説明

化粧シート及び化粧板

【課題】導管部のハイマット性と高い漆黒性により優れた意匠性を有し、かつ、付着した指紋が目立ちにくい耐指紋性に優れた化粧シートを提供する。
【解決手段】木目模様を有する基材上に、導管層と、前記導管層を被覆する透明保護層とを有し、導管層が、吸油度45〜100mg/100cmである導管インキからなる層であり、透明保護層が、シリカ粒子を含有する透明樹脂コート剤で形成され、シリカ粒子の平均粒子径が2〜8μmである化粧シートにより、ハイマット性や漆黒性を有しつつ、付着した指紋が目立ちにくく耐指紋性が良好となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導管部のマット感及び漆黒性に優れ、且つ付着した指紋が目立ちにくい化粧シート及びこれを使用した化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅及び非住宅分野において、木目の意匠を施した化粧材は多岐にわたり使用されている。ここでいう化粧材とは、グラビア印刷等により木目の意匠を施した化粧シート及びこれを木質基材や不燃基材などに貼り合わせた化粧板を指す。一般に、木目化粧シートやこれを貼り合わせた化粧板は、内装用の壁紙や建具収納部材として使用されているが、市場では更に天然木に近い風合いを有した意匠性が望まれている。特に収納やキッチン等の扉に関してはシンプルな取手レスタイプのデザインが求められており、人間が直接面材を押して扉を開閉するプッシュオープン方式が増えてきている。また、取手付きタイプの扉であっても、これを開ける時は取手を使用するが、閉める時は直接扉表面を押す場合が多い。よって、これらに使用される化粧材は、高意匠性だけでなく、人間の指が直接触れても指紋が目立ちにくく且つ拭き取り易い性能が必要である。
【0003】
工業製品の木目印刷化粧シートは、天然木の風合に近づけるべく従来から様々な検討がなされてきた。例えば、木目の導管部分とそれ以外の部分の艶に差をもたせて視覚的に凹凸感を現出させるグロスマット手法や、エンボス版や盛り上げ印刷により物理的凹凸を現出させる手法等があり、これらの視覚的エンボスと物理的エンボスを組み合わせた技術も開示されている。
【0004】
このような化粧シートとしては、例えば、木目印刷化粧シートにおいて、2液硬化型ウレタン系導管インキの上に2液硬化型ウレタン系ハイマット透明保護層を施し、導管部以外の部分に透明樹脂を盛り上げながら印刷することで凹凸感を設け、物理的に意匠性を向上させた化粧シートが開示されている(特許文献1参照)。尚、単に物理的な凹凸を施すだけでは天然目の意匠性を現出することが困難であるため、実施例では保護コート層にマット剤を添加することで、盛り上げインキ層とのグロスマット差による視覚的効果も付与している。
【0005】
しかしながら、この手法では導管インキ用の2液硬化型ウレタンに対して透明保護層用の2液硬化型ウレタンが染み込みにくく、その結果透明保護層の塗膜厚が厚くなり、透明保護層内に配合されたマット剤の影響によって白濁する場合があった。この場合、物理的な凹凸間や視覚的なグロスマット感は得られても、導管部の漆黒性に欠けるために意匠的には不十分であった。
【0006】
また、1液硝化綿系導管インキの上に2液硬化型ウレタン系ハイマット透明保護層を設けた化粧シートが開示されている。当該化粧シートは、耐摩耗性等の表面特性が良好で、天然目の木質感を有することが開示されているが、当該構成の化粧シートは、人間の指が接触した場合に付着する指紋が目立ちやすく且つ拭き取りにくいものであった。特に、透明保護層用樹脂に対する油脂成分の濡れ性が大きい場合や、透明保護層用樹脂中に含まれるマット剤の粒子径が小さすぎる場合は、導管部に付着した指紋が目立ちやすくなり、且つ付着した指紋も拭き取りにくい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−174795号公報
【特許文献2】特開2007−111928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、従来の化粧シートは、導管部の良好なマット性や漆黒性による高い意匠性と、耐指紋性とを兼備するものではなかった。また、単に導管部のマット性や漆黒性を向上させるだけでは、付着した指紋が目立ちやすくなる問題や、良好な意匠性が得られない問題があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、導管部のハイマット性と高い漆黒性により優れた意匠性を有し、かつ、付着した指紋が目立ちにくい耐指紋性に優れた化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の木目化粧シートは、透明保護層として粒径の大きなシリカ粒子を含有する透明樹脂インキ(透明樹脂コート剤)を使用し、導管層として当該透明樹脂コート剤の染み込みが生じる導管層を使用することで、ハイマット性や漆黒性を有しつつ、付着した指紋が目立ちにくく耐指紋性が良好となる。
