説明

医用画像診断装置

【課題】医用画像データの収集条件、再構成条件、及び後処理(MPR画像作成処理、3D画像構成処理、心臓の位相検索画像作成処理等)条件等の検査条件を再現可能な医用画像診断装置を提供する。
【解決手段】医用画像データを保存するサーバ装置とネットワークを介して接続された医用画像診断装置に、次の制御を行う制御部127を具備させる。すなわち、制御部127は、検査条件を示す検査条件情報が付帯情報として記録された医用画像データを前記サーバ装置から取得し、前記医用画像データの付帯情報から前記検査条件情報を読み出し、前記検査条件情報に基づいて検査条件を設定して検査撮影を実行し、取得した医用画像データに対して、前記検査条件に基づいて画像処理を施す制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体をスキャン等して取得したデータに基づいて医用画像データを生成する医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療行為の専門分野は細分化されている。例えば、画像診断においては、患者の医用画像データの取得、取得された医用画像データの読影及びレポート作成、レポート結果に基づく診断結果や治療方針の説明、等の各作業に分割される。各作業は、各専門家(担当の医師又は担当技師)によって担当され、これら全ての作業によって、患者に対する診断等の医療行為が達成される。各専門家は、前段の作業において他の専門家が作成した情報に基づいて、且つ適宜過去の診断情報等を参照することにより、各作業を実行する。これらの作業は、例えば、医用画像データを生成するX線CT装置、MRI装置等の医用画像診断装置、医用画像データを記憶するPACSサーバ、医用画像データを読影するための画像参照装置等により行われる。
【0003】
ところで、例えばCT検査等において経過観察の目的で、過去に行った検査と同様の検査条件(収集条件等)を再現して検査を行う場合がある。このような場合には、当該検査に当たって、過去の検査における検査条件等と同様の検査条件等を設定する必要がある。この為に、従来より例えば次のような手法が採られている。
【0004】
すなわち、例えば検査ごとに検査条件をカルテに記録しておき、該記録を参照して過去の検査と同様の検査条件を再現する手法が採られている。また、各々の検査時に検査条件を示す医療情報を作成してサーバへ送信して記録しておき、過去の検査と同様の検査条件等が必要となった場合に、前記サーバから前記医療情報を読み込む手法が採られている。
【0005】
このような技術に関連する技術として、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。すなわち、特許文献1に開示されている技術では、過去の医療情報のうち、撮影段階やレポート作成段階に有効なものについて、統一された形式にて共有オブジェクトを新たに生成する。この共有オブジェクトには、位置決め画像、オブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報を含めることができる為、これらの情報を用いて、過去の検査と同様の撮影条件、撮影範囲、撮影断層位置、画像生成条件等を自動的に設定することができる。つまり、特許文献1に開示されている技術では、前記共有オブジェクトを生成して予めサーバへ記録しておき、当該共有オブジェクトが必要な場合に、前記サーバからダウンロードして利用する。
【特許文献1】特開2007−167634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、再現対象の検査で生成された医用画像データに対して後処理(例えばMPR処理や3D処理等)が施されている場合には、当該後処理の条件に関しても再現する必要が生じる。
【0007】
例えば、検査においては、特にMPR処理によりMPR画像が作成されるケースは多く、経過観察の目的で行う検査においてはMPR画像に関しても、過去の検査と同様の検査条件で収集して生成されたMPR画像を得ることが必要となる。
【0008】
なお、特許文献1に開示されている技術は、過去の検査で医用画像データに施された後処理と同様の後処理条件を再現することができる技術ではない。また、医用画像診断装置として、DICOMのサポート端末であることだけでなく、上述したような共有オブジェクトを扱うことができる端末であることが要求される。
【0009】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、医用画像データの収集条件、再構成条件、及び後処理(MPR画像作成処理、3D画像構成処理、心臓の位相検索画像作成処理等)条件等の検査条件を再現可能な医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による医用画像診断装置は、
医用画像データを保存するサーバ装置とネットワークを介して接続された医用画像診断装置であって、
検査条件を示す検査条件情報が付帯情報として記録された医用画像データを、前記サーバ装置から取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得した前記医用画像データの付帯情報から前記検査条件情報を読み出す検査条件読み出し部と、
前記検査条件読み出し部によって読み出された検査条件を設定して検査撮影を実行する撮影部と、
前記撮影部による検査撮影で取得した医用画像データに対して、前記検査条件に基づいて画像処理を施す画像処理部と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様による医用画像診断装置は、
検査条件を示す検査条件情報が付帯情報として記録された医用画像データを保存するサーバ装置とネットワークを介して接続された医用画像診断装置であって、
