説明

化成処理用治具

【課題】化成被膜処理においてワークの化成処理被膜形成部以外の部分を簡単かつ確実にマスキングできる化成処理用治具を提供する。
【解決手段】ワーク100のシャフト部101にシール筒体31を外嵌することによりシャフト部101を覆い、ワーク100とシール筒体31とを軸方向でかつワーク100の段差面112とシール筒体31の側端面33とが接面して互いに押圧される押圧方向に相対的に押圧することによって、ワーク100の段差面112とシール筒体31の側端面33との間をシールする。そして、ワーク100をシャフト部101が上方に位置しかつ化成処理被膜形成部114が下方に位置する姿勢状態に保持して化成処理被膜形成部114を化成処理液に浸漬し、化成処理被膜形成部114に化成被膜を形成するにあたって、シャフト部101に化成処理液が付着して化成処理被膜が形成されるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの一部分に化成処理被膜を形成するために、ワークにマスキングを行う化成処理用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークの摩擦摺動部を化成処理被膜で被膜する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば自動車のディファレンシャル装置に用いられるドライブピニオンシャフト100は、従来技術を説明する図9に示すように、丸棒形状を有するシャフト部101と、そのシャフト部101の軸方向先端部に連続して形成されたピニオンギヤ部111とからなる。
【0004】
シャフト部101は、軸方向に所定長さ延在し、ピニオンギヤ部111側の端部には、ボールベアリングなどの支承部材を介在してディファレンシャルケース(いずれも図示せず)に支持される軸支部102が形成されている。
【0005】
ピニオンギヤ部111は、シャフト部101との間に段差を介して拡径されており、ピニオンギヤ部111と軸支部102との境界部分には、軸支部102の外周面よりも径方向外側位置で軸支部102の外周に沿って周状に連続してシャフト部101の基端部側に面する段差面112が設けられている。段差面112は、シャフト部101の中心軸線に直交する方向に延在するように形成されている。そして、段差面112の外周縁からドライブピニオンシャフト100の軸方向先端側に向かって移行するにしたがって漸次縮径するようにテーパ部113が形成されており、そのテーパ部113には、複数枚の歯114が設けられている。また、ピニオンギヤ部111の先端面は、軸中心に直交する方向に延在するように形成されており、その先端面の軸中心位置には凹部115が穿設して形成されている。
【0006】
従来より、ピニオンギヤ部111の歯114は化成処理被膜形成部として、例えばリン酸マンガン処理等の化成処理が施され、化成処理被膜で被膜されている。ピニオンギヤ部111の歯114を化成処理被膜で被膜することによって、耐摩耗性が向上し、また、潤滑油の吸収性、保持性が向上して摺動部分の焼き付けを防ぎ、摺動部分の耐食性を向上させることができる。一方、ドライブピニオンシャフト100のシャフト部101には、前の工程で研削加工を施した軸支部102の研削面を残す必要があることから、化成処理は行わない。
【0007】
従来は、図9に示すように、略円筒形状を有するマスキングゴム120を用いてシャフト部101をマスキングして、ピニオンギヤ部111の歯114に化成処理を行っていた。
【0008】
マスキングゴム120の中心穴121は、シャフト部101の外周面との間に所定の隙間を有して対向する内径を有しており、その中心穴121の一方端部には、軸支部102に外嵌されるシール部122が設けられている。
【0009】
シール部122は、軸支部102との間に締め代を持たせるように軸支部102の外径よりも小径に形成されており、弾性変形により拡径することによって軸支部102に外嵌され、軸支部102を自己の弾性復元力によって縮径方向に押圧して、軸支部102の外周面に周方向に亘って密着するように構成されている。
【0010】
ドライブピニオンシャフト100のピニオンギヤ部111に化成処理を行う作業では、まず最初に、ドライブピニオンシャフト100にマスキングゴム120を取り付ける。ここでは、ドライブピニオンシャフト100のシャフト部101をマスキングゴム120の中心穴121内に挿入して、シャフト部101の軸支部102にマスキングゴム120のシール部122を外嵌させ、ピニオンギヤ部111をマスキングゴム120の外側に露出させる。
【0011】
そして、ピニオンギヤ部111が下方に位置し、シャフト部101が上方に位置する姿勢状態で、図示していない化成処理用バスケットに収容し、その化成処理用バスケットを化成処理槽の上方から降下させて、ドライブピニオンシャフト100のピニオンギヤ部111が化成処理槽の化成処理液に浸漬する高さ位置に保持し、化成処理液に浸漬してピニオンギヤ部111に化成処理を施す。
【0012】
マスキングゴム120がシャフト部101の外周面をカバーし、マスキングゴム120のシール部122が軸支部102に密着してドライブピニオンシャフト100をピニオンギヤ部111とシャフト部101に仕切り、マスキングゴム120とシャフト部101との間への化成処理液の浸入を防ぎ、シャフト部101に化成処理液が付着して化成処理が施されるのを防止している。
【0013】
そして、所定時間が経過した後に化成処理槽から引き上げて化成処理用バスケットからドライブピニオンシャフト100を取り出し、ドライブピニオンシャフト100からマスキングゴム120を取り外す。
【0014】
