医用画像処理装置、シェーマの作成方法及びプログラム
【課題】乳房の個体差を詳細に表すシェーマの作成を容易にすることである。
【解決手段】医用画像処理装置は、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段と、ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し(ステップS3、S4)、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する(ステップS5)制御手段と、を備える。
【解決手段】医用画像処理装置は、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段と、ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し(ステップS3、S4)、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する(ステップS5)制御手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、シェーマの作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が作成する画像診断のレポートには、シェーマと呼ばれる被写体の概略図が用いられるのが一般的である。シェーマにより、レポートの読者に対し、より理解しやすい形で読影結果を伝達することができる。
レポートを手書きする際には、患者に拘わらず1つの標準的なシェーマが利用されるが、患者によって被写体の大きさや位置等には個体差があり、1つのシェーマのみでは個体差を反映することはできなかった。そこで、コンピュータにより被写体毎にシェーマを作成する方法が提案されている。
【0003】
例えば、過去撮影された多数の正常な胸部を表す胸部画像から、肋骨モデル形状を含む肋骨モデル画像を多数作成し、これをシェーマのテンプレートとして用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、過去の撮影画像から作成されたシェーマのテンプレートの中から、読影対象の医用画像の肋骨モデル形状に最も近いテンプレートが相互相関により探索され、シェーマとして用いられる。
【0004】
また、血管のシェーマを作成するにあたり、複数のポイントが設定された標準的なシェーマのテンプレートを準備し、医師によるポイントの操作に従ってテンプレートを変形して、血管のシェーマを作成する方法についても開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−181146号公報
【特許文献2】特開2007−7378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法の場合、過去撮影された胸部画像を元にテンプレートを作成しているため、様々な特徴を持つ患者に幅広く対応できるテンプレートが揃っているとは限らない。読影対象の医用画像の肋骨モデル形状を表すテンプレートがなければ、患者に応じたシェーマを提供することができない。
【0007】
また、上記特許文献2の方法によれば、所望の形状にシェーマのテンプレートを変形できるので、シェーマに患者毎の差異を詳細に表すことができる。しかし、特許文献2に開示されている血管のシェーマは直線的な構造が多く、直線に曲線部分を加える等、変形は比較的容易である。これに対し、乳房を被写体とする場合、乳頭や胸筋等、様々な組織が含まれるため、乳房のシェーマは複雑な構造となる。そのため、特許文献2のように、単にポイント操作によって各構造物の変形を行うだけでは所望のシェーマは得られない。
【0008】
例えば、ポイント操作によって乳房のスキンラインの形を一部変形した場合、図11に示すようにスキンラインが乳頭や胸筋から離れてしまう。乳頭や胸筋もスキンラインの変形に合わせて変形操作しなければならないため、煩雑である。これに対し、乳頭や胸筋、スキンラインを単に一体的に扱うこととすると、図11に示すようにスキンラインの変形操作によって乳房全体が全部変形され、スキンラインだけ変形したいという要望に応えられない。
【0009】
また、図12に示すように、シェーマには病変部の可能性が高い領域を示すアノテーションAが付されることがある。シェーマを変形すると、アノテーションAの位置がずれるため、アノテーションAの位置を修正する操作も必要となる。真の病変か否かは、乳頭との位置関係から診断されることも多いため、アノテーションは正確に配置することが好ましいが、変形前と変形後において対応するアノテーションAの位置を判断するのは難しく煩雑である。
【0010】
本発明の課題は、乳房の個体差を詳細に表すシェーマの作成を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段と、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段と、
を備える医用画像処理装置が提供される。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、
前記制御手段は、ユーザの選択操作に応じて、前記テンプレートに描画された乳房の構成部分上の前記特徴点以外の位置に修正点を設け、ユーザによる当該修正点の移動操作に従って、移動操作された修正点及び当該修正点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点、修正点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する請求項1に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、
前記テンプレートには、乳房の構成部分の描画に用いられる画像座標系が設定され、
前記制御手段は、前記テンプレートに病変候補の位置を示すアノテーションが付されている場合、前記テンプレートの各特徴点の画像座標系の位置に基づいて、修正前のテンプレート及び修正後のテンプレートに、乳房内での位置を表す被写体座標系を設定し、当該設定された被写体座標系における位置が修正の前後で一致するように、修正前のテンプレートに描画されたアノテーションを、修正後のテンプレートに改めて描画する請求項1又は2に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、
前記特徴点は、少なくとも乳房のスキンラインの上端及び下端の位置、乳頭の位置、胸筋の上端及び下端の位置に設定される請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、
医用画像処理装置によるシェーマの作成方法であって、
制御手段が、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートに対し、ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動する工程と、
制御手段が、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する工程と、
を含むシェーマの作成方法が提供される。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、
コンピュータを、
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乳房の個体差を詳細に表すシェーマを容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態における医用画像処理装置の機能的構成を示す図である。
【図2】医用画像処理装置により実行されるシェーマ作成処理を示すフローチャートである。
【図3】シェーマのテンプレート例を示す。
