説明

化粧建築板

【課題】インクジェット印刷用のインクの少量化を図ることができる化粧建築板を提供する。
【解決手段】基材1の表面に透明の受理層2を形成する。受理層2の表面にインクジェット印刷層3を設ける。透明の受理層2を透して基材1の表面の色を視認することができ、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用することができる。これにより、基材1の表面の色をインクジェット印刷層3で表現する必要が無くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷により所望の模様が施された化粧建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、窯業系の基材にインクジェット印刷による塗装を施して所望の模様を有する化粧建築板を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、インクジェット印刷で基材の表面全面を塗装する場合、多量のインクが必要になるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−74686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、インクジェット印刷用のインクの少量化を図ることができる化粧建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る化粧建築板は、基材1の表面に透明の受理層2を形成し、受理層2の表面にインクジェット印刷層3を設けて成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明にあっては、基材1の表面に凹凸を設けることができる。
【0007】
また、本発明にあっては、基材1の表面に部分的に受理層2を設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明の受理層2を透して基材1の表面の色を視認することができ、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用することができるものであり、これにより、基材1の表面の色をインクジェット印刷層3で表現する必要が無くなって、インクジェット印刷用のインクの少量化を図ることができるものである。
【0009】
また、基材1の表面の凹凸によって、化粧建築板の外観の意匠性を高めることができるものである。
【0010】
さらに、受理層2を基材1の必要な箇所のみに部分的に設けることによって、受理層2を形成するための塗料の少量化を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明に係る化粧建築板は、図1に示すように、基材1の表面に、受理層2、インクジェット印刷層3、有機塗料層4、無機質塗料層5、光触媒塗料層6をこの順に積層することによって形成されている。
【0013】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものであっても、樹脂系基材のように有機質のものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製されるものであり、水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種を用いることができる。また、無機充填剤としては、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料としては、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができ、成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、外装材として使用される窯業系基材を作製することができる。このように作製される窯業系基材の外装材の表面には、溶剤系、水溶性あるいはエマルション系のシーラーにより目止めを行い、基材1表面への塗料などの吸い込みのばらつきを調整するようにしてもよい。使用されるシーラーとしては、特に限定されるものではないが、アクリル系やラテックス系のものを使用することができる。このシーラーの上には意匠性や耐久性の向上のために、アクリル系やラテックス系の有機塗膜を形成するようにしてもよい。その他、基材1としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を用いることができる。
【0014】
そして化粧建築板を製造するにあたっては、上記のような基材1の表面にまず、必須ではないが、一般的にはシーラー(図示省略)を塗る。ここで、シーラーとして着色したものを用いることで、基材1の表面を所望の色に着色することができる。また、基材1に顔料等を配合してその表面を所望の色に着色したものを用い、この表面に透明のシーラーを塗布しても良い。
【0015】
上記のようにシーラーを塗布して処理した後に受理層2を形成する。受理層2は、この上に形成されるインクジェット印刷層3のインクを定着させるために必要な層であり、水性塗料などで形成することができる。このように、水性塗料で受理層2を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。
【0016】
