説明

化粧版及び化粧板の製造方法

【課題】 化粧板において、外観上のデザイン等に影響を与えることなく、低コストで空気中のマイナスイオン濃度を充分適切に高める。
【解決手段】 化粧板10は、コア層12と、このコア層12に積層される化粧層14と、コア層12の化粧層14とは反対側の面に積層される最下層16とから成っている。これらの化粧板10を構成する各層のうち、少なくとも化粧層14には、トルマリンが含有されている。トルマリンを含有する層は、平均粒子径が0.1μ〜10μmのトルマリンを、基材に含浸される樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部添加して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板とその製造方法に関し、特に、マイナスイオンを適切に発生させることができる化粧板及びその製造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラミン樹脂化粧板等の化粧板は、表面が硬く、耐熱性や耐汚染性に優れ、意匠性においても美しい外観を有し、更に豊富な色調、色柄の中から選択できることから、家具テーブル、会議用テーブル、事務デスク等の天板、あるいは住宅やオフィスビルの天井や壁、流し台等の内装材として、幅広く使用されている。
【0003】
このような化粧板は、外観上のデザインのみならず、日常において人々の生活に密着して使用されることが多いため、近年では、更なる付加的な機能に対するニーズが高まりつつある。ここに、空気をマイナスイオン化することにより、空気中のマイナスイオン濃度が高まると、空気が浄化され、様々な病気の予防や回復、精神的なリラックス効果が得られることが知られている。
【0004】
この空気をマイナスイオン化させる手段としては、マイナスイオン発生器を使用する方法が一般的であるが、マイナスイオン発生器は、電気等の動力源を必要とすると共に、そのために高コストを要すること、更には、マイナスイオン発生器近傍の局所的にしかマイナスイオン濃度を高めることができない欠点があった。
【0005】
一方、鉱石の中でもトルマリンは、圧力や温度変化等の外部エネルギーが加わると、トルマリンの表面に接する空気をマイナスイオン化させる機能を有するため、このトルマリンを使用することにより、動力源を使用することなく、空気をマイナスイオン化させることも考えられる。
【0006】
しかし、トルマリンの表面によりマイナスイオン化される空気の濃度は、それ程高くないため、空気中のトルマリン濃度を充分に高めるためには、空気と接触するトルマリンの表面積を、できるだけ広く確保することが必要となる。
【0007】
その方法として、トルマリン等の粉末を含有した建築用砂壁状塗材を壁面に塗布することが考えられるが(例えば、特許文献1参照)、壁面への塗工には多大な工数を要し、現場での作業性が低下すると共に、何よりも、壁の柄等のデザインの選択肢が非常に狭く、ユーザーの要望には充分に応えることができない問題がある。
【0008】
加えて、微粉末状のトルマリンは凝集しやすいため、トルマリンを、単に塗材等の原料である樹脂中に混合分散するだけでは、均一に分散させることは困難であり、その結果、凝集によりトルマリン表面と空気との接触効率が低下して充分なマイナスイオン濃度を確保することができないと共に、トルマリンの凝集物が壁面等における外観上の異物と認識され、ユーザーからクレームが発生するおそれもあった。
【特許文献1】特開2004−137764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、外観上のデザイン等に影響を与えることなく、低コストで空気中のマイナスイオン濃度を充分適切に高めることができる化粧板、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、コア層と、このコア層に積層される化粧層とを少なくとも備えた化粧板において、化粧板を構成する各層のうち、少なくとも化粧層にトルマリンが含有されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、コア層の化粧層とは反対側の面に更に最下層が積層されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、トルマリンの平均粒子径が0.1μm〜10μmであることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、化粧板を構成する各層のうち、トルマリンを含有する層は、基材に含浸される樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部のトルマリンを添加して形成されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