説明

化粧板及び化粧板の製造方法

【課題】表面が硬質な木質基材1の表面に、接着層2を介して木質薄単板5が積層一体化され、床暖房用の床材としても使用しても、長期的なキャスターの使用に対する耐傷性に優れた化粧板が得られるようにする。
【解決手段】接着層2の厚みを30μm以上でかつ75μm以下とする。また、接着層2は、水の沸点でも液体状態に保たれる高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる接着剤が固化されたものとし、床材の温熱状態でも、その高分子化合物により接着層2の硬度を低いままに保持するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材として使用される化粧板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャスター付きの家具を移動させるときや家具を置く際に床面に凹みが生じないようにするために、合板等の木質基材の表面に木質薄単板が貼着された床材としての化粧板は知られている。このような床材を製造する方法として、従来、例えば特許文献1に示すように、木質基材の表面に樹脂を含浸させたMDF(中密度繊維板)を貼着し、このMDFの表面に木質薄単板を貼着して床材を得る方法が提案されている。
【0003】
しかし、上記特許文献1の方法により製造された床材では、硬質プラスチック製や鉄製のキャスターを長期的に連続して摺動(転動)させて使用すると、硬いキャスターから繰り返して受ける荷重により硬質な木質薄単板がすり潰されて剪断破壊を起こしてしまい、木質薄単板が剥がれてしまうという問題が生じる。
【0004】
そこで、長期的なキャスターの使用等に対する耐傷性に考慮した床材として、特許文献2に示すように、柔軟性のあるゴム系接着剤を用いることで、応力を分散させて木質薄単板の剥離を抑制しようとするものがある。
【特許文献1】特開平04−214301号公報
【特許文献2】特開2003−211420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献2のようにゴム系接着剤により接着層を形成し、その床材を床暖房用のものとして使用した場合、その床材の温度が上昇することによって接着層中の水分が気化により減少してしまい、その接着層のゴム硬度が大きくなって応力の分散効果が低下し、やはり木質薄単板の剥離が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、床暖房用の床材として使用しても、長期的なキャスターの使用に対する耐傷性に優れた化粧板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、木質薄単板を木質基材に接着する接着剤に水の沸点で液体状態に保たれる高分子化合物を添加し、床材の温熱状態で水分が減少しても、その高分子化合物により接着層のゴム硬度を低いままに保持するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明に係る化粧板は、少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、接着層を介して木質薄単板が積層一体化された化粧板であって、上記接着層の厚みは30μm以上でかつ75μm以下であり、上記接着層は、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる接着剤が固化することで構成されていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明では、固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる接着剤が固化した、30〜75μmの厚みを有する接着層が木質基材と木質薄単板との間に介装されているので、その化粧板を床材に施工した場合、長期的にキャスター(キャスター付き家具等におけるキャスター)を使用しても、その応力が分散されて木質薄単板の剥離が抑制される。
【0010】
また、上記接着層となる接着剤は、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されたものであるので、化粧板を床暖房用の床材として使用し、その床材の温度上昇により接着層中の水分が気化して減少したとしても、そのような水の沸点で上記高分子化合物は液体のままで接着層中に残ることとなり、この高分子化合物が水分の代わりとなって、接着層のゴム硬度が大きくなることは抑えられ、その硬度がタイプAデュロメーターで45°以下に維持される。従って、床暖房用の床材として施工した際に、キャスターを使用しても木質薄単板が剥がれるのを防ぐことができる。
【0011】