前記サーバ装置が保持する医用画像データの一覧表示を示す一覧データを前記サーバ装置から取得する一覧データ取得部と、
前記一覧データ取得部によって取得した医用画像データの中からユーザが所望の医用画像データを選択する為の表示を行う選択表示部と、
前記選択表示部に表示された医用画像データのうちユーザにより選択された医用画像データを前記サーバ装置から取得する選択データ取得部と、
前記選択データ取得部によって取得した前記医用画像データの付帯情報から前記検査条件情報を読み出す検査条件読み出し部と、
前記検査条件読み出し部によって読み出された検査条件を設定して検査撮影を実行する撮影部と、
前記撮影部による検査撮影で取得した医用画像データに対して、前記検査条件に基づいて後処理を施す画像処理部と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、医用画像データの収集条件、再構成条件、及び後処理(MPR画像作成処理、3D画像構成処理、心臓の位相検索画像作成処理等)条件等の検査条件を再現可能な医用画像診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置について説明する。
【0014】
図1は、本一実施形態に係る医用画像診断装置1を適用した医用画像診断システムSの一構成例を示す図である。同図に示すように、医用画像診断システムSは、病院情報システム(HIS: Hospital Information System)を利用して構築され、それぞれネットワークNに接続された医用画像診断装置(X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と称する))1と、画像参照装置7と、PACSサーバ9と、を具備する。
【0015】
なお、図1では、医用画像診断装置としてX線CT装置1を用いる例を示した。しかしながら、本発明の技術的思想はこれに拘泥されず、例えば磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、X線診断装置、核医学診断装置等の寝台を利用して撮影位置を決定するものであれば、適用することが可能である。また、図1では、一つの病院内での情報システムを利用して構築される医用画像診断システムSの例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、例えばインターネット等の外部ネットワークを介して、異なる医療機関や研究機関に設置された医用画像診断装置、PACSサーバ、画像参照装置、医療端末等から構成されるようにしてもよい。
【0016】
以下、前記X線CT装置1について説明する。
【0017】
前記X線CT装置1は、X線投影データを取得するためのスキャンシーケンス、X線投影データを用いた画像再構成によるX線断層画像の生成・表示処理等を実行する。また、X線CT装置1等は、スキャン処理、X線CT画像の再構成、ボリュームレンダリング、及びMPR処理等を実行する。
【0018】
図2は、前記X線CT装置1の一構成例を示すブロック図である。同図に示すように、X線CT装置1は、架台100と、情報処理部101と、を有する。
【0019】
前記架台100は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、スリップリング11と、架台駆動部112と、X線管球113と、X線検出器115と、回転フレーム116と、データ収集部117と、非接触データ伝送装置118と、を備える。
【0020】
前記情報処理部101は、架台100におけるデータ収集動作の制御、及び架台100において収集されたデータに所定の処理を施すことで、X線CT画像及びこれを用いた各種臨床情報を生成するものであり、高電圧発生装置119と、前処理部120と、メモリ部121と、再構成部123と、画像処理部124と、記憶部125と、制御部127と、表示部129と、入力部131と、送受信部140と、を備える。
【0021】
前記架台駆動部112は、回転フレーム116を回転駆動する。この回転駆動により、X線管球113とX線検出器115とが対向しながら、被検体Pの体軸を中心に螺旋状に回転することになる。
【0022】
前記X線管球113は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム116に設けられている。当該X線管球113には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生装置119からスリップリング11を介して供給される。X線管球113は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された被検体に対してX線を曝射する。
【0023】
前記X線検出器115は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球113に対向する向きで回転フレーム116に取り付けられている。当該X線検出器115は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じて一次元的又は二次元的に配列されている。
【0024】
前記回転フレーム116は、Z軸を中心として回転駆動されるリングであり、X線管球113とX線検出器115とを搭載している。この回転フレーム116の中央部分は開口されており、この開口部に、寝台(図示せず)上に載置された被検体Pが挿入される。
【0025】
前記データ収集装置17は、一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれ、検出器15からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は、非接触データ伝送装置18を介して情報処理装置3に取り込まれる。