【0011】
すなわち本発明は、木目模様を有する基材上に、少なくとも導管層と、前記導管層を被覆する透明保護層とを有する化粧シートであって、前記導管層が、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に導管インキを厚さ5.5μmで積層し、JIS C−2300の吸油度試験(コッブ変法)に準拠してオレイン酸を用いて測定される吸油度が45〜100mg/100cmである導管インキからなる層であり、前記透明保護層が、シリカ粒子を含有する透明樹脂コート剤で形成され、前記シリカ粒子の平均粒子径が2〜8μmである化粧シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の木目化粧シートは、導管部のハイマット性と漆黒性及び耐指紋性能とを両立させたものであり、天然木の風合いに近い高意匠性を有しながら耐指紋性能を付与してあるため、収納建具の面材等の内装材へ好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の化粧シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】盛上層を有する本発明の化粧シートの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の化粧シートの一例を示す概略断面図である。
【図4】盛上層を有する本発明の化粧シートの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化粧シートは、基材上に、少なくとも導管層と、前記導管層を被覆する透明保護層とを有し、導管層が、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に導管インキを厚さ5.5μmで積層し、JIS C−2300の吸油度試験(コッブ変法)に準拠してオレイン酸を用いて測定される吸油度が45〜100mg/100cmである導管インキからなる層であり、透明保護層が、平均粒子径が2〜8μmのシリカ粒子を含有する透明樹脂コート層から形成される化粧シートである。
【0015】
(基材)
本発明に使用する基材の種類は、一般的な内装用化粧シート用であるものを使用でき、例えば、薄葉紙、普通紙、強化紙、樹脂含浸紙等の紙質シート、チタン紙、ポリエチレンテレフタレートシート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートシート(PETGシート)、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシート、アクリルニトリルブタジエンスチレンシート、ポリプロピレンシート等の樹脂シート、及びこれらの複合シート等を使用できる。本発明の化粧シートにおいては、これらのなかでも樹脂シート又は紙質シートと樹脂シートとが積層された複合シートを使用することで、導管層を積層する表面が平滑となり良好な意匠性を確保しやすいことから好ましい。複合シートを構成する各シートは接着剤層を介して接着することができ、接着剤層としてはウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等公知の接着剤からなるものを用いることができる。また、複合シートの場合には、各種印刷層(導管層、透明保護層)を設ける表面が樹脂シート面であることが好ましい。
また、各々の基材については、印刷インキとの密着性を上げるために、表面にコロナ処理やプライマー処理を施してあってもよい。
【0016】
本発明においては、基材として木目模様を有する基材を使用することで、好適な木目柄を有する化粧シートを得ることができる。当該木目模様は、上記紙質シートや樹脂シート表面に、着色インキを印刷することで設けられる。また、必要に応じて、紙質シートや樹脂シート表面に隠蔽インキを塗布し、その上に着色インキによる木目模様を印刷してもよいが、木目模様の付与と隠蔽とを着色インキのみの印刷により行うことが工程上有利となるため好ましい。
【0017】
