説明

医療機器用途のための、酸化防止剤で安定化された架橋超高分子量ポリエチレン

UHMWPEを架橋照射に供する前に、UHMWPEを結合された酸化防止剤。1つの典型的な態様において、酸化防止剤はトコフェロールである。酸化防止剤がUHMWPE と結合された後、得られるブレンドはスラブ、棒に形成され、および/またはたとえば金属のような基板に結合される。得られる製品は、架橋照射に供される。照射されると、UHMWPEブレンド製品は、従来法により機械加工され、包装され、および殺菌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋された超高分子量ポリエチレン、特に酸化防止剤で安定化された(antioxidant stabilized)架橋超高分子量ポリエチレンに関する。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、医療機器用途に一般的に利用されている。UHMWPEの材料特性を有利に変更し、その摩耗率(wear rate)を低下させるために、UHMWPEは架橋され得る。たとえば、UHMWPEは、電子線照射、γ線照射またはX線照射に供され得、それにより個々のポリエチレン分子が鎖切断ならびにC−H結合の破壊を生じさせて、ポリマー鎖上にフリーラジカルを形成する。隣接するポリマー鎖上のフリーラジカルは、一緒に結合して架橋UHMWPEを形成し得るが、いくつかのフリーラジカルはUHMWPEの次の照射にも残り、酸素と結合してUHMWPEの酸化を生じさせる可能性がある。
【0003】
酸化は、UHMWPEの材料特性に有害に作用し、さらにその摩耗率を増大させ得る。照射の間に形成され、その後存在し続け得るフリーラジカルを除去するのを助けるために、 UHMWPEは融点を超える温度に架橋UHMWPE を加熱することにより、溶融アニールされ得る。融点を超えるUHMWPEの温度の増加により、夫々のポリエチレン分子の移動度(mobility)は有意に増加されポリエチレン分子の付加的架橋およびフリーラジカルの抑制を容易にする。
【0004】
溶融アニールされ、照射された架橋UHMWPEは、フリーラジカルを除去し、UHMWPE の後酸化の可能性を減少させるのを助けるが、溶融アニールはUHMWPEの他の機械的特性を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、架橋されたUHMWPE、特に酸化防止剤で安定化された架橋UHMWPEに関する。1つの典型的な態様において、UHMWPEを架橋照射に供する前に、酸化防止剤がUHMWPE と一緒にされる。1つの典型的な態様において、酸化防止剤はトコフェロールである。酸化防止剤がUHMWPEと一緒にされた後、得られるブレンドはスラブ、棒原料に成形され、および/またはたとえば金属のような基板に組み入れられる。ついで、得られる生成物は架橋照射に供される。1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドは、架橋照射に供する前に予備加熱される。いったん照射されると、UHMWPEブレンド生成物は、従来法により機械加工され、包装され、殺菌される。
【0006】
1つの典型的な態様において、成形されたUHMWPE/酸化防止剤ブレンドは、多数回パスの架橋照射に供され得る。ブレンドを多数回パスの架橋照射することにより、一度にUHMWPEブレンドにより受けられる照射の最大線量は低減される。その結果、照射時に達するUHMWPEブレンドの最大温度は、それにしたがって低下する。これは、UHMWPEが望ましい機械的特性を維持し、 UHMWPEの実質的な溶融を防止することを可能にする。 1つの典型的な態様において、UHMWPEは架橋照射の各パスの後に冷却される。UHMWPEブレンドを冷却することを可能にさせることにより、続く照射時の温度は個々のポリエチレン分子の移動度を促進するのに十分に高いが、照射時に出会った温度上昇がUHMWPEブレンドの所望の材料特性を実質的に変更しないのに十分に低い。
【0007】
有利には、架橋照射に供する前に、トコフェロールのような酸化防止剤を配合することによりUHMWPEは後照射溶融アニールまたはフリーラジカルを抑制するような、いかなる他の後照射処理も必要としないで安定化され得る。特に、トコフェロールのような酸化防止剤は、フリーラジカル捕捉剤として作用し、特にフリーラジカルを安定化させるために電子ドナーとして作用する。ついで、トコフェロール自体はフリーラジカルとなるが、トコフェロールは安定で実質的に非反応性のフリーラジカルである。さらに、UHMWPE/酸化防止剤ブレンドを用いて生じる、実質的に減少した酸化レベルのために、最終的な充填可能な医療用構成部品(implantable medical component)を形成するために除去されなければならない、酸化された材料の量が減少される。その結果、照射に供される原材料の大きさは、寸法がもっと小さくてよく、取り扱いを容易にし、最終医療構成部品への製造をもっと容易にする。
【0008】
さらに、UHMWPE/酸化防止剤ブレンドを多数回の照射に供することにより、UHMWPEブレンドは照射の前に基板上に一体に組み込まれる。特に、合計照射線量を多数回の各パスに分離する結果、UHMWPE/基板界面での UHMWPEブレンドの温度は、UHMWPEブレンドと基板の分離が実質的に妨げられるのに十分に低くとどまる。さらに、照射後でさえ、ある酸化防止剤はUHMWPEブレンド内で反応しないで残り、医療構成部品の寿命中、フリーラジカルを抑制し続ける。したがって、医療構成部品が充填された後でさえ、酸化防止剤はフリーラジカルを抑制し続け、さらに付加的酸化の可能性を低下させ得る。
【0009】
本発明の1つの形態において、本発明は医療用途での使用のためのUHMWPEを処理する方法を提供し、その方法は次の段階を含む:UHMWPEを酸化防止剤と一緒にして酸化防止剤0.01〜3.0wt%を有するブレンドを形成すること、ここでUHMWPEは融点を有する;ブレンドを固化するように処理すること、ここで固化されたブレンドは融点を有する;固化されたブレンドの融点未満の予熱温度に、固化されたブレンドを予熱すること;ならびに固化されたブレンドの融点未満の温度に、固化されたブレンドを維持する間に、固化されたブレンドに照射すること。
【0010】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、次の段階を含む方法により調製される、医療インプラントにおける使用のための、架橋されたUHMWPEブレンドを提供する:UHMWPEブレンドを、0.1〜3.0wt%酸化防止剤を有するブレンドを形成するように酸化防止剤と一緒にすること;そのブレンドを固化するように処理すること、そしてその固化されたブレンドは融点を有する;その固化されたブレンドを融点未満の予熱温度に予熱すること;ならびに固化されたブレンド融点未満の温度に固化されたブレンドを維持する間、その固化されたブレンドを少なくとも100kGyの合計照射量で照射すること。
【図面の簡単な説明】
【0011】
次の図面に関連して、本発明の上述の、および他の特徴および利点ならびにそれらを得る方法は、もっと明らかになるであろうし、本発明自体は本発明の態様の次の説明により、もっとよく理解されるであろう。
【図1】本発明の架橋されたUHMWPEを調製し、使用する典型的な方法を示す概略図である。
【図2】UHMWPEブレンドおよび基板から形成される典型的な医療インプラントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここに示される例は、本発明の態様を示し、このような例は本発明の限定するように解釈されるべきではない。
【0013】
図1において、UHMWPEは酸化防止剤と一緒にされ、 UHMWPE/酸化防止剤ブレンド(「UHMWPEブレンド」)を創り出す。いったん一緒にされるとUHMWPEブレンドは、所望の形態に製造するように処理され得る。いったん生成されると、UHMWPEブレンドは予熱され、架橋照射を受ける。架橋されたUHMWPEブレンドは、ついで機械加工、包装、および殺菌に供され得る。
【0014】
UHMWPE/酸化防止剤ブレンドを創り出すために、いかなる医療グレードUHMWPE粉末も利用され得る。たとえば、GUR1050およびGUR1020粉末が使用され得、両者はケンタッキー州フローレンスに位置する北アメリカ本社を有する、Ticona社から商業的に入手し得る。同様に、ビタミンC,リコピン、蜂蜜、フェノール性酸化防止剤、アミン酸化防止剤、ハイドロキノン、ベータカロチン、アスコルビン酸、CoQエンザイムおよびそれらの誘導体のような、いかなる酸化防止剤も使用され得るが、ここでいうUHMWPEブレンドは、UHMWPE/トコフェロール、すなわちビタミンE、ブレンドである。さらに、d-α-トコフェロール、d,l-α-トコフェロール、またはα-トコフェロール酢酸塩のような、いかなるトコフェロールも本発明に関連して使用され得るので、もし特に異なることが述べられていなければ、総括的な形での用語「トコフェロール」は、すべてのトコフェロールをいう。しかし、合成形態であるd,l-α-トコフェロールは、もっとも一般的に使用される。
【0015】
UHMWPEとトコフェロールを一緒にする際に、成分の実質的に均一なブレンドを達成する、いかなるメカニズムおよび/またはプロセスも利用され得る。1つの典型的な態様において、溶媒ブレンドが利用される。溶媒ブレンドにおいて、トコフェロールは揮発性溶媒と混合されトコフェロールの粘度を低下させ、トコフェロールとUHMWPEとの均一ブレンドを容易にする。いったんトコフェロールが溶媒と混合されると、トコフェロール/溶媒混合物は、たとえばコーンミキサーを用いてUHMWPEと一緒にされ得る。ついで、溶媒は蒸発され、UHMWPE/トコフェロールブレンドのみを残す。もう1つの典型的な態様において、トコフェロールは精密コーティングまたは噴霧によりUHMWPEとブレンドされ得る。たとえば、トコフェロールはメリーランド州コロンビアのNiro Inc.社より入手し得る、実験室モデュールPrecision Coaterに接続されたMP-1 MULTI-PROCESSOR(商標)Fluid Bedを用いて、UHMWPE粉末上に被覆され得る。MULTI-PROCESSORはNiro Inc.の商標である。
【0016】
もう1つの典型的な態様において、低強度混合が使用され得る。低強度、すなわち低せん断混合は、Multimixing S.A. の子会社である、ドイツ国オスナブリュックのDiosna GmbHから入手し得る、Diosna P100 Granulatorを用いて実施され得る。もう1つの典型的な態様において、高せん断混合が使用され得る。UHMWPEとトコフェロールの高せん断混合は、RV02EまたはR05T High Intensity Mixerを用いて達成され得、両者はイリノイ州ガーニーのEirich Machinesから入手し得る。あるいは、高せん断混合は、メリーランド州コロンビアのNiro Inc.社より入手し得る、Collette ULTIMAPRO(商標)75 One Pot Processor を用いて達成され得る。ULTIMAPROはNiro Inc.の商標である。UHMWPEとトコフェロールを一緒にするために有用な上述の方法の試験結果に基づいて、高せん断混合は、好適な結果を与えるようにみえ、受け入れられる均一性および低い数の表示、すなわち紫外光下での目視検査または赤外分光法もしくはガスクロマトグラフィーのような化学的測定により測定される測定される、周囲の領域に対する高トコフェロール濃度領域、を含む。さらに、他の典型的な態様において、流動床、エマルション重合、静電沈殿、粒子の濡れまたは被覆および/またはマスターバッチブレンドは、UHMWPEおよびトコフェロールを一緒にするために使用され得る。
