説明

化粧面の形成方法、及びその方法によって形成された化粧面

【課題】 壁面に有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を形成する方法であって、薄い厚みで均一な化粧面が得ることができる化粧面の形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材に、粒子径37〜4000μmの有色骨材が合成樹脂を含むシート中に分散された化粧シートを、粒子径37〜4000μmの有色骨材と合成樹脂とを含有する接着剤を介して貼り付けることによって、化粧シートと接着剤層とによって、基材の表面に化粧面が形成される。また、前記基材として、無機質窯業系建材、セメント系押出成形板、ALC板等の壁用建材を用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁、内壁、天井、床面等の表面に、有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を形成する方法に関するものである。また、その方法によって形成された化粧面に関する。なお、前記形成方法及び化粧面は、建築物だけでなく、土木構造物等の任意の下地にも応用できる。
【0002】
本明細書においては、「壁面」とは、建物の外壁、内壁、カーテンウオール等の壁の表面に限定されず、天井、床面、土木構造物等の任意の基材の表面を含む。
【0003】
本明細書においては、「有色骨材」とは、無色透明な骨材以外の色を持った骨材のことである。また、「有色」とは、無色透明以外の色をいう。
【背景技術】
【0004】
従来、建築物の壁面等の表面に有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を形成する方法としては、例えば、特許文献1に示されるような骨材着色型塗材を塗装する方法があった。
【0005】
また、特許文献2に示されるように、建築物の壁面に、天然石,着色骨材と合成樹脂等による成形物から成る化粧部、不織布,ガラスクロスなどからなる基材部等を有する表装材を貼り付ける方法があった。
【0006】
また、特許文献3に示されるような表面化粧建材を製造して、その表面化粧建材を壁面に取り付ける方法があった。この表面化粧建材とは、状壁面構成要素からなる基材とベース層上に陶磁器砕粒,予め着色された細骨材等を合成樹脂中に均一ないし斑点模様,縞模様,流れ模様に分散した化粧材層とを接着剤層によって積層したものであった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−176004号公報
【特許文献2】特開平8−260652号公報
【特許文献3】特開平7−292926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に示されるような表装材を壁に貼り付けて仕上げ面とした場合、その仕上げ面は、壁面上に表面側から順に、化粧材部、基材部、接着剤が積層されたものとなるため、薄い厚みの仕上げ面を得ることは困難であった。また、厚みが厚いことで、仕上げ面の単位面積当たりの質量が大きくなり、壁面に負担がかかるものであった。なお、壁面にかかる負担とは、単位面積当たりの壁面にかかる仕上げ面の質量のことである。
【0009】
特許文献3に示される表面化粧建材板の仕上げ面も、基材の表面に表面側から順に、化粧材層、ベース層、接着剤層が積層されたものであって、上記表装材と同様に、薄い厚みの仕上げ面を得難く、基材に負担がかかるものであった。
【0010】
また、上記表装材における化粧材部、及び表面化粧建材板における化粧材層は、天然石、着色骨材等の色調を生かした仕上げにするためには、バインダーとなる合成樹脂は乾燥後に透明、もしくは天然石,着色骨材等が透けて見える程度の透明度になるものであることが好ましかった。しかし、このような合成樹脂を用いた化粧材部や化粧材層は、隠蔽力に乏しいものとなり易く、化粧材部や化粧材層の下地となる基材部やベース層を十分に隠蔽するためには、化粧材部や化粧材層の厚みを厚くする必要があったため、薄い厚みの仕上げ面を得難く、基材に負担がかかるものであった。
【0011】
一方、特許文献1に示される骨材着色型塗材を塗装する方法による仕上げ面は、特許文献2,3に記載された仕上げ面とは違い、基材部(特許文献3においてはベース層)、接着剤(特許文献3においては接着剤層)が必要ない。そのため、骨材着色型塗材を塗装する方法を用いれば、薄い厚みの仕上げによって、有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を得ることができた。
