説明

化粧用脂取り紙

【課題】皮脂拭き取り性に優れると共に、紙本来の風合い及び柔軟性を有し、肌へのフィット感、使用後の肌へ与える感触が良好であり、かつ皮脂を吸収した際のパンチ力が高い化粧用脂取り紙を提供する。
【解決手段】合成樹脂をパルプ化してなる比重1.0以下の合成パルプ50〜100質量%を含む抄紙原料を用いて得られた化粧用脂取り紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用脂取り紙に関する。さらに詳しくは、本発明は、皮脂拭き取り性に優れると共に、紙本来の風合い及び柔軟性を有し、肌へのフィット感が良好であり、かつ皮脂を吸収した際のパンチ力が高い、合成パルプを主体とする化粧用脂取り紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の身体では、顔面、特に鼻、顎、眉間等の周囲は、皮脂の分泌が盛んであって、脂っぽくなり易く、従って、その部分では化粧くずれを起こし易い。一般に、皮脂が浮き出たまま化粧すると化粧料が皮脂に良く馴染まないため、通常は、脂分を取り除いた後に化粧を行う。すなわち、化粧時又は化粧直し時に皮脂の浮き出した部分を化粧用脂取り紙で押さえ、化粧用脂取り紙に脂分を吸い取らせてから化粧を行っている。
この化粧用脂取り紙としては、従来、金箔の製造時に不要となった「ふるや紙」と呼ばれる箔打ち紙が、顔の脂取りに好適であることが知られており、化粧用脂取り紙として貴重視されてきているが、この箔打ち紙の場合、供給量に制限があるので、これに代わる製品の開発がなされ、種々の化粧用脂取り紙が使用されるようになってきた。
例えば、吸湿性を有する麻等の植物繊維からなる紙類が使用されている。しかるに、麻繊維からなる紙は、皮脂分の吸収力は大きいが、麻繊維が比較的硬いため使用時に皮膚を刺激することがある。そこで、この皮膚への刺激を減少するために、化粧用脂取り紙の製造時に強圧縮のロールプレスを行ったり、紙の表面に炭酸カルシウム粉末や他の無機粉末などの無機質顔料を塗布することなどが行われている。
【0003】
しかしながら、化粧用脂取り紙の製造時にロールプレスして、紙を構成する繊維を押し潰した場合、経時により繊維が起毛状態となり、これが皮膚へ刺激を与える。また、炭酸カルシウム粉末や他の無機粉末を塗布した化粧用脂取り紙の場合は、使用時の皮膚への刺激は少ないが、皮脂分の吸収能力が劣るものになってしまうという問題がある。これは無機質顔料を紙面に塗布する際に無機質顔料と接着剤とを混合して塗布するので、得られる塗工紙はその表面が皮脂分の吸収力が小さい顔料と接着剤とにより被覆されてしまい、化粧用脂取り紙の脂取り効果が減少するためである。
また化粧用脂取り紙においては、性能として皮脂拭き取り性、風合い、肌へのフィット感と共に、パンチ力も重要である。このパンチ力は、例えば吸脂前と吸脂後の紙の色差などより算出される値であり、パンチ力の数値が高ければ高いほど、吸脂時に透明度が向上することになり使用者の満足感が得られる。
パンチ力を高めた化粧用脂取り紙として、植物繊維パルプと無機填料との凝集により生じた模様が吸脂された皮脂によって消失する脂取り紙(例えば、特許文献1参照)、多孔質延伸フィルムを脂取り紙として使用することにより、吸脂するとフィルムが透明化する脂取り紙(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
しかしながら、これらの脂取り紙は、吸脂効果を目視により確認することができるものの、使用後の肌に与えるさっぱりした感触や清涼感を実感できるものではなかった。
【0004】
現在、市販されている脂取り紙は、天然系原料を湿式法にて抄紙したタイプのものが主流であるが、最近合成樹脂原料を乾式法にてフィルム化したタイプのものが上市されている。
天然系原料を湿式法にて抄紙したタイプの脂取り紙は、一般にパンチ力には優れているが、紙腰が硬くて柔軟性に劣り、顔面の屈曲部にフィットしにくいという問題がある。一方、合成樹脂原料を乾式法にてフィルム化したタイプの脂取り紙は、一般に紙本来のもつ風合いに欠け、またパンチ力も、天然系原料を湿式法にて抄紙したタイプのものより劣るという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−298030号公報