、トルマリンを含有する層は、トルマリンと共に金属イオンを溶出しない粒子が混入された樹脂を基材に含浸させて形成されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第5の解決手段において、金属イオンを溶出しない粒子がアルミナその他のファインセラミックスであることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第5又は第6のいずれかの解決手段において、金属イオンを溶出しない粒子の平均粒子径が0.01μm〜10μmであることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第1乃至第7のいずれかの解決手段において、トルマリンを含有する層は、トルマリンが超音波分散機又はビーズミルにより分散された樹脂を基材に含浸させて形成されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、上記第1乃至第8のいずれかの解決手段である化粧板を製造することができる下記の解決手段をも提供するものである。具体的には、本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、コア層に、少なくとも化粧層を積層して化粧板を製造する化粧板の製造方法において、化粧板を構成する各層のうち、少なくとも化粧層にトルマリンを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0019】
本発明は、上記の課題を解決するための第10の手段として、上記第9の解決手段において、コア層の化粧層とは反対側の面に更に最下層を積層することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するための第11の手段として、上記第9又は第10のいずれかの解決手段において、平均粒子径が0.1μm〜10μmであるトルマリンを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0021】
本発明は、上記の課題を解決するための第12の手段として、上記第9乃至第11のいずれかの解決手段において、化粧板を構成する各層のうちトルマリンを含む層を、基材に含浸される樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部のトルマリンを添加して、基材に含浸して形成することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0022】
本発明は、上記の課題を解決するための第13の手段として、上記第9乃至第12のいずれかの解決手段において、基材に含浸される樹脂にトルマリンと共に金属イオンを溶出しない粒子を混入して、トルマリンを含有する層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するための第14の手段として、上記第13の解決手段において、金属イオンを溶出しない粒子としてアルミナその他のファインセラミックスを使用することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0024】
本発明は、上記の課題を解決するための第15の手段として、上記第13又は第14のいずれかの解決手段において、金属イオンを溶出しない粒子の平均粒子径が0.01μm〜10μmであることを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0025】
本発明は、上記の課題を解決するための第16の手段として、上記第9乃至第15のいずれかの解決手段において、トルマリンを基材に含浸される樹脂中に超音波分散機又はビーズミルにより分散させて、トルマリンを含有する層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上記のように、化粧板のうち、少なくとも、最表面に位置し、かつ、多種多様な外観を選択することができる化粧板の化粧層にトルマリンを含有させているため、優れた意匠性等の化粧板の特性を活かしつつ、トルマリン表面の空気との効果的な接触効率を確保して空気中のマイナスイオン濃度を効果的に高めることができ、デザイン性及び肉体的、精神的な健康等の付加的機能の両者に対するユーザーの要望に同時に適切に応えることができる実益がある。
【0027】
この場合、本発明によれば、同時に、化粧板において空気のマイナスイオン化を達成しているため、塗工等の設置現場での作業を経ることなく、また、化粧板を使用した製品の通常の製造工程等を経るだけで、また、その製造工程を変更することなく、空気のマイナスイオン化を簡易に達成することができると同時に、トルマリンにより空気をマイナスイオン化しているため、特別な動力源を要することなく、コストを低減しつつ、空気のマイナスイオン化を達成することができる実益がある。
