医学用振動性コンプライアンス装置およびその使用
本発明は、頭蓋内容量を増加させるような頭蓋腔または脊髄腔内の圧縮性構成物の収縮および拡張を振動させることで、頭蓋内コンプライアンス、脳の血流および/または頭蓋内圧拍動性/波形を改変する装置およびシステムに関する。振動性コンプライアンス装置内の圧縮性構成物の収縮および拡張は、心臓の収縮に仲介されるか、またはバイオリズムと同期したポンプにより誘導されるリザーバーの拡張および圧縮の結果である、個体の頭蓋内圧のためであり得る。本発明はまた、本発明の装置またはシステムを使用して、異常な動脈拍動から個体の脳を保護する方法および個体の脳の血流を改変する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年7月21日に出願された米国特許仮出願第60/701,596号および2005年11月10日に出願された米国特許仮出願第60/735,388号の恩典を主張し、上述の出願の全教示の内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
脳の血流(CBF)の減少は、慢性水頭症、脳卒中および痴呆を含む最も一般的で破壊的な脳障害に見られる大きな問題である。臨床的および実験的証拠の増加により、これらのおよびCBFの減少の他の非症的な神経障害の原因に潜在するものが頭蓋内コンプライアンス(compliance)(ICC)の欠損に由来することが示される。
【0003】
血液が固い頭蓋の閉鎖空間内に侵入するためには、脳は、「コンプライアント」となり得るか、またはそうでなければならない。この概念は、脳外動脈から脳脊髄液(CSF)を介して静脈および脊髄腔に動脈血パルス波を伝導させ、パルス波が脳およびその毛細管を迂回するのを可能にすることを伴う頭蓋内動力学に重要である。通常、動脈は、コンプライアントである場合、弾性リザーバーとして作用し、動脈壁が収縮期にパルス波の水圧エネルギーの一部を吸収する。このエネルギーは、次いで、一定の毛細管流動を維持するために拡張期に放出される。このプロセスは「Windkessel効果」と呼ばれ、ほぼ連続的な非拍動性毛細管流動内への動脈血流のパルスを変化させ、動脈のパルス圧が毛細管および脳組織に伝達される速度および力を減少させてこれらをこのような力から保護する。
【0004】
しかしながら、多くの脳障害では、頭蓋内水力学が異常となる。動脈拍動を制限する事象は、これらの頭蓋内水力学的異常を引き起こし、頭蓋内コンプライアンスの減少をもたらし得る。例えば、クモ膜下空間に対する外傷および傷害およびその内部での癒着は、動脈拍動を制限し、頭蓋内コンプライアンスの減少を引きこし得る。同様に、毛細管パルス圧の増大をもたらす任意の血管障害はICCの減少をもたらし得る。
【0005】
頭蓋内コンプライアンスの減少を伴う脳障害において、脳に達する動脈血拍動は、あったとしても、不充分に減衰または緩衝される。Windkessel効果による緩衝の破壊は、直接脳に作用する頭蓋内パルス圧または拍動性の増大をもたらし、毛細管および脳組織を損傷させる。また、頭蓋内コンプライアンスの減少は、血管抵抗の増大、対流性血流に対する血管抵抗性の増大(圧縮された動脈および静脈による)および、結果として、脳血管の血流効率の低下を引き起こす。実際、脳に対するこれらの傷害は、血管性痴呆、水頭症、脳卒中および他の神経疾患に見られる浮腫、脳の薄化、CBFの減少および脳機能の低下の説明となり得る。
【0006】
従来、脳内のCSFの体積の増加を特徴とする水頭症などの脳障害において、該疾患の病因は、中枢神経系の脈絡膜叢(choriod plexus)内のCSF形成と毛細管のCSF吸収との間の不均衡によるものであると考えられていた。したがって、水頭症を処置するためのアプローチの1つは、CSF区画からクモ膜下空間への過剰の液体の排出またはシャント術を含んだ。しかしながら、シャント術は、数名の患者の処置では有効ではなく、一部では、該疾患の病因は、頭蓋内コンプライアンスの減少のためであり得ると考えられているが、シャント術の問題は充分対処され得ていない。さらに、シャント術は侵襲性であり、脳を損傷する、および/または脳内で感染を引き起こす可能性を有し、CSFが非生理学的レベルで排出され、水頭症に対する永久的な解決策ではないため、問題である。同様に、脳卒中または痴呆などの他の脳障害の処置は、該疾患に見られ、実際、該疾患の根本的原因であり得るICCの低下に対処するものではない。
【0007】
さらに、ICC、脳の血流(CBF)または頭蓋内圧(ICP)拍動性/波形を改変(例えば、増加または減少)することが有利であり得る数多くの非神経疾患または神経症状がある。例えば、血管痙攣などの状態は異常に高いICP拍動性を特徴とするが、鬱血性心不全、頚動脈(caroitid)内膜切除または心肺バイパス術を経験している、および/または経験した個体は、望ましくない低いICP拍動性を有することが知られている(図1参照)。
【0008】
これらの疾患/状態はすべて、異常なおよび/または望ましくないICC、CBFおよびICP拍動性/波形を改変する処置の恩恵を被り得る。したがって、必要とされているのは、脳内の動脈拍動の適正な緩衝を回復させることによりICCを回復させ、適切となるように脳への血流を改変させる、および/または拍動性が正常範囲内になるようにICP波形を調整する装置である。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、個体において、頭蓋内コンプライアンス(ICC)、脳の血流(CBF)、頭蓋内圧(ICP)拍動性/波形またはその組合せを改変する装置およびシステムに関する。特定の態様において、本発明の装置およびシステムは、個体において、ICC、CBFおよび/またはICP拍動性/波形を回復するために使用され得る。該装置は、ICC、CBFおよび/またはICP拍動性/波形を改変(増加または減少)するため、圧縮性構成物の収縮および拡張を振動(oscillate)させることにより機能を果たす。1つの態様において、該装置は、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由な拡張および圧縮が可能な圧縮性構成物を備える「振動性コンプライアンス装置」(OCD)であり、また、本明細書においては、「カデンス(cadence)」ともいう。さらなる態様において、圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質(例えば、ヒドロゲル)などの物質が充填されたバルーンカテーテルである。別の態様において、振動性コンプライアンス装置は、頭蓋脊髄外、皮下または体腔内に配置され得る圧縮性構成物に連結された外部リザーバーをさらに備える。また別の態様において、振動性コンプライアンス装置はまた、患者の頭蓋内空間内のICPまたはCBFを測定するための頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブで構成される。振動性コンプライアンス装置は、患者の脳または脊髄いずれかの硬膜外腔またはCSF空間内に配置され得る。
【0010】
別の態様において、振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物、圧縮性構成物の拡張および圧縮を提供する圧縮性構成物に連結されたポンプ、ポンプに連結された外部リザーバー、ならびにポンプを患者のバイオリズムと同期させるためにポンプに連結され、患者のバイオリズムの源を連結するバイオリズム同期装置(sync)で構成される。1つの態様において、圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質などの物質を含むバルーンカテーテルである。別の態様において、外部リザーバーは、頭蓋脊髄外腔もしくは皮下空間または体腔内に配置され得る。また別の態様において、バイオリズム同期装置は心臓同期装置であり、さらに、バイオリズム源は、患者の心臓の電気的律動/信号である。別の態様において、ポンプは、モーター作動バッテリーまたは生理学的誘導(physiologically-derived)源のいずれかによって動力を供給される。この態様において、振動性コンプライアンス装置はまた、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF空間内に配置され得る。別の態様において、振動性コンプライアンス装置はまた、患者のICP波形を測定するための頭蓋内モニター、血流プローブおよび/または酸素プローブなどの1つ以上のモニタリング装置で構成され、さらに、これらの1つ以上のモニタリング装置の測定に基づいてポンプの圧縮性構成物の拡張および圧縮を自動的に調整するポンプと連絡した制御システムを備え得る。
【0011】
別の態様において、本発明は、圧縮性構成物、圧縮性構成物に連結されたチューブ、および患者の心膜腔内に配置され患者の心臓の収縮および拡張によって自由な拡張および圧縮が可能なようにチューブに連結された外部リザーバーで構成される振動性コンプライアンス装置に関する。チューブは、圧縮性構成物を外部リザーバーに連結し、両者間の自由な交換を可能にする。1つの態様において、圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質を含むバルーンカテーテルである。別の態様において、圧縮性構成物は、患者の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。
【0012】
本発明はまた、振動性コンプライアンスシステムに関する。1つの態様において、振動性コンプライアンスシステムは、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由な拡張および圧縮が可能な圧縮性構成物を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を含む。別の態様において、振動性コンプライアンスシステムは、圧縮性構成物、圧縮性構成物の拡張および圧縮のために圧縮性構成物に連結されたポンプ、ポンプに連結された外部リザーバー、ならびにポンプを患者のバイオリズムと同期させるために患者のバイオリズムの源と連結するバイオリズム同期装置を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を含む。両方の振動性コンプライアンスシステムにおいて、1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質などの物質を含むバルーンカテーテルであり得る。振動性コンプライアンス装置は、患者の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。また別の態様において、振動性コンプライアンスシステムは、さらに、患者の頭蓋内空間内のICPまたはCBFを測定するための頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブで構成され得る。
【0013】
本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の頭蓋内腔に侵入する動脈拍動から個体の脳を保護するための方法に関する。1つの態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、内部空間に配置され、液体、ガスまたは可鍛性(maleable)物質などの物質を含むバルーンカテーテルである。また別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、個体の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、外部空間内に配置された外部リザーバーを備え得、頭蓋脊髄外、皮下または体腔内に配置され得る。
【0014】
本発明はまた、収縮期に、圧縮性構成物を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の内部空間から外部空間に圧縮性物質を移動させ、
拡張期に、圧縮性構成物を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて外部空間から個体の内部空間に該物質を戻すことによって個体において頭蓋内コンプライアンスを増大させる方法に関する。
【0015】
本発明はさらに、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、入力動脈拍動と同期させて個体のCSF空間の大きさを制御する方法に関する。
【0016】
本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含む、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の頭蓋内腔内への動脈血の侵入を助長するために個体の包膜嚢の容積容量を増大させる方法に関する。
【0017】
本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の脳において、動脈血拍動を改変する方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の頭蓋内空間を調整することにより、個体の脳の血流および脳血管の循環の効率を増大させる方法に関する。
【0019】
本発明はまた、振動性コンプライアンス装置または振動性コンプライアンスシステムを個体内に埋め込むことを含む、改変されたICC、CBFおよび/またはICP拍動性を有する個体(例えば、患者)の処置方法に関する。1つの態様において、患者は、血管痙攣、鬱血性心不全または頚動脈内膜剥離術(例えば、頚動脈閉塞/狭窄)などの脳の血流が改変(例えば、低下、増強)された疾患/状態について処置される。別の態様において、OCDは、心肺バイパス術を受けている患者に埋め込まれる。この態様において、必要に応じて、心肺バイパス術前、最中および/または後のいずれかで1つ以上のOCDが患者内に埋め込まれる。また別の態様において、患者は、水頭症、脳卒中、痴呆または偏頭痛を含む、水力学的脳障害について処置される。該方法のさらなる態様において、処置される水頭症は、慢性水頭症、正常圧力水頭症、偽脳腫瘍またはスリット脳室症候群(slit ventricle syndrome)であり得る。別の態様において、処置される脳卒中は、急性脳卒中、慢性脳卒中、微小血管疾患、痴呆、もやもや病、多発性梗塞性疾患、後部循環不足またはビンスワンガー病であり得る。また別の態様において、処置される痴呆は、血管性痴呆、アルツハイマー病および正常圧力水頭症であり得る。別の態様において、処置される偏頭痛は、小児偏頭痛、成人偏頭痛または難治性偏頭痛である。
【0020】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示す本発明の好ましい態様の以下のより特定の記載から明らかである。図において、同様の参照符号は異なる図において全体を通して同じ部分を示す。図面は必ずしも縮尺が同じでなく、本発明の原理を示す際に強調している。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、一般的に、個体における頭蓋内コンプライアンス(ICC)、脳の血流(CBF)、頭蓋内圧(ICP)拍動性/波形またはその組合せを改変または調整(例えば、増加、減少)する装置に関する。特定の態様において、該装置は、ICCを、個体の脳毛細管および組織への動脈拍動の異常な伝達が低下および/または完全に排除されるように回復させ得、CBFは、これが所望のおよび/または正常範囲内になるように改変され、ICP拍動性(例えば、ピーク振幅(amplitude)、エネルギー、傾きおよび/または形状)が必要に応じて調整される(図1および2参照)。これは、入力動脈血流拍動と同期すると、空間内の容積容量を増大させる個体の頭蓋内空間の大きさの変化を小さく制御することにより達成される。入力血流での頭蓋内空間の大きさの調整は、脳血管の循環および、結果として、個体の脳の血流の効率の増大をもたらす。該装置は、例えば、水頭症、脳卒中、痴呆および偏頭痛、血管痙攣 鬱血性心不全、頚動脈内膜剥離術および心肺バイパス術の前、その際またはその後を含むいくつかの状態の1つに苦しむ患者を処置するために使用され得る。
【0022】
したがって、本発明は、個体において、改変されたICC、CBFまたはICP拍動性を提供するための「振動性コンプライアンス装置」(OCD)または「カデンス」関する。そうすることにおいて、振動性コンプライアンス装置は、最小限の脳の侵襲でこれらの障害に対処する。該装置は、それを必要とする対象に、改変(例えば、増加または減少)したICC、CBFまたはICP拍動性を特徴とする問題を処置するために、急性状況および慢性状況の両方において使用され得る。
【0023】
1つの態様において、振動性コンプライアンス装置は、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由に拡張および圧縮し得る圧縮性構成物で構成され、受動的に頭蓋内容量を調整する(受動振動性コンプライアンス装置)。この拡張および圧縮は、例えば、個体のICPによるものであり得る。バルーンカテーテル、平坦嚢または球状系などの容積が閉鎖空間内で繰り返しおよび/または再生可能に変化(すなわち、拡張および収縮)し得、哺乳動物内での使用に適した任意の圧縮性構成物が使用され得る。特定の態様において、圧縮性構成物はバルーンカテーテルである。バルーンカテーテルは、当業者に公知の任意のものであり得、市販されている(例えば、Datascope Corp. #0686-DM-0116-01)。図3に示すように、圧縮性構成物1は種々の形状および大きさであり得、該装置における使用のために当業者によって適切に修正され得る。圧縮性構成物は、約0.5〜約2.0立方センチメートル(cc)の容積容量を有し得る。特定の態様において、圧縮性構成物は、約0.75〜約1.75ccまたは約1〜約1.5ccの容積容量を有し得る。
【0024】
圧縮性構成物は、頭蓋内圧または生物学的パルス(すなわち、動脈または心臓のパルス圧)などの力によって頭蓋円蓋部内外に移動(すなわち、運搬または輸送)され得る物質を備え得る。該物質は、液体(例えば、液)、気体(例えば、ヘリウム、酸素、二酸化炭素、空気もしくは気体の組合せ)または展性物質であり得る。展性物質は、その多くが市販されているいくつかのヒドロゲルの1種類、または変形可能な固体もしくは半固体(例えば、水銀もしくはポリマー)を含み得る。特定の態様において、該物質は完全に固体状態でない(例えば、該物質は液または半固体)。振動性コンプライアンス装置における使用に必要な該物質の容積は、選択される圧縮性物質に従って変わり、該物質の性質、個体内の振動性コンプライアンス装置の配置および患者の充分な処置に必要とされる圧縮性構成物の寸法に基づいて当業者に容易に決定される。
【0025】
さらなる態様において、圧縮性構成物は閉鎖系(例えば、バルーンカテーテル、平坦嚢または球状系)ではない。代わりに、圧縮性構成物は、移動可能物質、特にCSFまたは血液などの液をCSFまたは脊髄の空間外に迂回させる開放系(例えば、開放カテーテル)である。
【0026】
振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物に連結されたリザーバーをさらに備え得る。1つの態様において、リザーバーは患者の外部にある(すなわち、患者の身体の外側に配置される)。特定の態様において、リザーバーは患者の頭蓋の外部にある。リザーバーは、例えば、圧縮性構成物(例えば、バルーンカテーテル)が圧縮状態(例えば、個体のICPにより)の場合、内部に該物質(例えば、液体、ガスまたは展性物質)が移動され得る空間を提供するために使用され得る。圧縮性構成物と同様、リザーバーは、拡張および収縮する(例えば、弾性的に)能力を有する任意の材料(例えば、プラスチックまたはシリコーン)で作製され得、頭蓋外または脊髄の空間、心膜または腹膜嚢などの頭もしくは身体の皮下空間または体腔内などの種々の位置に配置され得る。特定の態様において、リザーバーは、皮下空間内に配置され、圧縮性構成物に連結される。
【0027】
別の態様において、該装置は、患者のICPを測定するための頭蓋内モニターを含み得る1つ以上のモニタリング装置を含む。いくつかのICPモニターが市販されており(例えば、SpiegelbergまたはCodman & Shurtleff, Inc.から)、その任意のものが該装置の一部として使用され得る。脳室内カテーテル、光ファイバー(fibreoptic)モニター、クモ膜下ボルト(bolt)、硬膜外モニターおよび経頭蓋ドップラーを含む多くの型のICPモニターが利用可能である。さらなる態様において、1つ以上のモニタリング装置はまた、CBFを測定するための血流プローブ(1つまたは複数)および/または 血液によって脳に運ばれる酸素レベルを測定するための酸素プローブ(1つまたは複数)を含み得る。これらのプローブは当該技術分野において周知であり、また、市販されている(例えば、Transonic Systems, Inc., Volcano ComboWire XT, Integra LICOX system)。該装置における使用のために選択されるモニターの型(頭蓋内、血流、酸素)は、処置される疾患を含むいくつかの因子に依存し、特定の患者のニーズに基づいて当業者によって最良に決定される。振動性コンプライアンス装置は、頭蓋内波形パルス圧およびCBFが改変されるように設計されるため、これらのモニタリングおよび測定装置により、臨床医が直接関係のある情報を収集し、振動性コンプライアンス装置の性能を最適化することが可能になる。
【0028】
振動性コンプライアンス装置は、それ自体が、患者の頭蓋内容量およびコンプライアンスに影響するいくつかの場所に配置され得る。例えば、図4および5を見ると、振動性コンプライアンス装置は、患者の脳の硬膜外腔2もしくはCSF空間3のまたは患者の脊髄の硬膜外腔4もしくはCSF空間5内の当業者が適切と考えるどのような箇所にも配置され得る。振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物の寸法は、脳または脊髄の硬膜外もしくはCSF(すなわち、硬膜下/クモ膜または脳室)空間内に適合するようなものである(図6参照)。1つの態様において、圧縮性構成物は、患者の脳の硬膜外腔内に配置され得、約10〜約50ミリメートル(mm)の長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さを有する。あるいはまた、別の態様において、圧縮性構成物は、患者の脳のCSF空間内に配置され得、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。また別の態様において、圧縮性構成物は、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置され得、約10〜約50mm長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。さらなる態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4椎体およびL5椎体の間に配置される。また、圧縮性構成物の大きさを、患者の頭蓋内容量を有効レベルに増大させるように修正することが必要であり得る。したがって、当業者は、好ましくは、特定の患者に対して患者の特定の処置のニーズに適合させるために圧縮性構成物の寸法を変更し得る。
【0029】
別の態様において、本発明は、2つ以上の振動性コンプライアンス装置
を備える振動性コンプライアンスシステムに関する。特定の態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置は、同時に使用される。振動性コンプライアンスシステムは、上記の受動振動性コンプライアンス装置、すなわち、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由な拡張および圧縮が可能な圧縮性構成物を有する2つ以上の振動性コンプライアンス装置を含むシステムの2つ以上を含む。任意の数の振動性コンプライアンス装置が、受動振動性コンプライアンスシステムにおいて使用され得、適切な数は、臨床医によって決定され、患者を充分に処置して頭蓋内容積、コンプライアンスおよび脳の血流を増大するのに必要な装置の数に基づいて計算される。したがって、特定の患者に使用される振動性コンプライアンス装置の数は、処置される疾患重篤性に依存し得る、すなわち、より多くの装置がより重症な疾患を有する患者には必要とされ得る。
【0030】
さらなる態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置はまた、頭蓋外、脊髄腔および/または皮下の位置あるいは体腔内に配置され得る上記の1つ以上のリザーバーを備える。
【0031】
本発明はまた、患者のICPではなくポンプによって駆動される振動性コンプライアンス装置に関する。1つの態様において、ポンプを患者のバイオリズムと同期させる。この態様において、患者のICCは能動的に調整される(能動振動性コンプライアンス装置)。図7を参照すると、振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物6、圧縮性構成物6に連結された圧縮性構成物6の拡張および圧縮のためのポンプ7、ポンプ7およびポンプ7に連結されたバイオリズム同期装置9に連結されたリザーバー8、患者のバイオリズム源10に連結されたバイオリズム同期装置9で構成される。したがって、バイオリズム同期装置9はバイオリズム源10をモニターし、圧縮性構成物6を患者のバイオリズムと同期して圧縮および拡張させるようにポンプ7を始動させる。その結果、ポンプ7は、圧縮性構成物6をバイオリズムと同期して(例えば、動脈血と同期して)能動的に圧縮および拡張し、それにより、動脈血流入により収縮期に頭蓋内空間を増大させる。
【0032】
本明細書で使用されるように、「バイオリズム同期装置」は、患者のバイオリズム源をモニターし、振動性コンプライアンス装置のポンプを始動させ得る任意の適当な装置である。例えば、バイオリズム同期装置は、心臓の電気的パルス波(電気的律動、信号)を捕らえ、ポンプをそのパルスと同期させる心電図(ECGまたはEKG)モニターである。バイオリズム同期装置として作用し、特定のバイオリズムをモニターし得る装置は公知であり、当該技術分野において使用されている。例えば、市販の心臓同期装置(Datascope 大動脈バルーン)は、本発明において使用するのに適切である。また、本明細書において使用されるように、バイオリズム源は、モニターされ得る任意の生理学的律動である。例えば、バイオリズム源としては、パルス(例えば、頚動脈パルスなどの動脈のパルス)、心臓の律動(例えば、心拍圧および/または電気的パルス/律動)あるいは頭蓋内パルスが挙げられる。
【0033】