【特許文献2】特開平11−239517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、皮脂拭き取り性に優れると共に、紙本来の風合い及び柔軟性を有し、肌へのフィット感、使用後の肌へ与える感触が良好であり、かつ皮脂を吸収した際のパンチ力が高い化粧用脂取り紙を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の優れた性能を有する化粧用脂取り紙を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、合成樹脂をパルプ化してなる比重がある値以下の合成パルプを所定の割合で含む抄紙原料を用いた脂取り紙が、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)合成樹脂をパルプ化してなる比重1.0以下の合成パルプ50〜100質量%を含む抄紙原料を用いて得られたことを特徴とする化粧用脂取り紙、
(2)坪量が10〜40g/m2である上記(1)項に記載の化粧用脂取り紙、
(3)合成パルプが、ポリオレフィン系樹脂をパルプ化してなる比重0.90〜 0.96のものである上記(1)又は(2)項に記載の化粧用脂取り紙、
(4)抄紙原料が、合成繊維を50質量%以下の割合で含む上記(1)、(2)又は(3)項に記載の化粧用脂取り紙、
(5)キャレンダー処理又はスーパーキャレンダー処理を施してなる上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の化粧用脂取り紙、及び
(6)着色を施してなる上記(1)〜(5)項のいずれかに記載の化粧用脂取り紙、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮脂拭き取り性に優れると共に、紙本来の風合い及び柔軟性を有し、肌へのフィット感、使用後の肌へ与える感触が良好であり、かつ皮脂を吸収した際のパンチ力が高い化粧用脂取り紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の化粧用脂取り紙においては、抄紙原料として、合成樹脂をパルプ化してなる比重1.0以下の合成パルプを主体とするものが用いられる。
前記合成パルプは、合成樹脂を従来公知の種々の方法でパルプ化してなる比重1.0以下のものであるが、好ましくはポリオレフィン系樹脂をパルプ化してなる比重0.90〜0.96のポリオレフィン合成パルプである。ここで、ポリオレフィン合成パルプとしては、ポリエチレン合成パルプ、ポリプロピレン合成パルプなどを挙げることができるが、市場への供給性、均質性あるいは入手価格等からポリエチレン合成パルプが最も適している。例えば、現在、一般に市販されていて、容易に入手することができる典型的なものとしては、ポリエチレン合成パルプ‘‘SWP’’(三井化学(株)製)が挙げられる。
本発明においては、前記合成パルプは、抄紙原料中に50〜100質量%の割合で含有していることを要す。この合成パルプを、抄紙原料中に50質量%以上含有していれば、所望の性状を有する化粧用脂取り紙が得られやすい。該合成パルプの好ましい含有量は70〜90質量%の範囲である。
【0010】
当該抄紙原料には、前記合成パルプと共に、木材パルプ、非木材系植物繊維、合成繊維などの中から選ばれる少なくとも1種を50質量%以下、好ましくは10〜30質量%の割合で含まれていてもよい。
ここで、木材パルプとしては、例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)等が挙げられる。
また、非木材系植物繊維としては、例えばマニラ麻をはじめとして、亜麻、大麻、黄麻、楮、みつまたあるいは雁皮からなる靭皮繊維、コットン、コットンリンター等の木綿、その他、藁、竹、エスパルト、バガス、ケナフ等が使用できる。これらの植物繊維は、公知の各種パルプ化法、例えばクラフト法、ソーダ法、亜硫酸法などのケミカルパルプ化法、その他のパルプ化法によってパルプ繊維として取り出されて用いられる。
【0011】