【0028】
また、本発明によれば、上記のように、トルマリンの平均粒子径を適切に調整しているため、トルマリンを適切に分散させつつ、同時に化粧板の外観に影響を与えることがなく、トルマリンの均一分散によるマイナスイオン濃度の効果的な向上と化粧板の有する優れた意匠性とを両立させることができる実益がある。
【0029】
同様に、本発明によれば、上記のように、トルマリンの含有量(重量部)を適切に調整しているため、空気中のマイナスイオン濃度を充分に高めつつ、同時に化粧板の外観に影響を与えることがなく、トルマリンの充分な含有量によるマイナスイオン濃度の効果的な向上と化粧板の有する優れた意匠性とを両立させることができる実益がある。
【0030】
更に、本発明によれば、上記のように、トルマリンと共にアルミナ等の金属イオンを溶出しない粒子を樹脂中に混入しているため、樹脂中でのトルマリンの均一分散が促進され、凝集しやすい微粉末状のトルマリンを樹脂中に適切に分散させて、トルマリン表面と空気との接触効率を高めて、空気中のマイナスイオン濃度を充分に高めることができる実益がある。
【0031】
加えて、本発明によれば、上記のように、トルマリンを、超音波分散機又はビーズミルにより樹脂中に分散しているため、凝集しやすい微粉末状のトルマリンを適切にかつ確実に樹脂中に均一に分散させることができ、トルマリン表面と空気との接触効率を高めて、空気中のマイナスイオン濃度を充分に高めることができる実益がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1は、本発明の化粧板10を示し、この化粧板10は、図1に示すように、コア層12と、このコア層12に積層された表面の化粧層14と、コア層12の化粧層14とは反対側の面に積層された最下層16とから成っている。この化粧板10は、コア層12、化粧層14、最下層16を各々形成した後、これらを重ね合わせて加熱加圧成形して、図1に示すように、各層を積層することにより製造することができる。
【0033】
<1.化粧層>
表面に配置される化粧層14は、その本来の材質には、特に限定はなく、本発明においても、通常の化粧板10と同様に、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する液状のワニスを調製し、これをグラビア印刷紙等の紙基材に含浸させた後、加熱乾燥により溶剤を除去して、熱硬化性樹脂を半硬化させた状態のプリプレグを使用することができる。なお、この場合、ワニスを紙基材に含浸させる方法も、特に限定はなく、通常行われるキスコーターを用いる方法を採ることもできるし、ディップによる方法を採ることもできる。
【0034】
また、このワニスを含浸させる紙基材としては、セルロース(パルプ)に顔料(チタン白など)をすきこんだ抄造紙に模様を印刷した印刷紙を使用することができる。また、その坪量としても特に限定されないが、通常と同様、80〜150g/m2のものを用いることができる。
【0035】
また、この紙基材に含浸させるワニスに含有させる樹脂としても、特に限定はなく、通常使用されるメラミン樹脂の他、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂等、又は、これらを混合したもの等も必要に応じて使用することができる。これらの樹脂成分は、化粧層14の表面を硬化させると共に、化粧層14の表面に耐熱性や耐汚染性等の優れた性能を付与するものである。
【0036】
<2.コア層>
コア層12は、化粧板10全体の厚み調整や、化粧板10に、剛性や、また、添加剤の種類によっては湿気に対するバリア性、不燃性等を付与するために用いられる。このコア層12も、特に、その本来の材質に限定はないが、化粧層14と同様に、基材に樹脂ワニスを含浸させた後、樹脂成分を半硬化させたプリプレグを使用することができる。
【0037】
この場合、基材としては、通常の化粧板と同様、クラフト紙を使用することができる。クラフト紙を用いる場合の坪量は特に限定されないが、通常、50〜250g/m2 のものを使用することができる。また、その他、目的に応じて、天然有機繊維、ガラス等の無機繊維、ポリエステル等の合成繊維などを単独もしくは混紡、混抄により複数種用いた紙、織布、あるいは不織布等を使用することもできる。
【0038】
また、これらの基材に含浸させるワニスに含有させる樹脂成分にも、特に限定はないが、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂の他、メラミン樹脂とフェノール樹脂の共縮合体やフェノール樹脂とエポキシ樹脂の共縮合体を使用することもでき、更には、耐燃焼性において燃焼時の発熱量抑制に優れるメラミン樹脂をベースとするエポキシ変性メラミン樹脂やアクリル樹脂混合メラミン樹脂等も使用することができる。なお、これらの樹脂成分を含有したワニスの基材への含浸方法についても、化粧層14の場合と同様の手段を採ることができる。
