説明

化粧板の製造方法

【課題】天然木突板を用いつつ所望のデザインが具体的に容易に得られる化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1表面に、その表面色を隠蔽しかつ木目の色柄と融合調和する色柄を有する印刷層4を形成し、印刷層4表面に透明性接着剤5′を介して天然木突板7を接着して薄単板層6を形成した後、その薄単板層6の表面をショットブラスト又はブラッシングで研削して薄単板層6表面の春目部8を凹部とし秋目部9を凸部とする凹凸薄単板層10を形成し、この凹凸薄単板層10の表面に透明性樹脂塗料を塗布して透明性樹脂塗料層11を形成することで、化粧板を製造する。印刷層4の色柄に応じて硬さの異なる天然木突板7を薄単板層6として用いることで、印刷層4の色柄に応じて薄単板層6の研削量を変え、印刷層4の色柄におけるグラデーションの幅が太いほど硬い天然木突板7を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の床用、壁用、その他の内装用建材や家具の面材として用いるのに好適な装飾性に優れた化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合板やMDF、或いは合板の表面を樹脂含浸紙や薄物MDFで補強した複合板等からなる木質基板の表面に、天然銘木薄単板を突板として接着し、さらにその表面に透明性樹脂塗装を施した化粧板はよく知られており、住宅の床用化粧板や収納家具の面材等に広く使用されている。しかし、このような天然銘木薄単板は資源が枯渇化し、入手が困難で高価になってきており、これら天然銘木薄単板よりも装飾性に劣る木質薄単板を突板として利用することが必要となってきている。
【0003】
そこで、このような木質薄単板であっても、最近では0.2mm〜0.5mm程度の薄物が多く使用されている。また、木質基板に用いる合板も、南洋産広葉樹に代わって、針葉樹や植林木等、表面に節等の欠点の多い樹種よりなる合板が用いられている。さらには、MDFも色が濃褐色である。
【0004】
しかし、このような欠点の多い合板や濃褐色のMDFの表面に、上記のような薄い木質薄単板を接着すると、基板の節等の欠点や濃い表面色が、木質薄単板の表面に浮き出て化粧板の表面外観を著しく損なうという問題点が生じるのは避けられない。
【0005】
一方、特許文献1には、基材上に着色紙等を接着し、この上に透明接着剤を介して薄化粧単板を接着し、さらにこの表面を透明塗料層により被覆することで、木材色調とは異なる色合いと単板の木理模様とが重なり映し出され、しかも単板の微細な木理が忠実に顕現するカラー単板積層品が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−83601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1のものによれば、高価な天然銘木単板を極めて薄くして利用できるとともに、基材色を隠蔽して所望の色調と単板の木理とを重なり映し出すことができ、天然銘木の色合いとは全く異なる色合いを有するものを提供することができる。
【0008】
しかしながら、この方法では、天然銘木単板の装飾性の良い木理を生かしながら黄色、青色、灰色のような特殊な色調の化粧板を得ることはできても、装飾性に劣る木質薄単板の木目の装飾性を高めたり、天然木にはない新しい木目外観を現出させたり、木目外観に深みや立体感を与えたりすることはできなかった。
【0009】
また、極めて薄い木質薄単板が必要となるため、そのスライス加工や接着加工等の生産が難しくなるという問題を有していた。
【0010】
他方、近年では、戸建て住宅では、自然な木目の変化をさりげなく表現したナチュラルデザインが、またマンション市場では、濃淡の激しい源平感(赤茶系と白系の組み合わせ)や多色感を表現したワイルドなデザインがそれぞれ求められており、これら多様なデザインニーズに応えるためには、天然木突板のみでは十分に対応することができない。
【0011】
また、最近の流行である白を基調とした色表現を始め、天然にない色柄についても天然木突板では不可能である。
【0012】
しかし、化粧シートでは、自由な色柄を作ることができるものの、印刷物を用いているので、本物の木の持つ深み感や色の微妙な変化を表現することが困難である。
【0013】
