説明

化粧板用紙

【課題】従来の塩ビフィルムに代替可能な加工適性、特に加熱処理を含む加工にも適した化粧板用紙を提供する。
【解決手段】JIS P 8121−1995に準じたカナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸したシートであって、JIS P 8113:1998に準じた該シートの加熱時(温度100℃、予備加熱時間1分)の引張り破断伸びを横方向で5%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材や家具の内装材としての用途に適したVカット加工適性やラッピング加工適性を有する化粧板に好適に用いられる化粧板用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧板とは合板やパーティクルボード、繊維板等の各種基材の表面に木材を薄くスライスしたシート、または塩化ビニル樹脂フィルム等の合成樹脂シートや合成樹脂を塗工含浸した化粧板用紙からなる化粧シートを貼合することによって、基材の目止めや表面保護と同時に美粧性を付与された板を指すものである。なお、上記化粧シートとして用いられる化粧板用紙には木材を模すために木目模様の印刷が施されている場合が多い。
化粧板には、貼合する化粧シートの素材や製造方法によって、天然木化粧板(突板化粧板)、高圧メラミン化粧板、低圧メラミン化粧板、ジアリルフタレート(DAP)化粧板、ポリエステル化粧板、塩化ビニル化粧板、薄葉紙化粧板等の様々な種類が存在し、建材や家具の内装材として用いられている。
【0003】
天然木を使用する突板化粧板は大量生産には適合しないため、合成樹脂シートや化粧板用紙を化粧シートとして用いた化粧板が世界的にも主流として用いられている。
従来、化粧シートとして、塩化ビニル樹脂(以下、塩ビと略称する)フィルムに印刷、エンボス処理等の加工を施して板、合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)などの木質系基材に接着する方法が採られてきたが、塩ビフィルムは加工適性、印刷適性に優れたものであるが、燃焼時に塩素系のガスを発生するので、環境問題の観点から塩ビフィルムを使わないという需要がでてきており、ポリプロピレン等のオレフィン系フィルムや化粧板用紙(薄葉紙)が使用されるようになってきている。
【0004】
なお、化粧板には高圧メラミン化粧板のように、樹脂を含浸させた原紙を何枚も積層した後、加熱圧縮して板状にする工程によって得られるものがあるが、より安価な化粧板として後工程による樹脂含浸やプレス加工を必要としない、予め一定の厚さを有する合板、パーティクルボード、MDF等の繊維板基材の表面に化粧板用紙を貼合したものの需要が伸びている。
【0005】
該化粧板用紙は多くの場合、グラビア印刷等によって印刷層を設けた後、基材に貼り合わせて用いる。その上に必要に応じて表面保護のためにアミノアルキッド樹脂やポリウレタン樹脂等による保護層が設けられることもある。しかし、工程数やコストの問題から化粧板用紙上に上記保護層を別途設けることなく、化粧板用紙を貼合した時点で化粧板として完成するタイプの化粧板の需要が増加している。
【0006】
特に塩ビフィルム代替材料として、紙を基材とした化粧板用紙が提案されている。紙は塩ビフィルムに比べて破断伸び率が小さいため、紙を基材とした場合は建材への貼り付け等の加工工程において化粧板用紙の破断が生じ易いという欠点がある。とくに、一旦平板上に接着した後に、その平板を折り曲げるVカット加工や、凹凸を有する被着基材の表面に接着するラッピング加工など、基材の伸びを必要とする曲げ加工には不向きであった。これらの問題を解決する方法として、木材パルプ等からなる紙基材に、溶液状の合成樹脂を含浸させ、伸びを付与する方法(特許文献1、2)や、樹脂含浸前の紙において、長さ加重平均繊維長2mm以上のものを使用することで伸びを付与する方法(特許文献3)も開示されている。
【0007】
一方、Vカット加工やラッピング加工などの曲げ加工を有する加工工程では、基材表面に設けた印刷層の割れの軽減や、接着時の接着強度向上を目的として加熱処理を行う場合がある。しかしながら、紙は短時間の加熱でも紙の水分が低下し、破断伸び率がさらに小さくなる傾向がある。そのため、従来の方法(特許文献1〜3)で製造された化粧板用紙では、加熱時の伸びが不十分であり、化粧板用紙の破断が生じ易く、加熱処理を含む加工工程では使用しにくいという欠点がある。
【0008】
なお、紙に水分を付与すると紙の柔軟性が増し、伸びが向上することは、すでによく知られている。水分を付与する薬剤として、塩化リチウム等のアルカリ金属塩を主成分とする吸湿剤があるが、これら吸湿剤は、紙に水分を付与する一方、加熱条件下おいては瞬時に水分を放出する性質があるため、加熱時の伸びは不十分となり、破断が生じ易すい。したがって、該吸湿剤は加熱処理を含む加工工程では使用することができない。
【0009】
さらに、スルファミン酸グアニジンなどの難燃剤と吸湿剤の主成分であるアルカリ金属塩とを含浸させた紙の製造方法が開示されている(特許文献4)。しかしながら、前述したように、塩化リチウム等のアルカリ金属塩は、加熱条件下おいて瞬時に水分を放出する性質があり、スルファミン酸塩やグアニジン塩存在下においても同様である。したがって、これらの紙は、加熱時の伸びが不十分であり、破断が生じ易すいため、加熱処理を含む加工工程に使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭56−44652号公報
【特許文献2】特開平10−6446号公報
【特許文献3】特開平9−67787号公報