1つの態様において、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、物質(すなわち、液体、ガスまたは展性物質)で構成されるバルーンカテーテルである。受動振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物と同様、能動振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、機械的ポンプ7によって発揮される力によって1つの空間から別の空間に移動され得る任意の物質を含有する哺乳動物での使用に適当な任意の圧縮性構成物であり得る。圧縮性構成物は、閉鎖系(例えば、バルーンカテーテル)または開放系(例えば、開放カテーテル)で構成され得、開放系では、圧縮性構成物は、液体物質(例えば、CSFまたは血液)を空間(例えば、内部または外部)に迂回させる。圧縮性構成物での使用に適切な物質は、当業者にわかるとおり、圧縮性構成物の大きさおよび配置ならびに患者の疾患状態を含むいくつかの因子に依存する。振動性コンプライアンス装置での使用に必要とされる該物質の容量は、当業者によって決定され得(例えば、該物質の性質、振動性コンプライアンス装置の配置および患者充分に処置するのに必要な該装置の寸法に基づいて)、特定の態様では、圧縮性構成物の拡張および圧縮は、約0.5〜約25ccの該物質を患者の内部空間からリザーバーに移動させる。特定の態様において、約0.75〜約1.75ccまたは約1〜約1.5ccの該物質が患者の内部空間からリザーバーに移動される。
【0034】
能動振動性コンプライアンス装置はまた、いくつかの他の態様を有する。1つの態様において、リザーバーは、頭蓋外、脊髄もしくは皮下の位置(例えば、頭もしくは身体)内に配置されるか、または体腔内(例えば、心膜または腹膜嚢)に配置される。適切な大きさのポンプは、圧縮性構成物を圧縮および拡張するために必要とされる力を提供し得るモーター作動バッテリーによって、内部の該物質がリザーバーの内外を移動するように作動され得る。ポンプはまた、患者の身体部分(例えば、筋肉構造または心筋)の運動、患者の液体(例えば、CSFもしくは血液)の移動または心血管の運動(例えば、心筋、大動脈、肝臓の血管もしくは頚動脈血管の運動)などの生理学的誘導源によって作動され得る。
【0035】
特定の態様において、患者のバイオリズム源は、患者の心臓の電気的律動、心血管圧パルス、ICP波、または患者の動脈拍動による頭蓋内腔への動脈血侵入を適切に容易にする任意の源であり得る。別の態様において、ポンプを指示するバイオリズム同期装置は、マイクロプロセッサによって制御される。マイクロプロセッサはまた、当業者が、必要に応じて、患者のニーズに応じてバイオリズム同期装置を介してポンプの圧縮性構成物の圧縮および拡張を改変するのが可能となるように、外部から(例えば、ワイヤレスで)制御され得る。特定の態様において、バイオリズム源は患者の心臓の電気的律動であり、バイオリズム同期装置は心臓同期装置である。したがって、ポンプの圧縮性構成物の圧縮および拡張ならびに該物質の圧縮性構成物内外への運動は、患者の心臓の収縮期および拡張期に同期される(図8参照)。ポンプおよび心臓同期装置は、患者の身体の内部および外部いずれかに配置され得る。したがって、患者の身体内部に該装置の他の成分とともに配置されることに加え、同期装置は、振動性コンプライアンス装置に連結され得るが、同期装置が携帯可能および/または着用可能(例えば、ベルト上)であるように患者の身体の外側の位置(例えば、患者の皮膚上または皮下)に配置され得るか、または患者の身体の外側に配置され得、非携帯的位置(例えば、機械または台上)に配置され得る。
【0036】
振動性コンプライアンス装置は、患者の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間(硬膜下/クモ膜もしくは脳室)内に配置され得、その寸法は、該装置が配置される具体的な領域に従って異なり、当業者によって決定され得る。1つの態様において、患者の脳の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、約10〜約50mmの長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さを有する。別の態様では、患者の脳のCSF空間内に配置され得る圧縮性構成物は、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。また別の態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、約10〜約50mmの長さ、約1〜約10mmおよび約1〜約5mmの幅を有する。さらなる態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4椎体およびL5椎体の間に配置される。
【0037】
能動振動性コンプライアンス装置はまた、受動装置と同様、さらに頭蓋内モニターならびに血流および/または酸素プローブで構成され得る。1つの態様において、モニタリング装置は、モニタリング装置の測定に基づいて自動的にポンプの、圧縮性構成物の拡張および圧縮を調整し得る制御システムと連絡している。したがって、処置、疾患状態または他の因子による患者のICP波形またはCBFの変化は、頭蓋内モニター、血流および/または酸素プローブによって検出され得、かかる変化は、測定されたパラメータを有効に変更する必要に応じて、ポンプが圧縮性構成物の膨張および収縮をリアルタイムで調節するために手動で、または制御システムによって調整され得るように、制御システムによって記録され解釈される。制御システムは、上記のタスクを行なう能力を有する任意のものであり得、最も好ましくはマイクロプロセッサである。マイクロプロセッサは、ポンプの作用を操作するように遠隔的に(例えば、ワイヤレスで)制御され得る。
【0038】
本発明は、さらに、上記の能動振動性コンプライアンス装置を用いる振動性コンプライアンスシステムに関する。したがって、本発明は、圧縮性構成物、圧縮性構成物の拡張および圧縮のための圧縮性構成物に連結(couple)されたポンプ、ポンプに連結されたリザーバー、ならびに1つ以上の振動性コンプライアンス装置のポンプに連結された1つ以上のバイオリズム同期装置を有する2つ以上の振動性コンプライアンス装置で構成される振動性コンプライアンスシステムに関する。バイオリズム同期装置は、ポンプを患者の1つ以上のバイオリズムと同期させるために1つ以上の患者のバイオリズム源に連結される。最適なICP管理のために1つ以上の装置が一人の患者に使用され得る。任意の数の振動性コンプライアンス装置が該システムに使用され得るが、当業者によって適切であると思われるように、2つ以下の能動振動性コンプライアンス装置が同時に使用され得ることが多い。
【0039】
振動性コンプライアンスシステムの1つの態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、1つの空間から別の空間に移動され得る物質、好ましくは、液体、ガスまたは展性物質を含むバルーンカテーテルである。別の態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置の1つ以上のリザーバーが、頭もしくは身体の任意の頭蓋外、脊髄もしくは皮下空間または心膜もしくは腹膜嚢などの体腔内に配置され得る。
【0040】
振動性コンプライアンスシステムはまた、さらに、患者の頭蓋内空間内のICP、CBFおよび酸素を測定するための、好ましくは、マイクロプロセッサと連絡し、これによって制御される頭蓋内モニター、血流プローブおよび/または酸素プローブで構成され得る。好ましい態様において、バイオリズム同期装置はまた、該装置の圧縮性構成物の拡張および圧縮を、1つ以上のバイオリズムおよび必要に応じてモニタリング装置による測定の両方と協調させ得る、マイクロプロセッサと連絡し、これによって制御される。
【0041】
本発明は、さらに、心臓自体の収縮性を介して心臓の律動から振動性コンプライアンス装置の同期および物質(例えば、液体)を移動させるためのその出力を誘導する振動性コンプライアンス装置に関する。したがって、振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物、圧縮性構成物に連結されたチューブおよび患者の心膜腔内に配置され、チューブにも連結され、患者の心臓の収縮および拡張により自由な拡張および圧縮が可能なリザーバーで構成される。リザーバーは、心臓の拡張によって生じる力により圧縮し、次いで、心臓が収縮したとき失われる力より拡張するような適切な引張特性および弾性特性(例えば、プラスチックまたはシリコーン)を有する任意の材料で構成され得る。図9を参照すると、該装置のチューブ12は、圧縮性構成物11およびリザーバー13間の自由な交換を可能にする。1つの態様において、圧縮性構成物11は、チューブ12を介して圧縮性構成物から出て、圧縮性構成物11内に戻る運動を行ない得る任意の物質を含むバルーンカテーテルである。本明細書に記載のように、かかる物質は、当業者によって決定された特定の疾患を有する患者における該装置の使用に適切な液体、ガスまたは展性物質を含み得る。例えば、心臓が収縮すると、リザーバー(例えば、胸部バルーン)が拡張し、収縮期に圧縮性構成物(例えば、頭蓋内バルーンカテーテル)から液体が引き込まれる。拡張期に心臓が拡張すると、胸部バルーンが圧縮され、再膨張して液体を頭蓋内バルーンカテーテル内に戻す。別の態様において、圧縮性構成物は、心臓の律動がリザーバーを介して液体(例えば、CSFまたは血液)を頭蓋内または脊髄腔から空間(例えば、内部または外部)に移動(すなわち、迂回)する開放系で構成される。
【0042】
1つの態様において、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、患者の脳または患者の脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間の患者にとって最も有効であると考えられるどのような箇所にも配置され得る。例えば、患者の脳の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、好ましくは、約10〜約50mmの長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さを有し得る。患者のCSF空間の硬膜下/クモ膜または脳室空間内に配置される圧縮性構成物は、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有し得、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される組成物は、約10〜約50mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有し得る。好ましい態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4椎体およびL5椎体の間に配置される。
【0043】
振動性コンプライアンス装置は、さらに、患者の頭蓋内空間ICP、CBFおよび酸素を測定するための頭蓋内モニター、血流プローブおよび/または酸素プローブで構成され得る。これらの頭蓋内モニターは、臨床医がICPまたはCBFの任意の変化、結果として、治療の有効性をモニターすることを可能にする。
【0044】
本発明はまた、個体の脳毛細管および組織への動脈拍動の異常な伝達が低下または排除されるように個体の頭蓋内腔に進入する動脈拍動から個体の脳を保護する方法に関する。該方法は、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である。
【0045】
1つの態様において、圧縮性構成物は、移動可能で輸送可能であり、液体、ガスまたは展性物質である物質で構成されるバルーンカテーテルである。別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、リザーバーを含み、該物質は、収縮期にこのリザーバー移動される。任意の材料で作製され、弾性的に拡張および収縮する能力を有するリザーバーは、特定の態様において、内部圧縮性構成物に連結される。リザーバーは、頭蓋脊髄外、皮下または体腔内を含む患者の身体内のいくつかの場所に配置され得る。1つの態様において、リザーバーは、頭または身体内の皮下空間内に配置され、別の態様では、心膜または腹膜嚢などの体腔内に配置される。
【0046】
該方法の別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、その同期および作動能力を心臓の収縮性から誘導する。したがって、この態様では、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物を、心膜の嚢内に配置されるリザーバーに連結するチューブをさらに含む。リザーバーは、個体の心臓の収縮および拡張により自由な拡張および圧縮が可能であり、リザーバーの拡張および圧縮により、圧縮性構成物からの該物質の移動および圧縮性構成物への該物質の戻りが引き起こされる。
【0047】
該方法のまた別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は能動型であり、該装置は、さらに、圧縮性構成物およびリザーバーに連結されたポンプ、ならびにポンプに連結され、個体のバイオリズムの源に連結するためのバイオリズム同期装置で構成される。バイオリズム同期装置は個体のバイオリズムをモニターし、ポンプの、圧縮性構成物の拡張および圧縮をバイオリズムのもの同期させ、それにより、1つ以上の振動性コンプライアンス装置のポンプが圧縮性構成物から物質を移動させ、該物質を圧縮性構成物に戻す。バイオリズム同期装置は、好ましくは、マイクロプロセッサなどの制御システムと連絡している。バイオリズム源は、定期的な動脈血拍動の任意の生物学的律動であり得、1つの態様において、心臓の電気的律動、心血管圧またはICP波である。特定の態様において、バイオリズム源は個体の心臓の電気的律動であり、バイオリズム同期装置は心臓同期装置である。心臓同期装置は、個体の身体の内部または外部のいずれかに配置され得、当該技術分野で知られた任意の心臓同期装置であり得る。バイオリズム同期装置によりバイオリズムを同期させると、1つ以上の振動性コンプライアンス装置のポンプがモーター作動バッテリーまたはなんらかの生理学的誘導出力 (例えば、身体部分の運動、体液もしくは心血管の運動)によって作動され得る。
【0048】
該方法で使用される1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、個体の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。圧縮性構成物の寸法は、組成物が個体の脳または脊髄の硬膜外もしくは硬膜下/クモ膜または脳室CSF空間内に適切に適合し、個体を充分に処置し得るように当業者によって決定され得る。例えば、1つの態様において、個体の脳の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、約10〜約50mmの長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さ有し得る。別の態様において、個体の脳のCSF空間内に配置され得る圧縮性構成物は、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有し得る。また別の態様において、圧縮性構成物は、個体の脊髄の硬膜外腔内に配置され得、約10〜約50mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。さらなる態様において、個体の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4およびL5椎体の間に配置され得る。
【0049】
該方法は、頭蓋内モニター、血流プローブ(1つまたは複数)および/または酸素プローブ(1つまたは複数)を用いて個体のICP、CBFまたは酸素レベルを測定することをさらに含み得る。次いで、ポンプと連絡した制御システムは、1つの態様において、測定された個体のICP、CBFまたは酸素レベルに基づいて、1つ以上のポンプの、圧縮性構成物の拡張および圧縮を調整し得る。1つの態様において、制御システムは、ワイヤレスでも制御され得るマイクロプロセッサである。
【0050】
本発明はまた、頭蓋内水力学のいくつかの局面に取り組む方法に関する。該方法は、いくつかの疾患の状態によって引き起こされる頭蓋内水力学のこれらの種々の問題を明らかにし、これらはすべて、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で該物質を圧縮性構成物に戻すことによって治療され得、ここで、圧縮性構成物は自由な拡張および圧縮が可能である。該方法は、次いで、ICC、CBFおよび/またはICP拍動性/波形に影響を及ぼす。
【0051】
例えば、本発明は、個体においてICCを増大させる方法に関する。血液を頭蓋の閉鎖空間に侵入させるためには、脳は、動脈拍動の適正な緩衝を可能にする容積の変化に適合する脳の能力に依存性の状態であるコンプライアントでなければならない。例えば神経疾患によりWindkessel機構が崩壊した場合、脳は非コンプライアントになる。したがって、本発明の方法は、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、Windkessel効果を再形成し、個体においてICCを増大させる。
【0052】
また、本発明の方法は、CSF空間の大きさを調節することに関する。通常、脳は高い柔軟性を有し、CSF空間の容積は、脳脊髄液の増加または圧力の増加を含む多くの因子によって変化し得る。しかしながら、例えば水頭症などの多くの疾患状態では、CSF空間の変化の持続は、脳に対してマイナスであり得る(例えば、CSF液体容量の増加および/またはCBFの減少により)。したがって、本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮し得る圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、入力動脈拍動と同期させて個体のCSF空間の大きさを制御する方法に関する。特定の態様において、該方法は、神経疾患状態に使用されるが、CSF空間の大きさの調節が望ましい疾患のない個体(例えば、加齢における全般的血管欠損)においても使用され得る。
【0053】
該方法はまた、頭蓋内腔への動脈血の侵入をより良好にするために包膜嚢の容積容量を増大させることに関する。脳は硬い頭蓋内に封入されており、脳血管系が、入力動脈拍動に対してより傷つきやすくなる。しかしながら、これらの拍動は、主に包膜嚢によって緩衝される。加齢、脳血管の疾患、脳萎縮および脳出血後ならびに感染を含む種々の状態において、包膜嚢のコンプライアンスは障害される。したがって、本発明はまた、該方法を用い、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、個体の包膜嚢の容積容量を増大させ、個体の頭蓋内腔への動脈血の侵入を容易にする。包膜嚢の容積容量の増大は、動脈パルス波の入力の瞬間および持続の間に行なわれ、振動性コンプライアンス装置は、CSF拍動の動的吸収体として作用する。
【0054】
該方法は、さらに、個体の脳において、動脈血拍動を改変するために使用され得る。脳内の動脈血拍動の速度および力に影響し得るいくつかの因子がある。典型的には、Windkessel効果により、脳は、ほぼ連続的で均一な毛細管血流と思われるため、拍動は、脳に最小限の影響を有する。しかしながら、急性または慢性神経疾患状態などの異常な状態では、動脈血拍動の破壊および不均一な血流が起こる。したがって、本発明は、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことで、個体の脳において動脈血拍動を改変する方法に関する。該方法は、拍動性異常を矯正するためおよび/または脳機能を改善するための両方に使用され得る。
【0055】
本発明はまた、脳の血流を改変(例えば、増加または減少)する方法に関する。ICCの減少および/またはCSF容積もしくは圧力の増加は、血管抵抗、すなわち脳の血流の減少を引き起こし、結果として、脳血管の循環の減少を引き起こす。CBFの減少は、いくつかの血管および脳障害の特徴であり、この脳内の血液減少は、通常脳組織に送達される酸素の量の減少により脳組織を損傷する。したがって、本発明はさらに、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、個体の頭蓋内空間を調節することにより個体の脳の血流および脳血管の循環の効率を改変することに関する。
【0056】
本発明はまた、本発明の振動性コンプライアンス装置または振動性コンプライアンスシステムを埋め込むことにより、改変されたICC、CBFまたはICP拍動性を有する患者を処置する方法に関する。鬱血性心不全などの疾患、頚動脈(cartoid)内膜切除および心肺バイパス手術中では、ICP拍動性(およびCBF)は、通常および/または所望よりも低くなる。例えば、心肺バイパス手術中、回転ポンプにより、手術中、一定の血流が確保される。しかしながら、回転ポンプによるこの一定の血流は非拍動性、すなわち、拍動性は減少する。したがって、OCDはまた、脳の血流およびICP波形を増大するために使用され得る。あるいはまた、痴呆(例えば、アルツハイマー血管性痴呆、正常圧力水頭症)、水頭症などの疾患および血管痙攣中では、ICP拍動性は正常よりも高く、この場合、OCDは、ICP波形を減少させるために使用され得る。
【0057】
通常の加齢、およびいくつかの神経症状では、ICCの低下により、CSF緩衝性保護なしで脳への動脈拍動の直接伝達が可能になる。水頭症、脳卒中、痴呆、偏頭痛およびICCの減少が明白もしくは疑われる任意の他の疾患を含む、本発明の振動性コンプライアンス装置の1つで処置され得るいくつかの水力学的脳障害がある。
【0058】
水頭症は、CSF容量の異常な増大を特徴とし、これは、CSFの生成および吸収の不均衡によって引き起こされると従来考えられていた。しかしながら、現在、多くの人は、水頭症は、動脈血流の制限のため起こると考えている(Geitz, Neurosurg Rev, 27:145-165, 2004)。したがって、1つの態様において、該方法は、慢性水頭症、正常圧力水頭症、偽脳腫瘍およびスリット脳室症候群を含む水頭症障害を処置するために使用される。別の水力学的障害である脳卒中は、いくつかの様式で発現される疾患であり、これらはすべて、一般的に、脳の血流の減少および頭蓋内コンプライアンスの減少を引き起こす脳の出血および/または腫脹を伴う。したがって、別の態様において、該方法は、慢性脳卒中、微小血管疾患、痴呆、もやもや病、多発性梗塞性疾患、後部循環不足およびビンスワンガー病を含む種々の型の脳卒中を有する患者を処置するために使用される。同様に、痴呆はまた、ICCの減少を特徴とする疾患状態と確認された。動脈の拍動性の増大は脳毛細管組織を損傷し、脳血管流の効率の低下をもたらし、これが、痴呆に観察される脳機能の低下の原因の一部と考えられる。したがって、また別の態様では、血管性痴呆、アルツハイマー病および正常圧力水頭症は、該方法において振動性コンプライアンス装置の1つで処置され得る。興味深いことに、偏頭痛は、頭痛がICCの増大によって緩和され得ることを示す特徴を示すことがわかった。偏頭痛を有する人の脳は、頭蓋内血管のゆがみ、動脈血流の非同期およびCSF拍動性障害を示す。したがって、また別の態様において、該方法を用いて偏頭痛が処置され、処置される偏頭痛の型は、小児性および成人性偏頭痛ならびに難治性偏頭痛の両方である。
【実施例】
【0059】
前述の本発明の例は、単なる本発明の例示が意図され、本発明に包含される種々の態様に関する非限定的な例である。
【0060】
推定的実施例1. 振動性コンプライアンス装置の実験的試験
バルーン設計
バルーンカテーテルを、インビボ実験動物試験の前に、心臓周期の特定の設計パラメータ(すなわち、形状、容量移動)および活性化(すなわち、頻度、幅、持続時間)を満たすように設計し、作製する。バルーンカテーテルの典型例を図10および11に示す。設計パラメータは、被験体の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内のバルーンカテーテルの配置に基づいて異なる。例えば、個体の脳の硬膜外腔で使用されるバルーンカテーテルの寸法は、約10〜50mmの長さ、約5〜20mmの幅および約4〜5mmの厚さを含み得る。被験体の脳のCSF空間内に配置されるバルーンカテーテルの寸法は、約5〜10mmの長さ、約1〜10mmの幅および約1〜5mmの厚さであり得、個体の脊髄の硬膜外腔内に配置されるバルーンカテーテルのものは、約10〜50mmの長さ、約1〜10mmの幅および約1mm未満の厚さの概算寸法を有し得る。
【0061】
振動性コンプライアンス装置の評価
脳血管の血流およびCSF拍動性に対する振動性コンプライアンス装置の有効性は、記載(Johnson MJ et al, J. Neurosci Methods 91:55-65, 1999)の動物モデルを用いてインビボで評価される。簡単には、後頭下頭蓋骨局部切除を定位的に行ない、背側小脳虫部および脳幹の可視化を可能にする。両極性焼灼器、吸引および後退を用いて、硬膜およびクモ膜内に小さな開口を作製して第4脳室の底部の可視化を可能にし、これを介して、18ゲージ血管カテーテル(angiocath)およびシリンジに連結された柔軟性のシリコンカテーテルチューブ(1.5mm外径)を挿入する。次いで、カテーテルを第4脳室内に挿入し、0.50mLのシアノアクリルゲルを注入する。次いで、カテーテルを切断し、開放位置に放置する。硬膜を縫合し、すべての筋肉層を断続的な縫合で層状に閉じる。
【0062】
重量25〜30kgの5匹(n=5)のイヌ科若年成体動物を使用する。動物から脳の血流(CBF)に関するデータを、2つの独立した方法: 経頭蓋ドップラー(CBFTCDおよび脳ミクロスフィア注射(CBFMI)を用いて得る。
【0063】
ミクロスフィア(CBFMI): 循環血流に注入されるミクロスフィアは、脳の血流を測定するために使用され得る。局所血流は、目的の組織領域内の微細血管構造内の捕捉されるミクロスフィアの数に比例する(Hyemann et al, Prog. Cardiovasc. Dis., 1977)。安定な同位体標識ミクロスフィア(非放射性)が使用される(BioPAL TM, BioPhysics Assay Laboratory, Inc.)。屠殺時、各動物の右半球の8つの領域(下前頭、上側頭、前/後内側、後頭、小脳および尾状核)から、CBFを測定するための組織試料を収集し、BioPALによって処理する。
【0064】
経頭蓋内ドップラー(CBFTCD): CBFMI法に加え、TCDを用いてCBF平均/ピーク速度、強度におけるより動的な変化を評価する(図12、TCD参照)。2MHzパルス-波ドップラー(Multidop T, DWL-Compumedics, Sipplinggen, Germany)で、ヒトの内部頚動脈の頭蓋内部分に相当する仙骨脳動脈の高周波処理(insonation)を経時的に行なう。パルス反復周波数(PRF)を3kHzに固定し、最大空間ピーク-時間(tempral)平均強度(SPTA)は100mW/cm2であり、p=0.27hPa(ピーク屈折圧力) に相当する。ドップラー周波数スペクトルを42〜44の深度で記録する。シグナルをデジタルで得、コンピュータに保存し、CCF Depaetment of Radiologyによって提供されるソフトウエアによって解析する。正常値の参照流速は、Transcranial Doppler Ultrasonography,(編集Babilian VL, Wechsler LR. Mosby