しかし、骨材着色型塗材を塗装する方法では、建築物を塗装する際には、施工方法、塗装厚み、塗材の粘度・粘性等の少しの違いによって、化粧面の表面の形状等に違いが生じてしまい、安定して均一な化粧面を容易に得ることができなかった。また、骨材着色型塗材を塗装する方法では、化粧面の仕上がりは、塗装によって形成可能なものに限られてしまい、多彩な化粧面を形成することは困難であった。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、壁面に有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を形成する方法であって、薄い厚みで均一な化粧面が得ることができる化粧面の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決する手段として、請求項1に記載の発明は、基材に、粒子径37〜4000μmの有色骨材が合成樹脂を含むシート中に分散された化粧シートを、粒子径37〜4000μmの有色骨材と合成樹脂とを含有する接着剤を介して貼り付けることを特徴とする化粧面の形成方法である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化粧面の形成方法において、前記基材が、壁用建材であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の化粧面の形成方法によって形成された化粧面である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の化粧面の形成方法によれば、有色骨材と合成樹脂を主成分とし、薄い厚みで均一な化粧面を得ることができる。
【0017】
請求項2に化粧面の形成方法によれば、請求項1の効果に加え、有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を有する表面化粧建材を得ることができる。
【0018】
請求項3に記載の化粧面は、有色骨材と合成樹脂を主成分として、均一に仕上った化粧面を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の化粧面の形成方法は、粒子径37〜4000μmの有色骨材が合成樹脂を含むシート中に分散された化粧シートを、粒子径37〜4000μmの有色骨材と合成樹脂とを含有する接着剤を介して貼り付けることを特徴とする。なお、本明細書における粒子径は、レーザ回析・散乱法によって測定するものとする。ただし、粒子径が大きいためにレーザ回析・散乱法で測定できない粒子(レーザ回析・散乱法による測定で粒子径3000μmを超える粒子)の粒子径については、ふるい分け試験によって測定する。
【0020】
前記化粧シートを前記接着剤で貼り付けた後、接着剤が乾燥、硬化して硬化塗膜(以下、接着剤層ともいう)となり、化粧シートと接着剤層とによって、基材の表面に化粧面が形成される。
【0021】
前記化粧面の形成方法によれば、有色骨材と合成樹脂を主成分とする化粧面を薄い厚みで形成することができる。それによって、化粧面の単位面積あたりの質量を小さくすることができるため、壁面かかる負担が少ない。
【0022】
以下に、前記形成方法に用いられる基材、化粧シート、及び接着剤について説明する。
【0023】
(基材)
前記基材は、壁面を形成するものであれば特に限定はされず、例えば、コンクリート、ALC板、セメント系押出成形板、各種サイディングボード等の各種材料によって形成された壁面が挙げられる。また、基材として建築物の壁面に施工される前の板状体(以下、壁用建材という)を用い、その表面に化粧面を形成した表面化粧建材を作製し、その表面化粧建材を建築物に取り付けてもよい。
【0024】
壁用建材としては、例えば、無機質窯業系建材、珪カル板,パルプセメント板,石膏スラグ板,石綿パーライト板,木片セメント板,セメント系押出成形板,ALC板,各種サイディングボード、鋼板と断熱材の複合による金属サイディング,合成樹脂板,石膏ボード,繊維板,パーティクルボード,合板等が挙げられる。
【0025】
また、前記基材に、下地調整材、プライマー、塗料等が施工されたものを基材としてもよい。
【0026】
(化粧シート)
前記化粧シートは、合成樹脂を含むシート中に有色骨材等の充填材を分散させたものであって、前記シート中に分散された有色骨材によって色調を付与されたシートである。即ち、並置加法混色(小さな点の集まりを遠目から眺めると、別の色と区別できず混色して見える現象)を利用してシートに色調を付与したものである。そのため、化粧シート目視したときに感じる化粧シートの色調は、点在している有色骨材の粒の集合体の色調となる。
