説明

化粧料及び皮膚用製剤における超分岐ポリエステルの使用

本発明は、超分岐ポリエステルを含有する組成物、前記超分岐ポリエステルの化粧料及び皮膚科学における使用、並びに置換超分岐ポリエステルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分岐ポリエステルを含む組成物、並びにこれらの高分岐ポリエステルの化粧料及び皮膚科学における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬及び化粧料の分野で調合物の粘度を上げるため、増粘剤がかなり使用される。増粘剤は、調合物が水性、油性、又は表面活性であるかによって選択される。このトピックに関する概説は、Hugo Janistyn、Handbuch der Kosmetika und Riechstoffe [Handbook of cosmetics and fragrances]、Huthig Verlag Heidelberg、1巻、第3版、1978年、979頁に記載されている。水溶液にしばしば使用される増粘剤の例は、脂肪酸ポリエチレングリコールモノエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールジエステル、脂肪酸アルカノールアミド、オキシエチル化脂肪アルコール、エトキシ化グリセロール脂肪酸エステル、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、及び中性塩である。カルボキシル基を含むポリマーも、増粘剤として知られる。これらには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及びイタコン酸などのモノエチレン性不飽和カルボン酸のホモポリマー及びコポリマーが含まれる。これらのポリマーは、少なくともわずかに架橋していることが多い。このようなポリマーは、例えばUS 2,798,053、US 3,915,921、US 3,940,351、US 4,062,817、US 4,066,583、US 4,267,103、US 5,349,030、及びUS 5,373,044に記載されている。これらのポリマーが増粘剤として使用されるときよくある欠点は、pH依存性、及び加水分解に対する不安定性である。さらに、所望の増粘性効果を実現するには、大量のポリマーが必要であることが多く、電解質の存在下において調合物の安定性は低い。カゼイン、アルギナート、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカルボメトキシセルロースなどの天然材料も、増粘剤として使用される。これらには、とりわけ微生物学的要因に感受性を示すという欠点があり、したがって殺生物剤の添加が必要である。油性調合物の典型的な増粘剤(下記で油系増粘剤とも呼ばれる)は、金属セッケン、アモルファス二酸化ケイ素、ヒドロキシステアリン、第四級アンモニウム塩基とベントナイトの化合物、ろう、及びパラフィンである。界面活性剤溶液は、例えば脂肪酸アルキロールアミド、アミンオキシド、セルロース誘導体、多糖、及びカルボキシル基を含む上記のポリマーにより増粘される。
【0003】
高官能性高分岐ポリエステル及びその調整法は、例えばDE 101 63 163、DE 102 19 508、DE 102 40 817、DE 103 48 463、DE 10 2004 026904及びDE 10 2005 060783に記載されている。
【0004】
WO 2006/018063には、疎水性官能基を備えた樹枝状高分子を含む頭髪用化粧料用組成物が記載されている。樹枝状高分子は、ポリエステル単位(Boltornという商標名で入手可能)又はポリアミド単位(Hybraneという商標名で入手可能)からなる。
【0005】
DE 10 2005 063 096には、少なくとも一つの超分岐ポリエステル及び/又はポリエステルアミドを0.05〜20重量%含む化粧料組成物が記載されている。組成物は、報告によると、頭髪洗浄及び/又は頭髪ケア特性を有する。ポリエステル及び/又はポリエステルアミドは、置換されていない。
【0006】
WO 2004/078809には、高分岐ポリマー及びこれらを含む化粧料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 2,798,053
【特許文献2】US 3,915,921
【特許文献3】US 3,940,351
【特許文献4】US 4,062,817
【特許文献5】US 4,066,583
【特許文献6】US 4,267,103
【特許文献7】US 5,349,030
【特許文献8】US 5,373,044
【特許文献9】DE 101 63 163
【特許文献10】DE 102 19 508
【特許文献11】DE 102 40 817
【特許文献12】DE 103 48 463
【特許文献13】DE 10 2004 026904
【特許文献14】DE 10 2005 060783
【特許文献15】WO 2006/018063
【特許文献16】DE 10 2005 063 096
【特許文献17】WO 2004/078809
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hugo Janistyn、Handbuch der Kosmetika und Riechstoffe [Handbook of cosmetics and fragrances]、Huthig Verlag Heidelberg、1巻、第3版、1978年、979頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、化粧料用途に極めて適しており、特に皮膚化粧料の分野において良好な塗布特性を有する、レオロジー改変性、特に増粘性、特に油系増粘性のポリマーを見出すことであった。材料の使用がわずかなわりに増粘性効果が良好であることに加えて、これらは、ゲル用途の場合には清澄性(clarity)、油不溶性及び/又は安定化困難な成分には(共)乳化及び安定化効果、化粧料調合物への良好な組込みも含む。特にゲルの場合、調合物が可能な限り高い透明性(清澄性)を有することが望ましい。可能な限り幅広い製剤化可能性を確実にするためには、増粘剤が低色及び低臭、理想的には無色及び無臭であることが望ましい。さらに、(皮膚)化粧料及び/又は皮膚科用途において使用するには、アレルギー反応を引き起こさないことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、以下に記載する置換高分岐ポリエステルによって実現される。
【0011】
本発明の文脈内で、高分岐ポリエステルは、構造的にも分子的にも不均一である、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有する非架橋高分子を意味すると理解される。これらは、第一にデンドリマーと同様に中心分子から始まってなり得るものであるが、分岐の鎖長は不均一である。これらは、第二に構成が直鎖状で、官能性側鎖を有するものでもあり、あるいはこれら両極端の組合せとして、直鎖及び分岐の分子部分を有することもあり得る。デンドリマー状ポリマー及び超分岐ポリマーの定義については、P.J. Flory、J. Am. Chem. Soc.、1952年、74巻、2718頁及びH. Freyら、Chem. Eur. J.、2000年、6巻、14号、2499頁も参照のこと。
【0012】
本発明に関して、「高分岐」は、分岐度(DB)、すなわち一分子当たりの平均樹状結合数に平均末端基数を加えて、平均樹状結合数と平均直鎖状結合数と平均末端基数の合計で割って、100を掛けたものが、10〜99.9%、好ましくは20〜99%、特に好ましくは20〜95%であることを意味すると理解される。
【0013】
高分岐(highly-branched)という表現に加えて、超分岐(hyperbranched)という表現も文献から知られている。本発明の文脈内で、二つの表現は同義と理解されるべきである。
【0014】
本発明に関して、「デンドリマー状」は、分岐度が99.9〜100%であることを意味すると理解される。分岐度の定義については、H. Freyら、Acta Polym.、1997年、48巻、30頁を参照のこと。
【0015】