本発明に使用する着色インキや隠蔽用インキの種類は、一般的な内装用化粧シート用であるものを使用でき、例えば硝化綿系樹脂、酢酸ビニル塩化ビニル共重合系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等を使用でき、またこれらの混合系であってもよい。また、インキは1液型でも硬化剤で架橋させた2液硬化型でもよく、更に水系でも溶剤系でもよい。これらの中でも、浸透性が良好でポーラスな1液型セルロース系や、塗布が容易な1液水性アクリル系が好ましい。
【0018】
基材の厚さは特に制限されないが、上記シートの厚さが30〜200μmであることが後加工し易いため好ましい。また木目模様を着色インキによる木目模様印刷層により設ける場合には、当該厚さの各種シート上に木目模様印刷層が5〜10μm程度の厚さで設けられていることが好ましい。また、木目模様印刷層用インキの塗布量としては、5〜10g/mであることが好ましい。
【0019】
(導管層)
本発明に使用する導管層は、下記吸油度試験にて測定される吸油度が、45〜100mg/100cm、好ましくは45〜80mg/100cm、より好ましくは45〜60mg/100cmである導管インキからなる層である。透明保護層に使用する透明樹脂コート剤中に含まれるマット剤(シリカ粒子)の成分は、塗膜をマット化する効果はあるものの、その膜厚が大きすぎると塗膜を白濁させてしまう。特に、建材用のグラビア印刷では、透明保護層を形成する際の透明樹脂コート剤の量を少なく調整した場合、透明樹脂コート剤の転移不良やレベリング不良等の不具合が発生してしまうため、通常は5.5〜8mg/100cm(dry)が好ましい。しかし、このような塗布量がそのまま導管層上に積層されると、マット剤の影響により透明保護層が白濁し、導管部の意匠性が大きく損なわれてしまう。特に良好な意匠性を付与するにあたって、導管層の漆黒性を高くしようとすると当該白濁が顕著に生じる。
【0020】
本発明においては、導管層を透明樹脂コート剤が適度に染み込むような成分とすることで、表層に残る透明保護層の膜厚が小さくなり、その分透明保護層の透明性が向上し、良好なマット性や耐指紋性を有しつつ、導管インキ本来の漆黒性を得ることができる。なお、導管部のマット性については、透明保護コート層のごく表面に配列したマット剤に左右されるため、透明保護コート層の膜厚には殆ど影響されない。
【0021】
導管層の吸油度は、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、導管インキを厚さ5.5μm(又は塗布量6g/m(dry))で積層し、JIS C−2300の吸油度試験(コッブ変法)に準拠してオレイン酸を用いて測定される吸油度であり、詳細には下記の方法により測定される。
【0022】
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、導管インキを厚さ5.5μmで積層した試料片を作成し、試料片質量を測定する。底面が封止された断面積100cmの円柱内にオレイン酸(関東化学製・鹿1級)を注入し、円柱上部の開放部に試験片を設置した後、円柱を上下反転させ45秒間オレイン酸(鹿1級)を染み込ませる。円柱を上下反転させて試験片を取り外し、オレイン酸(鹿1級)との接触面上の余分な油を除去した後、試料片の質量を測定し、吸油前後の質量差から吸油度を算出する。
【0023】
導管層に使用する導管インキの種類としては、例えば、硝化綿系や酢酸セルロース系等がある。なかでも硝化綿系インキは取扱いが容易であり安価であるため好ましい。なお、これらのインキは最終的に透明保護コート剤によって表面が保護されるため、耐汚染性や耐擦傷性等の物性は特に要しない。従って、硬化剤等による架橋は必要とせず、1液タイプのインキを使用することが工程上有利であるため好ましい。
【0024】
上記基材上に木目模様が設けられている場合には、導管層は、当該木目模様の導管部に同調して設けられることで、より優れた木質感が得られるため好ましい。また、導管層が黒色や暗色の場合に、特に本発明の効果が得られやすい。
【0025】
導管層の厚さは、0.5〜3.5μmであると、導管層や導管層下層の印刷模様の視認性が良好となるため好ましい。また、導管インキの塗布量としては、1〜4g/mであることが好ましい。
【0026】
(透明保護層)
本発明に使用する透明保護層は、平均粒子径が2〜8μmのシリカ(Si)粒子を含有する透明樹脂コート剤から形成される層である。シリカ粒子の平均粒子径は、好ましくは2.5〜5.5μmであり、2μm未満であると、Si粒子が透明保護層表面に露出しにくく、また、透明保護層の表面が平滑になりやすいため、人間の指が触れた場合の接触面積が大きくなることで、指紋が保護コート層全面に付着しやすくなり、付着した指紋が目立ちやすくなる。同時に、保護コート層に付着した指紋も拭き取りにくくなる。