一方、合成繊維としては、化学繊維紙の製造に一般的に供されているもの、すなわち、合成繊維の原料樹脂を湿式、乾式、溶融などのいずれかの方法で紡糸されたものを適宜長さの短繊維に切断したものを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル、ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の繊維、あるいはシェルがポリエチレンで、コアがポリプロピレンの芯鞘構造を有する複合繊維、エチレン・酢酸ビニル共重合繊維などが挙げられる。
これらの合成繊維は、水中での分散性をよくするために、予め疎水性の繊維表面を親水加工したもの、あるいは植物繊維のように枝状化(フィブリル化)加工したものを用いることができる。これらのなかで、例えば、ポリプロピレン繊維は、プロピレンをチーグラー型触媒で重合して得られるアイソタクチックポリマーから溶融紡糸された繊維を所望の長さに切断したものである。このようにして得られるポリプロピレン繊維は、比重が0.9〜0.92、融点164〜170℃であって、その軟化点は約150℃である。
これらの合成繊維の繊維長は、通常、0.5〜30mmで、一般的には3〜6mm程度のものが最も多く用いられる。また、繊度は、通常0.5〜6dTex、好ましくは1.5〜3dTexである。
【0012】
本発明においては、前記の木材パルプ、非木材系植物繊維及び合成繊維の中で、特に合成繊維が、前記合成パルプとの併用に好適である。該合成繊維としては、特にポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレンの複合繊維が好ましい。
本発明の化粧用脂取り紙の製造方法に特に制限はないが、例えば以下に示す方法を用いることができる。
まず、合成パルプ50〜100質量%と、木材パルプ、非木材系植物繊維及び合成繊維の中から選ばれる少なくとも1種、好ましくは合成繊維50〜0質量%を含む抄紙原料を水に分散させる。水に分散させるに当っては、合成パルプや合成繊維は水のぬれの問題があるので、適宜ぬれ調節剤を用いて分散すると効果的である。ここで、ぬれ調節剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
次いで、水に分散された抄紙原料は、ビーターあるいはリファイナー等を用い目的とする抄紙に適した状態に、水で膨潤(ハイドレーション)させ、柔軟性のあるち密な紙を得るために、枝状化(フィブリル化)及び切断(ショートニング)するように叩解処理される。
【0013】
このようにして叩解処理された抄紙原料には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、無機質填料を始め、各種の添加成分を配合して紙料を調成する。
ここで、無機質填料としては、化粧用脂取り紙の吸脂性を高めるのに効果的な吸油性に優れたものを用いることができる。例えば、天然填料として、安価で耐薬品性や平滑性を付与するのに効果的なクレー、タルク、カオリン等を用いることができる。また、人工填料としては、高白色度、不透明性を付与するのに効果的な炭酸カルシウム、酸化チタン、ホワイトカーボン等を用いることができる。
これらの無機質填料は、繊維と繊維との間隙に詰まって紙に不透明性を付与し、また、紙の密度を高くし紙面を平滑にする。その結果、皮脂の吸収性が向上し、紙質を柔軟にする効果も有する。
これらの無機質填料の形状については特に制限はなく、粒状、紡錘状、板状、無定形など種々のものが使用でき、また、粒径については、光沢度や紙の柔軟性、紙面の平滑性などに関係してくるので、通常、平均粒径3μm以下のものが好ましく用いられる。そして、着色する必要がある場合には、例えば、ベンガラ、群青、各種酸化鉄などを適宜その適量を使用しても差し支えなく、粒径はより微細なものが好適である。
この無機質填料は、抄紙原料100質量部に対し、通常5〜50質量部の割合で配合される。該無機質填料の配合量が上記範囲にあれば、抄紙性が損なわれることなく、皮脂吸収性が向上する。好ましい配合量は、10〜30質量部の範囲で選定される。
【0014】
本発明の化粧用脂取り紙においては、パンチ力の増加のためには、抄紙原料に着色剤を添加することにより着色を施すのが好ましい。着色剤としては、例えば染料便覧(有機合成化学協会発行)やカラーインデックスに記載されている公知の各種染料(塩基性染料、酸性染料、直接染料)や顔料が挙げられる。