【0027】
従って、化粧シートは1種類又は2種類以上の有色骨材の集合体によって着色されていると言え、その色調は、有色骨材の色、種類、粒子径、組み合わせ、化粧シート中の含有量等の選択によって決定される。
【0028】
このように着色された化粧シートは、着色顔料によって着色されたシートとは異なった色調を有する。
まず、着色顔料によって着色されたシートは、人が目視によってシートを観察した場合、人からシートまで距離に関係なく同じ色調と感じられる。また、同一シート上での色の違いはない。たとえ、複数の顔料を用いて着色した場合であっても、目視によってそれらの顔料の粒子を確認することができないため、シートの色は、それらが混じりあった混色の色として認識されるだけである。
それに対して、有色骨材の粒による並置加法混色によって着色された化粧シートは、人が目視によってシートを観察した場合、人とシートが接近している場合には、有色骨材の粒が目視によって観察でき、完全に混色にはならない。そして、人とシートが接近した状態から、シートとの距離を徐々に広げながら観察していくと、次第に有色骨材の粒が目視によって認識できなくなっていくことによって、有色骨材の粒の色が少しずつ混ざり合っていき、有色骨材の粒が目視によって認識できない距離まで離れると、有色骨材の粒の色が完全に混ざり合った並置加法混色となる。よって、完全な並置加法混色となる距離より近い距離でシートを見た場合には、全ての有色骨材の粒の色が完全に混ざり合っておらず、同一シート上での色の違いがある色調となり、着色顔料によって着色されたシートとは特に異なる質感を有する。また、目視する際のシートからの距離によって、有色骨材の粒の色の混ざり具合が異なるため、観察する距離によって、目視によって感じる色調に変化がある。また、様々な粒子径の有色骨材を用いると、目視する際のシートからの距離によっては、細かい粒子径の有色骨材の粒は認識できないが、
大きい粒子径の有色骨材の粒は認識できることによって、細かい粒子径の有色骨材の色は混ざり合っていても、大きい粒子径の有色骨材の色が混ざり合わないことによって、同一シート上での色の違いがある色調となる場合がある。
このような、有色骨材の粒による並置加法混色によって着色された化粧シートの色調の特性を総じて、以下の説明では「多彩感」という。この多彩感は、完全な並置加法混色となる距離より近い距離において、有色骨材の粒の色が不完全に混ざり合っているときに、より感じることができる。
【0029】
前記有色骨材は、合成樹脂を含むシート中に分散される充填材のうち有色の粒子状物である。有色骨材としては、例えば、セメント、石膏、プラスター等の無機結合材の硬化体、セラミックス、天然石、陶磁器などの固形物を粉砕した粉砕物、着色されたガラスの粒、着色されたプラスチックの粒、金属を溶融し精錬する時に出る非金属性の粒子状物、着色骨材、及び、シラスバルーン、パーライト、ガラスの粉砕物を発泡させたガラス発泡体などの軽量骨材などが挙げられる。これらの有色骨材は、1種類だけを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
なお、前記天然石の粉砕物としては、珪砂、寒水砂などを挙げることができる。また、採取した際に、既に粒子状となっている砂もこれに含むものとする。
【0031】
また、前記金属を溶融し精錬する時に出る非金属性の粒子状物とは、スラグ等のことである。このスラグは、石灰、マグネシア、無水珪酸、アルミナなどが主成分とするものが多い。
【0032】
また、前記着色骨材とは、天然石、陶磁器等の粒子状物の表面に、顔料によって着色された塗料等のコーティング材による被覆層を設けることによって、そのコーティング材の色に着色された骨材である。
【0033】
前記有色骨材は、塗料等に用いられる着色顔料とはその粒子径の違いによって区別される。有色骨材の粒子径(平均粒子径)は、37〜4000μmの範囲であることが好ましく、37〜800μmの範囲であることがより好ましい。粒子径がこの範囲にあるとき、壁面に多彩感のある化粧シートを形成することができる。
有色骨材の粒子径が37μmより小さい場合には、有色骨材の粒が小さすぎるために、化粧面から近い距離で、完全な並置加法混色となってしまうことによって、多彩感が乏しくなる。