本文献の文脈内で、非架橋は、ポリマーの不溶性画分によって決定して15重量%未満、好ましくは10重量%未満の分岐度が存在することを意味する。ポリマーの不溶性画分は、ソックスレー装置中、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーに使用されるのと同じ溶媒、すなわちテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、又はヘキサフルオロイソプロパノールで、ポリマーがその溶媒でより可溶性であることに応じて、4時間抽出し、残渣を恒量になるまで乾燥した後、残存している残渣を計量することによって決定された。
【0016】
高分岐ポリエステルは、以下に記載するように調製される。
【0017】
少なくとも一つの脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、若しくは芳香族ジカルボン酸(A2)、又はそれらの誘導体、及び適切な場合は、二つのOH基を有する2価の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、又は芳香族アルコール(B2)と、二つを超えるOH基を有し、xは2より大きく、好ましくは3〜8の間に、特に好ましくは3〜6の間にあり、極めて特に好ましくは3〜4、特に3である少なくとも一つのx価の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、又は芳香族アルコール(Cx)を、適切な場合はさらなる官能化ビルディングブロックEの存在下に反応させ、反応混合物中の反応性基の比は、OH基とカルボキシル基又はその誘導体のモル比5:1〜1:5、好ましくは4:1〜1:4、特に好ましくは3:1〜1:3、極めて特に好ましくは2:1〜1:2が確立されるように選択される。
【0018】
ジカルボン酸(A2)としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン-α,ω-ジカルボン酸、ドデカン-α,ω-ジカルボン酸、cis-及びtrans-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、cis-及びtrans-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、cis-及びtrans-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、cis-及びtrans-シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、cis-及びtrans-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、例えばフタル酸、イソフタル酸、又はテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を使用することも可能である。マレイン酸又はフマル酸などの不飽和ジカルボン酸も使用することができる。
【0019】
指定されたジカルボン酸は、以下から選択される一つ又は複数の基によって置換されていてもよい。
【0020】
C1〜C10-アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、トリメチルペンチル、n-ノニル、又はn-デシル、
C3〜C12-シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシル;シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが好ましい;
メチレン若しくはエチリデンなどのアルキレン基、又は
例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、及び9-フェナントリル、好ましくはフェニル、1-ナフチル、及び2-ナフチル、特に好ましくはフェニルなどのC6〜C14-アリール基。
【0021】
列挙することができる置換ジカルボン酸の代表例は、2-メチルマロン酸、2-エチルマロン酸、2-フェニルマロン酸、2-メチルコハク酸、2-エチルコハク酸、2-フェニルコハク酸、イタコン酸、3,3-ジメチルグルタル酸である。
【0022】
さらに、上記ジカルボン酸の二つ以上の混合物を使用することができる。
【0023】
ジカルボン酸は、そのまま又は誘導体の形で使用することができる。
【0024】
誘導体は、好ましくは以下の意味を有すると解される:
- モノマー、あるいはポリマーの形の関連無水物、
- モノ-若しくはジアルキルエステル、好ましくはモノ-若しくはジ-C1〜C4-アルキルエステル、特に好ましくはモノ-若しくはジメチルエステル、又は対応するモノ-若しくはジエチルエステル、
- またモノ-及びジビニルエステル、並びに
- 混合エステル、好ましくは異なるC1〜C4-アルキル成分との混合エステル、特に好ましくは混合メチルエチルエステル。
【0025】
本文献の文脈内で、C1〜C4-アルキルは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチル、好ましくはメチル、エチル、及びn-ブチル、特に好ましくはメチル、及びエチル、極めて特に好ましくはメチルである。
【0026】
本発明の文脈内で、ジカルボン酸とその誘導体の一つ又は複数との混合物を使用することも可能である。本発明の文脈内で、同様に一つ又は複数のジカルボン酸の異なる二つ以上の誘導体の混合物を使用することが可能である。
【0027】
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,2-、1,3-、若しくは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又はそれらのモノ-若しくはジアルキルエステルを使用することが特に好ましい。
【0028】
本発明に従って使用することができるジオール(B2)は、例えばエチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,2-ジオール、ペンタン-1,3-ジオール、ペンタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ペンタン-2,3-ジオール、ペンタン-2,4-ジオール、ヘキサン-1,2-ジオール、ヘキサン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、ヘプタン-1,2-ジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,5-ヘキサジエン-3,4-ジオール、1,2-及び1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-、及び1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-、1,2-、1,3-、及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,1-、1,2-、1,3-及び1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、(2)-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CH2CH2O)n-H又はポリプロピレングリコールHO(CH[CH3]CH2O)n-H(式中、nは整数であり、かつn≧4である)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール(ここで、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド単位の規則性は、ブロック式又はランダムとすることができる)、ポリテトラメチレングリコール(好ましくは、5000g/molまでの分子量を有する)、ポリ-1,3-プロパンジオール(好ましくは、5000g/molまでの分子量を有する)、ポリカプロラクトン、又は上記化合物の二つ以上の代表例の混合物である。この場合、上記のジオールの一方又は両方のヒドロキシル基は、SH基によって置換されていてもよい。好ましく使用されるジオールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、さらにはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びトリプロピレングリコールである。
