農薬活性物質と、塩基性無機炭酸塩と、場合によっては分散剤とを含有してなる粒状組成物(但し、該組成物の1%水溶液はCIPAC試験MT75.3に供した場合に少なくとも8.0のpHを有する)の製造方法が提供される。
【0009】
本発明は、水和性顆粒剤組成物中の農薬活性物質の送達を高めるのに特に役立つ。
【0010】
本発明は、第二の要旨において、農薬活性物質を含有する組成物を、該記組成物の1%水溶液がCIPAC試験MT75.3に供した場合に少なくとも8.0のpHを有するように塩基性無機塩を用いて製剤し、農薬活性物質と前記塩と場合によっては分散剤とを含有する予備混合物を押出すことによって前記組成物を製造することからなる(但し、押出す前にはペーストは形成されないものとする)水性媒体中で農薬活性物質の溶解の速度及び程度を増大させる方法を提供する。
【0011】
本発明の第二の要旨の組成物は、ペーストを形成することなく農薬活性物質と、塩基性無機塩と、場合によっては分散剤とを含有する自由流動性粉末の形の予備混合物を形成し(但し、該予備混合物の成分の少なくとも一つは液体である)、該予備混合物を押出して顆粒を形成し、場合によっては顆粒を乾燥することからなる方法によって製造することが適当である。
【0012】
本発明は、第三の要旨において、水溶液と混合されると溶解する組成物中の活性物質の割合を高め、それによって処理すべき植物又は生育場所への活性物質の送達を高めるための農薬組成物における塩基性無機塩の使用であって、前記農薬活性物質が前記の塩基性無機塩とを含有してなり且つ押出し法によって押出す前にペーストを形成することなく製造されることが適当であるものである農薬組成物における塩基性無機塩の使用を提供する。
【0013】
本発明の第二の要旨に記載の組成物の溶解の速度及び程度の増大又は本発明の第三の要旨に記載の活性物質の溶解性のレベルは、比較組成物が無機塩基性塩の代わりに農薬製剤に典型的に使用される不活性充填剤、例えばデンプン、ラクトース、陶土及びカオリンを含有し且つ前記充填剤が比較組成物の1%水溶液がCIPAC試験MT75.3に供した場合に8よりも低いpHを有するようなものであることを条件とすること以外は、上記と同じ成分を本発明の組成物と同じ濃度で有し且つ同じ方法で製造される比較組成物の同じ条件下での溶解の速度及び程度と比較されるべきである。
【0014】
塩基性無機塩を組成物に該組成物の1%溶液が、少なくとも8、好ましくは少なくとも8.5、特別には少なくとも9のpHを提供するように配合することによって及び押出す前にペーストの形成を回避することによって、活性物質の水溶液中の溶解の速度及び程度を高め、そのようにして活性物質の優れた生体利用性を提供し得る。
【0015】
本発明は、特に使用条件下で水に不十分な溶解性又は分散性を示す場合が頻繁であり得る低使用量農薬活性物質、例えばベンスルフロン・メチルに適用できる。本明細書で使用するように、“低使用量”という用語は、典型的には100g/ha未満の量で施用される農薬活性物質を表し、また“高使用量”という用語は、典型的には1000g/haを超える量で施用される農薬活性物質を表す。
【0016】
適当な低使用量農薬活性物質としては、アバメクチン、アゾキシストロビン、ベンスルフロン・メチル、カルフェントラゾン・エチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、クロジナホップ、クロピラリド、λ−シハロトリン、デルタメトリン、ジフルフェニカン、エマメクチン安息香酸、フィブロニル、フルルタモン(flurtamone)、イマザメタベンズ・メチル、イマザピル、イマゼタピル、イマダクロプリド、メトスルフロン・メチル、ミルベクチン、ニコスルフロン、プリミスルフロン・メチル、リムスルフロン、スルホメツロン・メチル、チフェンスルフロン・メチル、トリベヌロン・メチル、及びトリフルスルフロン・メチルが挙げられる。低使用量活性物質は、スルホニルウレア、例えばベンスルフロン・メチル及びクロルスルフロンからなることが好ましい。
【0017】