Yearbook, Inc. 1993)から得られ得る。
【0065】
また、頭蓋内コンプライアンス、CSF拍動性(pulsatility)(頭蓋および脊髄)、動脈血(ABPp)および静脈血拍動性(VBPp)ならびに心拍出量(CO)に関するデータを収集する。慢性状態: CBFおよびCSFpデータを、CH誘導の前(基準値)、手術中に収集するので、それぞれの動物は自身の対照として役立つ。急性状態: OCD活性化の前、最中および後の(1)換気亢進、(2)CSF除去および(3)CSF輸液を含む激しい操作の間にCBFおよびCSFpをモニターする。慢性水頭症(CH)の重症度または程度を確認するために、3D容積測定MRIおよびICPモニタリングが行なわれている。次いで結果を、CBF、CSFpおよびICCなどの他の変化のパターンに相関させる。
【0066】
頭蓋ICP:ICPをモニターするために、硬膜下マイクロセンサーを挿入する小さなドリルの穴を開ける(Codman Camino Microsensor、Raynham、MA)(図12、ICP(1)参照)。同じぎざぎざの穴を用いて脳室内カテーテルを挿入し、CSFコンパートメントに接触可能にして、頭蓋内コンプライアンスが測定されるようにする。Massermannテクニックの変形法を用いて、CSF(0.2cc)を抜き取り挿入して、ICPをそれぞれ減少および増加させる。
【0067】
脊髄ICP:第二のICPマイクロセンサーおよび脳室内カテーテルを脊柱のCSF腰槽(L4〜L5)に挿入する(図12、ICP(2)参照)。このことにより、振動コンプライアンス装置の評価の際にICP拍動性の独立および/または同時モニタリングが可能となる。
【0068】
動脈および静脈圧/拍動性:また、内頚動脈(ABP)および内頸静脈にカテーテルを挿入し(20ゲージ血管カテーテル)、圧力変換器によりモニターして拍動波形を得る。マルチモデルデータ獲得システム(ADInstruments、PowerLabバージョン5.3.2)により、全ての手術中のモニタリングをオンラインでリアルタイムに収集する。これにより、ICP(頭蓋または脊髄)、ABPおよびVBPデータセットの同時収集ならびに解析が可能になる。
【0069】
振動コンプライアンス装置の埋め込み
図12に示すように、振動コンプライアンス装置を試験する。該装置を脳または脊髄に設置したが、バルーンカテーテル14はポンプ15および皮下レザバー16につながれ、ポンプ15は動物の心臓につながれた心臓同調器につながっている。インビトロ試験の際に同定されるパラメーター(つまり、体積、形状)に合わせるため、市販の小児用動脈内バルーンカテーテル(Datascope Corp., #0686-DM-0116-01)をポリマーlabで改良する。簡潔に、頭頂葉皮質の背側凸部上方の片側に小さなドリルの穴(5mm)を開ける。このぎざぎざの穴を通して抗膜上の空間内にバルーンカテーテルを入れ、動脈内ポンプ(Datascope Corp. CS100, Intellisync IAB pump, #0020-00-0463-01)につなぐ。同様に、改良脊髄バルーンカテーテル14を、L4〜L5椎体を通して腰槽に隣接する硬膜外腔に挿入する。慢性的な水頭症誘導手術の後に、頭蓋および脊髄振動コンプライアンス装置の両方をその場に残す。基準値およびCH誘導30日後にCBFおよびCSFp測定値が得られる際に振動コンプライアンス装置を手術中に作動させる。
【0070】
屠殺、組織調製、組織学および免疫組織化学
全ての動物を、塩化ペントバルビタールと吸入イソフルラン(isoflorane)を組み合わせたもので深く麻酔し、0.1M PBS中pH=7.4の4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて、頚動脈の両側カテーテルにより灌流する。肉眼病理学、凍結切片、および常套的な組織学(H&E、クレシルバイオレット)ならびに生体適合性についての免疫組織化学分析の試験のために、脳を切除し、4% PFAで24時間固定後、段階的スクロース溶液でクリオプロテクトする。
【0071】
実施例2. 振動コンプライアンス装置の作製
図13A〜Bに示すような作動性OCDの一態様を、以下の方法により作製した:
方法1
1. サイズ試験:ヒートシールによりPVCフィルムを用いて、(所定の)サイズ、容積推定値に基づきPCVバルーンを作製した。ポリウレタン系接着剤を使用して、10センチメートルPVC圧力チューブ(Becton Dickinson PT06)をメス型の末端で接着して、排出口とした。
2. SLA(ステレオリソグラフィー)マンドレル(mandrel)デザインおよび作製(build):円形または球形のバルーンの内寸法を、サイズ試験デザインを満たすように作製した。ディスクは、溶液キャスティングに求められる容積、寸法および性能に適合するのに必要なデザインの形をとる。固形モデルはPro/Engineerにより生成され、ディスクはUV硬化性樹脂を用いてSLAで作製された。
3. シリコーンラバー/石膏モールド作製:UV硬化性樹脂ディスクを研磨して、ディスクの半分をシリコーンラバー(P50, Silicone Inc.)で鋳造して、もう半分を石膏で鋳造した。
4. 粘土製マンドレル作製:モールドのシリコーン製の半分に、セラミック作製に使用した湿性の粘土を充填した。モールドの石膏製の半分を、粘土を充填したシリコーン製部分に押し付けて粘土を乾燥させた。モールドを開いて粘土製ディスクを取り出した。次いで、粘土製ディスクを研磨した。粘土製ディスクに穴を開け、ピンを差込み接着してバルーン排出口のマンドレルとした。ディスクを卵黄の薄い層でコートして乾燥させた。コートされた粘土製ディスクをパンケーキ型バルーンのマンドレルとした(硬膜外OCD)。
5. ポリウレタン溶液鋳物(浸漬コーティング):ポリウレタン溶液鋳物(浸漬コーティング)を調製した:10% ChronoFlex(登録商標)AR:生体耐久性医薬等級ポリウレタン(Cardiotech International, Inc.)。マンドレルをChronoflex溶液に浸漬し、二軸回転セットアップで回転させて溶液をマンドレル表面上に均等に流した。回転セットアップを60℃のオーブンに入れ、Chronoflex溶液から溶媒(ジメチルアセトアミド、DMAC)を蒸発させた。各コートは乾燥に2〜4時間を要し、厚みを作製するために4〜6回のコートが必要であった。その後、完全に乾燥または硬化させるために、コートしたマンドレルをオーブン中に24時間静置した。
6. 粘土製マンドレルの取り出し:ピンを引っ張ってマンドレルから抜き、ピンを抜いたマンドレルを水に沈めた。水を粘土に吸収させて粘土を柔らかくした。柔らかくなった粘土を排出口から搾り出し、バルーンおよびバルーン内表面を清浄した。バルーンに空気を満たして漏れについて試験した。
7. バルーン/カテーテル組立て:清浄したバルーンを60℃のオーブンに入れて乾燥させた。排出口の縁をトリミングして5〜10mmの排出口の長さを一定にした。カテーテルの接着領域にChronoflex ARをかけ、次いで排出口に挿入した。バルーンカテーテルを60℃のオーブン中に2時間置いた。
【0072】
方法2
1. シリコーンラバーモールド作製:研磨したUV硬化性樹脂SLAディスクの半分をシリコーンラバー(P50, Silicone Inc.)で鋳造し、もう半分を半透明シリコーンラバー(MDX4-4210, Prosthetic Silicone Elastomer)で鋳造してシリコーンモールドの組を作製した。
2. 低融点混合体マンドレルの作製:低融点混合体(LMA 158, Small Parts, Inc.)を 70〜75℃で融解させた。次いで融解した混合体を、排出口ピンを有するシリコーンモールドに入れた。必要であれば、アクリル-Green Spot Putty (3M、#05114-5960)で欠けた部分を埋め、該混合体マンドレルを#400紙やすりで研磨した。研磨したマンドレルを5%PVA(ポリビニルアルコール、DU PONT等級Chronoflex溶液)で浸漬コートし、浸漬したマンドレルを二軸回転セットアップで回転させ、マンドレル表面に溶液を均等に流した。回転セットアップを60℃のオーブンに入れ、溶媒、ジメチルアセトアミド(DMAC)をChronoflex溶液から蒸発させた。各コートは乾燥に2〜4時間要し、厚みを作製するために4〜6回のコートが必要であった。その後、完全に乾燥または硬化するために、コートしたマンドレルをオーブン中に24時間静置した。
3. ポリウレタン溶液鋳物(浸漬コーティング):浸漬コーティングを調製した:10%ChronoFlex(登録商標)AR:生体耐久性医薬等級ポリウレタン(Cardiotech International, Inc.)。マンドレルをChronoflex溶液に浸漬し、二軸回転セットアップで回転させ、マンドレル表面に均等に溶液を流した。回転セットアップを60℃のオーブンに入れ、溶媒、ジメチルアセトアミド(DMAC)をChronoflex溶液から蒸発させた。各コートは乾燥に2〜4時間要し、厚みを作製するために4〜6回のコートが必要であった。その後、完全に乾燥または硬化するために、コートしたマンドレルをオーブン中に24時間静置した。
4. 混合体マンドレルの取り出し:Chronoflex ARコートしたマンドレルを70〜75℃の水に浸漬して混合体を融解させた。排出口のピンを引き抜いて、融解した複合体を排出口から流出させた。PVAが完全に溶解するまで、バルーンを60℃の水に2時間以上静置した。40〜60℃の温水を用いてバルーンの内表面をすすぎ、PVAおよび混合体粒子の残りを除去した。次いで、バルーンに空気を満たして漏れについて試験した。その後、バルーンを60℃のオーブンで乾燥させた。
5. バルーン/カテーテル組立て:排出口の縁をトリミングして5〜10mmの排出口の長さを一定にした。カテーテルの接着領域にChronoflex ARをかけ、次いで排出口に挿入した。バルーンカテーテルを60℃のオーブン中に2時間置いた。
【0073】
実施例3. 慢性水頭症(CH)の動物モデル
慢性の閉塞性水頭症の実験動物モデルは、十分許容される脳室の大きさの段階的な増大を生じ、一過的でわずかな臨床的効果を生じた。従来のモデルとは異なり、分析を混乱させ得る病巣の圧迫または一般的な炎症はなかった。動物の大きさのために、このモデルはCBF、CSF流体力学(つまり、体積および圧力)、頭蓋内コンプライアンス、ならびにCSFおよび脳病理学とその関係の臨床的に関係のある測定が可能である。
【0074】
カテーテルの挿入およびシアノアクリレートゲル(0.4〜0.6cc)の注射による後脳水道および第4脳室の手術的な閉塞により、成体の雑種犬において、慢性の閉塞性水頭症が誘導された(図20参照)。小後頭頭蓋切除により、後頭蓋窩が露呈され、小脳虫部、背側脳幹、および脊髄、ならびに開かれた第4脳室基底のマジャンディ孔に広がるクモ膜が可視化される。シリンジにつながれた可とう性のシリコーンカテーテルで、第4脳室の体部にシアノアクリル酸ゲルを注射した。
【0075】
臨床的に、動物は嗜眠、欲求消失の一過的な増加を典型的に示し、幾分かの後肢の運動失調を示す。回復および成果をモニターするために、神経学的試験および臨床的指標を開発した。しばしば被刺激性反応性において長期間の変化が示されたが、病巣の持続性の神経傷害を示した動物はなかった。この実験モデルは、水頭症、この障害ならびに小脳虚血/低酸素症の発症および進行の機構、ならびにCSF転換(つまり、シャント術(shunting))の治療効果に関する適応反応の調査に極めて有用であることが証明された。この実験モデルは、急性対慢性の水頭症に関するプロセス、および脳の血流、酸素運搬およびCSF流体力学における違い(例えば産生、除去、代謝回転)と容量(content)、ならびに大脳適応に関する機構の理解を増大させた。さらに、このモデルは、臨床設定において生じ、制御された実験室環境において検討し、新規の処置および/またはプロトコルを開発し、最終的にこれらの発見を臨床の分野に戻して実行し得る、問題に直接取り組むために使用され得る。
【0076】
脳室の大きさは、水頭症の評価において最も頻繁に使用されるパラメータである。脳室の巨大化および誘導の成功が、脳室系(側方、第3および第4脳室、モンロー孔、ならびに中脳水道)および脳において測定された。閉塞により生じる脳室肥大の程度を評価するために、水頭症誘導の前(基準)および後にMRIを収集した(図21)。イヌモデルの開発において、誘導した動物の81%が水頭症を発症した。Evan比率スコアで測定したところ、首尾よく誘導された21匹の水頭症の動物のうち、6匹の動物が軽い水頭症を有し、7匹が中程度の水頭症を発症し、かつ8匹が重度の水頭症を発症した。CH成功の評価において、Evan比率の代わりに定量的3D容積測定解析を測定する(図22A)。3D容積測定解析を用いて、基準の脳室容積の推定値(範囲:0.103〜1.908cc)を誘導後の時点(範囲:1.019〜8.565cc)と比較した。また、脳室対脳の割合(V:B)を基準(平均、7.473 x 10e-3cc;範囲9.51 x 10e-5〜1.800 x 10e-2cc)と誘導60日後以降(平均、3.30 x 10e-2cc;範囲、9.70 x 10e-3〜7.90 x 10e-2cc)で比較した。
【0077】
頭蓋内圧(ICP)は水頭症の重症度および明瞭度によって変化し、しばしば処置の時期および程度を決定するために使用される1つの基準となる。モデルの開発中、ICPを正常範囲(平均、8.73+1.49mmHg、範囲、5.00〜13.40mmHg)内にするために動物を観察した。ICPマイクロセンサーを埋め込んだ2〜3週間の試験の間、最初の研究における5匹の動物は、手術後、「正常範囲」内のICPリーディング(reading)を有した。しかしながら、比較により、脳の血流の試験における動物の小集団からの最近のデータは、基準とCH誘導後の動物の間にICPの有意差を示さなかった(図22B)。ICP測定値はまた、頭蓋内脳コンプライアンス(Fukuhara et al., 2001)およびCSF代謝回転の計算に有用であった。
【0078】
ICPの急激な増加は、嘔吐、食欲不振、不均等、歩行運動失調、および周囲の認知力の低下などの神経学的欠損を生じ得る。脳の常套的な組織学(H+E、CV)は、完全な大脳半球細胞構築を示し、一般的な炎症の形跡は示さなかった。ゲルの閉塞に隣接して、脳幹および小脳細胞構築は、いくらかの第4脳室内の上衣下グリオーシスを伴って正常であったが、病巣圧迫の形跡はほとんどなかった。慢性の閉塞性水頭症のこの実験モデルは、局所圧迫または一般的な炎症を伴わない確実な病巣閉塞の生成において唯一のものであった。
【0079】
現在、CSF循環、またはCSF生成の速度およびCSF除去の速度は、ICPモニタリング技術の進歩に伴って、より正確かつ確実になっている。Massermanテクニックおよび輸液技術の改変を用いて、CSF輸液および回復に対するICP回復に対する反応速度が、継続的にかつデジタル方式で記録され得る。該発見は、CSF輸液および除去に対するICP応答の速度が、動物研究について最近認可されたMulti-Measure Modality装置(CMA-Integra Neuroscience, Inc.)を用いて、デジタル方式でかつリアルタイムで収集され得ることを示した。制御された麻酔条件(pH=7.40、pCO2=35.0〜45.0mmHg)下で、標準的CSF除去およびCSF輸液技術を用いて、CSF生成および除去を手術中に得た。結果は、手術によって6週間より長い慢性水頭症を誘導された動物において、CSF輸液後のICP応答の速度の低下、およびCSF除去後のICP応答の速度の有意な増加を示した。
【0080】
脳の血流(CBF):微小球注入法により、前述のCHの動物モデルにおいて減少したCBFが生じた(図23)。簡潔に、CH誘導手術の直後、30〜40%のCBFの減少が起こった。16週後またはそれ以降で、低下した心臓機能にある程度関係すると思われる、CBFのさらに有意な減少(40〜60%)が起こった。これらの発見は、CH患者がCBFの不足を有するという臨床的発見と一致した。この結果は経頭蓋ドップラーテクニックを用いて確認されているところである。
【0081】
頭蓋内コンプライアンス(ICC):CHの動物モデルを用いて、経時的にかつ異なるICP条件でICCを調査した(図24A〜24B参照)。CHは、CHの慢性段階(>12週)におけるICCの減少に続いて起こる、迅速かつ一過的なICCの増加に関係した。また、正常ICP(5〜15mmHg)ではCHのICCは対照動物よりも高かったが、高(15〜25mmHg)ICPではICCは対照被験体よりも低かった。CSFシャント処置の効果も調査した。(Luciano, et at., 2001, J. Cereb. Blood Flow Metab. 21(3):285-94およびFukuhara et al., 2001, J Neurosurg. 94(4):573-581、参照。)
【0082】
脳脊髄液拍動性(CSFp):手術対照動物と比較して、CH誘導手術後のICPp振幅は増加した。また、ICPp振幅は、基準と比較して、換気亢進、ならびに除去および輸液についての高い感度を示した(図25)。このデータはまた、CHと対照の間の差を示す、さらなるフーリエ変換解析に使用した(Congress of Neurological Surgeons, 2005)。
【0083】
結果の要約
閉塞性水頭症の動物モデルは、段階的な脳室の巨大化およびICP、ならびに低下したCBFおよび異常なCSF拍動を伴う成体の水頭症を、正確に再現した。病巣非圧迫性、非炎症性で、良く制御され、かつ反復可能な閉塞において唯一のものである該モデルは、より「純粋」な、水頭症および流体力学的障害の実験を可能にした。動物の大きさのために、いくつかの生理学的実験を、関連のある臨床的な推測により実施した。このモデルは、容積および圧力の変化に関して特徴があり、CSF容量、代謝回転、および脳病理学について新規の測定法が現れた。このモデルから収集されたデータより、減少したCBFおよびCSFの流体力学が、CHの病態生理学ならびに他の神経変性疾患および脳の機能不全に関係する障害に役割を果たすことが示唆された。CBFの改善およびCSF拍動の減少における振動コンプライアンス装置の有効性は、慢性水頭症のモデルを用いて、インビボで実験的に試験され得る。
【0084】
推定的実施例4. 手術中拍動性測定およびOCD法
水頭症などの神経外科処置の管理におけるパルス圧力測定の重要性を示す最近の証明のために、頭蓋内(ICP)、動脈血(ABP)および静脈血(VBP)拍動を記録する。(図26の手術中デザイン参照)。オンライン/リアルタイムデジタルキャプチャーシステム(AD Instruments、PowerLab、バージョン5.2)を用いて、この情報を得る。標準的ICPモニタリング(Camino, IntergraNeurosciences)によりICP測定値を得、内/総頚動脈および内/総頸静脈のカテーテル法(20ゲージ、血管カテーテル)によりABPおよびVBPを得る。ABPおよびVBPの情報をコンピューターモニターに接続し、デジタルシグナルに変換する。この最小の侵襲方法は、被験動物に痛みや苦痛の増加を与えない。この方法、つまりICP、ABP、およびVBP拍動性モニタリングは、他の手術を行ないながら同時に行なわれ、どのような場合でも実験対象に影響を与えない。集められた情報を、OCD機能の目的のために組み合わせて、かつ統合して使用する。ICP、EKG、ABPおよびVBPのモニタリングは通常麻酔(1〜2%イソフルラン)下で手術中に行なう。被験体から直接得られたECGデータを、A/Dコンバータを介して、任意の要求段階遅延の制御に使用されるコンピューター移す。次いで、変換されたデータを、バルーン装置を膨張および収縮させるために必要な所望の情報を備えたバルーンポンプ装置に送る。ICP、ABP、VBP、生ECG、修正ECGおよびバルーン膨張/収縮波形を含む全てのデータはデジタル方式で捕捉され、保管される。このデータを用いて、CBFの改善および異常ICP拍動の減少におけるOCDの有効性を最適化する。
【0085】
実施例5. OCDの基本型および試験
OCDの基本型のデザインと開発:
頭蓋硬膜外での使用のためにOCDの基本型を設計した(図27A〜B)。シリコーンラバーで構成されるこのOCDバルーンを、容積膨張範囲0.5〜5ccで、頭蓋硬膜外留置のために特別に設計した(およそ直径25mm、厚さ1mm)。膨張/収縮の速い速度および伝達の容積のために、OCDカテーテルを、充填した気体(例えば、ヘリウムまたは空気)で操作し、市販の部品から開発されたポンプシステムで作動させた(図27C〜E参照)。(1)コンピューター制御、任意波形の、(3)直径24mm、50mmストローク抗静止摩擦エアシリンダー(Airpot Corp.)に接触した(2)ステッピングモーター駆動型ボールねじリニアアクチュエータ(Oriental Motors, Inc)を備えた往復ポンプ、(4)ECG心拍タコメーター、(5)R波弁別器、および(6)デジタル遅延で、OCDポンプシステムを作製した。RS-232シリアルリンクおよびシリアルインターフェイスソフトウェアによる特注設計ソフトウェアにより、全ての肺の活動(activation)を制御およびモニターするコンピューター。
【0086】
実験的試験結果
安全性および有効性の試験において、OCDは:
1. 埋め込まれた振動バルーン装置の安全な留置および許容、
2. 心臓に同調したバルーン容積変化によるICP曲線の変調、特に減少、
3. バルーンの同調操作に基づくICP効果の可逆性、
4. 同調バルーン操作による増加した脳の血流、
5. バルーン操作およびICPカーブ効果に基づく可逆的な脳の血流の変化、
6. 同調バルーン操作による増加した可逆的酸素運搬、
を示さなければならない。
【0087】
3匹の実験動物(イヌ)においてOCDを首尾よく使用し、血流、酸素運搬、および拍動性におけるその有用性を評価した。血流、血圧および速度を測定するために、市販の血流(Transonic Systems Inc., model #3PBS; Itheca, NY USA)および血圧プローブ(Volcano, ComboWire XT, Rancho Cordova, CA, USA)、酸素プローブ(Integra LICOX System, Model #CC1-SB; Plainsboro, NJ USA)、経頭蓋ドップラー(TCD)、微小球血流技術(BioPhysics Assay Laboratory, Inc.; #A-0MS01; Worchester, MA USA)による定量的方法を使用した。OCDの有効性を、正常動物、ならびに減少したCBFおよび酸素、および変化した頭蓋内コンプライアンスを有することが示されている(Johnson MJ et al., J. Neurosci Methods 91:55-65, 1999; Fukuhara et al., 2001, J Neurosurg. 94(4):573-581; Dombrowski SM et al., J. Cereb Blood Flow Metab, 2006)慢性水頭症(実施例3参照)の動物において示した。
【0088】
頭蓋硬膜外OCDの使用により、以下:
(1)右前方頭頂部(約3cm2)開頭術によりODCバルーンは首尾よく埋め込まれ、動物にほとんどまたは全く生理的(つまり、心拍数、動脈血圧、動脈血ガス等)に悪影響を及ぼすことなく作動した、
(2)ICPパルス振幅はおよそ70%減少し得、該システムの停止により可逆的であった(図28)、
(3)CBF速度は、左/右(L/R)吸引管(内部頚動脈に相当)および脳底動脈においてTCD経由で得られ、OCD作動により増加し(図29)、非作動で可逆的であった;増加したCBF速度の効果は、大脳半球の対側(埋め込まれたバルーン装置の反対側)に対して同側(埋め込まれたバルーン装置と同じ側)でより大きかった、
(4)前頭葉皮質への酸素飽和度は、慢性水頭症の実験動物において、OCD作動の際に約40%向上し、酸素送達において生理学的に有意な増加を示唆した、
(5)インビボにおける広大なOCD埋め込みは80日間良好に許容された、
ことが示された。
【0089】
推定的実施例6. さらなるOCD試験および構成
OCDはさらに、
1. 増加した血流速度に加えて、増加した脳の血流、
2. 増加した流速とポンプ操作および平らになったICP波形の両方との関係
3. 流速および酸素の効果の可逆性(つまり、同調バルーン操作に依存)
4. 生理学的有意性を確立するための流速および酸素効果の大きさおよび分布の推定
5. 効果の信頼性および他の交絡因子(CO2、温度、麻酔のレベル等)からの独立
を示す能力について、試験され得る。
【0090】
明確で可逆的なOCDの効果、および有意性の指示(空間的、時間的および生理学的)、信頼性ならびに脳の血流に影響を与える他の因子からの独立の確立に焦点を当てるために、さらなる試験にはより多くの動物(最低で2〜3匹および好ましくは8匹の動物)が必要である。明確で可逆的な効果を示した後で、発見の一貫性および質に依存して、再現性を保証するため、かつ効果のさらなる確立および特徴づけのためのバルーン機能および生理学的測定法における変形法を含むために、その後試験をさらなる動物を用いて再現し得る。
【0091】
OCDまたはOCDシステムの他の望ましい構成としては、
1. それぞれの実験について、より効果的な「空中での」バルーン機能変調を容易にするための「使用者が使い易い」ポンプインターフェイス、これにより、それぞれの調製についてより経験的な実験法、およびより多くのデータが可能となる、
2. 血流のリアルタイム評価を可能にする血流プローブ、
3. 血流の変化の局所的評価を可能にする流量画像化(例えばSPECT)装置、
4. コンプライアンスの広域の影響を評価するためおよび装置の最適な位置を決定するための、拡大領域ICP波形モニタリングモジュレーションおよび/またはより多くのICPセンサー、
が挙げられる。
【0092】
本発明は、参照により、その好ましい態様に特定して示され、記載されるが、本明細書において、形式および詳細における種々の変更は、付属の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、なされ得ることを、当業者は理解しよう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、種々の障害における異常な拍動性を示す概略図である。
【図2】図2は、OCDによって改変され得るICP波形の特徴を示す概略図である。
【図3】図3は、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物の種々の形状および大きさの図解である。
【図4】図4は、振動性コンプライアンス装置ならびに脳の硬膜外とCSF空間および脊髄の硬膜外腔を含む種々の位置の該装置の配置の態様を示す概略図である。
【図5】図5は、脊髄のCSF空間の振動性コンプライアンス装置の態様の配置を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の振動性コンプライアンス装置が配置され得る硬膜外およびCSF空間をさらに示す概略図である。
【図7】図7は、圧縮性構成物に連結されたポンプおよび外部リザーバーを有する振動性コンプライアンス装置の態様を示す概略図である。ポンプは、これが連結されるバイオリズム同期装置によってバイオリズムに同期される。
