説明

化学製品を提供するシステムおよび化学製品を提供するための方法

【課題】化学製品、特に動力発生器中で処理される合成燃料を提供するための1つのシステムを提供する。
【解決手段】化学製品を提供するシステムが電気分解装置(2)およびガス化ユニット(5)を有し、ガス化ユニット(5)には、電気分解装置(2)から生じる酸素(B)が供給され、ガス化ユニット(5)によって合成ガス(J)が製造され、この合成ガス(J)は、化学製品(M)のための原料物質である。
【効果】エネルギー貯蔵システムによって提供される燃料ガス化法のために酸素の使用を可能にする。その上、エネルギー貯蔵器中で製造された水素の画分は、燃料ガス化法で使用されることができ、生成物の生産量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学製品を提供するシステムおよび化学製品を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能なエネルギーは、CO2放出を減少させるため、および他の一次エネルギー源の拠り所を減少させるために注目されている。再生可能なエネルギーは、存在する通常の発電所、例えば石炭専燒火力発電所の著量を代替することができる。この源の欠点は、この源が必要とされる電力出力で必ずしも有効でなく、制限された制御可能性を有することである。これは、殊にウィンドタービンにとって実際のことである。
【0003】
再生可能なエネルギーの供給は、源それ自体の有用性、ならびに電力格子の残りの能力に依存する。
【0004】
CO2放出を減少させるため、および化石燃料に依存しないために、再生可能なエネルギーの貢献は、最大化されることが必要である。これは、揺らぎおよび確率的エネルギー源を取り扱うことが必要であることを意味する。前記事実を達成するために、再生可能なエネルギー発生の設備能力過剰は、必要であってよい。他の選択可能な方法によれば、高度な要求時にエネルギーへのアクセスを許容するために、エネルギーの貯蔵は、エネルギー発生およびエネルギー消費を時間的にデカップルする(decouple)のに役立つ。供給が要求に適合しない場合には、エネルギーは、貯蔵量を放出することによって予防措置を講じることができる。
【0005】
電気的エネルギーを貯蔵するための数多くの異なる方法が存在する。電気的エネルギーは、物理的には、例えば圧力エネルギーまたはポテンシャルエネルギーの形で、電気化学的に蓄電池中に貯蔵することができる。ポテンシャルエネルギーは、殊に揚水式電気貯蔵(pumped hydro storage)または圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)の形で貯蔵される。
【0006】
揚水式電気貯蔵は、アクセスエネルギーを貯蔵するために使用することができる。電気的エネルギーへのアクセスは、よりいっそう高い標高での貯蔵に対して水をポンプで汲み上げるために使用することができる。水の貯蔵されたポテンシャルエネルギーは、後に水タービンでの発電のために使用することができる。CAESは、圧縮空気の圧縮エネルギーをエキスパンションプロセスで使用する。CAESタイプに基づいて、天然ガスは、圧縮プロセスの熱損失を補償するために使用される。
【0007】
更に、必要な場合には、幾つかのプロセスに共有されるであろう純粋な水素を貯蔵する可能性が存在し、これらのプロセスは、最終的に発電機中で処理されるべき燃料またはガスを発生させるであろう。前記プロセスにおいては、しばしば、酸素は、供給されることが必要とされ、この酸素は、できるだけ、空気の極低温の分解を介して抽出されることが必要とされ、前記プロセスそれ自体は、空気の温度を低下させるために多量のエネルギーが必要とされ、空気のガス状成分の凝縮を許容し、酸素を液化ガスから抽出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に、本発明の第1の目的は、化学製品、特に動力発生器中で処理される合成燃料を提供するための1つのシステムを提供することであり、したがってこのシステムにおいては、このような化学製品または合成燃料を形成させるためのエネルギーは、殆んど消費されないであろう。本発明の第2の目的は、電力を発生させるために、化学製品、特に合成燃料を提供するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の目的は、請求項1に記載された特徴を有する、化学薬品を提供するシステムによって解決される。第2の目的は、請求項13で特許保護が請求された化学製品を提供する方法によって解決される。その上、従属請求項は、さらに本発明の好ましい展開を定義する。