【図4】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)はスキンラインの上端を修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図5】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)は胸筋の上端を修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図6】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)は乳頭を修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図7】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)は修正点が追加されたシェーマのテンプレートを示す。(c)は修正点について修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図8】医用画像処理装置により実行されるアノテーション付きシェーマの作成処理を示すフローチャートである。
【図9】被写体座標系を説明する図である。
【図10】(a)アノテーションが付された修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)修正後のシェーマのテンプレートを示す。
【図11】従来の方法によるシェーマの変形例を示す。
【図12】アノテーションが付されたシェーマの従来の方法による変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態における医用画像処理装置1の機能的構成を示す。
医用画像処理装置1は、例えばPACS(Picture Archiving and Communication System)に組み込まれ、読影医が読影用に医用画像を表示し、レポートを作成するために用いられる。
図1に示すように、医用画像処理装置1は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15を備えて構成されている。
【0021】
制御部11は、記憶部15に記憶されているプログラムとの協働により、各種演算を行い、医用画像処理装置1の各部の動作を集中制御して、各種処理を実行する制御手段である。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成されている。
【0022】
例えば、後述するシェーマ作成処理において、制御部11は乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶部15から取得する。制御部11は、ユーザにより前記テンプレートの特徴点の位置が移動されると、当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に従って、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する。
【0023】
操作部12はキーボードやマウスを備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部13はディスプレイを備え、制御部11の表示制御に従って各種操作画面や医用画像を表示する。例えば、表示部13はビューア画面を表示し、ビューア画面上に読影対象の医用画像を表示する。また、表示部13はレポート作成画面を表示し、レポート作成画面上に制御部11により作成されたシェーマを表示する。
【0024】
通信部14は、通信用のインターフェイスを備え、ネットワーク上の外部装置と通信を行う。例えば、通信部14は医用画像を配信するサーバから読影対象の医用画像を受信する。CAD(Computer-Aided Diagnosis)と呼ばれる画像診断支援装置によって病変候補の検出処理が行われている場合、サーバから医用画像とともに病変候補の検出結果を受信する。病変候補の検出処理では、医用画像上で病変部である可能性が高い病変候補の領域が検出される。
【0025】
記憶部15は、制御部11により実行されるプログラム、当該プログラムの実行に用いられるファイルやデータを記憶する記憶手段である。例えば、記憶部15はシェーマ作成処理に必要な乳房のシェーマのテンプレートを記憶している。記憶部15としては、ハードディスクを用いることができる。
【0026】
次に、上記医用画像処理装置1の動作を説明する。
図2は、医用画像処理装置1により実行されるシェーマ作成処理を示す。
シェーマ作成処理では、図2に示すように、制御部11は記憶部15に記憶されている乳房のシェーマのテンプレートを取得し、表示部13に表示する(ステップS1)。
【0027】
図3は、斜位方向の左右の乳房のシェーマのテンプレート例である。
このテンプレートには、乳頭〜胸壁の方向をX軸、X軸と垂直な方向をY軸とする画像座標系が設定されている。画像座標系はX軸、Y軸ともに1画素を1単位とする位置座標系であり、乳房の構成部分を描画するために用いられる。
【0028】
図3に示すように、テンプレートには、乳房のスキンラインSL、乳頭NL、胸筋ラインMLといった、乳房の各構成部分が描画されている。スキンラインSLは乳房の輪郭であり、胸筋ラインMLは胸筋の輪郭、つまり乳房と胸筋の境界線である。左右の乳房の中心に描画された直線は胸壁を示す。
【0029】
テンプレートには、図3に示すように乳房の特徴を示す複数の特徴点P1〜P6が設定されている。特徴点P1は乳房の上端の位置に、特徴点P2は乳房の下端の位置に設定される。乳房の上端、下端はスキンラインSLが凹形状となる箇所をいう。特徴点P3は乳頭の位置に設定される。特徴点P4はスキンラインSL上において特徴点P4と特徴点P2間のY軸方向の距離の中点が特徴点P3となるように設定される。特徴点P5は胸筋の上端の位置に、特徴点P6は胸筋の下端に設定される。なお、図3においては説明の便宜上、左乳房のみ特徴点P1〜P6を示しているが、右乳房にも同様に特徴点P1〜P6は設定される。
【0030】
各特徴点P1〜P6には、各特徴点P1〜P6が存在すべき位置の条件が定められている。
特徴点P1の条件はスキンラインSLと胸筋ラインMLの交点に存在することである。特徴点P2〜P4の条件はスキンラインSL上にのみ存在することである。特徴点P5、P6の条件は胸筋ラインML上に存在することである。
【0031】
その他、移動に関する条件を定めてもよい。
例えば、特徴点P5はX軸方向にのみ移動が可能であり、特徴点P6はY軸方向にのみ移動が可能である。
【0032】
また、テンプレートには、乳房の把握を容易にする補助図形として、乳房を上部、中央部、下部の各領域に分類する境界線LU、LM、LL、乳頭から所定距離内の領域を示す境界線CLが描画されている。境界線LMは特徴点P3を通るX軸に平行な直線であり、特徴点P3のY座標値によって定まる。境界線LUは特徴点P4を通るX軸に平行な直線であり、特徴点P4のY座標値によって定まる。境界線LLは特徴点P2を通るX軸に平行な直線であり、特徴点P2のY座標値によって定まる。境界線LM、LU間の距離と、境界線LM、LL間の距離は同じである。境界線CLは特徴点P3を中心とする円弧である。
【0033】
ユーザは、表示されたテンプレートにおいて特徴点P1〜P6の位置を移動させる操作を行うことができる。
ユーザにより何れかの特徴点P1〜P6が選択操作され、移動操作されると(ステップS2;Y)、制御部11はユーザにより選択操作された特徴点P1〜P6の位置を、移動操作により指定された移動先へと移動させる(ステップS3)。次いで、制御部11は移動された特徴点P1〜P6に関連する他の特徴点P1〜P6を移動させる(ステップS4)。関連する他の特徴点P1〜P6とは、ある特徴点P1〜P6の移動によって移動が必要となる特徴点P1〜P6をいう。このとき、各特徴点P1〜P6の移動は、各特徴点P1〜P6に定められている条件に従って行われる。
【0034】
制御部11は、移動後の各特徴点P1〜P6の位置と、各特徴点P1〜P6に定められている条件に基づいて、スキンラインSL、胸筋ラインML、乳頭NLその他補助図形を改めて描画することによりテンプレートを修正し、シェーマを作成する(ステップS5)。例えば、スキンラインSLであれば、スプライン補間により特徴点P1〜P4を通る曲線を描画する。描画したスキンラインSLの特徴点P3の位置において乳頭NLを描画する。胸筋ラインMLであれば特徴点P5、P6を通る直線を描画する。特徴点P2〜P4のY座標値を元に境界線LU、LM、LLを描画し、特徴点P3の位置を中心に境界線CLを描画する。
作成されたシェーマはレポート作成画面に表示される等して利用される。
【0035】
図4(a)、図4(b)は、テンプレートのスキンラインSLの上端を修正する例を示している。