第2の発明に係る化粧板は、第1の発明において、接着層と木質薄単板との間に紙層が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この第2の発明では、接着層と木質薄単板との間に紙層が設けられているので、木質薄単板に接着層の接着剤が染み上がって、その表面から余分な接着剤が染み出るのを紙層によって抑制することができる。従って、長期的なキャスターの利用により木質薄単板が剥離するのに有用な厚み30〜75μmの接着層を確保することができる。
【0013】
しかも、上記木質薄単板に接着剤が染み上がって化粧板の意匠性が悪化するのを防止することができる。
【0014】
第3の発明に係る化粧板の製造方法は、少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、その基材側接着剤上に紙層を積層する紙層積層工程と、上記木質基材、基材側接着剤及び紙層を熱圧プレスして積層一体化し、該基材側接着剤を固化させて厚みが30μm以上でかつ75μm以下である接着層を形成する第1熱圧プレス工程と、上記紙層上に単板側接着剤を塗布する単板側接着剤塗布工程と、上記単板側接着剤上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、この積層体を熱圧プレスして積層一体化して化粧板を得る第2熱圧プレス工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
この第3の発明では、少なくとも表面が硬質な木質基材に基材側接着剤が塗布された後、その接着剤上に紙層が積層され、これらが熱圧プレスされて積層一体化されることで、木質基材と紙層との間に基材側接着剤が固化した接着層が形成される。さらに、紙層上に単板側接着剤が塗布されて木質薄単板が積層され、再び熱圧プレスによりこれらが積層一体化されて化粧板が得られる。
【0016】
このとき、上記接着層は厚みが30μm以上でかつ75μm以下であり、その基材側接着剤は、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となるものが使用される。このため、こうして得られた化粧板は、30〜75μmの厚みを有し固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下である接着層が介装された化粧板となり、この化粧板を床暖房用床材として使用した場合に、上記第1の発明と同様に、長期的なキャスターの使用に対しても木質薄単板の剥離が抑制される。
【0017】
また、接着層と木質薄単板との間に紙層が設けられるため、基材側接着剤の木質薄単板への染み上がりが抑制され、十分な厚みの接着層を有し意匠性に優れた化粧板を容易に得ることができる。
【0018】
第4の発明に係る化粧板の製造方法は、少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、この基材側接着剤上に紙層を積層する紙層積層工程と、上記紙層上に単板側接着剤を塗布する単板側接着剤塗布工程と、上記単板側接着剤上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、この積層体を熱圧プレスして積層一体化することで、上記基材側接着剤を固化させて厚みが30μm以上でかつ75μm以下である接着層を形成するとともに、化粧板を得る熱圧プレス工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
この第4の発明では、木質基材上に基材側接着剤、紙層、単板側接着剤及び木質薄単板が順に積層されて積層体が形成され、この積層体が熱圧プレスされて一体化され、化粧板が得られる。
【0020】
このとき、上記基材側接着剤は、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となるものが使用され、この基材側接着剤が固化することで、厚みが30μm以上でかつ75μm以下の接着層が形成される。このため、こうして得られた化粧板は、30〜75μmの厚みを有し固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下である接着層が介装された化粧板となり、化粧板を床暖房用床材として使用した場合に、上記と同様に、長期的なキャスターの使用に対しても、木質薄単板の剥離が抑制される。
【0021】
そして、接着層と木質薄単板との間に紙層が設けられているため、基材側接着剤の木質薄単板への染み上がりが抑制され、十分な厚みの接着層を有し意匠性に優れた化粧板を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明のように、本発明によれば、床暖房用の床材として使用しても、長期間に亘り安定して木質薄単板の剥離を効果的に抑制して、長期的なキャスターの使用に対する耐傷性に優れた化粧板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
[化粧板]