【0026】
前記高電圧発生装置119は、スリップリング11を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管球113に供給する装置であり、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等から成る。
【0027】
前処理部120は、非接触データ伝送装置18を介してデータ収集装置17から生データを受け取り、感度補正やX線強度補正を実行する。各種補正を受けた所定角度分の生データは、記憶部125に一旦記憶される。なお、当該前処理部120によって前処理が施された生データは、「投影データ」と呼ばれる。
【0028】
前記再構成部123は、複数種類の再構成法を装備し、操作者から選択された再構成法により、設定される画像生成条件に従って画像データを再構成する。複数種類の再構成法には、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、再構成面に対して投影レイが斜めに交差する場合の再構成法として、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法としてのフェルドカンプ法、フェルドカンプ法よりもコーン角エラーを抑える方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正するコーンビーム再構成法等が含まれる。
【0029】
前記画像処理部124は、再構成部123により生成された再構成画像データに対して、設定される画像生成条件に従ってボリュームレンダリング、MPR処理等の画像処理(後処理)を行い、表示部129に出力する。
【0030】
前記記憶部125は、生データ、投影データ、スキャノグラムデータ、断層像データ等の画像データや、検査計画のためのプログラム等を記憶する。
【0031】
前記制御部127は、スキャン処理、信号処理、画像生成処理、画像表示処理等において、本X線CT装置1の統括的な制御を行う。例えば、制御部127は、スキャン処理においては、設定される撮影(スキャン)条件に従って、高電圧発生装置119、寝台駆動部12、及び寝台天板aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管球113及びX線検出器115の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像のデータ収集(スキャン)処理を行う。
【0032】
前記表示部129は、画像処理部124から入力したX線CT画像、スキャノグラム像、収集条件、画像再構成条件等を設定するための対話画面等を表示する出力装置である。なお、本実施形態においては、X線CT画像を、「X線コンピュータ断層装置によって取得されたFOV(撮影領域)内の各CT値に基づいて生成された画像」と定義する。ここで、CT値とは、物質のX線吸収係数を、基準物質(例えば、水)からの相対値として表したものである。また、表示部129は、図示していない計画補助システムによって実現されるスキャン計画画面等を表示する。
【0033】
前記入力部131は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータを介してスライス厚やスライス数等の各種スキャン条件を入力可能な装置である。
【0034】
前記送受信部140は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部140は、ネットワークNに接続されたRIS(Radiology Information System)から、当該被検体の撮影に関する情報(患者情報、診断部位等)を受信する。
【0035】
以下、画像参照装置7について説明する。
【0036】
前記画像参照装置7は、例えば医師が画像を読影しながらレポート作成等を行う場合に使用されるものであり、PACSサーバ9から読み出された画像を、そのままで又は所定の画像処理を施すことで診断画像を生成し表示する。
【0037】
図3は、画像参照装置7の一構成例を示すブロック図である。同図に示すように、画像参照装置7は、制御部71と、画像処理部72と、表示部73と、操作部74と、記憶装置77と、送受信部78と、を具備する。
【0038】
前記制御部71は、画像参照装置7の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。
【0039】
前記画像処理部72は、各種医用画像診断装置によって取得された画像データを用いて、ボリュームレンダリング、MPR画像生成等の画像処理を行う。
【0040】
前記表示部73は、各種医用画像診断装置によって取得された画像、画像処理部72における画像処理によって生成された画像、画像生成条件等を設定するための対話画面等を所定の形態にて表示する。
【0041】
前記操作部74は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0042】
前記レポート作成部75は、操作部74からの入力に基づいてレポートを作成する。
【0043】
前記記憶装置77は、各種医用画像診断装置によって取得された画像データ(装置より直接取得したもの、PACSサーバ9から取得したものを含む)を記憶する。
【0044】
前記送受信部78は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。
【0045】
以下、PACSサーバ9について説明する。
【0046】
前記PACSサーバ9は、各種医用画像診断装置において生成された画像、画像参照装置7において後処理により生成された画像等を、患者ID等によって管理し保存する。
【0047】