【0017】
UHMWPEブレンドを形成するために、UHMWPEとトコフェロールを一緒にするのに用いられる方法にかかわらず、成分は0.01wt%〜3wt%のトコフェロール濃度を達成するのに必要な比で一緒にされる。典型的な態様において、トコフェロール濃度は、たとえば0.01wt%、0.05wt%および0.1wt%のように低く、0.6wt%、0.8wt%および1.0wt%のように高い。トコフェロールの適切な量の決定に、2つの競合する関係が存在する。特に、選定される量は、UHMWPEにおけるフリーラジカルを抑制するのに十分に多くなければならないが、UHMWPEの許容し得る摩耗特性をなお維持するように、十分な架橋を可能にするに十分に少なくなければならない。1つの典型的な態様において、0.1〜0.6wt%のトコフェロール範囲は、許容し得る摩耗特性をなお維持しながら十分にフリーラジカルを抑制するのに用いられる。
【0018】
いったんUHMWPEブレンドが実質的に均一にブレンドされ、トコフェロールの量が許容し得る範囲内であると測定されると、UHMWPEブレンドは、図1の段階12に示されるように、UHMWPEブレンドを固化するために加工処理される。UHMWPEブレンドは圧縮成形、ネットシェイプ成形、射出成形、押出し、モノブロック成形、繊維、溶融紡糸、ブロー成形、溶液紡糸、熱間等方加圧、高圧結晶化および薄膜により加工処理される。1つの典型的な態様において、図1の段階16に示されるように、UHMWPEブレンドはスラブ形状に圧縮成形される。もう1つの典型的な態様において、図1の段階14に示されるように、UHMWPEブレンドは、さらに下に詳細に説明するように、基板に圧縮成形される。たとえば、UHMWPEブレンドは、基板の粗面化された表面に形成される特徴を、UHMWPEブレンドに肉眼でみて機械的に組み合わせることにより粗面化した表面に圧縮成形される。同様に、UHMWPEブレンドは、もう1つのポリマーまたはもう1つの酸化防止剤で安定化されたポリマーに成形され得る。あるいは、UHMWPEブレンドは、図1の段階15で最終的な整形外科的(orthopedic)構成部品の形状にネットシェイプ成形され得る。この態様において、もし最終的な整形外科的構成部品が基板を含むと、UHMWPEブレンドは段階15で基板にネットシェイプ成形され、下に詳しく説明されるように、段階14で基板に圧縮成形されるUHMWPEブレンドと同じ方法で加工処理される。
【0019】
これに対し、UHMWPEブレンドは段階15でネットシェイプ成形されるが、基板にネットシェイプ成形されなければ、下記に詳しく説明されるように、段階16でスラブに圧縮成形されるUHMWPEブレンドと同じように構成部品は加工処理される。
【0020】
1つの典型的な態様において、基板は、骨代用材、細胞受容材、組織受容材、骨伝導性材(osteoconductive material)および/または骨誘導材(osteoinductive material)として有用な、高度に多孔質の生体適合性材料(biomaterial)であり得る。高度に多孔質の生体適合性材料は、55,65もしくは75%もの低い、または80,85もしくは90%の高い、多孔度を有していてもよい。このような材料の例は、インディアナ州ウォーソーのZimmmer Inc.から通常入手し得るTrabecular Metal(商標)技術を用いて製造される。Trabecular Metal はZimmmer Inc.の商標である。このような材料は、網状化されたガラス質炭素発砲体基板から形成され得、それは米国特許第5,282,861号明細書に開示されているような化学蒸着(「CVD」)法により、タンタル等のような、生体適合性金属で湿潤され、被覆される(引用により、その記載全体がここに組み入れられる。)。タンタルに加えて、すべての多孔質被覆ならびにニオブ、チタン、海綿状構造チタン、または、他の金属を含んでいてもよいタンタルおよびニオブの合金、のような他の金属も使用され得る。
【0021】
加工処理後に、UHMWPEブレンドは、UHMWPEブレンドの融点未満の温度に過熱され得、加工処理の間に形成され得た残留応力を軽減し、付加的な寸法安定性を与える。1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドの融点は、示差熱量測定法を用いる標準法により測定される。融点未満でUHMWPEブレンドを加熱することは、もっと均一な混合を創り出し、最終的な結晶化度を増加させる。1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドは、融点未満の温度、たとえば80℃〜140℃に加熱され、6時間、等温に保持される。1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドは、80℃、90℃、95℃もしくは100℃のように低い温度、または110℃、115℃、120℃および126℃のように高い温度に加熱され得る。他の典型的な態様において、温度は、0.5時間、1.0時間、1.5時間もしくは2時間のように短く、または3.0時間、4.0時間、5.0時間もしくは6.0時間のように長く、保持され得る。もう1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドは、下記のように、UHMWPEブレンドに同様な利点を付与するように照射後に加熱される。
【0022】
UHMWPEブレンドが、残留応力を緩和するためにUHMWPEブレンドの融点未満の温度に加熱されるかどうかにかかわらず、加工処理されたUHMWPEブレンドは架橋照射を受けるための準備で、図1の段階18、20で予熱される。1つの典型的な態様において、加工処理されたUHMWPEブレンドは、室温、約23℃、からUHMWPEブレンドの融点、約140℃までの、いかなる温度にも予熱され得る。もう1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドは、60℃〜130℃の温度に予熱される。他の典型的な態様において、UHMWPEブレンドは、60℃、70℃、80℃、90℃もしくは100℃のように低い、または110℃、120℃、130℃、135℃、140℃のように高い、温度に加熱され得る。加工処理されたUHMWPEブレンドを照射前に予熱することにより、得られる照射UHMWPEブレンドの材料特性は作用される。したがって、比較的冷たい温度、たとえば約40℃で照射されたUHMWPEブレンドについての材料特性は、比較的暖かい温度、たとえば約120℃〜約140℃で照射されたUHMWPEブレンドについての材料特性と実質的に異なる。
【0023】
しかし、比較的低温で照射されたUHMWPEブレンドの材料特性は、優れたものであり得るが、摩耗特性、疲労特性、酸化レベルおよびフリーラジカル濃度は、すべて否定的に作用される。これに対し、比較的高温でのUHMWPEブレンドの照射は材料特性を少し減少させ得るが、比較的高い鎖移動度および断熱溶融による比較的高い架橋効率をもたらす。さらに、比較的高温で照射することにより、比較的多い数の架橋が形成される。したがって、UHMWPEブレンドには比較的低いフリーラジカルがあり、比較的少ないトコフェロールが、照射の間、およびそのすぐ後に、フリーラジカルと反応することにより消費される。その結果、比較的大量のトコフェロールがブレンド内に残り、UHMWPEブレンドのライフサイクルの間、すなわち照射後に、フリーラジカルと反応し得る。それによって、UHMWPEブレンドの全体的酸化安定性が増大する。
【0024】
特に段階18に関して、UHMWPEブレンドおよびそれに関連した基板が照射されるとき、基板は温度が急速に上昇する。したがって、基板の温度増加は、UHMWPEブレンドおよび基板の予熱温度を決定するときに考慮に入れられるべきである。1つの典型的な態様において、Trabecular Metal(商標)技術を用いて製造される高度に多孔質の基板に成形されるUHMWPEブレンドは、基板およびUHMWPEブレンドを架橋照射に供する前に40℃〜120℃の温度に予熱される。予熱温度に影響し得る、さらなる考慮は、照射時にUHMWPEブレンドおよび基板と接触し得る道具を形成するのに用いられる材料である。たとえば、照射時に所望の位置にUHMWPEブレンドおよび基板を保持するのに用いられるホルダーは、UHMWPEブレンドよりも速い速度で温度が急速に増加し得る。この問題を実質的に消去するために、道具はUHMWPEブレンドの熱容量と同等以上の熱容量を有するべきである。1つの典型的な態様において、UHMWPEブレンドは実質的に約1.9J/g℃〜約10J/g℃の熱容量を有する。このように、たとえば約2.8J/g℃の熱容量を有するポリエーテルエーテルケトンは、道具を形成するために使用され得る。さらに、道具を形成するのに用いられ得る代替材料は、炭素繊維および他の複合体を含む。
【0025】
UHMWPEブレンドの所望の予熱温度が達成された後に、UHMWPEブレンドは、UHMWPEブレンドの架橋を誘起するために段階26,28で照射される。このように、ここで用いられるように、「架橋照射」は、UHMWPEブレンドをイオン化照射に曝して、架橋を形成するように後で結合し得るフリーラジカルを生成させることをいう。照射は、大気圧下に空気中で、実質的に大気圧より低い圧力下に真空チャンバー内で、または不活性雰囲気、すなわちたとえばアルゴン雰囲気中で、実施され得る。照射は、1つの典型的な態様において、電子ビーム照射である。もう1つの典型的な態様において、照射はガンマ線照射である。なおもう1つの典型的な態様において、段階26,28は照射を要求しないが、代わりにシラン架橋を用いる。1つの典型的な態様において、架橋は、UHMWPEブレンドを約25kGy〜1000kGyの合計照射線量に曝すことにより誘起される。もう1つの典型的な態様において、架橋はUHMWPEブレンドを空気中で約50kGy〜250kGyの合計照射線量に曝すことにより誘起される。これらの線量は、UHMWPEブレンドにおけるトコフェロールの存在のためにUHMWPEブレンドを架橋するのに一般的に用いられる線量よりも高い。特に、トコフェロールは、照射時にフリーラジカルとなったいくつかのポリエチレン鎖と反応する。その結果、比較的高い照射線量は、標準UHMWPE、すなわち酸化防止剤のないUHMWPE中で比較的低線量で生じるのと同一の架橋レベルを達成するように、UHMWPEブレンドに施されなければならない。
【0026】
しかし、酸化防止剤のないUHMWPEと同一レベルにUHMWPEブレンドを架橋するのに必要な、比較的高い照射線量は、UHMWPEブレンドに比較的大きい温度増加を生じさせ得る。このように、もし全照射線量が一度にUHMWPEブレンドに施されるならば、UHMWPEブレンドはUHMWPEブレンドの融点、約140℃、を超えて加熱され得、UHMWPEブレンドはUHMWPEブレンドの溶融アニールを生じさせる。したがって、UHMWPEブレンドの照射前に、融点近く、および/または、を超えてUHMWPEブレンドの温度を上昇させることなく、UHMWPEブレンドに施され得る、最大の各照射線量と、UHMWPEブレンドに施されるべき合計架橋照射線量を比較して、決定が段階22,24でなされる。
【0027】