【特許文献4】特開2003−148892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、従来の塩ビフィルムに代替可能な加工適性、特に加熱処理を含む加工にも適した化粧板用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、JIS P 8121−1995に準じたカナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸したシートは、該シートの加熱時(測定温度100℃、予備加熱時間1分)の引張り破断伸びが横方向で5%以上となり、加熱処理工程を含む加工適性に優れる化粧板用紙であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の各発明を包含する。
【0013】
(1)JIS P 8121−1995に準じたカナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸したシートであって、JIS P 8113:1998に準じた該シートの加熱時(温度100℃、予備加熱時間1分)の引張り破断伸びが横方向で5%以上である化粧板用紙。
【0014】
(2)前記スルファミン酸塩またはグアニジン塩がスルファミン酸グアニジン、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸カリウム、塩酸グアニジンより選択される少なくとも1種である(1)に記載の化粧板用紙。
【0015】
(3)前記スルファミン酸塩またはグアニジン塩が紙基材(固形分質量)に対し、10質量%以上含有する(1)または(2)に記載の化粧板用紙。
【0016】
(4)化粧板用紙のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2に準じた王研式平滑度が300秒以上である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化粧板用紙。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化粧板用紙は、従来の塩ビフィルムに代替可能な加工適性、特に加熱処理を含む加工にも適した化粧板用紙である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
化粧板用紙は合板、パーティクルボード、繊維板等と貼合されて化粧板として構成されるが、該貼合時に100℃程度の加熱処理が施されることが多い。そこで、本発明においてはJIS P 8113:1998に準じて温度100℃、予備加熱時間1分での横方向の引張破断伸びを5%以上に制御する必要がある。因みに、該横方向の引張破断伸びが5%未満であるとVカット加工、ラッピング加工時に化粧板用紙が破断してしまうという問題が発生する。
【0019】
本発明においては、上記加熱時の横方向の引張破断伸びを5%以上に制御するため、JIS P 8121−1995に準じたカナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸させることを特徴とする。この構成にすることにより、加熱時でも横方向の伸びが大きく、加熱処理を含む加工にも適した優れた化粧板用紙の製造が可能となる。
【0020】
本発明に用いる紙基材の原料は、JIS P 8121−1995に準じたカナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプであることが必要である。フリーネスが50〜300mlの範囲では、叩解処理により繊維に十分な柔軟性が付与され、横方向の引張破断伸びが大きな紙を得ることができる。フリーネスが50mlに満たない場合は、叩解処理が過剰なため繊維の損傷が著しく、脆くなり、十分な横方向の引張破断伸びを得ることができない。また、不透明度が低く、被着基材の柄が露出してしまうため、化粧板用紙として使用するには無機填料を配合する等の対策を要する。一方、フリーネスが300mlを超える場合、十分な繊維の柔軟性が付与されず、横方向の引張破断伸びが小さくなる。なお、パルプ繊維としては、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプなどの木材パルプを単独使用あるいは併用することができる。また、原紙の伸びを著しく低下させなければ、機械パルプや古紙パルプ、リンターパルプなどを併用してもよい。抄造方法は、特に限定されるものではなく、通常の長網多筒型抄紙機、長網ヤンキー型抄紙機、あるいは円網抄紙機など、公知の抄紙機が使用できる。
【0021】
本発明では、カナディアンスタンダードフリーネスが50〜300mlである木材パルプからなる紙基材にスルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸させる。一般的に、紙は短時間の加熱でも紙の水分が低下し、横方向の引張破断伸びが小さくなる。単に叩解処理によりフリーネスが50〜300mlとなるように処理した木材パルプからなる紙基材は、常温では十分な伸びを示しても、加熱(100℃)時の伸びは不十分となり、破断が生じ易すいため、加熱処理を含む加工工程に使用することができない。これに対して、スルファミン酸塩またはグアニジン塩を紙基材に含浸させたシートの場合、詳細な機構は不明であるが、加熱条件下における水分の減少、つまり、横方向の引張破断伸びの減少を防ぐことができる。そのため、叩解処理によりフリーネスが50〜300mlとなるように処理した木材パルプからなる紙基材に、スルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸させることで、加熱時でも横方向の引張破断伸びが大きく、加熱処理を含む加工にも適した化粧板用紙の製造が可能となる。