図1は本発明の実施形態に係る化粧板Aを示し、この化粧板Aは床材として使用されるもので、特に床暖房用の床材として好適に用いられる。化粧板Aは少なくとも表面が硬質な木質基材1と、この木質基材1の上記表面上に配置された接着層2と、その接着層2上に配置された紙層3と、この紙層3上に単板側接着剤層4を介して配置された化粧薄板としての木質薄単板5とが順に積層されて一体化されている。
【0025】
(木質基材)
上記木質基材1は、例えばインシュレーションボード、MDF、ハードボード等の木質繊維板や、合板、パーティクルボード、木材等の木質材料からなり、その少なくとも表面が、長期的かつ連続的なキャスター(キャスター付き家具等におけるキャスター)の使用に耐え得る程度の強度を備える硬質なものとされている。
【0026】
木質基材1の表面を強化する強化方法としては、基材1の表層にメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂等を含浸させてもよいし、メラミン樹脂含浸紙、フェノール樹脂含浸紙等の各種樹脂含浸紙による強化層を表層に設けてもよい。また、樹脂含浸紙に代えて、木粉や木質繊維、木質切片等を主体とし、これらを各種樹脂と共に混練成形した硬質の人工樹脂木材や、MDF、ハードボード等の木質繊維板等の硬質な木質基材1で表面を強化してもよい。
【0027】
(接着層)
上記接着層2の厚みは30〜75μm(30μm以上でかつ75μm以下)とされている。また、接着層2は、水の沸点で液体である(液体状態に保たれる)高分子化合物が混入されかつ固化後の硬度がタイプAデュロメーターで45°以下である基材側接着剤の固化物で構成されている。
【0028】
上記基材側接着剤としては、例えばアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ラテックス系樹脂、ゴム系樹脂、ビニルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの変性樹脂、これらの樹脂と尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂等との混合物等が好適に用いられる。
【0029】
さらに、基材側接着剤の塗布量を増やすために、各種の増粘剤や増量剤を添加して高粘度にすることが好ましい。増粘剤としては、例えば小麦粉やポバール等が使用される。また増量剤としては、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン等が使用される。
【0030】
また、基材側接着剤には、木質基材1の隠蔽性を向上させるために、各種顔料が添加されて着色されていてもよい。
【0031】
基材側接着剤に混入される上記高分子化合物としては、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ヤシ油脂肪酸ソルビタン等が挙げられ、化粧板Aを床暖房用の床材として使用して昇温した際に、接着層2中の水分が気化により減少しても当該接着層2中に液体状態で残り、気化した水分の代わりとなって、接着層2のゴム硬度の増大を抑制可能となる、水の沸点(換言すれば、接着層2中の水分が気化により減少する温度)で液体のものが用いられる。
【0032】
(紙層)
上記紙層3は、厚さが30〜60μm程度、目付量が25〜40g/m程度の一般的なチタン紙やクラフト紙、紙間強化紙等が用いられる。上記基材側接着剤や、後述する単板側接着剤の含浸を妨げず、プレスによって容易に基材側接着剤が紙層3の表面に染み出してしまわない程度の厚みと目付量とを有する紙であれば、どのようなものでも用いることができる。
【0033】
この紙層3により基材側接着剤の木質薄単板5への染み上がりが抑制される。また、紙層3は、その裏面側から上記接着層2となる基材側接着剤が、また表面側から後述の単板側接着剤がそれぞれ含浸することで、紙層3の全体が接着剤の含浸によって強化されている。
【0034】
(単板側接着剤層)
上記紙層3の上には、紙層3と木質薄単板5とを強固に接着させるために硬質の単板側接着剤が塗布され、紙層3と木質薄単板5とが単板側接着剤層4によって接合一体化されていることが好ましい。
【0035】
上記単板側接着剤は、木質基材1と紙層3と木質薄単板5とが積層された積層物を熱圧プレスして積層一体化する際に、所望の強度が実現できるものが好ましい。
【0036】
具体的には、単板側接着剤としては、例えばアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ラテックス系樹脂、ゴム系樹脂、ビニルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの変性樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂等及びこれらの樹脂の混合物等が用いられる。化粧板Aの使用時における乾湿による木質薄単板5の割れを効果的に抑制するためには、単板側接着剤として、尿素メラミン系樹脂やイソシアネート系樹脂等の固化物が硬質である接着剤を主剤として用いることが好ましい。
