説明

化粧シート

【課題】 不燃性能を有し、耐汚染性や耐擦傷性、耐水性などの物性に優れた化粧シートを提供することである。
【解決手段】 膨張黒鉛シートの一方の面に第1接着剤層を介して化粧層を積層したことを特徴とする化粧シートであり、また、前記膨張黒鉛シートの他方の面に第2接着剤層を介して繊維質基材層を積層したことを特徴とする化粧シートであり、前記膨張黒鉛シートはその厚さが0.1〜1.0mmであって、密度が0.96〜1.60g/cm3であることを特徴とする化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の安全性に優れると共に、耐汚染性や耐擦傷性、耐水性などの物性に優れた化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、市販されている代表的な壁紙としては、紙や不織布等の繊維質基材にカレンダー法やコーティング法により可塑剤、着色剤、充填剤等を配合した塩化ビニル樹脂層を形成し、該塩化ビニル樹脂層の表面に印刷、ケミカルエンボスないし機械的エンボスを付与して化粧層を形成した塩ビ壁紙、あるいは、前記塩化ビニル樹脂層に発泡剤を添加して塩化ビニル樹脂層を発泡層にして立体感をもたらした塩ビ壁紙が知られている。
【0003】
しかしながら、上記の塩ビ壁紙は、自己消化性を有するものの熱により容易に溶融すると共に、特に火災の際には塩化ビニル樹脂が熱分解して多量の有毒性の塩素ガスを発生するという問題があるし、また、焼却処理時においても上記と同様な問題がある。
【0004】
そこで、前記塩化ビニル樹脂に替えてアクリル系樹脂やオレフィン系樹脂を用いた非塩ビ壁紙が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この種の非塩ビ壁紙は可燃性であり、アクリル系樹脂やオレフィン系樹脂に難燃剤および/ないし無機充填剤を添加するなり、あるいは、難燃性の裏打紙を用いるなりの種々の難燃性を付与する手段が採られている。しかしながら、上記した塩ビ壁紙、あるいは、非塩ビ壁紙のいずれの壁紙も不燃性を満足するまでには至っていない。
【特許文献1】特開平10−53966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、不燃性能を有し、耐汚染性や耐擦傷性、耐水性などの物性に優れた化粧シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明の化粧シートは、膨張黒鉛シートの一方の面に第1接着剤層を介して化粧層を積層したことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の化粧シートにおいて、前記化粧層がその表層に表面保護層を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1、2のいずれかに記載の化粧シートにおいて、前記膨張黒鉛シートの他方の面に第2接着剤層を介して繊維質基材層を積層したことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シートにおいて、前記膨張黒鉛シートはその厚さが0.1〜1.0mmであって、密度が0.96〜1.60g/cm3であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧シートは、膨張黒鉛シートを用いた構成とすることにより、不燃性能を有する化粧シートとすることができ、火災時の安全性に優れるという効果を奏する。また、本発明の化粧シートは、化粧層の表層に表面保護層、特に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を備えた構成とすることにより、耐汚染性や耐擦傷性、耐水性などの物性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明にかかる化粧シートの基本的な第1実施形態の層構成を図解的に示す図、
図2は本発明にかかる化粧シートの基本的な第2実施形態の層構成を図解的に示す図であり、図中の1,1’は化粧シート、10は化粧層、20は第1接着剤層、30は膨張黒鉛シート、40は第2接着剤層、50は繊維質基材層をそれぞれ示す。
【0012】
図1は本発明にかかる化粧シートの基本的な第1実施形態の層構成を図解的に示す図
であって、化粧シート1は、膨張黒鉛シート30の一方の面と化粧層10とを第1接着剤層20を介して積層したものである。
【0013】
前記膨張黒鉛シート30としては、天然黒鉛やキャッシュ黒鉛等の結晶構造の発達した黒鉛を硫酸および/ないし硝酸などの酸化剤で酸化処理し、それを水洗後に熱により加熱処理して得られた綿状の黒鉛(膨張黒鉛)を加圧成形(圧縮)して得られるシートであるが、必要に応じて前記シートに含まれる硫黄や鉄分等の不純物をハロゲンガス等で除去して、より純粋な膨張黒鉛からなるシートとしてもよいものである。前記膨張黒鉛シート30の厚さとしては、0.1〜1.0mmであって密度が0.80〜1.60g/cm3、好ましくは0.2〜0.8mmであって密度が0.96〜1.3g/cm3である。厚さが0.1mm未満では取扱性が悪く、1.0mm超ではコスト対効果の面から避ける方が望ましい。また、密度が0.80g/cm3未満では脆さの点で取扱性が悪く、1.60g/cm3超ではコスト対効果の面から避ける方が望ましい。
【0014】
次に、前記化粧層10について説明する。前記化粧層10を構成する化粧層基材としては、加工適性に優れ、燃焼時に有害なガスを発生しないことなどから、その一つを例示するならば、飽和ポリエステル、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレンαオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、あるいは、これらの混合物等からなるフィルム系基材を挙げることができ、これらは未延伸の状態であっても、一軸ないし二軸方向に延伸した状態のいずれの状態であってもよく、厚さとしては概ね25〜250μmが適当である。また、前記化粧層基材の別の一つを例示するならば、建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙等の紙質系基材を挙げることができ、坪量としては概ね23〜200g/m2が適当である。これらのフィルム系基材ないし紙質系基材は必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の適宜の易接着処理を施してもよいものである。
【0015】
また、前記化粧層10は、通常、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄等の絵柄がグラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法でインキを用いて前記化粧層基材に形成される。インキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができるが、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。なお、前記化粧層基材の前記絵柄を設ける面は、意匠性や物性等を考慮して適宜決めればよいものである。