【0022】
本発明において使用されるスルファミン酸塩またはグアニジン塩としては、加熱時でも高い横方向の引張破断伸びを付与できる限り特に制限されないが、例えば、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸カリウム、塩酸グアニジンより選ばれる少なくとも1種のスルファミン酸塩またはグアニジン塩は横方向の引張破断伸びを向上させる効果が高く、好ましい。なかでも、スルファミン酸グアニジンは、難燃剤としての効果も有することから、建材や家具の内装材として使用される化粧板用紙の製造において特に好ましい。
【0023】
本発明に用いるスルファミン酸塩またはグアニジン塩は、紙基材(固形分質量)に対し10質量%以上含有させるのが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。因みに、含有量が10質量%未満の場合、加熱条件下における水分減少の抑制効果が小さく、加熱時の十分な横方向の引張破断伸びを得ることができない。30質量%を超えて多く配合すると、繊維分が少なくなり、必要とするシートの強度を得るために例えばバインダーとして紙力剤を塗布するまたは含浸させる等の対策を要するおそれがある。含浸方法は、通常のオンマシンサイズプレス含浸、あるいはオフマシン含浸のいずれで行ってもよいが、オンマシンサイズプレス含浸が特に好ましい。スルファミン酸塩またはグアニジン塩は、いずれも粘度の低い水溶液であり、含浸性が良好である。そのため、オンマシンサイズプレス含浸でも十分な含浸量を確保することができ、製造工程が少ないオンマシンサイズプレス含浸の場合でも、加熱処理を含む加工にも適した化粧板用紙を低価格で提供することができる。
【0024】
本発明の化粧板用紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2に準じた王研式平滑度300秒以上が好ましい。通常、化粧板用紙はグラビア印刷にて、単色、木目柄、抽象柄等が印刷される。グラビア印刷の網点再現性は、印刷される用紙表面の平滑性に依存し、平滑性を上げると網点再現性も向上することが一般に知られている。平滑度が300秒未満の場合、グラビア印刷が困難となるおそれがある。
【0025】
平滑化処理は、マシンカレンダーや、チルドロールと弾性ロール(コットンロール)を多段に積み重ねたスーパーカレンダー、弾性ロールに合成樹脂ロールを用いたソフトニップ等のカレンダー装置により行うことが好ましい。ソフトニップカレンダーは合成樹脂ロール表面の耐熱温度がコットンロールに比べて高く設定することが可能で、対となる金属ロールの温度を高温(50〜150℃)で処理することができ、同一の平滑性を目標とした場合、スーパーカレンダーに比べて処理線圧を低く設定できるので好ましい態様である。採用するカレンダーによって、処理条件は左右されるが、線圧として概ね10〜400kgf/cm、より好ましくは10〜200kgf/cmの範囲で処理される。
【0026】
抄紙に際しては、本発明の目的の効果を損なわない範囲で、硫酸バンド、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、内添サイズ剤、歩留り剤等の抄紙用内添薬品が必要に応じて適宜選択して使用される。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を用途に応じて適宜添加することもできる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断わらない限り、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0028】
<実施例1>
〔紙基材(原紙)の抄造〕
NBKPとLBKPを50:50で配合したパルプを、カナディアンスタンダードフリーネスで170mlまで叩解し、硫酸アルミニウム1.0部、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー0.01部(サイズパインK−903−20、荒川化学工業社製)、湿潤紙力増強剤0.15部(アラフィックス255、荒川化学工業社製)をパルプ質量に対して添加した。この紙料を使用して、長網多筒型抄紙機により、坪量40g/mの原紙を抄造した。
【0029】
〔化粧板用紙の作製〕
次に、マングルロールを用いて、スルファミン酸グアニジンを、紙基材(固形分質量)に対し、20質量%となるように含浸させた。次いで、上記の含浸紙をテストマシンカレンダーで平滑化処理を行い、化粧板用紙とした。テストマシンカレンダーは、チルドロールとチルドロールの1ニップ、加熱温度80℃、線圧70kg/cm、2回通しにて実施した。
【0030】
<実施例2>
実施例1の化粧板用紙の作製において、スルファミン酸アンモニウムを含浸させた以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0031】
<実施例3>
実施例1の化粧板用紙の作成において、塩酸グアニジンを含浸させた以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0032】
<実施例4>
実施例1の化粧板用紙の作成において、スルファミン酸グアニジンを、紙基材(固形分質量)に対し、10質量%となるように含浸させた以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0033】
<実施例5>
実施例1の化粧板用紙の作製において、原料パルプをフリーネス60mlまで叩解した以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0034】