【0037】
(木質薄単板)
上記木質薄単板5としては、天然木質材や、これらの積層物をスライスした薄切片を使用することができる。天然木質材は、針葉樹、広葉樹、いわゆる早生樹等、どのようなものでも使用することができる。また、天然木質材の積層物をスライスしたものとは、いわゆる人工突板といわれるものである。
【0038】
また、木質薄単板5には、乾燥単板や生単板(いわゆる濡れ単板)を使用することができる。木質薄単板5の厚みは、それが厚過ぎると、硬くなるだけでなく、単板5自体の耐干割れ性が悪くなってしまうので、0.15〜1.0mm(0.15mm以上でかつ1.0mm以下)程度が好ましい。
【0039】
[化粧板の製造方法]
次に、上記化粧板Aの製造方法について説明する。まず、上記少なくとも表面が硬質な木質基材1の表面上に上記基材側接着剤を塗布する(基材側接着剤塗布工程)。この基材側接着剤を塗布する手段としては、フローコーター又はロールコーターが好適に用いられる。この基材側接着剤によって、後工程を経て形成される接着層2が30〜75μmの厚みとなるように塗布する。
【0040】
次に、上記塗布された基材側接着剤上に紙層3を積層する(紙層積層工程)。
【0041】
この後、上記木質基材1、基材側接着剤及び紙層3を予め熱圧プレスして積層一体化してもよい(請求項3の第1熱圧プレス工程)。熱圧プレスの方法は、一般的なロールプレスや平板プレス等、様々な方法があるが、好ましくは平板プレスが使用される。熱圧プレスは、100〜130℃でかつ0.2〜1.0MPaの条件下で、30〜90秒程度行われる。これにより、基材側接着剤が完全に固化させ、厚みが30μm以上でかつ75μm以下であるとともに、硬度がタイプAデュロメーターで30°以下となる接着層2を形成する。この第1熱圧プレス工程の後は、冷却して養生させることが望ましい。
【0042】
次いで、上記紙層3上に上記単板側接着剤を塗布する(単板側接着剤塗布工程)。この単板側接着剤を塗布する塗布手段は特に限定されない。目的とする単板側接着剤の塗布量に応じた塗布方法を選択すればよく、例えばロールコーターやフローコーター、スプレー等が好適である。
【0043】
さらに、上記単板側接着剤上に上記木質薄単板5を載置積層して積層体を得る(積層工程)。その載置した木質薄単板5は仮固定してもよい。仮固定の方法としては、高周波等で仮固定部分の水分を飛ばし、単板側接着剤を固化させる方法が好適に用いられる。
【0044】
そして、上記積層体を熱圧プレスして積層一体化して化粧板Aを得る(熱圧プレス工程)。上記第1熱圧プレス工程により木質基材1、基材側接着剤及び紙層3を熱圧プレスして積層一体化した場合も、単板側接着剤を介して木質薄単板5を積層した後、もう一度熱圧プレスする(請求項3の第2熱圧プレス工程)。この熱圧プレスの方法は、上述した方法と同じである。これにより、基材側接着剤及び単板側接着剤が完全に固化される。
【0045】
こうして得られた化粧板Aは、必要に応じて浮造り加工等の化粧加工を施してもよい(化粧加工工程)。この浮造り加工を施す方法としては、例えば硬質で微細なブラスト用研磨材を木質薄単板5の表面に衝突させて表面に微細な傷をつける加工方法であるショットブラスト法を用いることができる。これにより、木質薄単板5の軟らかい部分が研削されて硬い部分が残り、表面に凹凸を有する化粧板Aを得ることができる。
【0046】
また、こうして浮造り加工が施された化粧板Aの表面に透明性樹脂塗料を塗布し、これを硬化させて透明性樹脂塗膜を形成してもよい。
【0047】
[実施形態の効果]
したがって、この実施形態においては、化粧板Aの木質基材1と木質薄単板5との間に接着層2が介装され、その接着層2が30〜75μmの厚みを有するとともに、固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下であるので、化粧板Aを床材として施工し、キャスター付き家具等におけるキャスターを長期的に使用しても、その応力が分散されて木質薄単板5の剥離を抑制することができる。
【0048】
また、固化により接着層2となる基材側接着剤には、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されているので、化粧板Aを床暖房用の床材として使用し、その床材の昇温により接着層2中の水分が気化して減少したとしても、上記高分子化合物は液体状態で接着層2中に残っており、この高分子化合物が水分の代わりとなることで、接着層2中のゴム硬度が大きくなることは抑制され、その接着層2中のゴム硬度は、上記タイプAデュロメーターで45°以下に維持される。このことで、化粧板Aを床暖房用の床材として使用した際に、キャスターを使用しても、木質薄単板5(化粧薄板)が剥がれるのを安定して防ぐことができる。
【0049】
