説明

化粧鋼板

【課題】印刷を施すことなく見栄えの良い化粧鋼板を提供する。
【解決手段】透光性を有する最表層の表面フィルム4の表面に凹凸部5が形成される。凹凸部5の表面に凹凸部5よりも凹凸の小さいシボ10が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼板の表側に表面フィルムがラミネートされた化粧鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からユニットバスルームの壁パネル等に化粧鋼板が利用されている。
【0003】
図3に示される従来の化粧鋼板1は、鋼板2の表面に化粧フィルム層15がラミネートされている。化粧フィルム層15は二重フィルムからなり、印刷が施された印刷フィルム16と、ラミネートされる表面平滑で透明な表面フィルム4とで構成され、両者は透明な接着剤層17を介して接着されている。
【0004】
ところで、前記化粧鋼板1は、透明の表面フィルム4を透して印刷フィルム16に印刷された柄模様が視認されるが、表面フィルム4は外観上の演出効果を高める機能を担っておらず、化粧鋼板1の外観は単調なものになりやすい。
【0005】
また、特許文献1の壁パネルは、鋼板等で構成される基材と、基材の表面に形成された加飾層と、加飾層の表面に形成された凹凸層と、凹凸層の表面を覆う表面層とで構成され、前記凹凸層の表面には凹部と突部が形成されている。
【0006】
この特許文献1の壁パネルは、表面層に侵入した光を凹部及び突部が形成された凹凸層の表面で乱反射させることで、幻想的な演出効果を得られるようになっている。
【0007】
しかし、特許文献1の壁パネルも、最表面を構成する表面層が外観上の演出効果を高める機能を有していない。また、壁パネルの最表面となる表面層の表面が平滑であるため、外観も依然として平面的である。加えて、表面層に侵入した光を凹凸層の表面で乱反射させて演出を行っているものの、その外観は依然として変化に乏しい。
【0008】
また、前記特許文献1の壁パネル及び図3に示される化粧鋼板1は、主に加飾層又は印刷フィルム16に頼って化粧が表現されているため、見栄えを良くするには、前記加飾層又は印刷フィルム16に印刷を施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−120055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、印刷を施すことなく見栄えの良い化粧鋼板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明の化粧鋼板は、透光性を有する最表層の表面フィルムの表面に凹凸部が形成されると共にこの凹凸部の表面に前記凹凸部よりも凹凸の小さいシボが形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、鋼板の表面に前記表面フィルムが中間フィルムを介してラミネートされた化粧鋼板であって、前記中間フィルムがメタリックフィルムからなることが好ましい。
【0013】
また、前記表面フィルムと鋼板の間に介在する透光性を有する接着剤層に顔料が添加されることが好ましい。
【0014】
また、前記顔料がパール顔料であることが好ましい。
【0015】
また、前記表面フィルムがPETフィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、印刷を施すことなく見栄えの良い化粧鋼板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施形態の化粧鋼板の断面図である。
【図2】第二実施形態の化粧鋼板の断面図である。
【図3】従来の化粧鋼板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
(第一実施形態)
図1に示される第一実施形態の化粧鋼板1は、ユニットバスルームの壁をなす壁パネルとして用いられる。
【0020】
化粧鋼板1は、鋼板2と、鋼板2の表面に直接ラミネートされたフィルム層3で構成されている。
【0021】
鋼板2は、平滑な表面全域に塗装されたカラー鋼板からなり、鋼板2の表面は前記塗装の際に塗布された塗料からなる塗料層8で構成されている。
【0022】
フィルム層3は厚さ200μm以下の層であって、化粧鋼板1の透光性を有する最表層の表面フィルム4で構成されている。ここで、前記「透光性」及び以下で用いる「透光性」とは透明又は半透明であることを意味する。表面フィルム4は接着剤を用いて塗料層8の平滑な表面全域にラミネートされている。図中9は前記接着剤からなる透光性を有する接着剤層である。
【0023】
表面フィルム4は、ポリエステル系樹脂、詳しくはPET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム)からなる。表面フィルム4の表面には凹凸部5が形成されている。凹凸部5は、表面フィルム4の表面に凹凸加工を施すことにより、化粧鋼板1の裏面側に凹む凹部6と、化粧鋼板1の表面側に突出する凸部7を交互に多数連続的に形成してなる。前記凹凸部5としては、断面形状が四角形状や三角形状等、形状の異なる凹部6及び凸部7が形成され、すなわち、表面フィルム4の表面には不規則な凹凸部5が形成されている。
【0024】
凹凸部5は、平均表面粗さを示すRa値が20μm以下とされ、最大表面粗さを示すRt値が50μm以上とされる。具体的にはRa値が20μmであり、Rt値が50μmである。
【0025】
凹凸部5の表面全域には凹凸部5よりも凹凸の小さい多数の微小凹凸からなるシボ10が形成されている。シボ10は、Ra値が5μm以下とされ、Rt値が40μm以下とされる。具体的には、Ra値が3μmであり、Rt値が30μmである。また、前記接着剤層9をなす透明な接着剤には顔料としてパール顔料が配合され、接着剤層9は入射光に対して多重反射を示す層となっている。
【0026】