【0016】
また、前記化粧層10を構成する前記化粧層基材には、必要に応じて必要な面に、インキ用プライマー層や後述する表面保護層用プライマー層を設け、層間の接着強度を向上させることができる。これらのプライマー層の形成は、ポリオール成分とイソシアネート成分とからなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、グラビア印刷法、ロールコート法等の周知の塗布方法で形成すればよいものである。前記ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができ、イソシアネート成分としては、TDI、MDI、HDI、PIDI、XDI等のジイソシアネートおよびこれらを出発原料とする変性体を挙げることができる。プライマー層の乾燥後の塗布量としては、0.1〜5.0g/m2であり、好ましくは0.5〜1.0g/m2である。
【0017】
次に、前記第1接着剤層20について説明する。前記第1接着剤層20としては、前記膨張黒鉛シート30と前記化粧層10とを強固に接着することができる接着剤であれば特に限定するものではなく、周知ないし市販されているものを使用することができ、たとえば、前段で説明したポリオール成分とイソシアネート成分とからなる2液硬化型ポリウレタン接着剤で形成すればよいものであるし、また、塗布量や作業性および作業環境を考慮すると、湿気硬化型ホットメルト接着剤が好ましい。
【0018】
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端にイソシアネート基をそれぞれ1個以上有するポリイソシアネートプレポリマーであり、常温で固体の熱可塑性樹脂の状態にあるものである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こし、分子鎖中に尿素結合を有する反応物を生じ、この尿素結合にさらに分子末端のイソシアネート基が反応し、ビューレット結合を起こして分枝し、架橋反応を起こす。分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの分子鎖の骨格構造は任意であるが、具体的には、ウレタン結合を有するポリウレタン骨格、エステル結合を有するポリエステル骨格、ポリブタジエン骨格等である。これらの1種ないし2種以上の骨格構造を適宜採用することにより、接着剤物性を調整することができる。なお、分子鎖中にウレタン結合がある場合は、このウレタン結合とも末端イソシアネート基が反応して、アロファネート結合を生じ、このアロファネート結合によっても架橋反応を起こす。
【0019】
ポリイソシアネートプレポリマーの具体例としては、たとえば、ポリオールに過剰のイソシアネートを反応させた分子末端にイソシアネート基を有し、かつ、分子鎖中にウレタン結合を有するポリウレタン骨格の、ウレタンプレポリマーがある。また、特開昭64−14287号公報に開示されているような、ポリイソシアネートにポリエステルポリオールとポリブタジエン骨格を有するポリオールとを任意の順序で加えて付加反応させて得られたポリエステル骨格とポリブタジエン骨格とがウレタン結合により結合された構造を有し、かつ、分子末端にイソシアネート基を有する結晶性ウレタンプレポリマー、あるいは、特開平2−305882号公報に開示されているような、ポリカーボネート系ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られる分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリカーボネート系ウレタンプレポリマー、ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られる分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリエステル系ウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0020】
また、湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、上記した各種ポリイソシアネートプレポリマーの他に、各種物性を調整するために、上記した必須反応成分に、必要に応じて、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、可塑剤、充填剤等の各種副材料を添加することも出来る。これらの副材料としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、低分子量ポリエチレン、変性ポリオレフィン、アタクチックポリプロピレン、線状ポリエステル、エチレン−エチルアクリレート(EAA)、エチレン−メタクリレート(EMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等の熱可塑性樹脂、テルペン−フェノール樹脂、アビエチン酸ロジンエステル等の粘着付与剤、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ等の微粉末からなる充填剤(体質顔料)、着色顔料、硬化触媒、水分除去剤、貯蔵安定剤、老化防止剤等である。なお、前記第1接着剤層21および前記第2接着剤層3の塗布量としては、固形分として概ね20〜60g/m2である。
【0021】
図2は本発明にかかる化粧シートの基本的な第2実施形態の層構成を図解的に示す図であって、化粧シート1’は図1に示した第1実施形態の化粧シート1の前記膨張黒鉛シート30の他方の面に繊維質基材層50を第2接着剤層40を介して積層したものであり、これ以外は第1実施形態の化粧シート1と同じである。
【0022】
前記繊維質基材層50としては、スルファミン酸グアニジンやリン酸グアニジンなどの水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙、あるいは、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機質剤を混抄した無機質紙などの通常壁紙用裏打紙といわれているもの、あるいは、ガラス繊維や炭素繊維等の無機系繊維からなる不織布や織布を用いることができ、その坪量としては50〜300g/m2、好ましくは70〜160g/m2であるが、これに限定されるものではない。なお、前記第2接着剤層40としては前記第1接着剤層20で説明したものと同じものを用いればよいのであって、説明は省略する。
【0023】
次に、図示はしなかったが、前記化粧層10の表層に耐汚染性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性等の表面物性を付与するために、表面保護層を形成してもよいものである。
この表面保護層を形成する樹脂としては、従来から周知ないし市販されている熱硬化型樹脂、あるいは、電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは表面硬度が硬く、酸化した植物性や動物性の油が付着しても簡単に拭き取ることができると共に生産性においても優れるなどの理由から電離放射線硬化型樹脂である。
【0024】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