このように、もし段階22,24で決定される合計架橋照射線量が、融点近く、および/または、を超えてUHMWPEブレンドの温度を上昇させることなく施され得る、個々の最大架橋線量よりも小さいならば、UHMWPEは照射され、段階22,24で同定される合計架橋照射線量は、空気中で施される。1つの典型的な態様において、個々の最大架橋線量は、約50kGy〜1000kGy である。1つの典型的な態様において、個々の最大架橋線量は、UHMWPEブレンド単独(段階24)について150kGy、そしてUHMWPEブレンドと基板の組み合わせ(段階22)について100kGyである。しかし、個々の最大架橋線量は、UHMWPEブレンドに、UHMWPEブレンドの融点を超える温度に増加させなければ、いかなる線量であってもよい。さらに、個々の最大架橋線量は、使用される照射の種類に依存し得る。したがって、電子ビームについての個々の最大架橋線量は、ガンマ線照射についての個々の最大架橋線量と異なり得る。UHMWPEブレンドおよび基板の1つの典型的な態様において、ヒートシンクが基板からの熱を消散させ、そして比較的高い、個々の照射線量の使用を可能にする、すなわち単一パスで施されるべき、比較的高い線量を可能にする、ために基板に結合され得る。さらに、使用される照射の種類に加えて、線量が施される温度、線量間の時間量およびUHMWPEブレンドにおけるトコフェロール量、も個々の最大架橋線量に影響し得る。
【0028】
もし段階24でUHMWPEブレンドについての合計架橋線量が約150kGy の個々の最大線量を超えて決定されたら、多数の照射パスが要求される。同様に、もし段階22でUHMWPEブレンドおよび基板についての合計架橋線量が約100kGy の個々の最大線量を超えると、多数の照射パスが要求される。UHMWPEブレンドおよび基板についての比較的低い個々の最大線量は照射時の基板の、比較的大きい潜在的温度増加に由来する。この潜在的温度増加は溶融に十分であり得、またはそうでなくてもUHMWPEブレンド/基板界面に沿ってUHMWPEブレンドを有意に変更する。たとえば、UHMWPEブレンドと基板の間の異なる熱膨張係数の結果として、もし個々の最大線量を超える個々の線量で照射されると、クラッキングがUHMWPEブレンドに生じる。
【0029】
電子ビーム照射については、予熱温度および1パスあたりの線量レベルは、照射される材料の比熱により調節される相互依存変数である。基板材料は、もし基板の比熱がポリマーの比熱より実質的に低いと、同一照射線量レベルでポリマーより有意に高いレベルに加熱し得る。照射時に達成される材料の最終温度は、1パスあたりの線量および予熱温度の慎重な選択により調節され得、その結果、温度はトコフェロールの存在で架橋を促進するのに十分に高いが、UHMWPEブレンドの実質的な溶融を防止するのに十分に低い。さらに、ある態様において、部分溶融が望ましいが、最終温度は実質的な溶融を防止するのに十分低く、そしてフリーラジカルレベルが、もし照射時に加熱が生じなかったら、存在するであろうレベルより低く低下するのに十分になお高くすべきである。クラッキングに関する性質は、UHMWPEブレンドの弱さおよびUHMWPEブレンドと基板間の膨張差に関する効果の組み合わせにより最もありそうであるが、基板近くの領域でUHMWPEブレンドの完全な溶融は基板の過加熱による。
【0030】
もし多数の照射パスが要求されることが、上述のように段階24で決定されると、段階28で施される第1の照射線量は、150kGy より低くされるべきである。1つの典型的な態様において、段階24で決定された合計照射線量は、等分の個々の照射線量に分割され、それぞれは150kGy 未満である。たとえば、もし段階24で決定された合計照射線量が200kGy であると、各100kGyの個々の線量が施され得る。もう1つの典型的な態様において、少なくとも2つの個々の照射線量は等しくなく、そしてすべての個々の照射線量は、たとえば150kGy を超えず、200kGy の合計照射線量は、150kGyの第1の個々の線量と50kGyの第2の個々の線量に分割される。
【0031】
同様に、もし多数の照射パスが要求されることが段階22で決定されると、段階26で施される第1の照射線量は、100kGy より小さくされなければならない。1つの典型的な態様において、段階22で決定された合計照射線量は、それぞれ100kGyより小さい、等分の個々の照射線量に分割される。たとえば、もし段階22で決定された合計照射線量が150kGy であると、各75kGyの個々の線量が施され得る。もう1つの典型的な態様において、少なくとも2つの個々の照射線量は等しくなく、そしてすべての個々の照射線量は、たとえば100kGy を超えず、150kGy の合計照射線量は、100kGyの第1の個々の線量と50kGyの第2の個々の線量に分割される。
【0032】
さらに、UHMWPEブレンド/基板態様において、まずUHMWPEブレンドに照射することにより、すなわち電子ビームを基板と接触させる前にUHMWPEブレンドと接触させると、得られるUHMWPEブレンドは、基板なしに照射されたUHMWPEブレンドに類似する特性を有し、通常の用途に適切である。これに対し、まず基板に照射することにより、すなわち電子ビームをUHMWPEブレンドに接触させる前に基板と接触させると、得られるUHMWPEブレンドは基板なしに照射されたUHMWPEブレンドと実質的に異なる特性を有する。さらに、減少した結晶性のような差異は、UHMWPEブレンド/基板界面近くでもっと著しく、UHMWPEブレンドが基板から遠ざかるにつれて減少する。
【0033】
多数の照射パスが上述のように要求される場合、UHMWPEブレンド、またはUHMWPEブレンドおよび基板、の温度は、個々の線量を施す間、段階30、32における予熱温度に平衡させられ得る。特に、UHMWPEブレンドの温度を増加させる、第1の照射線量の結果として、もう1つの個々の照射線量をすぐに施すことは、UHMWPEブレンドの材料特性を変更し、UHMWPEを溶融し、または他の有害な作用を生じさせる。1つの典型的な態様において、第1の個々の照射線量が施された後に、UHMWPEブレンド、またはUHMWPEブレンドおよび基板は取り除かれ、炉内に置かれる。炉は予熱温度、すなわち上述のように段階18、20で使用された温度、に温度を維持され、そしてUHMWPEブレンド、またはUHMWPEブレンドおよび基板は炉内に置かれ、予熱温度に達するまで、ゆっくり冷却される。いったん予熱温度に達すると、UHMWPEブレンドおよび基板は取り除かれ、次の個々の照射線量が施される。さらなる個々の照射線量が要求される場合、温度平衡プロセスが繰り返される。
【0034】
もう1つの典型的な態様において、選択的なシールドが、UHMWPEブレンドの、ある領域を照射から保護し、生じるUHMWPEブレンドの温度上昇を実質的に防止または少なくするために用いられる。さらに、選択的なシールドは、均一な照射線量がUHMWPEブレンドにより受けられることを確実にするのを助けるために用いられ得る。1つの態様において、金属シールドのようなシールドは、シールドされた領域で受ける照射線量を弱めるように、照射路に置かれるが、高温が耐えられる領域に照射線量の十分な作用を可能にする。1つの態様において、選択的なシールドの使用は、合計架橋照射線量が単一パスで施されるのを可能にし、多数パスにわたって合計架橋照射線量を施す必要性を減少させる。 さらに、照射の選択的なシールドは、基板とUHMWPEブレンドの間の比熱の差異による過剰加熱から金属基板を防止するのに用いられ得る。1つの典型的な態様において、シールドは実質的に十分な照射線量を受けるように設計され得、減少した線量が基板で受けられるように照射の透過を減少させる。その結果、照射吸収による基板の温度上昇は減少する。これは1パスあたりの比較的高い線量レベルの使用を可能にし、比較的高い線量レベルおよび比較的高い架橋レベルを達成するのに多数パスを必要とすることをなくす。ある態様において、単一パス照射は有利である。なぜならば、それはもっと効率的な製造プロセスであり、架橋された材料の機械的特性も望ましいからである。照射シールドの特定の態様および方法は、2002年4月2日に発行された、米国特許第6,365,089号明細書(整形外科インプラントにおけるUHMWPEの架橋方法)に開示されており、その記載は引用によりここに明確に組み入れられる。
【0035】
もう1つの典型的な態様において、上述のように、トコフェロールは段階10では添加されない。代わりに、UHMWPEブレンドが標準的な架橋照射法に従って照射された後に、トコフェロール浴中にUHMWPEを置くことにより、トコフェロールはUHMWPE中に拡散される。しかし、トコフェロール添加前に架橋照射を施す結果として、上述のように、本発明の態様は比較的高い架橋照射線量を施すことを考慮しない。さらに、架橋照射を施す前にトコフェロールを添加することにより達成される機械的特性は、架橋照射が施された後にUHMWPEにトコフェロールをUHMWPEの中に拡散させるのに比べて優れているようにみえる。
【0036】
いったん合計架橋照射線量がUHMWPEブレンドに施されると、UHMWPEブレンドは磨砕(milling)穿孔(boring)、穴あけ(drilling)、切削(cutting)、およびCNC(コンピューター数値制御)機械加工のような従来法によって、段階34で、整形外科インプラントのような医療用製品に機械加工され得る。たとえば、UHMWPEブレンドは、臀部、膝、足首、肩、肘、指、歯または脊柱インプラントに機械加工され得る。さらに、UHMWPEブレンドは医療用デバイスを形成するために他の構成部品に組み立てられ得る。しかし、もしUHMWPEブレンドが、潜在的な加工処理法として上述されたネットシェイプ成形により、図1の段階12で加工処理されていれば、段階34でUHMWPEブレンドを機械加工する必要は実質的に消失される。特に、もしUHMWPEブレンドがネットシェイプ成形により加工処理されると、UHMWPEブレンドは最終形状、すなわち段階12における所望の医療用製品の形状、に形成され、ついで最終医療用デバイスを形成するために他の構成部品に組み立てられ得る。図2に関して、典型的な医療用インプラント100が示され、UHMWPEブレンド102と基板104を含む。図2に示されるようなUHMWPEブレンド102は、2002年2月10日に出願された米国特許出願Serial No. 11/055,322(MODULAR POROUS IMPLANT)および2000年7月11日に発行された米国特許第6,087,553号明細書(IMPLANTABLE METALLIC OPEN-CELLED LATTICE/POLYETHYLENE COMPOSITE MATERIAL AND DEVICES)に記載されるのと同様に、基板104にと互いに組み合わされており、それらは引用によりここに組み入れられる。
【0037】
1つの典型的な態様において、医療用製品は段階36で包装され、段階38で殺菌される。1つの典型的な態様において、医療用製品はガスプラズマを用いて殺菌される。もう1つの典型的な態様において、医療用製品はエチレンオキシドを用いて殺菌される。もう1つの典型的な態様において、医療用製品は乾熱殺菌を用いて殺菌される。さらに、試験はガスプラズマ、乾熱、ガンマ線照射、電離放射線(ionizing radiation)、オートクレーブ処理、超臨界流体法、およびエチレンオキシド、のような表面殺菌法は、UHMWPEブレンドが基板に固着されていても、医療用製品の十分な殺菌を与えることを示した。もう1つの典型的な態様において、ガンマ線照射は医療用製品を殺菌するのに用いられ得る。しかし、この態様において、比較的高いトコフェロール濃度は、殺菌照射が実施された後に、十分なトコフェロールがフリーラジカルを急冷するのに利用され得るために必要であろうと考えられる。
【0038】
本発明は、好適な態様を有するように説明されてきたが、本発明はこの開示の精神および範囲内でさらに変更され得る。したがって、本出願は、その概括的な原理を用いて、本発明のいかなる変形、使用もしくは適合を包含することが意図される。さらに、本出願は本発明が関係し、請求範囲の制限内である、技術分野における公知もしくは慣用的な実施である、本発明の開示からの逸脱も包含される。