一方、粒子径が4000μmを超えるものは化粧シートの色調となる並置加法混色の要素となる粒としては粗すぎる。即ち、有色骨材の粒が大きすぎることによって、建築物の壁面が観察されやすい距離、例えば、数メートルから十数メートルの距離で目視した場合に、粒が認識できるために、有色骨材の粒の色がうまく混ざり合わず、多彩感が乏しくなってしまう場合がある。より多彩感のある化粧シートを得るためには、粒子径800μm以下の有色骨材を用いることが好ましい。
ただし、粒子径が4000μmを超えるものは、並置加法混色の要素となる粒としては大き過ぎるものの、化粧シートに点状の模様を形成することで、化粧シートの意匠に寄与することができるので、少量であれば用いることもできる。
【0034】
前記合成樹脂を含むシートは、合成樹脂を結合材として形成されたシートである。前記化粧シートは、このシート中に有色骨材等の充填材を分散させて、着色骨材によって着色したものである。従って、このシートは、シート中に分散された有色骨材の色を認識できるだけの透過率があることが好ましい。
【0035】
シートに十分な透過率を持たせるためには、シートに含有される合成樹脂は、透過率の高い樹脂であることが好ましく、透明な樹脂であることが最も好ましい。このような合成樹脂を用いることで、シート中に分散させた有色骨材の色を認識でき、多彩感のある化粧シートが得られる。
【0036】
前記合成樹脂は透過率の高いものであれば、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0037】
なお、前記化粧シートは、上記の成分以外にも添加剤や有色骨材以外の充填材を含有してもよい。
【0038】
添加剤としては、合成樹脂、合成樹脂塗料等の合成樹脂製品に通常添加される添加剤を任意で用いることができる。添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、無機又は有機抗菌剤等が挙げられる。
【0039】
また、有色骨材以外の充填材としては、有色骨材に分類されない充填材である透明なガラスや樹脂の粒子状物等の無色透明な骨材、着色顔料などを用いることができる。なお、着色顔料は含有量が多すぎると、シートの透過率が下がって、化粧シート中に分散させた有色骨材の色を認識できなくなってしまうので、添加量に対する注意が必要である。
【0040】
なお、前記無色透明な骨材は、有色ではないので化粧シートを着色する効果はないが、光を反射する効果、樹脂バインダーや空気との屈折率の違いによって光を屈折させる効果などによって、化粧シートの意匠に寄与することができる。
【0041】
本発明の化粧シートにおける合成樹脂と充填材の含有量は、化粧シート中に合成樹脂が10〜50質量%、充填材が50〜90質量%であることが好ましい。含有量が上記の範囲にあれば、十分な強靭性を有し、多彩感があり意匠性に優れた化粧シートが得られる。合成樹脂の含有量が少なすぎると、化粧シートが脆くなる場合がある。逆に、合成樹脂の含有量が多すぎると、化粧シート中に分散されている充填材が少なすぎて、多彩感があり意匠性に優れた化粧シートが得られない場合がある。
【0042】
また、前記化粧シートに含有される充填材中の有色骨材の含有比率は、充填材100質量部中に有色骨材が50〜100質量部であることが好ましい。含有比率がこの範囲にあれば、多彩感のある化粧シートを得ることができる。前記含有比率が少なすぎると、多彩感のある化粧シートが得られない場合がある。また、有色骨材の含有比率が少なすぎると、シートの隠蔽性が低下する。
【0043】
化粧シートの製造方法は特に限定はされない。例えば、合成樹脂と充填材とを含有する液状体を型枠に流し込んで、その液状体が乾燥、硬化した後に型枠から取り外す方法(以下、型枠成型法ともいう。)などがある。液状体は、合成樹脂と充填材とを含有する塗料、合成樹脂としての熱可塑性樹脂と充填材とを含有する組成物を加熱溶融したものなどが挙げられる。
また、離型シート等の硬化後に剥離可能な下地に、合成樹脂と充填材とを含有する液状体を吹き付けたり、塗りつけたりしたものを乾燥、硬化後に前記下地から外す方法で作製することもできる。
【0044】
このように様々な方法によって化粧シートを形成することができることで、多彩な表面形状の化粧シートを得ることができる。また、化粧シートは、例えば、製造設備等を利用して、施工方法、塗装厚み、塗材の粘度・粘性、乾燥条件などを十分に管理して製造できるため、品質を安定させることができる。
【0045】
(接着剤)
前記接着剤は、有色骨材と合成樹脂とを含有する接着剤であって、乾燥、硬化後には、前記した化粧シートと同様に、合成樹脂中に分散された有色骨材による色調を持つ硬化塗膜を形成する。従って、化粧シートのように多彩感のある硬化塗膜を形成することができる。
【0046】
