説明

化粧シート

【課題】軽荷重のキズと高荷重のキズの両方に対処できる安価で製造容易な化粧シートを提供する。
【解決手段】立体規則性がC13−NMRにより求めたIP値で98〜99%で且つ分子量分布(Mw/Mn)が10〜15の広い分布を持ち、更にアルミニウムヒドロキシジ−パラt−ブチルベンゾエート等の芳香族カルボン酸塩、ジベンジリデンソルビトール、ジメチルジベンジリデンソルビトール等のソルビトール系誘導体、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の有機リン酸塩、珪酸マグネシウム等の核剤を少なくとも1種含む透明または半透明の表面樹脂層4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の化粧シートは、天井、床、壁、扉、家具等の各種建築部材の表面に貼りあわせて用いる化粧シートに関するものであって、特には耐傷付き性を求められる床、階段用の化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の化粧シート裏面に硬いバッカー層を貼りあわせた物や、表面の保護コート層に電離放射線硬化樹脂を用いたハードコート層を設けた物印刷基材にポリエステル系樹脂を用いた物ポリプロピレン樹脂の立体規則性がC13−NMRにより求めたIP値で98〜99%の高立体規則性PPを用いた物がある。更に上記の組み合わせもある。
【0003】
通常の化粧シート裏面に硬いバッカー層を貼りあわせた物は高荷重のキズには強いものの軽荷重のキズに対しては通常の化粧シートと大きく変らない。また、価格的にも高いものとなることとその厚みと硬さから枚用での運用となり、巻きでの活用が出来ない。表面の保護コート層に電離放射線硬化樹脂を用いたハードコート層を設けた物については軽荷重のキズには強いものの、コート下の素材まで影響のある高荷重のキズに対しては対処できない。
【0004】
印刷基材にポリエステル系樹脂を用いた物については裏面にバッカー層を用いたものと
大きく変わらず、やはり軽荷重の傷が付きやすい。ポリプロピレン樹脂の立体規則性がC13−NMRにより求めたIP値で98〜99%の高立体規則性PPを用いた物は比較的表面の硬度は上がる物の、結晶化度が十分高い訳ではない為、通常のポリプロピレンよりは硬い物の、十分とは言えなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、軽荷重のキズと高荷重のキズの両方に対処できる安価で製造容易な化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1の発明は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなる0.1〜0.25mm厚みの基材シート表面に絵柄模様層と接着層及びポリプロピレン系樹脂からなる透明または半透明の表面樹脂層が少なくともこの順序で順次積層されてなる化粧シートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の立体規則性がC13−NMRにより求めたIP値で98〜99%で且つ分子量分布(Mw/Mn)が10〜15の広い分布を持ち、更にアルミニウムヒドロキシジ−パラt−ブチルベンゾエート等の芳香族カルボン酸塩、ジベンジリデンソルビトール、ジメチルジベンジリデンソルビトール等のソルビトール系誘導体、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の有機リン酸塩、珪酸マグネシウム等の核剤を少なくとも1種含むことを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0007】
ポリプロピレンの結晶化度はその樹脂自体の立体規則性が高いと向上すると同時に結晶核剤を添加することにより球晶の大きさが小さく均一になり結晶化速度が向上することで更に高められる。また、分子量分布が広いことで層として剛性があがる効果があり、これにより本発明の化粧シートは硬い基材シートと結晶化度と剛性のきわめて高いポリプロピレンで構成され、比較的軽荷重のスリキズから高荷重のキャスターキズの両方に対応できる化粧シートとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。基材シート1上に絵柄模様層2、接着層3、透明または半透明の表面保護層4からなる。
【0009】
本発明に用いる基材シート1にはポリエステル系樹脂を用いるがその種類としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等があるが、耐熱性、コストを比較するとポリブチレンテレフタレートが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは耐熱性に問題があり、ポリエチレンナフタレートは価格が高価である。厚みについては0.1〜0.25mmが適当で、それよりも厚い場合は巻取りにくく印刷やラミネートに支障をきたす。0.1mm未満だと目的とする表面硬度が得られない。
【0010】