【図8】図8は、心臓同期装置によって心臓に同期されるポンプを有する振動性コンプライアンス装置における、収縮期の圧縮性構成物から外部リザーバーへの物質の移動および拡張期の外部リザーバーから圧縮性構成物への該物質の戻りを示す概略図である。
【図9】図9は、心臓の横に配置され、チューブによって圧縮性物質に連結された外部リザーバーを有する振動性コンプライアンス装置の態様を示す概略図である。
【図10】図10は、振動性コンプライアンス装置の態様の写真である。
【図11】図11は、収縮および膨張した振動性コンプライアンス装置の態様の図である。
【図12】図12は、振動性コンプライアンス装置のインビボでの試験およびモニタリングを示す概略図である。
【図13】図13A〜13Bは、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物の別の設計の写真である。
【図14】図14は、受動頭蓋内振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図15】図15は、受動脊髄振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図16】図16は、能動頭蓋内硬膜外振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図17】図17は、能動頭蓋内CSF脳室内振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図18】図18は、能動脊髄硬膜外振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図19】図19は、能動脊髄CSF振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図20】図20は、第4脳室内へのシアノアクリレートの注射によって水頭症を外科的に誘導したイヌ脳の矢状面を示す写真である。(FM= モンロー孔; III= 第3脳室; CA= 中脳水道)。
【図21】図21は、水頭症誘導の前と後の両方における重度、中程度、軽度の水頭症を有する、または水頭症なしのイヌの脳の一連の磁気共鳴画像(MRI)である。
【図22】図22Aは、慢性閉塞性水頭症の実験モデルにおける経時的なCSF脳質容積の変化を示すグラフである。図22Bは、慢性閉塞性水頭症の実験モデルにおける経時的なICPの変化を示すグラフである。
【図23】図23は、慢性水頭症の実験モデルにおける経時的なCBFの差を検出し、定量するための安定な同位体標識の使用を示すグラフである。
【図24】図24A〜24Bは、誘導慢性水頭症を有する動物において、CSFシャント処置の前後で対照動物と比較した図24(A)正常ICP(5〜15mmHg)および図24(B)高ICP(15〜25mmHg)でのICCの変化を示すグラフである。
【図25】図25は、誘導慢性水頭症を有する動物におけるICPパルス変化を示すグラフである。
【図26】図26は、振動性コンプライアンス装置を用いる研究のための手術中の装備を示す概略図である。
【図27】図27A〜Bは、バルーンカテーテルを含む頭蓋-硬膜外振動性コンプライアンス装置の典型例の写真である。図27Cは、OCDシステムのECG心拍タコメータ、R-波弁別器およびデジタル遅延の写真である。図27Dは、OCDシステムの膨張-収縮インターフェースソフトウェアプログラムを実行するコンピュータの写真である。図27Eは、OCDシステムのコンピュータ制御往復ポンプ、ステッピングモーターおよび抗静止摩擦エアシリンダーの写真である。
【図28】図28は、OCDシステムを用いた ICP、ECGおよびABPの手術中のデータ収集を示すグラフである。
【図29】図29は、慢性水頭症の動物における、OCD 装置とともに経頭蓋ドップラーを用いた左ICA、脳底動脈および右ICAの血流速度の増加を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年7月21日に出願された米国特許仮出願第60/701,596号および2005年11月10日に出願された米国特許仮出願第60/735,388号の恩典を主張し、上述の出願の全教示の内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
脳の血流(CBF)の減少は、慢性水頭症、脳卒中および痴呆を含む最も一般的で破壊的な脳障害に見られる大きな問題である。臨床的および実験的証拠の増加により、これらのおよびCBFの減少の他の非症的な神経障害の原因に潜在するものが頭蓋内コンプライアンス(compliance)(ICC)の欠損に由来することが示される。
【0003】
血液が固い頭蓋の閉鎖空間内に侵入するためには、脳は、「コンプライアント」となり得るか、またはそうでなければならない。この概念は、脳外動脈から脳脊髄液(CSF)を介して静脈および脊髄腔に動脈血パルス波を伝導させ、パルス波が脳およびその毛細管を迂回するのを可能にすることを伴う頭蓋内動力学に重要である。通常、動脈は、コンプライアントである場合、弾性リザーバーとして作用し、動脈壁が収縮期にパルス波の水圧エネルギーの一部を吸収する。このエネルギーは、次いで、一定の毛細管流動を維持するために拡張期に放出される。このプロセスは「Windkessel効果」と呼ばれ、ほぼ連続的な非拍動性毛細管流動内への動脈血流のパルスを変化させ、動脈のパルス圧が毛細管および脳組織に伝達される速度および力を減少させてこれらをこのような力から保護する。
【0004】
しかしながら、多くの脳障害では、頭蓋内水力学が異常となる。動脈拍動を制限する事象は、これらの頭蓋内水力学的異常を引き起こし、頭蓋内コンプライアンスの減少をもたらし得る。例えば、クモ膜下空間に対する外傷および傷害およびその内部での癒着は、動脈拍動を制限し、頭蓋内コンプライアンスの減少を引きこし得る。同様に、毛細管パルス圧の増大をもたらす任意の血管障害はICCの減少をもたらし得る。
【0005】
頭蓋内コンプライアンスの減少を伴う脳障害において、脳に達する動脈血拍動は、あったとしても、不充分に減衰または緩衝される。Windkessel効果による緩衝の破壊は、直接脳に作用する頭蓋内パルス圧または拍動性の増大をもたらし、毛細管および脳組織を損傷させる。また、頭蓋内コンプライアンスの減少は、血管抵抗の増大、対流性血流に対する血管抵抗性の増大(圧縮された動脈および静脈による)および、結果として、脳血管の血流効率の低下を引き起こす。実際、脳に対するこれらの傷害は、血管性痴呆、水頭症、脳卒中および他の神経疾患に見られる浮腫、脳の薄化、CBFの減少および脳機能の低下の説明となり得る。
【0006】
従来、脳内のCSFの体積の増加を特徴とする水頭症などの脳障害において、該疾患の病因は、中枢神経系の脈絡膜叢(choriod plexus)内のCSF形成と毛細管のCSF吸収との間の不均衡によるものであると考えられていた。したがって、水頭症を処置するためのアプローチの1つは、CSF区画からクモ膜下空間への過剰の液体の排出またはシャント術を含んだ。しかしながら、シャント術は、数名の患者の処置では有効ではなく、一部では、該疾患の病因は、頭蓋内コンプライアンスの減少のためであり得ると考えられているが、シャント術の問題は充分対処され得ていない。さらに、シャント術は侵襲性であり、脳を損傷する、および/または脳内で感染を引き起こす可能性を有し、CSFが非生理学的レベルで排出され、水頭症に対する永久的な解決策ではないため、問題である。同様に、脳卒中または痴呆などの他の脳障害の処置は、該疾患に見られ、実際、該疾患の根本的原因であり得るICCの低下に対処するものではない。
【0007】
さらに、ICC、脳の血流(CBF)または頭蓋内圧(ICP)拍動性/波形を改変(例えば、増加または減少)することが有利であり得る数多くの非神経疾患または神経症状がある。例えば、血管痙攣などの状態は異常に高いICP拍動性を特徴とするが、鬱血性心不全、頚動脈(caroitid)内膜切除または心肺バイパス術を経験している、および/または経験した個体は、望ましくない低いICP拍動性を有することが知られている(図1参照)。
【0008】
これらの疾患/状態はすべて、異常なおよび/または望ましくないICC、CBFおよびICP拍動性/波形を改変する処置の恩恵を被り得る。したがって、必要とされているのは、脳内の動脈拍動の適正な緩衝を回復させることによりICCを回復させ、適切となるように脳への血流を改変させる、および/または拍動性が正常範囲内になるようにICP波形を調整する装置である。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、個体において、頭蓋内コンプライアンス(ICC)、脳の血流(CBF)、頭蓋内圧(ICP)拍動性/波形またはその組合せを改変する装置およびシステムに関する。特定の態様において、本発明の装置およびシステムは、個体において、ICC、CBFおよび/またはICP拍動性/波形を回復するために使用され得る。該装置は、ICC、CBFおよび/またはICP拍動性/波形を改変(増加または減少)するため、圧縮性構成物の収縮および拡張を振動(oscillate)させることにより機能を果たす。1つの態様において、該装置は、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由な拡張および圧縮が可能な圧縮性構成物を備える「振動性コンプライアンス装置」(OCD)であり、また、本明細書においては、「カデンス(cadence)」ともいう。さらなる態様において、圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質(例えば、ヒドロゲル)などの物質が充填されたバルーンカテーテルである。別の態様において、振動性コンプライアンス装置は、頭蓋脊髄外、皮下または体腔内に配置され得る圧縮性構成物に連結された外部リザーバーをさらに備える。また別の態様において、振動性コンプライアンス装置はまた、患者の頭蓋内空間内のICPまたはCBFを測定するための頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブで構成される。振動性コンプライアンス装置は、患者の脳または脊髄いずれかの硬膜外腔またはCSF空間内に配置され得る。
【0010】
別の態様において、振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物、圧縮性構成物の拡張および圧縮を提供する圧縮性構成物に連結されたポンプ、ポンプに連結された外部リザーバー、ならびにポンプを患者のバイオリズムと同期させるためにポンプに連結され、患者のバイオリズムの源を連結するバイオリズム同期装置(sync)で構成される。1つの態様において、圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質などの物質を含むバルーンカテーテルである。別の態様において、外部リザーバーは、頭蓋脊髄外腔もしくは皮下空間または体腔内に配置され得る。また別の態様において、バイオリズム同期装置は心臓同期装置であり、さらに、バイオリズム源は、患者の心臓の電気的律動/信号である。別の態様において、ポンプは、モーター作動バッテリーまたは生理学的誘導(physiologically-derived)源のいずれかによって動力を供給される。この態様において、振動性コンプライアンス装置はまた、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF空間内に配置され得る。別の態様において、振動性コンプライアンス装置はまた、患者のICP波形を測定するための頭蓋内モニター、血流プローブおよび/または酸素プローブなどの1つ以上のモニタリング装置で構成され、さらに、これらの1つ以上のモニタリング装置の測定に基づいてポンプの圧縮性構成物の拡張および圧縮を自動的に調整するポンプと連絡した制御システムを備え得る。
【0011】
別の態様において、本発明は、圧縮性構成物、圧縮性構成物に連結されたチューブ、および患者の心膜腔内に配置され患者の心臓の収縮および拡張によって自由な拡張および圧縮が可能なようにチューブに連結された外部リザーバーで構成される振動性コンプライアンス装置に関する。チューブは、圧縮性構成物を外部リザーバーに連結し、両者間の自由な交換を可能にする。1つの態様において、圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質を含むバルーンカテーテルである。別の態様において、圧縮性構成物は、患者の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。
【0012】
本発明はまた、振動性コンプライアンスシステムに関する。1つの態様において、振動性コンプライアンスシステムは、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由な拡張および圧縮が可能な圧縮性構成物を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を含む。別の態様において、振動性コンプライアンスシステムは、圧縮性構成物、圧縮性構成物の拡張および圧縮のために圧縮性構成物に連結されたポンプ、ポンプに連結された外部リザーバー、ならびにポンプを患者のバイオリズムと同期させるために患者のバイオリズムの源と連結するバイオリズム同期装置を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を含む。両方の振動性コンプライアンスシステムにおいて、1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、液体、ガスまたは展性物質などの物質を含むバルーンカテーテルであり得る。振動性コンプライアンス装置は、患者の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。また別の態様において、振動性コンプライアンスシステムは、さらに、患者の頭蓋内空間内のICPまたはCBFを測定するための頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブで構成され得る。
【0013】
本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の頭蓋内腔に侵入する動脈拍動から個体の脳を保護するための方法に関する。1つの態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、内部空間に配置され、液体、ガスまたは可鍛性(maleable)物質などの物質を含むバルーンカテーテルである。また別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、個体の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、外部空間内に配置された外部リザーバーを備え得、頭蓋脊髄外、皮下または体腔内に配置され得る。
【0014】
本発明はまた、収縮期に、圧縮性構成物を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の内部空間から外部空間に圧縮性物質を移動させ、
拡張期に、圧縮性構成物を有する1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて外部空間から個体の内部空間に該物質を戻すことによって個体において頭蓋内コンプライアンスを増大させる方法に関する。
【0015】
本発明はさらに、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、入力動脈拍動と同期させて個体のCSF空間の大きさを制御する方法に関する。
【0016】
本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含む、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の頭蓋内腔内への動脈血の侵入を助長するために個体の包膜嚢の容積容量を増大させる方法に関する。
【0017】
本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の脳において、動脈血拍動を改変する方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である、個体の頭蓋内空間を調整することにより、個体の脳の血流および脳血管の循環の効率を増大させる方法に関する。
【0019】
本発明はまた、振動性コンプライアンス装置または振動性コンプライアンスシステムを個体内に埋め込むことを含む、改変されたICC、CBFおよび/またはICP拍動性を有する個体(例えば、患者)の処置方法に関する。1つの態様において、患者は、血管痙攣、鬱血性心不全または頚動脈内膜剥離術(例えば、頚動脈閉塞/狭窄)などの脳の血流が改変(例えば、低下、増強)された疾患/状態について処置される。別の態様において、OCDは、心肺バイパス術を受けている患者に埋め込まれる。この態様において、必要に応じて、心肺バイパス術前、最中および/または後のいずれかで1つ以上のOCDが患者内に埋め込まれる。また別の態様において、患者は、水頭症、脳卒中、痴呆または偏頭痛を含む、水力学的脳障害について処置される。該方法のさらなる態様において、処置される水頭症は、慢性水頭症、正常圧力水頭症、偽脳腫瘍またはスリット脳室症候群(slit ventricle syndrome)であり得る。別の態様において、処置される脳卒中は、急性脳卒中、慢性脳卒中、微小血管疾患、痴呆、もやもや病、多発性梗塞性疾患、後部循環不足またはビンスワンガー病であり得る。また別の態様において、処置される痴呆は、血管性痴呆、アルツハイマー病および正常圧力水頭症であり得る。別の態様において、処置される偏頭痛は、小児偏頭痛、成人偏頭痛または難治性偏頭痛である。
【0020】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示す本発明の好ましい態様の以下のより特定の記載から明らかである。図において、同様の参照符号は異なる図において全体を通して同じ部分を示す。図面は必ずしも縮尺が同じでなく、本発明の原理を示す際に強調している。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、一般的に、個体における頭蓋内コンプライアンス(ICC)、脳の血流(CBF)、頭蓋内圧(ICP)拍動性/波形またはその組合せを改変または調整(例えば、増加、減少)する装置に関する。特定の態様において、該装置は、ICCを、個体の脳毛細管および組織への動脈拍動の異常な伝達が低下および/または完全に排除されるように回復させ得、CBFは、これが所望のおよび/または正常範囲内になるように改変され、ICP拍動性(例えば、ピーク振幅(amplitude)、エネルギー、傾きおよび/または形状)が必要に応じて調整される(図1および2参照)。これは、入力動脈血流拍動と同期すると、空間内の容積容量を増大させる個体の頭蓋内空間の大きさの変化を小さく制御することにより達成される。入力血流での頭蓋内空間の大きさの調整は、脳血管の循環および、結果として、個体の脳の血流の効率の増大をもたらす。該装置は、例えば、水頭症、脳卒中、痴呆および偏頭痛、血管痙攣 鬱血性心不全、頚動脈内膜剥離術および心肺バイパス術の前、その際またはその後を含むいくつかの状態の1つに苦しむ患者を処置するために使用され得る。
【0022】
したがって、本発明は、個体において、改変されたICC、CBFまたはICP拍動性を提供するための「振動性コンプライアンス装置」(OCD)または「カデンス」関する。そうすることにおいて、振動性コンプライアンス装置は、最小限の脳の侵襲でこれらの障害に対処する。該装置は、それを必要とする対象に、改変(例えば、増加または減少)したICC、CBFまたはICP拍動性を特徴とする問題を処置するために、急性状況および慢性状況の両方において使用され得る。
【0023】
1つの態様において、振動性コンプライアンス装置は、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由に拡張および圧縮し得る圧縮性構成物で構成され、受動的に頭蓋内容量を調整する(受動振動性コンプライアンス装置)。この拡張および圧縮は、例えば、個体のICPによるものであり得る。バルーンカテーテル、平坦嚢または球状系などの容積が閉鎖空間内で繰り返しおよび/または再生可能に変化(すなわち、拡張および収縮)し得、哺乳動物内での使用に適した任意の圧縮性構成物が使用され得る。特定の態様において、圧縮性構成物はバルーンカテーテルである。バルーンカテーテルは、当業者に公知の任意のものであり得、市販されている(例えば、Datascope Corp. #0686-DM-0116-01)。図3に示すように、圧縮性構成物1は種々の形状および大きさであり得、該装置における使用のために当業者によって適切に修正され得る。圧縮性構成物は、約0.5〜約2.0立方センチメートル(cc)の容積容量を有し得る。特定の態様において、圧縮性構成物は、約0.75〜約1.75ccまたは約1〜約1.5ccの容積容量を有し得る。
【0024】
圧縮性構成物は、頭蓋内圧または生物学的パルス(すなわち、動脈または心臓のパルス圧)などの力によって頭蓋円蓋部内外に移動(すなわち、運搬または輸送)され得る物質を備え得る。該物質は、液体(例えば、液)、気体(例えば、ヘリウム、酸素、二酸化炭素、空気もしくは気体の組合せ)または展性物質であり得る。展性物質は、その多くが市販されているいくつかのヒドロゲルの1種類、または変形可能な固体もしくは半固体(例えば、水銀もしくはポリマー)を含み得る。特定の態様において、該物質は完全に固体状態でない(例えば、該物質は液または半固体)。振動性コンプライアンス装置における使用に必要な該物質の容積は、選択される圧縮性物質に従って変わり、該物質の性質、個体内の振動性コンプライアンス装置の配置および患者の充分な処置に必要とされる圧縮性構成物の寸法に基づいて当業者に容易に決定される。
【0025】
さらなる態様において、圧縮性構成物は閉鎖系(例えば、バルーンカテーテル、平坦嚢または球状系)ではない。代わりに、圧縮性構成物は、移動可能物質、特にCSFまたは血液などの液をCSFまたは脊髄の空間外に迂回させる開放系(例えば、開放カテーテル)である。
【0026】
振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物に連結されたリザーバーをさらに備え得る。1つの態様において、リザーバーは患者の外部にある(すなわち、患者の身体の外側に配置される)。特定の態様において、リザーバーは患者の頭蓋の外部にある。リザーバーは、例えば、圧縮性構成物(例えば、バルーンカテーテル)が圧縮状態(例えば、個体のICPにより)の場合、内部に該物質(例えば、液体、ガスまたは展性物質)が移動され得る空間を提供するために使用され得る。圧縮性構成物と同様、リザーバーは、拡張および収縮する(例えば、弾性的に)能力を有する任意の材料(例えば、プラスチックまたはシリコーン)で作製され得、頭蓋外または脊髄の空間、心膜または腹膜嚢などの頭もしくは身体の皮下空間または体腔内などの種々の位置に配置され得る。特定の態様において、リザーバーは、皮下空間内に配置され、圧縮性構成物に連結される。
【0027】
別の態様において、該装置は、患者のICPを測定するための頭蓋内モニターを含み得る1つ以上のモニタリング装置を含む。いくつかのICPモニターが市販されており(例えば、SpiegelbergまたはCodman & Shurtleff, Inc.から)、その任意のものが該装置の一部として使用され得る。脳室内カテーテル、光ファイバー(fibreoptic)モニター、クモ膜下ボルト(bolt)、硬膜外モニターおよび経頭蓋ドップラーを含む多くの型のICPモニターが利用可能である。さらなる態様において、1つ以上のモニタリング装置はまた、CBFを測定するための血流プローブ(1つまたは複数)および/または 血液によって脳に運ばれる酸素レベルを測定するための酸素プローブ(1つまたは複数)を含み得る。これらのプローブは当該技術分野において周知であり、また、市販されている(例えば、Transonic Systems, Inc., Volcano ComboWire XT, Integra LICOX system)。該装置における使用のために選択されるモニターの型(頭蓋内、血流、酸素)は、処置される疾患を含むいくつかの因子に依存し、特定の患者のニーズに基づいて当業者によって最良に決定される。振動性コンプライアンス装置は、頭蓋内波形パルス圧およびCBFが改変されるように設計されるため、これらのモニタリングおよび測定装置により、臨床医が直接関係のある情報を収集し、振動性コンプライアンス装置の性能を最適化することが可能になる。
【0028】
振動性コンプライアンス装置は、それ自体が、患者の頭蓋内容量およびコンプライアンスに影響するいくつかの場所に配置され得る。例えば、図4および5を見ると、振動性コンプライアンス装置は、患者の脳の硬膜外腔2もしくはCSF空間3のまたは患者の脊髄の硬膜外腔4もしくはCSF空間5内の当業者が適切と考えるどのような箇所にも配置され得る。振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物の寸法は、脳または脊髄の硬膜外もしくはCSF(すなわち、硬膜下/クモ膜または脳室)空間内に適合するようなものである(図6参照)。1つの態様において、圧縮性構成物は、患者の脳の硬膜外腔内に配置され得、約10〜約50ミリメートル(mm)の長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さを有する。あるいはまた、別の態様において、圧縮性構成物は、患者の脳のCSF空間内に配置され得、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。また別の態様において、圧縮性構成物は、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置され得、約10〜約50mm長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。さらなる態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4椎体およびL5椎体の間に配置される。また、圧縮性構成物の大きさを、患者の頭蓋内容量を有効レベルに増大させるように修正することが必要であり得る。したがって、当業者は、好ましくは、特定の患者に対して患者の特定の処置のニーズに適合させるために圧縮性構成物の寸法を変更し得る。
【0029】
別の態様において、本発明は、2つ以上の振動性コンプライアンス装置
を備える振動性コンプライアンスシステムに関する。特定の態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置は、同時に使用される。振動性コンプライアンスシステムは、上記の受動振動性コンプライアンス装置、すなわち、個体のICC、CBFおよび/またはICP拍動性に影響を与えるために自由な拡張および圧縮が可能な圧縮性構成物を有する2つ以上の振動性コンプライアンス装置を含むシステムの2つ以上を含む。任意の数の振動性コンプライアンス装置が、受動振動性コンプライアンスシステムにおいて使用され得、適切な数は、臨床医によって決定され、患者を充分に処置して頭蓋内容積、コンプライアンスおよび脳の血流を増大するのに必要な装置の数に基づいて計算される。したがって、特定の患者に使用される振動性コンプライアンス装置の数は、処置される疾患重篤性に依存し得る、すなわち、より多くの装置がより重症な疾患を有する患者には必要とされ得る。