前記有色骨材には、接着剤中に分散される充填材であって、化粧シートで用いる有色骨材と同様のものが使用できる。
【0047】
また、有色骨材の粒子径は、37〜4000μmの範囲であることが好ましく、37〜800μmの範囲であることがより好ましい。この範囲の有色骨材を用いることで、接着剤が乾燥、硬化して化粧シートと同様に多彩感のある硬化塗膜を形成することができる。
【0048】
接着剤に用いる合成樹脂は、乾燥、硬化することで透過率の高い膜を形成できるものであれば、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は単独にて用いても良くあるいは共重合したものにして、またこれらを混合して用いることもできる。更に、これらの樹脂の形態として、溶媒に溶解させたもの或いはエマルションとして溶媒に分散させたものを利用することもできる。
【0049】
なお、前記接着剤は、上記の成分以外にも添加剤や有色骨材以外の充填材を含有してもよい。
【0050】
添加剤としては、合成樹脂塗料、合成樹脂を接着成分とする接着剤に通常添加される添加剤を任意で用いることがでる。添加剤としては、例えば、分散剤、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、無機又は有機抗菌剤等が挙げられる。
【0051】
また、有色骨材以外の充填材としては、化粧シートで用いる充填材と同様のものを使用できる。
【0052】
本発明の接着剤における合成樹脂と充填材の含有量は、接着剤の固形分中に合成樹脂(固形分)が10〜60質量%、充填材が40〜90質量%であることが好ましい。合成樹脂の含有量が少なすぎると、接着剤の接着力が十分でない場合がある。また、接着剤が硬化した硬化塗膜の強度が不足し脆くなる場合がある。逆に、合成樹脂の含有量が多すぎると、硬化塗膜中に分散されている充填材が少なすぎて、多彩感のある硬化塗膜を形成できる接着剤が得られない場合がある。含有量が上記の範囲にあれば、十分な接着力と強靭性を有し、多彩感のある硬化塗膜を形成できる接着剤が得られる。
【0053】
また、接着剤に含有される充填材中の有色骨材の含有比率は、充填材100質量部中に有色骨材が50〜100質量部であることが好ましい。含有比率がこの範囲にあれば、多彩感のある硬化塗膜を形成できる接着剤を得ることができる。有色骨材の含有比率が少なすぎると、多彩感のある硬化塗膜が得られない場合がある。また、有色骨材の含有比率が少なすぎると、硬化塗膜の隠蔽性が低下する。
【0054】
(化粧面の形成方法)
本発明の化粧面の形成方法は、壁面の基材に、前記化粧シートを、前記接着剤を介して貼り付けるものである。
【0055】
貼り付けの方法や手順は特に限定しないが、例えば、基材に接着剤を刷毛等で塗った後に化粧シートを貼り付けてもよいし、化粧シートの裏面に接着剤を刷毛等で塗った後にその化粧シートを基材に貼り付けてもよい。
【0056】
なお、本発明の化粧面は、以下のように形成することがより好ましい。
【0057】
・ 前記化粧面の厚みは、1mm以上であることが好ましい。化粧面の厚みが1mm未満であると、その化粧面によって基材が十分に隠蔽されない場合がある。なお、前記化粧面の厚みは、化粧面の表面に凹凸がある場合においては、平均の厚みとする。平均の厚みとは、化粧面の各部分の厚みの平均値であり、化粧面の体積を化粧面の施工面積で除して求める。
【0058】
また、前記化粧面の厚みは、8mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。化粧面の厚みが厚すぎると、化粧面の単位面積当たりの質量が大きすぎて、壁面への負担が大きくなってしまう。
【0059】
・ 前記化粧シートの厚みは、0.5mm以上であることが好ましい。ただし、化粧シートと同色又は近似色の接着剤を用いる場合には、更に薄い厚みの化粧シートを利用することもできる。なお、前記化粧シートの厚みは、化粧シートの表面に凹凸がある場合においては、平均の厚みとする。平均の厚みとは、化粧シートの各部分の厚みの平均値であり、化粧シートの体積を化粧シートの面積で除して求める。
化粧シートと同色又は近似色の接着剤を用いる場合には、化粧シートの色調に接着剤層の色調が及ぼす影響が小さいが、化粧シートと接着剤の色調が異なる場合は、0.5mm未満の化粧シートを用いると、化粧シートを透かして見える接着剤層の色による、化粧シートの色調への影響が大きくなりすぎる場合があるため好ましくない。
【0060】