そこで、本発明の出願人は、基板の表面に、木目の色柄と融合調和する色柄でかつ基板の表面色を隠蔽する印刷層を設け、その印刷層の表面に透明性接着剤層を介して春目部を凹部とし秋目部を凸部とする凹凸薄単板層を設け、その凹凸薄単板層の表面に透明性樹脂塗料層を設けて、印刷層の色柄と凹凸薄単板の木目の色柄とが融合調和した外観を表面に現出できるようにした化粧板を提案している(特願2009−018986号参照)。
【0014】
しかし、この提案のものでは、基板表面の欠点や色の影響を受けることがなく、立体感と深みがあり、装飾性に優れた新しい木目外観の化粧板の基本構成が示されているだけに止まっており、所望のデザインを具体的に得る手段については明確でなく、さらなる改良の余地があった。
【0015】
本発明の目的は、上記提案の化粧板について引き続き開発を行い、天然木突板を用いつつ所望のデザインが具体的に容易に得られる化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、この発明では、天然木突板の層を研削して凹凸薄単板層を形成する場合に、その凹凸薄単板層を通して下側の印刷層の色柄が表面に露呈する透過度合いが薄単板層に対する研削量に応じて変化することに着目し、その研削量を下側の印刷層の色柄に応じて変えるようにした。
【0017】
具体的には、請求項1の発明では、基板の表面に、該基板の表面色を隠蔽しかつ木目の色柄と融合調和する色柄を有する印刷層を形成し、その印刷層の表面に透明性接着剤を介して天然木突板を接着して薄単板層を形成した後、その薄単板層の表面をショットブラスト又はブラッシングで研削して、薄単板層表面の春目部を凹部とし秋目部を凸部とする凹凸薄単板層を形成し、この凹凸薄単板層の表面に透明性樹脂塗料を塗布して透明性樹脂塗料層を形成する化粧板の製造方法であって、上記印刷層の色柄に応じて上記薄単板層の研削量を変えることを特徴とする。
【0018】
この請求項1の発明では、基板の表面に印刷層が形成され、その印刷層の表面に透明性接着剤を介して天然木突板が接着されて薄単板層が形成された後、その薄単板層の表面がショットブラスト又はブラッシングにより研削されて凹凸薄単板層が形成され、しかる後にその表面に透明性樹脂塗料により透明性樹脂塗料層が形成されて、化粧板が得られる。
【0019】
そして、上記薄単板層の表面を研削する際、下側の印刷層の色柄に応じて薄単板層の研削量が変えられる。このことで、例えば印刷層の色柄がグラデーションの幅の細いものであるときには、研削量を大きくすることで、凹凸薄単板層が薄くなって、該凹凸薄単板層を通して下側の印刷層の色柄が化粧板表面に露呈する透過度合いが大きくなり、化粧板の表面に凹凸薄単板層を通して化粧層の色柄が直接的に露呈するようになり、木目を活かした意匠が得られる。
【0020】
逆に、印刷層の色柄がグラデーションの幅の太いものであるときには、研削量を小さくすることで、凹凸薄単板層が薄くならず、該凹凸薄単板層を通して下側の印刷層の色柄が化粧板表面に露呈する透過度合いが小さくなり、化粧板の表面に凹凸薄単板層を通して化粧層の色柄が間接的に露呈するようになる。この場合は、本来の天然木突板にはない緩やかな色変化のある意匠が得られる。
【0021】
このようにして、天然木突板を用いつつ所望のデザインの化粧板が容易に得られる。
【0022】
請求項2の発明では、硬さの異なる天然木突板を薄単板層として用いることで、上記薄単板層の研削量を変えることを特徴とする。
【0023】
この請求項2の発明では、天然木突板の硬さが異なっていると、その天然木突板からなる薄単板層を同じ条件で研削しても研削量が変化し、突板が軟らかいほど研削量が大きくなる。すなわち、使用する天然木突板の種類を変えるだけで、その研削量を容易に変更することができる。
【0024】
請求項3の発明では、上記請求項2の化粧板の製造方法において、印刷層の色柄におけるグラデーションの幅が太いほど硬い天然木突板を用いる。
【0025】
この請求項3の発明では、印刷層の色柄のグラデーションの幅が細いときには、硬さの軟らかい突板が用いられ、その研削量が大きくなり、凹凸薄単板層の透過度合いが大きくなる。このことで、化粧板の表面に凹凸薄単板層を通して化粧層の色柄が直接的に露呈するようになり、木目を活かした意匠が得られる。
【0026】
逆に、印刷層の色柄のグラデーションの幅が太くなると、硬さの硬い突板が用いられ、その研削量が小さくなり、凹凸薄単板層の透過度合いも小さくなる。このことで、化粧板の表面に凹凸薄単板層を通して化粧層の色柄が間接的に露呈するようになり、本来の天然木突板にはない緩やかな色変化のある意匠が得られる。