受理層2を形成するための水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。この水性塗料には、体質顔料と吸湿性樹脂のうちの少なくとも一方を配合しておくのが好ましい。これにより、インクの定着性を向上させることができると共に、発色性も向上させることができるものである。ここで、体質顔料としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができるが、受理層2の透明性を確保するために、シリカが最も好ましい。尚、本発明において、受理層2の透明性を確保するために、水性塗料に着色顔料を配合しないようにすることができる。但し、粒径が5〜50nmの微粒子酸化チタンは着色性が弱いために受理層2用の水性塗料に配合することが可能である。この場合、微粒子酸化チタンの光触媒活性で受理層2が分解されないように、水性塗料(ワニス)の固形成分として無機系シロキサン樹脂などを用いる必要があり、また、インクジェット印刷層3を形成するためのインクも無機顔料系のものを使用する必要がある。
【0017】
本発明において、上記の体質顔料は1種のみを用いたり、2種以上を組み合わせて用いたりすることができる。また、化粧建築板の耐候性を向上させることができることから、無機の体質顔料を用いるのが好ましい。体質顔料の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径で0.01〜4μm程度が好ましい。また、体質顔料の分散は通常の方法で行うことができ、また、その際に分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等を使用することが可能である。
【0018】
また、受理層2用の上記水性塗料には、吸湿性樹脂として、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインキ吸収性ポリマー等を配合することができる。この場合、インクジェット印刷層3を形成するインクの定着性を向上させることができる上に、有機塗料層(クリアー層)4を形成する際に用いる水性塗料の滲みを防止することができると共に、インクジェット印刷層3の発色性も向上させることができるものである。
【0019】
また、受理層2用の上記水性塗料は、基材1の表面に水性塗料を塗布量30〜200g/m・wetで塗布するのが好ましく、その塗布方法としては、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0020】
そして、本発明においては、受理層2は、体質顔料を顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有しているものである。通常の塗料は顔料重量濃度(PWC)が40%程度であるが、本発明のように顔料重量濃度(PWC)を通常よりも高く設定することによって、受理層2の表面が粗くなり、この受理層2に水性インクが吸収されやすくなり、インクジェット印刷層3用のインクの定着性を高めることができるものである。また、本発明では通常よりも顔料重量濃度(PWC)が高いので、粘度が上昇してチクソ性となり垂れにくく、つまり、厚く付けやすくなり、また、乾燥性が良くなるものである。しかし、受理層2の顔料重量濃度(PWC)が50%未満であると、上記のような効果を得ることができない上に、粘度が低下してニュートン性となり垂れやすくなり、乾燥性が悪くなる。逆に、受理層2の顔料重量濃度(PWC)が70%を超えると、例えば、体質顔料としてシリカを使用しても透明性が低下し、さらに水性インクを吸収しすぎる状態となり、インクの発色性が悪化するものである。
【0021】
上記においては、受理層2用の水性塗料として体質顔料を含有するものを例示したが、本発明では体質顔料を含有しない水性塗料を用いて受理層2を形成することができる。上記のように、受理層2が含有する体質顔料の種類や濃度は、インクジェット印刷層3を形成するインクの定着性に大きな影響を与えるが、最も影響を与える因子は受理層2の表面粗さであるために、受理層2の表面をあらすことができる手段を別途用いれば、受理層2用の水性塗料に体質顔料を配合しないで済ますこともできる。
【0022】
例えば、スプレー方式やベル方式で受理層2の水性塗料を塗布する場合、スプレーミストの固形分濃度(NV)が高い状態で塗着する、いわゆる「ドライミスト状態での塗布」によって、受理層2の表面に微細な凹凸を付けることができるので、この手法を利用して受理層2の表面粗さ(JIS B 0601で規定される平均算術粗さ(Ra))の調整を行うことができる。この場合、元々、NVの高い水性塗料を塗布するようにしてもよいが、NVが高いとスプレーやベルでの塗布に障害が起きる場合があるので、ガン距離を調整したり、ベルの回転数を調整したりしてドライミストの塗着状態を調整するのが好ましい。
【0023】
受理層2の厚みは20〜180μmであることが好ましい。受理層2の厚みが20μmより薄いと、基材1を十分に保護することができなくなったり、インクジェット印刷層3用の水性インクの吸収性が低下したりするおそれがあり、逆に、受理層2の厚みが180μmより厚いと、透明性が低下したり、乾燥性が悪く、タレが生じたり、クラックが生じたりするおそれがある。
【0024】
上記のようにして形成される受理層2は透明性を有するものであるが、その光透過率はJIS K 7361−1に規定された測定方法により60〜95%であることが好ましい。受理層2の光透過率が60%未満であると、受理層2を透して基材1の表面の色が視認することができなくなり、本発明の効果を奏することができなくなる恐れがある。一方、受理層2の光透過率を95%よりも大きくするためには、体質顔料等の配合を低減しなければならず、インクジェット印刷層3のインクの定着性が低下する恐れがある。また、受理層2の表面粗さは、JIS B 0601で規定される平均算術粗さ(Ra)で0.2〜10μmであることが好ましい。受理層2の表面粗さが0.2μm未満であると、インクジェット印刷層3のインクの定着性が低下する恐れがある。また、受理層2の表面粗さが10μmより大きくなると、光の乱反射により受理層2の透明性が損なわれる恐れがある。本発明では、受理層2の透明性や表面粗さは、水性塗料や体質顔料の種類や配合割合、体質顔料の粒径などを適宜調整することによって、所望の透明性や表面粗さを確保するものである。
