説明

化粧用シート

【課題】 ポリマーにトラップされることなく、良好な強度を有し、かつ、皮膚へのフィット性に優れる化粧用シートを提供する。
【解決手段】 化粧用シートは、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、水及び化粧成分(C)とから成る。この活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2〜8であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40〜100モル%であり、かつ、水酸基価が5mgKOH/g〜110mgKOH/gであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用シートに関し、特に、腰、腕、足、顔等に保湿性や冷涼感を与えたり、美白成分、栄養成分等を付与する皮膚ケアを目的とする化粧用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
今日市販品として流通している化粧用シートとしては、湿布剤として汎用されているポリアクリル酸系ゲルを応用したシートが主流である。このポリアクリル酸系ゲルは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩を主ポリマーとし、これに金属塩架橋によりゲル化させたものである。
【0003】
しかしながら、このポリアクリル酸系ゲルは、電解質ポリマーであるので、皮膚ケア等を目的として添加する薬剤成分等の種類によってはポリマーによりトラップされてしまい、放出されにくくなる等の問題があった。そのため、ポリアクリル酸系ゲルを用いてなる層を基材として使用することは適切ではなかった。また、この基材は、強度の面からは弱く、取扱いにくいものであるため、強度を補う必要があり、例えば強度をカバーするような支持体を積層することが必要であった。そのため、化粧用シートは部厚いものとなり、結果として、皮膚とのフィット性に劣っていたり、美的センスに欠ける等の問題があった。
【0004】
そこで、薬剤成分をトラップして放出しにくくなることがなく、かつ、皮膚へのフィット性に優れた化粧用シートの研究が行われてきた。
【0005】
【特許文献1】特開平10−120527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、薬剤成分をトラップして放出しにくくなることがなく、強度を有し、かつ、皮膚へのフィット性に優れた化粧用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意、実験、検討を重ねたところ、薬剤成分をトラップして放出しにくくなる可能性がある電解質イオンポリマーを用いずに、非イオンポリマーを用いることによって、皮膚へのフィット性に優れた化粧用シートを実現できることを見出した。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の化粧用シートは、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、水及び化粧成分(C)とから成ることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、100モル%以下であり、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であることができる。
【0010】
本発明において、前記有機ポリイソシアネート(B)は、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートからなる群のうち少なくとも1つであるか、あるいは、ポリイソシアネートプレポリマーであることができる。
【0011】
ここで、前記ポリイソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート及び/又はメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とし、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、100モル%以下、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であるポリオールを重合させてなることができる。
【0012】
本発明においては、前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、前記有機イソシアネート(B)とを、予め加熱処理した後、塗工し、水分を吸収させてゲル化させることができる。
また、さらに可塑剤を配合することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薬剤成分等をトラップして放出しにくくなる可能性のある電解質ポリマーを使用せずに非イオンポリマーを使用するので、スキンケア目的のため広範囲の各種薬剤成分の中から自由に選択して使用することができ、選択範囲の拡大を図ることができる。また、基材自体が強度を有するため、厚い支持体を適用する必要がなく、場合によっては支持体がなくても良く、皮膚へのフィット性の向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化粧用シートは、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、水及び化粧成分(C)とを用いて成る。
【0015】
本発明に用いられる活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類を開始剤とし、これにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのアルキレンオキサイドを付加重合反応により共重合させて得られたものである。このようにして得られた共重合体の構成は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。また、このポリオール中に、他のポリオキシアルキレンを共重合させたものでも良く、例えば、ポリオキシテトラメチレン骨格を有するものを共重合させたものでも良い。但し、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の割合は、全分子量の80〜90%を占めることが好ましい。
【0016】
上記した活性水素成分ポリエーテルポリオールは、1種類のみを使用しても良いが、2種類以上を併用しても良い。活性水素成分ポリエーテルポリオールは、分子量が500〜3,000のものが好適に用いられる。
【0017】