【0027】
請求項4の発明では、上記請求項2の化粧板の製造方法において、印刷層の色柄が明確であるほど軟らかい天然木突板を用いかつ透明性樹脂塗料層の色を濃くする。
【0028】
この請求項4の発明では、印刷層の色柄がはっきりして明確であるときには、硬さの軟らかい突板が用いられ、その研削量が大きくなり、凹凸薄単板層の透過度合いが大きくなる。また、透明性樹脂塗料層の色は濃色になる。このことで、化粧板は、奇抜な色変化や柄が抑えられ、深みのある重厚な意匠が得られる。
【0029】
逆に、印刷層の色柄がぼやけて淡いときには、硬さの硬い突板が用いられ、その研削量が小さくなり、凹凸薄単板層の透過度合いも小さくなる。同時に、透明性樹脂塗料層の色が淡色になる。このことで、化粧板は、自然な色変化や柄をクリアに表現した爽やかな意匠が得られる。
【0030】
請求項5の発明では、上記請求項1〜4のいずれか1つの化粧板の製造方法において、印刷層は、化粧板の長手方向に沿って濃淡が変化している色柄を有するものとする。
【0031】
この請求項5の発明では、化粧板の長手方向に濃淡が変化している色柄の印刷層により、その化粧板を床材に加工して施工したとき、均一な変化の柄が目立つようになり、床材として好ましい意匠が得られる。
【0032】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの化粧板の製造方法において、印刷層は、化粧板の目地となる部分の色が他の部分よりも濃い色柄を有するものとする。
【0033】
この請求項6の発明では、化粧板の目地となる部分の色が他の部分よりも濃い色柄の印刷層により、その化粧板を床材に加工して施工したとき、目地部が目立つようになり、床材として好ましい意匠が得られる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明のように、請求項1の発明によると、基板表面に印刷層を形成し、その印刷層表面に天然木突板の接着により薄単板層を形成した後、その薄単板層の表面をショットブラスト等で研削して凹凸薄単板層を形成し、その表面に透明性樹脂塗料層を形成して化粧板を製造する場合に、印刷層の色柄に応じて薄単板層の研削量を変えることにより、天然木突板を用いつつ所望のデザインの化粧板が容易に得られる。
【0035】
請求項2の発明によると、硬さの異なる天然木突板を薄単板層として用いることで、薄単板層の研削量を変えるので、使用する突板の種類を変えるだけで、その研削量を容易に変更することができる。
【0036】
請求項3の発明によると、印刷層の色柄におけるグラデーションの幅が太いほど硬い天然木突板を用いることにより、印刷層の色柄のグラデーションの幅が細いときには、硬さの軟らかい突板が用いられて研削量が大きくなり、化粧板の表面に凹凸薄単板層を通して化粧層の色柄が直接的に露呈するようになり、木目を活かした意匠が得られる一方、印刷層の色柄のグラデーションの幅が太くなると、硬さの硬い突板が用いられて研削量が小さくなり、化粧板の表面に凹凸薄単板層を通して化粧層の色柄が間接的に露呈するようになり、本来の天然木突板にはない緩やかな色変化のある意匠が得られる。
【0037】
請求項4の発明によると、印刷層の色柄が明確であるほど軟らかい天然木突板を用いかつ透明性樹脂塗料層の色を濃くすることにより、印刷層の色柄がはっきりして明確であるときには、硬さの軟らかい突板が用いられて研削量が大きくなるとともに、透明性樹脂塗料層の色が濃色になり、化粧板は、奇抜な色変化や柄が抑えられ、深みのある重厚な意匠が得られる一方、印刷層の色柄が淡いときには、硬さの硬い突板が用いられて研削量が小さくなるとともに、透明性樹脂塗料層の色が淡色になり、化粧板は、自然な色変化や柄をクリアに表現した爽やかな意匠が得られる。
【0038】
請求項5の発明によると、化粧板の長手方向に濃淡が変化している色柄の印刷層としたことにより、床材に施工したときに均一な変化の柄が目立つようになり、床材として好ましい意匠が得られる。
【0039】
請求項6の発明によると、化粧板の目地となる部分の色が他の部分よりも濃い色柄の印刷層としたことにより、床材に施工したときに目地部が目立つようになり、床材として好ましい意匠が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る化粧板の製造方法の工程図である。
【図2】図2は、製造された化粧板の断面図である。