<実施例6>
実施例1の化粧板用紙の作製において、原料パルプをフリーネス250mlまで叩解した以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0035】
<実施例7>
実施例1の化粧板用紙の作製において、テストマシンカレンダーでの平滑化処理にて線圧40kg/cmで行った以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0036】
<比較例1>
実施例1の化粧板用紙の作製において、原料パルプをフリーネス10mlまで叩解した以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0037】
<比較例2>
実施例1の化粧板用紙の作製において、原料パルプをフリーネス350mlまで叩解した以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0038】
<比較例3>
実施例1の化粧板用紙の作製において、水を含浸させた以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
【0039】
<比較例4>
実施例1の化粧板用紙の作製において、マングルロールにてスルファミン酸を含浸させた以外は実施例1と同様にして化粧板用紙を得た。
各実施例、比較例で得られた化粧板用紙を以下の方法で評価、結果を表1に示す。
【0040】
上記、実施例1〜7、比較例1〜4で得られた化粧板用紙は、23℃/50%RHの恒温室で24時間放置後、坪量は、JIS P 8124:1998に準じて測定した。含浸量は、含浸処理後の坪量から含浸処理前の坪量を引いて算出した。加熱時の引張破断伸びは、加熱雰囲気下にて測定可能なロードセル式引張試験機を用いて測定した。試験片幅は15mm、2個のつかみ具の間隔は100mm、引張速度は200mm/min、予備加熱時間は1分、測定温度は100℃にて行った。
【0041】
得られた化粧板用紙は、グラビア印刷を施した後、印刷面を観察して、その印刷適性を評価した。
(評価基準)
○ : 印刷が鮮明に見える、
△ : わずかにぼやけたように印刷が見える。または、裏抜けする。
【0042】
得られた化粧板用紙は、グラビア印刷後、凹凸部材に、凹凸形状の表面に沿って折り曲げながら貼り付け、化粧板を作成時の加工性を評価した。なお、貼り付けの際には、印刷層の割れを軽減させるため、ドライヤーによる加熱処理を実施した。
(評価基準)
○ : 化粧板用紙の破断なし。
△ : 化粧板用紙の破断ないが、わずかな亀裂あり。
× : 化粧板用紙の破断あり。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、カナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩、もしくはグアニジン塩を含浸させた化粧板用紙は、加熱時の引張破断伸びが良好であり、グラビア印刷適性、加熱処理を含む加工性も良好である(実施例1〜7)。これに対して、叩解度が50〜300mlでない木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩、もしくはグアニジン塩を含浸させた化粧板用紙、または、叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩もしくはグアニジン塩を含浸させない化粧板用紙は、加熱時の引張破断伸びが不十分であり、加工性に劣る(比較例1〜4)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る化粧板用紙は加熱時の横方向の引張破断伸びが5%以上であり、Vカット加工適性やラッピング加工適性に優れ、実用上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS P 8121−1995に準じたカナディアンスタンダードフリーネスでの叩解度が50〜300mlである木材パルプを主体とする紙基材にスルファミン酸塩またはグアニジン塩を含浸したシートであって、JIS P 8113:1998に準じた該シートの加熱時(温度100℃、予備加熱時間1分)の引張り破断伸びが横方向で5%以上であることを特徴とする化粧板用紙。
【請求項2】
前記スルファミン酸塩またはグアニジン塩がスルファミン酸グアニジン、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸カリウム、塩酸グアニジンより選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の化粧板用紙。
【請求項3】
前記スルファミン酸塩またはグアニジン塩が紙基材(固形分質量)に対し、10質量%以上含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧板用紙。
【請求項4】
化粧板用紙のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2に準じた王研式平滑度が300秒以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧板用紙。

【公開番号】特開2011−208311(P2011−208311A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76778(P2010−76778)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000191320)王子特殊紙株式会社 (79)
【Fターム(参考)】