上記従来の化成処理作業では、マスキングゴム120のシール部122が、自己の弾性復元力により所定の押圧力で縮径方向に軸支部102を押圧し、軸支部102の外周面に周方向に亘って密着することによって、シャフト部101をシールし、ドライブピニオンシャフト100とシャフト部101との間への化成処理液の浸入を防止している。
【0015】
【特許文献1】特開2003−156575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、ドライブピニオンシャフト100にマスキングゴム120を取り付けるには、マスキングゴム120のシール部122を締め代分だけ拡径方向に押し広げながらドライブピニオンシャフト100の軸支部102を嵌め入れる必要がある。また、ドライブピニオンシャフト100からマスキングゴム120を取り外すには、所定の押圧力で縮径方向に押圧されている軸支部102をシール部122から引き抜く必要がある。したがって、マスキングゴム120のドライブピニオンシャフト100への取付作業及び取外作業は、作業者の作業負担が大きく、作業工数も多くを要する。
【0017】
本発明は、これらの問題に鑑み、従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、化成処理においてワークの化成処理被膜形成部以外の部分を簡単かつ確実にマスキングできる化成処理用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明による化成処理用治具は、シャフト部と、シャフト部の一方端部に連続して設けられる化成処理被膜形成部とを有し、シャフト部と化成処理被膜形成部との境界部分にシャフト部の外周面よりも径方向外側位置でシャフト部の外周に沿って周状に連続してシャフト部の他方端部側に面する段差面が形成されたワークを、シャフト部が上方に位置しかつ化成処理被膜形成部が下方に位置する姿勢状態に保持して化成処理被膜形成部を化成処理液に浸漬し化成処理被膜形成部に化成被膜を形成する際に、化成処理液のシャフト部への付着を防止する化成処理用治具において、シャフト部の外周面との間に所定の間隙を有してシャフト部に外嵌可能な筒状の胴部を有し、胴部の一方端部に胴部をシャフト部に外嵌した状態で段差面の全周に亘って接面する側端面が形成されたシール筒体と、ワークとワークのシャフト部に外嵌されたシール筒体とを軸方向でかつワークの段差面とシール筒体の側端面とが接面して互いに押圧される押圧方向に相対的に押圧する押圧手段とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化成処理用治具において、左右に離間して対峙する一対の側壁面部と、一対の側壁面部の間で水平に延在する回転軸を中心として回転自在に支持された支持台と、側壁面部と支持台との間に介在して支持台を予め設定された回転角度位置に係止する係止手段とを有し、シール筒体は、シール筒体の中心軸線が回転軸の中心軸線と交差する軸線に対して平行に延在する状態で支持台に固定され、押圧手段は、支持台にシール筒体の軸方向に沿って往復移動可能に支持された押圧アームと、支持台に揺動自在に支持された押圧レバーとを有し、押圧レバーを予め設定された解除位置からクランプ位置まで揺動させることにより、押圧アームを移動させて押圧アームによりワークを押圧方向に付勢し、ワークの段差面をシール筒体の側端面に押圧させることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の化成処理用治具において、左右に離間して対峙する一対の側壁面部と、一対の側壁面部の間に設けられシャフト部にシール筒体が外嵌されたワークを姿勢状態で載置可能な載置台とを有し、押圧手段は、一対の側壁面部の間でカム軸が水平に延在して回転自在に支持された押圧カムと、載置台に載置されているワークの軸方向に沿って揺動自在に支持された押圧板とを有し、押圧カムを予め設定された解除位置から押圧位置まで回転させることにより、押圧板を揺動させて押圧板によりシール筒体を押圧方向に付勢し、シール筒体の側端面をワークの段差面に押圧させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によると、ワークのシャフト部にシール筒体を外嵌することによりシャフト部を覆うことができ、ワークとシール筒体とを軸方向でかつワークの段差面とシール筒体の側端面とが接面して互いに押圧される押圧方向に相対的に押圧することにより、ワークの段差面とシール筒体の側端面との間をシールすることができる。
【0022】
したがって、ワークをシャフト部が上方に位置しかつ化成処理被膜形成部が下方に位置する姿勢状態に保持して化成処理被膜形成部を化成処理液に浸漬し、化成処理被膜形成部に化成被膜を形成する際に、シャフト部に化成処理液が付着して化成処理被膜が形成されるのを防止できる。そして、シール筒体とシャフト部の外周面との間には所定の間隙が形成されているので、シール筒体をワークに外嵌させる作業及びシール筒体をワークから取り外す作業を容易に行うことができる。したがって、従来よりも作業者の作業負担を軽減し、作業工数の削減を図ることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1に係る発明の具体的な構成の一例を示したものであり、これによれば、支持台に揺動自在に支持されている押圧手段の押圧レバーを、解除位置からクランプ位置まで揺動させることにより、押圧アームをシール筒体の軸方向に沿って移動させて、押圧アームによりワークを押圧方向に付勢し、ワークの段差面を支持台に固定されているシール筒体の側端面に押圧することができる。
【0024】