また、シリカ粒子の粒子径が8μmより大きくなると、グラビア印刷時の目詰まりを生じたり、更には粒子自体が沈降しやすくなったりするため、生産時に大きく支障をきたす場合があり、また、透明保護層のヘイズ値が高くなり意匠性が低下する。
【0027】
本発明に使用する透明樹脂コート剤は、建材用の表面保護層に用いられる各種透明樹脂コート剤が使用できる。なかでも、ウレタン系、アクリル系、もしくはこれらの混合系の硬化性樹脂コート剤を好ましく使用できる。また、コート剤は1液型でも2液硬化型でもよく、更に水系であっても溶剤系であってもよい。
【0028】
また、透明樹脂コート剤中のシリカ粒子は、マット剤として使用されるシリカ粒子であり、その形状は定型であっても不定形であってもよい。シリカ粒子の含有量は、透明樹脂コート剤中の固形分比で、7〜30質量%が好ましく、15〜20質量%が更に好ましい。
【0029】
シリカ粒子の平均粒子径は、コールター原理による3次元(粒子体積)測定により測定される粒子径であり、具体的には、粒度測定器(「マルチサイザー III」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径20μmにて測定される粒子径である。詳細な測定法の例としては、ガラス製100mlビーカーにシリカ0.1gを入れウエットール(中外写真薬品株式会社製)を1mlを添加し、ビーカーを手振りし、シリカを濡れさせる。その後、このビーカーに電解液ISOTON II(ベックマンコールター社製)80mlを添加し、この混合液を超音波分散器で10分間分散処理しシリカ分散液を作成する。次にマルチサイザー IIIの測定室内のISOTON IIを入れた測定用容器に測定器が示す濃度が8±2%になるようにシリカ分散液を滴下し、粒径測定を実施する。
【0030】
また、透明保護コート層は、木目化粧シートの表面に露出する部分となるため、耐汚染性や耐溶剤性や耐擦傷性を付与するために、適宜添加剤などを配合することが出来る。
【0031】
本発明に使用する透明保護層は、そのヘイズ値が90%以下であることが、導管部の漆黒性を十分に得るため好ましい。
【0032】
本発明に使用する透明保護層は、そのグロス値が0.1〜15であることが好ましく、0.1〜5であることがより好ましく、導管部の十分なハイマット性を得るためには0.1〜0.9がさらに好ましい。
【0033】
また、透明保護層の人工汗液(酸・アルカリ)に対する接触角が100度以上であることが、指紋が付着しにくく、付着した指紋を拭き取りやすいため好ましい。
【0034】
透明保護層の厚さは、透明保護層下層の模様の視認性や、好適な透明性を確保する観点から、2〜10μmであることが好ましく、5〜7μmであることがより好ましい。また、透明保護コート剤の塗布量としては、5.5〜8g/mであることが好ましい。
【0035】
(盛上層)
本発明の化粧シートは、透明保護層の表層に盛上層を設けることで、物理的な意匠性を付与することができる。当該盛上層は高粘度の透明インキにより形成できる。高粘度の透明インキとしては、例えば、2液硬化型ウレタン系の透明インキが印刷適性や表面物性及び意匠性のバランスがよいため好ましく使用できる。
【0036】
盛上層は、任意のパターンにて形成すればよいが、導管層と反転する版にて透明インキを印刷して形成される盛上層によれば、盛上層と導管部の高低差による立体的な意匠性を得ることができ、特に良好な意匠性を実現できるため好ましい。
この時、盛上層の艶を導管層よりも高くすることで、導管層とのグロスマット効果が生じ、より意匠性を向上させることが出来る。具体的には、盛上層のグロス値を3〜40、好ましくは3〜25とし、導管層と盛上層とのグロス値の差を3〜10とすることが好ましい。
【0037】
(用途)
本発明の化粧シートは、これ単体に接着剤を介して壁材に貼り合せる、いわゆる壁紙として使用できる。なお、あらかじめ化粧シートの裏面(基材面)に粘着加工等を施し、直接壁や部材に貼り合せることもできる。
また、本発明の化粧シートを、接着剤を介して木質基板や不燃基板等の基板に貼り合わせ、化粧板とすることも出来る。木質基板の具体的な例としては、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、ハードボード、インシュレーションボードなどが全て使用でき、また不燃基板の具体的な例としては、繊維強化セメント板、ガラス繊維混入セメント板、繊維混入珪酸カルシウム板、アルミニウム板、金属板、せっこうボード、グラスウール板などが全て使用できる。また、これら基板に貼り合せるための接着剤については、適宜選定すればよい。
【0038】
(実施態様)