その他の各種添加成分としては、例えば紙力増強剤、紫外線吸収剤、清涼剤、薬用成分などを挙げることができる。
ここで、紙力増強剤としては、アクリルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックスなどが、また湿潤紙力増強剤として、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂などが例示される。紫外線吸収剤は、耐光性を向上させるためのものであり、清涼剤は、使用後の肌に爽快感を付与するためのものであって、例えばメントール、メンチルグリセリルエーテルなどのメントール誘導体、カンフルなどが用いられる。薬用成分としては、例えば抗菌・殺菌剤、抗炎症剤、収斂剤などが挙げられる。
【0015】
前記のようにして調成された紙料は、通常の抄紙方法によって抄紙し、乾燥する。本発明の化料用脂取り紙は、通常坪量が10〜40g/m2、好ましくは15〜30g/m2になるように抄紙される。また、緊度(JIS P−8118に準拠)を、通常0.6g/cm3以上、好ましくは0.7g/cm3以上とすることにより、皮脂の吸収性に優れたものを得ることができる。ここで緊度を高める方法としては種々の方法があり、例えば抄紙時にキャレンダー処理を施す方法、あるいは後処理としてスーパーキャレンダー処理を施す方法などがある。前記抄紙は、通常ヤンキー式抄紙機、長網式抄紙機などを用いて行われる。
本発明の化粧用脂取り紙は、合成パルプを主体とする抄紙原料を用いているので、柔軟性であって、より親油性のあるものを得ることができる。また、熱処理することによって、薄くても強度のすぐれたものとなる。この熱処理は、通常、処理温度110〜150℃程度に設定された熱加工機で行われ、熱加工機としては、加熱ロールと加圧ロールを備えたものであれば、いかなる形態のものでも適用することができる。そして、この熱処理は、乾燥と同時であってもよいし、あるいは、上記のように一旦抄紙、乾燥してから、巻取り紙を熱処理するなどいずれであってもよい。
【0016】
本発明の化粧用脂取り紙には、インジケーター機能を付与するために、所望により、少なくとも一方の面、好ましくは一方の面に、透明化剤及び耐油剤を各々異なった印刷模様に塗布することができる。本発明において使用できる透明化剤としては、透明化剤を塗布した印刷部が化粧用脂取り紙が皮脂を吸収することにより透明となった非印刷部と同色となるものが好ましく、例えば、石油系炭化水素樹脂又は該石油系炭化水素樹脂にパラフィンワックス、イソパラフィン等の飽和炭化水素、菜種油、大豆油、牛脂硬化脂肪酸の動植物油脂、ステアリン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の飽和若しくは不飽和脂肪酸の1種又は2種以上を配合したものを挙げることが出来る。ここで石油系炭化水素樹脂とは、脂環族飽和炭化水素、芳香族不飽和炭化水素から得られる樹脂及びその他アミノ基、水酸基、ビニル基、ニトロ基、カルボニル基等の各種置換基を有する樹脂を意味する。
【0017】
また、一般的な透明化剤として知られる、セルロースの屈折率にほぼ等しい屈折率を有する物質、例えば、流動パラフィン、ポリブテン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン無水マレイン酸共重合体、ポリスチロール樹脂などの熱硬化性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和アルキド樹脂、変性アクリル樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ウレタン樹脂などに、それぞれ適切なビニルモノマーと光増感性物質とを含ませた紫外線硬化型樹脂、オレフィン重合油を主成分とするもの等を例示することができる。これらの透明化剤の内では、特に、石油系炭化水素樹脂又は該石油系炭化水素樹脂に飽和炭化水素、動植物油脂、飽和若しくは不飽和脂肪酸の1種又は2種以上を配合したものが好ましく使用できる。上記透明化剤は、適当な溶媒で希釈した塗液の形で脂取り紙の上に塗布することができ、その塗液中における濃度は1〜30質量%が一般的である。溶媒としては、トルエン、水、イソプロピルアルコール等のアルコール類を挙げることができるが、これらに限らず、透明化剤の種類に応じた適当な溶剤を選択して使用することができる。