次の非制限的な例は、本発明の種々の特徴を示し、これらに限定するように限定されるべきではない。次の略語は他に指摘がなければ、例においても用いられる。
【0039】
【表1】

【0040】
種々の例を通じて、照射されたUHMWPEブレンドが用いられ、3つの異なる照射法の1つに従って照射される。上述のように、照射条件および方法における差異は、UHMWPEブレンドの得られる材料特性に影響し得る。したがって、例および対応する表に示される結果を適切に解析および比較するために、例で用いられる照射されたUHMWPEブレンドのそれぞれは、下の表2に示される方法の1つに従って照射されるように固定される。さらに、電子ビーム源は、低照射線量で線量測定を実施し、ついでもっと多い線量を達成するのに必要となる電子ビーム源の活性化をパラメトリックに決定することにより検定される。その結果、比較的高い照射線量で、実際の線量とパラメトリックに決定された占領の間に差異が存在し得、それは照射されたUHMWPEブレンドの材料特性に差異を生じさせ得る。
【0041】
【表2】

【0042】
例1 α−トコフェロール酢酸塩の実施可能性検討
α−トコフェロール酢酸塩のUHMWPEとのブレンドの実施可能性が検討された。α−トコフェロール酢酸塩はオランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られ、医療用グレードのUHMWPE粉末GUR 1050は、Ticona社(ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有する)から得られた。ついで、イソプロパノールが稀釈剤としてα−トコフェロール酢酸塩に添加され、α−トコフェロール酢酸塩はUHMWPE粉末と溶媒ブレンドされた。ブレンドは2つの異なるUHMWPE/α−トコフェロール酢酸塩ブレンドが得られるまで続き、1つのUHMWPEブレンドは0.05wt%のα−トコフェロール酢酸塩を有し、そしてもう1つのUHMWPEブレンドは0.5wt%のα−トコフェロール酢酸塩を有していた。ついで、各UHMWPEブレンドは圧縮成形され、4つの1インチ(2.5cm)厚さのパック(puck)に形成された。各UHMWPEブレンドの2つのパック、すなわち0.05wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドの2つのパックおよび0.5wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドの2つのパック、は、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、120℃に予熱された。パックは120℃で、8時間保持された。8時間の満了後に、パックは、カナダ国ブリティシュコロンビア州ポートコキットラムにあるIotron Industries Canada Inc.において、65kGyおよび100kGy線量で、10MeV, 50kGy-m/分線量速度で照射された。 各UHMWPEブレンドの残りの2パック、すなわち0.05wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドの2つのパックおよび0.5wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドの2つのパック、は、40℃に夜通し加熱された。次の朝、後の各UHMWPEブレンドの残りの2パックは、カナダ国ブリティシュコロンビア州ポートコキットラムにあるIotron Industries Canada Inc.において、100kGy線量で、10MeV, 50kGy-m/分線量速度で照射された。
【0043】
照射後に、すべてのパックは半分に切断され、薄膜が各パックの中央から切断された。ついで、その薄膜は、マサチューセッツ州ビレリカのBruker Optics 社から入手し得る、Bruker Optics FTIR Spectrometerを用いてFTIR分析に供された。ついで、各パックの両半分は約1/8インチ厚さの平らなシートに機械加工された。平らなシートの1つの半分は、すぐにFTIR分析に供された。平らなシートのもう1つの半分は、ASTM(the American Society for Testing and Materials)Standard F-2003の空気中でのガンマ線照射後に超高分子量ポリエチレンの加速エージングのための標準プラクティス、にしたがって加速エージングに供された。平らなシートから形成される引張り用試料は加速エージングに供され、ついでFTIR分析に供された。α−トコフェロール酢酸塩のOIおよびwt%は、下の表3および4に示される、FTIR結果から測定された。しかし、FTIR結果には、干渉ピークがあり、0.5wt%、65kGy、未エージング試料のOI測定を妨げるものであった。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
FTIR結果は、0.05wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドのOIは、0.5wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドのOIよりも高いのが通常であることを示した。これは、これらの試料が照射後になおα−トコフェロール酢酸塩を含んでいるためであると考えられる。結果として、α−トコフェロール酢酸塩は、フリーラジカルと反応し、UHMWPEブレンドの酸化劣化を減少するため、なおこれらの試料に適用し得た。さらにFTIR結果は、α−トコフェロール酢酸塩が、0.05wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドの照射後には実質的に残っておらず、約1/3のα−トコフェロール酢酸塩が、0.5wt%α−トコフェロール酢酸塩を有するUHMWPEブレンドの照射後に残っていることを示した。さらに、下の表5に示されるように、引張り特性は加速エージングに供されたUHMWPEブレンドおよび加速エージングに供されていないUHMWPEブレンドの両方とも類似していた。最後に、FTIR結果は、α−トコフェロール酢酸塩を含むUHMWPEブレンドは、同様の安定特性、すなわち酸化劣化を防止する同様の能力、を、同様な濃度のd、l−α−トコフェロールを含むUHMWPEブレンドのように、有することを示した。
【0047】
【表5】