図4は、PACSサーバ9の一構成例を示すブロック図である。同図に示すように、PACSサーバ9は、制御部91と、表示部93と、操作部94と、記憶装置95と、送受信部96と、を具備している。
【0048】
前記制御部91は、本PACSサーバ9の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。さらに、制御部91は、医用画像診断装置や画像参照装置等からの要求に応答して、記憶装置95から対象となる画像データを検索し、ネットワークを介して送信する。
【0049】
前記表示部93は、操作画面や所定の画像を表示するためのモニタである。
【0050】
前記操作部94は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0051】
前記記憶装置95は、画像記憶部95a、レポート記憶部95dを有している。画像記憶部95aは、各種医用画像診断装置によって取得された画像、各種検査において使用されるオーダ情報等を記憶する。レポート記憶部95dは、読影医師によって作成されたレポートに関する情報等を記憶する。
【0052】
前記送受信部96は、ネットワークNを介して、画像データ等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0053】
以下、前記X線CT装置1による本一実施形態に特有の検査処理を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0054】
なお、本一実施形態に係る医用画像診断装置では、取得した医用画像データの保存の際には、当該医用画像データに係る検査条件(収集条件、再構成条件、及び後処理(MPR画像作成処理、3D画像構成処理、心臓の位相検索画像作成処理等)条件)について、当該医用画像データの収集を再現可能な程度に十分な情報(以降、検査条件情報と称する)をDICOMの付帯情報(プライベートデータ)として、当該医用画像データと共に保存する。この処理は、以下説明する図5に示すフローチャートの処理を実行する為の前提条件でもある。
【0055】
まず、制御部127は、患者ID等からの患者情報の入力及び検査オーダの選択を受けると、X線CT画像を取得するために、スキャノグラムの収集条件(FOV、管球電圧、スキャン方向等)に基づいてX線管球113、X線検出器115等を制御し、当該患者に関するスキャノグラムを収集して表示部129に表示する(ステップS1)。
【0056】
続いて、制御部127は、本スキャン計画を行う為のスキャン計画対話画面(図6参照)を表示部129に表示させる(ステップS2)。このとき、制御部127は、過去の検査条件を反映させる為の画像選択ボタン20を、図6に示すようにスキャン計画対話画面内に表示させる。この画像選択ボタン20がユーザにより選択・決定操作されると、制御部127は、過去に検査が行われた日の一覧である検査日リスト24を、前記スキャン計画対話画面内に表示させる。
【0057】
この検査日リスト24に示す項目がユーザにより選択・決定操作されると、制御部127は、当該項目に対応する検査において取得した医用画像データ群26を、図7に示すようにスキャン計画対話画面内に表示させる。この時点において、スキャン計画対話画面内の設定条件表示30に表示されている条件は、初期設定されている検査条件の値である。
【0058】
ここで、前記医用画像データ群26を視認したユーザによる所望の医用画像データの選択操作及び確定ボタン28の決定操作により、今回の検査撮影において同様の検査条件を利用したい医用画像データが選択される。
【0059】
そして、制御部127は、前記送受信部140によってネットワークNを介して前記PACSサーバ9から、ユーザによって選択された前記医用画像データをダウンロードする処理を行い、当該ダウンロードに係る医用画像データの付帯情報から検査条件を読み込む(後述するステップS2乃至ステップS7における処理)。制御部127は、この読み込んだ検査条件を、図8に示すように設定条件表示30に反映させる。
【0060】
制御部127は、ユーザによって選択された前記医用画像データをPACSサーバ9からダウンロードする処理を行った後、当該医用画像データが心臓画像であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0061】
このステップS2をYESに分岐する場合には、制御部127は、当該医用画像データについてDICOMの付帯情報に保存されている次の検査条件情報を読み込む(ステップS3)。すなわち、このステップS3において読み込む検査条件情報としては、例えば収集条件、ボリューム再構成条件、及び後処理としての位相検索条件等を挙げることができる。
【0062】
なお、心臓の検査撮影の場合には、前記画像処理部124による処理項目として“位相検索位置”という処理項目が存在する。この位相検索位置に基づいて医用画像データを選択することで、位相検索条件を指定することができる。
【0063】
ところで、前記収集条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の収集条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、収集条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を収集条件に含める構成としてもよい。また、例えばMRI装置の場合は、撮影範囲、患者の挿入方向や体位、磁場強度、パルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位、装着位置といったパラメータを収集条件に含めることができる。
【0064】