【図3】図3は、印刷層の色柄におけるグラデーションの幅と、天然木突板の樹種との組み合わせにより、得られる化粧板の意匠を示す図である。
【図4】図4は、印刷層の色柄におけるグラデーションの幅に応じて天然木突板の樹種を変えたときに得られる化粧板の意匠の具体例を示す図である。
【図5】図5は、印刷層の色柄の明確さと、天然木突板の樹種及び透明性樹脂塗料層の色との組み合わせにより、得られる化粧板の意匠を示す図である。
【図6】図6は、印刷層の色柄の明確さに応じて天然木突板の樹種及び透明性樹脂塗料層の色を変えたときに得られる化粧板の意匠の具体例を示す図である。
【図7】図7は、化粧板の長手方向に濃淡が変化しかつ目地となる部分の色が他の部分よりも濃い色柄の印刷層を用いたときの化粧板の意匠の具体例を示す図である。
【図8】図8は他の化粧板を例示する図2相当図である。
【図9】図9は他の化粧板を例示する図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0042】
(実施形態1)
本発明の実施形態に係る化粧板の製造方法を説明する前に、その製造方法によって製造される化粧板Aについて説明する。
【0043】
すなわち、図2は、本発明の実施形態に係る製造方法によって製造された化粧板Aを示す。この化粧板Aは、基板1と、その表面(上面)に積層一体化された印刷層4と、この印刷層4の表面(上面)に透明性接着剤層5を介して積層一体化された凹凸薄単板層10と、この凹凸薄単板層10の表面(上面)に設けられた透明性樹脂塗料層11とからなる。
【0044】
上記基板1としては、合板、MDF、LVL、パーティクルボード等の木質板、これら木質板の表面に薄いMDFを積層接着した木質複合板、又はこれら木質板や木質複合板の表面に樹脂層や樹脂含浸紙層を設けて表面を強化した木質基板を好適に用いることができる。このような木質基板以外では、無機質繊維板や火山性ガラス質複層板等の無機質板や合成樹脂板等も基板1として用いることができる。
【0045】
上記印刷層4は、不透明性接着剤層2と印刷紙3とで形成されている。不透明性接着剤層2としては、接着剤、例えばエチレン酢酸ビニル樹脂接着剤や尿素メラミン樹脂接着剤等、硬化後に透明性を発現する接着剤に酸化チタン等の白顔料を加えて隠蔽性を付与したものを用いることができる。
【0046】
一方、上記印刷紙3としては、板目、柾目等の木目柄模様を印刷したもの、連続的又は断続的な直線状のストライプ柄模様を印刷したもの、連続的又は断続的な波型柄模様を印刷したもの、シボ柄模様や岩肌柄模様、斑柄模様、ゆず肌柄模様等の地模様を印刷したもの、その他の不規則な曲線柄模様や細かな格子柄模様を印刷したもの、及びこれらの印刷を全面的に或いは部分的にパール調、メタリック調等の光輝性、光沢性を有するもの、その他の色に着色したもの等を用いることができる。
【0047】
このような印刷紙3の色柄は、後述する凹凸薄単板層10を表面に設けたときに、その凹部である春目部8において強く現出し、秋目部9においては殆ど目立たないようになることを考慮して、凹凸薄単板層10の木目や色調と融合調和し、化粧板Aの表面に立体感や深みを与え、また新しい感覚の木目外観を強調できるように設定される。この印刷紙3の色柄と凹凸薄単板層10との組み合わせについては後で詳細に説明する。
【0048】
尚、上記印刷層4に隠蔽性を付与するために接着剤層2を不透明性にするものを示したが、これに限らず印刷紙3自体に隠蔽性を付与したものを用いることもできる。具体的には、裏面にアルミ箔等の隠蔽性シートを接着複合した印刷紙を用いるか、或いは白顔料を内添した印刷紙を用いることを挙げることができる。尚、本実施形態における印刷紙3には、いわゆる植物繊維を原料とする紙に限らず、合成繊維紙や合成樹脂フィルムやシート等、幅広い原料からなるフィルム状やシート状の紙状物に印刷を施したものを用いることができる。
【0049】
上記透明性接着剤層5としては、硬化した状態で透明又は半透明であり、印刷層4の色柄をその表面に透過ないしは半透過できることが必要である。このような透明性接着剤層5は、具体的には、尿素・メラミン樹脂、メラミン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ビニルウレタン樹脂等の接着剤の硬化体、又はこれらの接着剤に着色顔料を少量混合した着色接着剤の半透明硬化体等を用いることができる。
【0050】