【0029】
二価アルコールB2は別の官能基を含まないことが好ましいが、例えばジメチロールプロピオン酸又はジメチロール酪酸、さらにはそれらのC1〜C4-アルキルエステルなどアルコールB2は、例えばカルボニル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、又はスルホニルなど別の官能基を場合によっては含むこともできる。
【0030】
少なくとも三官能性のアルコール(Cx)は、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリトリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、若しくはグリセロールのそれ以上の縮合生成物、ジ(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリトリトール)、トリスヒドロキシメチルイソシアヌラート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート(THEIC)、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌラート、イノシトール、又は例えばグルコース、フルクトース、若しくはスクロースなどの糖、例えばソルビトール、マンニトール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール、イソマルトなどの糖アルコール、三官能性又はそれ以上のアルコールとエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドをベースにした三官能性又はそれ以上のポリエーテロールを含む。
【0031】
この文脈では、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート、及びエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドをベースにしたそれらのポリエーテロールが特に好ましい。
【0032】
本発明によるプロセスは、希釈剤を用いず、又は溶媒の存在下に実施することができる。好適な溶媒は、例えばパラフィンなどの炭化水素、又は芳香族化合物である。特に好適なパラフィンは、n-ヘプタン及びシクロヘキサンである。特に好適な芳香族化合物は、トルエン、オルト-キシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、異性体混合物としてのキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、及びオルト-及びメタ-ジクロロベンゼンである。極めて具体的には、例えばジオキサン又はテトラヒドロフランなどのエーテル、及び例えばメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトンは、酸性触媒の非存在下での溶媒としても好適である。
【0033】
本発明によれば、溶媒の添加量は、反応させるための出発材料の使用質量に基づいて少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくともl重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%である。反応させるための出発材料の使用質量に基づいて過剰、例えば1.01〜10倍の溶媒を使用することも可能である。溶媒量が、反応させるための出発材料の使用質量に基づいて100倍を超えると、有利ではない。というのは、反応物質の濃度が大幅に低下した場合、反応速度が大幅に低下し、これによって反応時間が不経済なほど長くなるからである。
【0034】
好ましい一実施形態において、反応は溶媒なしで実施される。
【0035】
本発明によるプロセスを実施するには、添加剤として脱水剤の存在下に行うことが可能であり、これは、反応の開始時に添加される。例えば、モレキュラーシーブ、特にモレキュラーシーブ4Å、MgSO4、及びNa2SO4が好適である。反応中に、別の脱水剤を添加し、又は脱水剤を新しい脱水剤に取り替えることも可能である。反応中に、生成した水及び/又はアルコールを留去し、例えば添加溶剤によって水が除去される水分離装置を使用することも可能である。
【0036】
さらに、除去は、適切な場合は蒸留に加えて、ストリッピングによって行うことができる。例えば、反応条件下で不活性なガスを、反応混合物に通気することによって行うことができる。好適な不活性ガスは、好ましくは窒素、希ガス、二酸化炭素、又は燃焼ガスである。
【0037】
本発明によるプロセスは、触媒の非存在下に実施することができる。しかし、少なくとも一つの触媒の存在下に行うことが好ましい。これらは、好ましくは酸性の無機、有機金属、若しくは有機触媒、又は二つ以上の酸性の無機、有機金属、若しくは有機触媒の混合物である。
【0038】
本発明の文脈内で、酸性無機触媒の例は、硫酸、硫酸塩、及び硫酸水素ナトリウムなどの硫酸水素塩、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル(pH≦6、特に≦5)、並びに酸性酸化アルミニウムである。酸性無機触媒として、例えば一般式Al(OR1)3のアルミニウム化合物及び一般式Ti(OR1)4のチタナートを使用することも可能であり、式中、R1基同士は、いずれの場合にも同一でも異なってもよく、互いに独立して
C1〜C20-アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ドデシル、n-ヘキサデシル、又はn-オクタデシル、
C3〜C12-シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、及びシクロドデシルから選択される。シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが好ましい。
【0039】
好ましくは、Al(OR1)3及びTi(OR1)4のR1は、いずれの場合にも同一であり、n-ブチル、イソプロピル、又は2-エチルヘキシルから選択される。
【0040】
好ましい酸性有機金属触媒は、例えばジアルキルスズオキシドR12SnO又はジアルキルスズエステルR12Sn(OR2)2から選択され、式中、R1は上記のように定義され、同一でも異なってもよい。
【0041】
R2は、R1と同じ意味を有し、さらにC6〜C12-アリール、例えばフェニル、o-、m-、又はp-トリル、キシリル、又はナフチルとすることができる。R2は、いずれの場合にも同一でも異なってもよい。
【0042】
有機スズ触媒の例は、n-オクタン酸スズ(II)、2-エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、酸化ジブチルスズ、酸化ジフェニルスズ、二塩化ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジマレイン酸ジブチルスズ、又は二酢酸ジオクチルスズである。
【0043】
酸性有機金属触媒の特に好ましい代表例は、酸化ジブチルスズ、酸化ジフェニルスズ、及びジラウリン酸ジブチルスズである。
【0044】
好ましい酸性有機触媒は、例えばホスファート基、スルホン酸基、スルファート基、又はホスホン酸基を有する酸性有機化合物である。例えば、パラ-トルエンスルホン酸などのスルホン酸が特に好ましい。酸性有機触媒として、酸性イオン交換体、例えば約2mol%のジビニルベンゼンで架橋された、スルホン酸基を含むポリスチレン樹脂を使用することも可能である。
【0045】
上記触媒の二つ以上の組合せを使用することも可能である。例えば、シリカゲル又はゼオライト上に固定化された形で離散した分子の形として存在する、それらの有機又は有機金属、あるいは無機触媒を使用することも可能である。
【0046】
酸性の無機、有機金属、又は有機触媒を使用することが望ましい場合、本発明によれば、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜2重量%の触媒が使用される。
【0047】