・ また、化粧シートと同色又は近似色の接着剤を用いる場合には、化粧シートが表面から裏面に貫通する複数の孔を有するものであってもよい。化粧シートがこのような孔を有することによって、接着剤の乾燥を早めることができる。
化粧シートが孔を有していたとしても、化粧シートと同色又は近似色の接着剤を用いることで、孔を通して見える(又は、孔の中に充填された)接着剤の硬化塗膜は、化粧シートと同色又は近似色となり、化粧シートと孔から見える(又は、孔の中に充填された)接着剤の硬化塗膜とによって均一な色調の化粧面が形成される。
【0061】
なお、前記同色の接着剤は、使用する化粧シートに含有されている有色骨材と同じ有色骨材を接着剤の充填材として用いることで得ることができる。化粧シートに複数の有色骨材が含有されている場合には、それらを化粧シート中の含有量(質量部)の割合と同じ割合で混合して用いればよい。
また、近似色の接着剤は、化粧シートに複数の有色骨材が含有されている場合に、それらの化粧シート中の含有量(質量部)の±10%以内の量の割合と同じ割合で混合して接着剤の充填材として用いればよい。
例えば、化粧シートに有色骨材Aが100質量部、有色骨材Bが50質量部含有されている場合、有色骨材Aと有色骨材Bとを100:50の割合で混合して接着剤の充填材として用いれば、同色の接着剤が得られる。また、有色骨材Aと有色骨材Bとを90〜110:45〜55の割合で混合して接着剤の充填材として用いれば、近似色の接着剤が得られる。
【0062】
本発明の化粧面の形成方法による作用と効果を以下に記す。
【0063】
本願の化粧面の形成方法では、前記接着剤を用いることで、前記化粧シートは下地を十分に隠蔽できる厚みがないものであっても用いることができる。即ち、化粧シートが接着剤層を十分に隠蔽できるものでなくても、この接着剤を用いれば、化粧シートの色調に接着剤層の色が及ぼす影響が小さいため、下地を十分に隠蔽できる厚みがない化粧シートを用いても、化粧シートの色調が接着剤層によって影響を受けにくい。
【0064】
さらに、接着剤の色調を化粧シートの色調と同色又は近似色とすれば、接着剤層の色は化粧シートの色調にほとんど影響を及ぼさない。
【0065】
また、前記化粧面の形成方法では、接着剤層の色が化粧シートの色調に及ぼす影響が小さいので、化粧シートと接着剤層の複合層によって基材を十分に隠蔽できればよい。そのため、薄い厚みの化粧シートを利用することができ、化粧面の厚みを薄くすることができる。また、化粧面の厚みが薄くなることで、化粧面の単位面積当たりの質量が小さくなり、壁面への負担を減らすことができる。
なお、前記接着剤以外の接着剤を用いた場合は、化粧シートを透かしてみえる接着剤層の色が化粧シートの色調に影響してしまうため、接着剤層を十分に隠蔽できる化粧シートを用いなければならず、化粧面の厚みが厚くなってしまう。
【0066】
前記化粧面の形成方法には、型枠成形によって成型した化粧シート等も利用できるため、骨材着色型塗材を塗装して化粧面を形成する方法では得られない多彩な表面形状の化粧面を形成することができる。
また、同じ品質の化粧シートを選択して利用すれば、安定して、均一な化粧面を得ることができる。また、前記化粧シートは、骨材着色型塗材を現場で塗装する場合に比べて、例えば、製造設備等を利用して、施工方法、塗装厚み、塗材の粘度・粘性、乾燥条件などを十分に管理して製造できるため、品質を安定させることができる。
【実施例】
【0067】
(実施例1) 実施例1の概略を図1に示す。
基材として、壁用建材である無機質窯業系サイディング板11を準備し、その表面に化粧シート12を接着剤13によって貼り付けて、化粧シート12と接着剤13の硬化塗膜とからなる化粧面を形成し、表面に化粧面を有する表面化粧建材1を得た。
【0068】
化粧シート12は、アクリル樹脂中に3種類の有色骨材を以下の配合で分散させたものを用いた。なお、有色骨材Aの粒子径は300〜600μmであり、有色骨材Bの粒子径は100〜150μmであり、有色骨材Cの粒子径は50〜80μmであった。この粒子径は、測定装置(島津製作所製SALD−3100)を用いてレーザ回析・散乱法によって測定した数値である。
アクリル樹脂:20質量部
有色骨材A :15質量部
有色骨材B :20質量部
有色骨材C :40質量部
また、化粧シート12はシリコーン製の型枠を用いて成型されたものであって、表面に凹凸を有し、その厚みは1mmであった。
【0069】
また、接着剤13は、化粧シート12と同色のものであって、アクリル樹脂エマルジョン(固形分50%)と、化粧シート12に用いた3種類の有色骨材とを以下の配合で混合したものを用いた。
アクリル樹脂エマルジョン:50質量部
有色骨材A :15質量部
有色骨材B :20質量部