【0048】
例2 トコフェロールとブレンドされたUHMWPEの化学的性質
棒状にスラブ成形され、電子ビーム照射された、UHMWPE粉末と機械的にブレンドされたd/l−α−トコフェロールの化学的性質が調査された。この調査を実施するために、ミネソタ州ミネアポリスのStat-Ease, Inc.から得られた、Design Expert 6.0.10 ソフトウェアが、modified fractional factorial Design of Experiment (DOE) を構成するために利用された。DOEは5つの異なる変数を評価した:UHMWPE樹脂の種類、d/l−α−トコフェロールのwt%、予熱温度、線量速度および照射線量。
【0049】
GUR 1050およびGUR 1020医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050およびGUR 1020は、Multimixing S.A. の子会社である、ドイツ国オスナブリュックのDiosna GmbHから入手し得る、Diosna P100 Granulatorを用いて、低強度ブレンドによりd/l−α−トコフェロールと別々に機械的にブレンドされた。GUR 1050およびGUR 1020樹脂の両方が、0.2wt%、0.5wt%、および1.0wt%のd/l−α−トコフェロールを有する、両方の樹脂型のUHMWPEブレンドを創り出すために、数バッチでd/l−α−トコフェロールと混合された。各バッチのブレンドされた材料は、スラブに圧縮成形され、種々の大きさの棒に切断された。ついで、得られた各棒は、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に加熱することにより予熱された。予熱温度は、下の表6に示されるように40℃、100℃、110℃、および122.2℃から選ばれた。
【0050】
予熱された後、UHMWPEブレンド棒は、選ばれた合計照射線量が施されるまで、選ばれた線量速度で、上記表2に示されるように、方法Cにより電子ビーム照射された。線量速度は、75kGy-m/分、155kGy-m/分、および240kGy-m/分から選ばれ、そして合計照射線量は90kGy、120kGy、150kGy、および200kGyから選ばれた。ついで、各棒の部分は200μm厚さの薄膜にミクロトームされた。これらの薄膜はマサチューセッツ州ビレリカのBruker Optics 社から入手し得る、Bruker Optics FTIR SpectrometerでのFTIR分析に供された。FTIR分析結果は、VEI,wt%d/l−α−トコフェロール、OI,およびTVIを決定するのに解析された。VEIおよびwt%d/l−α−トコフェロールは、1392〜1330cm-1および1985〜1850cm-1におけるポリエチレンピークの下の面積に対する、得られたFTIRチャート上の1275〜1245cm-1におけるd/l−α−トコフェロールピークの下の面積の比を計算することにより決定された。OIは、1392〜1330cm-1におけるポリエチレンピークの面積に対する、1765〜1680cm-1におけるFTIRチャート上のカルボニルピークの面積の比を計算することにより決定された。TVIは、1392〜1330cm-1におけるポリエチレンピーク下の面積に対する、980〜947cm-1におけるFTIRチャート上のビニルピーク下の面積の比を計算することにより決定された。
【0051】
最初のVEIの後に、wt%d/l−α−トコフェロールおよびTVI は、薄膜のFTIR分析から決定され、薄膜はASTM Standard F-2003(空気中でのガンマ線照射後に超高分子量ポリエチレンの加速エージングのための標準プラクティス)にしたがって加速エージングされた。加速エージングされた薄膜は、マサチューセッツ州ビレリカのBruker Optics 社から入手し得る、Bruker Optics FTIR Spectrometerを用いて再びFTIR分析に供された。得られたFTIRチャートは、上述の方法により、VEI,wt%d/l−α−トコフェロール、OI,およびTVIを決定するのに解析された。いったんFTIR分析に供されると、エージングされた薄膜は、沸騰ヘキサン中に置かれ、d/l−α−トコフェロールを抽出するために24時間保持された。d/l−α−トコフェロールの抽出後に、エージングされた薄膜は、Bruker Optics FTIR Spectrometerを用いて再びFTIR分析に供された。得られたFTIRチャートは、上述の方法によりOIを決定するのに解析された。その追加のFTIR分析は、酸化ピークでの干渉からd/l−α−トコフェロールピークを消去するのに実施された。下の表6に示される結果の解析は、比較的暖かい予熱温度を選定することが比較的低いOIを生じさせ得、照射後に、UHMWPE中に、いくらかのd/l−α−トコフェロールが残ることをもたらし得る、ことを示す。
【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
例3 d/l−α−トコフェロールとブレンドされたUHMWPEにおけるフリーラジカル濃度
電子ビーム照射されたUHMWPEブレンド成形パックのフリーラジカル濃度への、UHMWPEとd/l−α−トコフェロールのブレンドの影響が調査された。この調査を実施するために、ミネソタ州ミネアポリスのStat-Ease, Inc.から得られた、Design Expert 6.0.10 ソフトウェアが、modified fractional factorial Design of Experiment (DOE) を構成するために利用された。DOEは5つのファクターを評価した:予熱温度、線量速度、照射線量、d/l−α−トコフェロールおよび所定の保持時間、すなわち炉からのUHMWPEブレンドの取り出しから電子ビーム照射までの経過時間。
【0056】
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050 UHMWP粉末は、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、Einrich Mixerを用いて、高強度ブレンドによりd/l−α−トコフェロールと機械的にブレンドされた。GUR 1050樹脂は、下の表7に示されるように、0.14wt%〜0.24wt%のd/l−α−トコフェロールを有する、UHMWPEブレンドを創り出すために、数バッチでd/l−α−トコフェロールと混合された。
【0057】
ついで、各UHMWPEブレンドは、2.5インチ径および1インチ厚さのパックに圧縮成形された。ついで、得られた各パックは、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に加熱することにより予熱された。予熱温度は、下の表7に示されるように85℃〜115℃から選ばれた。パックは対流炉から取り出され、下の表7に示されるように、7分〜21分間の範囲の所定時間保持された。所定の保持時間の満了後に、パックは、表2の方法Aを用いて電子ビーム照射された。表7に示されるように、160kGy〜190kGyから選ばれた合計照射線量が施されるまで、30kGy-m/分〜75kGy-m/分から選ばれる線量速度で照射された。約1インチ長さの円筒形コアがパックから機械加工された。ついで、円筒形コアは、検出限界0.01×1015spin/gramdeari,マサチューセッツ州ビレリカのBruker Optics 社から入手し得る、Bruker EMX/EPR (電子常磁性共鳴)Spectrometerを用いて分析された。得られる分析結果は、予熱温度、%d/l−α−トコフェロール、および線量レベルは、UHMWPEブレンドの得られるフリーラジカル濃度を測定するのにすべて重要なファクターであることを示した。特に、予熱温度およびd/l−α−トコフェロール濃度は、フリーラジカル濃度と負の相関を有するが、合計線量はフリーラジカル濃度と正の相関を有していた。
【0058】
【表9】

【0059】
例4 d/l−α−トコフェロールとブレンドされたUHMWPEの機械的性質
棒状にスラブ成形され、電子ビーム照射された、UHMWPE粉末と機械的にブレンドされたd/l−α−トコフェロールの機械的性質が調査された。この調査を実施するために、ミネソタ州ミネアポリスのStat-Ease, Inc.から得られた、Design Expert 6.0.10 ソフトウェアが、modified fractional factorial Design of Experiment (DOE) を構成するために利用された。DOEは5つの異なる変数を評価した:UHMWPE樹脂の種類、d/l−α−トコフェロールのwt%、予熱温度、線量速度および照射線量。
【0060】
GUR 1050およびGUR 1020医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050およびGUR 1020は、Multimixing S.A. の子会社である、ドイツ国オスナブリュックのDiosna GmbHから入手し得る、Diosna P100 Granulatorを用いて、低強度ブレンドによりd/l−α−トコフェロールと別々に機械的にブレンドされた。GUR 1050およびGUR 1020樹脂の両方が、0.2wt%、0.5wt%、および1.0wt%のd/l−α−トコフェロールを有する、両方の樹脂型のUHMWPEブレンドを創り出すために、数バッチでd/l−α−トコフェロールと混合された。各バッチのブレンドされた材料は、スラブに圧縮成形され、種々の大きさの棒に切断された。ついで、得られた各棒は、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に加熱することにより予熱された。予熱温度は、下の表8に示されるように40℃、100℃、110℃、および122.2℃から選ばれた。
【0061】
予熱された後、UHMWPEブレンド棒は、選ばれた合計照射線量が施されるまで、選ばれた線量速度で、上記表2に示されるように、方法Cにより電子ビーム照射された。線量速度は、75kGy-m/分、155kGy-m/分、および240kGy-m/分から選ばれ、そして合計照射線量は90kGy、120kGy、150kGy、200kGyおよび250kGyから選ばれた。ASTM(the American Society for Testing and Materials)Standard D638(Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics)に規定されるV型引張り試料が、各UHMWPEブレンド棒から機械加工された。ついで、そのV型引張り試料は、ASTM D638にしたがって、極限引張り伸び、UTS、およびYS試験に供された。アイゾッド試料も各UHMWPEブレンド棒から機械加工され、ASTM Standard D256(Standard Test Methods for Determining the Izod Pendulum Impact Resistance of Plastics)にしたがってアイゾッド衝撃強度が試験された。動的機械分析(dynamic mechanical analysis )(DMA)試料も各UHMWPEブレンド棒から機械加工され、デラウェア州ニューカッスルのTA InstrumentsからのModel DMA 2980 Dynamic Mechanical Analyzer を用いて試験された。
【0062】
その結果の分析は、合計照射線量は、UHMWPEブレンドのアイゾッド衝撃強度、極限引張り伸び、および降伏強度に影響を有することを示す。さらに、予熱温度は、極限引張り伸びおよび降伏強度に影響を有していた。これに対し、d/l−α−トコフェロールのwt%は、極限引張り伸びおよび動的機械分析に影響を有していた。試験からの追加データは下の表8に示される。
【0063】
【表10】