農薬活性物質の量は、使用すべき具体的化合物及び意図される施用に従って適切に選択される。低使用量活性物質の場合には、濃厚組成物は、例えば少なくとも60g/haの高施用量に使用し得、該組成物は適当には少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%の活性物質、特別には50〜70%の活性物質を含有する。より低い施用量、例えば50g/ha未満の施用量が必要とされる場合には、該組成物は適当には少なくとも10%未満の活性物質、好ましくは7%未満の活性物質、特別には1〜7%の活性物質を含有する。前記組成物は、活性物質を、液状担体、例えば水と混合の際に植物又は処理すべき場所の処理において有益な効果を提供する活性物質の濃度を提供する濃度で含有する。
【0018】
本発明に従って製造された組成物は、水性環境に迅速に溶解して、同じ量の活性物質を有するが塩基性無機塩の代わりに不活性充填剤を有する組成物よりも溶液中に高い割合で有する活性物質の溶液を形成する。この特性は、処理すべき植物又は場所への活性物質の送達を向上させることによって活性物質の効果を高める。この高められた生体利用性は、反応剤の効果がより少ない全体量の所望される活性物質を使用して取得し得ることを意味する。農薬の場合には、これは所定の効果を達成するためにより低い使用量によって環境上の利点を提供する。
【0019】
本発明によって提供される実用的な利点は、より少ない量の活性物質を、高い割合で溶解し、さらに所定量の活性物質の送達を提供するように組成物中に含有させ得ることである。また、活性物質の所定の送達量を達成するために慣用され得るよりも少ない量の活性物質を組成物に用いて、活性物質の幾つかが液状担体に溶解しないというおそれが軽減される。従って、水性環境への不十分な溶解により活性物質の高い局在濃度の危険を減らし得る。おそらくは作物被害をもたらす、高い局在濃度の活性物質の作物への浸透、特別には植物の根への浸透を低減し得る。
【0020】
別の利点は、少ない量の有効成分が、多量の活性物質を用いる慣用の組成物に比べて組成物の製剤化において高められた適応性を提供することである。従って、製剤(formulator)は、最適効果又は諸特性のバランスを提供するために組成物中に所望の第二の有効成分又はその他の物質を含有し得る。
【0021】
塩基性無機塩は、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩であることが適当である。前記の塩の陰イオンは、塩が選択された活性物質と共に製剤されて生物活性組成物を提供する場合に、該組成物の1%水溶液がCIPAC試験MT75.3に従って試験された場合には少なくとも8のpHを有することを条件として任意の陰イオンであり得る。好ましい態様においては、塩基性無機塩は、アルカリ金属の炭酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、リン酸水素塩、トリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ポリリン酸塩、トリポリリン酸塩及びピロリン酸塩からなる。炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムが特に好ましい。塩基性無機塩は、所望の粒度、例えば、所望ならば1〜20μに微粉砕されていてもよく及び組成物に改善された溶解性を適切に付与し得る。
【0022】
塩基性無機塩は少なくとも1%で存在させることが適当であり、好ましくは少なくとも3%で存在させることが望ましく、前記塩は40%を超えない、好ましくは30%を越えない量で存在させる。
【0023】
組成物における無水塩の使用は優れた溶解性を提供するが、組成物の化学的又は物理的安定性において許容し得ない低下を招かないことが知見された。適当には、本発明は、無水塩基性無機塩、好ましくは無水ナトリウム塩、例えば無水炭酸ナトリウムを含有する。塩基性無機塩は、水を含有していないか又は水が存在する場合には2重量%を超えない場合に無水であるとみなされるであろう。
【0024】
活性農薬と塩基性無機塩との特に好ましい組み合わせの例としては、ベンスルフロン・メチルと炭酸ナトリウムとの組み合わせ及びクロルスルフロンと炭酸ナトリウムとの組み合わせが挙げられる。炭酸ナトリウムは無水であることが適当である。
【0025】
10%未満の活性物質を含有する公知の組成物については、5℃で15分後に溶解される活性物質の量は、組成物中の活性物質の量の%として、典型的には65%未満又は50%未満でさえある。
【0026】