【0010】
本発明は、化学薬品を提供するシステムに関する。化学製品としては、殊に合成燃料が考えられ、燃料としては、任意の可燃性物質、殊に一度燃焼された、発電または機械動力発生に使用することができた液体またはガスを考慮すべきである。化学製品を提供するシステムは、水分解による水素と酸素を発生させるための電気分解装置およびガス化ユニットを備え、これに反して、ガス化ユニットには、電気分解装置から生じた酸素が供給され、ガス化装置によって合成ガスが生産され、この場合この合成ガスは、化学製品のための原料物質である。
【0011】
本発明による化学製品を提供するシステムを用いると、電気分解装置内での水素の発生中の副生成物、即ち酸素、但し、この酸素は、典型的には排出され、使用されない、は、ガス化ユニット中の後の処理工程で使用されるであろう。このシステムは、空気からの酸素の抽出で分取することを可能にし、ガス化ユニットのための酸素を発生させ、この場合酸素は、空気から抽出され、或いは、少なくともこのような処理によって酸素発生のシェアを減少させることを可能にする。これは、有利である。それというのも、空気分離ユニットによる、例えば空気の極低温分解を経ての抽出による空気からの酸素の抽出は、大量のエネルギーそれ自体を必要とするからである。空気の極低温分解の場合には、空気の温度を減少させるために膨大な量のエネルギーが必要とされ、空気のガス状成分の凝縮を可能にし、酸素を液化ガスから抽出する。
【0012】
それ故に、本発明は、発電システムの全効力を増大することができ、合成燃料または化学製品の生産のための費用および複雑さを減少させることができる。
【0013】
従って、本発明は、有利である。それというのも、いずれにせよ電気分解中に発生するであろう酸素は、さらに使用することができるからである。これは、化学薬品を提供するシステムに使用される電気分解装置がエネルギー貯蔵システムの一体型のユニットしての電気分解装置であったとしても特に事実である。このようなエネルギー貯蔵システムにおいて、電気分解装置は、貯蔵可能な化合物、例えば純粋な酸素を発生させるために使用することができ、この場合この化合物は、必要な場合には、エネルギー発生のために使用される。
【0014】
1つの好ましい実施態様において、化学薬品を提供するシステムでは、合成ガスは、殊にその後に処理する際に、生成物合成ユニットに供給することができ、この場合この生成物合成ユニットは、化学製品を生産する。化学製品は、発電機に提供される合成燃料であることができる。また、化学製品は、アンモニア、エタノール、または発電に関連しない、他の化学的プロセスにおいて後に処理されることができる、もう1つの化合物であることができる。
【0015】
化学製品として合成燃料にピントを合わせた場合には、その後の処理および生成物の合成は、主に化学的または機械的な操作を実施することができ、したがって合成燃料の場合による組成は、燃焼に最適化されるであろう。
【0016】
合成燃料は、エネルギー運搬製品と見なすことができ、これは、幾つかの形でエネルギーを貯蔵する。殊に、合成燃料を燃焼させることによってエネルギーを解放することができる形で貯蔵する。
【0017】
もう1つの実施態様において、ガス化ユニットは、前記のように設定することができ、したがって製造された合成ガスは、本質的に一酸化炭素2/3と本質的に水素1/3から構成されていてよい。この合成ガスを達成するために、適当な量の酸素は、ガス化ユニットに供給され、この場合には、燃料、例えば石炭、石油、石油ガス、バイオマス、重油、精油所からの残渣、または廃棄物、殊に有機廃棄物にも依存し、これらもガス化ユニットに供給される。
【0018】
この場合の燃料としては、独立的にガス状、液体または固体の燃料の状態の極めて幅広い解釈を考慮すべきである。この燃料は、単に可燃性である物質であってよい。
【0019】
更に、合成ガスは、水性ガスシフト反応器に供給することができ、この水性ガスシフト反応器中で、主に合成ガスの不可欠な成分としての一酸化炭素は、水、特に化学式H2Oを有する純水と、化学反応で反応し、二酸化炭素と水素を形成する。反応のための水は、水とアルコールとの混合物、または幾つかの他の種類の混合物または化学的溶液であってもよい。