【0030】
さらなる態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置はまた、頭蓋外、脊髄腔および/または皮下の位置あるいは体腔内に配置され得る上記の1つ以上のリザーバーを備える。
【0031】
本発明はまた、患者のICPではなくポンプによって駆動される振動性コンプライアンス装置に関する。1つの態様において、ポンプを患者のバイオリズムと同期させる。この態様において、患者のICCは能動的に調整される(能動振動性コンプライアンス装置)。図7を参照すると、振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物6、圧縮性構成物6に連結された圧縮性構成物6の拡張および圧縮のためのポンプ7、ポンプ7およびポンプ7に連結されたバイオリズム同期装置9に連結されたリザーバー8、患者のバイオリズム源10に連結されたバイオリズム同期装置9で構成される。したがって、バイオリズム同期装置9はバイオリズム源10をモニターし、圧縮性構成物6を患者のバイオリズムと同期して圧縮および拡張させるようにポンプ7を始動させる。その結果、ポンプ7は、圧縮性構成物6をバイオリズムと同期して(例えば、動脈血と同期して)能動的に圧縮および拡張し、それにより、動脈血流入により収縮期に頭蓋内空間を増大させる。
【0032】
本明細書で使用されるように、「バイオリズム同期装置」は、患者のバイオリズム源をモニターし、振動性コンプライアンス装置のポンプを始動させ得る任意の適当な装置である。例えば、バイオリズム同期装置は、心臓の電気的パルス波(電気的律動、信号)を捕らえ、ポンプをそのパルスと同期させる心電図(ECGまたはEKG)モニターである。バイオリズム同期装置として作用し、特定のバイオリズムをモニターし得る装置は公知であり、当該技術分野において使用されている。例えば、市販の心臓同期装置(Datascope 大動脈バルーン)は、本発明において使用するのに適切である。また、本明細書において使用されるように、バイオリズム源は、モニターされ得る任意の生理学的律動である。例えば、バイオリズム源としては、パルス(例えば、頚動脈パルスなどの動脈のパルス)、心臓の律動(例えば、心拍圧および/または電気的パルス/律動)あるいは頭蓋内パルスが挙げられる。
【0033】
1つの態様において、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、物質(すなわち、液体、ガスまたは展性物質)で構成されるバルーンカテーテルである。受動振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物と同様、能動振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、機械的ポンプ7によって発揮される力によって1つの空間から別の空間に移動され得る任意の物質を含有する哺乳動物での使用に適当な任意の圧縮性構成物であり得る。圧縮性構成物は、閉鎖系(例えば、バルーンカテーテル)または開放系(例えば、開放カテーテル)で構成され得、開放系では、圧縮性構成物は、液体物質(例えば、CSFまたは血液)を空間(例えば、内部または外部)に迂回させる。圧縮性構成物での使用に適切な物質は、当業者にわかるとおり、圧縮性構成物の大きさおよび配置ならびに患者の疾患状態を含むいくつかの因子に依存する。振動性コンプライアンス装置での使用に必要とされる該物質の容量は、当業者によって決定され得(例えば、該物質の性質、振動性コンプライアンス装置の配置および患者充分に処置するのに必要な該装置の寸法に基づいて)、特定の態様では、圧縮性構成物の拡張および圧縮は、約0.5〜約25ccの該物質を患者の内部空間からリザーバーに移動させる。特定の態様において、約0.75〜約1.75ccまたは約1〜約1.5ccの該物質が患者の内部空間からリザーバーに移動される。
【0034】
能動振動性コンプライアンス装置はまた、いくつかの他の態様を有する。1つの態様において、リザーバーは、頭蓋外、脊髄もしくは皮下の位置(例えば、頭もしくは身体)内に配置されるか、または体腔内(例えば、心膜または腹膜嚢)に配置される。適切な大きさのポンプは、圧縮性構成物を圧縮および拡張するために必要とされる力を提供し得るモーター作動バッテリーによって、内部の該物質がリザーバーの内外を移動するように作動され得る。ポンプはまた、患者の身体部分(例えば、筋肉構造または心筋)の運動、患者の液体(例えば、CSFもしくは血液)の移動または心血管の運動(例えば、心筋、大動脈、肝臓の血管もしくは頚動脈血管の運動)などの生理学的誘導源によって作動され得る。
【0035】
特定の態様において、患者のバイオリズム源は、患者の心臓の電気的律動、心血管圧パルス、ICP波、または患者の動脈拍動による頭蓋内腔への動脈血侵入を適切に容易にする任意の源であり得る。別の態様において、ポンプを指示するバイオリズム同期装置は、マイクロプロセッサによって制御される。マイクロプロセッサはまた、当業者が、必要に応じて、患者のニーズに応じてバイオリズム同期装置を介してポンプの圧縮性構成物の圧縮および拡張を改変するのが可能となるように、外部から(例えば、ワイヤレスで)制御され得る。特定の態様において、バイオリズム源は患者の心臓の電気的律動であり、バイオリズム同期装置は心臓同期装置である。したがって、ポンプの圧縮性構成物の圧縮および拡張ならびに該物質の圧縮性構成物内外への運動は、患者の心臓の収縮期および拡張期に同期される(図8参照)。ポンプおよび心臓同期装置は、患者の身体の内部および外部いずれかに配置され得る。したがって、患者の身体内部に該装置の他の成分とともに配置されることに加え、同期装置は、振動性コンプライアンス装置に連結され得るが、同期装置が携帯可能および/または着用可能(例えば、ベルト上)であるように患者の身体の外側の位置(例えば、患者の皮膚上または皮下)に配置され得るか、または患者の身体の外側に配置され得、非携帯的位置(例えば、機械または台上)に配置され得る。
【0036】
振動性コンプライアンス装置は、患者の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間(硬膜下/クモ膜もしくは脳室)内に配置され得、その寸法は、該装置が配置される具体的な領域に従って異なり、当業者によって決定され得る。1つの態様において、患者の脳の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、約10〜約50mmの長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さを有する。別の態様では、患者の脳のCSF空間内に配置され得る圧縮性構成物は、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。また別の態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、約10〜約50mmの長さ、約1〜約10mmおよび約1〜約5mmの幅を有する。さらなる態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4椎体およびL5椎体の間に配置される。
【0037】
能動振動性コンプライアンス装置はまた、受動装置と同様、さらに頭蓋内モニターならびに血流および/または酸素プローブで構成され得る。1つの態様において、モニタリング装置は、モニタリング装置の測定に基づいて自動的にポンプの、圧縮性構成物の拡張および圧縮を調整し得る制御システムと連絡している。したがって、処置、疾患状態または他の因子による患者のICP波形またはCBFの変化は、頭蓋内モニター、血流および/または酸素プローブによって検出され得、かかる変化は、測定されたパラメータを有効に変更する必要に応じて、ポンプが圧縮性構成物の膨張および収縮をリアルタイムで調節するために手動で、または制御システムによって調整され得るように、制御システムによって記録され解釈される。制御システムは、上記のタスクを行なう能力を有する任意のものであり得、最も好ましくはマイクロプロセッサである。マイクロプロセッサは、ポンプの作用を操作するように遠隔的に(例えば、ワイヤレスで)制御され得る。
【0038】
本発明は、さらに、上記の能動振動性コンプライアンス装置を用いる振動性コンプライアンスシステムに関する。したがって、本発明は、圧縮性構成物、圧縮性構成物の拡張および圧縮のための圧縮性構成物に連結(couple)されたポンプ、ポンプに連結されたリザーバー、ならびに1つ以上の振動性コンプライアンス装置のポンプに連結された1つ以上のバイオリズム同期装置を有する2つ以上の振動性コンプライアンス装置で構成される振動性コンプライアンスシステムに関する。バイオリズム同期装置は、ポンプを患者の1つ以上のバイオリズムと同期させるために1つ以上の患者のバイオリズム源に連結される。最適なICP管理のために1つ以上の装置が一人の患者に使用され得る。任意の数の振動性コンプライアンス装置が該システムに使用され得るが、当業者によって適切であると思われるように、2つ以下の能動振動性コンプライアンス装置が同時に使用され得ることが多い。
【0039】
振動性コンプライアンスシステムの1つの態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、1つの空間から別の空間に移動され得る物質、好ましくは、液体、ガスまたは展性物質を含むバルーンカテーテルである。別の態様において、2つ以上の振動性コンプライアンス装置の1つ以上のリザーバーが、頭もしくは身体の任意の頭蓋外、脊髄もしくは皮下空間または心膜もしくは腹膜嚢などの体腔内に配置され得る。
【0040】
振動性コンプライアンスシステムはまた、さらに、患者の頭蓋内空間内のICP、CBFおよび酸素を測定するための、好ましくは、マイクロプロセッサと連絡し、これによって制御される頭蓋内モニター、血流プローブおよび/または酸素プローブで構成され得る。好ましい態様において、バイオリズム同期装置はまた、該装置の圧縮性構成物の拡張および圧縮を、1つ以上のバイオリズムおよび必要に応じてモニタリング装置による測定の両方と協調させ得る、マイクロプロセッサと連絡し、これによって制御される。
【0041】
本発明は、さらに、心臓自体の収縮性を介して心臓の律動から振動性コンプライアンス装置の同期および物質(例えば、液体)を移動させるためのその出力を誘導する振動性コンプライアンス装置に関する。したがって、振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物、圧縮性構成物に連結されたチューブおよび患者の心膜腔内に配置され、チューブにも連結され、患者の心臓の収縮および拡張により自由な拡張および圧縮が可能なリザーバーで構成される。リザーバーは、心臓の拡張によって生じる力により圧縮し、次いで、心臓が収縮したとき失われる力より拡張するような適切な引張特性および弾性特性(例えば、プラスチックまたはシリコーン)を有する任意の材料で構成され得る。図9を参照すると、該装置のチューブ12は、圧縮性構成物11およびリザーバー13間の自由な交換を可能にする。1つの態様において、圧縮性構成物11は、チューブ12を介して圧縮性構成物から出て、圧縮性構成物11内に戻る運動を行ない得る任意の物質を含むバルーンカテーテルである。本明細書に記載のように、かかる物質は、当業者によって決定された特定の疾患を有する患者における該装置の使用に適切な液体、ガスまたは展性物質を含み得る。例えば、心臓が収縮すると、リザーバー(例えば、胸部バルーン)が拡張し、収縮期に圧縮性構成物(例えば、頭蓋内バルーンカテーテル)から液体が引き込まれる。拡張期に心臓が拡張すると、胸部バルーンが圧縮され、再膨張して液体を頭蓋内バルーンカテーテル内に戻す。別の態様において、圧縮性構成物は、心臓の律動がリザーバーを介して液体(例えば、CSFまたは血液)を頭蓋内または脊髄腔から空間(例えば、内部または外部)に移動(すなわち、迂回)する開放系で構成される。
【0042】
1つの態様において、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、患者の脳または患者の脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間の患者にとって最も有効であると考えられるどのような箇所にも配置され得る。例えば、患者の脳の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、好ましくは、約10〜約50mmの長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さを有し得る。患者のCSF空間の硬膜下/クモ膜または脳室空間内に配置される圧縮性構成物は、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有し得、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される組成物は、約10〜約50mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有し得る。好ましい態様において、患者の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4椎体およびL5椎体の間に配置される。
【0043】
振動性コンプライアンス装置は、さらに、患者の頭蓋内空間ICP、CBFおよび酸素を測定するための頭蓋内モニター、血流プローブおよび/または酸素プローブで構成され得る。これらの頭蓋内モニターは、臨床医がICPまたはCBFの任意の変化、結果として、治療の有効性をモニターすることを可能にする。
【0044】
本発明はまた、個体の脳毛細管および組織への動脈拍動の異常な伝達が低下または排除されるように個体の頭蓋内腔に進入する動脈拍動から個体の脳を保護する方法に関する。該方法は、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことを含み、ここで、圧縮性構成物は拡張および圧縮が可能である。
【0045】
1つの態様において、圧縮性構成物は、移動可能で輸送可能であり、液体、ガスまたは展性物質である物質で構成されるバルーンカテーテルである。別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、リザーバーを含み、該物質は、収縮期にこのリザーバー移動される。任意の材料で作製され、弾性的に拡張および収縮する能力を有するリザーバーは、特定の態様において、内部圧縮性構成物に連結される。リザーバーは、頭蓋脊髄外、皮下または体腔内を含む患者の身体内のいくつかの場所に配置され得る。1つの態様において、リザーバーは、頭または身体内の皮下空間内に配置され、別の態様では、心膜または腹膜嚢などの体腔内に配置される。
【0046】
該方法の別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、その同期および作動能力を心臓の収縮性から誘導する。したがって、この態様では、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は、圧縮性構成物を、心膜の嚢内に配置されるリザーバーに連結するチューブをさらに含む。リザーバーは、個体の心臓の収縮および拡張により自由な拡張および圧縮が可能であり、リザーバーの拡張および圧縮により、圧縮性構成物からの該物質の移動および圧縮性構成物への該物質の戻りが引き起こされる。
【0047】
該方法のまた別の態様において、1つ以上の振動性コンプライアンス装置は能動型であり、該装置は、さらに、圧縮性構成物およびリザーバーに連結されたポンプ、ならびにポンプに連結され、個体のバイオリズムの源に連結するためのバイオリズム同期装置で構成される。バイオリズム同期装置は個体のバイオリズムをモニターし、ポンプの、圧縮性構成物の拡張および圧縮をバイオリズムのもの同期させ、それにより、1つ以上の振動性コンプライアンス装置のポンプが圧縮性構成物から物質を移動させ、該物質を圧縮性構成物に戻す。バイオリズム同期装置は、好ましくは、マイクロプロセッサなどの制御システムと連絡している。バイオリズム源は、定期的な動脈血拍動の任意の生物学的律動であり得、1つの態様において、心臓の電気的律動、心血管圧またはICP波である。特定の態様において、バイオリズム源は個体の心臓の電気的律動であり、バイオリズム同期装置は心臓同期装置である。心臓同期装置は、個体の身体の内部または外部のいずれかに配置され得、当該技術分野で知られた任意の心臓同期装置であり得る。バイオリズム同期装置によりバイオリズムを同期させると、1つ以上の振動性コンプライアンス装置のポンプがモーター作動バッテリーまたはなんらかの生理学的誘導出力 (例えば、身体部分の運動、体液もしくは心血管の運動)によって作動され得る。
【0048】
該方法で使用される1つ以上の振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物は、個体の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内に配置され得る。圧縮性構成物の寸法は、組成物が個体の脳または脊髄の硬膜外もしくは硬膜下/クモ膜または脳室CSF空間内に適切に適合し、個体を充分に処置し得るように当業者によって決定され得る。例えば、1つの態様において、個体の脳の硬膜外腔内に配置され得る圧縮性構成物は、約10〜約50mmの長さ、約5〜約20mmの幅および約4〜約5mmの厚さ有し得る。別の態様において、個体の脳のCSF空間内に配置され得る圧縮性構成物は、約5〜約10mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有し得る。また別の態様において、圧縮性構成物は、個体の脊髄の硬膜外腔内に配置され得、約10〜約50mmの長さ、約1〜約10mmの幅および約1〜約5mmの厚さを有する。さらなる態様において、個体の脊髄の硬膜外腔内に配置される圧縮性構成物は、患者のL4およびL5椎体の間に配置され得る。
【0049】
該方法は、頭蓋内モニター、血流プローブ(1つまたは複数)および/または酸素プローブ(1つまたは複数)を用いて個体のICP、CBFまたは酸素レベルを測定することをさらに含み得る。次いで、ポンプと連絡した制御システムは、1つの態様において、測定された個体のICP、CBFまたは酸素レベルに基づいて、1つ以上のポンプの、圧縮性構成物の拡張および圧縮を調整し得る。1つの態様において、制御システムは、ワイヤレスでも制御され得るマイクロプロセッサである。
【0050】
本発明はまた、頭蓋内水力学のいくつかの局面に取り組む方法に関する。該方法は、いくつかの疾患の状態によって引き起こされる頭蓋内水力学のこれらの種々の問題を明らかにし、これらはすべて、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で該物質を圧縮性構成物に戻すことによって治療され得、ここで、圧縮性構成物は自由な拡張および圧縮が可能である。該方法は、次いで、ICC、CBFおよび/またはICP拍動性/波形に影響を及ぼす。
【0051】
例えば、本発明は、個体においてICCを増大させる方法に関する。血液を頭蓋の閉鎖空間に侵入させるためには、脳は、動脈拍動の適正な緩衝を可能にする容積の変化に適合する脳の能力に依存性の状態であるコンプライアントでなければならない。例えば神経疾患によりWindkessel機構が崩壊した場合、脳は非コンプライアントになる。したがって、本発明の方法は、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、Windkessel効果を再形成し、個体においてICCを増大させる。
【0052】
また、本発明の方法は、CSF空間の大きさを調節することに関する。通常、脳は高い柔軟性を有し、CSF空間の容積は、脳脊髄液の増加または圧力の増加を含む多くの因子によって変化し得る。しかしながら、例えば水頭症などの多くの疾患状態では、CSF空間の変化の持続は、脳に対してマイナスであり得る(例えば、CSF液体容量の増加および/またはCBFの減少により)。したがって、本発明はまた、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮し得る圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、入力動脈拍動と同期させて個体のCSF空間の大きさを制御する方法に関する。特定の態様において、該方法は、神経疾患状態に使用されるが、CSF空間の大きさの調節が望ましい疾患のない個体(例えば、加齢における全般的血管欠損)においても使用され得る。
【0053】
該方法はまた、頭蓋内腔への動脈血の侵入をより良好にするために包膜嚢の容積容量を増大させることに関する。脳は硬い頭蓋内に封入されており、脳血管系が、入力動脈拍動に対してより傷つきやすくなる。しかしながら、これらの拍動は、主に包膜嚢によって緩衝される。加齢、脳血管の疾患、脳萎縮および脳出血後ならびに感染を含む種々の状態において、包膜嚢のコンプライアンスは障害される。したがって、本発明はまた、該方法を用い、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、個体の包膜嚢の容積容量を増大させ、個体の頭蓋内腔への動脈血の侵入を容易にする。包膜嚢の容積容量の増大は、動脈パルス波の入力の瞬間および持続の間に行なわれ、振動性コンプライアンス装置は、CSF拍動の動的吸収体として作用する。
【0054】
該方法は、さらに、個体の脳において、動脈血拍動を改変するために使用され得る。脳内の動脈血拍動の速度および力に影響し得るいくつかの因子がある。典型的には、Windkessel効果により、脳は、ほぼ連続的で均一な毛細管血流と思われるため、拍動は、脳に最小限の影響を有する。しかしながら、急性または慢性神経疾患状態などの異常な状態では、動脈血拍動の破壊および不均一な血流が起こる。したがって、本発明は、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させ、拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことで、個体の脳において動脈血拍動を改変する方法に関する。該方法は、拍動性異常を矯正するためおよび/または脳機能を改善するための両方に使用され得る。
【0055】
本発明はまた、脳の血流を改変(例えば、増加または減少)する方法に関する。ICCの減少および/またはCSF容積もしくは圧力の増加は、血管抵抗、すなわち脳の血流の減少を引き起こし、結果として、脳血管の循環の減少を引き起こす。CBFの減少は、いくつかの血管および脳障害の特徴であり、この脳内の血液減少は、通常脳組織に送達される酸素の量の減少により脳組織を損傷する。したがって、本発明はさらに、収縮期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で、拡張および圧縮が可能である圧縮性構成物から物質を移動させること、および拡張期に1つ以上の振動性コンプライアンス装置を用いて個体の頭蓋内または髄腔内空間で圧縮性構成物に該物質を戻すことにより、個体の頭蓋内空間を調節することにより個体の脳の血流および脳血管の循環の効率を改変することに関する。
【0056】
本発明はまた、本発明の振動性コンプライアンス装置または振動性コンプライアンスシステムを埋め込むことにより、改変されたICC、CBFまたはICP拍動性を有する患者を処置する方法に関する。鬱血性心不全などの疾患、頚動脈(cartoid)内膜切除および心肺バイパス手術中では、ICP拍動性(およびCBF)は、通常および/または所望よりも低くなる。例えば、心肺バイパス手術中、回転ポンプにより、手術中、一定の血流が確保される。しかしながら、回転ポンプによるこの一定の血流は非拍動性、すなわち、拍動性は減少する。したがって、OCDはまた、脳の血流およびICP波形を増大するために使用され得る。あるいはまた、痴呆(例えば、アルツハイマー血管性痴呆、正常圧力水頭症)、水頭症などの疾患および血管痙攣中では、ICP拍動性は正常よりも高く、この場合、OCDは、ICP波形を減少させるために使用され得る。
【0057】
通常の加齢、およびいくつかの神経症状では、ICCの低下により、CSF緩衝性保護なしで脳への動脈拍動の直接伝達が可能になる。水頭症、脳卒中、痴呆、偏頭痛およびICCの減少が明白もしくは疑われる任意の他の疾患を含む、本発明の振動性コンプライアンス装置の1つで処置され得るいくつかの水力学的脳障害がある。
【0058】
水頭症は、CSF容量の異常な増大を特徴とし、これは、CSFの生成および吸収の不均衡によって引き起こされると従来考えられていた。しかしながら、現在、多くの人は、水頭症は、動脈血流の制限のため起こると考えている(Geitz, Neurosurg Rev, 27:145-165, 2004)。したがって、1つの態様において、該方法は、慢性水頭症、正常圧力水頭症、偽脳腫瘍およびスリット脳室症候群を含む水頭症障害を処置するために使用される。別の水力学的障害である脳卒中は、いくつかの様式で発現される疾患であり、これらはすべて、一般的に、脳の血流の減少および頭蓋内コンプライアンスの減少を引き起こす脳の出血および/または腫脹を伴う。したがって、別の態様において、該方法は、慢性脳卒中、微小血管疾患、痴呆、もやもや病、多発性梗塞性疾患、後部循環不足およびビンスワンガー病を含む種々の型の脳卒中を有する患者を処置するために使用される。同様に、痴呆はまた、ICCの減少を特徴とする疾患状態と確認された。動脈の拍動性の増大は脳毛細管組織を損傷し、脳血管流の効率の低下をもたらし、これが、痴呆に観察される脳機能の低下の原因の一部と考えられる。したがって、また別の態様では、血管性痴呆、アルツハイマー病および正常圧力水頭症は、該方法において振動性コンプライアンス装置の1つで処置され得る。興味深いことに、偏頭痛は、頭痛がICCの増大によって緩和され得ることを示す特徴を示すことがわかった。偏頭痛を有する人の脳は、頭蓋内血管のゆがみ、動脈血流の非同期およびCSF拍動性障害を示す。したがって、また別の態様において、該方法を用いて偏頭痛が処置され、処置される偏頭痛の型は、小児性および成人性偏頭痛ならびに難治性偏頭痛の両方である。
【実施例】
【0059】
前述の本発明の例は、単なる本発明の例示が意図され、本発明に包含される種々の態様に関する非限定的な例である。
【0060】
推定的実施例1. 振動性コンプライアンス装置の実験的試験
バルーン設計
バルーンカテーテルを、インビボ実験動物試験の前に、心臓周期の特定の設計パラメータ(すなわち、形状、容量移動)および活性化(すなわち、頻度、幅、持続時間)を満たすように設計し、作製する。バルーンカテーテルの典型例を図10および11に示す。設計パラメータは、被験体の脳または脊髄の硬膜外腔もしくはCSF空間内のバルーンカテーテルの配置に基づいて異なる。例えば、個体の脳の硬膜外腔で使用されるバルーンカテーテルの寸法は、約10〜50mmの長さ、約5〜20mmの幅および約4〜5mmの厚さを含み得る。被験体の脳のCSF空間内に配置されるバルーンカテーテルの寸法は、約5〜10mmの長さ、約1〜10mmの幅および約1〜5mmの厚さであり得、個体の脊髄の硬膜外腔内に配置されるバルーンカテーテルのものは、約10〜50mmの長さ、約1〜10mmの幅および約1mm未満の厚さの概算寸法を有し得る。