有色骨材C :40質量部
【0070】
なお、化粧面の形成は以下の手順で行った。まず、無機質窯業系サイディング板11に接着剤13を0.5mmの厚みで塗りつけ、その後、化粧シート12を接着剤13の上に置いて加圧して、化粧シート12と接着剤13とを密着させた。その後、35℃の環境下で24時間静置して接着剤13を乾燥硬化させて、表面に化粧面を有する表面化粧建材1を得た。
【0071】
表面化粧建材1の化粧面の厚みは1.5mmであって、化粧面によって無機質窯業系サイディング板11が十分に隠蔽されていた。また、この化粧面は、化粧面の形成部分内での色調のばらつきのない均一な仕上がりであった。
【0072】
(実施例2) 実施例2の概略を図2に示す。
基材として、実施例1で用いたものと同じ無機質窯業系サイディング板11を準備し、その表面に化粧シート12´を接着剤13によって貼り付けて、化粧シート12´と接着剤13の硬化塗膜とからなる化粧面を形成し、表面に化粧面を有する表面化粧建材1を得た。
【0073】
化粧シート12´は、アクリル樹脂中に3種類の有色骨材を以下の配合で分散させたものを用いた。なお、有色骨材Aの粒子径は300〜600μmであり、有色骨材Bの粒子径は100〜150μmであり、有色骨材Cの粒子径は50〜80μmであった。この粒子径は、測定装置(島津製作所製SALD−3100)を用いてレーザ回析・散乱法によって測定した数値である。
アクリル樹脂:20質量部
有色骨材A :15質量部
有色骨材B :21質量部
有色骨材C :43質量部
また、化粧シート12´はシリコーン製の型枠を用いて成型されたものであって、表面に凹凸を有し、その厚みは1mmであった。また、化粧シート12´は、表面から裏面に貫通する複数の孔21を有していた。
【0074】
また、接着剤13は、化粧シート12´と近似色のものであって、アクリル樹脂エマルジョン(固形分50%)と、化粧シート12に用いた3種類の有色骨材とを以下の配合で混合したものを用いた。
アクリル樹脂エマルジョン:50質量部
有色骨材A :15質量部
有色骨材B :20質量部
有色骨材C :40質量部
【0075】
なお、化粧面の形成は以下の手順で行った。まず、無機質窯業系サイディング板11に接着剤13を0.5mmの厚みで塗りつけ、その後、化粧シート12´を接着剤13の上に置いて加圧して、化粧シート12´と接着剤13とを密着させた。その際、加圧することによって、接着剤13の一部が化粧シート12´の孔21内に充填され、更に、その一部が化粧シート12´の表面に付着した。そこで、化粧シート12´の表面に付着した接着剤13はゴム製のへらを使って除去した。
その後、35℃の環境下で24時間静置して接着剤13を乾燥硬化させて、表面に化粧面を有する表面化粧建材1を得た。
【0076】
表面化粧建材1の化粧面の厚みは1.5mmであって、化粧面によって無機質窯業系サイディング板11が十分に隠蔽されていた。また、孔21部分に充填されて硬化した接着剤13と、化粧シート12´とが近似色であることによって、孔21部分の接着剤13の硬化塗膜と、化粧シート12´との色調にほとんど違いはなく、化粧面は、化粧面の形成部分内での色調のばらつきのない均一な仕上がりとなった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の化粧面の形成方法によって形成された化粧面を表面に有する表面化粧建材の断面の概略を示す模式図である。
【図2】この発明の化粧面の形成方法によって形成された化粧面を表面に有する表面化粧建材の断面の概略を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、粒子径37〜4000μmの有色骨材が合成樹脂を含むシート中に分散された化粧シートを、粒子径37〜4000μmの有色骨材と合成樹脂とを含有する接着剤を介して貼り付けることを特徴とする化粧面の形成方法。
【請求項2】
前記基材が、壁用建材であることを特徴とする請求項1に記載の化粧面の形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の形成方法によって形成された化粧面。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−38268(P2011−38268A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184384(P2009−184384)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】