前記テップS2をNOに分岐する場合、または前記ステップS3の処理を完了した後、制御部127は、当該医用画像データがMPR画像であるか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4をYESに分岐する場合には、制御部127は、当該医用画像データについてDICOMの付帯情報に保存されている次の検査条件情報を読み込む(ステップS5)。すなわち、このステップS5において読み込む検査条件情報としては、例えば収集条件、MPR作成条件(例えば、基準座標と法線ベクトルを示す情報、スライス厚を示す情報、スライス間隔を示す情報、範囲を示す情報等)、及びMPRの作成元となるボリューム画像の再構成条件等を挙げることができる。
【0065】
前記ステップS4をNOに分岐する場合、または前記ステップS5の処理を完了した後、制御部127は、当該医用画像データが3D画像であるか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6をYESに分岐する場合には、制御部127は、当該医用画像データについてDICOMの付帯情報に保存されている次の検査条件情報を読み込む(ステップS5)。すなわち、このステップS5において読み込む検査条件情報としては、例えばCT値(画素値)を示す情報、レンダリング方式(ボリュームレンダリング、サーフィスレンダリング、最大値投影)を示す情報、骨抜き処理に係るパラメータ、及び表示に係るパラメータ等を挙げることができる。
【0066】
前記ステップS6をNOに分岐する場合、または前記ステップS7の処理を完了した後、制御部127は、上述した処理によって読み込んだ検査条件情報に基づいて各種検査条件を設定して(図8に示すように設定条件表示30に反映される)、X線CT画像取得のためのスキャンを実行する(ステップS8)。このステップS8における撮影によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集する。生成されたX線CT画像は、一つのシリーズ情報として自動的に記憶部125に保存される。つまり、このステップS8により、ユーザによって選択された医用画像データの検査条件と同様の検査条件で検査撮影が行われる。
【0067】
前記ステップS8における処理を終えると、制御部127は、検査条件情報に基づいてボリューム再構成条件を設定してボリューム再構成処理を実行する(ステップS9)。
【0068】
ここで、制御部127は、位相検索条件が設定されているか否かを判定する(ステップS10)。このステップS10をYESに分岐する場合(ユーザにより選択された医用画像データが心臓画像である場合)には、設定されている位相検索条件に基づいて、最適位相を検出する為の位相検索画像の作成を実行する。
【0069】
前記ステップS10をNOに分岐する場合、または前記ステップS11の処理を完了した後、制御部127は、MPR作成条件が設定されているか否かを判定する(ステップS12)。このステップS12をYESに分岐する場合(ユーザにより選択された医用画像データがMPR画像である場合)には、設定されているMPR作成条件に基づいて、バックグラウンドでMPR画像作成を実行する。
【0070】
前記ステップS12をNOに分岐する場合、または前記ステップS13の処理を完了した後、制御部127は、3D条件(例えばCT値(画素値)を示す情報、レンダリング方式(ボリュームレンダリング、サーフィスレンダリング、最大値投影)を示す情報、骨抜き処理に係るパラメータ、及び表示に係るパラメータ等)が設定されているか否かを判定する(ステップS14)。
【0071】
このステップS14をYESに分岐する場合には、3D画像の基準となるボリューム画像作成後、自動で3D処理ページに移動し、設定されている3D条件と同様の条件で3D処理をデフォルトとして起動する(ステップS15)。
【0072】
前記ステップS14をNOに分岐する場合、または前記ステップS15における処理を完了した後、当該検査撮影処理を終了する。上述したように、本一実施形態における検査撮影処理の流れは、“各種検査条件設定”→“設定した条件でのスキャン”→“設定した条件での再構成”→“設定した条件での後処理”となる。
【0073】
以上説明したように、本一実施形態によれば、医用画像データの収集条件、再構成条件、及び後処理(MPR処理、3D処理、心臓の位相検索画像作成等)条件等の検査条件を再現可能な医用画像診断装置を提供することができる。
【0074】
本一実施形態に係る医用画像診断装置では、医用画像データの取得時に付帯情報として詳細な検査条件を保存しておくことで、過去に実施した検査撮影と全く同じ検査条件を再現して検査撮影を実行し、その後処理まで同様の条件で再現することが可能となる。
【0075】
具体的には、図7に示すスキャン計画対話画面の医用画像データ群26のうちユーザにより選択された医用画像データをPACSサーバ9からダウンロードし、当該医用画像データの付帯情報に記録された検査条件情報を読み出して当該検査条件を再現して検査撮影を実行することができる。従って、被検体の経過観察の為の検査撮影を容易に行うことができる。
【0076】
すなわち、本一実施形態に係る医用画像診断装置によれば、位相検索画像作成処理、MPR画像作成処理、及び3D画像構成処理という後処理に関しても、過去の検査における条件と同様の条件で実行することができる。
【0077】
詳細には、本一実施形態に係る医用画像診断装置によれば、心臓画像に関しては、位相検索画像の取得を過去の検査と同様の条件で自動で行うことができる。同様に、MPR画像作成についても、過去の検査と同様の条件で自動作成することができる。また、3D画像についても、3Dの基準となるボリューム画像作成後、自動で3D処理を起動して過去の検査における条件と同様の条件で容易に実行することができる。つまり、どのようなユーザが操作をしても、過去の検査で取得した医用画像データと同様の検査条件で撮影及び後処理を実施することができる。
