説明

医学造影システム用のランドファントム

【課題】リアルな状況をシミュレートし易い医学造影システム用のランドファントムを提供する。
【解決手段】医学造影システム用のランドファントム1は、ファントム外殻2、少なくとも1個の擬似器官ユニット3、板状の第一連接ユニット4を備え、少なくとも1個の擬似器官ユニット3はファントム外殻2内に移動可能状に設置し、分離可能状に連接する上部31と下部32を備え、第一連接ユニット4はおおよそ板状で、擬似器官ユニット3内に移動可能状に設置し、上部31と下部32との間に位置し、少なくとも1個の第一連接孔41を設置し、個数及び位置が異なる病変ファントムをセットすることができ、モジュール化方式で組立てと分解ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学造影に関し、特に医学造影システム用のランドファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にランドファントムには、データ スペクトラム社(Data Spectrum Co.)のアンソロポモフィック トーソ ファントム(Anthropomorphic Torso Phantom)(図6に示す)があり、心臓、乳房、及び肺、肝臓、脊椎の一部を備える。心臓、乳房、肝臓、及び躯幹だけに、薬物/造影剤溶液を充填することができ、乳房の単一の位置にのみ腫瘍を置くことができる。他の器官内には腫瘍を模擬する病変ファントム(小円球)の設計を置くことができず、腫瘍或いは病変などを備える造影研究に用いることはできない。
【0003】
他にはフルーク バイオメディカル社(Fluke Biomedical Co.)のソラックス ファントム(Thorax Phantom)(図7に示す)があり、心臓、肺、肝臓、乳房を備え、すべてに薬物/造影剤溶液を充填することができる。心臓と乳房の特定の位置だけに、腫瘍或いは損傷を置くことができ、他の器官には、病変を模擬する病変ファントム(小円球)の設計を置くことができず、腫瘍或いは病変などを備える他の器官の造影研究に用いることはできない。
【0004】
一般の特定器官の器官ファントムには(肝臓を例とすると)、ブライト テクノロジーズ社(Bright Technologies co.)のウィリアムス レバー ファントム(Williams Liver Phantom)(図8に示す)があり、外部の充填容器に、5個の薬物/造影剤溶液と中実充填物を備える大小さまざまな小円柱模擬損傷5個を含む薬物/造影剤溶液を充填することができる。しかし、その位置及び大きさは固定されており、最小サイズは直径3mmに達する。その外形は、迫真性が十分でなく、しかも病変の模擬がシンプルに過ぎる。
【0005】
さらにはフルーク バイオメディカル社(Fluke Biomedical Co.)のマルチコントラスト/レゾリューション ファントム(Multicontrast/Resolution Phantom)(図9に示す)があり、外形は肝臓状で、薬物/造影剤溶液を充填することができる。内部には、大小さまざまなアクリル充填物の病変ファントムを多く含み、異なる対比度及び解析度を模擬することができる。しかし、3Dの完全な肝臓ではなく、しかも病変ファントムの位置、大きさを変動させることはできない。
【0006】
さらに、図6、7に示す肝臓には、腫瘍或いは病変ファントムを置くことができず、しかも図6に示す肝臓は不完全である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主要な目的は、人の器官を完全に模擬した3D造形を達成することができ、薬物/造影剤溶液を充填でき、迫真性が高く、板状の第一連接ユニットを擬似器官ユニット内に備え、板状の第一連接ユニット上には第一連接孔を一杯に形成するため、腫瘍を模擬する病変ファントムを固定することができ、しかも腫瘍を模擬する病変ファントムの位置を任意に選択することができ、大きさの違う、或いは相同の腫瘍を模擬する病変ファントムを多数同時に設置することもでき、フレキシビリティが高く、実験中にリアルな状況をシミュレートし易い医学造影システム用のランドファントムを提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、特殊モジュール構造により、準備が完了した擬似器官ユニットを、モジュール構造の第二連接ユニット上に先ず固定し、次に、ハンドルユニットを通して、モジュール構造全体を、躯幹などのファントム外殻内に入れ、これにより各擬似器官ユニットを、躯幹などのファントム外殻内にそれぞれ固定する必要はなく、こうして使用が簡単かつ便利で、実験においては、薬物/造影剤溶液の汚染が起こりにくい医学造影システム用のランドファントムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は下記の医学造影システム用のランドファントムを提供する。