【0018】
本発明において使用できる耐油剤としては、例えば、過フッ化炭化水素エステルなどのフルオロカーボン系化合物、ポリビニルアルコール変性物、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等を使用することができるが、特に、過フッ化炭化水素エステルが好ましく使用できる。上記耐油剤は、例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類、水等あるいはこれらの混合液等の溶媒で希釈した塗液の形で脂取り紙の上に塗布することができ、その塗液中における濃度は1〜30質量%が一般的である。上記透明化剤を含有する塗液及び耐油剤を含有する塗液には、更に付加機能を与えることを目的として、その一方又は両方に、ジャスミン、ミント、ローズマリー等の芳香剤、お茶の抽出物であるカテキン等の消臭剤、酸化チタン等の抗菌剤などを適宜添加することができる。
【0019】
このような透明化剤及び耐油剤は、紙の表面の少なくとも一部分に塗布されれば充分であり、その塗布面積は脂取り紙の皮脂吸収性を阻害しない範囲でこれらのバランスの面から適宜決定することができ、例えば、合計で、脂取り紙全体の面積の10%以下が適当である。透明化剤及び耐油剤は部分的に同じ場所に重複して塗布することもできるが、全てを同じ場所に塗布することはインジケーター機能を付与するという目的からは無意味であり、異なった印刷模様にして、重複部分はできるだけ少なくなるように塗布するのが好ましい。また、透明化剤及び耐油剤は同じ面に塗布しても、異なった面に塗布しても良い。本発明の化粧用脂取り紙の塗布部分における透明化剤及び耐油剤の塗布量としては、合計で10g/m2以下であることが好ましい。塗布量が10g/m2より多い場合は脂取り紙そのものの本来の皮脂吸収性を阻害する場合がある。この点から、透明化剤及び耐油剤の塗布量としては、各々5g/m2以下であることが更に好ましい。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷等従来周知の印刷方法及びロールコータ等による塗工法のいずれをも使用できる。透明化剤を含有する塗液を塗布した後、及び耐油剤を含有する塗液を塗布した後は、各々、乾燥を行い塗布を完了する。
このようにして得られた本発明の化粧用脂取り紙は、皮脂拭き取り性に優れると共に、紙本来の風合い及び柔軟性を有し、肌へのフィット感、使用後の肌へ与える感触が良好であり、かつ皮脂を吸収した際のパンチ力が高いなどの特徴を有している。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた化粧用脂取り紙について、柔軟性、皮脂吸収性(パンチ力)及び風合いを以下に示す方法に従って評価した。
【0021】
(1)柔軟性
風合いメーター(上野山機工社製「ハンドルオメーター」)を用い、JIS L−1096 E法に準拠し、スリット幅5mmにおいて、試料の表及び裏の縦及び横の計4回測定し、測定数値(g)の合計値として算出した数値で示す。数値が小さいほど、柔軟性に優れている。
【0022】
(2)皮脂吸収性(パンチ力):東海パルプ法
印刷適正試験機=RIテスター(明製作所社製「RI−2」)を用い、ヒマシ油80%とベンジルアルコール20%とを混合した油液0.5mLを印刷ロール上に均一に塗布して油膜を形成し、この油膜を、転写回転速度30rpm、ニップ圧330〜350μm(一定に保つ)、23℃の条件下、試験サンプルに転写し、測定サンプル5枚を作成する。
分光白色光度計(東京電色社製「EPR−80WX」)を用い、油膜転写前の試験サンプルと油膜転写後の測定サンプルとについて、各々、5枚重ねて裏当てを白色板又は黒色板とした時の色彩値を測定して色差を求め、得られた数値を基に次の計算式によりパンチ力を算出し、皮脂吸収性として示す。
【0023】
【数1】

【0024】
数値が大きいほど、皮脂吸収性に優れている。
【0025】
(3)風合い
紙に近い風合いであるか否かを評価する。
○:紙に近い風合い