ユーザによりスキンラインSLの上端である特徴点P1の位置が、図4(a)に示すように移動された場合、制御部11はX軸方向における胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比を算出する。次いで、制御部11は移動後の特徴点P1の画像座標系における位置座標を算出する。制御部11は、特徴点P1の位置座標を算出した位置座標に変更し、図4(b)に示すように特徴点P1の位置を移動させる。
【0036】
特徴点P1の移動により胸筋ラインMLの位置が変わるため、制御部11は胸筋ラインML上に存在するよう条件付けられている特徴点P5を関連する特徴点として移動させる。特徴点P5はX軸方向以外移動できない条件が設定されているため、制御部11は、X軸方向における胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比が、修正前と同じ比となるように特徴点P5のX座標値を変更する。制御部11は、図4(b)に示すように特徴点P5を変更された座標位置に移動させる。
【0037】
特徴点P1、P5、P6は胸筋ラインML上に存在する条件であるので、制御部11は移動後の特徴点P1、P5、P6を通る直線を胸筋ラインMLとして改めて描画する。また、特徴点P1〜P4はスキンラインSL上に存在する条件であるので、制御部11は移動後の特徴点P1〜P4を通るスキンラインSLを改めて描画し、テンプレートを修正する。
【0038】
図5(a)、図5(b)は、テンプレートの胸筋ラインMLの上端を修正する例を示している。
ユーザにより胸筋ラインMLの上端である特徴点P5の位置が、図5(a)に示すように移動された場合、制御部11はX軸方向における胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比を算出する。次いで、制御部11は移動後の特徴点P5の画像座標系におけるX座標値を算出する。制御部11は、特徴点P5のX座標値を算出したX座標値に変更し、特徴点P5を変更された座標位置に移動させる。
【0039】
特徴点P5の移動により、胸筋ラインMLの位置が変わるため、制御部11は胸筋ラインMLとスキンラインSLの交点上に存在するよう条件付けられている特徴点P1を関連する特徴点として移動させる。制御部11は、胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比が、修正前と同じ比となるように特徴点P1のX座標値を変更する。制御部11は、特徴点P1を変更された座標位置に移動させる。
次いで、制御部11は移動後の各特徴点P1〜P6の位置及び条件に基づき、胸筋ラインML、スキンラインSL、乳頭NL、境界線LL、LM、LU、CLを改めて描画し、シェーマを作成する。
【0040】
図6(a)、図6(b)は、テンプレートの乳頭を修正する例を示している。
ユーザにより乳頭に設定された特徴点P3の位置が、図6(a)に示すように移動された場合、制御部11は移動後の特徴点P3の位置座標を算出する。制御部11は、特徴点P3の位置座標を、算出した位置座標に変更し、図6(b)に示すように特徴点P3の位置を移動させる。
【0041】
特徴点P3の移動により、スキンラインSLの形状が変わるため、制御部11はスキンラインSL上に存在するように条件付けられている特徴点P4を関連する特徴点として移動させる。制御部11は、Y軸方向において、特徴点P2と移動後の特徴点P3間の距離と、特徴点P4と移動後の特徴点P3間の距離が一致するように、移動後の特徴点P4のY座標値を算出する。また、制御部11は特徴点P1と移動後の特徴点P3を結ぶスキンラインSLを描画したとき、当該スキンラインSL上で算出したY座標値となる位置のX座標値を算出する。図6(b)に示すように、制御部11は算出したX座標値及びY座標値に特徴点P4を移動させる。
【0042】
次いで、制御部11は移動後の各特徴点P1〜P6の位置及び条件に基づき、胸筋ラインML、スキンラインSL、乳頭NL、境界線LL、LM、LU、CLを改めて描画し、シェーマを作成する。
【0043】
このようにして、特徴点P1〜P6の操作に応じてテンプレートを修正することにより、シェーマを作成することができるが、ユーザが特徴点P1〜P6以外の乳房の構成部分を選択操作することによりテンプレートを修正することも可能である。
図2に示すように、ユーザにより選択操作された位置が乳房の構成部分上ではあるが特徴点P1〜P6ではない場合(ステップS2;N)、制御部11は選択操作された位置に修正点を追加する(ステップS6)。このとき、制御部11は修正点の位置に応じて修正点に修正点が存在すべき位置の条件を付加する。例えば、修正点の位置がスキンライン上であれば追加した修正点にスキンライン上に存在することが条件付けられる。ユーザは追加された修正点を移動操作することができる。
【0044】
制御部11は、ユーザの修正点の移動操作に従って、修正点の位置を移動させる(ステップS7)。その後、特徴点P1〜P6及び移動後の修正点の位置及び条件に基づいて、スキンラインSL等を改めて描画し、テンプレートを修正することによってシェーマを作成する(ステップS8)。
【0045】
図7(a)、図7(b)、図7(c)は、特徴点を用いずに乳房の構成部分を修正する例を示している。
図7(a)に示すように、矢印で示すポインタによって、特徴点P1〜P6でないスキンラインSL上の一部がユーザにより選択操作された場合、図7(b)に示すように、制御部11は選択操作された位置に修正点P7を追加したテンプレートを表示する。図7(b)に示すように修正点P7がユーザにより移動操作されると、制御部11は修正点P7の移動後の位置座標を算出し、図7(c)に示すように当該位置座標に修正点P7を移動させる。
【0046】
修正点P7の移動に伴い、特徴点P1、P3間のスキンラインSLの形状が変化するので、制御部11は特徴点P1、P3間のスキンラインSL上の存在を条件としている特徴点P4を関連する特徴点として移動させる。具体的には、制御部11は特徴点P1と移動後の修正点P7を通るスキンラインSLを描画する。次いで、図7(c)に示すように特徴点P4をX軸方向に移動し、スキンラインSL上に配置する。
【0047】
次いで、制御部11は移動後の修正点P7及び特徴点P2、P3を通るスキンラインSLを描画するとともに、各特徴点P1〜P6の位置及び条件に基づき、胸筋ラインML、乳頭NL、境界線LL、LM、LU、CLを改めて描画し、シェーマを作成する。
【0048】
上述したシェーマ作成処理では、左又は右の何れか一方の乳房のシェーマについてテンプレートの修正が行われると、他方の乳房のシェーマについても同様の修正を行うこととしてもよい。ユーザは右と左の乳房のシェーマに対し、同じ操作を繰り返す必要がなく、効率的である。もっとも、乳房の切除等により、右又は左の何れか一方のみテンプレートを修正する必要がある場合もあるので、左右の修正を同期させるモードと、左右を個々に修正するモードとを設けてもよい。前者のモードの場合、図4(b)、図5(b)、図6(b)に示すように、制御部11は一方の乳房について修正操作されると、他方の乳房についても同じ修正を行ってシェーマを作成する。後者のモードの場合、図7(c)に示すように制御部11は修正操作された乳房についてのみテンプレートを修正しシェーマを作成する。
【0049】
次に、図8を参照して、アノテーションが付されている場合に医用画像処理装置1により実行されるアノテーション付きシェーマの作成処理を説明する。
図8に示すように、制御部11は記憶部15から乳房のシェーマのテンプレートを取得する。そして、乳房画像に対する病変候補の検出結果がある場合、制御部11は当該病変候補の位置を示すアノテーションを、シェーマのテンプレートに描画し、表示部13に表示する(ステップS11)。病変候補の検出結果には、乳房画像における病変候補の位置座標の情報が含まれているので、制御部11は病変候補の位置座標に対応するテンプレートの位置に、当該位置を指し示す矢印や周辺を囲む丸や星等の図形をアノテーションとして描画する。
【0050】
次に、制御部11はテンプレートに設定されている各特徴点P1〜P6の画像座標系の位置座標を取得する(ステップS12)。次いで、制御部11は取得された画像座標系の位置座標に基づいて、テンプレートに画像座標系とは異なる座標系である被写体座標系を設定する(ステップS13)。
【0051】
被写体座標系は、図9に示すように乳房の領域内の位置を示す位置座標系である。
乳房の領域は、境界線LLと境界線LM間の下部、境界線LMと境界線LU間の中央部、境界線LUと特徴点P1のX座標値間の上部に分類される。境界線LU、LM、LLは前述のように特徴点P2〜P4のY座標値によって定まる。被写体座標系は、図9に示すように、乳房の上部、中央部、下部の領域毎に設定される。