【0020】
更に、別の実施態様において、水性ガスシフト反応器によって製造された水素および/または電気分解装置によって製造された貯蔵された水素、および合成ガスは、炭素と水素との比の調整ユニットに供給することができ、合成ガス内で炭素Vと水素との比を変化させ、変更された炭素と水素との比を有する変性された合成ガスを生じる。変更された炭素と水素との比は、後の場合による燃焼のために、即ち可燃性生成物への可能な後処理後に最適化されてよい。前記の炭素は、二酸化炭素および/または一酸化炭素の形で存在していてもよい。
【0021】
それ故に、もう1つの実施態様において、変性された合成ガスおよび水性ガスシフト反応器によって製造された水素および/または電気分解装置によって製造された貯蔵された水素は、生成物合成ユニットに供給されてよく、例えば最終的に合成燃料を可燃性生成物として発生させることができる。
【0022】
この合成燃料は、次の合成液体燃料、合成天然ガスおよび炭化水素分子を有するガスまたは液体の1つから構成されていてよく、生成物合成ユニットによって、例えば所謂フィッシャー−トロップシュ合成法を実施することによって発生させることができる。
【0023】
例えば、電力格子に供給すべき電力を発生させるためには、合成燃料は、燃焼炭化水素分子のための発電装置の燃焼器に供給されることができ、電力を発生させ、発電装置は、特に蒸気タービンおよび/または燃焼タービンまたは内燃機関であることができる。
【0024】
その上、本発明は、化学製品、特に電力を発生させるための合成燃料を提供するための方法に向けられており、この方法は、電気分解装置、殊にエネルギー貯蔵システムの電気分解装置から生じた酸素を、ガス化ユニットに供給し、但し、この場合この電気分解装置は、エネルギー発生のために貯蔵可能な化合物の発生に使用され;合成ガスをガス化ユニットによって生産し、この場合この合成ガスは、化学製品のための原料物質であることによって特徴付けられる。一般に、本発明による方法は、本発明によるエネルギー貯蔵システムが有しているのと同じ利点を有する。
【0025】
前記の記載の1つの焦点が化学製品としての合成燃料であったとしても、全ての種類の化学製品は、化学製品を提供するシステムの可能な出力材料、殊に後処理のための1つの基礎としての化学プラントに使用されることができる予備化学製品であってよい非可燃性の製品であることができる。1つの例として、前記の予備化学製品は、アンモニアまたはエタノールであることができる。
【0026】
更に、本発明の特徴、性質および利点は、図面に関連した次の実施態様の記載から明らかになるであろう。記載された特徴は、単独での特徴および互いに組み合わせた特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による化学製品を提供するシステムを略示する系統図である。
【実施例】
【0028】
更に、本発明による第1の実施態様は、図1に関連して記載される。図1は、本発明による化学製品を提供するシステム、特に合成燃料を提供するシステムを略示している。図において、処理ユニットは、矩形で示されている。固体状態の材料、液体またはガスの流れは、前記ユニットの間で矢印で示されており、この場合参照符号は、流れの材料組成を表わす。矢印は、流れの方向を示す。
【0029】
1つの概要的な見方で、殊に化学製品が合成燃料であるならば、化学製品を提供するシステムは、幾つかの投入量の材料、例えば水、燃料、ガス状成分および/または酸素を有する空気、および生産量の物質、例えば燃料ガスとして燃焼に直接使用することができた合成ガス、その後の処理工程で合成燃料および/または化学製品に対する一次製品として直接使用することができた合成ガス、副生成物、例えばスラグまたは二酸化炭素を有する。その上、機械的エネルギーおよび/または電気的エネルギーは、合成燃料の発生に添加することができ、これに反して、場合による動力発生工程においては、機械的エネルギーまたは電気的エネルギーを発生させることができる。
【0030】