【0064】
例5 d/l−α−トコフェロールと混合されたUHMWPEの摩耗特性
d/l−α−トコフェロールと機械的にブレンドされ、電子ビーム照射されたUHMWPEの磨耗特性が調査された。この調査を実施するために、ミネソタ州ミネアポリスのStat-Ease, Inc.から得られた、Design Expert 6.0.10 ソフトウェアが、modified fractional factorial Design of Experiment (DOE) を構成するために利用された。DOEは5つの異なる変数を評価した:予熱温度、線量速度、施された合計照射線量、d/l−α−トコフェロール濃度および冷却期間、すなわち予熱の終わりから最初の照射までの経過時間。
【0065】
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050 UHMWP粉末は、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、High Intensity Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的に混合された。GUR 1050樹脂は、選択されたwt%のd/l−α−トコフェロールを有する、UHMWPEブレンドを創り出すために、数バッチでd/l−α−トコフェロールと混合された。d/l−α−トコフェロールのWt%は、0.14wt%、0.19wt%、および0.24wt%のd/l−α−トコフェロールから選ばれた。ついで、各ブレンドは、固化され、2.5インチ径および1インチ厚さのパックに成形された。ついで、得られた各パックは、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に加熱することにより予熱された。予熱温度は、下の表9に示されるように85℃、100℃および115℃から選ばれた。
【0066】
予熱後に、d/l−α−トコフェロールパックは対流炉から冷却期間のために取り出された。冷却期間は、下の表9に示されるように、7分、14分および21分間から選択された。ついで、パックは、表2の方法Aにより、選ばれた合計照射線量が施されるまで、選ばれた線量速度で電子ビーム照射された。線量速度は30kGy-m/分、52.5kGy-m/分、および75kGy-m/分から選ばれ、そして合計照射線量は160kGy、175kGy、および190kGyから選ばれた。
【0067】
ついで、9mm径および13mm厚さの円筒形状のピンオンディスク(pin-on-disc)(POD)試料がUHMWPEブレンドパックから機械加工された。2方向ピンオンディスク摩耗テスターが、100%ウシ血清により潤滑された研磨Co-Crディスクを接合するUHMWPEピンの摩耗速度を測定するために使用された。これらの測定は、the Journal of Arthroplasty, Vol.16,Issue 5,2001, 658-65ページに刊行された、「A new pin-on-disk wear testing method for simulating wear of polyethylene on cobalt-chrome alloy in total hip arthroplasty」におけるBragdonらの教示にしたがってなされた。そのすべての開示は引用により、ここに組み入れられる。ピンオンディスク摩耗テスターの2方向の運動は、オハイオ州クリーブランドのParker Hannifin 社のCompumotor Division から入手でき、コンピューター制御されたXYテーブルにより発生され、1おmm×5mmの長方形パターンで動くようにプログラムされていた。インプラント仕上げに研磨された、6枚のCo-Crディスクを含む容器(basin)がXYテーブルの頂上に固着されていた。そのXYテーブルおよび容器はミネソタ州イーデンプレリーのMTS社から入手し得るサーボ油圧MTS machine上に搭載された。ついで、そのMTS machineは、研磨されたCo-Crディスクに対するUHMWPEブレンドピン試料を搭載した。
【0068】
そのMTS machineは、XYテーブルの動きと同期してPaul型曲線を創り出すようにプログラムされた。Paul型曲線は、Proceedings Institution of Mechanical Engineers, Vol.181, Part 37, 8-15頁で刊行された、J.P.PaulによるForces Transmitted By Joints in the Human Bodyに詳しく説明されており、そのすべての開示は引用により、ここに組み入れられる。Paul型負荷曲線のピーク負荷は、各UHMWPEピン試料とCo-Crディスク間のピーク接触圧6.5MPaに相当した。試験は2Hzで合計1.128×10サイクルまで実施された。その結果の分析は、摩耗特性がd/l−α−トコフェロール濃度および合計照射線量の両方に影響されることを示した。特に、その結果は、d/l−α−トコフェロール濃度増加はUHMWPEブレンドの摩耗速度を増加させるが、合計照射線量増加はUHMWPEブレンドの摩耗速度を減少させることを示した。さらに、その結果は、照射線量および冷却期間はUHMWPEブレンドの摩耗速度に実質的に影響しないことを示した。
【0069】
【表11】

【0070】
例6 UHMWPEブレンド/基板界面における温度変動
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050 UHMWPは、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、High Intensity Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的に混合された。GUR 1050樹脂は、d/l−α−トコフェロールと混合され、0.2wt%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドを創り出した。
【0071】
ついで、UHMWPEブレンドの1部分はブロックに圧縮成形された。UHMWPEブレンドのもう1つの部分は、プリフォームを創り出すために基板に圧縮成形された。基板は、ニアネットシェイプ寛骨シェル(near-net shape acetabular shell)の形状の、70mm径多孔質金属基板であった。その多孔質金属基板は、上述のように、インディアナ州ウォーソーのZimmmer Inc.から通常入手し得るTrabecular Metal(商標)技術を用いて製造された。この方法は、5つの異なるプリフォームを創り出すために繰り返された。プリフォームは、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に個々に加熱された。予熱温度は、100℃、120℃、および125℃から選ばれた。いったん選定された予熱温度に加熱されると、プリフォームは、選ばれた合計照射線量が受けられるまで、上記表2に示されるように、方法Bを用いて照射された。合計照射線量は50kGy、75kGy、および150kGyから選ばれた。さらに、UHMWPEブロックは100℃の予熱温度に加熱され、UHMWPEブロックにより150kGyの合計照射線量が受けられるまで、方法Bを用いて照射された。
【0072】
プリフォームの温度は、UHMWPEブレンド/基板界面で、UHMWPEブレンド/基板界面に隣接するUHMWPEブレンドの1つの点で、およびUHMWPEブレンドの中央の1つの点で、測定された。各温度測定は、J型熱電対を用いて行われた。さらに、UHMWPEブレンドブロックの中央での温度も、J型熱電対を用いて測定された。その結果に基づいて、多孔質基板の存在は、UHMWPEブレンドにおける比較的高い温度の読みを生じさせた。これは、照射時にUHMWPEよりも高い最大温度に達する基板の結果のようである。
例7 UHMWPEブレンドに対する基板配向の効果
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050 UHMWPは、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、High Intensity Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的にブレンドされた。GUR 1050樹脂は、d/l−α−トコフェロールと混合され、0.5wt%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドを創り出した。
【0073】
UHMWPEブレンドの1つの部分は、プリフォームを創り出すために基板に圧縮成形された。基板は、ニアネットシェイプ寛骨シェルの形状の、70mm径多孔質金属基板であった。その多孔質金属基板は、上述のように、インディアナ州ウォーソーのZimmmer Inc.から通常入手し得るTrabecular Metal(商標)技術を用いて製造された。この方法は、3つの異なるプリフォームを創り出すために繰り返された。プリフォームは、対流炉内で、予熱温度は、110℃で最小の12時間℃、加熱された。2つのプリフォームは、照射源に向かい合う1つのプリフォームの基板、および照射源から離れたもう1つのプリフォームの基板、とともに、上の表2に示されるように、方法Aを用いて照射された。これらの位置のプリフォームは、第1の、100kGy線量の照射に曝された。ついで、プリフォームは、20分間、空気中に置かれた。20分間の満了後に、プリフォームは、合計照射線量200kGyに対し、第2の、100kGy線量の照射に曝された。
【0074】
残りのプリフォームは、照射源に向かい合う1つのプリフォームの基板とともに、上の表2に示されるように、方法Bを用いて照射された。これらの位置のプリフォームは、第1の、100kGy線量の照射に曝された。ついで、プリフォームは、110℃の一定温度を維持する対流炉内に置かれた。4時間の満了後に、プリフォームは、対流炉から取り出され、合計照射線量200kGyに対し、第2の、100kGy線量の照射に曝された。
【0075】
ついで、各プリフォームは中央を通って切断され、基板は除去された。UHMWPEブレンドはミクロトームにされ、UHMWPEブレンドのTVIを測定するために、マサチューセッツ州ビレリカのBruker Optics 社から入手し得る、Bruker Optics FTIR SpectrometerでのFTIR分析に供された。この分析は、試料の最も厚い部分について実施された。UHMWPEブレンドの試料は、UHMWPEブレンドの結晶化度%を測定するために、デラウェア州ニューカッスルのTA Instrumentsから入手し得る、TA Instruments Q1000を用いるDSCに供された。この分析は、異なる位置から取られたUHMWPEブレンド試料について繰り返された。
【0076】
照射源に向かい合う基板を照射されたモノブロックの両方において、脱色のバンド、すなわち半透明、は基板を連結するUHMWPEブレンドの端部に沿って見られ得る。下の表11に示されるように、FTIR分析は、UHMWPEブレンドと基板の間のちょうど界面の点でUHMWPEブレンドのTVIの実質的減少を示した。さらに、UHMWPEブレンドの中央の点における結晶化度%は約59%であった。結晶化度%は、UHMWPEブレンドが基板との界面に近づくにつれて減少し、下の表12に示されるように、UHMWPEブレンド/基板界面近くの半透明領域で48%に達した。照射源から離れる基板を照射されたプリフォームにおいて、UHMWPEブレンドのTVIは、UHMWPEブレンドにわたって実質的にもっと均一であり、結晶化度%は、2.2%変動するにすぎない。これは、基板が照射時に照射源から離れるプリフォームにおいて生じる、比較的均一な架橋の結果であり得る。
【0077】
【表12】