医学造影システム用のランドファントムは、ファントム外殻、少なくとも1個の擬似器官ユニット、第一連接ユニットを備え、
該ファントム外殻は、中空構造で、
該少なくとも1個の擬似器官ユニットは、中空構造で、該ファントム外殻内に移動可能状に設置し、該擬似器官ユニットは、上部と下部を備え、該上部と該下部は、分離可能状に連接し、
該第一連接ユニットは、おおよそ板状で、該擬似器官ユニット内に移動可能状に設置し、該上部と該下部との間に位置し、該第一連接ユニットには、少なくとも1個の第一連接孔を設置し、
該上部と該下部は、若干のボルトにより、分離可能状に固定し、
医学造影システム用のランドファントムはさらに、少なくとも1個の第二連接ユニットを備え、
該第二連接ユニットは、おおよそ板状で、該ファントム外殻内に移動可能状に固定して設置し、
該第二連接ユニットは、擬似器官連接孔、少なくとも1個の第二連接孔を備え、
該擬似器官ユニットは、該第二連接孔に移動可能状に固定して設置し、
該医学造影システム用のランドファントムはさらに、少なくとも1個の病変ファントムを備え、
該病変ファントムは移動可能状に、該第一連接孔と該第二連接孔にに設置し、
該少なくとも1個の第二連接ユニットは、複数の第二連接ユニットで、
該各第二連接ユニット間は、間隔を開けて連接し、
該少なくとも1個の擬似器官ユニットは、複数の擬似器官ユニットで、
該各擬似器官ユニットの個数は、該第二連接ユニットの個数に対応し、
さらに、該少なくとも1個の第二連接ユニットはさらに、ハンドルユニットを連接し、 該ハンドルユニットは、延伸して、該ファントム外殻の外に設置し、
該ハンドルユニットはさらに、ハンドル、蓋体、若干の連接棒を備え、
該ハンドルは、該蓋体外に設置し、該蓋体は、該ファントム外殻上に蓋をし、
該各連接棒の一端は、該蓋体の、該ハンドルと離れた側に連接し、該各連接棒の反対端は、ボルトにより、該第二連接ユニットの各第二連接孔の内の1個の上に移動可能状に固定して設置され、
該少なくとも1個の第二連接ユニットは、複数の第二連接ユニットで、該各第二連接ユニット間は、間隔を開けて連接し、該各第二連接ユニットの間は、該各連接棒を利用し、その両端において、移動可能状に固定し、
該少なくとも1個の擬似器官ユニットは、複数の擬似器官ユニットで、該各擬似器官ユニットの個数は該第二連接ユニットの個数に対応する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医学造影システム用のランドファントムは、人の器官を完全に模擬した3D造形を達成することができ、薬物/造影剤溶液を充填でき、迫真性が高く、板状の第一連接ユニットを擬似器官ユニット内に備え、板状の第一連接ユニット上には第一連接孔を一杯に形成するため、腫瘍を模擬する病変ファントムを固定することができ、しかも腫瘍を模擬する病変ファントムの位置を任意に選択することができ、大きさの違う、或いは相同の腫瘍を模擬する病変ファントムを多数同時に設置することもでき、フレキシビリティが高く、実験中にリアルな状況をシミュレートすることができる。さらに、本発明の医学造影システム用のランドファントムは、特殊モジュール構造により、準備が完了した擬似器官ユニットを、モジュール構造の第二連接ユニット上に先ず固定し、次に、ハンドルユニットを通して、モジュール構造全体を、躯幹などのファントム外殻内に入れ、これにより各擬似器官ユニットを、躯幹などのファントム外殻内にそれぞれ固定する必要はなく、こうして使用が簡単かつ便利で、実験においては、薬物/造影剤溶液の汚染が起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明医学造影システム用のランドファントムにおいて、円筒状のファントム外殻を例とした透視模式図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本発明医学造影システム用のランドファントムの一部構造の模式図である。
【図4】本発明医学造影システム用のランドファントムにおいて、模擬器官ユニットを肝臓とする分解模式図である。
【図5】本発明医学造影システム用のランドファントムにおいて、模擬器官ユニットを肝臓とする透視模式図である。
【図6】従来のランドファントム一の模式図である。
【図7】従来のランドファントム二の模式図である。
【図8】従来の特定器官の模擬器官ファントム一の模式図である。
【図9】従来の特定器官の模擬器官ファントム二の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の技術内容、構造特徴、達成する目的を詳細に説明するため、以下に実施例を挙げ並びに図面を組み合わせて説明する。
【0013】