動力発生工程は、合成燃料としての化学製品Mを動力発生器内、例えばタービン9内で燃焼させることによって実施することができ、この場合このタービンは、動力Pを発生させる。製品Mは、液体燃料、合成ガスまたは幾つかの他の種類の可燃性物質であることができる。エネルギーの変換のためには、直接に後に導入されるべきガス化ユニット5の出力を使用することができた。しかし、さらに処理された製品Mを使用することは、製品Mを貯蔵または輸送に最適化することができることに関連して有利であることができ、この場合には、殊に液体または固体である。
【0031】
製品Mは、生成物合成ユニット8によって製造され、この生成物合成ユニットは、変性された合成ガスLを場合による水素G4(化学式:H2)の添加によって変換する。水素G4は、シフト反応器6によって実施された、後に討論すべき方法によって発生された生成物であることができ、この場合このシフト反応器は、水素分離器としても作動する。シフト反応器6によって形成された水素は、図1によれば、水素G2と呼ばれる。付加的に、水素は、水素貯蔵器3から取ることもでき、この水素は、さらに水素G1と呼ばれる。
【0032】
水素貯蔵器3中に貯蔵すべき水素Cは、水A、可能な場合には化学式H2Oを有する純水から、水素エネルギー貯蔵および生産ユニット1内の電気分解装置2によって製造される。一般に、化学および製造において、電気分解は、化学的に結合された元素および化合物を電流の通過によって分離する方法である。本発明の場合、電気分解装置2は、水Aを分離し、したがって2つの水分子H2Oは、2個の水素分子H2、参照符号Cおよび1個の酸素分子O2、参照符号Bを生じる。
【0033】
2個の水素分子H2は、水素貯蔵器33内でエネルギーキャリヤーとして貯蔵される。この水素貯蔵器3は、既にエネルギー貯蔵システムの一部分であることができ、このことについては、本明細書中でこれ以上論議しない。更に、貯蔵された水素は、一般に電動機および燃焼機関に動力を供給するために使用されることができる。特に、水素は、本発明において合成ガスの化学組成を変性するために使用され、燃焼のために最適化された製品、製品Mが形成されるか、または選択可能な方法の場合には、化学工業のための化学製品、例えばエタノールが形成される。
【0034】
実施態様は、本発明の一部分ではないが、本発明の範囲内にあり、製品Mとしての合成燃料に加えて、エタノール、アンモニアまたは他の化学製品も合成することができ、化学的試作品として使用可能であり、化学工業の処理工程で利用することができる。このために、本発明によるシステムの僅かな変更、例えばアンモニア合成のための生成物合成への投入量としての窒素Nの添加も必要であり、この場合Nは、図中で参照符号であり、および化学元素符号でもある。
【0035】
一般化のために、生成物合成ユニット8は、投入量の流れと比較してよりいっそう複雑な化合物、変性された合成ガスL、を製造するために設定されている。
【0036】
前述のエネルギー貯蔵システム中で製造された酸素Bは、このシステム中では不要である。しかし、この酸素は、簡単には廃棄されず、排気ガスとして処理される。ガス化ユニット5による酸素の必要性が電気分解装置2からの供給された酸素Bに適合しないならば、可能な場合には、さらに場合による酸素Eを酸素Bに供給することによって、酸素Bは、酸素Fとしてガス化ユニット5に通過される。酸素Eは、場合によっては空気分離ユニット4によって形成されることができ、酸素を周囲空気Dから、例えば極低温処理によって分離し、したがって酸素は、空気Dから分離されることができる。極低温処理が主に空気の温度の減少のために大量のエネルギーを消費するという事実のために、このシステムは、有利に付加的な酸素Eを全く必要としないかまたはごく僅かに付加的な酸素Eを必要とする方法で制御される。従って、空気分離ユニット4は、必要でなくともよく、その結果、空気分離ユニット4がシステム中に構成されていないならば、殆んどエネルギーは消費されず、複雑で高価な空気分離ユニット4は、構成される必要はなく、システムの全効力の程度を減少された費用で上昇させることができる。
【0037】
酸素Fの必要性は、合成ガスJを製造するためのガス化ユニット5中で処理することができる原料物質Iのタイプに依存して酸素の量の点で変動することができる。ガス化は、炭素質材料、例えば石炭、石油、またはバイオマス、精油所からの残渣、廃棄物、スラリー、またはこれらの組合せをガス状の形に変換する1つの方法であり、合成ガスは、主に、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、メタン、窒素ならびに原料、即ち供給原料Iを高い温度で制御された量の酸素、即ち酸素Fおよび/または蒸気と反応させることによる蒸気から構成されている。生じるガス混合物は、合成物または合成ガスJまたは"syngas(合成ガス)"であり、それ自体が燃料である。