適当には、活性物質を組成物の重量で最大で10%の量で含有する本発明に従って製造される組成物については、組成物中の少なくとも70%、望ましくは80%及び好ましくは少なくとも90%の活性物質が5℃で15分後に水に溶解する。好ましくは、少なくとも60%又はさらに適当には少なくとも70%の活性物質が、5分後に溶解する。最適には、本発明に従って製造される組成物について5℃で15分後に溶解する活性物質の割合は、比較組成物に溶解した活性物質の割合よりも少なくとも30%及び望ましくは少なくとも45%多い。
【0027】
公知の農薬組成物において、5℃で15分後に溶解する活性物質の量は、組成物中の活性物質の%として、典型的には活性物質を少なくとも50%含有する組成物について20%未満又は15%未満でさえある。適当には、活性物質を10%よりも多く、好ましくは50%よりも多く含有する組成物について、組成物中の活性物質の適当には少なくとも25%、望ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも75%が5℃で15分後に溶解する。好ましくは少なくとも40%が5分後に溶解する。最適には、本発明に従って製造された組成物について5℃で15分後に溶解する活性物質の割合は、比較組成物に溶解する割合よりも少なくとも100%、望ましくは少なくとも200%多い。
【0028】
組成物の溶解は、“溶解度データ”という見出しのもとに実施例に挙げた方法で試験し得る。
【0029】
好ましくは、組成物中の全農薬活性物質と塩基性無機塩との重量比は、10:1以下、望ましくは6:1以下である。好ましくは、組成物中の全農薬活性物質と塩基性無機塩との重量比は、少なくとも1:3、望ましくは少なくとも1:1である。好ましい態様においては、前記の比は1〜12:2、さらに好ましくは1〜6:1である。最適には、活性物質の全体量は、10%未満の全活性物質を有する組成物については、塩基性無機塩の量よりも少なく、最も好ましくは4〜1:1である。10%を越える全活性物質を有する組成物については、活性物質の全体量と塩基性無機塩とは4〜2:1であることが望ましい。例として、5%の全活性物質を有する組成物は、最適には、無機塩基性塩を約1〜5%の量で有し、60%の全活性物質量を有する組成物は、最適には組成物の重量で15〜30%の量で存在する無機塩基性塩を有する。
【0030】
本発明に従って製造される組成物は、少ない量で使用される個々の成分及び広い範囲の害虫及び病気に対して前記の活性物質の慣用の組成物よりも小さい植物毒性をもたらす。
【0031】
好ましい態様において、前記組成物は第二の活性物質を含有する。好ましい態様において、第二の活性物質は高使用量活性物質である。適当な高使用量活性物質としては、アトラジン、ベノミル、ベンタゾン、ビフェノックス、ブロモキシニル、キャプタン、カルベンダジム、クロリダゾン、クロロタロニル、クロルトルロン、シヘキサチン、シモキシニル、α−シペルメトリン、デルタメトリン、ジメトモルフ、ジウロン、エトフメセート、グリホセート、イマザメタベンズ・メチル、イマザピル、イマゼタピル、イソプロツロン、リニュロン、マンコゼブ、マンゼブ、マネブ、メタミトロン、メチオカルブ、メトリブジン、オキシフルオルフェン、フェンメディファム、プロパニル、プロピザミド、シマジン、及びチラムが挙げられる。高使用量活性物質は、プロパニル又はイソプロツロンからなることが好ましい。
【0032】
高使用量活性農薬、低使用量活性農薬及び塩基性無機塩の特に好ましい組み合わせの例としては、ベンスルフロン・メチル、プロパニル及び炭酸ナトリウムの組み合わせ並びにクロルスルフロン、イソプロツロン及び炭酸ナトリウムの組み合わせが挙げられる。炭酸ナトリウムは無水であることが好ましい。
【0033】
高使用量活性農薬は、組成物の重量で少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、最適には少なくとも65%、例えば75%の量で存在させることが適当である。
【0034】
組成物は乾燥自由流動性で無埃及び迅速溶解性粒状組成物であることが適当である。
【0035】
第二の活性物質は、第一の活性物質と共に予備混合物に加えてもよいし、又は所望ならば両方の活性物質を連続的に加えてもよい。
【0036】
組成物は、組成物の希釈、その後の施用の際に活性物質の迅速な分散及び溶解を促進するように分散剤を含有することが適当である。組成物中の分散剤と有効成分との重量比は、0.1〜10:1、好ましくは0.4〜6:1、例えば約4:1及び約5:1であることが適当である。
【0037】