上記凹凸薄単板層10を構成する薄単板は天然木突板7(図1参照)からなり、その凹部が春目部8で、また凸部が秋目部9でそれぞれ構成された浮造り調外観を有している。ここで、春目部8の厚さは0.05mm以下に形成されているのが好ましく、秋目部9の厚さは0.05mm〜0.5mm程度に形成されているのが好ましい。これによって透明性接着剤層5を透過した印刷層4表面の色柄は、厚さの薄い春目部8においては強く、厚さの厚い秋目部9においては弱いか或いは目立たない状態に凹凸薄単板層10の色柄と融合調和して表面に現出させることができるようになる。
【0051】
上記凹部である春目部8の厚さが0.05mmを超えると、印刷層4の色柄を凹凸薄単板層10の色柄と融合調和させて、新しい意匠外観として現出させるのが不鮮明となる。また、凸部である秋目部9の厚さが0.05mmよりも小さくなると、印刷層4の色柄の現出が春目部8と秋目部9とで小さくなって化粧外観を損なったり、加工が難しくなったりすることがあるので好ましくない。
【0052】
これによって、それほど装飾性の高くない天然木突板7を凹凸薄単板層10に用いても、印刷層4の色柄と天然木突板7の色柄とを、春目部8においては強く、秋目部9においては弱く或いは殆ど目立たない程度に融合調和させることができるようになる。
【0053】
透明性樹脂塗料層11は、凹凸薄単板層10の凹部である春目部8と凸部である秋目部9とを埋設して表面が平滑となるように設けられている。このような透明性樹脂塗料層11に用いる樹脂としては、例えばウレタンアタリレート樹脂、エポキシアタリレート樹脂、メタアタリレート樹脂等の硬化後に透明性を発現するものを用いることができ、これにさらに着色顔料を添加して硬化後に半透明となるものを用いることもできる。
【0054】
これによって、印刷層4と凹凸薄単板層10の色柄とが、その春目部8においては強く、秋目部9においては弱く或いは殆ど目立たない程度に融合した新しい木目外観を透明性樹脂塗料層11を介しで表面に現出させることができる。尚、ここにおいて、この透明性樹脂塗料層11の表面にさらに上塗り用透明性樹脂塗料層(図示せず)を設けて表面の保護を強化しておくこともできる。
【0055】
次に、本発明の実施形態に係る化粧板の製造方法について図1により説明する。この製造方法は、上記のような化粧板Aを製造する方法であり、まず、図1(a)に示すように、印刷層形成工程において、基板1の表面に不透明性接着剤2′をロールコーターやフローコー夕ー等で塗布する。
【0056】
ここにおいて、不透明性接着剤2′としては、上記のように、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン接着剤や水性尿素メラミン樹脂接着剤等、硬化後に透明性を発現する接着剤に、酸化チタン等の白顔料を加えて硬化後に不透明となるように調整したものを用いる。
【0057】
次に、この塗布した不透明性接着剤2′が未硬化の状態で、図1(b)に示すように、その表面に印刷紙3を載置し不透明性接着剤2′を硬化させて接着一体化し、不透明性接着剤層2と印刷紙3とからなる印刷層4に形成する。
【0058】
次の薄単板接着工程では、図1(c)に示すように、印刷層4の表面に、硬化後に透明性を発現する透明性接着剤5′をロールコーターやフローコーターで塗布する。ここにおいて、透明性接着剤5′としては、上記のように、水性尿素メラミン樹脂接着剤、水性メラミン樹脂接着剤、水性ビニルウレタン樹脂接着剤等を用いることができる。
【0059】
そして、この塗布した透明性接着剤5′が未硬化の状態で、図1(d)に示すように、その表面に厚さ0.2mm〜0.5mmの天然木突板7を載置し、加圧或いは加熱加圧により透明性接着剤5′を硬化させて透明性接着剤層5に形成するとともに、天然木突板7を接着一体化して薄単板層6を形成する。
【0060】
次に、薄単板研削工程では、この薄単板層6の表面をブラッシングやショットブラストにより研削することで、図1(e)に示すように、薄単板層6を浮造り調の凹凸薄単板層10に形成する。尚、この浮造り調の凹凸薄単板層10は、木質化粧単板6′の軟らかい春目部8が硬い秋目部9よりも多く研削される結果、春目部8が凹部となり、秋目部9が凸部となるように形成される。好ましくは春目部8はその厚さが0.05mm以下となり、秋目部9はその厚さが0.05mm〜0.5mmの範囲になるよう研削するのがよい。尚、春目部8は、下の透明性接着剤層5が部分的に露出する程度にまで研削しておくこともできる。
【0061】