したがって、ワークの段差面とシール筒体の側端面との間をシールすることができ、ワークをシャフト部が上方に位置しかつ化成処理被膜形成部が下方に位置する姿勢状態に保持して化成処理被膜形成部を化成処理液に浸漬し、化成処理被膜形成部に化成被膜を形成する際に、シャフト部に化成処理液が付着して化成処理被膜が形成されるのを防止できる。そして、シール筒体とシャフト部の外周面との間には所定の間隙が形成されているので、シャフト部をシール筒体に嵌入する作業及びシャフト部をシール筒体から抜脱する作業を容易に行うことができる。したがって、従来よりも作業者の作業負担を軽減し、作業工数の削減を図ることができる。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1に係る発明の具体的な構成の一例を示したものであり、これによれば、押圧カムを、予め設定された解除位置から押圧位置まで回転させることにより、押圧板を揺動させて、押圧板によりシール筒体を押圧方向に付勢し、シール筒体の側端面をワークの段差面に押圧することができる。
【0026】
したがって、ワークの段差面とシール筒体の側端面との間をシールすることができ、ワークをシャフト部が上方に位置しかつ化成処理被膜形成部が下方に位置する姿勢状態に保持して化成処理被膜形成部を化成処理液に浸漬し、化成処理被膜形成部に化成被膜を形成する際に、シャフト部に化成処理液が付着して化成処理被膜が形成されるのを防止できる。そして、シール筒体とシャフト部の外周面との間には所定の間隙が形成されているので、シール筒体をシャフト部に外嵌する作業及びシール筒体をシャフト部から取り外す作業を容易に行うことができる。したがって、従来よりも作業者の作業負担を軽減し、作業工数の削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図に基づいて以下に説明する。
【0028】
(第1実施の形態)
図1は、第1実施の形態に係わる化成処理用バスケット1の構成を説明する正面図、図2は、図1のA方向矢視図、図3は、図1のB部を拡大して示す図、図4は、ドライブピニオンシャフト100の装着方法を説明する図である。なお、便宜上、図1における左側を化成処理用バスケット1の左側、図2における左側を化成処理用バスケット1の前側として説明する。
【0029】
化成処理用バスケット(化成処理用治具)1は、例えば自動車のディファレンシャル装置に用いられるドライブピニオンシャフト100とリングギヤ130とをワークとして収容可能な構成を有している。
【0030】
ドライブピニオンシャフト100は、従来と同様の構成を有しており、同様の符号を付することでその詳細な説明を省略する。リングギヤ130は、所定の厚さを有する円盤形状を有しており、一方の側面には、ドライブピニオンシャフト100の歯114と噛み合うギヤ部131が形成されている。
【0031】
化成処理用バスケット1は、図1及び図2に示すように、矩形の枠形状を有する底壁面部2と、底壁面部2の左右の両端部からそれぞれ上方に向かって延出して互いに対向する左右一対の側壁面部3を有している。
【0032】
底壁面部2は、4本の角パイプフレーム2a、2b、2c、2dをそれぞれ前後及び左右に対向して配置し、各端部を互いに結合することによって構成されている。側壁面部3は、底壁面部2の左右の両端部からそれぞれ上方に向かって延出して対をなす前縦フレーム3aと後縦フレーム3b、及び前縦フレーム3aと後縦フレーム3bの上端部間を前後方向に延在して連結する上横フレーム3cにより、略門形状を有している。
【0033】
化成処理用バスケット1には、ドライブピニオンシャフト保持手段21と、リングギヤ保持手段11とが上下に並んで設けられている。
【0034】
リングギヤ保持手段11は、底壁面部2の右下フレーム2aと左下フレーム2bとの間に亘って左右に延在する一対の丸棒部材12、12と、これら一対の丸棒部材12、12に下端が固定されて上方に向かって延出する平板状の支え板13とによって構成されている。一対の丸棒部材12、12は、図2に示すように、互いに前後に所定距離だけ離間して設けられており、その前後の離間間隔は、リングギヤ130を起立させた状態で載置したときに、間にリングギヤ130の一部が入り込んで前後に安定して保持できる間隔に設定されている。また、支え板13は、図1に示すように、底壁面部2の左下フレーム2aと右下フレーム2bとの間で左右に所定間隔をおいて複数が設けられており、間に載置されたリングギヤ130を立てかけることができるように設けられている。
【0035】
ドライブピニオンシャフト保持手段21は、ドライブピニオンシャフト100のシャフト部101が上方に位置しかつピニオンギヤ部111が下方に位置する姿勢状態でドライブピニオンシャフト100を保持してシャフト部101の軸支部102をマスキングする構成を有しており、一対の側壁面部3、3の間で回転軸28によって回転自在に支持され、係止手段5によって予め設定された角度位置に保持されるように設けられている。
【0036】
回転軸28は、図1及び図2に示すように、側壁面部3、3の略中央高さ位置で左右に延在して側壁面部3、3の間に亘って掛け渡されおり、各側壁面部3、3の略中央高さ位置で前後方向に延在する支持フレーム3d、3dに取り付けられたピロー形転がり軸受ユニット4によって、回転軸28の両端が回転自在に支持されている。
【0037】
係止手段5は、左側の側壁面部3に設けられたピロー形転がり軸受ユニット4の上方位置で上下方向に延在する支持フレーム3fに設けられており、支持フレーム3fに左右方向に移動自在に支持されるピン部5aと、そのピン部5aの先端が右側の側壁面部3に向かって突出する位置に保持するように軸方向に付勢する圧縮コイルバネ5bとを有している。