さらに、化粧板Aの接着層2と木質薄単板5との間に紙層3が設けられているので、木質薄単板5に接着剤の接着剤が染み上がって、その表面から余分な接着剤が染み出るのを紙層3によって抑制することができる。よって、長期的なキャスターの利用により木質薄単板5が剥離するのに有用な厚み30〜75μmの接着層2を確保することができる。また、木質薄単板5に接着層2の接着剤が染み上がることで化粧板Aの意匠性が悪化するのも防止できる。
【0050】
[その他の実施形態]
尚、上記化粧板Aに、30〜75μmの接着層2を形成する方法としては、上記実施形態の製造方法のように、接着層2と木質薄単板5との間に紙層3を設ける方法の他、以下の方法を採用してもよい。すなわち、木質基材1上に基材側接着剤を塗布し、その基材側接着剤が半固化状態、つまり液体状の接着剤が存在しない程度に固化が進んだ状態になった後、基材側接着剤上に単板側接着剤を塗布し、その単板側接着剤上に木質薄単板5を載せ、熱圧プレスする方法である。但し、生産性を考慮したとき、接着層2と木質薄単板5との間に紙層3を設ける製造方法が好ましい。
【実施例】
【0051】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0052】
(実施例1)
厚さ11.5mmのラワン合板の表面に樹脂液を塗布した。この樹脂液は樹脂含有率70重量%の水性変性メラミン100重量部に、硬化剤として50重量%濃度のパラトルエンスルフォン酸3重量部を加えたものである。この樹脂液を固形分換算で約330g/mとなるように塗布した。次に、この合板の樹脂液塗布側の表面に密度が0.5で重さが115g/mの樹脂含浸用原紙を載置し、ホットプレスにより130℃で0.2MPaの低圧条件で40秒間加熱した。さらに、130℃で1.0MPaの条件で80秒間加熱加圧することにより、樹脂含浸用原紙を合板表面に接着するとともに、原紙に合成樹脂液を含浸及び硬化させることで、樹脂含浸硬化処理紙からなる強化層が表面に形成された木質基材を得た。
【0053】
この木質基材の表面に、基材側接着剤として、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂100重量部に対しポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル10重量部を混合したものを塗布した。その上に、紙層として厚さ30μmで目付量が25g/mの紙間強化紙を載置した。さらに、この紙層上に、単板側接着剤として、尿素メラミン樹脂接着剤をロールコーターで塗布し、さらに、厚さ0.25mmのヒバの濡れ単板を載置した。これを120℃で0.8MPaの熱圧条件で50秒間熱圧プレスした。そして、ショットブラスト法により浮造り加工を施した後、透明樹脂塗料を塗布して透明樹脂塗膜を形成し、化粧板を得た。
【0054】
このようにして得られた化粧板の断面観察を行ったところ、木質基材表面の強化層と紙層との間に30〜40μmの厚みの接着層が形成されていた。その接着層のゴム硬度を測定すると、タイプAデュロメーターで30°であった。
【0055】
次に、上記化粧板に対して耐キャスター試験を行った。耐キャスター試験とは、直径50mmの鉄製の単輪キャスター上に25kgの荷重を載せ、300mm長さを500回往復させる試験である。キャスターの移動速度は、約2秒/往復とし、試験後の化粧板表面の凹み量の測定と、状態の目視確認とを行う。
【0056】
上記耐キャスター試験の試験結果は、化粧板表面の凹み量が最大で0.12mmであり、木質薄単板の剥離も確認されなかった。
【0057】
さらに、床暖房用の床材として使用した場合を想定し、化粧板を80℃のドライヤーで96時間養生した後、上記と同様の接着層のゴム硬度の測定と耐キャスター試験とを行った。
【0058】
この80℃のドライヤーで96時間の養生後の接着層のゴム硬度はタイプAデュロメーターで40°であり、耐キャスター試験の試験結果は、化粧板表面の凹み量が最大で0.12mmで、木質薄単板の剥離も確認されなかった。
【0059】
(実施例2)
厚さ9mmの針葉樹合板の表面に厚さ2.7mmのMDFをビニルウレタン系接着剤でコールドプレスによって貼着して木質基材を得た。
【0060】
この木質基材の表面に、基材側接着剤として、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂100重量部に対しヤシ油脂肪酸ソルビタン10重量部を混合したものを塗布した。その上に、厚さ30μmで目付量が25g/mの紙層としての紙間強化紙を載置した。さらに、この紙層上に、単板側接着剤として、尿素メラミン樹脂接着剤をロールコーターで塗布し、さらに、厚さ0.25mmのサワグルミの濡れ単板を載置した。これを120℃で0.8MPaの熱圧条件で50秒間熱圧プレスした。そして、ショットブラスト法により浮造り加工を施した後、透明樹脂塗料を塗布して透明樹脂塗膜を形成し、化粧板を得た。
【0061】