以上説明した本実施形態の化粧鋼板1は、最表層を構成する表面フィルム4の表面に凹凸部5が形成されると共に凹凸部5の表面に凹凸部5よりも凹凸の小さいシボ10が形成されている。このため、化粧鋼板1の表面側から表面フィルム4及び接着剤層9を透過して鋼板2表面で反射した光は、表面フィルム4のシボ10が形成された凹凸部5から様々な方向に不規則に出射される。これにより化粧鋼板1を表面側から見た場合には、異なる周波数の光が多く到達する箇所では鋼板表面が白味を帯びて見えると共に異なる周波数の光が到達しにくい箇所では鋼板表面が黒味を帯びて見える。このため印刷を施さなくても、あたかも化粧鋼板1の表面に柄模様を施したように見える。また、化粧鋼板1の表面側から表面フィルム4に達した光の一部はシボ10が形成された凹凸部5で様々な方向に乱反射する。さらに、化粧鋼板1の最表層を構成する表面フィルム4の表面にシボ10が形成された凹凸部5が形成されるので、化粧鋼板1は立体感のある外観となる。従って、本実施形態では、表面にシボ10が形成された凹凸部5を有する表面フィルム4を鋼板2に貼り付けるだけで、化粧鋼板1に印刷を施すことなく、変化に富む外観の優れた化粧鋼板1を製造できる。
【0027】
また、本実施形態の化粧鋼板1は、鋼板2と表面フィルム4の間に設けられた接着剤層9に顔料が添加され、この顔料も前記同様表面側から視認した場合にあたかも色調が変化するように見える。しかも、この顔料はパール顔料であるため、光沢感のある外観になる。従って、化粧鋼板1の外観はさらに向上する。
【0028】
また、本実施形態の化粧鋼板1は、表面フィルム4がポリエステル系フィルム、特にPETフィルムである。このため表面が耐薬品性に優れ、浴室の壁パネル等に好適に用いることができる。
【0029】
また、フィルム層3の厚さを200μm以下にすることで、後工程で化粧鋼板1を折り曲げてもフィルム層3の剥離が生じ難い。
【0030】
(第二実施形態)
次に上記第一実施形態とは異なる第二実施形態について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0031】
図2に示される第二実施形態の化粧鋼板1は、表面フィルム4が鋼板2の表面に中間フィルム12を介してラミネートされている。すなわち、フィルム層3は、中間フィルム12と表面フィルム4の二重フィルムで構成されている。なお、フィルム層3の総膜厚は第一実施形態のフィルム層3と同様に200μm以下とされている。
【0032】
表面フィルム4は接着剤を用いて中間フィルム12の表面にラミネートされ、中間フィルム12は図示しない接着剤を介して鋼板2の表面にラミネートされる。また、前記表面フィルム4を中間フィルム12の表面にラミネートするのに用いられる接着剤は、第一実施形態と同様の接着剤層9を構成し、すなわち本実施形態の接着剤層9も透光性を有し、パール顔料が配合されている。なお、図2では中間フィルム12を鋼板2の表面に接着するための接着剤からなる接着剤層の図示を省略している。
【0033】
中間フィルム12は透光性を有し、例えばPET樹脂等のポリエステル系フィルムからなり、その表面全域には塗料が塗布されて化粧層13が形成されている。
【0034】
中間フィルム12は、添加材としてアルミ粉を含むメタリックフィルムからなり、金属的な光沢のある外観を有する。なお、中間フィルム12はアルミ以外のその他の金属系材料を含むメタリックフィルムであってもよく、また、添加材としては粉状のものに限られず、例えば鱗片状であってもよい。また、本実施形態の鋼板2には表面に塗装が施されていない。
【0035】
本実施形態でも最表層を構成する表面フィルム4の表面に凹凸部5が形成されると共に凹凸部5の表面に凹凸部5よりも凹凸の小さいシボ10が形成されている。このため、化粧層13や接着剤層9、鋼板2等で反射した光は、表面フィルム4のシボ10が形成された凹凸部5で様々な方向に不規則に出射する。従って、本実施形態でも印刷を施すことなく、変化に富んだ外観の良い化粧鋼板1を製造できる。
【0036】
また、本実施形態では、中間フィルム12がメタリックフィルムからなるので、中間フィルム12で光を反射し、これを表面フィルム4のシボ10が形成された凹凸部5で様々な方向に不規則に出射することができ、さらに外観を向上できる。
【0037】
なお、前記各実施形態では表面フィルム4に不規則な凹凸部5を形成したが、凹凸部5は同形状の凹部6と凸部7が形成される規則的なものであってもよい。
【0038】
また、表面フィルム4は透光性を有するものであればよく、半透明なものであってもよい。また、前記接着剤層9をなす接着剤にはパール顔料以外の顔料を添加してもよいし、顔料を添加しなくてもよい。
【0039】
また、表面フィルム4はPET樹脂からなるが、その他のポリエステル系樹脂であってもよく、さらにはアクリル系樹脂からなるアクリル系フィルムであってもよい。
【0040】
また、第一実施形態の鋼板2はカラー鋼板からなるが、表面に塗装が施されていない鋼板であってもよい。また、第二実施形態の鋼板2も表面に塗装が施されたカラー鋼板であってもよく、また化粧層13を省略してもよい。
【0041】
また、本発明は例えば他の水廻り商品で用いられる化粧鋼板等に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0042】
1 化粧鋼板
2 鋼板
4 表面フィルム
5 凹凸部
10 シボ
12 中間フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する最表層の表面フィルムの表面に凹凸部が形成されると共にこの凹凸部の表面に前記凹凸部よりも凹凸の小さいシボが形成されたことを特徴とする化粧鋼板。
【請求項2】
鋼板の表面に前記表面フィルムが中間フィルムを介してラミネートされた化粧鋼板であって、前記中間フィルムがメタリックフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項3】
前記表面フィルムと鋼板の間に介在する透光性を有する接着剤層に顔料が添加されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧鋼板。
【請求項4】
前記顔料がパール顔料であることを特徴とする請求項3に記載の化粧鋼板。
【請求項5】
前記表面フィルムがPETフィルムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化粧鋼板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106415(P2012−106415A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257126(P2010−257126)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】