本発明の文脈内で、酵素又は酵素の分解生成物は同様に有機触媒に属する。例えば、カンジダ・キリンドラケア(Candida cylindracea)、カンジダ・リポリィティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ウチリス(Candida utilis)、クロモバクテリウム・ビスコスム(Chromobacterium viscosum)、ゲオトリクム・ビスコスム(Geotrichum viscosum)、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)、ムコール・ジャバニクス(Mucor javanicus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor mihei)、ブタ膵臓、シュードモナス属菌種(Pseudomonas spp.)、シュードモナス・フルオプレセンス(Pseudomonas fluoprescens)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス・デレマ(Rhizopus delemar)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roquefortii)、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camembertii)、又はバチルス属菌種バチルス・サーモグルコシダシウス(Bacillus spp. Bacillus thermoglucosidasius)由来のエステラーゼから得ることができる有効量のリパーゼが特に好ましい。
【0048】
本発明によるプロセスは、好ましくは不活性ガス、すなわち反応条件下で不活性なガス、例えば二酸化炭素、燃焼ガス、窒素、又は希ガスの雰囲気下で実施される。その不活性ガスのうち、特にアルゴンが取り上げられるべきである。
【0049】
本発明によるプロセスは、60〜250℃の温度で実施される。80〜200℃の温度、特に好ましくは100〜180℃で行われるのが好ましい。
【0050】
本発明によるプロセスの圧力条件は、通常クリティカルではない。著しく減圧で、例えば10〜500mbarで行われることが可能である。本発明によるプロセスは、500mbarを超える圧力で実施することもできる。簡便にするためには、大気圧での反応が好ましい。しかし、若干高めた、例えば1200mbarまで高めた圧力で実施することも可能である。大幅に高めた圧力、例えば最高10barの圧力で行うことも可能である。減圧又は大気圧、特に好ましくは大気圧での反応が好ましい。
【0051】
本発明によるプロセスの反応時間は、通常10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間、特に好ましくは1時間〜12時間である。
【0052】
反応が完了すると、高官能性高分岐及び超分岐ポリエステルは、例えば触媒を濾別し、適切な場合は、溶媒をストリッピングすることによって、容易に単離することができる。この場合、溶媒のストリッピングは、減圧で通常実施される。別の極めて好適な処理方法は、水を添加した後、ポリマーを沈殿させ、その後洗浄及び乾燥する方法である。
【0053】
d) 必要に応じて、例えば、活性炭、又は例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、若しくはそれらの混合物などの金属酸化物を例えば0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜25重量%、特に好ましくは1〜10重量%の量用いて、例えば10〜200℃、好ましくは20〜180℃、特に好ましくは30〜160℃の温度で処理することによって、反応混合物に脱色を施すことができる。
【0054】
これは、微粉状若しくは粒状脱色剤を反応混合物に添加し、その後濾過することによって、又は任意所望の好適な成形品の形態をした脱色剤の床に反応混合物を通すことによって行うことができる。
【0055】
反応混合物の脱色は、ワークアップ工程において、例えば粗反応混合物の段階で、又はオプションの予洗、中和、洗浄、若しくは溶媒除去の後に、任意所望の時点で行うことができる。
【0056】
反応混合物は、さらに予洗e)及び/又は中和f)及び/又は後洗g)、好ましくは単に中和f)にかけることができる。適切な場合は、中和f)と予洗e)の順序を交換することができる。
【0057】
含まれている重要な生成物は、洗浄及び/又は中和の水相から、酸性化及び溶媒を用いた抽出によって少なくとも部分回収し、再使用することができる。
【0058】
予洗又は後洗の前に、反応混合物は、洗浄装置中、洗浄用液体、例えば水、又は5〜30重量%強度、好ましくは5〜20重量%強度、特に好ましくは5〜15重量%強度の塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム溶液、塩化アンモニウム溶液、硫酸ナトリウム溶液、若しくは硫酸アンモニウム溶液、好ましくは水又は塩化ナトリウム溶液で処理される。
【0059】
反応混合物:洗浄用液体の量比は、通常1:0.1〜1、好ましくは1:0.2〜0.8、特に好ましくは1:0.3〜0.7である。
【0060】
洗浄又は中和は、例えば撹拌装置付き容器、又は他の通常の装置、例えばカラム若しくはミキサセトラ装置中で実施することができる。
【0061】
処理の点から、本発明によるプロセスにおける洗浄又は中和に、それ自体公知の抽出及び洗浄方法並びに装置すべて、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、1999年、Electronic Release、chapter:Liquid - Liquid Extraction - Apparatusに記載されているものを使用することができる。例えば、これらは、一段又は多段抽出、好ましくは一段抽出、さらには並流又は向流モード、好ましくは向流モードの抽出とすることができる。
【0062】
シーブトレイカラム又は規則及び/若しくは不規則充填物(arranged and/or dumped packings)を備えたカラム、撹拌装置付き容器又はミキサセトラ装置、さらにはパルスカラム若しくは回転内部構造物を備えたものを使用することが好ましい。
【0063】
金属塩、好ましくは有機スズ化合物が触媒として(共)使用されるとき、予洗が行われることが好ましい。
【0064】
後洗は、中和された反応混合物から微量の塩基又は塩を除去するのに有利なことがある。
【0065】
中和f)では、少量の触媒及び/又はカルボン酸がなお含まれている可能性がある、場合によっては予洗された反応混合物を、5〜25重量%強度、好ましくは5〜20重量%強度、特に好ましくは5〜15重量%強度の、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又は炭酸水素塩などの塩基の水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、石灰乳、アンモニア、アンモニア水、又は炭酸カリウム(これらの塩基水溶液に、適切な場合は5〜15重量%の塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、又は硫酸アンモニウムを添加することができる)、特に好ましくは水酸化ナトリウム溶液又は水酸化ナトリウム溶液/塩化ナトリウム溶液で中和することができる。好ましくは、中和度は、酸基を含むモノマーに基づいて5〜60mol%、好ましくは10〜40mol%、特に好ましくは20〜30mol%である。
【0066】
塩基は、装置中の温度が60℃を超えず、好ましくは20℃〜35℃の間であり、pHが4〜13であるように添加される。中和熱は、容器を内部冷却コイルで又はジャケット冷却により冷却することによって放散されることが好ましい。
【0067】
反応混合物:中和用液体の量比は、通常1:0.1〜1、好ましくは1:0.2〜0.8、特に好ましくは1:0.3〜0.7である。
【0068】
装置に関しては、以上に記載されたことが当てはまる。
【0069】
h)反応混合物中に、溶媒が存在する場合、これを蒸留によって実質的に除去することができる。存在している溶媒はいずれも、好ましくは洗浄及び/又は中和後に反応混合物から除去されるが、望むなら、洗浄及び/又は中和前に除去することもできる。
【0070】
このため、反応混合物は、溶媒を除去した後に標的エステル(残渣)中に100〜500ppm、好ましくは200〜500ppm、特に好ましくは200〜400ppmの貯蔵安定剤が存在するような量の貯蔵安定剤と共に使用することができる。
【0071】