こうして得られた化粧板の断面観察を行ったところ、木質基材表面の強化層と紙層との間に30〜40μmの厚みの接着層が形成されていた。接着層のゴム硬度を測定すると、タイプAデュロメーターで35°であった。
【0062】
また、得られた化粧板に対して、上記と同様の耐キャスター試験を行った。その試験結果は、化粧板表面の凹み量が最大で0.12mmであり、木質薄単板の剥離も確認されなかった。
【0063】
さらに、この化粧板を80℃のドライヤーで96時間養生した後の接着層のゴム硬度はタイプAデュロメーターで45°であり、耐キャスター試験の試験結果は、化粧板表面の凹み量が最大で0.12mmで、木質薄単板の剥離も確認されなかった。
【0064】
(比較例)
比較例の化粧板は、上記実施例1において、基材側接着剤として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを混合したエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂のみに代えたものであり、その他は実施例1と同じである。
【0065】
得られた比較例の化粧板の断面観察を行ったところ、木質基材表面の強化層と紙層との間に30〜40μmの厚みの接着層が形成されていた。接着層のゴム硬度を測定すると、タイプAデュロメーターで30°であった。
【0066】
また、得られた化粧板に対する耐キャスター試験の試験結果は、化粧板表面の凹み量が最大で0.12mmであり、木質薄単板の剥離も確認されなかった。
【0067】
しかしながら、この化粧板を80℃のドライヤーで96時間養生した後の接着層のゴム硬度はタイプAデュロメーターで70°であった。また、耐キャスター試験の試験結果は、化粧板表面の凹み量が最大で0.12mmであったが、木質薄単板が剥がれ、材料破壊が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、特に床暖房用床材として使用される化粧板及びその製造方法について極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る化粧板を概略的に示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0070】
A 化粧板
1 木質基材
2 接着層
3 紙層
5 木質薄単板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、接着層を介して木質薄単板が積層一体化された化粧板であって、
上記接着層の厚みは30μm以上でかつ75μm以下であり、
上記接着層は、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる接着剤が固化することで構成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
請求項1において、
接着層と木質薄単板との間に紙層が設けられていることを特徴とする化粧板。
【請求項3】
少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、
上記基材側接着剤上に紙層を積層する紙層積層工程と、
上記木質基材と基材側接着剤と紙層とを熱圧プレスして積層一体化し、該基材側接着剤を固化させて厚みが30μm以上でかつ75μm以下である接着層を形成する第1熱圧プレス工程と、
上記紙層上に単板側接着剤を塗布する単板側接着剤塗布工程と、
上記単板側接着剤上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、
上記積層体を熱圧プレスして積層一体化して化粧板を得る第2熱圧プレス工程と
を含むことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項4】
少なくとも表面が硬質な木質基材の表面に、水の沸点で液体である高分子化合物が混入されかつ固化後のゴム硬度がタイプAデュロメーターで45°以下となる基材側接着剤を塗布する基材側接着剤塗布工程と、
上記基材側接着剤上に紙層を積層する紙層積層工程と、
上記紙層上に単板側接着剤を塗布する単板側接着剤塗布工程と、
上記単板側接着剤上に木質薄単板を積層して積層体を得る積層工程と、
上記積層体を熱圧プレスして積層一体化することで、上記基材側接着剤を固化させて厚みが30μm以上でかつ75μm以下である接着層を形成するとともに、化粧板を得る熱圧プレス工程とを含むことを特徴とする化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180632(P2010−180632A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25840(P2009−25840)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】