【0061】
振動性コンプライアンス装置の評価
脳血管の血流およびCSF拍動性に対する振動性コンプライアンス装置の有効性は、記載(Johnson MJ et al, J. Neurosci Methods 91:55-65, 1999)の動物モデルを用いてインビボで評価される。簡単には、後頭下頭蓋骨局部切除を定位的に行ない、背側小脳虫部および脳幹の可視化を可能にする。両極性焼灼器、吸引および後退を用いて、硬膜およびクモ膜内に小さな開口を作製して第4脳室の底部の可視化を可能にし、これを介して、18ゲージ血管カテーテル(angiocath)およびシリンジに連結された柔軟性のシリコンカテーテルチューブ(1.5mm外径)を挿入する。次いで、カテーテルを第4脳室内に挿入し、0.50mLのシアノアクリルゲルを注入する。次いで、カテーテルを切断し、開放位置に放置する。硬膜を縫合し、すべての筋肉層を断続的な縫合で層状に閉じる。
【0062】
重量25〜30kgの5匹(n=5)のイヌ科若年成体動物を使用する。動物から脳の血流(CBF)に関するデータを、2つの独立した方法: 経頭蓋ドップラー(CBFTCDおよび脳ミクロスフィア注射(CBFMI)を用いて得る。
【0063】
ミクロスフィア(CBFMI): 循環血流に注入されるミクロスフィアは、脳の血流を測定するために使用され得る。局所血流は、目的の組織領域内の微細血管構造内の捕捉されるミクロスフィアの数に比例する(Hyemann et al, Prog. Cardiovasc. Dis., 1977)。安定な同位体標識ミクロスフィア(非放射性)が使用される(BioPAL TM, BioPhysics Assay Laboratory, Inc.)。屠殺時、各動物の右半球の8つの領域(下前頭、上側頭、前/後内側、後頭、小脳および尾状核)から、CBFを測定するための組織試料を収集し、BioPALによって処理する。
【0064】
経頭蓋内ドップラー(CBFTCD): CBFMI法に加え、TCDを用いてCBF平均/ピーク速度、強度におけるより動的な変化を評価する(図12、TCD参照)。2MHzパルス-波ドップラー(Multidop T, DWL-Compumedics, Sipplinggen, Germany)で、ヒトの内部頚動脈の頭蓋内部分に相当する仙骨脳動脈の高周波処理(insonation)を経時的に行なう。パルス反復周波数(PRF)を3kHzに固定し、最大空間ピーク-時間(tempral)平均強度(SPTA)は100mW/cm2であり、p=0.27hPa(ピーク屈折圧力) に相当する。ドップラー周波数スペクトルを42〜44の深度で記録する。シグナルをデジタルで得、コンピュータに保存し、CCF Depaetment of Radiologyによって提供されるソフトウエアによって解析する。正常値の参照流速は、Transcranial Doppler Ultrasonography,(編集Babilian VL, Wechsler LR. Mosby
Yearbook, Inc. 1993)から得られ得る。
【0065】
また、頭蓋内コンプライアンス、CSF拍動性(pulsatility)(頭蓋および脊髄)、動脈血(ABPp)および静脈血拍動性(VBPp)ならびに心拍出量(CO)に関するデータを収集する。慢性状態: CBFおよびCSFpデータを、CH誘導の前(基準値)、手術中に収集するので、それぞれの動物は自身の対照として役立つ。急性状態: OCD活性化の前、最中および後の(1)換気亢進、(2)CSF除去および(3)CSF輸液を含む激しい操作の間にCBFおよびCSFpをモニターする。慢性水頭症(CH)の重症度または程度を確認するために、3D容積測定MRIおよびICPモニタリングが行なわれている。次いで結果を、CBF、CSFpおよびICCなどの他の変化のパターンに相関させる。
【0066】
頭蓋ICP:ICPをモニターするために、硬膜下マイクロセンサーを挿入する小さなドリルの穴を開ける(Codman Camino Microsensor、Raynham、MA)(図12、ICP(1)参照)。同じぎざぎざの穴を用いて脳室内カテーテルを挿入し、CSFコンパートメントに接触可能にして、頭蓋内コンプライアンスが測定されるようにする。Massermannテクニックの変形法を用いて、CSF(0.2cc)を抜き取り挿入して、ICPをそれぞれ減少および増加させる。
【0067】
脊髄ICP:第二のICPマイクロセンサーおよび脳室内カテーテルを脊柱のCSF腰槽(L4〜L5)に挿入する(図12、ICP(2)参照)。このことにより、振動コンプライアンス装置の評価の際にICP拍動性の独立および/または同時モニタリングが可能となる。
【0068】
動脈および静脈圧/拍動性:また、内頚動脈(ABP)および内頸静脈にカテーテルを挿入し(20ゲージ血管カテーテル)、圧力変換器によりモニターして拍動波形を得る。マルチモデルデータ獲得システム(ADInstruments、PowerLabバージョン5.3.2)により、全ての手術中のモニタリングをオンラインでリアルタイムに収集する。これにより、ICP(頭蓋または脊髄)、ABPおよびVBPデータセットの同時収集ならびに解析が可能になる。
【0069】
振動コンプライアンス装置の埋め込み
図12に示すように、振動コンプライアンス装置を試験する。該装置を脳または脊髄に設置したが、バルーンカテーテル14はポンプ15および皮下レザバー16につながれ、ポンプ15は動物の心臓につながれた心臓同調器につながっている。インビトロ試験の際に同定されるパラメーター(つまり、体積、形状)に合わせるため、市販の小児用動脈内バルーンカテーテル(Datascope Corp., #0686-DM-0116-01)をポリマーlabで改良する。簡潔に、頭頂葉皮質の背側凸部上方の片側に小さなドリルの穴(5mm)を開ける。このぎざぎざの穴を通して抗膜上の空間内にバルーンカテーテルを入れ、動脈内ポンプ(Datascope Corp. CS100, Intellisync IAB pump, #0020-00-0463-01)につなぐ。同様に、改良脊髄バルーンカテーテル14を、L4〜L5椎体を通して腰槽に隣接する硬膜外腔に挿入する。慢性的な水頭症誘導手術の後に、頭蓋および脊髄振動コンプライアンス装置の両方をその場に残す。基準値およびCH誘導30日後にCBFおよびCSFp測定値が得られる際に振動コンプライアンス装置を手術中に作動させる。
【0070】
屠殺、組織調製、組織学および免疫組織化学
全ての動物を、塩化ペントバルビタールと吸入イソフルラン(isoflorane)を組み合わせたもので深く麻酔し、0.1M PBS中pH=7.4の4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて、頚動脈の両側カテーテルにより灌流する。肉眼病理学、凍結切片、および常套的な組織学(H&E、クレシルバイオレット)ならびに生体適合性についての免疫組織化学分析の試験のために、脳を切除し、4% PFAで24時間固定後、段階的スクロース溶液でクリオプロテクトする。
【0071】
実施例2. 振動コンプライアンス装置の作製
図13A〜Bに示すような作動性OCDの一態様を、以下の方法により作製した:
方法1
1. サイズ試験:ヒートシールによりPVCフィルムを用いて、(所定の)サイズ、容積推定値に基づきPCVバルーンを作製した。ポリウレタン系接着剤を使用して、10センチメートルPVC圧力チューブ(Becton Dickinson PT06)をメス型の末端で接着して、排出口とした。
2. SLA(ステレオリソグラフィー)マンドレル(mandrel)デザインおよび作製(build):円形または球形のバルーンの内寸法を、サイズ試験デザインを満たすように作製した。ディスクは、溶液キャスティングに求められる容積、寸法および性能に適合するのに必要なデザインの形をとる。固形モデルはPro/Engineerにより生成され、ディスクはUV硬化性樹脂を用いてSLAで作製された。
3. シリコーンラバー/石膏モールド作製:UV硬化性樹脂ディスクを研磨して、ディスクの半分をシリコーンラバー(P50, Silicone Inc.)で鋳造して、もう半分を石膏で鋳造した。
4. 粘土製マンドレル作製:モールドのシリコーン製の半分に、セラミック作製に使用した湿性の粘土を充填した。モールドの石膏製の半分を、粘土を充填したシリコーン製部分に押し付けて粘土を乾燥させた。モールドを開いて粘土製ディスクを取り出した。次いで、粘土製ディスクを研磨した。粘土製ディスクに穴を開け、ピンを差込み接着してバルーン排出口のマンドレルとした。ディスクを卵黄の薄い層でコートして乾燥させた。コートされた粘土製ディスクをパンケーキ型バルーンのマンドレルとした(硬膜外OCD)。
5. ポリウレタン溶液鋳物(浸漬コーティング):ポリウレタン溶液鋳物(浸漬コーティング)を調製した:10% ChronoFlex(登録商標)AR:生体耐久性医薬等級ポリウレタン(Cardiotech International, Inc.)。マンドレルをChronoflex溶液に浸漬し、二軸回転セットアップで回転させて溶液をマンドレル表面上に均等に流した。回転セットアップを60℃のオーブンに入れ、Chronoflex溶液から溶媒(ジメチルアセトアミド、DMAC)を蒸発させた。各コートは乾燥に2〜4時間を要し、厚みを作製するために4〜6回のコートが必要であった。その後、完全に乾燥または硬化させるために、コートしたマンドレルをオーブン中に24時間静置した。
6. 粘土製マンドレルの取り出し:ピンを引っ張ってマンドレルから抜き、ピンを抜いたマンドレルを水に沈めた。水を粘土に吸収させて粘土を柔らかくした。柔らかくなった粘土を排出口から搾り出し、バルーンおよびバルーン内表面を清浄した。バルーンに空気を満たして漏れについて試験した。
7. バルーン/カテーテル組立て:清浄したバルーンを60℃のオーブンに入れて乾燥させた。排出口の縁をトリミングして5〜10mmの排出口の長さを一定にした。カテーテルの接着領域にChronoflex ARをかけ、次いで排出口に挿入した。バルーンカテーテルを60℃のオーブン中に2時間置いた。
【0072】
方法2
1. シリコーンラバーモールド作製:研磨したUV硬化性樹脂SLAディスクの半分をシリコーンラバー(P50, Silicone Inc.)で鋳造し、もう半分を半透明シリコーンラバー(MDX4-4210, Prosthetic Silicone Elastomer)で鋳造してシリコーンモールドの組を作製した。
2. 低融点混合体マンドレルの作製:低融点混合体(LMA 158, Small Parts, Inc.)を 70〜75℃で融解させた。次いで融解した混合体を、排出口ピンを有するシリコーンモールドに入れた。必要であれば、アクリル-Green Spot Putty (3M、#05114-5960)で欠けた部分を埋め、該混合体マンドレルを#400紙やすりで研磨した。研磨したマンドレルを5%PVA(ポリビニルアルコール、DU PONT等級Chronoflex溶液)で浸漬コートし、浸漬したマンドレルを二軸回転セットアップで回転させ、マンドレル表面に溶液を均等に流した。回転セットアップを60℃のオーブンに入れ、溶媒、ジメチルアセトアミド(DMAC)をChronoflex溶液から蒸発させた。各コートは乾燥に2〜4時間要し、厚みを作製するために4〜6回のコートが必要であった。その後、完全に乾燥または硬化するために、コートしたマンドレルをオーブン中に24時間静置した。
3. ポリウレタン溶液鋳物(浸漬コーティング):浸漬コーティングを調製した:10%ChronoFlex(登録商標)AR:生体耐久性医薬等級ポリウレタン(Cardiotech International, Inc.)。マンドレルをChronoflex溶液に浸漬し、二軸回転セットアップで回転させ、マンドレル表面に均等に溶液を流した。回転セットアップを60℃のオーブンに入れ、溶媒、ジメチルアセトアミド(DMAC)をChronoflex溶液から蒸発させた。各コートは乾燥に2〜4時間要し、厚みを作製するために4〜6回のコートが必要であった。その後、完全に乾燥または硬化するために、コートしたマンドレルをオーブン中に24時間静置した。
4. 混合体マンドレルの取り出し:Chronoflex ARコートしたマンドレルを70〜75℃の水に浸漬して混合体を融解させた。排出口のピンを引き抜いて、融解した複合体を排出口から流出させた。PVAが完全に溶解するまで、バルーンを60℃の水に2時間以上静置した。40〜60℃の温水を用いてバルーンの内表面をすすぎ、PVAおよび混合体粒子の残りを除去した。次いで、バルーンに空気を満たして漏れについて試験した。その後、バルーンを60℃のオーブンで乾燥させた。
5. バルーン/カテーテル組立て:排出口の縁をトリミングして5〜10mmの排出口の長さを一定にした。カテーテルの接着領域にChronoflex ARをかけ、次いで排出口に挿入した。バルーンカテーテルを60℃のオーブン中に2時間置いた。
【0073】
実施例3. 慢性水頭症(CH)の動物モデル
慢性の閉塞性水頭症の実験動物モデルは、十分許容される脳室の大きさの段階的な増大を生じ、一過的でわずかな臨床的効果を生じた。従来のモデルとは異なり、分析を混乱させ得る病巣の圧迫または一般的な炎症はなかった。動物の大きさのために、このモデルはCBF、CSF流体力学(つまり、体積および圧力)、頭蓋内コンプライアンス、ならびにCSFおよび脳病理学とその関係の臨床的に関係のある測定が可能である。
【0074】
カテーテルの挿入およびシアノアクリレートゲル(0.4〜0.6cc)の注射による後脳水道および第4脳室の手術的な閉塞により、成体の雑種犬において、慢性の閉塞性水頭症が誘導された(図20参照)。小後頭頭蓋切除により、後頭蓋窩が露呈され、小脳虫部、背側脳幹、および脊髄、ならびに開かれた第4脳室基底のマジャンディ孔に広がるクモ膜が可視化される。シリンジにつながれた可とう性のシリコーンカテーテルで、第4脳室の体部にシアノアクリル酸ゲルを注射した。
【0075】
臨床的に、動物は嗜眠、欲求消失の一過的な増加を典型的に示し、幾分かの後肢の運動失調を示す。回復および成果をモニターするために、神経学的試験および臨床的指標を開発した。しばしば被刺激性反応性において長期間の変化が示されたが、病巣の持続性の神経傷害を示した動物はなかった。この実験モデルは、水頭症、この障害ならびに小脳虚血/低酸素症の発症および進行の機構、ならびにCSF転換(つまり、シャント術(shunting))の治療効果に関する適応反応の調査に極めて有用であることが証明された。この実験モデルは、急性対慢性の水頭症に関するプロセス、および脳の血流、酸素運搬およびCSF流体力学における違い(例えば産生、除去、代謝回転)と容量(content)、ならびに大脳適応に関する機構の理解を増大させた。さらに、このモデルは、臨床設定において生じ、制御された実験室環境において検討し、新規の処置および/またはプロトコルを開発し、最終的にこれらの発見を臨床の分野に戻して実行し得る、問題に直接取り組むために使用され得る。
【0076】
脳室の大きさは、水頭症の評価において最も頻繁に使用されるパラメータである。脳室の巨大化および誘導の成功が、脳室系(側方、第3および第4脳室、モンロー孔、ならびに中脳水道)および脳において測定された。閉塞により生じる脳室肥大の程度を評価するために、水頭症誘導の前(基準)および後にMRIを収集した(図21)。イヌモデルの開発において、誘導した動物の81%が水頭症を発症した。Evan比率スコアで測定したところ、首尾よく誘導された21匹の水頭症の動物のうち、6匹の動物が軽い水頭症を有し、7匹が中程度の水頭症を発症し、かつ8匹が重度の水頭症を発症した。CH成功の評価において、Evan比率の代わりに定量的3D容積測定解析を測定する(図22A)。3D容積測定解析を用いて、基準の脳室容積の推定値(範囲:0.103〜1.908cc)を誘導後の時点(範囲:1.019〜8.565cc)と比較した。また、脳室対脳の割合(V:B)を基準(平均、7.473 x 10e-3cc;範囲9.51 x 10e-5〜1.800 x 10e-2cc)と誘導60日後以降(平均、3.30 x 10e-2cc;範囲、9.70 x 10e-3〜7.90 x 10e-2cc)で比較した。
【0077】
頭蓋内圧(ICP)は水頭症の重症度および明瞭度によって変化し、しばしば処置の時期および程度を決定するために使用される1つの基準となる。モデルの開発中、ICPを正常範囲(平均、8.73+1.49mmHg、範囲、5.00〜13.40mmHg)内にするために動物を観察した。ICPマイクロセンサーを埋め込んだ2〜3週間の試験の間、最初の研究における5匹の動物は、手術後、「正常範囲」内のICPリーディング(reading)を有した。しかしながら、比較により、脳の血流の試験における動物の小集団からの最近のデータは、基準とCH誘導後の動物の間にICPの有意差を示さなかった(図22B)。ICP測定値はまた、頭蓋内脳コンプライアンス(Fukuhara et al., 2001)およびCSF代謝回転の計算に有用であった。
【0078】
ICPの急激な増加は、嘔吐、食欲不振、不均等、歩行運動失調、および周囲の認知力の低下などの神経学的欠損を生じ得る。脳の常套的な組織学(H+E、CV)は、完全な大脳半球細胞構築を示し、一般的な炎症の形跡は示さなかった。ゲルの閉塞に隣接して、脳幹および小脳細胞構築は、いくらかの第4脳室内の上衣下グリオーシスを伴って正常であったが、病巣圧迫の形跡はほとんどなかった。慢性の閉塞性水頭症のこの実験モデルは、局所圧迫または一般的な炎症を伴わない確実な病巣閉塞の生成において唯一のものであった。
【0079】
現在、CSF循環、またはCSF生成の速度およびCSF除去の速度は、ICPモニタリング技術の進歩に伴って、より正確かつ確実になっている。Massermanテクニックおよび輸液技術の改変を用いて、CSF輸液および回復に対するICP回復に対する反応速度が、継続的にかつデジタル方式で記録され得る。該発見は、CSF輸液および除去に対するICP応答の速度が、動物研究について最近認可されたMulti-Measure Modality装置(CMA-Integra Neuroscience, Inc.)を用いて、デジタル方式でかつリアルタイムで収集され得ることを示した。制御された麻酔条件(pH=7.40、pCO2=35.0〜45.0mmHg)下で、標準的CSF除去およびCSF輸液技術を用いて、CSF生成および除去を手術中に得た。結果は、手術によって6週間より長い慢性水頭症を誘導された動物において、CSF輸液後のICP応答の速度の低下、およびCSF除去後のICP応答の速度の有意な増加を示した。
【0080】
脳の血流(CBF):微小球注入法により、前述のCHの動物モデルにおいて減少したCBFが生じた(図23)。簡潔に、CH誘導手術の直後、30〜40%のCBFの減少が起こった。16週後またはそれ以降で、低下した心臓機能にある程度関係すると思われる、CBFのさらに有意な減少(40〜60%)が起こった。これらの発見は、CH患者がCBFの不足を有するという臨床的発見と一致した。この結果は経頭蓋ドップラーテクニックを用いて確認されているところである。
【0081】
頭蓋内コンプライアンス(ICC):CHの動物モデルを用いて、経時的にかつ異なるICP条件でICCを調査した(図24A〜24B参照)。CHは、CHの慢性段階(>12週)におけるICCの減少に続いて起こる、迅速かつ一過的なICCの増加に関係した。また、正常ICP(5〜15mmHg)ではCHのICCは対照動物よりも高かったが、高(15〜25mmHg)ICPではICCは対照被験体よりも低かった。CSFシャント処置の効果も調査した。(Luciano, et at., 2001, J. Cereb. Blood Flow Metab. 21(3):285-94およびFukuhara et al., 2001, J Neurosurg. 94(4):573-581、参照。)
【0082】
脳脊髄液拍動性(CSFp):手術対照動物と比較して、CH誘導手術後のICPp振幅は増加した。また、ICPp振幅は、基準と比較して、換気亢進、ならびに除去および輸液についての高い感度を示した(図25)。このデータはまた、CHと対照の間の差を示す、さらなるフーリエ変換解析に使用した(Congress of Neurological Surgeons, 2005)。
【0083】
結果の要約
閉塞性水頭症の動物モデルは、段階的な脳室の巨大化およびICP、ならびに低下したCBFおよび異常なCSF拍動を伴う成体の水頭症を、正確に再現した。病巣非圧迫性、非炎症性で、良く制御され、かつ反復可能な閉塞において唯一のものである該モデルは、より「純粋」な、水頭症および流体力学的障害の実験を可能にした。動物の大きさのために、いくつかの生理学的実験を、関連のある臨床的な推測により実施した。このモデルは、容積および圧力の変化に関して特徴があり、CSF容量、代謝回転、および脳病理学について新規の測定法が現れた。このモデルから収集されたデータより、減少したCBFおよびCSFの流体力学が、CHの病態生理学ならびに他の神経変性疾患および脳の機能不全に関係する障害に役割を果たすことが示唆された。CBFの改善およびCSF拍動の減少における振動コンプライアンス装置の有効性は、慢性水頭症のモデルを用いて、インビボで実験的に試験され得る。
【0084】
推定的実施例4. 手術中拍動性測定およびOCD法
水頭症などの神経外科処置の管理におけるパルス圧力測定の重要性を示す最近の証明のために、頭蓋内(ICP)、動脈血(ABP)および静脈血(VBP)拍動を記録する。(図26の手術中デザイン参照)。オンライン/リアルタイムデジタルキャプチャーシステム(AD Instruments、PowerLab、バージョン5.2)を用いて、この情報を得る。標準的ICPモニタリング(Camino, IntergraNeurosciences)によりICP測定値を得、内/総頚動脈および内/総頸静脈のカテーテル法(20ゲージ、血管カテーテル)によりABPおよびVBPを得る。ABPおよびVBPの情報をコンピューターモニターに接続し、デジタルシグナルに変換する。この最小の侵襲方法は、被験動物に痛みや苦痛の増加を与えない。この方法、つまりICP、ABP、およびVBP拍動性モニタリングは、他の手術を行ないながら同時に行なわれ、どのような場合でも実験対象に影響を与えない。集められた情報を、OCD機能の目的のために組み合わせて、かつ統合して使用する。ICP、EKG、ABPおよびVBPのモニタリングは通常麻酔(1〜2%イソフルラン)下で手術中に行なう。被験体から直接得られたECGデータを、A/Dコンバータを介して、任意の要求段階遅延の制御に使用されるコンピューター移す。次いで、変換されたデータを、バルーン装置を膨張および収縮させるために必要な所望の情報を備えたバルーンポンプ装置に送る。ICP、ABP、VBP、生ECG、修正ECGおよびバルーン膨張/収縮波形を含む全てのデータはデジタル方式で捕捉され、保管される。このデータを用いて、CBFの改善および異常ICP拍動の減少におけるOCDの有効性を最適化する。
【0085】
実施例5. OCDの基本型および試験
OCDの基本型のデザインと開発:
頭蓋硬膜外での使用のためにOCDの基本型を設計した(図27A〜B)。シリコーンラバーで構成されるこのOCDバルーンを、容積膨張範囲0.5〜5ccで、頭蓋硬膜外留置のために特別に設計した(およそ直径25mm、厚さ1mm)。膨張/収縮の速い速度および伝達の容積のために、OCDカテーテルを、充填した気体(例えば、ヘリウムまたは空気)で操作し、市販の部品から開発されたポンプシステムで作動させた(図27C〜E参照)。(1)コンピューター制御、任意波形の、(3)直径24mm、50mmストローク抗静止摩擦エアシリンダー(Airpot Corp.)に接触した(2)ステッピングモーター駆動型ボールねじリニアアクチュエータ(Oriental Motors, Inc)を備えた往復ポンプ、(4)ECG心拍タコメーター、(5)R波弁別器、および(6)デジタル遅延で、OCDポンプシステムを作製した。RS-232シリアルリンクおよびシリアルインターフェイスソフトウェアによる特注設計ソフトウェアにより、全ての肺の活動(activation)を制御およびモニターするコンピューター。
【0086】
実験的試験結果
安全性および有効性の試験において、OCDは:
1. 埋め込まれた振動バルーン装置の安全な留置および許容、
2. 心臓に同調したバルーン容積変化によるICP曲線の変調、特に減少、
3. バルーンの同調操作に基づくICP効果の可逆性、
4. 同調バルーン操作による増加した脳の血流、
5. バルーン操作およびICPカーブ効果に基づく可逆的な脳の血流の変化、
6. 同調バルーン操作による増加した可逆的酸素運搬、
を示さなければならない。
【0087】
3匹の実験動物(イヌ)においてOCDを首尾よく使用し、血流、酸素運搬、および拍動性におけるその有用性を評価した。血流、血圧および速度を測定するために、市販の血流(Transonic Systems Inc., model #3PBS; Itheca, NY USA)および血圧プローブ(Volcano, ComboWire XT, Rancho Cordova, CA, USA)、酸素プローブ(Integra LICOX System, Model #CC1-SB; Plainsboro, NJ USA)、経頭蓋ドップラー(TCD)、微小球血流技術(BioPhysics Assay Laboratory, Inc.; #A-0MS01; Worchester, MA USA)による定量的方法を使用した。OCDの有効性を、正常動物、ならびに減少したCBFおよび酸素、および変化した頭蓋内コンプライアンスを有することが示されている(Johnson MJ et al., J. Neurosci Methods 91:55-65, 1999; Fukuhara et al., 2001, J Neurosurg. 94(4):573-581; Dombrowski SM et al., J. Cereb Blood Flow Metab, 2006)慢性水頭症(実施例3参照)の動物において示した。
【0088】
頭蓋硬膜外OCDの使用により、以下:
(1)右前方頭頂部(約3cm2)開頭術によりODCバルーンは首尾よく埋め込まれ、動物にほとんどまたは全く生理的(つまり、心拍数、動脈血圧、動脈血ガス等)に悪影響を及ぼすことなく作動した、
(2)ICPパルス振幅はおよそ70%減少し得、該システムの停止により可逆的であった(図28)、
(3)CBF速度は、左/右(L/R)吸引管(内部頚動脈に相当)および脳底動脈においてTCD経由で得られ、OCD作動により増加し(図29)、非作動で可逆的であった;増加したCBF速度の効果は、大脳半球の対側(埋め込まれたバルーン装置の反対側)に対して同側(埋め込まれたバルーン装置と同じ側)でより大きかった、
(4)前頭葉皮質への酸素飽和度は、慢性水頭症の実験動物において、OCD作動の際に約40%向上し、酸素送達において生理学的に有意な増加を示唆した、
(5)インビボにおける広大なOCD埋め込みは80日間良好に許容された、
ことが示された。
【0089】
推定的実施例6. さらなるOCD試験および構成
OCDはさらに、
1. 増加した血流速度に加えて、増加した脳の血流、