【0078】
【表13】

【0079】
例8 UHMWPEブレンドに対する照射線量の効果
ミネソタ州ミネアポリスのStat-Ease, Inc.から得られた、Design Expert 6.0.10 ソフトウェアが、central composite response surface Design of Experiment (DOE) を構成するために利用された。DOEは3つの異なる変数を評価した:d/l−α−トコフェロール濃度,予熱温度、施された合計照射線量、およびパスあたりの照射線量。
【0080】
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050 UHMWPは、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、High Intensity Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的に混合された。GUR 1050樹脂は、いくつかのバッチでd/l−α−トコフェロールと混合され、選択されたwt%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドを創り出した。d/l−α−トコフェロールのwt%は、0.10%、0.20%、0.35%、0.50%、および0.60%d/l−α−トコフェロールから選ばれた。各ブレンドは、プリフォームを創り出すために基板に圧縮成形された。基板は、ニアネットシェイプ寛骨シェルの形状の、70mm外径の多孔質金属基板であった。その多孔質金属基板は、上述のように、インディアナ州ウォーソーのZimmmer Inc.から通常入手し得るTrabecular Metal(商標)技術を用いて製造された。
【0081】
ついで、得られたプリフォームは、伸長可能な、編んだポリエチレンテレフタレートスリーブの内側に置かれ、アルミニウムで金属化したプラスチックフィルムポーチ(フィルムを通るガス拡散速度を減少させるために、アルミニウムのような金属で被覆された、Mylar(登録商標)のような、ポリエチレンテレフタレートから形成されたポーチ)の内側に真空シールされた。Mylarはデラウェア州ウィルミングトンのDuPon Teijin Films U.S.Limited Partnership の登録商標である。プリフォームは、プリフォームを照射に曝すために準備に取り出されるまで、この状態に留まった。照射の前に、得られた各プリフォームは、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に加熱することにより予熱され、最小の12時間、保持された。予熱温度は、下の表13に示されるように60℃、70℃、85℃、100℃および110℃から選ばれた。
【0082】
ついで、プリフォームは、上記表2に示されるように、方法Bにより、選ばれた合計照射線量に曝された。合計照射線量は133kGy、150kGy、175kGy、200kGyおよび217kGyから選ばれた。さらに、合計照射線量は、2つの等しいパスまたは3つの等しいパスに分割され(一緒にすると合計照射線量を達成する)、プリフォームに施された。特に、下の表13に「ブロック1」として指摘されるプリフォームは、2つの等しいパスで合計照射線量を受けるが、下の表13に「ブロック2」として指摘されるプリフォームは、3つの等しいパスで合計照射線量を受けた。
【0083】
照射後に、各UHMWPEブレンドは基板から分離され、9mm径および13mm厚さの円筒形状のピンオンディスク(POD)試料がUHMWPEブレンドパックから機械加工された。2方向ピンオンディスク摩耗テスターが、100%ウシ血清により潤滑された研磨Co-Crディスクを接合するUHMWPEピンの摩耗速度を測定するために使用された。これらの測定は、the Journal of Arthroplasty, Vol.16,Issue 5,2001, 658-65ページに刊行された、「A new pin-on-disk wear testing method for simulating wear of polyethylene on cobalt-chrome alloy in total hip arthroplasty」におけるBragdonらの教示にしたがってなされた。そのすべての開示は引用により、ここに組み入れられる。ピンオンディスク摩耗テスターの2方向の運動は、オハイオ州クリーブランドのParker Hannifin 社のCompumotor Division から入手でき、コンピューター制御されたXYテーブルにより発生され、10mm×5mmの長方形パターンで動くようにプログラムされていた。インプラント仕上げに研磨された、6枚のCo-Crディスクを含む容器(basin)がXYテーブルの頂上に固着されていた。そのXYテーブルおよび容器はミネソタ州イーデンプレリーのMTS社から入手し得るサーボ油圧MTS machine上に搭載された。ついで、そのMTS machineは、研磨されたCo-Crディスクに対するUHMWPEブレンドピン試料を搭載した。
【0084】
そのMTS machineは、XYテーブルの動きと同期してPaul型曲線を創り出すようにプログラムされた。Paul型曲線は、Proceedings Institution of Mechanical Engineers, Vol.181, Part 37, 8-15頁で刊行された、J.P.PaulによるForces Transmitted By Joints in the Human Bodyに詳しく説明されており、そのすべての開示は引用により、ここに組み入れられる。Paul型負荷曲線のピーク負荷は、各UHMWPEピン試料とCo-Crディスク間のピーク接触圧6.5MPaに相当した。試験は2Hzで合計1.128×10サイクルまで実施された。
【0085】
UHMWPEブレンドの残りの部分は半分に切断され、マサチューセッツ州ビレリカのBruker Optics 社から入手し得る、Bruker Optics FTIR Spectrometerを用いてFTIR分析に供された、ミクロトーム薄膜を形成した。薄膜は、ASTM(the American Society for Testing and Materials)Standard F-2003の超高分子量ポリエチレンの加速エージングのための標準ガイド、にしたがって加速エージングされた。ついで、後エージング薄膜のOIが測定された。
【0086】
いったん測定がなされると、後エージングされた薄膜は、24時間、沸騰ヘキサン中に置かれ、薄膜中に残るd/l−α−トコフェロールを抽出した。ついで、UHMWPEブレンド薄膜かr抽出されたd/l−α−トコフェロールの%が測定された。モノブロックからの残りのUHMWPEブレンドは1/16インチ平板に機械加工され、そしてASTM Standard D638(Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics)に規定されるV型試料に機械加工された。
【0087】
表13に示される結果の分析は、比較的低い合計照射線量とともに、または比較的高いd/l−α−トコフェロール濃度とともに、摩耗が増加することを示す。さらに、d/l−α−トコフェロール濃度は極限引張り伸びに有意の影響を有した。降伏強度は予熱温度に最も影響されたが、UTSは合計照射線量およびd/l−α−トコフェロール濃度に最も影響された。OIは比較的高い予熱温度および比較的高いd/l−α−トコフェロール濃度で減少された。d/l−α−トコフェロールの%は照射およびエージング後に減少したが、照射およびエージング後にも有意の量のd/l−α−トコフェロールがUHMWPEブレンドになお残っていた。
【0088】
【表14】

【0089】
【表15】

【0090】
例9 脱イオン水における溶出
固化パックへのUHMWPEブレンドから溶出されたd/l−α−トコフェロールの量が8週間にわたって調査された。GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050 UHMWP粉末は、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、Einrich Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的に混合された。GUR 1050樹脂は、0.25wt%のd/l−α−トコフェロールを有する、UHMWPEブレンドを創り出すために、d/l−α−トコフェロールと混合された。ついで、UHMWPEブレンドは、2.5インチ径および1インチ厚さのパックに圧縮成形された。
【0091】
ついで、パックは、イリノイ州ラウンドレイクのThe Grieve Corporationから入手し得る、Grieve 対流炉内で、予熱温度に予熱された。予熱温度は、85℃〜115℃から選ばれた。いったん予熱されると、パックは、表2に示される方法Aにより、選ばれた合計照射線量に曝された。合計照射線量は160kGy〜190kGyから選ばれた。1cm立方体がパックから機械加工され、100mLの脱イオン水を含むガラスジャー内に置かれた。ジャーは、E.I. DuPont Nemours and Companyから入手し得るTeflon (登録商標)シールおよびキャップを用いてシールされた。Teflon は、デラウェア州ウィルミングトン、1007マーケットストリートのE.I. DuPont Nemours and Companyの登録商標である。
【0092】
ついで、各ガラスジャーが、温度調節して試験温度に保持された水浴中に置かれた。試験温度は37℃〜70℃から選ばれた。2週間の間隔で、分割量の抽出溶液が各ジャーから取られ、波長297nmの紫外光を用いてd/l−α−トコフェロール濃度が測定された。吸収測定は、10mm石英セルおよび対照物質として脱イオン水を用いて行われた。検出が終了すると、試験分割量はガラスジャーに戻された。この分析は、53日間繰り返された。表14に示される結果が示すように、37℃に維持された脱イオン水中に浸されたUHMWPEブレンド立方体中に、溶出されたd/l−α−トコフェロールは検出されなかった。さらに、70℃に維持された脱イオン水中に浸されたUHMWPEブレンド立方体中に、d/l−α−トコフェロールの最終的な溶出は検出されなかった。たとえば、その結果は、53日後に37℃の水100mL中に架橋UHMWPE2gから溶解された(leached)酸化防止剤は、対照水吸収から0.01単位よりも大きくない、297nmにおける抽出溶液吸収を生じたことを示した。
【0093】
【表16】

【0094】
例10 UHMWPEブレンド試料の色測定
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050は、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、High Intensity Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的にブレンドされた。GUR 1050樹脂は、0.5wt%未満のd/l−α−トコフェロールを有する、UHMWPEブレンドを創り出すために、d/l−α−トコフェロールと混合され、圧縮成形された。ついで、圧縮成形されたUHMWPEブレンドは、区分けされ、UHMWPEブレンドの色を測定するために、分光光度計での分析に供された。さらに、トコフェロールのないUHMWPE固化粉末も、トコフェロールのないUHMWPE固化粉末の色を測定するために、分光光度計での分析に供された。
【0095】
特に、ミシガン州グランドラピッズのX-Rite Incorporatedから入手し得る、Color Checker 545 Portable Spectrometer 携帯用(hand held)ユニットは、試料を試験するのに用いられた。このデバイスはシステム発光体D65を用い、度数オブザーバー、すなわち試験される試料に関し10度のデバイス配置、を有する。そのデバイスは、検定タイルを用いて補正され、読み取りの平均値は試験試料との比較のために記録された。ついで、各試料は分析に供された。
【0096】
各個別分析はL*a*b*(CIELAB)色彩空間定義系を用いてデバイス上に表示された。この系は色の明度、赤/マゼンタおよび緑間の色の位置、および黄色および青色間の色の位置を提供することにより、ヒトの眼にみえるすべての色彩を記載する。これらの結果は、黒に相当する0から、白に相当する100までの値を有するL*、負の値は緑、そして正の値は赤/マゼンタを示すa*、ならびに負の値は青、そして正の値は黄色を示すb*、として、示された。
【0097】
試験結果に基づいて、表15に示されるように、トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは黄味がかった色を示した。
【0098】
【表17】