場合によっては使用される溶媒又は低沸点副生物の大部分の留去は、例えば撹拌槽において、ジャケット加熱及び/又は内部加熱コイルによって、減圧下、例えば20〜700mbar、好ましくは30〜500mbar、特に好ましくは50〜150mbar、及び温度40〜120℃で行われる。
【0072】
蒸留は、流下薄膜型蒸発器又は薄膜蒸発器で行うこともできる。このため、反応混合物は、減圧下、例えば20〜700mbar、好ましくは30〜500mbar、特に好ましくは50〜150mbar、及び温度40〜80℃で、装置中を移動し、好ましくは数回循環する。
【0073】
反応条件下で不活性なガス、例えば反応混合物1m3当たり毎時0.1〜1m3、好ましくは0.2〜0.8m3、特に好ましくは0.3〜0.7m3の酸素含有ガスを蒸留装置に導入できることが有利である。
【0074】
蒸留後の残渣中の残留溶媒量は、通常5重量%未満、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%である。
【0075】
留去した溶媒は、濃縮され、好ましくは再使用される。
【0076】
蒸留に加えて、又は蒸留の代わりに、溶媒ストリッピングi)を必要に応じて実施することができる。
【0077】
このため、好適な装置で好適なガスを使用して、少量の溶媒又は低沸点不純物がなお含まれている可能性がある生成物を、50〜150℃、好ましくは80〜150℃に加熱し、残量の溶媒を除去する。支援するため、適切な場合は、真空を適用することもできる。
【0078】
好適な装置は例えば、慣例の内部構造物、例えばトレイ、不規則充填物又は規則充填物、好ましくは不規則充填物を備えたそれ自体公知のデザインのカラムである。好適なカラム内部構造物は、原理的には慣例の内部構造物すべて、例えばトレイ、配列充填物及び/又は不規則充填物である。トレイのうち、バブルキャップトレイ、シーブトレイ(sieve dumped trays)、バルブトレイ、Thormannトレイ、及び/又はデュアルフロートレイが好ましく、充填物のうち、リング、コイル、サドル、ラシヒリング、Intosリング、若しくはポールリング、バレルサドル、若しくはインターロックスサドル、Top-Pakなど、又はメッシュを含むものが好ましい。
【0079】
この場合、例えばLuwa、Rotafilm、又はSambay蒸発器など、流下薄膜型蒸発器、薄膜蒸発器、又はワイプトフィルム蒸発器(wiped-film evaporator)も考えられ、例えばデミスターを飛沫よけとして装備してもよい。
【0080】
好適なガスは、ストリッピング条件下で不活性なガス、特に温度50〜100℃に状態調節しておいたガスである。
【0081】
ストリッピングガスの量は、例えば反応混合物1m3当たり毎時5〜20m3、特に好ましくは10〜20m3、極めて特に好ましくは10〜15m3のストリッピングガスである。
【0082】
微量の塩沈殿物、さらには脱色剤が存在していればいずれも除去するために、必要なら、ワークアップ工程の任意所望の段階、好ましくは洗浄/中和後、及び適切な場合は溶媒除去後に、エステル化混合物を濾過j)にかけることができる。予洗又は後洗e)又はg)を省略することが好ましい;濾過工程j)だけが実用であってもよい。同様に、中和f)なしで済ますことが好ましい。
【0083】
ステップe)/g)、さらにはh)及びj)の順序は、任意である。
【0084】
本発明は、本発明によるプロセスで得られる高官能性高分岐又は超分岐ポリエステルをさらに提供する。これらは、変色及び樹脂化の割合が特に低いことを特徴とする。
【0085】
本発明によるポリエステルは、分子量Mnが少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも600g/mol、特に好ましくは750g/molである。分子量Mnの上限は、好ましくは100000g/molであり、特に好ましくは80000g/mol以下であり、極めて特に好ましくは30000g/mol以下である。
【0086】
多分散性、さらには数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwに関するデータは、この場合ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、標準物質としてポリメチルメタクリラート、溶離液としてテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、又はヘキサフルオロイソプロパノールを使用して行われた測定を表すものである。方法は、Analytiker Taschenbuch、第4巻、433〜442頁、Berlin 1984年に記載されている。
【0087】
ポリエステルの多分散性は、1.2〜50、好ましくは1.4〜40、特に好ましくは1.5〜30、極めて特に好ましくは10までである。
【0088】
ポリエステルの溶解性は、通常極めて良好である。すなわち、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エタノール、及び多数の他の溶媒中、本発明によるポリエステルの含有量が、50重量%まで、場合によっては80重量%まであっても、25℃において清澄な溶液を調製することができ、ゲル粒子は肉眼で検出されない。これは、本発明によるポリエステルの架橋度が低いことを示すものである。
【0089】
高官能性高分岐及び超分岐ポリエステルは、カルボキシ基を末端に有し、カルボキシ基とヒドロキシ基を末端に有し、好ましくはヒドロキシ基を末端に有する。
【0090】
好ましい一実施形態において、高分岐ポリエステルは、直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル基及び/又は-アルケニル基で完全置換又は部分置換されている。本発明の文脈内で、アルケニル基は一価不飽和又は多価不飽和とすることができる。
【0091】
本発明の範囲内で、置換は、高分岐ポリエステルと化合物Aを、重合反応中及び/又は重合反応後に反応させることを意味する。化合物Aは、直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル基及び/又はアルケニル基と反応性基を含むということで注目に値する。化合物Aの反応性基は、高分岐ポリエステルと反応することができる。好ましくは、化合物Aは、正確に1個の直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル基及び/又はアルケニル基と正確に1個の反応性基を含む。
【0092】
化合物Aと反応させた高分岐ポリエステルは、置換高分岐ポリエステルと称される。
【0093】
完全置換又は部分置換を行うことができる。これは、完全置換の場合、高分岐ポリエステルの反応性基が化合物Aと完全に反応したことを意味する。部分置換の場合は、高分岐ポリエステルの反応性基の全部が化合物Aと反応したわけではない。
【0094】
好ましくは、高分岐ポリエステルは、オクチル(カプリル)基、ノニル基、デシル(カプリニル)基、ウンデシル基、ドデシル(ラウリニル)基、テトラデシル基、ヘキサデシル(パルミチル)基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、及び/又は対応する一価不飽和若しくは多価不飽和等価物、例えばドデセニル基、ヘキサジエニル(ソルビニル)基、オクタデセニル(オレイル)基、リノリル基、又はリノレニル基などによって置換されている。この文脈では、等価物とは、対応する直鎖又は分岐アルキル基と少なくとも一つの二重結合を有するということだけが異なる炭化水素基を意味すると理解されたい。
【0095】
置換高分岐ポリエステルは好ましくは、得られる高官能性高分岐又は超分岐ポリエステルを、ポリエステルのOH基及び/又はエステル基と反応することができる好適な官能化試薬と反応させることによって得られる。
【0096】
ヒドロキシル基を含む高官能性高分岐ポリエステルは、例えばエステル、無水物、若しくはアミドなどの酸誘導体基、又はイソシアナート基を含む分子を添加することによって改変することができる。例えば、酸基を含むポリエステルは、無水物基を含む化合物との反応によって得ることができる。
【0097】
この場合、置換化合物の反応性基と高分岐ポリエステルの反応性基のモル比は、1:10〜1:1、好ましくは1:5〜1:1.1、特に好ましくは1:2〜1:1.2である。特に好ましい範囲は、1:1.7〜1:1.4である。
【0098】