好ましい態様においては、分散剤は界面活性剤からなり、非イオン性界面活性剤及び特別には陰イオン性界面活性剤が好ましい。適当な分散剤の例としては、リグノスルホン酸のアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、トリスチリルフェノールエトキシレートリン酸エステル、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO−PO)ブロック共重合体、“櫛型状”グラフト共重合体及びポリビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。所望ならば、当該技術で知られているその他の分散剤を使用してもよい。
【0038】
分散剤は、非イオン性界面活性剤については約0mvのゼータ電位を有することが適当であり、陰イオン性界面活性剤については適当には−30mVを越えるゼータ電位有することが適当であり、陽イオン性界面活性剤については+30mVを越えるゼータ電位を有することが適当である。
【0039】
分散剤の他に、その他の成分、例えば湿潤剤を組成物に存在させてもよい。適当な湿潤剤としては、アルキルアリールスルホン酸、アルキルアリールスルホコハク酸及びアルキル硫酸のアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0040】
所望ならば、当業者に知られているその他の湿潤剤及びその他の賦形剤、例えば崩壊剤、例えば:ベントナイト、変性デンプン及びポリビニルピロリドン;安定剤、例えばクエン酸、ポリエチレングリコール及びブチル化ヒドロキシトルエン;並びに充填剤、例えば、デンプン、ラクトース、陶土、スクロース及びカオリン;及び流動助剤を使用してもよい。組成物は、充填剤、例えば、溶解性について役立つラクトース及び細粒を形成するために組成物の諸成分の押出しを促進し得るラクトースと陶土の混合物を含有することが好ましい。
【0041】
本発明の組成物は、欧州特許出願公開第1161145号明細書に記載の方法で調製することが好ましい。該明細書の記載内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。該方法は、活性物質と、塩基性無機塩と、場合によっては分散剤と、その他の成分とを含有する自由流動性粉末、好ましくは均質な粉末の形態の予備混合物を、ペーストを形成させることなく調製し、得られた予備混合物を押出機、例えば低圧押出機で、好ましくはペーストを形成させることなく押し出して顆粒(場合によっては乾燥してもよい)を形成することからなるのが適当である。場合によってはその他の成分、例えば第二の有効成分を含有する予備混合物を、前記活性物質及び塩基性無機塩と混合し押出し用混合物を形成してもよい。液状成分を存在させることが適当であり、追加の液状成分を必要としない場合には液状分散剤を含有させてもよいが、所望ならば別の液状成分を含有させてもよい。水が予備混合物に添加されている場合には、これは乾燥することによって除去してもよい。
【0042】
配合工程(一つ又は複数)に適した装置としては、低剪断、強力配合機、例えばLodige Ploughshare混合機、リボン混合機、Y円錐型混合機、二重円錐型混合機又はトラフ配合機が挙げられ、それにより自由流動性粉末が形成される。混合物は、国際公開第WO96/26828号パンフレットに記載されているように適当な低圧押出機に直接又は間接に供給され、それによって予備混合物を篩の開口部に押し付けてそれを通す。
【0043】
好ましい態様においては、混合物の組成及び押出機の設定は、押出す前にペーストの形成が回避され且つ加工される材料が予備混合物を形成する間は自由流動性粒状物質であるようなものである。特に、前記物質は押出す前にはペーストを形成しないことが最適である。しかしながら、組成物は1種又はそれ以上の液状成分を含有し得ることから、該組成物は、それが加工中は自由流動性で且つ粒状であることを条件として、湿潤していてもよいし又は乾燥していてもよい。このような状況において、ペーストは物質の塊(mass)、例えば凝集物とみなし得、該ペーストとは十分な量の液体を含有するか又は加工される粒状物質が成形可能であるか又は変形可能であり且つ自由流動性でない凝集物に形をなすような温度にある凝集物であるとみなし得る。すなわち、ペーストは、例えば指の間でこすることにより剪断力を加えた際により微細な粒に崩壊しないが、むしろ凝集した塊のままであり、剪断応力は該凝集物を成形又は変形するために作用する。