【0025】
上記のようにして受理層2を形成した後、その表面に水性インクをインクジェット印刷することによってインクジェット印刷層3を形成する。ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット装置としては、例えば、図2に示すようなものを用いることができる。このインクジェット装置は、噴射ノズル7を設けた塗装ノズルヘッド8、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7に水性インクを供給する塗料供給タンク9、塗装ノズルヘッド8の噴射ノズル7からの水性インクの噴射を制御する塗装制御システム10などを設けたインクジェット式塗装機11と、基材1を搬送する搬送コンベア12とを備えて形成されるものである。
【0026】
塗装ノズルヘッド8は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の水性インクを噴出する4種類の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。塗料供給タンク9も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの水性インクを供給する塗料供給タンク9yは塗装ノズルヘッド8yに、シアンの水性インクを供給する塗料供給タンク9cは塗装ノズルヘッド8cに、マゼンタの水性インクを供給する塗料供給タンク9mは塗装ノズルヘッド8mに、ブラックの水性インクを供給する塗料供給タンク9kは塗装ノズルヘッド8kに、それぞれ接続してある。また、各塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
【0027】
塗装制御システム10は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画をスキャナ等して得た色柄パターンのデータを入力して保存するものであり、塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じた色柄パターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、この色柄のパターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また、噴射ノズル制御部は、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの各噴射ノズル7に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル7を制御するものである。各噴射ノズル7は例えばピエゾ制御方式や光熱交換素子にレーザー光を照射して制御する方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル7を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各水性インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。
【0028】
搬送コンベア12は、インクジェット式塗装機11の下側に配置されるものであり、ベルトコンベアで形成することができる。
【0029】
そして、上記のように形成されるインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、まず、受理層2を形成した基材1を搬送コンベア12上に導入する。導入された基材1はそのまま送られてインクジェット式塗装機11の塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア12で送りながら、塗装ノズルヘッド8y、8c、8m、8kから水性インクを噴射させて塗着させることによって、受理層2の表面にインクジェット印刷層3を形成することができるものである。このように塗装された基材1はさらに送られ、次工程に搬出されるものである。
【0030】
上記のようにして形成される化粧建築板にあっては、受理層2に顔料が顔料重量濃度(PWC)で50〜70%含有されているので、水性インクを弾くことなく、鮮明な発色を得ることができるものである。また、受理層2に含有されている顔料によって、基材1の色の影響を少なくすることができ、所望の色相でインクジェット印刷することができるものである。さらに、化粧建築板に施す予定の模様と同一又は近似の色相となるように顔料を組み合わせて用いるようにすれば、水性インクの使用量を減らすことができるものである。
【0031】
ここで、水性インクの受理層2への侵入深さ(浸透深さ)は0.2〜5μmであることが好ましい。これにより、水性インクの滲みを防止して、フルカラー印刷による鮮明な絵柄を得ることができるものである。しかし、水性インクの受理層2への侵入深さが0.2μm未満である場合は、水性インクが弾かれやすい場合であって、発色性が悪くなるおそれがあり、逆に、水性インクの受理層2への侵入深さが5μmを超える場合は、水性インクを多量に使用している場合であるが、その割には発色性が悪くなるおそれがある。なお、侵入深さの調整は、受理層2の顔料重量濃度(PWC)を調整したり、受理層2の表面粗さを調整したりすることによって行うことができ、また、侵入深さの測定は、1000倍程度の倍率でマイクロスコープ又はSEMにより断面観察することによって行うことができる。