【0039】
<3.最下層>
最下層16は、バック層となるもので、化粧板10の設置箇所や化粧板10を取り付ける対象の性質等に合わせて適宜設定することができる。図示の実施の形態では、最下層16は、基材、ワニスに含有される樹脂等を、化粧層14と同じく設定したものを使用している。なお、この最下層16は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて適宜設定すれば足りる。
【0040】
<4.トルマリンの含有>
本発明の化粧板10は、上記の化粧板10を構成する各層のうち、少なくとも化粧層14に、トルマリンが含有されている。この場合、トルマリンを含有させる層は、少なくとも、表面層14を含めば、吸着強度等の設定等の必要に応じて、1)化粧層14のみ、2)化粧層14とコア層12、3)化粧層14と最下層16、あるいは、5)化粧層14、コア層12、最下層16の全て、のうちのいずれとすることもできる。少なくとも、表面層14を含むのは、表面層14は、化粧板10の中でも、マイナスイオン化すべき空気との接触率が最も高い最表面に位置し、かつ、多種多様な外観を選択することができるからである。これにより、化粧板の優れた意匠性等の化粧板の特性を活かしつつ、トルマリン表面の空気との効果的な接触効率を確保して空気中のマイナスイオン濃度を効果的に高めることができ、デザイン性及び肉体的、精神的なリラックス、リフレッシュ等の付加的機能の両者に対するユーザーの要望に同時に適切に応えることができる。
【0041】
この含有すべきトルマリンは、圧電体の一種で、電気石とも称される珪酸塩鉱物であり、結晶軸のねじれを原因として、圧力により周囲に電荷を生じさせる圧電効果、温度変化により周囲に電荷を生じさせる焦電効果を有し、これらの特質により、接触する空気をマイナスイオンかすることができる。従って、例えば、本発明の化粧板を材料として、壁面や家具等を形成すると、人の動きや通風等の圧力、あるいは、気温の変化等により、特別な動力源を要することなく、室内等の空気をマイナスイオン化させることができる。
【0042】
このトルマリンは、トルマリンを含有させるべき層を形成する際に、各層に含有させることができる。即ち、ワニス中にトルマリンを添加して混合・分散処理をして、均一に分散させ、このトルマリンが分散されたワニスを、基材に含浸させることにより、各層に含有させることができる。これは、マイナスイオン化すべき空気と接触するトルマリンの表面積をできるだけ大きく確保するためには、微粉末状のトルマリンを使用して、これを化粧板10の原料であるメラミン樹脂やフェノール樹脂等のワニス中に分散させることが必要だからである。
【0043】
この場合、具体的には、平均粒子径が0.1μm〜10μmであるトルマリンを添加することが望ましい。粒子径を0.1μm未満とすると、均一に分散することが困難となる一方、10μmを超えると、目視によっても認識されやすく、トルマリンが異物として認識され、外観表面上の美感に影響を与え、ユーザーからのクレームにつながるおそれがあるからである。なお、トルマリンの平均粒子径は、レーザー散乱型の流度分布計を使用して測定することができる。
【0044】
また、このトルマリンは、基材に含浸される樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部を添加して基材に含浸することが望ましい。これは、後述する実施例及び比較例から解るように、トルマリンの添加量を、樹脂100重量部に対して0.1重量部未満とすると、充分な量のマイナスイオンの発生量を確保することができない一方、樹脂100重量部に対して20重量部以上とすると、分散処理の方法によっては、トルマリンが、充分に分散されずに外観上の異物として残存するおそれがあるからである。なお、この場合、ワニス全体ではなく、樹脂成分に対する重量部としたのは、ワニス中に含まれる溶剤は揮発するため、溶剤を含むワニス全体に対する重量部とすると、乾燥後の(樹脂の硬化後の)各層に対するトルマリンの含有割合を定量的に把握、調整することが困難となるためである。
【0045】
この微粉末状のトルマリンの含有方法(基材への含浸方法)には特に限定はなく、各層に均一に分散して含有させることができれば、トルマリンが分散されたワニスを、キスコーターやディップにより、基材に含浸させる方法や、その他、例えば、トルマリンが分散されたワニスをコンマコーターや吹き付けにより基材に含浸させたり、あるいは、ワニスを含浸させた基材(プリプレグ)に、トルマリンを篩等により均一に篩い落として、含有させることもできる。
【0046】