最後に、樹脂塗料塗布工程においては、図1(f)に示すように、この凹凸薄単板層10の表面に透明性樹脂塗料を、凹凸薄単板層10表面の凹凸が完全に埋め込まれて表面が平滑面となるように塗布した後、表面からの紫外線の照射により透明性樹脂塗料を硬化させて透明性樹脂塗料層11に形成する。このことで化粧板Aが得られる。
【0062】
ここにおいて、透明性樹脂塗料としては、ウレタンアタリレート樹脂、エポキシアタリレート樹脂、メタアタリレート樹脂等の紫外線硬化型の樹脂を好適に用いることができる。
【0063】
そして、本発明の特徴は、上記印刷層形成工程において基板1表面に形成される印刷層4(印刷紙3)の色柄と、薄単板研削工程で研削される薄単板層6に対する研削量とを特定の関係に関連付けたことにある。具体的には、研削条件を同じ一定のものとして、薄単板接着工程で印刷層4の表面に接着される天然木突板7の硬さを印刷層4の色柄と関連付ける。
【0064】
すなわち、印刷層4の色柄に応じて、硬さの異なる天然木突板7を薄単板層6として用いることで、薄単板層6の研削量を変え、印刷層4の色柄のストライプ柄におけるグラデーションの幅が太いほど硬い天然木突板7を用いるようにしている。図3は、印刷層4の色柄におけるグラデーションの幅と薄単板層6となる天然木突板7の硬さ(研削量)との関係を示しており、印刷層4の色柄として、ストライプ柄のグラデーションの幅が例えば20〜30mmと細いストライプ柄(図4(a))を印刷したときには、例えばサワグルミ等の硬さの軟らかい樹種の突板7を用いる。サワグルミ等の硬さの軟らかい天然木突板7では、表面の硬い秋目部9と軟らかい春目部8との硬さの差が顕著であり、ショットブラスト等で研削すると、線状に削られた凹凸模様となる。そのため、このサワグルミの凹凸模様に、図4(a)に示すように、細かく色変化している柄の印刷層4を組み合わせることで、図4(b)に示すように、木目が活かされた従来に見られない新鮮な意匠が得られるようにする。
【0065】
一方、上記グラデーションの幅が例えば40〜50mmであって太いストライプ柄(図4(c))のときには、例えばバーチ等の硬さの硬い樹種の突板7を用いる。このバーチ等のような全体的に硬い天然木突板7では、ショットブラスト等による研削により、全体として木目が強調された凹凸模様となり、印刷層4がうっすらと透けるようになる。そのため、この硬いバーチの突板7に、図4(c)に示すように、印刷層4のグラデーションの幅が太く変化している柄と組み合わせると、図4(d)に示す如く、本来のバーチ等にはない緩やかな色変化のある意匠が出現する。
【0066】
尚、図8及び図9は化粧板Aの他の例を示す。図8に示す化粧板Aは、基板1の表面に、隠蔽性のあるダイレクト印刷層4が設けられたものである。この化粧板Aの他の構成は上記図2に示す化粧板Aと同様であり、この化粧板Aによれば、より生産性良く印刷層4を形成することができる。
【0067】
また、図9に示す化粧板Aは、透明性樹脂塗料層11を凹凸薄単板層10の浮造り調凹凸が消失しないように設けて表面に木目の凹凸感を現出させたものであり、その他の構成は上記と同様である。これによれば、表面に実際に浮造り調の凹凸が現出しているので、触感的にも凹凸を感じ得るものにすることができる。
【0068】
これらの化粧板Aにおいても、上記図2に示す化粧板Aと同様に製造される(図1参照)。そして、薄単板接着工程で印刷層4の表面に接着される天然木突板7の硬さを印刷層4の色柄と関連付けるようにしている。よって、上記と同様の作用効果が得られる。
【0069】
(実施形態2)
図5及び図6は実施形態2を示し(尚、以下の各実施形態では図1〜図4と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する)、印刷層4の表面に接着される天然木突板7の硬さだけでなく、樹脂塗料塗布工程で塗布される透明性樹脂塗料(透明性樹脂塗料層11)の色についても、印刷層4の色柄と関連付けるようにしたものである。
【0070】
すなわち、この実施形態2では、印刷層4の色柄が明確であるほど軟らかい天然木突板7を用いかつ透明性樹脂塗料層11の色を濃くする。図5は、印刷層4の色柄における色柄と、薄単板層6の天然木突板7の硬さ(研削量)と、透明性樹脂塗料層11の色との関係を示しており、図6(a)に示すように、印刷層4の色柄が奇抜ないしワイルドではっきりしており、これに薄単板層6としてサワグルミ等の硬さの軟らかい突板7が用いられると、透明性樹脂塗料層11は濃色とする。こうして得られた化粧板Aは、薄単板層6(突板7)の研削量が大きくても、濃色の透明性樹脂塗料層11により、図6(b)に示すように、印刷層4の奇抜ないしワイルドな色変化や柄が抑えられて深みのある重厚な意匠となる。