【0038】
syngas(合成ガス)は、直接に燃焼機関中で燃焼させることができるか、または本発明の実施態様において、生成物合成法、例えばフィッシャー−トロップシュ合成法により、合成燃料または化学製品に変換することができ、生成物流のM.ガス化(M. Gasfication)は、他の点では有用でない燃料、例えばバイオマスまたは有機廃棄物である物質を用いて開始することもできる。更に、高温での燃焼は、腐食性の灰分要素、例えばクロリドおよびカリウムを精製除去し、他の点では問題のある燃料からのクリーンガス生産を可能にする。これは、スラグ灰分Kを計量分配するガス化ユニット5から離れる点線の矢印によって図1中に示されている。
【0039】
合成ガスJの主要成分の1つは、化学式COを有する一酸化炭素である。
【0040】
必要であれば、場合によるガス精製ユニット10は、ガス化ユニット5中に組み込まれていてよい。このガス精製ユニットは、望ましくない汚染物または粒子を分離し、これらの化合物もスラグ灰分Kのように廃棄するために使用されてよい。望ましくない汚染物は、原料Iの不可欠な成分、例えば硫黄または重金属である成分であることができる。
【0041】
理想的には、発生された合成ガスJは、元素の炭素、酸素および水素だけから構成されていてよい。
【0042】
合成ガスJは、一部分が直接に炭素と水素との比の調整ユニット7およびシフト反応器6に供給される。シフト反応器6中で、合成ガスJは、水Q(H2O)を使用することによって変性され、二酸化炭素および水素、即ち水素G2を発生させる。この製造された水素G2は、可能な場合には、水素貯蔵器3から取り出された水素G1によって支持され、水素G3を生じて、炭素と水素との比の調整ユニット7に供給され、合成ガスJ内の炭素と水素との比を変更することができ、したがって変性された合成ガスLに変わる。
【0043】
可能な場合には、シフト反応器6は、水素G1を水素貯蔵器3から消費するだけの方が好ましい場合には、システムにおいて省略してもよい。
【0044】
既述したように、変性された合成ガスLおよび場合による水素G4は、生成物合成ユニット8に供給され、生成物Mを発生させ、この場合前記の後者の水素G4は、炭素と水素との比の調整ユニット7が既に望ましい炭素と水素との比を提供しているならば不要であることができる。
【0045】
生成物Mは、可燃性であることができ、機械的動力または電気的出力を発生させるか、または化学工業のために生成物、例えばエタノールまたはアンモニア等を発生させる。場合による水素G4は、水素G1として水素貯蔵器3から取ることができるか、またはシフト反応器6の生成物としての水素G2として取ることができる。
【0046】
本発明は、電気分解装置2からの発生された酸素Bおよび発生された水素G1の使用を可能にし、酸素または水素を別々の発生させる処理工程に取って代わることを可能にする。理想的には、本発明は、有利にこのような電気分解装置を有するエネルギー貯蔵システム、例えば水素ガス貯蔵器および動力プラントと組み合わせることができる。このようなシステムにおいて、水素ガス貯蔵器は、動力プラントに接続されていてよい。好ましくは、電気分解装置は、高圧電気分解装置である。
【0047】
低い比エネルギー密度の貯蔵媒体を使用する代わりに、高いエネルギー密度の媒体、即ち水素、有利に圧縮された水素を使用することができる。これは、極めてコンパクトな高い動力貯蔵および高い容量貯蔵のための設計を可能にする。本発明によるエネルギー貯蔵システムは、確率的および不確定的に供給する源にも拘わらず確実なエネルギー供給を提供する。
【0048】
好ましくは、エネルギー貯蔵システムは、電気分解装置および水素ガス貯蔵器に接続されている水素圧縮機を有する。電気分解装置から来る水素は、水素ガス貯蔵器中に貯蔵する前に水素圧縮機により圧縮されていてよい。
【0049】
動力プラントは、有利にタービンと発生器との組合せを有することができる。この動力プラントは、殊に化学的エネルギー、例えば水素を電気的エネルギーに再変換するための常用の動力プラントを有することができる。
【0050】