もっとも、トルマリンの分散処理については、微粉末状のトルマリンは、ワニス中で凝集しやすい傾向があり、この微粉末状のトルマリンの凝集物がワニス中に残存していると、当該凝集物が、外観上の異物と認識され、ユーザーからのクレームにつながるおそれがある。このため、一般にワニス中への添加物の分散に使用される方法、例えば、トルマリンが添加されたワニスをスリーワンモーター等により撹拌したり、あるいは、予め水等の粘度の低い液体中にトルマリンを添加してスリーワンモーター等により撹拌した上でメラミン樹脂等のワニスに添加する等の分散処理では、微粉末状のトルマリンを充分に分散させることができないため、好ましくない。従って、微粉末状のトルマリンを、超音波振動エネルギーにより分散する図示しない超音波分散機やビーズミル(湿式媒体攪拌ミル)等により、ワニス中に均一に分散させることが望ましい。
【0047】
また、このワニス中でのトルマリンの分散に際しては、基材に含浸される樹脂にトルマリンと共に金属イオンを溶出しない粒子を混入して、トルマリンを分散させることが好ましい。これにより、樹脂中でのトルマリンの均一分散が促進され、凝集しやすい微粉末状のトルマリンを樹脂中に適切に分散させて、トルマリン表面と空気との接触効率を高めて、空気中のマイナスイオン濃度を充分に高めることができる。
【0048】
この金属イオンを溶出しない粒子としては、具体的には、アルミナその他のファインセラミックスを使用することができる。このアルミナその他のファインセラミックスを混入するとトルマリンが凝集しにくくなるのは、アルミナ等が、混合や分散の際に生じる静電気によりトルマリンが凝集しようとするのを、マイナス電気を中和して抑制するためであると考えられる。なお、その平均粒子径は、0.01μm〜10μmとすることが好ましい。これは、0.01μm未満では、トルマリンの均一分散を充分に促進させることができない一方、10μmを超えると、トルマリンと同様に、ファインセラミックスが外観上の異物となるおそれがあるためである。
【0049】
<5.化粧板への加工>
以上のようにして、トルマリンを必要な層に含有させた後は、通常の高圧樹脂化粧板10の場合と同様に、各層を積層して加熱加圧することにより、トルマリンを含み、種々の化粧面を有しつつ、空気を充分に適切にマイナスイオン化させることができる化粧板10とすることができる。但し、この場合、一般の高圧樹脂化粧板の場合に比べ、高温で加熱加圧することが望ましく、具体的には、製品最高温度を125℃〜150℃程度に調整することが望ましい。
【実施例】
【0050】
次に、表面の化粧層14にトルマリンを含有させて、図1に示す化粧板10を製造した本発明の実施例、及び、本発明の効果を確認するために設定した比較例について、説明する。なお、以下の本発明に関する実施例及び比較例に関する記載中、「%」は全て「重量%」を表す。
【0051】
<1.実施例1>
(1)化粧層
ワニス中に含有させる樹脂として、1)モル比が1.6、数平均分子量が230、不揮発分が52%、粘度が40cP/20℃のポストフォーム用水溶性メラミン樹脂に触媒を添加した含浸用メラミン樹脂ワニスを調製した。このワニス中のメラミン樹脂成分100重量部に対し、2)トルマリン(株式会社豊中産業製「W−100−T」)を0.1重量部添加して、混合した。なお、このトルマリンの、平均粒子径は3μmとした。このワニスを、超音波洗浄機(本多電子株式会社製「w−231」)にて10分間分散処理をした後、スプレーノズル(アトマックス株式会社製の「アトマックスノズルBN型」)が装着されたスプレー装置にて霧状にして基材に吹き付けて含浸させた。なお、基材としては、通常の化粧紙(米坪130g/m2の単色抄き込み紙)を使用し、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0052】
(2)コア層
ワニスとして、一般のメラミン化粧板の生産に使用されるホルムアルデヒド(F)とフェノール(P)とを反応モル比(P/F)が1.3となるように配合して反応させた水溶性レゾール型フェノール樹脂ワニスを得た。一方、基材として、米坪190g/m2 の未晒クラフト紙を使用し、このクラフト紙に、上記のワニスを、ディップ法で含浸させ、樹脂量30%、揮発分6%に乾燥調整して、フェノール樹脂含浸紙のコア層12を形成した。なお、このコア層12は、通常の化粧板におけるフェノール樹脂含浸紙に比べ、樹脂分を5%増加し、揮発分を25%低下させたものである。
【0053】
(3)最下層
化粧層14と同じ基材に、化粧層14と同じ変性メラミン樹脂ワニスを含浸させて加熱し、樹脂量60%、揮発分7%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の最下層16を形成した。なお、ワニスの基材への含浸は、コア層12と同じく、ディップ法により行った。
【0054】
(4)化粧層、コア層、最下層の積層