図9において、上部の被写体座標系をx1軸及びy1軸、中央部の被写体座標系をx2軸及びy2軸、下部の被写体座標系をx3軸及びy3軸により示す。x1軸〜x3軸の軸方向は画像座標系のX軸と同一方向であり、y1軸〜y3軸の軸方向は画像座標系のY軸と同一方向である。
【0052】
x1軸〜x3軸は、上部、中央部、下部の各領域を画像座標系のX軸方向に4分割したときの1単位を単位とする。x1軸〜x3軸の最小値は0、最大値は4である。4分割する分割線は、左右の乳房の胸壁のラインとスキンラインSL間のX軸方向における距離を4分割する点をそれぞれ接続することにより求められる。同様に、y1軸〜y3軸は上部、中央部、下部の各領域を画像座標系のY軸方向に3分割したときの1単位を単位とする。y1軸〜y3軸の最小値は0、最大値は3である。
【0053】
被写体座標系が設定されると、制御部11はテンプレート上に描画されたアノテーションの被写体座標系における位置座標を取得する(ステップS14)。
アノテーションが描画されたテンプレートはユーザの操作によって修正が可能である。テンプレートの修正に係る操作が無ければ(ステップS15;N)、本処理を終了する。この場合、テンプレートにアノテーションが付されて作成されたシェーマが出力される。一方、表示されたテンプレートにおいて、ユーザにより特徴点又は特徴点以外の乳房の構成部分が選択操作され、テンプレートの修正が指示された場合(ステップS15;Y)、シェーマ作成処理が実行される(ステップS16)。このシェーマ作成処理は、図2を参照して上述した処理と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0054】
シェーマ作成処理の終了後、制御部11は修正されたテンプレートにおける各特徴点P1〜P6の画像座標系の位置座標を取得する(ステップS17)。修正後、各特徴点P1〜P6の位置が移動されていることから、制御部11は、取得された画像座標系の位置座標に基づいて、修正後のテンプレートに被写体座標系を設定する(ステップS18)。被写体座標系の設定方法は上述と同様である。
【0055】
制御部11は、修正後のテンプレートに設定された被写体座標系において、ステップS14で修正前のテンプレートから取得されたアノテーションの被写体座標系の位置座標と一致する位置に、アノテーションを移動させる(ステップS19)。なお、アノテーションは乳房の領域内のみに配置されるので、移動の結果、アノテーションが胸筋の領域内に位置するようであれば、位置を移動して乳房の領域内に存在するように調整すればよい。
【0056】
図10(a)、図10(b)は、アノテーションの位置の修正例を示す。
図10(a)に示すように、修正前のテンプレートにアノテーションAが描画された場合、制御部11はアノテーションAの被写体座標系における位置座標を算出する。アノテーションAは中央部の領域に属しており、その位置座標は(x2、y2)=(2,3)である。その後、テンプレートが修正されると、図10(b)に示すように、制御部11は修正後のテンプレートに被写体座標系を設定する。そして、修正後のテンプレートに設定された被写体座標系において、(x2、y2)=(2,3)の位置にアノテーションAを移動させる。
【0057】
アノテーションAの移動により、テンプレートの修正によってスキンラインSLが変形された場合でも、アノテーションAと乳頭NLとの相対的な位置関係、或いはアノテーションAとスキンラインSLとの相対的な位置関係がテンプレートの修正前と同様となる。乳房の病変部の画像診断は、乳頭の位置等、乳房の構成部分との相対的な位置関係を観察することによって行われるため、テンプレートの修正の前後で、アノテーションAと乳房の構成部分との位置関係を維持することは画像診断上、特に有効である。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートに対し、ユーザにより特徴点が移動操作されると、制御部11は、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動する。制御部11は、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する。これにより、被写体の個体差を詳細に表すシェーマを容易に作成することができる。
【0059】
特徴点は、少なくとも乳房のスキンラインの上端及び下端の位置、乳頭の位置、胸筋の上端及び下端の位置に設定されるので、乳房を特徴付ける要素となるこれら特徴点の位置を移動することにより、被写体の特徴を詳細に表すシェーマを提供することができる。また、ユーザが移動操作した特徴点だけでなく、関連する特徴点もともに移動して乳房の構成部分を改めて描画するため、一部の構成部分を修正することによって他の構成部分の位置がずれたりすることはなく、整形された乳房のシェーマを提供することができる。
【0060】
また、制御部11はユーザの選択操作に応じて、前記テンプレートに描画された乳房の構成部分上の前記特徴点以外の位置に修正点を設け、ユーザによる当該修正点の移動操作に従って、移動操作された修正点及び当該修正点に関連する他の特徴点の位置を移動する。制御部11は各特徴点、修正点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する。
これにより、特徴点以外の位置においても修正が可能となる。乳房を一部切除している場合等、特徴点以外の位置においても修正が必要な被写体の場合にも、被写体を詳細に表すシェーマを容易に作成することができる。
【0061】
また、制御部11は、テンプレートに病変候補の位置を示すアノテーションが付された場合、テンプレートの各特徴点の画像座標系の位置に基づいて、修正前のテンプレート及び修正後のテンプレートに被写体座標系を設定する。制御部11は、設定された被写体座標系における位置が修正の前後で一致するように、修正前のテンプレートに描画されたアノテーションを、修正後のテンプレートに改めて描画する。
これにより、テンプレートの修正によって乳房が変形された場合でも、テンプレートに付されていたアノテーションの乳房内における相対的な位置を維持することができる。シェーマにおいてアノテーションを正確にかつ容易に配置することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0063】
1 医用画像処理装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
15 記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、シェーマの作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が作成する画像診断のレポートには、シェーマと呼ばれる被写体の概略図が用いられるのが一般的である。シェーマにより、レポートの読者に対し、より理解しやすい形で読影結果を伝達することができる。
レポートを手書きする際には、患者に拘わらず1つの標準的なシェーマが利用されるが、患者によって被写体の大きさや位置等には個体差があり、1つのシェーマのみでは個体差を反映することはできなかった。そこで、コンピュータにより被写体毎にシェーマを作成する方法が提案されている。
【0003】
例えば、過去撮影された多数の正常な胸部を表す胸部画像から、肋骨モデル形状を含む肋骨モデル画像を多数作成し、これをシェーマのテンプレートとして用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、過去の撮影画像から作成されたシェーマのテンプレートの中から、読影対象の医用画像の肋骨モデル形状に最も近いテンプレートが相互相関により探索され、シェーマとして用いられる。
【0004】
また、血管のシェーマを作成するにあたり、複数のポイントが設定された標準的なシェーマのテンプレートを準備し、医師によるポイントの操作に従ってテンプレートを変形して、血管のシェーマを作成する方法についても開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−181146号公報
【特許文献2】特開2007−7378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法の場合、過去撮影された胸部画像を元にテンプレートを作成しているため、様々な特徴を持つ患者に幅広く対応できるテンプレートが揃っているとは限らない。読影対象の医用画像の肋骨モデル形状を表すテンプレートがなければ、患者に応じたシェーマを提供することができない。