2. 増加した流速とポンプ操作および平らになったICP波形の両方との関係
3. 流速および酸素の効果の可逆性(つまり、同調バルーン操作に依存)
4. 生理学的有意性を確立するための流速および酸素効果の大きさおよび分布の推定
5. 効果の信頼性および他の交絡因子(CO2、温度、麻酔のレベル等)からの独立
を示す能力について、試験され得る。
【0090】
明確で可逆的なOCDの効果、および有意性の指示(空間的、時間的および生理学的)、信頼性ならびに脳の血流に影響を与える他の因子からの独立の確立に焦点を当てるために、さらなる試験にはより多くの動物(最低で2〜3匹および好ましくは8匹の動物)が必要である。明確で可逆的な効果を示した後で、発見の一貫性および質に依存して、再現性を保証するため、かつ効果のさらなる確立および特徴づけのためのバルーン機能および生理学的測定法における変形法を含むために、その後試験をさらなる動物を用いて再現し得る。
【0091】
OCDまたはOCDシステムの他の望ましい構成としては、
1. それぞれの実験について、より効果的な「空中での」バルーン機能変調を容易にするための「使用者が使い易い」ポンプインターフェイス、これにより、それぞれの調製についてより経験的な実験法、およびより多くのデータが可能となる、
2. 血流のリアルタイム評価を可能にする血流プローブ、
3. 血流の変化の局所的評価を可能にする流量画像化(例えばSPECT)装置、
4. コンプライアンスの広域の影響を評価するためおよび装置の最適な位置を決定するための、拡大領域ICP波形モニタリングモジュレーションおよび/またはより多くのICPセンサー、
が挙げられる。
【0092】
本発明は、参照により、その好ましい態様に特定して示され、記載されるが、本明細書において、形式および詳細における種々の変更は、付属の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、なされ得ることを、当業者は理解しよう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、種々の障害における異常な拍動性を示す概略図である。
【図2】図2は、OCDによって改変され得るICP波形の特徴を示す概略図である。
【図3】図3は、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物の種々の形状および大きさの図解である。
【図4】図4は、振動性コンプライアンス装置ならびに脳の硬膜外とCSF空間および脊髄の硬膜外腔を含む種々の位置の該装置の配置の態様を示す概略図である。
【図5】図5は、脊髄のCSF空間の振動性コンプライアンス装置の態様の配置を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の振動性コンプライアンス装置が配置され得る硬膜外およびCSF空間をさらに示す概略図である。
【図7】図7は、圧縮性構成物に連結されたポンプおよび外部リザーバーを有する振動性コンプライアンス装置の態様を示す概略図である。ポンプは、これが連結されるバイオリズム同期装置によってバイオリズムに同期される。
【図8】図8は、心臓同期装置によって心臓に同期されるポンプを有する振動性コンプライアンス装置における、収縮期の圧縮性構成物から外部リザーバーへの物質の移動および拡張期の外部リザーバーから圧縮性構成物への該物質の戻りを示す概略図である。
【図9】図9は、心臓の横に配置され、チューブによって圧縮性物質に連結された外部リザーバーを有する振動性コンプライアンス装置の態様を示す概略図である。
【図10】図10は、振動性コンプライアンス装置の態様の写真である。
【図11】図11は、収縮および膨張した振動性コンプライアンス装置の態様の図である。
【図12】図12は、振動性コンプライアンス装置のインビボでの試験およびモニタリングを示す概略図である。
【図13】図13A〜13Bは、振動性コンプライアンス装置の圧縮性構成物の別の設計の写真である。
【図14】図14は、受動頭蓋内振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図15】図15は、受動脊髄振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図16】図16は、能動頭蓋内硬膜外振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図17】図17は、能動頭蓋内CSF脳室内振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図18】図18は、能動脊髄硬膜外振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図19】図19は、能動脊髄CSF振動性コンプライアンス装置を示す概略図である。
【図20】図20は、第4脳室内へのシアノアクリレートの注射によって水頭症を外科的に誘導したイヌ脳の矢状面を示す写真である。(FM= モンロー孔; III= 第3脳室; CA= 中脳水道)。
【図21】図21は、水頭症誘導の前と後の両方における重度、中程度、軽度の水頭症を有する、または水頭症なしのイヌの脳の一連の磁気共鳴画像(MRI)である。
【図22】図22Aは、慢性閉塞性水頭症の実験モデルにおける経時的なCSF脳質容積の変化を示すグラフである。図22Bは、慢性閉塞性水頭症の実験モデルにおける経時的なICPの変化を示すグラフである。
【図23】図23は、慢性水頭症の実験モデルにおける経時的なCBFの差を検出し、定量するための安定な同位体標識の使用を示すグラフである。
【図24】図24A〜24Bは、誘導慢性水頭症を有する動物において、CSFシャント処置の前後で対照動物と比較した図24(A)正常ICP(5〜15mmHg)および図24(B)高ICP(15〜25mmHg)でのICCの変化を示すグラフである。
【図25】図25は、誘導慢性水頭症を有する動物におけるICPパルス変化を示すグラフである。
【図26】図26は、振動性コンプライアンス装置を用いる研究のための手術中の装備を示す概略図である。
【図27】図27A〜Bは、バルーンカテーテルを含む頭蓋-硬膜外振動性コンプライアンス装置の典型例の写真である。図27Cは、OCDシステムのECG心拍タコメータ、R-波弁別器およびデジタル遅延の写真である。図27Dは、OCDシステムの膨張-収縮インターフェースソフトウェアプログラムを実行するコンピュータの写真である。図27Eは、OCDシステムのコンピュータ制御往復ポンプ、ステッピングモーターおよび抗静止摩擦エアシリンダーの写真である。
【図28】図28は、OCDシステムを用いた ICP、ECGおよびABPの手術中のデータ収集を示すグラフである。
【図29】図29は、慢性水頭症の動物における、OCD 装置とともに経頭蓋ドップラーを用いた左ICA、脳底動脈および右ICAの血流速度の増加を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮性構成物を含む振動コンプライアンス装置であって、該圧縮性構成物が自由に拡張および収縮して個体の頭蓋内コンプライアンス(ICC)、脳の血流(CBF)、頭蓋内圧(ICP)拍動性、またはその組合せに影響し得る、振動コンプライアンス装置。
【請求項2】
圧縮性構成物が、液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項3】
気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項2記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項4】
前記圧縮性構成物につながれたレザバーをさらに含んでなる、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項5】
レザバーが、頭蓋脊椎外腔、皮下腔および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項4記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項6】
レザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項5記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項7】
レザバーが、心膜および腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項5記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項8】
圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔または脳脊髄液(CSF)腔内に設置され得る、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項9】
患者の脳の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項10】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項11】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項12】
圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項13】
患者の頭蓋腔内の患者のICPを測定するための頭蓋内モニターをさらに含んでなる、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項14】
圧縮性構成物、
圧縮性構成物の拡張および収縮のための、前記圧縮性構成物につながれたポンプ、
前記ポンプにつながれたレザバー、ならびに
前記ポンプと患者のバイオリズム源を同期させるために、前記ポンプにつながれ、患者のバイオリズムの源をつなぐ、バイオリズム同期装置
を含んでなる振動コンプライアンス装置。
【請求項15】
圧縮性構成物が液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項16】
気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項15記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項17】
レザバーが、頭蓋脊椎外、皮下および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項18】
レザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項17記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項19】
レザバーが、心膜または腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項17記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項20】
バイオリズム同期装置がマイクロプロセッサーに連結され、かつ制御される、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項21】
患者のバイオリズムの源が、患者の心臓の電気的リズム、患者の心臓血管圧脈拍および患者のICP波からなる群由来である、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項22】
バイオリズム源が患者の心臓の電気的律動であり、バイオリズム同期装置が心臓同期装置である、請求項21記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項23】
心臓同期装置が患者の体外および患者の体内からなる群より選択される位置にある、請求項22記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項24】
ポンプが、モーター式バッテリーおよび生理学的誘導出力からなる群より選択される源により動力を供給される、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項25】
生理学的誘導出力の源が、体部、液体の移動および心臓血管の運動からなる群より選択される、請求項24記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項26】
圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項27】
患者の脳の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅、および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項26記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項28】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅、および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項26記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項29】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅、および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項26記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項30】
圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項29記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項31】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項32】
前記1つ以上のモニタリング装置の測定値に基づき、圧縮性構成物のポンプの拡張および収縮を自動で調整し得る前記ポンプに連結された制御システムをさらに含んでなる、請求項31記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項33】
制御システムがマイクロプロセッサーである、請求項32記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項34】
圧縮性構成物の拡張が、患者の腔内から皮下レザバーまで、物質の約0.5〜約25立方センチメートル(cc)である、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項35】
圧縮性構成物、
前記圧縮性構成物につながれたチューブ、ならびに
前記チューブにつながれた、患者の心膜腔に設置され、患者の心臓の収縮および拡張のために自由に拡張および収縮できるレザバーを含む、振動コンプライアンス装置。
【請求項36】
チューブが、圧縮性構成物とレザバーの間の自由な交換を可能にする、請求項35記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項37】
圧縮性構成物が、液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項36記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項38】
圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項36記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項39】
患者の脳の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項38記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項40】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項38記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項41】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項38記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項42】
圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項41記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項43】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項35記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項44】
2つ以上の振動コンプライアンス装置を含む振動コンプライアンスシステムであって、それぞれが圧縮性構成物を有し、該圧縮性構成物が自由に拡張および収縮して個体のICC、CBF、ICP拍動性、またはその組合せに影響し得る、振動コンプライアンスシステム。
【請求項45】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項46】
バルーンカテーテル内の気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項45記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項47】
2つ以上の振動コンプライアンス装置が、レザバーをさらに含む、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項48】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭蓋脊椎外、皮下および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項47記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項49】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項48記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項50】
レザバーが、心膜および腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項48記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項51】
2つ以上の振動コンプライアンス装置が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項52】
患者の脳の硬膜外腔に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項51記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項53】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項51記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項54】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項51記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項55】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項54記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項56】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項57】
a) 圧縮性構成物、
圧縮性構成物の拡張および収縮のために前記圧縮性構成物につながれたポンプ、および
前記ポンプにつながれたレザバー
を有する2つ以上の振動コンプライアンス装置、ならびに
b) 前記ポンプと患者の1つ以上のバイオリズムを同期させるために、前記ポンプにつながれ、1つ以上の患者のバイオリズムの源をつなぐ、1つ以上のバイオリズム同期装置
を含んでなる、振動コンプライアンスシステム。
【請求項58】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、液体、気体または展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項59】
気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項58記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項60】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭蓋脊椎外、皮下および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項61】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項60記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項62】
1つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、心膜または腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項60記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項63】
1つ以上のバイオリズム同期装置がマイクロプロセッサーに連結され、かつ制御される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項64】
患者のバイオリズムの1つ以上の源が、患者の心臓の電気的リズム、心臓血管圧脈拍およびICP波からなる群より選択される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項65】
患者のバイオリズムの源が患者の心臓の電気的リズムであり、バイオリズム同期装置が心臓同期装置である、請求項64記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項66】
心臓同期装置が患者の体外および患者の体内からなる群より選択される位置にある、請求項65記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項67】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のポンプが、モーター式バッテリーおよび生理学的誘導出力からなる群より選択される源により動力を供給される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項68】
生理学的誘導出力の源が、体部、液体の運動および心臓血管の運動からなる群より選択される2つ以上である、請求項67記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項69】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項55記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項70】
患者の脳の硬膜外腔に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項69記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項71】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項69記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項72】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項69記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項73】
1つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項72記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項74】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項75】
前記1つ以上のモニタリング装置の測定値に基づき、圧縮性構成物のポンプの拡張および収縮を自動で調整し得る前記ポンプに連結された制御システムをさらに含んでなる、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項76】
制御システムがマイクロプロセッサーである、請求項75記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項77】
1つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物の拡張が、患者の腔内から皮下レザバーまで、圧縮性構成物または物質の約0.5〜約25ccずれる、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項78】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、動脈拍動の個体の頭蓋腔への進入から個体の脳を保護する方法。
【請求項79】
動脈拍動の、個体の脳の毛細血管および脳組織への異常な伝達が減少する請求項78記載の方法。
【請求項80】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、個体の頭蓋内コンプライアンス(ICC)を増加させる方法。
【請求項81】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、動脈拍動の進入と同期して個体のCSF腔の大きさを制御する方法。
【請求項82】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、個体の包膜の容積を増大させ、動脈血の個体の頭蓋腔への進入を容易にする方法。
【請求項83】