本発明の化粧シートの具体的な好ましい構成例としては、例えば、樹脂基材シート1a上に、木目模様印刷層1bが設けられた基材1上に、導管インキにより木目模様の導管部と同調した導管層2が設けられ、当該導管層を被覆する透明保護層3が設けられた構成(図1)を例示できる。また、当該構成において基材1が、樹脂基材シート1aと、紙質基材1cとが、接着剤層1dを介して積層され、樹脂基材シート1a表面に、木目模様印刷層1bが設けられた基材1である構成(図3)、さらには、これら構成の化粧シートの透明保護層3上に、導管層と反転する版にて導管層以外の部分に透明インキからなる盛上層4が設けられた構成(図2、図4)を好ましく例示できる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
60g/mラテックス含浸紙に2液硬化型ウレタン系接着剤を介して両面コロナPETシートを貼り合わせた基材aを用意した。aに対し、グラビア印刷機を使用し、コロナPET面に対して着色且つ隠蔽層として1液水性アクリル系インキ(DIC製・ダークブラウン色)を印刷した(塗布量:2.0g/m・dry)。次に、グラビア印刷機を使用し、導管インキ層として1液水性硝化綿系インキ(DIC製・漆黒色)を印刷した(塗布量:1.5g/m・dry)。更に、グラビア印刷機を使用し、透明保護層として平均粒子径3μmの不定形シリカを固形分比で17質量%含有する透明艶消しウレタン系コート剤(DIC製・イソシアネート硬化型)を印刷した。(図1)
【0040】
(実施例2)
導管インキとして、酢酸セルロース系インキ(DIC製・ダークブラウン色)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを作成した。
【0041】
(実施例3)
透明保護層として平均粒子径5μmの不定形シリカを固形分比で17質量%含有する透明艶消しウレタン系インキ(DIC製・イソシアネート硬化型)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを作成した。
【0042】
(比較例1)
導管インキとして、ウレタン系(DIC製・イソシアネート硬化型・漆黒色)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを作成した。
【0043】
(比較例2)
導管インキとして、アクリル系(DIC製・漆黒色)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを作成した。
【0044】
(比較例3)
透明保護層として平均粒子径1μmの不定形シリカを固形分比で17質量%含有する透明ウレタン系インキ(イソシアネート硬化型)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で化粧シートを作成した。
【0045】
上記実施例および比較例の化粧シート、ならびに、各化粧シートに使用した導管層及び透明保護層につき、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0046】
<透明保護層のヘイズ値>
使用した透明保護コート剤を、ヘイズ0.6のPETシートに塗膜厚が7μmとなるように塗工し、そのヘイズ値を測定した。ヘイズ値の測定は、JIS K7136に準拠して、ヘーズメーターHZ−2P(スガ試験機株式会社製、測定光:C光源、測光方式:ダブルビーム方式)にて測定した。
【0047】
<透明保護層のグロス値>
実施例及び比較例にて得られた化粧シートの透明保護コート層に、人工汗液酸性(伊勢久株式会社製 Pure Chemicals:90044003)及び人工汗液アルカリ性(伊勢久株式会社製 Pure Chemicals:90044004)を滴下した際の接触角を、協和界面科学株式会社製CA−X型接触角計により測定した。
【0048】
<導管インキの吸油度>
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、上記実施例及び比較例にて使用した導管インキを厚さ5.5μmで積層した試料片を作成し、吸油前の試料片質量を測定した。底面が封止された断面積100cmの樹脂性円柱内にオレイン酸(関東化学製・鹿1級)を注入し、円柱上部の開放部に試験片を設置した後、円柱を上下反転させ45秒間オレイン酸(鹿1級)を染み込ませた。円柱を上下反転させて試験片を取り外し、オレイン酸(鹿1級)との接触面上の余分な油をキムタオルにて除去した後、吸油後の試料片質量を測定し、吸油前後の質量差から吸油度を算出した。
【0049】
<導管部のハイマット性>