【0007】
また、上記特許文献2の方法によれば、所望の形状にシェーマのテンプレートを変形できるので、シェーマに患者毎の差異を詳細に表すことができる。しかし、特許文献2に開示されている血管のシェーマは直線的な構造が多く、直線に曲線部分を加える等、変形は比較的容易である。これに対し、乳房を被写体とする場合、乳頭や胸筋等、様々な組織が含まれるため、乳房のシェーマは複雑な構造となる。そのため、特許文献2のように、単にポイント操作によって各構造物の変形を行うだけでは所望のシェーマは得られない。
【0008】
例えば、ポイント操作によって乳房のスキンラインの形を一部変形した場合、図11に示すようにスキンラインが乳頭や胸筋から離れてしまう。乳頭や胸筋もスキンラインの変形に合わせて変形操作しなければならないため、煩雑である。これに対し、乳頭や胸筋、スキンラインを単に一体的に扱うこととすると、図11に示すようにスキンラインの変形操作によって乳房全体が全部変形され、スキンラインだけ変形したいという要望に応えられない。
【0009】
また、図12に示すように、シェーマには病変部の可能性が高い領域を示すアノテーションAが付されることがある。シェーマを変形すると、アノテーションAの位置がずれるため、アノテーションAの位置を修正する操作も必要となる。真の病変か否かは、乳頭との位置関係から診断されることも多いため、アノテーションは正確に配置することが好ましいが、変形前と変形後において対応するアノテーションAの位置を判断するのは難しく煩雑である。
【0010】
本発明の課題は、乳房の個体差を詳細に表すシェーマの作成を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段と、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段と、
を備える医用画像処理装置が提供される。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、
前記制御手段は、ユーザの選択操作に応じて、前記テンプレートに描画された乳房の構成部分上の前記特徴点以外の位置に修正点を設け、ユーザによる当該修正点の移動操作に従って、移動操作された修正点及び当該修正点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点、修正点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する請求項1に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、
前記テンプレートには、乳房の構成部分の描画に用いられる画像座標系が設定され、
前記制御手段は、前記テンプレートに病変候補の位置を示すアノテーションが付されている場合、前記テンプレートの各特徴点の画像座標系の位置に基づいて、修正前のテンプレート及び修正後のテンプレートに、乳房内での位置を表す被写体座標系を設定し、当該設定された被写体座標系における位置が修正の前後で一致するように、修正前のテンプレートに描画されたアノテーションを、修正後のテンプレートに改めて描画する請求項1又は2に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、
前記特徴点は、少なくとも乳房のスキンラインの上端及び下端の位置、乳頭の位置、胸筋の上端及び下端の位置に設定される請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、
医用画像処理装置によるシェーマの作成方法であって、
制御手段が、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートに対し、ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動する工程と、
制御手段が、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する工程と、
を含むシェーマの作成方法が提供される。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、
コンピュータを、
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乳房の個体差を詳細に表すシェーマを容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態における医用画像処理装置の機能的構成を示す図である。
【図2】医用画像処理装置により実行されるシェーマ作成処理を示すフローチャートである。
【図3】シェーマのテンプレート例を示す。
【図4】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)はスキンラインの上端を修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図5】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)は胸筋の上端を修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図6】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)は乳頭を修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図7】(a)は修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)は修正点が追加されたシェーマのテンプレートを示す。(c)は修正点について修正した後のシェーマのテンプレートを示す。
【図8】医用画像処理装置により実行されるアノテーション付きシェーマの作成処理を示すフローチャートである。
【図9】被写体座標系を説明する図である。
【図10】(a)アノテーションが付された修正前のシェーマのテンプレートを示す。(b)修正後のシェーマのテンプレートを示す。
【図11】従来の方法によるシェーマの変形例を示す。
【図12】アノテーションが付されたシェーマの従来の方法による変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態における医用画像処理装置1の機能的構成を示す。
医用画像処理装置1は、例えばPACS(Picture Archiving and Communication System)に組み込まれ、読影医が読影用に医用画像を表示し、レポートを作成するために用いられる。
図1に示すように、医用画像処理装置1は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15を備えて構成されている。
【0021】
制御部11は、記憶部15に記憶されているプログラムとの協働により、各種演算を行い、医用画像処理装置1の各部の動作を集中制御して、各種処理を実行する制御手段である。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成されている。
【0022】
例えば、後述するシェーマ作成処理において、制御部11は乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶部15から取得する。制御部11は、ユーザにより前記テンプレートの特徴点の位置が移動されると、当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に従って、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する。
【0023】
操作部12はキーボードやマウスを備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部13はディスプレイを備え、制御部11の表示制御に従って各種操作画面や医用画像を表示する。例えば、表示部13はビューア画面を表示し、ビューア画面上に読影対象の医用画像を表示する。また、表示部13はレポート作成画面を表示し、レポート作成画面上に制御部11により作成されたシェーマを表示する。
【0024】