本発明においては、上記した活性水素成分ポリエーテルポリオールの他に、さらに、他のポリオール、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等のポリオールを、その一部として使用することができる。
【0018】
本発明に用いられる活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2以上、8以下であることが好ましい。平均官能基数が2未満では、非常に柔らかくなりすぎてゲル化しにくくなる傾向にあり、8より大きいと脆くて硬くなりすぎる傾向にある。
また、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40〜100モル%であり、かつ、水酸基価が5〜110mgKOH/gであることが好ましい。エチレン単位の含有量が40〜100モル%であれば、化粧成分を含む水を多く吸収できるようになり、水酸基価が5〜110mgKOH/gであれば、有機ポリイソシアネート(B)との相溶性がよく、ソフトセグメント部の比率を高めることができるので、より柔軟なゲルを得ることができる。
【0019】
活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と反応させる有機ポリイソシアネート(B)としては、従来からポリウレタンフォームの形成において慣用的に使用されているポリイソシアネート等を用いることができる。例えば、芳香族ポリイソシアネート、及び、これらのイソシアネートの粗製品、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート等の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)等が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0020】
これらのポリイソシアネートの中では、特に、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)を用いることが好ましい。
【0021】
本発明においては、有機ポリイソシアネート(B)として、ポリイソシアネートプレポリマーを使用することもできる。
ポリイソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートとしてTDI及び/又はMDIを主成分として使用し、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2〜8であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40〜100モル%、かつ、水酸基価が5〜110mgKOH/gであるポリオールを主成分として使用し、重合させてなるプレポリマーである。
【0022】
有機ポリイソシアネートとしては、環境衛生上の観点からイソシアネート蒸気圧の低いポリイソシアネートプレポリマーを使用することが好ましい。ポリイソシアネートプレポリマーを作製する場合のポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、イソシアネートインデックスR(R=ポリオール/ポリイソシアネート)が2〜10の範囲で行うことが好ましい。
【0023】
ポリイソシアネートプレポリマーの合成には、さらに鎖延長剤を配合することができる。使用される鎖延長剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール類、エチレンジアミン、トリレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類などを挙げることができる。
【0024】
本発明においては、例えば、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)、及び、有機ポリイソシアネート(B)を用いて基材を形成し、この基材に、水及び化粧成分(C)を含有させて化粧用シートを形成することができる。
【0025】
化粧成分は、水と混合して水溶液として基材中に吸収されることが好ましい。本発明において「化粧成分」とは、スキンケアに貢献可能な成分を意味し、例えば、保湿性を与える成分、清涼成分、消炎成分、美白成分、栄養成分、血行促進成分、収れん成分等が該当する。
本発明に用いられる化粧成分としては、保湿剤として、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、スクワラン等が挙げられ、清涼剤としては、1−メントール、エタノール等が挙げられ、収れん剤としては、クエン酸、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム等が挙げられ、消炎剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体、カミツレエキス、カンゾウエキス等が挙げられ、美白成分としては、コウジ酸、アルブチン、エラグ酸、プラセンタエキス等が挙げられ、栄養成分としては、アミノ酸等が挙げられ、血行促進剤としては、酢酸トコフェロール等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、化粧成分として上記成分の中から選択して使用することができる。また、油性の成分に関しては、界面活性剤を配合してエマルジョン化して配合しても良い。さらにまた、本発明においては、上記化粧成分の替わりに、あるいは、上記化粧成分と共に、清涼剤、保湿剤、収れん剤、栄養剤等を含有している市販品としての化粧水等を吸収させても良い。
【0027】
本発明においては、基材をさらに柔軟にするために、さらに可塑剤を配合することができる。用いられる可塑剤としては、グリコールジエーテル類などが挙げられる。
本発明に用いられるグリコールジエーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。可塑剤の含有量は、基材を形成する材料の合計質量中、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることが更に好ましい。可塑剤の含有量が5質量%未満では可塑化効果に乏しくなることがあり、一方、30質量%を超える場合には基材が柔らかくなりすぎて形状を保持することができないことがある。
【0028】
本発明においては、上記以外にも、さらに、触媒、難燃剤、老化防止剤等を、適宜、配合することができる。