圧縮性構成物を有する1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の内腔から腔へと物質を移動させる工程、および
圧縮性構成物を有する前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に腔から個体の内腔へと物質を戻す工程
を含む、個体の脳における動脈血拍動を変化させる方法であって、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、方法。
【請求項84】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、個体の頭蓋内腔を調節して、個体の脳血流および脳血管循環の効率を改変する方法。
【請求項85】
振動コンプライアンス装置または振動コンプライアンスシステムを埋め込む工程を含む、改変したICC、CBFまたはICP拍動性を有する患者を処置する方法。
【請求項86】
血管痙攣、うっ血性心不全、心肺バイパス術および頚動脈内膜切除からなる群より選択される状態について患者を処置する、請求項85記載の方法。
【請求項87】
水頭症、脳卒中、痴呆および偏頭痛からなる群より選択される流体力学的な脳の障害について患者を処置する、請求項85記載の方法。
【請求項88】
水頭症が、慢性水頭症、正常圧水頭症、偽脳腫瘍およびスリット脳室症候群からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
脳卒中が、急性脳卒中、慢性脳卒中、微小血管病、痴呆、モヤモヤ病、多発性梗塞病、後部血行不全およびビンスヴァンガー病からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項90】
痴呆が、血管性痴呆、アルツハイマー病、および正常圧水頭症からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項91】
偏頭痛が、小児性偏頭痛、成人性偏頭痛および難治性偏頭痛からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項1】
圧縮性構成物を含む振動コンプライアンス装置であって、該圧縮性構成物が自由に拡張および収縮して個体の頭蓋内コンプライアンス(ICC)、脳の血流(CBF)、頭蓋内圧(ICP)拍動性、またはその組合せに影響し得る、振動コンプライアンス装置。
【請求項2】
圧縮性構成物が、液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項3】
気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項2記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項4】
前記圧縮性構成物につながれたレザバーをさらに含んでなる、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項5】
レザバーが、頭蓋脊椎外腔、皮下腔および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項4記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項6】
レザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項5記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項7】
レザバーが、心膜および腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項5記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項8】
圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔または脳脊髄液(CSF)腔内に設置され得る、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項9】
患者の脳の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項10】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項11】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項12】
圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項8記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項13】
患者の頭蓋腔内の患者のICPを測定するための頭蓋内モニターをさらに含んでなる、請求項1記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項14】
圧縮性構成物、
圧縮性構成物の拡張および収縮のための、前記圧縮性構成物につながれたポンプ、
前記ポンプにつながれたレザバー、ならびに
前記ポンプと患者のバイオリズム源を同期させるために、前記ポンプにつながれ、患者のバイオリズムの源をつなぐ、バイオリズム同期装置
を含んでなる振動コンプライアンス装置。
【請求項15】
圧縮性構成物が液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項16】
気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項15記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項17】
レザバーが、頭蓋脊椎外、皮下および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項18】
レザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項17記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項19】
レザバーが、心膜または腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項17記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項20】
バイオリズム同期装置がマイクロプロセッサーに連結され、かつ制御される、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項21】
患者のバイオリズムの源が、患者の心臓の電気的リズム、患者の心臓血管圧脈拍および患者のICP波からなる群由来である、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項22】
バイオリズム源が患者の心臓の電気的律動であり、バイオリズム同期装置が心臓同期装置である、請求項21記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項23】
心臓同期装置が患者の体外および患者の体内からなる群より選択される位置にある、請求項22記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項24】
ポンプが、モーター式バッテリーおよび生理学的誘導出力からなる群より選択される源により動力を供給される、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項25】
生理学的誘導出力の源が、体部、液体の移動および心臓血管の運動からなる群より選択される、請求項24記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項26】
圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項27】
患者の脳の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅、および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項26記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項28】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅、および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項26記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項29】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅、および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項26記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項30】
圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項29記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項31】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項32】
前記1つ以上のモニタリング装置の測定値に基づき、圧縮性構成物のポンプの拡張および収縮を自動で調整し得る前記ポンプに連結された制御システムをさらに含んでなる、請求項31記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項33】
制御システムがマイクロプロセッサーである、請求項32記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項34】
圧縮性構成物の拡張が、患者の腔内から皮下レザバーまで、物質の約0.5〜約25立方センチメートル(cc)である、請求項14記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項35】
圧縮性構成物、
前記圧縮性構成物につながれたチューブ、ならびに
前記チューブにつながれた、患者の心膜腔に設置され、患者の心臓の収縮および拡張のために自由に拡張および収縮できるレザバーを含む、振動コンプライアンス装置。
【請求項36】
チューブが、圧縮性構成物とレザバーの間の自由な交換を可能にする、請求項35記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項37】
圧縮性構成物が、液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項36記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項38】
圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項36記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項39】
患者の脳の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項38記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項40】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項38記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項41】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項38記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項42】
圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項41記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項43】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項35記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項44】
2つ以上の振動コンプライアンス装置を含む振動コンプライアンスシステムであって、それぞれが圧縮性構成物を有し、該圧縮性構成物が自由に拡張および収縮して個体のICC、CBF、ICP拍動性、またはその組合せに影響し得る、振動コンプライアンスシステム。
【請求項45】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、液体、気体および展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項46】
バルーンカテーテル内の気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項45記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項47】
2つ以上の振動コンプライアンス装置が、レザバーをさらに含む、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項48】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭蓋脊椎外、皮下および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項47記載の振動コンプライアンス装置。
【請求項49】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項48記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項50】
レザバーが、心膜および腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項48記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項51】
2つ以上の振動コンプライアンス装置が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項52】
患者の脳の硬膜外腔に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項51記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項53】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項51記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項54】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項51記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項55】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項54記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項56】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項44記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項57】
a) 圧縮性構成物、
圧縮性構成物の拡張および収縮のために前記圧縮性構成物につながれたポンプ、および
前記ポンプにつながれたレザバー
を有する2つ以上の振動コンプライアンス装置、ならびに
b) 前記ポンプと患者の1つ以上のバイオリズムを同期させるために、前記ポンプにつながれ、1つ以上の患者のバイオリズムの源をつなぐ、1つ以上のバイオリズム同期装置
を含んでなる、振動コンプライアンスシステム。
【請求項58】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、液体、気体または展性物質からなる群より選択される物質を含むバルーンカテーテルである、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項59】
気体がヘリウムおよび空気からなる群より選択される、請求項58記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項60】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭蓋脊椎外、皮下および体腔内からなる群より選択される位置に設置される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項61】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、頭部および体部からなる群より選択される皮下位置に設置される、請求項60記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項62】
1つ以上の振動コンプライアンス装置のレザバーが、心膜または腹膜からなる群より選択される体腔内に設置される、請求項60記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項63】
1つ以上のバイオリズム同期装置がマイクロプロセッサーに連結され、かつ制御される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項64】
患者のバイオリズムの1つ以上の源が、患者の心臓の電気的リズム、心臓血管圧脈拍およびICP波からなる群より選択される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項65】
患者のバイオリズムの源が患者の心臓の電気的リズムであり、バイオリズム同期装置が心臓同期装置である、請求項64記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項66】
心臓同期装置が患者の体外および患者の体内からなる群より選択される位置にある、請求項65記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項67】
2つ以上の振動コンプライアンス装置のポンプが、モーター式バッテリーおよび生理学的誘導出力からなる群より選択される源により動力を供給される、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項68】
生理学的誘導出力の源が、体部、液体の運動および心臓血管の運動からなる群より選択される2つ以上である、請求項67記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項69】
2つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、患者の脳または脊髄の硬膜外腔またはCSF腔内に設置され得る、請求項55記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項70】
患者の脳の硬膜外腔に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約5〜約20ミリメートルの幅および約4〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項69記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項71】
患者の脳のCSF腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約5〜約10ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項69記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項72】
患者の脊髄の硬膜外腔内に設置され得る振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、約10〜約50ミリメートルの長さ、約1〜約10ミリメートルの幅および約1ミリメートル〜約5ミリメートルの厚みを有する、請求項69記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項73】
1つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物が、患者のL4およびL5椎体周囲の硬膜外腔に設置され得る、請求項72記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項74】
頭蓋内モニター、血流プローブまたは酸素プローブからなる群より選択される1つ以上のモニタリング装置をさらに含んでなる、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項75】
前記1つ以上のモニタリング装置の測定値に基づき、圧縮性構成物のポンプの拡張および収縮を自動で調整し得る前記ポンプに連結された制御システムをさらに含んでなる、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項76】
制御システムがマイクロプロセッサーである、請求項75記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項77】
1つ以上の振動コンプライアンス装置の圧縮性構成物の拡張が、患者の腔内から皮下レザバーまで、圧縮性構成物または物質の約0.5〜約25ccずれる、請求項57記載の振動コンプライアンスシステム。
【請求項78】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、動脈拍動の個体の頭蓋腔への進入から個体の脳を保護する方法。
【請求項79】
動脈拍動の、個体の脳の毛細血管および脳組織への異常な伝達が減少する請求項78記載の方法。
【請求項80】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、個体の頭蓋内コンプライアンス(ICC)を増加させる方法。
【請求項81】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、動脈拍動の進入と同期して個体のCSF腔の大きさを制御する方法。
【請求項82】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、個体の包膜の容積を増大させ、動脈血の個体の頭蓋腔への進入を容易にする方法。
【請求項83】
圧縮性構成物を有する1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の内腔から腔へと物質を移動させる工程、および
圧縮性構成物を有する前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に腔から個体の内腔へと物質を戻す工程
を含む、個体の脳における動脈血拍動を変化させる方法であって、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、方法。
【請求項84】
1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、収縮期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物から移動させる工程、および
前記1つ以上の振動コンプライアンス装置を用いて、拡張期に個体の頭蓋内腔または脊髄内腔において物質を圧縮性構成物に戻す工程
を含み、該圧縮性構成物が拡張および収縮し得る、個体の頭蓋内腔を調節して、個体の脳血流および脳血管循環の効率を改変する方法。
【請求項85】
振動コンプライアンス装置または振動コンプライアンスシステムを埋め込む工程を含む、改変したICC、CBFまたはICP拍動性を有する患者を処置する方法。
【請求項86】
血管痙攣、うっ血性心不全、心肺バイパス術および頚動脈内膜切除からなる群より選択される状態について患者を処置する、請求項85記載の方法。
【請求項87】
水頭症、脳卒中、痴呆および偏頭痛からなる群より選択される流体力学的な脳の障害について患者を処置する、請求項85記載の方法。
【請求項88】
水頭症が、慢性水頭症、正常圧水頭症、偽脳腫瘍およびスリット脳室症候群からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
脳卒中が、急性脳卒中、慢性脳卒中、微小血管病、痴呆、モヤモヤ病、多発性梗塞病、後部血行不全およびビンスヴァンガー病からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項90】
痴呆が、血管性痴呆、アルツハイマー病、および正常圧水頭症からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項91】
偏頭痛が、小児性偏頭痛、成人性偏頭痛および難治性偏頭痛からなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図18】
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【図22】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2009−502247(P2009−502247A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522989(P2008−522989)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028354
【国際公開番号】WO2007/014028
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500064708)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028354
【国際公開番号】WO2007/014028
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500064708)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (12)
【Fターム(参考)】
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