説明

医療介護用ソフト手袋

【課題】 手の動きの拘束と、一定範囲内で手を動かすことを可能とするという、相反する機能を具備し、さらに装着状態を容易に観察できる医療介護用手袋を提供する
【解決手段】 本発明の医療介護用ソフト手袋においては、親指とその他の指を挿入する部分と別個に分割した二股形状(ミトンタイプ)とし、手の回転抑制とした。また、掌部に袋状の仕切り2bを設け、紬かく切ったパイプ形状のペレット3bを充填して膨らませて把握部とすることで、手を握れるようにしてリハビリテーション効果を付与するとともに、動きを抑制することが難しい親指と人差し指の間にも、ペレット3aを充填した袋状の仕切り2aを設けることで、指の動きの抑制効果を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴や胃ろうなどで使用する医療、介護用チューブを不必要に外さないため、及び痴呆症、認知症患者や被介護者、要看護者などの手を保護するために装着する医療介護用手袋に関するもので、特に使用時の不快感を低減するとともに、手を握れる自由を持たせ、さらに装着状態を容易に観察できる医療介護用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点滴や胃ろうなどで使用するチューブは、テープなどで直接皮膚に留めたり、包帯を巻きつけたりして固定していた。チューブやオムツなどを被介護者や患者が不用意に外すことがあるため、対処法として、手指の動きを最小限に抑制する機能を有する医療介護用保護手袋を用いることがあり、例えば特許文献1〜3に当該機能を有する手袋が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている医療補助用手袋においては、個々の指を挿入する部分が備えられていないため、手袋の内部で手が容易に回転するという不都合が生じる。また、カバー部の内面で手の甲側に、硬質ウレタンパットのような緩衝材が取り付けられているため、自他を傷つける場合もある。
【0004】
特許文献2に開示されている抑制介護用ソフト手袋においても、特許文献1の場合と同様に個々の指を挿入する部分がないため、手が回転する可能性がある。また掌部分に短胴パイプが充填された丘陵部を具備し、チューブなどを掴めないように配慮しているが、充填物の移動などにより、容易にチューブなどを掴める場合が生じ、本来の目的を失うことがある。また、手の甲側をネットで構成しているが、指先部が保護されてないため、ネットから爪または指が出て、チューブなどを引っ掛けて外す可能性がある。
【0005】
特許文献3には、親指の部分だけが分かれた二股手袋において、人差し指、中指、薬指の先端部分がオープンとされ、親指部分と人差し指部分の間に仕切りが設けられ、親指と人差し指を自由に動かせない構成が開示されているが、人差し指、中指、薬指の先端がオープンとなっているため、この場合も、チューブなど引っ掛け、引っ張ることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開平11−4843号
【特許文献2】 実用新案登録第3090666号
【特許文献3】 特開2009−254890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療介護用ソフト手袋に付与すべき機能として、不測の手の動きを拘束して、点滴などに用いるチューブを外さないようにすることだけでなく、一定の範囲で手を動かすことができて、被介護者の負担を軽減するとともに、リハビリテーションにも寄与し得ることも挙げられる。従って本発明の課題は、手の動きの拘束と、一定範囲内で手を動かすことを可能とするという、相反する機能を具備し、さらに装着状態を容易に観察できる医療介護用手袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の課題に鑑み、従来の医療介護用ソフト保護手袋の構造を再検討した結果なされたものである。
【0009】
即ち、本発明は、親指を挿入する部分と親指以外を挿入する部分、掌の部分の少なくともいずれかに、ペレットが充填された袋状の仕切りを備え、手の甲の部分に、開閉手段を有する開口部を備えたことを特徴とする、患者または被介護者自身に装着させるための医療介護用ソフト保護手袋である。
【0010】
また、本発明は、前記ペレットが、プラスチック製のパイプであり、長さがその外径の0.5〜2.0倍であることを特徴とする、前記の医療介護用ソフト保護手袋である。
【0011】
また、本発明は、手の甲側を構成する布地の少なくとも一部がメッシュ状で、かつ、指先の部分に緩衝材が配置されてなることを特徴とする、前記の医療介護用ソフト保護手袋である。
【0012】
また、本発明は、手の挿入口を除く外周部に、外径が2〜8mmの金属線、またはプラスチック製のパイプで被覆されてなる前記金属線の少なくともいずれかが接合されてなることを特徴とする、前記の医療介護用ソフト保護手袋である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療介護用ソフト手袋においては、手袋の親指と人差指を挿入する部分、掌の部分の、一方または両方に、ペレットが充填された袋状の仕切りが備えられ、該手袋を患者あるいは被介護者に装着させることにより、チューブなどを不用意に外したり、ずらしたりすることを、未然に防止できる。
【0014】
また、掌部に握る対象物として、ペレットを充填した袋状の仕切りからなる膨らみを備え、握るという人間本来の機能を活かすことが可能で、安心感を生み、リハビリテーション効果も期待できる。そして、手の甲側に開口部を設けることにより、通気性が向上して汗をかきにくく、しかも手指の観察も簡単に行える。そして、より通気性を向上するために手の甲側をメッシュタイプにすることも可能で、この場合、指先、爪を保護する緩衝材を設けることにより、爪指先の損傷、チューブ引っ掛け防止などが可能となる。
【0015】
さらに手袋外周部に金属線、つまりワイヤを通すことで、握る動作のプリ形状を作り、握る動作をやり易くするとともに、被介護者・患者の手を保護し不用意にオムツやチューブを外したりすることを防ぐことができる。これによって、掌側部に充填するペレットの量を少なくでき、デザイン上も好ましいものが得られる。