また、基材シート1の製造方法としてTダイ押出法を用いる場合には、基材シート1を製膜するための合成樹脂材料を染料や顔料などの隠蔽性のある着色剤により直接着色して加熱溶融状態でTダイから押出して、基材シート1を製膜することにより隠蔽性の効果を持たせることもできる。この場合のTダイ押出法における基材シート1の着色方法としては、顔料を分散助剤や界面活性剤で処理した微粉末状の着色剤を、基材シート1を製膜するための着色されていない通常の合成樹脂材料中に直接混入して使用するドライカラー法、あるいは基材シート1を製膜するための着色されていない通常の合成樹脂材料と高濃度の顔料とを溶融混練して予備分散せしめたマスターバッチペレットを予め作成し、押出ホッパ内で、このマスターバッチペレットと基材シート1を製膜するための着色されていない通常の合成樹脂材料とをドライブレンドするというマスターバッチ法等があるが、特に限定される物ではない。
【0011】
顔料の種類も通常用いられているものでよいが、特に耐熱性、耐候性を考慮して、酸化チタン、群青、カドミウム顔料、酸化鉄等の無機顔料が望ましい。また有機顔料でもフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等は使用できる。顔料の対樹脂比率や色は、隠蔽の度合い、意匠性を鑑みて適宜決められる物であり、特に制約はない。
【0012】
本発明に用いる絵柄模様層2としては、所望の絵柄を印刷インキ等によって設けたものがあげられる。設ける方法としてはグラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等があり特に規定する物ではないが一般的にはグラビア印刷法が用いられる。また用いられるインキも公知の物、すなわちビヒクルに染料または顔料等の着色剤や体質顔料などを添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加して溶剤、稀釈剤等で十分混練してなるインキが使用可能である。
【0013】
基材シート1に絵柄層2を施す方法としては前記のような印刷方式や転写方式を用いることが出来るがそれとは別に、高濃度の顔料を基材シート1の樹脂とは流動特性の異なる樹脂に溶融混練して予備分散せしめたマスターバッチペレット、あるいは木粉、ガラス粉末等を、基材シート1を製膜するための隠蔽性を付与した上記合成樹脂材料に添加して加熱溶融し、押出し、製膜して隠蔽性のある基材シート1自体にマスターバッチペレットや木粉、ガラス粉末等による絵柄を形成する方法もある。勿論、基材シート1自体に着色隠蔽性や絵柄を形成するこれらの方法と前述した印刷方法、転写方法等を併用することもできる。
【0014】
また、基材シート1の製造方法としてカレンダー法を用いる場合にも、同様の手法、即ち基材シート1自体に着色隠蔽性や絵柄模様を形成する方法、またはこれらの方法と前述した印刷方法、転写方法等とを併用した手法で、基材シート1に対して絵柄模様層2を形成することができる。
【0015】
また、どのような方法で絵柄模様層2を施すにしろ、前記基材シート1と密着性が元々低いものもある為、コロナ放電処理、フレイム処理、プラズマ処理等の表面改質処理を前記基材シート1の絵柄模様層2を設ける面に事前に行うことも好適に行われる。
【0016】
本発明における接着層3は、絵柄模様層2を設けた基材シート1と透明または半透明の表面保護層4とを接着するために設けるものであり、その材料等については特に限定するものではない。また、前記接着するための方法としては、ドライラミネート法、押出しラミネート法などが公知であり、特に規定しない。
【0017】
ドライラミネート法により形成する場合には、あらかじめ透明または半透明の表面保護層4をフィルム/シート状に形成する必要があり、その方法としてはTダイ法によるフィルム成型方法が一般的であり、Tダイから溶融押出しした樹脂を冷却ロールとニップロールまたはエアーチャンバーで挟み込み冷却固化せしめる方法が公知である。
【0018】
前記ドライラミネート法により形成する場合には、透明または半透明の表面保護層4の表面にはコロナ放電処理、プラズマ処理などの表面改質処理を行なうのが一般的である。この場合の接着層3に用いる接着剤は、湿気硬化型のウレタン系接着剤またはポリオール類とイソシアネート系硬化剤を混合した接着剤が公知であり一般的である。形成方法もグラビアコートやリップコート等、適宜既存の塗工法を用いればよい。
【0019】
押出しラミネート法により形成する場合には、基材シート1の絵柄模様層2側に接着層3として、湿気硬化型のウレタン系またはポリオール類とイソシアネート系硬化剤を混合した二液硬化型ウレタン系アンカーコート剤をグラビアコートで塗工したのち、Tダイより透明または半透明の表面保護層4を溶融押出して冷却ロールとニップロールの間に挟みこみ押出ラミネートするのが一般的である。またこの場合も、接着性を向上させるために透明または半透明の表面保護層4の押出ラミ面側からオゾンガスを吹き付け表面改質するオゾン処理も公知である。
【0020】
本発明における透明または半透明の表面保護層4にはポリプロピレン樹脂が用いられ、ポリプロピレン樹脂の立体規則性がC13−NMRにより求めたIP値で98〜99%で且つ分子量分布(Mw/Mn)が10〜15の広い分布を持ち、更にアルミニウムヒドロキシジ−パラt−ブチルベンゾエート等の芳香族カルボン酸塩、ジベンジリデンソルビトール、ジメチルジベンジリデンソルビトール等のソルビトール系誘導体、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の有機リン酸塩、珪酸マグネシウム等の核剤を少なくとも1種含むものが用いられる。これにより結晶化度と剛性のきわめて高いポリプロピレンで構成され、比較的軽荷重のスリキズから高荷重のキャスターキズの両方に対応できる化粧シートとなる。