通信部14は、通信用のインターフェイスを備え、ネットワーク上の外部装置と通信を行う。例えば、通信部14は医用画像を配信するサーバから読影対象の医用画像を受信する。CAD(Computer-Aided Diagnosis)と呼ばれる画像診断支援装置によって病変候補の検出処理が行われている場合、サーバから医用画像とともに病変候補の検出結果を受信する。病変候補の検出処理では、医用画像上で病変部である可能性が高い病変候補の領域が検出される。
【0025】
記憶部15は、制御部11により実行されるプログラム、当該プログラムの実行に用いられるファイルやデータを記憶する記憶手段である。例えば、記憶部15はシェーマ作成処理に必要な乳房のシェーマのテンプレートを記憶している。記憶部15としては、ハードディスクを用いることができる。
【0026】
次に、上記医用画像処理装置1の動作を説明する。
図2は、医用画像処理装置1により実行されるシェーマ作成処理を示す。
シェーマ作成処理では、図2に示すように、制御部11は記憶部15に記憶されている乳房のシェーマのテンプレートを取得し、表示部13に表示する(ステップS1)。
【0027】
図3は、斜位方向の左右の乳房のシェーマのテンプレート例である。
このテンプレートには、乳頭〜胸壁の方向をX軸、X軸と垂直な方向をY軸とする画像座標系が設定されている。画像座標系はX軸、Y軸ともに1画素を1単位とする位置座標系であり、乳房の構成部分を描画するために用いられる。
【0028】
図3に示すように、テンプレートには、乳房のスキンラインSL、乳頭NL、胸筋ラインMLといった、乳房の各構成部分が描画されている。スキンラインSLは乳房の輪郭であり、胸筋ラインMLは胸筋の輪郭、つまり乳房と胸筋の境界線である。左右の乳房の中心に描画された直線は胸壁を示す。
【0029】
テンプレートには、図3に示すように乳房の特徴を示す複数の特徴点P1〜P6が設定されている。特徴点P1は乳房の上端の位置に、特徴点P2は乳房の下端の位置に設定される。乳房の上端、下端はスキンラインSLが凹形状となる箇所をいう。特徴点P3は乳頭の位置に設定される。特徴点P4はスキンラインSL上において特徴点P4と特徴点P2間のY軸方向の距離の中点が特徴点P3となるように設定される。特徴点P5は胸筋の上端の位置に、特徴点P6は胸筋の下端に設定される。なお、図3においては説明の便宜上、左乳房のみ特徴点P1〜P6を示しているが、右乳房にも同様に特徴点P1〜P6は設定される。
【0030】
各特徴点P1〜P6には、各特徴点P1〜P6が存在すべき位置の条件が定められている。
特徴点P1の条件はスキンラインSLと胸筋ラインMLの交点に存在することである。特徴点P2〜P4の条件はスキンラインSL上にのみ存在することである。特徴点P5、P6の条件は胸筋ラインML上に存在することである。
【0031】
その他、移動に関する条件を定めてもよい。
例えば、特徴点P5はX軸方向にのみ移動が可能であり、特徴点P6はY軸方向にのみ移動が可能である。
【0032】
また、テンプレートには、乳房の把握を容易にする補助図形として、乳房を上部、中央部、下部の各領域に分類する境界線LU、LM、LL、乳頭から所定距離内の領域を示す境界線CLが描画されている。境界線LMは特徴点P3を通るX軸に平行な直線であり、特徴点P3のY座標値によって定まる。境界線LUは特徴点P4を通るX軸に平行な直線であり、特徴点P4のY座標値によって定まる。境界線LLは特徴点P2を通るX軸に平行な直線であり、特徴点P2のY座標値によって定まる。境界線LM、LU間の距離と、境界線LM、LL間の距離は同じである。境界線CLは特徴点P3を中心とする円弧である。
【0033】
ユーザは、表示されたテンプレートにおいて特徴点P1〜P6の位置を移動させる操作を行うことができる。
ユーザにより何れかの特徴点P1〜P6が選択操作され、移動操作されると(ステップS2;Y)、制御部11はユーザにより選択操作された特徴点P1〜P6の位置を、移動操作により指定された移動先へと移動させる(ステップS3)。次いで、制御部11は移動された特徴点P1〜P6に関連する他の特徴点P1〜P6を移動させる(ステップS4)。関連する他の特徴点P1〜P6とは、ある特徴点P1〜P6の移動によって移動が必要となる特徴点P1〜P6をいう。このとき、各特徴点P1〜P6の移動は、各特徴点P1〜P6に定められている条件に従って行われる。
【0034】
制御部11は、移動後の各特徴点P1〜P6の位置と、各特徴点P1〜P6に定められている条件に基づいて、スキンラインSL、胸筋ラインML、乳頭NLその他補助図形を改めて描画することによりテンプレートを修正し、シェーマを作成する(ステップS5)。例えば、スキンラインSLであれば、スプライン補間により特徴点P1〜P4を通る曲線を描画する。描画したスキンラインSLの特徴点P3の位置において乳頭NLを描画する。胸筋ラインMLであれば特徴点P5、P6を通る直線を描画する。特徴点P2〜P4のY座標値を元に境界線LU、LM、LLを描画し、特徴点P3の位置を中心に境界線CLを描画する。
作成されたシェーマはレポート作成画面に表示される等して利用される。
【0035】
図4(a)、図4(b)は、テンプレートのスキンラインSLの上端を修正する例を示している。
ユーザによりスキンラインSLの上端である特徴点P1の位置が、図4(a)に示すように移動された場合、制御部11はX軸方向における胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比を算出する。次いで、制御部11は移動後の特徴点P1の画像座標系における位置座標を算出する。制御部11は、特徴点P1の位置座標を算出した位置座標に変更し、図4(b)に示すように特徴点P1の位置を移動させる。
【0036】
特徴点P1の移動により胸筋ラインMLの位置が変わるため、制御部11は胸筋ラインML上に存在するよう条件付けられている特徴点P5を関連する特徴点として移動させる。特徴点P5はX軸方向以外移動できない条件が設定されているため、制御部11は、X軸方向における胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比が、修正前と同じ比となるように特徴点P5のX座標値を変更する。制御部11は、図4(b)に示すように特徴点P5を変更された座標位置に移動させる。
【0037】
特徴点P1、P5、P6は胸筋ラインML上に存在する条件であるので、制御部11は移動後の特徴点P1、P5、P6を通る直線を胸筋ラインMLとして改めて描画する。また、特徴点P1〜P4はスキンラインSL上に存在する条件であるので、制御部11は移動後の特徴点P1〜P4を通るスキンラインSLを改めて描画し、テンプレートを修正する。
【0038】
図5(a)、図5(b)は、テンプレートの胸筋ラインMLの上端を修正する例を示している。
ユーザにより胸筋ラインMLの上端である特徴点P5の位置が、図5(a)に示すように移動された場合、制御部11はX軸方向における胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比を算出する。次いで、制御部11は移動後の特徴点P5の画像座標系におけるX座標値を算出する。制御部11は、特徴点P5のX座標値を算出したX座標値に変更し、特徴点P5を変更された座標位置に移動させる。
【0039】
特徴点P5の移動により、胸筋ラインMLの位置が変わるため、制御部11は胸筋ラインMLとスキンラインSLの交点上に存在するよう条件付けられている特徴点P1を関連する特徴点として移動させる。制御部11は、胸壁から特徴点P1までの距離と、特徴点P1から特徴点P5までの距離との比が、修正前と同じ比となるように特徴点P1のX座標値を変更する。制御部11は、特徴点P1を変更された座標位置に移動させる。
次いで、制御部11は移動後の各特徴点P1〜P6の位置及び条件に基づき、胸筋ラインML、スキンラインSL、乳頭NL、境界線LL、LM、LU、CLを改めて描画し、シェーマを作成する。
【0040】
図6(a)、図6(b)は、テンプレートの乳頭を修正する例を示している。
ユーザにより乳頭に設定された特徴点P3の位置が、図6(a)に示すように移動された場合、制御部11は移動後の特徴点P3の位置座標を算出する。制御部11は、特徴点P3の位置座標を、算出した位置座標に変更し、図6(b)に示すように特徴点P3の位置を移動させる。
【0041】