【0038】
そして、ピン部5aの基端は、左側の側壁面部3よりも外側に突出しており、圧縮コイルバネ5bの付勢力に抗して軸方向に引っ張ることにより、ピン部5aを図1に示す突出位置から左側に位置する待避位置まで移動させることができるようになっている。
【0039】
ドライブピニオンシャフト保持手段21は、図1及び図2に示すように、回転軸28の左右両側に離間して互いに対向する右側板24と左側板25、及びこれら右側板24と左側板25の間で回転軸28と平行に延在して右側板24と左側板25とを結合する4本の角パイプフレーム26とによって構成された支持台23を有している。
【0040】
支持台23の右側板24は、図2に示すように矩形の平板形状をなし、一方の側辺を基端辺24aとし、基端辺24aに対向する他方の側辺を先端辺24bとして、基端辺24aの略中央位置を回転中心とするように回転軸28に固定されている。
【0041】
そして、支持台23の左側板25は、略円形を基本とした平板形状をなし、中心に回転軸28が固定され、その外周縁の一部が右側板24の先端辺24bと平行に延在するように、直線状に切り欠かれて、先端辺25aが形成されている。
【0042】
これら右側板24と左側板25は、4本の角パイプフレーム26の各右端部が右側板24の四隅に結合され、各左端部が左側板25の対応する位置にそれぞれ結合されて、一体に箱状に形成されている。
【0043】
また、左側板25には、係止手段5のピン部5aの先端が係入して支持台23を予め設定された角度位置に保持するための係止穴25−1、25−2、25−3が開口形成されている。係止穴25−1、25−2、25−3は、図2に示すように、回転中心から径方向外側に所定距離だけ離間した位置で互いに120度の角度間隔を有して、合計で3箇所に設けられている。
【0044】
これら複数の係止穴25−1、25−2、25−3のうち、第1の係止穴25−1は、回転軸28を間に介して左側板25の先端辺25aと対向する位置に設けられており、第2の係止穴25−2は、第1の係止穴25−1から支持台23の回転方向後転側に120度の角度間隔だけ離間した位置に設けられ、第3の係止穴25−3は、支持台23の回転方向前転側に120度の角度間隔だけ離間した位置に設けられている。
【0045】
支持台23は、係止手段5のピン部5aの先端を第1の係止穴25−1に係入することによって、図1及び図2に示すように、先端側が下方に位置し基端側が上方に位置する倒立位置に保持される。そして、倒立位置から後転させて係止手段5のピン部5bを第2の係止穴25−2に係入することによって、図4に示すように、先端側が化成処理用バスケット1の前方斜め上方に向かう着脱作業位置に保持される。また、図示していないが、倒立位置から前転させて係止手段5のピン部5aを第3の係止穴25−3に係入することによって、先端側が化成処理用バスケット1の後方斜め上方に向かう着脱作業位置に保持される。
【0046】
上記構成を有する支持台23には、基板27と、シール筒体31と、押圧手段41とが設けられている。
【0047】
基板27は、図1及び図2に示すように、右側板24の先端辺24b側と左側板25の先端辺25a側との間を連結する一対の角パイプフレーム26、26間に掛け渡されて固定されており、右側板24と左側板25との間に亘って平面状に延在し、支持台23が倒立位置に保持された状態で水平となるように設けられている。
【0048】
基板27の左右の端部は、右側板24の先端片24b及び左側板25の先端片25aからそれぞれ所定距離だけ基端側に離間した位置で、右側板24の先端辺24b及び左側板25の先端辺25aに沿って延在するように右側板24及び左側板25に固定されている。
【0049】
基板27には、複数の挿着穴27aが開口して形成されており、各々にシール筒体31が取り付けられている。挿着穴27aは、基板27に対して左右に並ぶ5個を一列として回転軸28の軸方向に等間隔をおいて設けられており、図2に示すように、回転軸28を間に介して並列に配置されて、合計で10個が開口形成されている。
【0050】
シール筒体31は、樹脂製材料からなり、所定の肉厚からなる円筒状の胴部32を有している。シール筒体31の軸方向長さは、シャフト部101の軸支部102とほぼ同一の長さに設定されており、シール筒体31の中心穴の内径は、シャフト部101を挿通したときに軸支部102の外周面との間に所定の間隙を有する大きさに設定されている。
【0051】
そして、シール筒体31の先端には、シール筒体31の中心穴にシャフト部101を挿入して外嵌させた状態でドライブピニオンシャフト100の段差面112の全周に亘って接面する側端面33が形成されている。シール筒体31の側端面33は、段差面112に所定の押圧力で押圧されることによって、ドライブピニオンシャフト100をシャフト部101側とピニオンギヤ部111側とに液密的に隔絶してシールできるようになっている。
【0052】
押圧手段41は、ドライブピニオンシャフト100を軸方向に付勢して、段差面112をシール筒体31の側端面33に所定の押圧力で押圧するものであり、押圧レバー42と押圧アーム43を備えている。
【0053】
押圧レバー42は、2列に整列したシール筒体31の各列にそれぞれ対応するように、左右に対をなして右側板24の外側面と左側板25の外側面に設けられている。左側板25の外側面に設けられた押圧レバー42は、図3に実線で示すように、外側面に沿うように傾倒させたクランプ位置と、図3に二点鎖線で示すように、先端が左側板25から離間するように傾倒させた解除位置との間を揺動自在に取り付けられたレバー部42aと、レバー部42aを解除位置からクランプ位置に揺動操作することによってシール筒体31の側端面33に接近し、クランプ位置から解除位置に揺動操作することによってシール筒体31の側端面33から離間する矢印x方向に移動するフック部42bを有している。なお、右側板24に設けられた押圧レバー42の構成については、左側板25に設けた押圧レバー42と同様であるので説明を省略する。