【0044】
所望ならば、組成物の諸成分は、最初に、全部を順々に、全部を一緒に又はその幾つかを順々に且つその他の成分を一緒に、例えば配合機で均一な混合物が得られるように混合して、次いで得られた混合物を、0.5〜20ミクロン、さらに好ましくは0.5〜5ミクロンの平均粒度からなることが適当である微粉末(予備混合物)が得られるように、適当な粉砕装置、例えばエアーミル又はピンミル又はエア掃引衝撃ミル(air-swept impact mill)に通す。このようにして得られた粉末は適当に凝集化し、好ましくは欧州特許出願公開第1161145号明細書に記載の方法によって均一なダストフリー顆粒が得られる。この好ましい方法は、湿潤粉末の押出を伴い、この場合には例えば欧州特許出願公開第812256号明細書に記載のように低温、低圧押出機で自由流動性均質粉末の形態である。
【0045】
存在する場合には、低使用量農薬及び高使用量農薬は、乾燥予備混合物の形成において、その他の製剤成分、例えば分散剤と混合してもよいし、又は予備混合物は、粉砕予備混合物に添加される農薬及びその他の一つを用いて調製してもよい。この別のアプローチは、高使用量農薬がプロパニル(これは乾燥予備混合物に配合するのに適当である)である場合には好ましく、次いで低使用量農薬が予備混合物に加えられ、造粒する前にそれと配合される。
【0046】
別の要旨において、本発明は、本発明に従って製造される組成物の除草有効量を植物又は植物の生育場所に施用することによって植物を処理する方法が提供される。
【0047】
本発明は、所定の効果を達成するために組成物を、より少ない使用量で、すなわち単位面積当たりについて公知の組成物よりも少ない量で使用することを可能にする。農薬活性物質は、市販の組成物における活性物質について慣用される使用量の75%よりも少ない使用量で、さらに好ましくは50%よりも少ない使用量で植物又は植物の生育場所に施用することが適当である。
【0048】
好ましい態様においては、スルホニルウレア系低使用量活性物質、例えばベンスルフロン・メチルを含有してなる組成物を、50g/haよりも少ない使用量で、特に30g/haよりも少ない使用量で、最適には20g/haよりも少ない使用量で使用して施用する。典型的には、ベンスルフロン・メチルの組成物を、50重量%を超える量で含有する市販の組成物を60g/ha又はそれ以上の使用量で使用してもよい。別の好ましい態様においては、本発明の組成物は、スルホニルウレア系活性物質、例えばベンスルフロンの他に、プロパニルからなる高使用量第二活性物質を含有し、該第二活性物質は7000g/haよりも少ない量で、好ましくは5000g/haよりも少ない量で、特に3200g/haよりも少ない量で使用して施用する。
【0049】
前記植物が雑草である場合には、その処理は該雑草を防除するか又は撲滅するようなものである。一般に、本発明の組成物は、液状担体、典型的には水を用いて、それと該組成物とを施用前に混合して植物又はその生育場所に施用する。所望ならば、該組成物は、液状担体と混合してその後に液状担体と混合するのに適した濃厚物を形成してもよい。特に水分が自然沈降によって植物の付近に存在する場合には、固体又は濃厚物の形態で組成物を植物又はその生育場所に施用することは本発明の範囲に入る。
【0050】
組成物は使用するためには水に10〜500mg/リットル、好ましくは20〜300mg/リットルの量で希釈することが適当である。希釈は、使用する組成物、処理すべき植物の生長の段階及び当業者に知られているその他の因子に応じて選択することが適当である。
【0051】
本発明は、組成物の製造方法、水に希釈することが適当である低減された量の有効成分(1種又は複数)を、かかる有効成分について通常推奨される量よりも少ない量で雑草に施用することによって植物を処理する方法、例えば雑草を防除又は撲滅する方法に関する。また、本発明は、前記の有効成分のその後の施用を回避することを可能にし、このようにして使用する農薬の量を減らすことを可能にする。
【0052】
以下の実施例により本発明を限定しない方法で例証する。
【実施例】
【0053】
実施例1〜8及び比較例A〜C