【0025】
電離放射線硬化型樹脂は、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。尚、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0026】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速い為、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0027】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0029】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ−ト等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0030】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。又、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。尚、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。また、この電離放射線硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、この電離放射線硬化型樹脂を塗布可能な粘度に調節し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより形成することができる。塗布量としては、固形分として概ね3〜15g/m2が適当である。
【0031】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0032】
〔化粧シートAの作製〕
50μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと呼称する)の一方の面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥後に0.5g/m2となるようにグラビア印刷法で塗布してインキ用プライマー層を形成し、該インキ用プライマー層面にアクリル系インキを用いてグラビア印刷法で木目模様の絵柄層を形成した後、前記PETフィルムの他方の面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥後に0.5g/m2となるようにグラビア印刷法で塗布して表面保護層用プライマー層を形成し、該表面保護層用プライマー層面に電離放射線硬化型樹脂をロールコート法にて塗布して後に電子線(175KeV、5Mrad)を照射して10g/m2の表面保護層を形成した化粧シートAを作製した。
【0033】
〔化粧シートBの作製〕
前記化粧シートAの絵柄層面に接着剤〔中央理化工業(株)製:リカボンドBA−10L(100重量部)に対してBA−11B(2.5重量部)を添加した接着剤〕をロールコート法を用いて乾燥後に約55g/m2となるように塗布すると共に該塗布面に膨張黒鉛シート〔東洋炭素(株)製:厚みが0.2mm、密度が1.0g/cm3〕を積層した化粧シートBを作製した。
【0034】
〔化粧シートCの作製〕
前記化粧シートBの前記膨張黒鉛シート面に接着剤〔中央理化工業(株)製:リカボンドBA−10L(100重量部)に対してBA−11B(2.5重量部)を添加した接着剤〕をロールコート法を用いて乾燥後に約55g/m2となるように塗布すると共に該塗布面に60g/m2の壁紙用裏打紙を積層した化粧シートCを作製した。
【0035】
[試験体1]
2.5mm厚さの中密度繊維板(MDF)の一方の面に接着剤〔中央理化工業(株)製:リカボンドBA−10L(100重量部)に対してBA−11B(2.5重量部)を添加した接着剤〕をロールコート法を用いて乾燥後に約55g/m2となるように塗布すると共に該塗布面に絵柄層面が位置するように前記化粧シートAを積層した試験用化粧板を作製した。
【0036】
[試験体2]
2.5mm厚さの中密度繊維板(MDF)の一方の面に接着剤〔中央理化工業(株)製:リカボンドBA−10L(100重量部)に対してBA−11B(2.5重量部)を添加した接着剤〕をロールコート法を用いて乾燥後に約55g/m2となるように塗布すると共に該塗布面に膨張黒鉛シートが位置するように前記化粧シートBを積層した試験用化粧板を作製した。
【0037】
[試験体3]
2.5mm厚さの中密度繊維板(MDF)の一方の面に接着剤〔中央理化工業(株)製:リカボンドBA−10L(100重量部)に対してBA−11B(2.5重量部)を添加した接着剤〕をロールコート法を用いて乾燥後に約55g/m2となるように塗布すると共に該塗布面に壁紙用裏打紙が位置するように前記化粧シートCを積層した試験用化粧板を作製した。
【0038】
上記で作製した試験体1、2、3について発熱性試験(ISO 5660−1に準拠)を行い、その結果を表1に纏めて示した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1からも明らかなように、膨張黒鉛シートを用いた試験体2、3はいずれも不燃材料として適合するものである。
【0041】
なお、本発明の化粧シートは、壁面材(壁紙)としてのみならず、天井材や間仕切りの表面材、家具や什器等の外面化粧材としても利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかる化粧シートの基本的な第1実施形態の層構成を図解的に示す図である。
【図2】本発明にかかる化粧シートの基本的な第2実施形態の層構成を図解的に示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1’ 化粧シート
10 化粧層
20 第1接着剤層
30 膨張黒鉛シート
40 第2接着剤層
50 繊維質基材層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張黒鉛シートの一方の面に第1接着剤層を介して化粧層を積層したことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記化粧層がその表層に表面保護層を備えていることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
【請求項3】
前記膨張黒鉛シートの他方の面に第2接着剤層を介して繊維質基材層を積層したことを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項4】
前記膨張黒鉛シートはその厚さが0.1〜1.0mmであって、密度が0.96〜1.60g/cm3であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−136694(P2007−136694A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329611(P2005−329611)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】