【0032】
インクジェット印刷層3を形成した後、図1に示すように、このインクジェット印刷層3の表面にクリアーな有機塗料層(クリアー層)4を形成することができる。有機塗料層4は、この下に形成されたインクジェット印刷層3を保護する層であり、有機溶剤で希釈した塗料で形成することもできるが、水性塗料で形成するのが好ましい。このように、水性塗料で有機塗料層4を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。有機塗料層4用の水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いるのが好ましい。これにより、後述する無機質塗料層5を有機塗料層4に強く付着させることができるものである。また、この水性塗料には、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合しておくのが好ましい。これにより、意匠性を向上させることができる。また、有機塗料層4を水性塗料で形成するにあたっては、インクジェット印刷層3の表面に水性塗料を塗布量20〜200g/m・wetで塗布するのが好ましい。そして、焼付け乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、100〜200℃、30秒以上の条件で行うのが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度等環境条件によって、化粧建築板の耐久性が低下しやすくなる場合がある。なお、この水性塗料の塗布は、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。
【0033】
その後、図1に示すように、有機塗料層4の表面に無機質塗料層5を形成することができる。無機質塗料層5は、化粧建築板の耐候性等の耐久性を向上させる層であり、SiO骨格で構成された塗膜で、紫外線吸収剤、場合によっては、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。例えば、特許第3242442号公報や特許第3193832号公報に記載されたコーティング用組成物や、特開平9−249822号公報に記載された無機コーティング剤で形成することができる。
【0034】
無機質塗料の具体例として、特許第3242442号公報に記載されたコーティング用組成物を以下に挙げる。すなわち、
(A)一般式(I)
SiX4−n…(I)
(式中、Rは同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基およびアミド基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。)で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中で、X1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液、
(B)平均組成式(II)
Si(OH)(4−a−b)/2…(II)
(式中、Rは同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)で表わされ、成分中のRにフェニル基を全R基に対して1〜30モル%含有するポリオルガノシロキサン、および、 (C)(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進する触媒を必須成分とし、(A)成分においてシリカを固形分として5〜95重量%含有し、加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がn=1のオルガノシランで、(A)成分1〜99重量部に対して(B)成分99〜1重量部が配合されているコーティング用組成物である。
【0035】
そして、無機質塗料層5を形成するにあたっては、有機塗料層4を形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いて無機質塗料を塗布することによって行うことができる。このとき、乾燥条件は、100〜200℃、1〜5分間であることが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度条件によっては、無機質塗料層5の耐久性能が発揮されないおそれがあると共に、後述する光触媒塗料層6の性能を十分に引き出すことができないおそれがある。また、無機質塗料層5を形成するにあたっては、有機塗料層4の表面に無機質塗料を塗布量4〜40g/m・dryで塗布するのが好ましい。塗布量が4g/m・dryより少ないと、耐候性等の耐久性を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、塗布量が40g/m・dryより多いと、硬化収縮が大きくなり、クラック等が発生するおそれがある。
【0036】
さらに、本発明においては、図1に示すように無機質塗料層5の表面に光触媒塗料層6を形成するのが好ましい。光触媒塗料層6は、超親水性を有しており、化粧建築板の防汚性を向上させるために必要な層であり、SiO骨格で構成された塗膜で、光触媒、場合によっては、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。例えば、特許第2776259号公報に記載された抗菌性無機塗料や、松下電工(株)製「フレッセラPS1000」で形成することができる。
【0037】