特徴点P3の移動により、スキンラインSLの形状が変わるため、制御部11はスキンラインSL上に存在するように条件付けられている特徴点P4を関連する特徴点として移動させる。制御部11は、Y軸方向において、特徴点P2と移動後の特徴点P3間の距離と、特徴点P4と移動後の特徴点P3間の距離が一致するように、移動後の特徴点P4のY座標値を算出する。また、制御部11は特徴点P1と移動後の特徴点P3を結ぶスキンラインSLを描画したとき、当該スキンラインSL上で算出したY座標値となる位置のX座標値を算出する。図6(b)に示すように、制御部11は算出したX座標値及びY座標値に特徴点P4を移動させる。
【0042】
次いで、制御部11は移動後の各特徴点P1〜P6の位置及び条件に基づき、胸筋ラインML、スキンラインSL、乳頭NL、境界線LL、LM、LU、CLを改めて描画し、シェーマを作成する。
【0043】
このようにして、特徴点P1〜P6の操作に応じてテンプレートを修正することにより、シェーマを作成することができるが、ユーザが特徴点P1〜P6以外の乳房の構成部分を選択操作することによりテンプレートを修正することも可能である。
図2に示すように、ユーザにより選択操作された位置が乳房の構成部分上ではあるが特徴点P1〜P6ではない場合(ステップS2;N)、制御部11は選択操作された位置に修正点を追加する(ステップS6)。このとき、制御部11は修正点の位置に応じて修正点に修正点が存在すべき位置の条件を付加する。例えば、修正点の位置がスキンライン上であれば追加した修正点にスキンライン上に存在することが条件付けられる。ユーザは追加された修正点を移動操作することができる。
【0044】
制御部11は、ユーザの修正点の移動操作に従って、修正点の位置を移動させる(ステップS7)。その後、特徴点P1〜P6及び移動後の修正点の位置及び条件に基づいて、スキンラインSL等を改めて描画し、テンプレートを修正することによってシェーマを作成する(ステップS8)。
【0045】
図7(a)、図7(b)、図7(c)は、特徴点を用いずに乳房の構成部分を修正する例を示している。
図7(a)に示すように、矢印で示すポインタによって、特徴点P1〜P6でないスキンラインSL上の一部がユーザにより選択操作された場合、図7(b)に示すように、制御部11は選択操作された位置に修正点P7を追加したテンプレートを表示する。図7(b)に示すように修正点P7がユーザにより移動操作されると、制御部11は修正点P7の移動後の位置座標を算出し、図7(c)に示すように当該位置座標に修正点P7を移動させる。
【0046】
修正点P7の移動に伴い、特徴点P1、P3間のスキンラインSLの形状が変化するので、制御部11は特徴点P1、P3間のスキンラインSL上の存在を条件としている特徴点P4を関連する特徴点として移動させる。具体的には、制御部11は特徴点P1と移動後の修正点P7を通るスキンラインSLを描画する。次いで、図7(c)に示すように特徴点P4をX軸方向に移動し、スキンラインSL上に配置する。
【0047】
次いで、制御部11は移動後の修正点P7及び特徴点P2、P3を通るスキンラインSLを描画するとともに、各特徴点P1〜P6の位置及び条件に基づき、胸筋ラインML、乳頭NL、境界線LL、LM、LU、CLを改めて描画し、シェーマを作成する。
【0048】
上述したシェーマ作成処理では、左又は右の何れか一方の乳房のシェーマについてテンプレートの修正が行われると、他方の乳房のシェーマについても同様の修正を行うこととしてもよい。ユーザは右と左の乳房のシェーマに対し、同じ操作を繰り返す必要がなく、効率的である。もっとも、乳房の切除等により、右又は左の何れか一方のみテンプレートを修正する必要がある場合もあるので、左右の修正を同期させるモードと、左右を個々に修正するモードとを設けてもよい。前者のモードの場合、図4(b)、図5(b)、図6(b)に示すように、制御部11は一方の乳房について修正操作されると、他方の乳房についても同じ修正を行ってシェーマを作成する。後者のモードの場合、図7(c)に示すように制御部11は修正操作された乳房についてのみテンプレートを修正しシェーマを作成する。
【0049】
次に、図8を参照して、アノテーションが付されている場合に医用画像処理装置1により実行されるアノテーション付きシェーマの作成処理を説明する。
図8に示すように、制御部11は記憶部15から乳房のシェーマのテンプレートを取得する。そして、乳房画像に対する病変候補の検出結果がある場合、制御部11は当該病変候補の位置を示すアノテーションを、シェーマのテンプレートに描画し、表示部13に表示する(ステップS11)。病変候補の検出結果には、乳房画像における病変候補の位置座標の情報が含まれているので、制御部11は病変候補の位置座標に対応するテンプレートの位置に、当該位置を指し示す矢印や周辺を囲む丸や星等の図形をアノテーションとして描画する。
【0050】
次に、制御部11はテンプレートに設定されている各特徴点P1〜P6の画像座標系の位置座標を取得する(ステップS12)。次いで、制御部11は取得された画像座標系の位置座標に基づいて、テンプレートに画像座標系とは異なる座標系である被写体座標系を設定する(ステップS13)。
【0051】
被写体座標系は、図9に示すように乳房の領域内の位置を示す位置座標系である。
乳房の領域は、境界線LLと境界線LM間の下部、境界線LMと境界線LU間の中央部、境界線LUと特徴点P1のX座標値間の上部に分類される。境界線LU、LM、LLは前述のように特徴点P2〜P4のY座標値によって定まる。被写体座標系は、図9に示すように、乳房の上部、中央部、下部の領域毎に設定される。
図9において、上部の被写体座標系をx1軸及びy1軸、中央部の被写体座標系をx2軸及びy2軸、下部の被写体座標系をx3軸及びy3軸により示す。x1軸〜x3軸の軸方向は画像座標系のX軸と同一方向であり、y1軸〜y3軸の軸方向は画像座標系のY軸と同一方向である。
【0052】
x1軸〜x3軸は、上部、中央部、下部の各領域を画像座標系のX軸方向に4分割したときの1単位を単位とする。x1軸〜x3軸の最小値は0、最大値は4である。4分割する分割線は、左右の乳房の胸壁のラインとスキンラインSL間のX軸方向における距離を4分割する点をそれぞれ接続することにより求められる。同様に、y1軸〜y3軸は上部、中央部、下部の各領域を画像座標系のY軸方向に3分割したときの1単位を単位とする。y1軸〜y3軸の最小値は0、最大値は3である。
【0053】
被写体座標系が設定されると、制御部11はテンプレート上に描画されたアノテーションの被写体座標系における位置座標を取得する(ステップS14)。
アノテーションが描画されたテンプレートはユーザの操作によって修正が可能である。テンプレートの修正に係る操作が無ければ(ステップS15;N)、本処理を終了する。この場合、テンプレートにアノテーションが付されて作成されたシェーマが出力される。一方、表示されたテンプレートにおいて、ユーザにより特徴点又は特徴点以外の乳房の構成部分が選択操作され、テンプレートの修正が指示された場合(ステップS15;Y)、シェーマ作成処理が実行される(ステップS16)。このシェーマ作成処理は、図2を参照して上述した処理と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0054】
シェーマ作成処理の終了後、制御部11は修正されたテンプレートにおける各特徴点P1〜P6の画像座標系の位置座標を取得する(ステップS17)。修正後、各特徴点P1〜P6の位置が移動されていることから、制御部11は、取得された画像座標系の位置座標に基づいて、修正後のテンプレートに被写体座標系を設定する(ステップS18)。被写体座標系の設定方法は上述と同様である。
【0055】
制御部11は、修正後のテンプレートに設定された被写体座標系において、ステップS14で修正前のテンプレートから取得されたアノテーションの被写体座標系の位置座標と一致する位置に、アノテーションを移動させる(ステップS19)。なお、アノテーションは乳房の領域内のみに配置されるので、移動の結果、アノテーションが胸筋の領域内に位置するようであれば、位置を移動して乳房の領域内に存在するように調整すればよい。
【0056】
図10(a)、図10(b)は、アノテーションの位置の修正例を示す。
図10(a)に示すように、修正前のテンプレートにアノテーションAが描画された場合、制御部11はアノテーションAの被写体座標系における位置座標を算出する。アノテーションAは中央部の領域に属しており、その位置座標は(x2、y2)=(2,3)である。その後、テンプレートが修正されると、図10(b)に示すように、制御部11は修正後のテンプレートに被写体座標系を設定する。そして、修正後のテンプレートに設定された被写体座標系において、(x2、y2)=(2,3)の位置にアノテーションAを移動させる。
【0057】