【0078】
例えば、心臓画像については位相検索処理を行っておくことで、適切な再構成ができなかった場合であっても代表画像だけを例えば10msecごとに観察することも可能になる。また、図5に示すフローチャートに従って処理を行うことで、複数種類の画像について並列して処理を行うことが可能になる。
【0079】
なお、本一実施形態に係る医用画像診断装置は、当然ながらDICOMをサポートしている装置である。
【0080】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0081】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置を適用した医用画像診断システムの一構成例を示す図。
【図2】X線CT装置の一構成例を示すブロック図。
【図3】画像参照装置の一構成例を示すブロック図。
【図4】PACSサーバの一構成を示すブロック図。
【図5】X線CT装置による本一実施形態に特有の検査処理のフローチャートを示す図。
【図6】スキャン計画対話画面の一例を示す図。
【図7】スキャン計画対話画面の一例を示す図。
【図8】スキャン計画対話画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0083】
1…医用画像診断装置、 3…情報処理装置、 7…画像参照装置、 9…PACSサーバ、 11…スリップリング、 12…寝台駆動部、 15…検出器、 17…データ収集装置、 18…非接触データ伝送装置、 20…画像選択ボタン、 24…検査日リスト、 26…医用画像データ群、 28…確定ボタン、 30…設定条件表示、 71…制御部、 72…画像処理部、 73…表示部、 74…操作部、 75…レポート作成部、 77…記憶装置、 78…送受信部、 91…制御部、 93…表示部、 94…操作部、 95…記憶装置、 95a…画像記憶部、 95d…レポート記憶部、 96…送受信部、 100…架台、 101…情報処理部、 112…架台駆動部、 113…X線管球、 115…X線検出器、 116…回転フレーム、 117…データ収集部、 118…非接触データ伝送装置、 119…高電圧発生装置、 120…前処理部、 121…メモリ部、 123…再構成部、 124…画像処理部、 125…記憶部、 127…制御部、 129…表示部、 131…入力部、 140…送受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データを保存するサーバ装置とネットワークを介して接続された医用画像診断装置であって、
検査条件を示す検査条件情報が付帯情報として記録された医用画像データを、前記サーバ装置から取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得した前記医用画像データの付帯情報から前記検査条件情報を読み出す検査条件読み出し部と、
前記検査条件読み出し部によって読み出された検査条件を設定して検査撮影を実行する撮影部と、
前記撮影部による検査撮影で取得した医用画像データに対して、前記検査条件に基づいて画像処理を施す画像処理部と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記検査条件とは、画像収集条件、画像再構成条件、及び画像後処理条件であることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記画像後処理条件とは、位相検索画像作成条件、MPR画像作成条件、及び3D画像処理条件のうち少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、
前記サーバ装置が保持する医用画像データの一覧表示を示す一覧データを前記サーバ装置から取得する一覧データ取得部と、
前記一覧データ取得部によって取得した医用画像データの中からユーザが所望の医用画像データを選択する為の表示を行う選択表示部と、
前記選択表示部に表示された医用画像データのうちユーザにより選択された医用画像データを前記サーバ装置から取得する選択データ取得部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1つに記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
検査条件を示す検査条件情報が付帯情報として記録された医用画像データを保存するサーバ装置とネットワークを介して接続された医用画像診断装置であって、
前記サーバ装置が保持する医用画像データの一覧表示を示す一覧データを前記サーバ装置から取得する一覧データ取得部と、
前記一覧データ取得部によって取得した医用画像データの中からユーザが所望の医用画像データを選択する為の表示を行う選択表示部と、
前記選択表示部に表示された医用画像データのうちユーザにより選択された医用画像データを前記サーバ装置から取得する選択データ取得部と、
前記選択データ取得部によって取得した前記医用画像データの付帯情報から前記検査条件情報を読み出す検査条件読み出し部と、
前記検査条件読み出し部によって読み出された検査条件を設定して検査撮影を実行する撮影部と、
前記撮影部による検査撮影で取得した医用画像データに対して、前記検査条件に基づいて後処理を施す画像処理部と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−136824(P2010−136824A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314735(P2008−314735)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】