光触媒塗料層6を形成するにあたっては、無機質塗料層5を形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いて光触媒塗料層形成用塗料を塗布することによって行うことができる。このように、基材1をあらかじめ加温しておくことで、光触媒塗料層6を形成した後の乾燥工程でのエネルギーを小さく抑えることができるものである。また、光触媒塗料層6を形成するにあたっては、無機質塗料層5の表面に光触媒塗料層形成用塗料を塗布量0.5〜5g/m・dryで塗布するのが好ましい。塗布量が0.5g/m・dryより少ないと、防汚性を十分に得ることができないおそれがあり、逆に、塗布量が5g/m・dryより多いと、化粧建築板が乳白色となり、意匠性が低下するおそれがある。
【0038】
上記のようにして形成される化粧建築板にあっては、有機塗料層4の表面に無機質塗料層5が形成されているので、無機質塗料層5が形成されていない従来のものに比べて、耐候性等の耐久性を高く得ることができるものである。また、光触媒塗料層6を設けた化粧建築板にあっては、化粧建築板の表面に付着した有機物などの汚れは、光触媒塗料層6の光触媒作用によって分解されると共に、光触媒塗料層6が超親水性を発現することにより、分解した汚れを雨水等によって容易に除去することができるので、化粧建築板の防汚性を高く得ることができるものである。そして、本発明においては、顔料を含有する受理層2によって、インクジェット印刷層3のインクを定着させて鮮明な模様を得ることができるので、特に、有機塗料層4、無機質塗料層5、光触媒塗料層6を形成した場合には、フルカラー印刷による鮮明な模様を長期間維持することができるものである。
【0039】
そして、本発明の化粧建築板では、透明の受理層2を透して基材1の表面の色を視認することができ、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用することができる。従って、基材1の表面の色をインクジェット印刷層3で表現する必要が無くなって、インクジェット印刷用のインクの少量化を図ることができる。
【0040】
図3に本発明の他の実施の形態を示す。図1に示す化粧建築板では、基材1の表面全面に受理層2を形成したが、図3に示す化粧建築板では受理層2を部分的に設け、その部分のみにインクジェット印刷層3を形成したものである。その他の構成は図1に示す実施の形態と同様である。そして、この化粧建築板では必要な部分のみに受理層2を形成しているために、受理層2を形成するための水性塗料の使用量を少なくすることができ、受理層2を形成するための塗料の少量化を図ることができる。また、受理層2により基材1の表面の色の視認性が低下することが少なくなり、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用しやすくなるものである。
【0041】
図4に本発明の他の実施の形態を示す。図1に示す化粧建築板では、基材1の表面全面を平坦に形成したが、図4に示す化粧建築板では基材1の表面に複数本の溝部13を設け、この溝部13と隣り合う溝部13、13の間に形成される山部14とからなる凹凸面に基材1の表面を形成したものである。その他の構成は図1に示す実施の形態と同様である。そして、この化粧建築板では基材1の表面の凹凸によって、外観の意匠性を高めることができるものである。
【0042】
図5(a)(b)に本発明の他の実施の形態を示す。図4に示す化粧建築板では、基材1の表面全面に受理層2を形成し、溝部13の底面及び山部14の頂面の両方にインクジェット印刷層3を形成したが、図5(a)に示す化粧建築板では受理層2を溝部13の底面のみに部分的に設け、その部分のみにインクジェット印刷層3を形成したものであり、図5(b)に示す化粧建築板では受理層2を山部14の頂面のみに部分的に設け、その部分のみにインクジェット印刷層3を形成したものである。その他の構成は図1に示す実施の形態と同様である。そして、これら図5(a)(b)の化粧建築板は必要な部分のみに受理層2を形成しているために、受理層2を形成するための水性塗料の使用量を少なくすることができ、受理層2を形成するための塗料の少量化を図ることができる。また、受理層2により基材1の表面の色の視認性が低下することが少なくなり、基材1の表面の色を化粧建築板の外観色として利用しやすくなるものである。さらに、基材1の表面の凹凸により意匠性を高くすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】本発明のインクジェット印刷で使用するインクジェット印刷機の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基材
2 受理層
3 インクジェット印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に透明の受理層を形成し、受理層の表面にインクジェット印刷層を設けて成ることを特徴とする化粧建築板。
【請求項2】
基材の表面に凹凸を設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の化粧建築板。
【請求項3】
基材の表面に部分的に受理層を設けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧建築板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−167826(P2007−167826A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373045(P2005−373045)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】