活性水素成分ポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させるウレタン化触媒としては、ウレタン化反応を促進することができる触媒であれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類;酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩;スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)、有機ポリイソシアネート(B)、及び、水と化粧成分(C)が化粧用シートの必須成分である。
本発明において、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)との配合割合は、イソシアネートインデックスRが0.4〜1.2程度であることが好ましい。イソシアネートインデックスが0.4未満では、ポリオールがブルーミングを起こし、柔らかくなりすぎたり、さらには固まらない等の問題が発生することがある。また、イソシアネートインデックスが1.2より大きいと、後硬化によって水分と反応し、硬くなりすぎることがある。
【0030】
活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と有機ポリイソシアネート(B)とから形成された基材に、化粧成分を水等に添加して形成された水溶液(C)を吸収させることが好ましい。この水溶液の使用量は、基材重量の1倍〜10倍の範囲であることが好ましい。基材重量の1倍未満であると、化粧成分が放出されにくくなり、皮膚へ移行しにくくなる。一方、10倍を超えると、離水しやすくなる。また、化粧成分水溶液中の化粧成分の量は、例えば、吸収しやすくするためには50重量%以下が好ましい。
【0031】
化粧用シートの製造方法としては、まず、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)とを混合した後、剥離処理を施したセパレータ等の上に、アプリケータ等を用いて、一定の厚みとなるように塗工し、加熱、重合反応を行い、ゲルシート基材を作製する。次に、このゲルシート基材上に、化粧成分を含む水溶液を所定量塗布し、吸収させて、化粧用シートを得ることができる。ここで、化粧成分を含む水溶液を塗布する替わりに、化粧成分を含む水溶液の中に、ゲルシート基材を所定時間、浸漬させて化粧用シートを形成してもよい。なお、ゲルシート基材は、ポリエーテルポリオールのポリエチレンオキサイド比率が高ければ、吸収性がより高くなり、容易に化粧成分水溶液を吸収することができる。
【0032】
本発明においては、ゲルシート基材を作製する際に、ポリエーテルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを混合した後、セパレータ等の上に塗工するが、この塗工液の粘度が重要である。すなわち、この塗工液の粘度が低すぎると弾かれてしまい、粘度が高すぎると塗工が困難になる。従って、ポリエーテルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを混合し、加熱して、ある程度まで重合させて適当な粘度の塗工液が得られるように調節しておくことが好ましい。塗工した基材層は、加熱によって硬化が完成されてゲルシート基材と成すことができるが、あるいは、室温で空気中の湿度によって硬化を完成することも可能である。
【0033】
本発明においては、化粧用シート作製に要する時間を短縮するために、ポリエーテルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを混合する際に、同時に化粧成分水溶液を添加し、重合させてゲルシート化することもできる。ただし、この場合には、イソシアネートと水が反応して発泡したり、化粧成分を含有する水溶液がウレタンのイソシアネート基と反応して効力を失うことがあるので、得策ではない。
【0034】
本発明においては、基材に支持体を貼りあわせてもよい。使用される支持体としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル等のフィルム、不織布、布等を使用することができる。
本発明の化粧用シートは基材自体が強度を有するので、支持体を使用しなくてもよい。また、支持体を積層する場合でも、支持体の厚みを薄くすることができる。例えば、支持体の厚みは、上記フィルムの場合には2〜30μmであることができ、不織布の場合には、坪量が5〜50g/m程度にすることができる。
【0035】
支持体と基材との貼り合わせタイミングは、ポリエーテルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを塗工する時でもよいし、これらを塗工して硬化させた後でもよい。ただし、塗工時に支持体を貼り合わせる場合には、支持体の背面への裏抜けが心配されるので、貼り合わせタイミングとしては、硬化させた後に貼り合わせることが好ましい。
【0036】
本発明において、化粧成分水溶液を吸収した基材を備えた化粧用シート全体の厚さ、すなわち、基材と必要に応じて支持体とを含む化粧用シート全体の厚みは、0.3mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。シートの厚みが0.3mm未満であると、取扱いにくくなり、一方、1.5mmより厚いと、皮膚へのフィット性が低下し、美的観点からも好ましくない。上記範囲内の厚みを有する化粧用シートは、皮膚面へフィット性に優れ、皮膚曲面に良好に追従することができる。
【0037】
本発明の化粧用シートは、薬剤成分をトラップしやすいポリアクリル酸系ゲルのような電解質イオンポリマーを用いずに、非イオンポリマーを用いて基材を形成することができた。したがって、薬剤成分をトラップすることがなく、スキンケア目的で広範囲の各種薬剤成分の中から自由に選択して使用することができ、選択範囲の拡大を図ることができる。また、本発明の化粧用シートは、基材自体が強度を有するため、支持体に強度を持たせる必要がなく、したがって、支持体の厚みを薄くすることができ、場合によっては支持体を不要とするものである。よって、皮膚へのフィット性の向上を期待できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、以下の実施例において、「%」とあるのは「重量%」を意味するものとする。また、実施例において使用された測定方法及び評価方法を下記に示す。
【0039】
《測定方法及び評価方法》
(1)引張りMax強度(単位:N/cm
厚みが約0.5mmの化粧用シートを、約30mm×約50mmの大きさに切断して試験用サンプルとした。万能試験機「Autograph AGS-100」を用い、サンプルを、チャック間距離20mm、引張り速度300mm/minで、サンプルが破断するまで引張った。破断したときの強度を読み取り、これを引張りMax強度とした。
【0040】
実施例において使用されるポリイソシアネートプレポリマーは以下のようにして合成した。

・ポリイソシアネートプレポリマーAの合成:
MDIを50部、及び、ポリオール(EO/PO=75/25、OH価=56、分子量=3,000)を50部配合し、80℃で攪拌しながら加熱してポリイソシアネートプレポリマーAを作製した。

・ポリイソシアネートプレポリマーBの合成:
TDIを5部、及び、ポリオール(EO/PO=70/30、OH価=7.5、分子量=15,000)を95部配合し、80℃で攪拌しながら加熱してポリイソシアネートプレポリマーBを作製した。
【0041】
(実施例1)
ポリイソシアネートプレポリマーAを5部、及び、ポリエーテルポリオールとしてポリオキシエチルポリオキシプロピル化グリセリン(EO/PO=50/50)を25部混合し、80℃で約2時間加温した後、室温に戻し、次いで、剥離処理されたポリエステルセパレータの剥離処理面上に、乾燥後の厚みが0.5mmとなるように塗工した。その後、室温下で1日放置し、硬化させて基材を作製した。なお、この基材は室温下で放置されている間に湿気を吸ってゲル化している。得られたゲルシート基材に、市販品の化粧水を、シート全量に対して60質量%に相当する量を秤量し、この化粧水をゲルシートに吸収させて化粧用シートを作製した。
得られた化粧用シートについて、引張りMax強度を測定したところ、引張りMax強度は、5.2N/cmであった。
【0042】
(実施例2)
ポリイソシアネートプレポリマーAを21部、ポリイソシアネートプレポリマーBを14部、及び、ポリエーテルポリオールとしてポリオキシエチルポリオキシプロピル化グリセリン(EO/PO=50/50)を65部混合し、80℃で約2時間加温した後、室温に戻し、次いで、剥離処理されたポリエステルセパレータの剥離処理面上に、乾燥後の厚みが0.5mmとなるように塗工した。その後、室温下で1日放置して、硬化させて基材を作製した。なお、この基材は室温下で放置されている間に湿気を吸ってゲル化している。得られたゲルシート基材に、化粧成分を含む水溶液(グリセリン30%、エタノール5%、クエン酸0.2%、L−メントール0.3%を含む水溶液)を、ゲルシート基材全量に対して60質量%に相当する量を秤量し、この水溶液をゲルシート基材に吸収させて化粧用シートを作製した。
得られた化粧用シートについて、引張りMax強度を測定したところ、引張りMax強度は、6.2N/cmであった。
【0043】
(比較例1)
ポリアクリル酸架橋体を2部、ポリアクリル酸ソーダ(中和率60%)5部、グリセリン30部、市販品の化粧水60部、及び、乾燥水酸化アルミニウム0.2部を配合し、セパレータ上にアプリケータを用いて塗工した。次いで、水分飛散が生じないように密封し、60℃で3日間、熟成を行って、化粧用シートを作製した。得られた化粧用シートについて、実施例1と同様の測定を行った。引張りMax強度は、0.93N/cmであった。
【0044】
(比較例2)
ポリアクリル酸架橋体を2部、ポリアクリル酸ソーダ(中和率60%)5部、グリセリン30部、化粧成分を含む水溶液(エタノール5%、クエン酸0.2%、L−メントール0.3%を含む水溶液)60部、及び、乾燥水酸化アルミニウム0.2部を配合し、セパレータの剥離処理面上にアプリケータを用いて塗工した。次いで、水分飛散が生じないように密封し、60℃で3日間、熟成を行って、化粧用シートを作製した。
得られた化粧用シートについて、実施例1と同様の測定を行ったところ、引張りMax強度は、1.2N/cmであった。
【0045】
上記結果から明らかなように、実施例1及び実施例2の化粧用シートは、引張り強度が大きく、強度的に優れたものであることが分かった。そのため、これらの化粧用シートに支持体を積層する場合には、上記基材自体が強度を有するため、支持体の厚みを薄くすることができた。よって、2μm厚のポリエステルフィルムにポリエステル不織布(坪量8g/m)を積層した積層体を支持体として用い、この支持体を実施例1及び実施例2の化粧用シートと貼り合わせた化粧用シートは、薄くて皮膚へのフィット性が良好であり、皮膚に与える冷感、しっとり感も良好で、しかも取扱い易いものであった。
一方、比較例1及び比較例は、強度に劣るものであることが分かった。したがって、化粧シートに十分な強度を付与するためには、支持体の厚みを厚くしなければならず、皮膚へのフィット性に問題が生じるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明の化粧用シートは、電解質ポリマーを使用していないので、ポリマーによるトラップの心配をしなくてもよい。したがって、種々の薬剤成分等を添加して化粧用シートとすることができ、保湿成分、冷涼感を与える成分、美白成分、栄養成分等を有する、皮膚ケアのための種々の用途に用いられるシートに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、水及び化粧成分(C)とから成ることを特徴とする化粧用シート。
【請求項2】
前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、100モル%以下であり、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1記載の化粧用シート。
【請求項3】
前記有機ポリイソシアネート(B)が、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートからなる群のうち少なくとも1つであるか、あるいは、ポリイソシアネートプレポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧用シート。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートプレポリマーが、ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート及び/又はメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とし、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、100モル%以下、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であるポリオールを重合させてなることを特徴とする請求項3記載の化粧用シート。
【請求項5】
前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、前記有機イソシアネート(B)とを、予め加熱処理した後、塗工し、水分を吸収させてゲル化させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の化粧用シート。
【請求項6】
さらに可塑剤を配合することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の化粧用シート。