【0016】
なお、充填するペレットとして、材質や形状は特に限定されないが、プラスチックは、金属よりは密度が低く安価で、セラミックよりは機械的に堅牢でかつ可撓性を有するので、好ましい材料と言える。また、形状として、外径及び長さを10mm以下程度にしたパイプを用いると、重量軽減が可能で、市販のプラスチック製パイプを切断したり、装飾品を製作するための市販の玩具を流用したりできるので、好適である。
【0017】
手袋外周部に接合するワイヤは、剛性が大きく屈曲し難いものでは、本発明の目的に沿わないので、その太さは、2〜8mm程度が好ましく、材質としては、金属の中では比較的柔軟なアルミニウムや銅、さらにはニッケル−チタン系の超弾性合金などが好適である。ただし、手袋の破損でワイヤの端部が露出すると危険なので、軟質塩化ビニルやポリエチレンのような柔軟なプラスチック材料で表面を被覆したものが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明に係る医療介護用ソフト手袋の一例の掌側を示す図
【図2】 本発明に係る医療介護用ソフト手袋の一例の手の甲側を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、具体的な図に基づき、本発明の実施の形態について説明する。本発明の医療介護用ソフト手袋は、親指を挿入する部分と他の指を挿入する部分部を有する二股形状(ミトンタイプ)とし、動きを抑制することが難しい親指と人差し指の間には、ペレットを充填した袋状の仕切りを設け、指の動作抑制効果を付与した構成が基本である。
【0020】
そして、掌部にも袋状の仕切りを設け、ペレットを充填して把握部とし、手を握る自由を付与することができる。また、手の甲側には、開閉手段を有する開口部が設けられ、開口部は、ファスナー、ボタン、マジックテープ(登録商標)などで構成することができる。
【実施例】
【0021】
次に具体的な実施例を挙げ、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る医療介護用ソフト手袋の一例の、掌側を示す図である。図1において、1は取付ベルト、2aは親指と人差し指の間の袋状の仕切り、2bは掌部の袋状の仕切り、3a、3bはペレットである。ミトン本体がキルティング素材でできており、適度なクッション性を備えるため、取り付けベルト1を使用しても、使用者の肌に対する負担が低減される。また、親指と人差し指の間に設けた袋状の仕切り2aには、中に細かいペレットを充填することで、被介護者・患者に負担をかけることなく親指と人差し指の動きを最小限に抑制できる。なお、ここで用いたペレット3aは塩化ビニル製で、外径が約4mm、長さが約5mmのパイプである。
【0023】
掌部に設けられた袋状の仕切り2bにも、前記の同一のペレット3bが充填され、掌で袋状の仕切り2bを握ることができるため、被介護者が安心感を持ち、リハビリテーション効果も期待できる。
【0024】
4は手袋外周部を挿通するワイヤで、握る動作のプリ形状を作ることで、握る動作を容易にするとともに、被介護者・患者の手を保護し、不用意にオムツやチューブを外したりすることを防ぎ、掌部のペレットを少なくすることができる。ここでは約0.6mmの厚さでポリエチレンの被覆を施した、外径が約5mmのアルミニウム線を用いた。
【0025】
図2は、本発明に係る医療介護用ソフト手袋の一例の、手の甲側を示す図である。図2において、5は開口部であり、ファスナーで開閉が可能になっている。これによって通気性が向上し、手指を観察したりすることも簡単に行えるようにした。6はメッシュ部で、手の甲側の材質をメッシュタイプの布にすることにより、開口部5と併せて通気性を確保した。
【0026】
また、7は緩衝材で、これを設けることで、指先及び爪を保護し、損傷から守り、チューブ引っ掛け防止などを可能とする。ここでは、厚さが約1.2mmのポリウレタン製の合成皮革を用いている。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、被介護者に安心感を与え、リハビリテーションにも寄与する、医療介護用ソフト手袋を提供できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 取付ベルト
2a,2b 袋状の仕切り
3a,3b ペレット
4 ワイヤ
5 開口部
6 メッシュ部
7 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指を挿入する部分と親指以外を挿入する部分、掌の部分の少なくともいずれかに、ペレットが充填された袋状の仕切りを備え、手の甲の部分に、開閉手段を有する開口部を備えたことを特徴とする、患者または被介護者自身に装着させるための医療介護用ソフト保護手袋。
【請求項2】
前記ペレットは、プラスチック製のパイプであり、長さがその外径の0.5〜2.0倍であることを特徴とする、請求項1に記載の医療介護用ソフト保護手袋。
【請求項3】
手の甲側を構成する布地の少なくとも一部がメッシュ状で、かつ、指先の部分に緩衝材が配置されてなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の医療介護用ソフト保護手袋。
【請求項4】
手の挿入口を除く外周部に、外径が2〜8mmの金属線、またはプラスチックで被覆されてなる前記金属線の少なくともいずれかが接合されてなることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の医療介護用ソフト保護手袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−105934(P2012−105934A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270861(P2010−270861)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(507158352)
【Fターム(参考)】