本発明の好ましい一実施形態において、式R-CO-Yのカルボン酸誘導体及び/又は式R-NCOのイソシアナートを用いた置換が行われる。式中の基は下記の意味を有する。Rは直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキルである。YはOR1、OC(O)R2、又はNR32である。ここで、R1は、水素又は直鎖若しくは分岐C1-〜C6-アルキルであり、R2は直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキルであり、RとR2は、同一でも異なってもよい。R3は、水素又は直鎖若しくは分岐C1-〜C4-アルキルであり、二つのR3基は、同一でも又は互いに異なってもよい。好ましい化合物は、直鎖C4〜C40-アルキルイソシアナートであり、オクチル(カプリル)イソシアナート、ノニルイソシアナート、デシル(カプリニル)イソシアナート、ウンデシルイソシアナート、ドデシル(ラウリニル)イソシアナート、テトラデシルイソシアナート、ヘキサデシル(パルミチル)イソシアナート、ヘプタデシルイソシアナート、オクタデシル(ステアリル)イソシアナートが特に好ましい。別の好ましい化合物は、一つ又は複数の二重結合を有する直鎖C4〜C40-アルケニルイソシアナートであり、ドデセニルイソシアナート、ヘキサジエニル(ソルビニル)イソシアナート、オクタデセニル(オレイル)イソシアナート、リノリルイソシアナート、又はリノレニルイソシアナートが特に好ましい。
【0099】
極めて特に好ましい化合物はイソシアン酸ステアリルである。
【0100】
置換は、例えばその後の工程段階(ステップc))において行うことができる。しかし、置換は、早ければ高分岐ポリエステルの調製中にも行うことができる。好ましくは、置換は、その後の工程段階において行われる。置換がその後の工程段階で行われる場合、好ましくは高分岐ポリエステルが最初に導入され、一つ又は複数の化合物Aが添加される。
【0101】
置換は通常、0〜300℃、好ましくは0〜250℃の温度、特に好ましくは60〜200℃、極めて特に好ましくは60〜160℃で、希釈剤を用いず、又は溶液として行われる。この場合は、一般に特定の出発材料に対して不活性であるすべての溶媒を使用することが可能である。例えば、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、又はソルベントナフサなどの有機溶媒を使用することが好ましい。
【0102】
好ましい一実施形態において、置換反応は、希釈剤を用いず実施される。反応速度を上げるために、反応中に放出される低分子量化合物を、例えば蒸留により、必要に応じて減圧下で反応平衡から除去することができる。
【0103】
反応を完結させるには、化合物Aを添加した後、又は異なる二つ以上の化合物Aが使用される場合は複数の化合物Aを添加した後に、反応容器の温度を上げることが必要になることがある。昇温幅は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。
【0104】
高官能性ポリエステルの置換は、たいていの場合0.1mbar〜20bar、好ましくは1mbar〜5barの圧力範囲で、バッチ操作、半連続式、又は連続式に作動させる反応器又は反応器カスケード中において行われる。
【0105】
本発明は、少なくとも一つの置換高分岐ポリエステルを含む化粧料組成物を提供する。
【0106】
化粧料組成物は、好ましくは少なくとも一つの化粧料として好適な担体を含む。
【0107】
化粧料及び/又は皮膚用製剤における置換高分岐ポリエステルの使用は、本発明に基づくものである。
【0108】
皮膚化粧料製剤における使用が好ましい。
【0109】
置換高分岐ポリエステルを増粘剤として使用することが好ましい。この文脈では、特に油系増粘剤としての使用が好ましい。
【0110】
皮膚化粧料調合物
本発明による皮膚化粧料組成物、特にスキンケア用のものは、様々な形で存在し、使用することができる。したがって、これらは、例えば水中油(O/W)型のエマルション、又は例えば水中油中水型(W/O/W)型の多重エマルションとすることができる。ハイドロディスパージョン(hydrodispersion)、ハイドロゲル、又はピッカリング(Pickering)エマルションなどの乳化剤を含有しない製剤も有利な実施形態である。製剤の稠度は、ペースト状製剤から、流動性製剤を経て、低粘度噴霧可能生成物にまで及ぶことがある。それに応じて、クリーム、ローション、又はスプレーを製剤化することができる。使用には、十分量の本発明による化粧料組成物が、化粧料及び皮膚用組成物には慣例の方式で皮膚に適用される。
【0111】
皮膚表面の塩分は、本発明による調合物の粘度を、調合物の簡単な塗布及び擦込みが可能になるように下げるのに十分である。
【0112】
本発明による皮膚化粧料調合物は、特にW/O又はO/Wスキンクリーム、昼夜用クリーム、アイクリーム、フェイスクリーム、しわ取りクリーム、フェイシャルクリーム、保湿クリーム、漂白クリーム、ビタミンクリーム、スキンローション、ケアローション、及び保湿ローションとして存在する。
【0113】
別の有利な皮膚化粧料調合物は、フェイストナー、フェイスマスク、防臭剤、及び他の化粧料ローション、並びにデコラティブ化粧料用の調合物、例えばコンシーリングスティック、舞台用メーキャップ、マスカラ、アイシャドー、口紅、コールペンシル、アイライナー、メーキャップ、ファンデーション、ほお紅、おしろい、及びペンシル型まゆ墨である。さらに、本発明による組成物を、毛穴洗浄用ノーズストリップ、抗ニキビ組成物、忌避剤、ひげそり用組成物、脱毛組成物、インティメイトケア用組成物、フットケア組成物、及び乳児ケアにおいて使用することができる。W/Wエマルションポリマー及び好適な担体に加えて、本発明による皮膚化粧料調合物は、上述及び後述のように化粧料で慣例の別の活性成分及び/又は補助剤を含む。これらには、好ましくは乳化剤、保存剤、香油、フィタントリオールなどの化粧料活性成分、ビタミンA、E、及びC、レチノール、ビサボロール、パンテノール、天然及び合成光防護剤、漂白剤、着色剤、着色剤、日焼け剤、コラーゲン、タンパク質加水分解物、安定剤、pH調節剤、染料、塩、増粘剤、ゲル形成剤、稠度調節剤、シリコーン、湿潤剤、コンディショナー、リファッティング剤(refatting agent)、並びに別の慣例の添加剤が含まれる。特定の特性が設定されることになっている場合、別のポリマーを組成物に添加することもできる。例えば、触感、塗布挙動、耐水性、及び/又は活性成分と顔料などの補助剤との結合を改善するなどある種の特性を確立するのに、組成物は、シリコーン化合物をベースにしたコンディショニング用物質もさらに含むことができる。好適なシリコーン化合物は、例えば、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアリールアルキルシロキサン、ポリエーテルシロキサン、又はシリコーン樹脂である。以下に、本発明による組成物の別の利用可能な材料を各キーワードの下に記載する。
【0114】
油、脂肪、及びろう
皮膚及び頭髪用化粧料組成物は、好ましくは油、脂肪、又はろうも含む。化粧料組成物の油相及び/又は脂肪相の構成要素は、レシチンと、トリ脂肪酸グリセリル、すなわち8個〜24個、特に12個〜18個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルとの群から選択されることが有利である。トリ脂肪酸グリセリルは例えば、合成、半合成、及び天然油の群、例えばオリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、落花生油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココナッツ油、ヒマシ油、麦芽油、ブドウ種子油、アザミ油、月見草油、マカダミアナッツ油などから選択されることが有利であり得る。別の極性油成分は、3個〜30個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルカンカルボン酸と3個〜30個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルコールとのエステルの群から選択し、さらには芳香族カルボン酸と3個〜30個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルコールとのエステルの群からも選択することができる。