図1は、本発明医学造影システム用のランドファントムにおいて、円筒状のファントム外殻を例とした透視模式図で、図2は、図1の断面図で、図3は、本発明医学造影システム用のランドファントムの一部構造の模式図で、図4は、本発明医学造影システム用のランドファントムにおいて、模擬器官ユニットを肝臓とする分解模式図で、図5は、本発明医学造影システム用のランドファントムにおいて、模擬器官ユニットを肝臓とする透視模式図である。
【0014】
本発明医学造影システム用のランドファントム1は、ファントム外殻2、少なくとも1個の擬似器官ユニット3、第一連接ユニット4を備える。
ファントム外殻2は、中空構造で、ここでは、その形状を円筒形として説明する。好ましくは、ファントム外殻2は、人体躯幹形状に成型する。
擬似器官ユニット3は、中空構造で、ファントム外殻2内に移動可能状に設置する。本発明の擬似器官ユニット3は、2個の器官(心臓と肝臓)を図示の例として説明するが、これに限定するものではない。図4、5に示すように、肝臓を例とする擬似器官ユニット3は、上部31と下部32を備える。上部31と下部32は分離可能状に連接する。好ましくは、上部31と下部32は、若干のボルト33により、分離可能状に連接する。
第一連接ユニット4は、おおよそ板状で、擬似器官ユニット3内に移動可能状に設置し、上部31と下部32との間に位置する。第一連接ユニット4には、少なくとも1個の第一連接孔41を設置し、若干の病変ファントムを移動可能状に設置する。
【0015】
これにより、擬似器官ユニット3と第一連接ユニット4の構造設計は、人の器官を完全に模擬した3D造形(擬似器官ユニット3は、肝臓など)を達成することができる。さらに、薬物/造影剤溶液を充填でき、迫真性が高い。板状の第一連接ユニット4を擬似器官ユニット3(肝臓など)内に備え、板状の第一連接ユニット4上には、第一連接孔41を一杯に形成するため、腫瘍を模擬する病変ファントム(棒飴状の小円球など、図示なし)を固定することができる。しかも、腫瘍を模擬する病変ファントムの位置を任意に選択することができ、大きさの違う、或いは相同の腫瘍を模擬する病変ファントムを多数同時に設置することもでき、フレキシビリティが高い。よって、実験中にリアルな状況をシミュレートすることができる。
【0016】
本発明医学造影システム用のランドファントム1はさらに、少なくとも1個の第二連接ユニット5を備える。第二連接ユニット5は、おおよそ板状で、ファントム外殻2内に移動可能状に固定して設置する。第二連接ユニット5は、擬似器官連接孔51、少なくとも1個の第二連接孔52を備える。擬似器官ユニット3は、第二連接孔52に移動可能状に固定して設置する。第二連接孔52には、若干の病変ファントム(図示なし)を移動可能状に設置することができる。擬似器官ユニット3の個数は、第二連接ユニット5の個数に対応し、各第二連接ユニット5は、間隔を開けて連接し、さまざまな大きさの擬似器官ユニット3を収容設置することができる。
【0017】
第二連接ユニット5はさらに、ハンドルユニット6を連接する。ハンドルユニット6は、延伸して、ファントム外殻2の外に設置する。ハンドルユニット6はさらに、ハンドル61、蓋体62、若干の連接棒63を備える。ハンドル61は、蓋体62外に設置する。蓋体62は、ファントム外殻2上に蓋をする。各連接棒63の一端は、蓋体62の、ハンドル61と離れた側に連接する。各連接棒63の反対端は、ボルト64により、第二連接ユニット5の各第二連接孔52に移動可能状に固定して設置される。第二連接ユニット5が2個以上ある場合(図1、2、3参照)には、各第二連接ユニット5間は、連接棒63を利用し、その両端において、移動可能状に固定することができる。こうして、モジュール化を達成し、分解と組立ての便を高めることができる。
【0018】
よって、第二連接ユニット5とハンドルユニット6の設計により、擬似器官ユニット3及び第二連接ユニット5とハンドルユニット6をモジュール化し、一個のモジュール構造とすることができる。これにより、ファントム外殻2内にセットし、ボルト方式により固定、或いは嵌接方式により固定することができる。同時に、その中の部品を便利に取り出し、交換することができる。すなわち、特殊モジュール構造は、準備が完了した擬似器官ユニット3を、モジュール構造の第二連接ユニット5上に先ず固定する。次に、ハンドルユニット6を通して、モジュール構造全体を、躯幹などのファントム外殻2内に入れる。これにより、各擬似器官ユニット3を、躯幹などのファントム外殻2内にそれぞれ固定する必要はない。こうして、使用が簡単かつ便利で、実験においては、薬物/造影剤溶液の汚染が起こりにくくなる。
【0019】
以上述べたことは、本発明の実施例にすぎず、本発明の実施の範囲を限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲に基づきなし得る同等の変化と修飾は、いずれも本発明の権利のカバーする範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0020】