【0054】
押圧アーム43は、断面が矩形の棒部材からなり、両端部が左右の押圧レバー42のフック部42bにそれぞれ着脱可能な構成を有している。押圧アーム43は、両端部を押圧レバー42のフック部42bに取り付けることによって、シール筒体31の側端面33から所定距離だけ離間した位置で左右方向に亘って延在し、シール筒体31に挿着されたドライブピニオンシャフト100のピニオンギヤ部111の先端面に対向する位置に配置される。
【0055】
そして、押圧レバー42のレバー部42aを解除位置からクランプ位置に揺動操作することによって、シール筒体31の側端面33に接近する方向に移動し、ドライブピニオンシャフト100のピニオンギヤ部111の先端面に当接して、ドライブピニオンシャフト100を軸方向でかつ段差面112がシール筒体31の側端面33に所定の押圧力で押圧される方向に付勢するように構成されている。
【0056】
また、押圧アーム43には、ドライブピニオンシャフト100に当接した際に、ピニオンギヤ部111の凹部115に係合する凸部43aが設けられており、ドライブピニオンシャフト100との相対的な位置決めが行われるようになっている。
【0057】
したがって、図3に実線で示すように、レバー部42aを解除位置からクランプ位置に揺動操作することによって、段差面112をシール筒体31の側端面33に所定の押圧力で押接させることができ、段差面112と側端面33との間をシールし、ドライブピニオンシャフト100をピニオンギヤ部111側とシャフト部101側とに液密的に隔絶することができる。
【0058】
次に、上記構成を有する化成処理用バスケット1を用いてドライブピニオンシャフト100及びリングギヤ130に化成処理を施す方法について以下に説明する。まず最初に、リングギヤ130の化成処理用バスケット1への収容は、リングギヤ130を起立させた状態で化成処理用バスケット1の前側又は後側から化成処理用バスケット1内に差し入れて、リングギヤ保持手段11の一対の丸棒部材12、12の間にリングギヤ130の一部が入り込むように載置し、支え板13に立てかけることによって行われる。
【0059】
次いで、ドライブピニオンシャフト100を化成処理用バスケット1に収容するには、まず、ドライブピニオンシャフト保持手段21の支持台23を後転させて、図4に示すように着脱作業位置に保持し、化成処理用バスケット1の前方斜め上方からシール筒体31の中心穴にドライブピニオンシャフト100のシャフト部101を嵌入する。ここで、シール筒体31の中心穴とシャフト部101の外周面との間には所定の間隙が形成されているので、シャフト部101をシール筒体31に容易に嵌入することができる。
【0060】
そして、ドライブピニオンシャフト100を段差面112がシール筒体31の側端面33に接面した状態で、押圧アーム43の両端部を左右の押圧レバー42のフック部42bに取り付けて、押圧レバー42のレバー部42aを解除位置からクランプ位置に揺動操作する。
【0061】
この揺動操作により、押圧アーム43がピニオンギヤ部111の先端面に当接し、ドライブピニオンシャフト100を軸方向に付勢し、段差面112がシール筒体31の側端面33に所定の押圧力で押圧される。よって、段差面112と側端面33との間をシールし、ドライブピニオンシャフト100がピニオンギヤ部111側とシャフト部101側とに液密的に隔絶した状態で支持台23に保持される。
【0062】
それから、支持台23を前転させて、図2に示す倒立位置に保持し、ドライブピニオンシャフト100を、ピニオンギヤ部111が下方に位置し、シャフト部101が上方に位置する倒立姿勢状態に保持する(図2を参照)。尚、上述の説明では、支持台23を後転させて化成処理用バスケット1の前方斜め上方からドライブピニオンシャフト100を挿着する場合を例に説明したが、支持台23を前転させて化成処理用バスケット1の後方斜め上方からドライブピニオンシャフト100を挿着してもよい。
【0063】
化成処理は、化成処理用バスケット1を図示していない化成処理槽の上方から降下させて、化成処理槽に貯留されている化成処理液にドライブピニオンシャフト100を浸漬することによって行われる。化成処理用バスケット1は、ドライブピニオンシャフト100のピニオンギヤ部111が化成処理槽の化成処理液に没入して浸漬する高さ位置に保持される。
【0064】
リングギヤ130は、化成処理用バスケット1の下部でリングギヤ保持手段11に保持されているので、完全に化成処理液中に没入され、全面に亘って化成処理被膜が形成される。そして、ドライブピニオンシャフト100は、ピニオンギヤ部111が化成処理液に浸漬されて、ピニオンギヤ部111のテーパ部113及び歯114に化成処理が施される。
【0065】
ここで、シャフト部101の軸支部102は、その外周面がシール筒体31の胴部32によって覆われている。そして、シール筒体31の側端面33が段面112に所定の押圧力で押圧されてシールされており、側端面33と段差面112との間からシール筒体31内への化成処理液の浸入が防止されている。したがって、軸支部102に化成処理液が付着して化成処理が施されるのを防ぐことができる。
【0066】
そして、所定時間が経過した後に化成処理用バスケット1を化成処理槽から引き上げて、洗浄により化成処理液を落とした後、化成処理用バスケット1からドライブピニオンシャフト100とリングギヤ130を取り出す。