次いで、このようなエステル油は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n-ブチル、ラウリン酸n-ヘキシル、オレイン酸n-デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシル、炭酸ジカプリリル(Cetiol CC)及びココグリセリル(Myritol 331)、ジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコール、及びアジピン酸ジブチル、さらには例えばホホバ油などこのようなエステルの合成、半合成、及び天然混合物からなる群から選択できることが有利である。さらに、一つ又は複数の油成分は、分岐及び非分岐炭化水素及び炭化水素ろうの群、シリコーン油、ジアルキルエーテル、飽和又は不飽和の分岐又は非分岐アルコールの群から選択できることが有利である。このような油及びろう成分の所望の混合物であればいずれでも、本発明の文脈内で有利に使用される。ろう、例えばパルミチン酸セチルを油相の単独脂質成分として使用することも場合によっては有利であることがある。本発明によれば、油成分は、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、イソエイコサン、ヤシ脂肪酸2-エチルヘキシル、安息香酸C12〜15-アルキル、トリ(カプリル-カプリン酸)グリセリル、ジカプリリルエーテルからなる群から選択されることが有利である。安息香酸C12〜C15-アルキルとイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物、安息香酸C12〜C15-アルキルとイソノナン酸イソトリデシルの混合物、さらには安息香酸C12〜C15-アルキルとイソステアリン酸2-エチルヘキシルとびイソノナン酸イソトリデシルの混合物が、本発明においては有利である。本発明によれば、5〜50mN/mの極性を有する油として、トリ脂肪酸グリセリル、特にダイズ油及び/又はアーモンド油を使用することが特に好ましい。本発明の文脈内では、炭化水素のうち、水素添加されていてもよいパラフィン油、スクアラン、スクアレン、特にポリイソブテンを有利に使用することができる。
【0115】
さらに、油相をゲルベ(Guerbet)アルコールの群から選択できることが有利である。ゲルベアルコールは、以下の反応方程式
【化1】

【0116】
に基づいて、アルコールの酸化により、アルデヒドが得られ、アルデヒドのアルドール縮合によって、アルドールから水が脱離し、アリルアルデヒドの水素添加により生成される。ゲルベアルコールは低温であっても液体であり、事実上皮膚刺激性を示さない。これらは、化粧料組成物においてファッティング、スーパーファッティング、さらにはリファッティング構成要素として有利に使用される。化粧料におけるゲルベアルコールの使用は、それ自体公知である。次いで、このような種は、たいていの場合以下の構造によって特徴付けられる。
【化2】

【0117】
ここで、R1及びR2は、通常非分岐アルキル基である。本発明によれば、ゲルベアルコール(一つ又は複数)は、以下の群から選択されることが有利である:
R1=プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又はオクチル、及び
R2=ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、又はテトラデシル。
【0118】
本発明によれば好ましいゲルベアルコールは、2-ブチルオクタノール(例えば、Isofol(登録商標)12として市販(Condea))及び2-ヘキシルデカノール(例えば、Isofol(登録商標)16として市販(Condea))である。
【0119】
例えば、2-ブチル-オクタノールと2-ヘキシルデカノールの混合物(例えば、Isofol(登録商標)14として市販(Condea))などの本発明によるゲルベアルコールの混合物も、本発明に従って有利に使用される。このような油及びろう成分の所望の混合物であればいずれでも、本発明の文脈内で有利に使用される。ポリオレフィンのうちでは、ポリデセンが好ましい物質である。一種または複数種のシリコーン油に加えて追加量の他の油相成分を用いることが好ましいものの、油成分は、有利には、ある含有量の環状又は直鎖シリコーン油を有することもでき、または完全にそのような油から構成されていてもよい。低分子量シリコーン又はシリコーン油は、通常以下の一般式で定義される。
【化3】

【0120】
より高い分子量のシリコーン又はシリコーン油は、通常以下の一般式で定義される。
【化4】

【0121】
式中、ケイ素原子は、この場合概括的にR1基〜R4基で示される、同一又は異なったアルキル基及び/又はアリール基で置換されていてもよい。しかし、異なる基の数は必ずしも四つに限定されない。mは、この場合2〜200000の値と仮定することができる。
【0122】
本発明に従って有利に使用することができる環状シリコーンは、通常以下の一般式で定義される。
【化5】

【0123】
式中、ケイ素原子は、この場合概括的にR1基〜R4基で表される、同一又は異なったアルキル基及び/又はアリール基で置換されていてもよい。しかし、異なる基の数は必ずしも四つに限定されない。nは、この場合3/2〜20の値と仮定することができる。nの分数値により、奇数のシロキシル基が環に存在している可能性が考慮される。フェニルトリメチコンが、シリコーン油として選択されることが有利である。他のシリコーン油、例えばジメチコン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、フェニルジメチコン、シクロメチコン(例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、セチルジメチコン、ベヘノキシジメチコンも本発明の文脈内で有利に使用される。シクロメチコンとイソノナン酸イソトリデシルの混合物、さらにはシクロメチコンとイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物も有利である。しかし、以上に記載の化合物と同様の構成を有するシリコーン油を選択することも有利であり、その有機側鎖は、誘導体化、例えばポリエトキシル化及び/又はポリプロポキシル化されている。これらとしては、例えばポリシロキサンポリアルキル-ポリエーテルコポリマー、例えばセチル-ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)は、本発明に従って使用されるシリコーン油として有利に使用される。
【0124】
有利に使用することができる脂肪及び/又はろう成分は、植物系ろう、動物系ろう、鉱物系ろう、及び石油化学系ろうの群から選択することができる。例えば、カンデリラろう、カルナウバろう、木ろう、アフリカハネガヤ(esparto grass)ろう、コルクろう、グアルマろう、コメ胚芽油ろう、サトウキビろう、ベリーろう、オーリクリーろう、モンタンろう、ホホバろう、シアバター、蜜ろう、シェラックろう、鯨ろう、ラノリン(羊毛ろう)、尾脂、セレシン、オゾケライト(地ろう)、パラフィンろう、及びマイクロろう。別の有利な脂肪及び/又はろう成分は、例えばSyncrowax(登録商標)HRC(グリセリルトリベヘナート)及びSyncrowax(登録商標)AW 1 C(C18〜36-脂肪酸)、さらにはモンタンエステルろう、サソール(sasol)ろう、水素添加ホホバろう、合成又は改質蜜ろう(例えば、ジメチコンコポリオール蜜ろう及び/又はC30〜50-アルキル蜜ろう)、例えばTegosoft(登録商標)CRなどのリシノール酸セチル、ポリアルキレンろう、ポリエチレングリコールろうなどの化学的改質ろう及び合成ろうであるが、さらには化学的改質脂肪、例えば水素添加植物油(例えば、水素添加ヒマシ油及び/又は水素添加ココナッツ脂肪酸グリセリル)、例えば水素添加ダイズ脂肪酸グリセリル、トリヒドロキシステアリンなどのトリグリセリド、脂肪酸、例えばステアリン酸C20〜40-アルキル、ヒドロキシステアロイルステアリン酸C20〜40-アルキル、及び/又はモンタン酸グリコールなどの脂肪酸エステル及びグリコールエステルも有利である。また、例えばステアロキシトリメチルシランなど、指定された脂肪及び/又はろう成分と同様の物理的諸特性を有するある種の有機ケイ素化合物は、さらに有利である。本発明によれば、脂肪及び/又はろう成分を、個別に又は組成物における混合物として使用することができる。