×:紙よりむしろゴムのようなフィルム様の風合い
【0026】
また、抄紙原料として、下記のものを用いた。
・SWP E−620:商品名、三井化学社製、高密度ポリエチレン合成パルプ、比重0.96
・SWP UL−410:商品名、三井化学社製、低密度ポリエチレン合成パルプ、比重0.93
・NBF(E):商品名、大和紡績社製、ポリオレフィン系合成繊維、長さ3〜5mm、繊度2.2dTex
・NBF(H):商品名、大和紡績社製、ポリオレフィン系合成繊維、長さ3〜5mm、繊度2.2dTex
【0027】
実施例1〜18
第1表に示す割合の合成パルプと合成繊維を含む抄紙原料100質量部及びタルク20質量部を、場合によって更に着色料と共に、水に混合分散し、叩解処理して紙料を調成した。次いで、この紙料をヤンキー式抄紙機で抄紙し、場合により後処理としてスーパーキャレンダー処理を施し、本発明の化粧用脂取り紙を作製した。この化粧用脂取り紙の坪量、緊度及び性能の評価結果を第1表に示す。
【0028】
比較例1
天然原料であるマニラ麻(CSF400ml)100質量部をビーターにて所定の叩解度に調成し、マイクロタルク(LMR100、富士タルク社製)20質量部及び着色料と混合して均一分散した。その後、ヤンキー抄紙機で抄造し、更にスーパーキャレンダー処理を施して、坪量20g/m2、緊度0.84gの化粧用脂取り紙を作製した。
このようにして得られた化粧用脂取り紙の坪量及び性能の評価結果を第1表に示す。
【0029】
比較例2
天然原料であるマニラ麻(CSF400ml)100質量部をビーターにて所定の叩解度に調成し、マイクロタルク(LMR100、富士タルク社製)20質量部及び着色料と混合して均一分散した。その後、ヤンキー抄紙機で抄造し、坪量20g/m2、緊度0.63gの化粧用脂取り紙を作製した。
抄紙原料として、天然原料を用い、以下に示す湿式法により、化粧用脂取り紙を作製した。
このようにして得られた化粧用脂取り紙の坪量、緊度及び性能の評価結果を第1表に示す。
【0030】
比較例3
市販のフィルムタイプの化粧用脂取り紙(住友3M社製、坪量:25g/m2)について、性能を評価した。その結果を第1表に示す。
この化粧用脂取り紙は、柔軟性及びパンチ力については、実施例5のものに匹敵するが、紙本来のもつ風合いに欠けていた。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例1〜18の化粧用脂取り紙は、紙本来のもつ風合いを有すると共に、柔軟性に優れ、パンチ力も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の化粧用脂取り紙は、皮脂拭き取り性に優れると共に、紙本来の風合い及び柔軟性を有し、肌へのフィット感、使用後の肌へ与える感触が良好であり、かつ皮脂を吸収した際のパンチ力が高く、化粧時又は化粧直し時に、皮脂の浮き出しを除去するのに、好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂をパルプ化してなる比重1.0以下の合成パルプ50〜100質量%を含む抄紙原料を用いて得られたことを特徴とする化粧用脂取り紙。
【請求項2】
坪量が10〜40g/m2である請求項1に記載の化粧用脂取り紙。
【請求項3】
合成パルプが、ポリオレフィン系樹脂をパルプ化してなる比重0.90〜0.96のものである請求項1又は2に記載の化粧用脂取り紙。
【請求項4】
抄紙原料が、合成繊維を50質量%以下の割合で含む請求項1、2又は3に記載の化粧用脂取り紙。
【請求項5】
キャレンダー処理又はスーパーキャレンダー処理を施してなる請求項1〜4のいずれかに記載の化粧用脂取り紙。
【請求項6】
着色を施してなる請求項1〜5のいずれかに記載の化粧用脂取り紙。


【公開番号】特開2006−167030(P2006−167030A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361540(P2004−361540)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(390028406)東海パルプ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】