表1に挙げた配合を有する本発明に従って製造された一連の組成物を、予め微粉砕してある活性物質と、GALORYL DT505、すなわちナフタレンスルホン酸とを均一になるまで混合し、次いでGem−Tエアミルを使用してエアミル粉砕することによって調製した。この予備混合物に炭酸ナトリウムと充填剤を加え、高速ミキサー中で均一になるまで混合した。混合物に基づいて12重量%の蒸留水を、混合しながら加えた。自由流動性粉末であった湿潤予備混合物を、欧州特許出願公開第812256号明細書に記載のようにして1mmの篩を通してバスケット押出機に供給した。圧縮固化された押出物が得られ、得られた顆粒を60℃で8分間乾燥した。押出し前にはペーストは形成されなかった。次いで、得られた乾燥顆粒を2mmの篩及び500ミクロンの篩に通して篩い分けした。
【0054】
分析の判定(測定)は、ヒューレット・パッカード1050 HPLCマシンを使用して行った。HPL方法LC29を分析に使用した。QMxから購入した分析標準を対照物質として使用した。
【0055】
半量のラクトース及び半量のクレー充填剤を用いた実施例3は、実施例1及び2よりも容易に押出された。
【0056】
表1

組成物に種々の物理特性を、下記の方法を使用して確認し、得られた結果を以下の表2に示す。
【0057】
懸濁性
製品0.5g(小数第4位まで秤量した)を、20℃の水道水100mlに100mlメスシリンダーの100mlマークまで加えた。シリンダー上部をシリンダー上に置き、次いで180度反転させ、シリンダーの中心の周りを30回戻した。反転の速度は1秒当たり1回の反転であった。30回反転後に製品の全部が分散していなかった場合には、製品の全部が分散するまで又は60回の反転が終わるまで5つの群でさらに反転を行った。
【0058】
シリンダーをそのまま30分間放置した。この時間後に、分散物10mlをシリンダーピペットの50mlマークから取り出し、予め秤量し、乾燥した蒸発洗面器に入れた。水を水浴を使用して蒸発させた。全ての水が蒸発した際に、洗面器を、中出力で3分間マイクロ波加熱することによってさらに乾燥した。次いで、洗面器を室温まで冷却し、再度秤量した。
【0059】
懸濁性を下記の式を使用して算出した:
%懸濁性=(残留物重量/g−Y×100
製品重量/g
=測定の回数における水道水10mlからの残留物の質量
【0060】
75μm篩及び150μm篩のための組み合わせた湿潤篩残留試験
秤量した製品5g(小数第4位まで秤量した)を、水道水100mlを入れた250mlビーカーに加えた。製品を、懸濁物が均一になるまで又は最大5分間、手で攪拌した。
【0061】
75μm篩及び150μm篩を水道水下で予め湿らせた。150μm篩を75μm篩の上に置き、懸濁物を両方の篩に注ぎ、残留物を水道水を1分当たり3リットルの流量で流しながら最大で2分間洗浄した。ビーカーを十分に洗浄して内容物全部が篩に移されることを確実にした。
【0062】
篩を分離し、それぞれの篩上の残留物を、予め乾燥し且つ予め秤量した蒸発洗面器に、洗浄ビン中の脱イオン水を使用して移した。水浴を使用して水を蒸発させた。全ての水が蒸発した際に、洗面器を、中出力で3分間マイクロ波加熱することによってさらに乾燥した。次いで、洗面器を室温まで冷却し、再度秤量した。
【0063】
150μm湿潤篩残留物を、下記の式を使用して算出した:
%残留物=(残留物重量/g)×100
製品重量/g
【0064】
75μm湿潤篩残留物を、下記の式を使用して算出した:
%残留物=(残留物重量/g+150μm篩残留物重量/g)×100
製品重量/g
【0065】
分散性
水道水100mlを100mlメスシリンダーに注いだ。製品1.0gを迅速に加え、シリンダー上部を180度反転させる前にシリンダー上に置き、シリンダーの中心を通る軸の回りを10回戻した。10回の反転後に製品の全部が分散していなかった場合には、製品の全部が分散するまで又は60回の反転に至るまで5つのロットで反転を続けた。
分散性評価星印系:
− 顆粒小片が極めてわずか又はない/スペック
** − 顆粒小片がわずかある/スペック
*** − 小片のロット/スペック
**** − 分散しなかった顆粒が5個未満
***** − 分散しなかった顆粒が5個を越える
【0066】
表2

【0067】
実施例3及び8を、組成物を密閉容器に特定の温度で2週間保存する安定性試験に供した。得られた結果を表3に示す。
表3

【0068】
これらの結果は、組成物がその安定を許容し得る水準に、2週間維持したことを実証する。
【0069】
溶解性データ