1 医学造影システム用のランドファントム
2 ファントム外殻
3 擬似器官ユニット
31 上部
32 下部
33 ボルト
4 第一連接ユニット
41 第一連接孔
5 第二連接ユニット
51 擬似器官連接孔
52 第二連接孔
6 ハンドルユニット
61 ハンドル
62 蓋体
63 連接棒
64 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学造影システム用のランドファントムは、ファントム外殻、少なくとも1個の擬似器官ユニット、第一連接ユニットを備え、
前記ファントム外殻は、中空構造で、
前記少なくとも1個の擬似器官ユニットは、中空構造で、前記ファントム外殻内に移動可能状に設置し、前記擬似器官ユニットは、上部と下部を備え、前記上部と前記下部は、分離可能状に連接し、
前記第一連接ユニットは、おおよそ板状で、前記擬似器官ユニット内に移動可能状に設置し、前記上部と前記下部との間に位置し、前記第一連接ユニットには、少なくとも1個の第一連接孔を設置することを特徴とする医学造影システム用のランドファントム。
【請求項2】
請求項1記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記上部と前記下部は、若干のボルトにより、分離可能状に連接することを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。
【請求項3】
請求項1記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記医学造影システム用のランドファントムはさらに、少なくとも1個の第二連接ユニットを備え、
前記第二連接ユニットは、おおよそ板状で、前記ファントム外殻内に移動可能状に固定して設置し、
前記第二連接ユニットは、擬似器官連接孔、少なくとも1個の第二連接孔を備え、
前記擬似器官ユニットは、前記第二連接孔に移動可能状に固定して設置することを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。
【請求項4】
請求項1記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記医学造影システム用のランドファントムはさらに、少なくとも1個の病変ファントムを備え、
前記病変ファントムは移動可能状に、前記第一連接孔に設置することを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。
【請求項5】
請求項3記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記医学造影システム用のランドファントムはさらに、少なくとも1個の病変ファントムを備え、
前記病変ファントムは、移動可能状に、前記第二連接孔に設置することを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。
【請求項6】
請求項3記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記少なくとも1個の第二連接ユニットはさらに、ハンドルユニットを連接し、
前記ハンドルユニットは、延伸して、前記ファントム外殻の外に設置することを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。
【請求項7】
請求項6記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記ハンドルユニットはさらに、ハンドル、蓋体、若干の連接棒を備え、
前記ハンドルは、前記蓋体外に設置し、前記蓋体は、前記ファントム外殻上に蓋をし、 前記各連接棒の一端は、前記蓋体の、前記ハンドルと離れた側に連接し、前記各連接棒の反対端は、ボルトにより、前記第二連接ユニットの各第二連接孔の内の1個の上に移動可能状に固定して設置されることを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。
【請求項8】
請求項7記載の医学造影システム用のランドファントムにおいて、前記少なくとも1個の第二連接ユニットは、複数の第二連接ユニットで、
前記各第二連接ユニット間は、間隔を開けて連接し、前記各第二連接ユニットの間は、前記各連接棒を利用し、その両端において、移動可能状に固定し、
前記少なくとも1個の擬似器官ユニットは、複数の擬似器官ユニットで、
前記各擬似器官ユニットの個数は、前記第二連接ユニットの個数に対応することを特徴とする、医学造影システム用のランドファントム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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