実施例及び比較例にて得られた化粧シートの導管部上の透明保護層のグロス値を測定した(測定器:株式会社堀場製作所製グロスチェッカIG−320)。グロス値が小さいほどマット性が高く、測定値については以下の基準で評価した。
◎:グロス値が1未満 (ハイマット性高)
○:グロス値が1〜15(ハイマット性中)
▲:グロス値が15超 (ハイマット性低)
【0050】
<導管部の漆黒性>
実施例及び比較例にて得られた化粧シートの導管部の漆黒性について評価した。評価は目視で行い、以下を基準とした。
◎:白濁が見られず鮮明な漆黒性を有する(漆黒性高)
○:若干の白濁が確認されるが導管部全体として良好な漆黒性を有する(漆黒性中) ▲:白濁が確認され、導管部全体として漆黒性が低い(漆黒性低)
【0051】
<指紋の目立ちにくさ>
実施例及び比較例にて得られた化粧シートに指紋を付着させ、その目立ちにくさを評価した。付着した指紋の状態を、下記の基準により評価した。
○:指紋による艶が目立たない
▲:指紋による艶が生じる
【0052】
<指紋の拭き取りやすさ>
実施例及び比較例にて得られた化粧シートに指紋を付着させ、その目立ちにくさについて評価した。指紋を付着させ、常温環境下で48時間放置後、水道水を含ませたウエスで10往復させ、付着した指紋を拭き取る。拭き取り後の状態を下記の基準により評価した。
○:水拭きで指紋が拭き取れる
▲:水拭きで指紋が殆ど拭き取れない
【0053】
【表1】

【0054】
上記表1の通り、本発明の実施例1〜3の化粧シートは、導管部の良好なハイマット性と高い漆黒性を有し、且つ付着した指紋が目立ちにくく拭き取りやすい結果となった。一方、比較例1及び2の化粧シートについては、導管部が白濁し、漆黒性に乏しい結果となった。また、比較例3の化粧シートについては、付着した指紋が目立ちやすく且つ水道水を含ませたウエスで拭き取りにくい結果となった。
【符号の説明】
【0055】
1 基材
1a 樹脂基材シート
1b 木目模様印刷層
1c 紙質基材シート
1d 接着剤層
2 導管層
3 透明保護層
4 盛上層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木目模様を有する基材上に、少なくとも導管層と、前記導管層を被覆する透明保護層とを有する化粧シートであって、
前記導管層が、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に導管インキを厚さ5.5μmで積層し、JIS C−2300の吸油度試験(コッブ変法)に準拠してオレイン酸(鹿1級)を用いて測定される吸油度が45〜100mg/100cmである導管インキからなる層であり、
前記透明保護層が、シリカ粒子を含有する透明樹脂コート剤で形成され、前記シリカ粒子の平均粒子径が2〜8μmであることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明保護層のヘイズ値が90%以下である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記導管層の厚さが0.5〜3.5μmであり、前記透明保護層の厚さが5.0〜7μmである請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記導管層が前記木目模様と同調するように、前記木目模様上に設けられた請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記透明保護層上に、盛上層が設けられた請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記盛上層が、前記導管層と反転する版にて設けられた盛上層である請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記透明保護層の表面グロス値が0.1〜15であり、前記盛上層のグロス値が3〜40である請求項5又は6に記載の化粧シート。
【請求項8】
基板上に、請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートが積層されていることを特徴とする化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18231(P2013−18231A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154830(P2011−154830)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(392036821)DICデコール株式会社 (6)
【Fターム(参考)】