このような油及びろう成分の所望の混合物であればいずれでも、本発明の文脈内で有利に使用される。油相は、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、ジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコール、ヤシ脂肪酸2-エチルヘキシル、安息香酸C12〜15-アルキル、トリ(カプリル酸-カプリン酸)グリセリル、ジカプリリルエーテルからなる群から有利に選択される。オクチルドデカノール、トリ(カプリル酸-カプリン酸)グリセリル、ジカプリリルエーテル、炭酸ジカプリリル、ココグリセリルの混合物、又は安息香酸C12〜15-アルキル及びイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物、安息香酸C12〜15-アルキル及びジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコールの混合物、さらには安息香酸C12〜15-アルキル、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、及びイソノナン酸イソトリデシルの混合物が、特に有利である。本発明の文脈内では、炭化水素のうち、パラフィン油、シクロパラフィン、スクアラン、スクアレン、水素添加ポリイソブテン及びポリデセンを有利に使用することができる。
【0125】
油成分は、リン脂質の群から選択できることも有利である。リン脂質は、アシル化グリセロールのリン酸エステルである。ホスファチジルコリンのうちで最も重要なのは、例えば、以下の一般構造によって特徴付けられるレシチンである。
【化6】

【0126】
式中、R'及びR"は、典型的には、炭素原子15個又は17個及びcis型二重結合四つまで有する非分岐脂肪族基である。本発明によれば、本発明に従った有利なパラフィン油として、Merkur VaselineからのMerkur Weissoel Pharma 40、Shell & DEA OilからのShell Ondina(登録商標)917、Shell Ondina(登録商標)927、Shell Oil 4222、Shell Ondina(登録商標)933、Pionier(登録商標)6301 S、Pionier(登録商標)2071(Hansen & Rosenthal)を使用することが可能である。好適な化粧料として両立的油脂成分については、Karl-Heinz Schrader、Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika [Fundamentals and formulations of cosmetics]、第2版、Verlag Huthig、Heidelberg、319〜355頁に記載されており、本明細書により、全体として参照される。
【0127】
本発明の別の実施形態は、特許請求の範囲、説明、及び実施例に記載されている。以上に指定され、以下でなお説明されるはずである本発明による主題の特徴は、それぞれの場合に記載の組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せでも使用することができることは言うまでもない。
【0128】
本発明は、以下の実施例で説明することにする。
【実施例】
【0129】
測定方法
Nicolet 210装置を使用して、IR測定を実施した。酸価及びヒドロキシル価は、DIN 53240、パート2に従って決定した。分子量は、屈折計を検出器として使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーで決定した。使用した移動相はジメチルアセトアミドであり、分子量を決定するのに使用された標準物は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。
【0130】
供給材料
DBTL:ジラウリン酸ジブチルスズ、製造業者:Sigma-Aldrich
パラフィン油:ヌジョール、Fluka AG
【0131】
実施例1:高分岐ポリエステルの調製
最初に、撹拌機、還流冷却器、それに取り付けられたガス注入口、内的に連結させた冷却トラップを備えた真空系統、及び内部温度計を装備した1000mlのガラス反応器に、アジピン酸233.2g(1.6mol)、及び1,2-プロピレンオキシド単位を用いて、ランダムにエーテル化させたトリメチロールプロパンをベースにしたトリオール266.0g(1.33mol)を導入した。200ppmのDBTLを添加した後、混合物を150℃に加熱した。この間に、内圧を、生成した水が制御された方式で除去されるように最終値である約10mbarに下げた。この温度で、5.5時間撹拌した。酸価は68mgKOH/gであった。上記のトリオール97g(一つの酸基当たり0.8当量)を反応混合物に添加した。反応混合物を、内圧約10mbarでさらに5時間撹拌し、次いでこの圧力で、周囲温度に冷却した。最終生成物が、以下の特性を有する清澄な粘性液体として得られた。酸価=26mgKOH/g;ヒドロキシル価=204mgKOH/g;粘度:6800mPas(75℃)
【0132】
実施例2〜8:高分岐ポリエステルのイソシアン酸ステアリルを用いた改質
撹拌機、還流冷却器、ガス注入口、内部温度計、及び必要量のイソシアン酸ステアリルが入っている滴下漏斗を装備した250mlのガラス反応器に、実施例1の高分岐ポリエステルを最初に導入した。高分岐ポリエステル及びイソシアン酸ステアリルの使用量を下記の表に示す。
【0133】
反応器を80℃に加熱し、イソシアン酸エステルを15分間かけて滴下した。次いで、反応混合物を120℃でさらに2時間撹拌し、IR分光分析でイソシアナート基の消失(2270cm-1におけるイソシアナートバンドの消失)によって反応の進行を確認した。
【表1】

【0134】
実施例9:ステアリル改質高分岐ポリエステルをパラフィン油に添加することによるゲル形成
実施例3〜8の様々な量(0.5〜20重量%)のポリマーを、パラフィン油に溶解した。目に見えるゲル形成が起こった濃度を、下記の表に示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル又はアルケニル基で完全置換又は部分置換されている高分岐ポリエステル。
【請求項2】
式R-CO-Y及び/又はR-NCOの誘導体を用いた置換が行われ、
式中、
R=直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル、
Y=OR1、OC(O)R2、NR32、又はハロゲン、
R1=水素、直鎖又は分岐C1-〜C6-アルキル、
R2=直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル、ここでRとR2は、同一でも異なっていてもよく、
R3=水素、直鎖又は分岐C1-〜C4-アルキル、ここで二つのR3基は、同一でも又は互いに異なっていてもよい、
請求項1に記載の置換高分岐ポリエステル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高分岐ポリエステルを少なくとも一種含む化粧料組成物。
【請求項4】
少なくとも一種の化粧料として好適な担体を含む、請求項3に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の高分岐ポリエステルの化粧料及び/又は皮膚用製剤における使用。
【請求項6】
皮膚化粧料製剤における、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
増粘剤としての、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
油系増粘剤としての、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2013−512290(P2013−512290A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540373(P2012−540373)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067872
【国際公開番号】WO2011/064153
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】