大型のエネルギー貯蔵システムは、発生の管理を適用することが必要とする場合に起こるような僅かな要求の場合に再生可能なエネルギー発生の下降を回避するか、または前記エネルギー発生の遮断であっても回避する。高圧電気分解装置の導入は、システム効力および動力密度を使用しないシステムとは異なりシステム効力および動力密度を著しく改善する。
【0051】
図1の実施態様は、特にエネルギーがシフト反応器6、ガス化ユニット5および空気分離ユニット4によって殆んど消費されないようにシステムが作動しうる点で有利である。これは、前記の構成成分が典型的には作動中に大量のエネルギーを消費するので利点である。シフト反応器6および/または空気分離ユニット4は、実際には不必要になる可能性があり、一時的であっても全く作動させる必要はない。従って、これは、よりいっそう高度な生成物流、簡易化されたシステムおよびよりいっそう低い価格を可能にする。
【0052】
更に、前記実施態様は、酸素がガス化ユニット5内で製造される必要がない、例えば空気分離ユニットによって内部で製造される必要がないことを可能にする。同様のことは、炭素と水素との比の調整ユニット7に関連して水素にとっては本当のことである。この事実のために、前記ユニットは、技術的に簡易化することができ、投資を減少させることもできる。
【0053】
これは、よりいっそう小型のシステムの建造を可能にし、これに反して、先に大型のシステムだけは、有利に作動させることができた。これは、ガス化ユニット5のための燃料としてバイオマスを使用するには特に重要であり、このガス化ユニットに対して集中化された大型のシステムは、バイオマスの輸送に極めて費用がかかるという欠点を有するが、しかし、燃料、例えば石炭、粗製油、天然ガス、重質燃料油、または精油所から残渣がガス化に使用されるならば、同様にプラスの効果を示す。
【0054】
更に、前記の実施態様は、水素が異なるユニット内で製造される必要はなく、水素貯蔵器3から取り出すことができることに関連して有利である。この水素は、生成物合成法、例えばフィッシャー−トロップシュ合成法での合成ガスの水素および/または予備製品の割合を増加させるために使用されることができる。参照符号6を有するユニットによって合成ガスから水素を発生させ、水素を残留合成ガスに供給することは、不要である。それ故に、合成ガスの量は、水素を分離するかまたは発生させる方法によって減少されず、その結果、製品の生産量は、増加する。
【0055】
水素を製品として電気分解装置から取り出すことによって、例えば圧力スイング吸着法(pressure swing absorption PSA)による水素の精製は、不要である。
【0056】
本発明は、燃料を支持するエネルギー貯蔵システム、即ちガス化システムが電気分解装置による酸素および/または水素を提供し、この電気分解装置がとにかくエネルギー貯蔵システムのために存在し、貯蔵されるべきエネルギー製品、例えば水素を発生させるならば、殊に有利である。これは、エネルギー貯蔵システムによって提供される燃料ガス化法のために酸素の使用を可能にする。その上、エネルギー貯蔵器中で製造された水素の画分は、燃料ガス化法で使用されることができ、生成物の生産量を増加させる。 付加的に、生成物の生産量は、増加させることができ、システムの複雑さは、全てのシステムに対して減少させることができる。更に、これは、殊にバイオマスを原料として使用するならば、経済的な価値に最適化する、よりいっそう小型のシステムを建造することを可能にする。
【符号の説明】
【0057】
2 電気分解装置、 3 水素ガス貯蔵器、 5 ガス化ユニット、 6 水性ガスシフト反応器、 7 炭素と水素との比の調整ユニット、 8 生成物合成ユニット、 9 炭化水素分子を燃焼させるための発電装置、 B 酸素、 C 水素、 G1、G2、G3 水素、 I 一次燃料、 J、L 合成ガス、 M 化学製品、 P 電力、 Q 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学製品(M)を提供するシステムにおいて、
該システムが電気分解装置(2)およびガス化ユニット(5)を有し、ガス化ユニット(5)には、電気分解装置(2)から生じる酸素(B)が供給され、ガス化ユニット(5)によって合成ガス(J)が製造され、この合成ガス(J)は、化学製品(M)のための原料物質であることを特徴とする、化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項2】