【0071】
一方、印刷層4の色柄が淡いものであると、これに薄単板層6として硬さの硬い突板7を用いるとともに、透明性樹脂塗料層11を淡色とする。こうして得られた化粧板Aは、薄単板層6の研削量が小さくても、淡色の透明性樹脂塗料層11により、自然な色変化や柄がクリアに表現された爽やかな意匠となる。
【0072】
(実施形態3)
図7は実施形態3を示し、床板として使用するのに好適な化粧板Aを製造するものである。この実施形態では、印刷層形成工程において形成される印刷層4は、化粧板A(基板1)の長手方向に沿って濃淡が変化している色柄を有するものとする。こうすることで、化粧板Aを床板として施工したとき、均一な変化の柄が目立つようになり、床板として好ましい化粧板Aが得られる。
【0073】
また、上記印刷層4は、化粧板Aの目地となる目地部分の色が他の部分よりも濃い色柄を有するものとしてもよい。このことによっても、化粧板Aを床板として施工したとき、その目地が目立つようになり、床板として好ましい。
【0074】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態は例示であり、印刷層形成工程において基板1表面に形成される印刷層4の色柄と、薄単板研削工程で研削される薄単板層6(天然木突板7)に対する研削量とを関連付け、研削条件を同じ一定のものとしたときに、薄単板接着工程で印刷層4の表面に接着される天然木突板7の硬さを印刷層4の色柄と関連付ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、天然木突板を用いつつ所望のデザインの化粧板が容易に得られるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0076】
A 化粧板
1 基板
4 印刷層
5 透明性接着剤層
5′ 透明性接着剤
6 薄単板層
7 天然木突板
8 春目部
9 秋目部
10 凹凸薄単板層
11 透明性樹脂塗料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に、該基板の表面色を隠蔽しかつ木目の色柄と融合調和する色柄を有する印刷層を形成し、
上記印刷層の表面に透明性接着剤を介して天然木突板を接着して薄単板層を形成した後、
上記薄単板層の表面をショットブラスト又はブラッシングで研削して、薄単板層表面の春目部を凹部とし秋目部を凸部とする凹凸薄単板層を形成し、
上記凹凸薄単板層の表面に透明性樹脂塗料を塗布して透明性樹脂塗料層を形成する化粧板の製造方法であって、
上記印刷層の色柄に応じて上記薄単板層の研削量を変えることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
硬さの異なる天然木突板を薄単板層として用いることで、薄単板層の研削量を変えることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
印刷層の色柄におけるグラデーションの幅が太いほど硬い天然木突板を用いることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
印刷層の色柄が明確であるほど軟らかい天然木突板を用いかつ透明性樹脂塗料層の色を濃くすることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つにおいて、
印刷層は、化粧板の長手方向に沿って濃淡が変化している色柄を有することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つにおいて、
印刷層は、化粧板の目地となる部分の色が他の部分よりも濃い色柄を有することを特徴とする化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207090(P2011−207090A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77745(P2010−77745)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】