上記(1)〜(3)の化粧層14、コア層12、最下層16を所定枚数重ね合わせ、通常の高圧メラミン樹脂化粧板の熱圧成形方法に準じて、製品最高温度が135℃〜140℃の範囲内に入るようにして、加熱加圧し、図1に示す形態の化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.6%であった。
【0055】
<2.実施例2>
(1)化粧層
ワニス中に含有させる樹脂として、実施例1と同じく、1)モル比が1.6、数平均分子量が230、不揮発分が52%、粘度が40cP/20℃のポストフォーム用水溶性メラミン樹脂に触媒を添加した含浸用メラミン樹脂ワニスを調製した。このワニス中のメラミン樹脂成分100重量部に対し、2)トルマリン(株式会社豊中産業製「W−100−T」)20重量部を添加して、混合した。なお、トルマリンの平均粒子径は3μmとした。このワニスを、ビーズミル(三井鉱山製「SC−100」)を使用して、ミル内にジルコニア製ビーズ(直径0.8mm)を体積比で30%装填し、ミル内のセパレーターギャップを0.2mmに設定して、ミル回転数1200rpmにて、10分間分散処理をした後、このワニスをパットに入れ、ディップ法により基材に含浸させた。なお、基材としては、実施例1と同じく、通常の化粧紙(米坪130g/m2の単色抄き込み紙)を使用し、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0056】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16として、実施例1と同じものを使用し、これらの化粧層14、コア層12、最下層16を所定枚数重ね合わせ、通常の高圧メラミン樹脂化粧板の熱圧成形方法に準じて、製品最高温度が135℃〜140℃の範囲内に入るようにして、加熱加圧し、図1に示す形態の化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.6%であった。即ち、この実施例2は、化粧層14において、ワニス中に添加するトルマリンの樹脂成分に対する重量部及びこれらの粉末の分散方法の点においてのみ、実施例1と設定が異なり、その他の点においては、実施例1と同様とした。
【0057】
<2.実施例3>
(1)化粧層
ワニス中に含有させる樹脂として、実施例1と同じく、1)モル比が1.6、数平均分子量が230、不揮発分が52%、粘度が40cP/20℃のポストフォーム用水溶性メラミン樹脂に触媒を添加した含浸用メラミン樹脂ワニスを調製した。このワニス中のメラミン樹脂成分100重量部に対し、2)トルマリン(株式会社豊中産業製「W−100−T」)20重量部と、3)アルミナ(日本アエロジル製「アエロキサイドAluC」)1重量部とを添加して、混合した。なお、トルマリンの平均粒子径は3μm、アルミナの平均粒子径は0.013μmとした。このワニスを、ビーズミル(三井鉱山製「SC−100」)を使用して、ミル内にジルコニア製ビーズ(直径0.8mm)を体積比で30%装填し、ミル内のセパレーターギャップを0.2mmに設定して、ミル回転数1200rpmにて、10分間分散処理をした後、このワニスをパットに入れ、ディップ法により基材に含浸させた。なお、基材としては、実施例1と同じく、通常の化粧紙(米坪130g/m2の単色抄き込み紙)を使用し、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0058】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16として、実施例1と同じものを使用し、これらの化粧層14、コア層12、最下層16を所定枚数重ね合わせ、通常の高圧メラミン樹脂化粧板の熱圧成形方法に準じて、製品最高温度が135℃〜140℃の範囲内に入るようにして、加熱加圧し、図1に示す形態の化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.6%であった。即ち、この実施例2は、化粧層14において、ワニス中に添加するトルマリンの樹脂成分に対する重量部及びアルミナの混入並びにこれらの粉末の分散方法の点においてのみ、実施例1と設定が異なり、その他の点においては、実施例1と同様とした。また、この実施例3は、アルミナを混入した点においてのみ実施例2と設定が異なり、その他の設定は全て実施例2と同様である。
【0059】
次に、本発明の上記の実施例1〜3の効果を確認するために設定した2つの比較例について説明する。
<3.比較例1>
(1)化粧層