本発明の組成物の溶解性を試験した。3種類の公知組成物も比較のために試験した。3種類の比較組成物は、次の通りであった:
比較実施例A:
LONDAX 60 − デュポン社から入手できる60%ベンスルフロン・メチルを有する市販のベンスルフロン・メチル製品。
【0070】
比較実施例B:

【0071】
比較実施例C:

【0072】
比較実施例B及びCは、本発明の組成物と同じ方法で調製した。
【0073】
溶解性試験は、冷却機で5℃に冷却した1リットルジャケット付き容器中で行い(プロパン-1,2-ジオール/水)、電磁攪拌機を使用して最大速度で攪拌した。1リットルのCIPAC D水を前記ジャケット付き容器に測り取り、熱平衡に達するまで攪拌した。水のpHを測定し、記録した(CIPAC D水については6.5)。次いで、試験すべき組成物を攪拌継続下で加え、ストップウォッチで時間測定を開始した。5、15、30及び60分後に、注射器を使用してアリコート2mlを採取し、ワットマンGF/A濾紙で直ちに濾過し、濾液を溶解しているベンスルフロン・メチルについて分析した。
【0074】
結果
溶解性試験の結果を表4〜6に示す。
【0075】
表4

【0076】
表5

【0077】
別の溶解性試験を、実施例8の組成物の調製に使用した湿潤予備混合物(押出す前の製剤である)について行った。結果を以下に示す。
表6

【0078】
以下の表7は、溶解性試験60分後にそれぞれの試験溶液のpHの変化を示す。
表7


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーストを形成することなく、農薬活性物質と、塩基性無機塩と、場合によっては分散剤とを含有する自由流動性粉末の形の予備混合物を形成し(但し、該予備混合物の成分の少なくとも一つは液体である)、該予備混合物を押出して顆粒を形成し、場合によっては顆粒を乾燥することからなる、農薬活性物質と、塩基性無機炭酸塩と、場合によっては分散剤とを含有してなる粒状組成物(但し、該組成物の1%水溶液はCIPAC試験MT75.3に供した場合に少なくとも8.0のpHを有する)の製造方法。
【請求項2】
前記組成物中の塩基性無機塩が、該組成物の1%溶液が少なくとも8.5のpHを提供するようなものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性物質が低使用量農薬活性物質からなるものである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
低使用量農薬活性物質がスルホニルウレアからなるものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
低使用量農薬活性物質がベンスルフロン・メチル及びクロルスルフロンから選択されるものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも50重量%の活性物質を含有する請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物中の活性物質の少なくとも25%が5℃で15分後に溶解するものである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物中の活性物質の少なくとも40%が5℃で5分後に溶解するものである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
7重量%未満の活性物質を含有する請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物中の活性物質の少なくとも70%が水に5℃で15分後に溶解するものである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物中の活性物質の少なくとも70%が5℃で5分後に溶解するものである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
塩基性無機炭酸塩がアルカリ金属塩からなるものである前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アルカリ金属塩が炭酸ナトリウムからなるものである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