【0067】
上記構成を有する化成処理用バスケット1によれば、ドライブピニオンシャフト100を軸方向に付勢してドライブピニオンシャフト100の段差面112をシール筒体31の側端面33に押圧することによって、段差面112と側端面33との間をシールすることができる。そして、シール筒体31の胴部32によって軸支部102の外周面を覆うことができる。したがって、ドライブピニオンシャフト100の歯114に化成処理被膜を形成する際に、シャフト部101を簡単かつ確実にマスキングすることができ、軸支部102に化成処理液が付着して化成処理が施されるのを防ぐことができる。
【0068】
また、押圧レバー42を解除位置からクランプ位置に揺動操作するだけで段差面112を側端面33に押圧することができ、押圧レバー42をクランプ位置から解除位置に揺動操作するだけで段差面112の側端面33への押圧を解除することができる。
【0069】
そして、シール筒体31とシャフト部101の外周面との間には所定の間隙が形成されているので、シール筒体31にシャフト部101を嵌入する作業及びシャフト部101をシール筒体31から抜脱する作業を容易に行うことができる。したがって、従来と比較して作業者の作業負担を軽減し、作業工数の削減を図ることができる。
【0070】
(第2実施の形態)
図5は、第2実施の形態に係わる化成処理用バスケット51の構成を説明する側面図、図6は、図5のC−C線断面図、図7は、図5のD方向矢視図、図8は、シール筒体61及びカラー65を拡大して示す断面図である。尚、第1実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0071】
本実施の形態に係わる化成処理用バスケット(化成処理用治具)51は、ドライブピニオンシャフト保持手段52とリングギヤ保持手段11とが上下に並べて設けられている。リングギヤ保持手段11の構成は、第1実施の形態と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0072】
ドライブピニオンシャフト保持手段52は、ドライブピニオンシャフト100のシャフト部101が上方に位置しかつピニオンギヤ部111が下方に位置して更に斜め45度に傾倒した姿勢状態でドライブピニオンシャフト100を保持してシャフト部101の軸支部102をマスキングする構成を有しており、ドライブピニオンシャフト100に着脱可能なシール筒体61と、シール筒体61を挿着した5本のドライブピニオンシャフト100を互いに平行に載置可能な載置台71と、載置台71に載置されたドライブピニオンシャフト100に対してシール筒体61を軸方向に付勢してドライブピニオンシャフト100の段差面112にシール筒体61の側端面63を所定の押圧力で押圧する押圧手段81を備えている。
【0073】
シール筒体61は、樹脂製材料によって構成されており、図8に示すように、所定の肉厚からなる円筒状の胴部62を有している。シール筒体61の中心穴の内径は、シャフト部101を嵌入したときに、シャフト部101及び軸支部102の外周面との間に所定の間隙を形成する大きさに設定されている。
【0074】
シール筒体61の先端には、シャフト部101を挿入して軸支部102に外嵌した状態でドライブピニオンシャフト100の段差部112の全周に亘って接面する側端面63が形成されている。
【0075】
シール筒体61の側端面63は、段差面112に所定の押圧力で押圧されることによって、ドライブピニオンシャフト100をシャフト部101側とピニオンギヤ部111側とに液密的に隔絶するようになっている。シール筒体61は、ドライブピニオンシャフト100の種類に応じて種々の内径及び軸方向長さを有するものが用意されている。
【0076】
シール筒体61は、カラー65に一体に取り付けられている。カラー65は、図8に示すように、シャフト部101を挿入可能な内径を有した金属製の薄肉円管部材によって形成されている。カラー65の先端には、段差を介して拡径された拡径部66が形成されており、シール筒体61の基端が嵌合されて同軸上に支持されている。カラー65の基端には、径方向外側に向かって鍔状に突出するフランジ片67が設けられている。
【0077】
シール筒体61の軸方向長さは、カラー65に取り付けられた状態で側端面63からカラー65のフランジ片67までの軸方向長さが一定の基準長さとなる大きさに設定されている。
【0078】
載置台71は、側壁面部3の略中央高さ位置において左右の側壁面部3の間に亘って架設されたビーム72を有している。ビーム72は、図5に示すように、前縦フレーム3aと後縦フレーム3bの間の略中央位置に設けられており、垂直片部72aと、垂直片部72aの下端から前方に向かって突出する水平片部72bとからなる断面が略L字形を有している。
【0079】
ビーム72の水平片部72bの前端には、前方斜め下方に向かって延出するように傾斜板部73が設けられている。傾斜板部73は、ビーム72と同様に、左右の側壁面部3の間に亘って架設されている。傾斜板部73の下端には、ドライブピニオンシャフト100を載置することによって、ピニオンギヤ部111の先端面を支持するリブ74が形成されている。
【0080】
リブ74は、傾斜板部73の下端で折曲されて前方斜め上方に向かって突設されており、リブ74の上面には、ピニオンギヤ部111の凹部115に係合してドライブピニオンシャフト100を予め設定された載置位置に位置決めする凸部75が設けられている。
【0081】
また、傾斜板部73の上端及び中央高さ位置には、ドライブピニオンシャフト100を載置した際に、ドライブピニオンシャフト100に外嵌されているシール筒体61のカラー65の上部と下部をそれぞれ支持するカラー上部支持部76とカラー下部支持部77が突設されている。