【0021】
上記のようにして得られた化粧シートは硬い表層を形成するが、必要に応じて表面保護コート(図示せず)を施すことも可能である。表面保護コートとしてはポリオール類とイソシアネート系硬化剤を混合したウレタン系コートが一般的であるが、電離放射線硬化型塗料を用いることも可能である。またポリエチレンワックスやポリシロキサンを添加して表面の滑り性を向上させたり、ガラスビーズ、シリカ等を添加して耐磨耗性を向上させたりすることにより極めて傷付きにくい表層を形成する。
【0022】
上記のようにして得られた化粧シートの表面には、手触り感や意匠性を向上させるためにエンボス加工(図示せず)を行ってもよい。エンボス加工を行う場合は冷却ロールにエンボス模様を形成し、透明または半透明の表面保護層4転写しながら成型する方法が一般的である。この際はエンボス模様を綺麗に転写するためニップロールが用いられる。
【0023】
上記のようにして得られた化粧シートは合板、集成材といった木質系基材や樹脂系基材の表面に貼りあわせて化粧部材となるが、その接着性を向上させるために化粧シート裏側のプライマーコート層(図示せず)を形成することが可能である。プライマーコートとしてはポリオール類とイソシアネート系硬化剤を混合したウレタン系コートが一般的であるが接着性を向上させる目的でシリカ等の無機系粉末を添加して
表面積を大きくして接着面積を向上させることが可能である。
【実施例1】
【0024】
ポリブチレンテレフタレートに着色顔料を添加しTダイより溶融押出して厚み0.15mmの基材シート1とした。この上にコロナ放電処理を行い表面改質した後に「VKNTインキ」(東洋インキ製造(株)製)を用いてグラビア印刷で絵柄模様層2を形成した。
その後、前記絵柄模様層2上に「TM593」(東洋モートン(株)製)を5g/mの塗布量でグラビアコートして接着層3とした。そして、透明または半透明の表面樹脂層4としてポリプロピレン系樹脂「J136」(プライムポリマー(株)製)に紫外線吸収剤「Tn326」(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5%と光安定剤「Tn944」(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5%を混合溶融して0.8mm厚みでTダイより押出して押出ラミネートして化粧シートを得た。前記ポリプロピレン系樹脂「J136」(プライムポリマー(株)製)の立体規則性はC13−NMRにより求めたIP値で98%であり、分子量分布Mw/Mnは15で核剤が添加されている。
【0025】
<比較例1>
透明または半透明ポリプロピレン樹脂層として0.8mm厚みの「E2000GP」(プライムポリマー(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
前記「E2000GP」(プライムポリマー(株)製)の立体規則性はC13−NMRにより求めたIP値で98%であり、分子量分布Mw/Mnは3で核剤が添加されていない。
【0026】
<評価方法>
実施例1と比較例1に対して表面硬度評価を行なった。評価方法は傷付評価荷重が可変であるホフマンスクラッチテスターを使用した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1より明らかなように、本発明による実施例1は軽荷重と重過重ともに良好な結果が得られたものとなり、比較例1と比較して、軽荷重と重過重の耐傷付き性の両方にポリプロピレン樹脂層の結晶化度(核剤の有無、分子量分布の広さ)が影響していることが明らかなものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の化粧シートは、特に耐傷付き性を求められる床、階段用の化粧シートとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1…基材シート
2…絵柄模様層
3…接着層
4…透明または半透明の表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなる0.1〜0.25mm厚みの基材シート表面に絵柄模様層と接着層及びポリプロピレン系樹脂からなる透明または半透明の表面樹脂層が少なくともこの順序で順次積層されてなる化粧シートにおいて、前記ポリプロピレン樹脂の立体規則性がC13−NMRにより求めたIP値で98〜99%で且つ分子量分布(Mw/Mn)が10〜15の広い分布を持ち、更にアルミニウムヒドロキシジ−パラt−ブチルベンゾエート等の芳香族カルボン酸塩、ジベンジリデンソルビトール、ジメチルジベンジリデンソルビトール等のソルビトール系誘導体、リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等の有機リン酸塩、珪酸マグネシウム等の核剤を少なくとも1種含むことを特徴とする化粧シート。




【図1】
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【公開番号】特開2010−69710(P2010−69710A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239382(P2008−239382)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】