化学製品(M)が合成燃料である、請求項1記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項3】
後処理される合成ガス(J)は、生成物合成ユニット(8)に供給され、この生成物合成ユニット(8)は、化学製品(M)を製造し、この化学製品(M)は、電力発生装置(9)または化学プラントに供給される、請求項1または2記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項4】
ガス化ユニット(5)に供給される一次燃料(I)は、以下:石炭、石油、石油ガス、バイオマス、重油、精油所からの残渣、廃棄物、殊に有機廃棄物、スラリーの中の少なくとも1つである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項5】
合成ガス(J)が水性ガスシフト反応器(6)に供給され、この水性ガスシフト反応器(6)中で一酸化炭素は、水(Q)と化学反応で反応し、二酸化炭素と水素(G2)が形成される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項6】
水性ガスシフト反応器(6)によって製造された水素(G2)および/または電気分解装置(2)によって製造された貯蔵された水素(G1)、および合成ガス(J)は、炭素と水素との比の調整ユニット(7)に供給され、合成ガス内で炭素と水素(G3)との比を変化させ、変更された炭素と水素との比を有する変性された合成ガス(L)を生じる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項7】
変性された合成ガス(L)および水性ガスシフト反応器(6)によって製造された水素(G2)および/または電気分解装置(2)によって製造された貯蔵された水素(G1)は、生成物合成ユニット(8)に供給され、この生成物合成ユニット(8)は、錯体化合物を形成する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項8】
生成物合成ユニット(8)は、フィッシャー−トロップシュ合成法、アンモニア合成法またはエタノール合成法を実施する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項9】
化学製品(M)は、以下:合成液体燃料、合成天然ガス、炭化水素分子を有するガスまたは液体、化学的後処理のための予備化学製品の中の1つから構成されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項10】
化学製品(M)は、炭化水素分子を燃焼させるための発電装置(9)の燃焼器に供給され、電力(P)を発生させ、発電装置(9)は、特にガスタービンおよび/または蒸気タービンである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項11】
化学製品(M)を提供するシステムは、電気分解装置(2)から生じた水素(C)を貯蔵するための水素ガス貯蔵器(3)を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項12】
化学製品(M)を提供するシステムは、エネルギー貯蔵システムの電気分解装置(2)を利用し、この電気分解装置(2)は、エネルギー発生のために貯蔵可能な化合物を発生させるために使用されている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の化学製品(M)を提供するシステム。
【請求項13】
特に電力を発生させるために化学製品(M)を提供する方法において、
電気分解装置(2)から生じた酸素(B)をガス化ユニット(5)に供給し;合成ガス(J)をガス化ユニット(5)によって製造し、この場合この合成ガス(J)は、化学製品(M)のための原料物質であることを特徴とする、特に電力を発生させるために化学製品(M)を提供する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−70763(P2010−70763A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218914(P2009−218914)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】