【0082】
カラー下部支持部77は、傾斜板部73から前方斜め上方に向かって突出してリブ74と平行に延在する平板形状を有しており、ドライブピニオンシャフト100を所定の載置位置に位置決めして支持できるように、カラー65を収容可能な大きさを有する平面視で略U字状の切欠部77aが切欠形成されている。
【0083】
カラー上部支持部76は、傾斜板部73から突出してリブ74と平行に延在する断面矩形の棒形状を有しており、載置されたドライブピニオンシャフト100が傾斜板部73と平行になるようにカラー65の上部を支持する大きさに形成されている。
【0084】
そして、ビーム72の垂直片部72aの上端には、ドライブピニオンシャフト100のシャフト部101を位置決め支持するシャフト部支持部78が設けられている。シャフト部支持部78は、ビーム72の上端から前方斜め上方に向かって突出する平板形状を有しており、ドライブピニオンシャフト100を所定の載置位置に位置決めして支持できるように、軸支部102を収容可能な大きさを有する平面視で略U字状の切欠部78aが切欠形成されている。
【0085】
押圧手段81は、押圧板82と押圧カム83を有している。押圧板82は、ビーム72に基端が支持されており、先端がドライブピニオンシャフト100の軸方向に沿って揺動自在に設けられている。そして、ドライブピニオンシャフト100を載置した際に、フランジ片67の上方に位置し、揺動によりフランジ片67に当接して軸方向に付勢できるように、シャフト部101を収容可能な大きさを有する平面視で略U字状の切欠部82aが切欠形成されている。
【0086】
押圧カム83は、支持フレーム3d、3d間に亘って延在して回転自在に支持されたカム軸84に取り付けられている。そして、操作ハンドル85を解除位置から押圧位置に回動操作することによって、押圧板82を揺動させてカラー65のフランジ片67に当接させ、シール筒体61を軸方向に沿って付勢し、シール筒体61の側端面63をドライブピニオンシャフト100の段差面112に所定の押圧力で押圧できるように構成されている。
【0087】
次に、上記構成を有する化成処理用バスケット51を用いてドライブピニオンシャフト100及びリングギヤ130に化成処理を施す方法について以下に説明する。なお、リングギヤ130の化成処理用バスケット51への収容は、第1実施の形態と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0088】
まず、ドライブピニオンシャフト100を倒立した姿勢状態とし、シール筒体61を側端面63側からシャフト部101に外嵌させて、シール筒体61により軸支部102を覆い、段差面112に側端面63を接面させる。
【0089】
そして、ドライブピニオンシャフト100を載置台71の上方から所定の載置位置に載せる。その際、ピニオンギヤ部111の凹部115にリブ74の凸部75を係入させ、カラー65をカラー下部支持部77の切欠部77aに収容しかつカラー上部支持部76の上に支持し、更にシャフト部101をシャフト部支持部78の切欠部78aに収容して所定の載置位置に位置決め支持する。上記作業を5本のドライブピニオンシャフト100についてそれぞれ行う。
【0090】
そして、操作ハンドル85を回動操作して解除位置から押圧位置に回転させ、押圧カム83で押圧板82を揺動させる。これにより、押圧板82をカラー65のフランジ片67に当接させてカラー65を軸方向に付勢し、シール筒体61の側端面63をドライブピニオンシャフト100の段差面112に所定の押圧力で押圧する。したがって、側端面63と段差面112との間がシールされ、ピニオンギヤ部111側とシャフト部101側とに液密的に隔絶される。
【0091】
化成処理は、化成処理用バスケット51を図示していない化成処理槽の上方から降下させて、化成処理槽に貯留されている化成処理液にドライブピニオンシャフト100を浸漬することによって行われる。化成処理用バスケット51は、ドライブピニオンシャフト100のピニオンギヤ部111が化成処理槽の化成処理液に没入して浸漬する高さ位置に保持される。
【0092】
ここで、シャフト部101の軸支部102は、その外周面がカラー65によって覆われている。そして、シール筒体61の側端面63がドライブピニオンシャフト100の段差面112に押圧されて、側端面63と段差面112との間がシールされており、側端面63と段差面112との間からシール筒体61内への化成処理液の浸入が防止されている。
【0093】
したがって、ドライブピニオンシャフト100は、ピニオンギヤ部111のテーパ部113及び歯114が化成処理液に浸漬されて、テーパ部113及び歯114に化成処理が施される一方、シャフト部101の軸支部102に化成処理液が付着して化成処理が施されるのを防ぐことができる。
【0094】
そして、所定時間が経過した後に化成処理用バスケット51を化成処理槽から引き上げて、洗浄により化成処理液を落とした後、操作ハンドル85を押圧位置から解除位置に操作し、シール筒体61の押圧を解除して、ドライブピニオンシャフト100を化成処理用バスケット51から取り出す。
【0095】
上記構成を有する化成処理用バスケット51によれば、シール筒体61を軸方向に付勢してシール筒体61の側端面63をドライブピニオンシャフト100の段差面112に押圧することによって、段差面112と側端面63との間をシールすることができる。そして、シール筒体61の胴部62及びカラー65によって、シャフト部101の軸支部102の外周面を覆うことができる。したがって、ピニオンギヤ部111の歯114に化成処理被膜を形成する際に、軸支部102を簡単かつ確実にマスキングでき、軸支部102に化成処理液が付着して化成処理が施されるのを防ぐことができる。