ワニス及びこのワニスを含浸させる基材として、実施例1〜実施例3と同じものを使用し、実施例2及び実施例3と同じく、ワニス中のメラミン樹脂の成分100重量部に対し20重量部のトルマリン(平均粒子径:3μm)を添加して、混合した。このワニスを、スリーワンモーター(新東科学株式会社製「BLh600」)を使用して、300rpmにて、10分間分散処理をした後、ディップ法により基材に含浸させた。なお、基材としては、実施例1及び実施例2と同じく、通常の化粧紙(米坪130g/m2の単色抄き込み紙)を使用し、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0060】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16としては、実施例1〜実施例3と同じものを使用し、また、各層の積層方法についても、実施例1〜実施例3と同様に設定して、化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.77mm 、含水率は4.5%であった。即ち、この比較例1は、化粧層14において、ワニス中に添加するトルマリンの重量部については、実施例2及び実施例3と同様に設定しつつ、ビーズミルではなくスリーワンモーターによりトルマリンを分散した点において実施例2及び実施例3と異なり、また、アルミナを添加しなかった点において実施例3と異なる設定とした。
【0061】
<4.比較例2>
(1)化粧層
ワニス及びこのワニスを含浸させる基材として、実施例1と同じものを使用し、このワニスを、バットに入れ、基材にディップ法により含浸させて、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0062】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16として、実施例1と同じものを使用し、また、各層の積層方法についても、実施例1と同様に設定して、化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.7%であった。即ち、この比較例2は、化粧層14において、ワニス中にトルマリンを添加しない点において、実施例1と設定が異なり、その他の点においては、ワニスの含浸方法を除き、実施例1と同様とした一般的な化粧板10である。
【0063】
<5.各実施例及び比較例の対比>
以上の実施例1、2及び比較例1、2として得られたメ化粧板10(メラミン樹脂化粧板)について、その特性を測定した結果を、次の表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
なお、この表1において、各測定結果の評価は、次の基準により行った。
1)寸法変化率:JISK6902に準拠して測定した。
2)表面鉛筆硬度:JISK5401の塗膜鉛筆引っ掻き試験に準拠して測定した。
3)マイナスイオン濃度:温度20℃、湿度50%RHにおいて、静止状態にて、実施例1、2及び比較例1、2の各サンプルから10mm離れた場所にマイナスイオン測定器(ユニバーサル製:型式「IC−1000」)を使用して、各サンプルの表面から発せられるマイナスイオン濃度を測定した。
【0066】
この表1から明らかなように、スリーワンモーターによりトルマリンを分散した比較例1については、空気をマイナスイオン化することができたものの、微粉末状のトルマリンが凝集して、その凝集物が異物として化粧板10の外観表面に表れてしまうことが判明した。また、トルマリンを含有しない比較例2においては、化粧板の外観表面は綺麗に仕上がったものの、当然のことながら空気をマイナスイオン化させることはできなかった。従って、これらの比較例1及び2では、いずれにしろ、外観表面に影響を与えることなく、空気をマイナスイオン化することは両立できないことが解る。
【0067】
対して、トルマリンを超音波分散機により分散した本発明の実施例1、トルマリンをビーズミルにより分散した本発明の実施例2、更に、トルマリンをアルミナと共にビーズミルにより分散した本発明の実施例3については、いずれも微粉末状のトルマリンの凝集は確認されず化粧板10の外観表面に影響を与えることなく、空気を充分にマイナスイオン化させることができ、本発明の課題を解決できることが解る。特に、同じ重量部のトルマリンをワニスに混入させつつ、ビーズミルによりトルマリンを分散した本発明の実施例2と、スリーワンモーターを使用してトルマリンを分散した比較例1とを対比すると解るように、トルマリンの量を増量しても、ビーズミルにより分散処理をすれば、微粉末状のトルマリンの分散を充分に促進できることが解る。同様に、同じ重量部のトルマリンをワニスに混入させつつ、アルミナをも添加した本発明の実施例2と、アルミナを添加しなかった比較例1とを対比すると解るように、トルマリンの量を増量しても、アルミナを添加すれば、微粉末状のトルマリンの分散を充分に促進できることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の化粧板は、家具テーブル、会議用テーブル、事務デスク等の天板、あるいは住宅やオフィスビルの内装材等として、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の化粧板の断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 化粧板