塩基性無機炭酸塩が無水物である前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
農薬活性物質がベンスルフロン・メチル及びクロルスルフロンから選択されるものであり且つ塩基性無機塩が炭酸ナトリウムからなるものである前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
活性物質がi)ベンスルフロン・メチル及びプロパニルからなるか又はii)クロルスルフロン及びイソプロツロンからなるものである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物中の全農薬活性物質と塩基性無機塩との重量比が10:1未満であり且つ少なくとも1:3である前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
さらに非イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤から選択される分散剤を含有する前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
約0mVのゼータ電位を有する非イオン性界面活性剤及び−30mVを越えるゼータ電位を有する陰イオン性界面活性剤から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
農薬活性物質を含有する組成物を、該記組成物の1%水溶液がCIPAC試験MT75.3に供した場合に少なくとも8.0のpHを有するように塩基性無機塩を用いて製剤し、農薬活性物質と前記塩と場合によっては分散剤とを含有する予備混合物を押出すことによって前記組成物を製造することからなる(但し、押出す前にはペーストは形成されないものとする)水性媒体中で農薬活性物質の溶解の速度及び程度を増大させる方法。
【請求項21】
水溶液と混合されると溶解する組成物中の活性物質の割合を高め、それによって処理すべき植物又は生育場所への活性物質の送達を高めるための請求項1〜19のいずれか1項に記載の農薬組成物における塩基性無機塩の使用。
【請求項22】
前記組成物が活性物質を該組成物の10重量%までの量で含有するものであり且つ該組成物中の活性物質の少なくとも70%がCIPAC D水に5℃で15分後に溶解するものである請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記組成物が活性物質を該組成物の10重量%を越える量で含有するものであり且つ該組成物中の活性物質の少なくとも25%がCIPAC D水に5℃で15分後に溶解するものである請求項21に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる組成物であって、該組成物が活性物質を組成物の10重量%までの量で含有するものであり、且つ5℃で15分後に溶解する活性物質の割合が少なくとも30%であり、前記の塩を不活性充填剤に代えた比較組成物に溶解する活性物質の割合よりも大きいものである請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる組成物。
【請求項25】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる組成物であって、該組成物が活性物質を組成物の少なくとも50重量%の量で含有するものであり、且つ5℃で15分後に溶解する活性物質の割合が少なくとも100%であり、前記塩を不活性充填剤に代えた比較組成物に溶解する活性物質の割合よりも大きいものである請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる組成物。

【公表番号】特表2008−502643(P2008−502643A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515904(P2007−515904)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006860
【国際公開番号】WO2005/120227
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(501290632)アグフオーム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】