【0096】
また、操作ハンドル85を解除位置から押圧位置に回動操作するだけで、シール筒体61の側端面63をドライブピニオンシャフト100の段差面112に押圧することができ、操作ハンドル85を押圧位置から解除位置に回動操作するだけで、側端面63の段差面112への押圧を解除することができる。
【0097】
そして、シール筒体61と軸支部102との間には所定の間隙が形成されているので、シャフト部101の軸支部102にシール筒体61を外嵌させる作業及びシール筒体61を軸支部102から取り外す作業を容易に行うことができる。したがって、従来と比較して作業者の作業負担を軽減し、作業工数の削減を図ることができる。
【0098】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、ワークの例として、自動車のディファレンシャル装置に用いられるドライブピニオンシャフト100を例に説明したが、他のものであってもよい。また、上述の実施の形態では、複数本のワークを収容できる化成処理用バスケット1、51の場合を例に説明したが、収容するワークは単数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1実施の形態に係わる化成処理用バスケットの構成を説明する正面図である。
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】図1のB部を拡大して示す図である。
【図4】ドライブピニオンシャフトの装着方法を説明する図である。
【図5】第2実施の形態に係わる化成処理用バスケットの構成を説明する側面図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】図5のD方向矢視図である。
【図8】シール筒体及びカラーを拡大して示す断面図である。
【図9】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0100】
1、51 化成処理用バスケット(化成処理用治具)
3 側壁面部
5 係止手段
11 リングギヤ保持手段
21、52 ドライブピニオンシャフト保持手段
23 支持台
31、61 シール筒体
65 カラー
32、62 胴部
33、63 側端面
41、81 押圧手段
42 押圧レバー
43 押圧アーム
71 載置台
82 押圧板
83 押圧カム
84 カム軸
85 操作ハンドル
100 ドライブピニオンシャフト(ワーク)
101 シャフト部
102 軸支部
111 ピニオンギヤ部
112 段差面
114 歯(化成処理被膜形成部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部と、該シャフト部の一方端部に連続して設けられる化成処理被膜形成部とを有し、前記シャフト部と前記化成処理被膜形成部との境界部分に前記シャフト部の外周面よりも径方向外側位置で前記シャフト部の外周に沿って周状に連続して前記シャフト部の他方端部側に面する段差面が形成されたワークを、前記シャフト部が上方に位置しかつ前記化成処理被膜形成部が下方に位置する姿勢状態に保持して前記化成処理被膜形成部を化成処理液に浸漬し該化成処理被膜形成部に化成被膜を形成する際に、前記化成処理液の前記シャフト部への付着を防止する化成処理用治具において、
前記シャフト部の外周面との間に所定の間隙を有して前記シャフト部に外嵌可能な筒状の胴部を有し、該胴部の一方端部に前記胴部を前記シャフト部に外嵌した状態で前記段差面の全周に亘って接面する側端面が形成されたシール筒体と、
前記ワークと該ワークのシャフト部に外嵌された前記シール筒体とを軸方向でかつ前記ワークの段差面と前記シール筒体の側端面とが接面して互いに押圧される押圧方向に相対的に押圧する押圧手段と、を有することを特徴とする化成処理用治具。
【請求項2】
左右に離間して対峙する一対の側壁面部と、該一対の側壁面部の間で水平に延在する回転軸を中心として回転自在に支持された支持台と、前記側壁面部と前記支持台との間に介在して前記支持台を予め設定された回転角度位置に係止する係止手段とを有し、
前記押圧手段は、前記支持台に前記シール筒体の軸方向に沿って往復移動可能に支持された押圧アームと、前記支持台に揺動自在に支持された押圧レバーとを有し、前記押圧レバーを予め設定された解除位置からクランプ位置まで揺動させることにより、前記押圧アームを移動させて該押圧アームにより前記ワークを前記押圧方向に付勢し、前記ワークの段差面を前記シール筒体の側端面に押圧させることを特徴とする請求項1に記載の化成処理用治具。
【請求項3】
左右に離間して対峙する一対の側壁面部と、該一対の側壁面部の間に設けられ前記シャフト部に前記シール筒体が外嵌された前記ワークを前記姿勢状態で載置可能な載置台とを有し、
前記押圧手段は、前記一対の側壁面部の間でカム軸が水平に延在して回転自在に支持された押圧カムと、前記載置台に載置されている前記ワークの軸方向に沿って揺動自在に支持された押圧板とを有し、前記押圧カムを予め設定された解除位置から押圧位置まで回転させることにより、前記押圧板を揺動させて前記押圧板により前記シール筒体を前記押圧方向に付勢し、前記シール筒体の側端面を前記ワークの段差面に押圧させることを特徴とする請求項1に記載の化成処理用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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