アノテーションAの移動により、テンプレートの修正によってスキンラインSLが変形された場合でも、アノテーションAと乳頭NLとの相対的な位置関係、或いはアノテーションAとスキンラインSLとの相対的な位置関係がテンプレートの修正前と同様となる。乳房の病変部の画像診断は、乳頭の位置等、乳房の構成部分との相対的な位置関係を観察することによって行われるため、テンプレートの修正の前後で、アノテーションAと乳房の構成部分との位置関係を維持することは画像診断上、特に有効である。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートに対し、ユーザにより特徴点が移動操作されると、制御部11は、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動する。制御部11は、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する。これにより、被写体の個体差を詳細に表すシェーマを容易に作成することができる。
【0059】
特徴点は、少なくとも乳房のスキンラインの上端及び下端の位置、乳頭の位置、胸筋の上端及び下端の位置に設定されるので、乳房を特徴付ける要素となるこれら特徴点の位置を移動することにより、被写体の特徴を詳細に表すシェーマを提供することができる。また、ユーザが移動操作した特徴点だけでなく、関連する特徴点もともに移動して乳房の構成部分を改めて描画するため、一部の構成部分を修正することによって他の構成部分の位置がずれたりすることはなく、整形された乳房のシェーマを提供することができる。
【0060】
また、制御部11はユーザの選択操作に応じて、前記テンプレートに描画された乳房の構成部分上の前記特徴点以外の位置に修正点を設け、ユーザによる当該修正点の移動操作に従って、移動操作された修正点及び当該修正点に関連する他の特徴点の位置を移動する。制御部11は各特徴点、修正点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する。
これにより、特徴点以外の位置においても修正が可能となる。乳房を一部切除している場合等、特徴点以外の位置においても修正が必要な被写体の場合にも、被写体を詳細に表すシェーマを容易に作成することができる。
【0061】
また、制御部11は、テンプレートに病変候補の位置を示すアノテーションが付された場合、テンプレートの各特徴点の画像座標系の位置に基づいて、修正前のテンプレート及び修正後のテンプレートに被写体座標系を設定する。制御部11は、設定された被写体座標系における位置が修正の前後で一致するように、修正前のテンプレートに描画されたアノテーションを、修正後のテンプレートに改めて描画する。
これにより、テンプレートの修正によって乳房が変形された場合でも、テンプレートに付されていたアノテーションの乳房内における相対的な位置を維持することができる。シェーマにおいてアノテーションを正確にかつ容易に配置することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0063】
1 医用画像処理装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
15 記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段と、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、ユーザの選択操作に応じて、前記テンプレートに描画された乳房の構成部分上の前記特徴点以外の位置に修正点を設け、ユーザによる当該修正点の移動操作に従って、移動操作された修正点及び当該修正点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点、修正点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記テンプレートには、乳房の構成部分の描画に用いられる画像座標系が設定され、
前記制御手段は、前記テンプレートに病変候補の位置を示すアノテーションが付されている場合、前記テンプレートの各特徴点の画像座標系の位置に基づいて、修正前のテンプレート及び修正後のテンプレートに、乳房内での位置を表す被写体座標系を設定し、当該設定された被写体座標系における位置が修正の前後で一致するように、修正前のテンプレートに描画されたアノテーションを、修正後のテンプレートに改めて描画する請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特徴点は、少なくとも乳房のスキンラインの上端及び下端の位置、乳頭の位置、胸筋の上端及び下端の位置に設定される請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
医用画像処理装置によるシェーマの作成方法であって、
制御手段が、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートに対し、ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動する工程と、
制御手段が、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する工程と、
を含むシェーマの作成方法。
【請求項6】
コンピュータを、
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段と、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、ユーザの選択操作に応じて、前記テンプレートに描画された乳房の構成部分上の前記特徴点以外の位置に修正点を設け、ユーザによる当該修正点の移動操作に従って、移動操作された修正点及び当該修正点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点、修正点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記テンプレートには、乳房の構成部分の描画に用いられる画像座標系が設定され、
前記制御手段は、前記テンプレートに病変候補の位置を示すアノテーションが付されている場合、前記テンプレートの各特徴点の画像座標系の位置に基づいて、修正前のテンプレート及び修正後のテンプレートに、乳房内での位置を表す被写体座標系を設定し、当該設定された被写体座標系における位置が修正の前後で一致するように、修正前のテンプレートに描画されたアノテーションを、修正後のテンプレートに改めて描画する請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特徴点は、少なくとも乳房のスキンラインの上端及び下端の位置、乳頭の位置、胸筋の上端及び下端の位置に設定される請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
医用画像処理装置によるシェーマの作成方法であって、
制御手段が、乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートに対し、ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動する工程と、
制御手段が、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する工程と、
を含むシェーマの作成方法。
【請求項6】
コンピュータを、
乳房の構成部分が描画されたシェーマのテンプレートであって、乳房の特徴点が複数設定され、当該特徴点が存在すべき位置の条件が付されたテンプレートを記憶する記憶手段、
ユーザにより前記特徴点が移動操作されると、移動操作された特徴点及び当該特徴点に関連する他の特徴点の位置を移動し、各特徴点の移動後の位置及び移動された各特徴点に付された条件に基づいて、前記テンプレートの乳房の構成部分を改めて描画する修正を行い、シェーマを作成する制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−240097(P2010−240097A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91121(P2009−91121)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]