12 コア層
14 化粧層
16 最下層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層と前記コア層に積層される化粧層とを少なくとも備えた化粧板において、前記化粧板を構成する各層のうち、少なくとも化粧層にトルマリンが含有されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
請求項1に記載された化粧板であって、前記コア層の前記化粧層とは反対側の面に更に最下層が積層されていることを特徴とする化粧板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された化粧板であって、前記トルマリンの平均粒子径が0.1μm〜10μmであることを特徴とする化粧板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された化粧板であって、前記化粧板を構成する各層のうち、前記トルマリンを含有する層は、基材に含浸される樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部のトルマリンを添加して形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された化粧板であって、前記トルマリンを含有する層は、前記トルマリンと共に金属イオンを溶出しない粒子が混入された樹脂を基材に含浸させて形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項6】
請求項5に記載された化粧板であって、前記金属イオンを溶出しない粒子がアルミナその他のファインセラミックスであることを特徴とする化粧板。
【請求項7】
請求項5又は請求項6のいずれかに記載された化粧板であって、前記金属イオンを溶出しない粒子の平均粒子径が0.01μm〜10μmであることを特徴とする化粧板。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された化粧板であって、前記トルマリンを含有する層は、前記トルマリンが超音波分散機又はビーズミルにより分散された樹脂を前記基材に含浸させて形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項9】
コア層に、少なくとも化粧層を積層して化粧板を製造する化粧板の製造方法において、前記化粧板を構成する各層のうち、少なくとも化粧層にトルマリンを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された化粧板の製造方法であって、前記コア層の前記化粧層とは反対側の面に更に最下層を積層することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10のいずれかに記載された化粧板の製造方法であって、平均粒子径が0.1μm〜10μmである前記トルマリンを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれかに記載された化粧板の製造方法であって、前記化粧板を構成する各層のうち前記トルマリンを含む層を、基材に含浸される樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部のトルマリンを添加して、前記基材に含浸して形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12のいずれかに記載された化粧板の製造方法であって、前記基材に含浸される樹脂に前記トルマリンと共に金属イオンを溶出しない粒子を混入して、前記トルマリンを含有する層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載された化粧板の製造方法であって、前記金属イオンを溶出しない粒子としてアルミナその他のファインセラミックスを使用することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は請求項14のいずれかに記載された化粧板の製造方法であって、前記金属イオンを溶出しない粒子の平均粒子径が0.01μm〜10μmであることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項16】
請求項9乃至請求項15のいずれかに記載された化粧板であって、前記トルマリンを前記基材に含浸される樹脂中に超音波分散機又はビーズミルにより分散させて、前記トルマリンを含有する層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法。

【図1】
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