【0099】
例11 膨潤比、架橋密度および架橋間の分子量
GUR 1050医療用グレードUHMWP粉末は、ケンタッキー州フローレンスに北アメリカ本社を有するTicona社から得られた。d/l−α−トコフェロールは、オランダ国ゲリーンのDSM NUTRITIONAL PRODUCTS, Ltd.から得られた。GUR 1050は、イリノイ州ガーニーのEirich Machines, Inc.から入手し得る、High Intensity Mixerを用いて、d/l−α−トコフェロールと機械的に混合された。GUR 1050樹脂は、0.2、0.5または1.0wt%のd/l−α−トコフェロールを有する、UHMWPEブレンドを創り出すために、d/l−α−トコフェロールと混合された。ついで、UHMWPEブレンドは、圧縮成形されてパックを形成し、機械処理して辺5mmを有する立方体を形成した。UHMWPE立方体は40℃、100℃および110℃から選ばれる予熱温度に加熱された。選定された予熱温度に加熱されると、UHMWPEブレンドは、合計照射線量が受けられるまで、表2に示される方法Cを用いて照射された。合計照射線量は、90kGy, 120kGy,150kGyおよび200kGyから選択された。
【0100】
得られたUHMWPEブレンド立方体は、ASTM F-2214-02により、材料の膨潤比(q)をSwell Ratio Tester(SRT)(マサチューセッツ州ボストンのCambridge Polymer Group)で測定することにより、UHMWPEブレンドのポリマーネットワークパラメーターを調査するために検討された。qを知るために、Flory 相互作用パラメーター(χ)、溶媒のモル容積(ψ)、および溶媒の比容積(ν)、架橋密度(υ)、および材料の架橋間の分子量(M)が、次式より算出された。
【0101】
【数1】

【0102】
さらに、130℃で安定化されたo-キシレンの膨潤比が、圧縮成形された方向に測定された。試験結果は下の表16に示される。たとえば、公称で1.0%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で40℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約4.3より小さいq、0.090より大きいυ、および約11,142より小さいMを有することが見出された。さらに、公称で1.0%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で110℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約3.6より小さいq、0.117より大きいυ、および約8,577より小さいMを有することが見出された。
【0103】
さらに、公称で0.5%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で40℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約3.8より小さいq、0.119より大きいυ、および約8,421より小さいMを有することが見出された。公称で0.5%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で110℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約3.6より小さいq、0.109より大きいυ、および約9,166より小さいMを有することが見出された。
【0104】
さらに、公称で0.5%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で40℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約3.8より小さいq、0.119より大きいυ、および約8,421より小さいMを有することが見出された。公称で0.5%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で110℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約3.6より小さいq、0.109より大きいυ、および約9,166より小さいMを有することが見出された。
【0105】
さらに、公称で0.2%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で40℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約2.8より小さいq、0.187より大きいυ、および約5,351より小さいMを有することが見出された。公称で0.2%のd/l−α−トコフェロールを有するUHMWPEブレンドは、公称で110℃に予熱され、続いて公称で200kGyの合計線量で電子ビーム照射されるとき、約3.0より小さいq、0.164より大きいυ、および約6,097より小さいMを有することが見出された。
【0106】
さらに、ある条件下で、架橋UHMWPEブレンドは、0.200moles/dm3より小さい架橋密度を示すことが見出された。他の条件下で、少なくとも0.1%の酸化防止剤を有するUHMWPEブレンドは、0.190moles/dm3より小さい架橋密度を示した。さらに、ある条件下で、少なくとも0.1%の酸化防止剤を有するUHMWPEブレンドは、0.200moles/dm3より大きい架橋密度を示し、11,200ダルトンより小さい架橋間分子量を有していた。
【0107】
【表18】

【0108】
【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用途での使用のためのUHMWPEを処理する方法であり、その方法は次の段階を含む:UHMWPEを酸化防止剤と一緒にして酸化防止剤0.01〜3.0wt%を有するブレンドを形成すること;ブレンドを固化するように処理すること、ここで固化されたブレンドは融点を有する;固化されたブレンドの融点未満の予熱温度に、固化されたブレンドを予熱すること;ならびに固化されたブレンドの融点未満の温度に、固化されたブレンドを維持する間に、固化されたブレンドに照射すること。
【請求項2】
UHMWPEを酸化防止剤と一緒にする段階が、酸化防止剤0.01〜3.0wt%を有する実施的に均一なUHMWPEブレンドを形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
UHMWPEを酸化防止剤と一緒にする段階が、溶媒ブレンド、高せん断混合、精密コーティング、流動床、噴霧、エマルション重合、静電沈殿、粒子の濡れまたは被覆およびマスターバッチブレンドの少なくとも1つにより、UHMWPE粉末をトコフェロールと混合することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
UHMWPEを酸化防止剤と一緒にする段階が、高せん断混合により、UHMWPE粉末をトコフェロールと混合することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
UHMWPEを、トコフェロール、ビタミンC、リコピン、蜂蜜、フェノール性酸化防止剤、アミン酸化防止剤、ハイドロキノン、ベータカロチン、アスコルビン酸、CoQエンザイムおよびそれらの誘導体から選ばれる酸化防止剤と一緒にする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
UHMWPEをd、l-α-トコフェロールと一緒にする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ブレンドを固化するように処理することが、圧縮成形、ネットシェイプ成形、射出成形、押出し、モノブロック成形、繊維、溶融紡糸、ブロー成形、溶液紡糸、熱間等方加圧、高圧結晶化および薄膜の少なくとも1つにより行われる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ブレンドを固化するように処理することが、圧縮成形によりブレンドを多孔質基板中に少なくとも部分的に伸長させて行われる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
基板が、骨代用材、細胞受容材、組織受容材、骨伝導性材および骨誘導材の少なくとも1つとして有用な、高度に多孔質の生体適合性材料である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
基板が、骨代用材、細胞受容材、組織受容材、骨伝導性材および骨誘導材の少なくとも1つとして有用な、高度に多孔質の生体適合性材料であり、少なくとも55%の気孔率を有する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ブレンドを固化するように処理することが、肉眼でみて機械的に組み合わせる特徴を持つ基板上の粗面化した表面にブレンドを圧縮成形することにより行われる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
固化されたブレンドの融点が示差熱量測定法で測定される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
固化されたブレンドを実質的に70℃〜130℃の予熱温度に予熱する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
固化されたブレンドを機械加工して医療用製品を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
固化されたブレンドにより受けられる合計架橋照射線量を同定すること;
固化されたブレンドにより受けられる最大の個別照射線量を同定するが、固化されたブレンドを固化されたブレンドの融点未満に維持すること;ならびに
固化されたブレンドを照射する段階が、最大の個別照射線量に等しいか、少ない、第1の照射線量で固化されたブレンドを照射することを含む;
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
最大の個別照射線量に等しいか、少ない、少なくとも1つの続く照射線量で固化されたブレンドをさらに照射することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
固化されたブレンドを照射することが、電子ビーム照射、ガンマ照射およびX線照射の少なくとも1つで、固化されたブレンドを照射する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
合計架橋照射線量が実質的に50kGy〜1000kGyである請求項15に記載の方法。
【請求項19】
合計架橋照射線量が実質的に100kGy〜250kGyである請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第1の照射の後に、固化されたブレンドの温度を予熱温度に平衡にすること;ならびに合計架橋照射線量および第1の照射線量および固化されたブレンドのための最大の個別照射線量の間の差異の小さい方に等しいか、少ない、第2の照射線量で固化されたブレンドを照射すること、をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
ガスプラズマ殺菌、エチレンオキシド殺菌、ガンマ線殺菌、電離放射線殺菌、オートクレーブ処理および超臨界流体法の少なくとも1つによりUHMWPEブレンドを殺菌することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
照射段階後に、固化されたブレンドを熱処理することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項23】
照射段階前に、固化されたブレンドの少なくとも1部分をシールドすることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
次の段階を含む方法により調製される、医療インプラントにおける使用のための、架橋されたUHMWPEブレンド:UHMWPEブレンドを、0.1〜3.0wt%酸化防止剤を有するブレンドを形成するように酸化防止剤と一緒にすること;そのブレンドを固化するように処理すること、そしてその固化されたブレンドは融点を有する;その固化されたブレンドを融点未満の予熱温度に予熱すること;ならびに固化されたブレンド融点未満の温度に固化されたブレンドを維持する間、その固化されたブレンドを少なくとも100kGyの合計照射量で照射すること。
【請求項25】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも200%の極限引張り伸びを有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項26】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも21メガパスカルの引張り降伏強度を有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項27】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも45メガパスカルの極限引張り強度を有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項28】
架橋されたUHMWPEブレンドが2.75mg/Mcのピンオンディスク摩耗特性を有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項29】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも53kJ/m2のアイゾッド衝撃強度を有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項30】
架橋されたUHMWPEブレンドが基板、ポリマーおよび酸化防止剤で安定化されたポリマーの少なくとも1つに成形される請求項24に記載のブレンド。
【請求項31】
架橋されたUHMWPEブレンドが酸化指数を有し、その酸化指数は、酸素雰囲気下に、72psiの圧力、70℃で、2週間の加速エージング後に、0.1未満である請求項24に記載のブレンド。
【請求項32】
53日後に、37℃の水100mL中に架橋UHMWPE2gから溶解された酸化防止剤が、対照水吸収から0.01単位よりも大きくない、297nmにおける抽出溶液吸収を生じる請求項24に記載のブレンド。
【請求項33】
53日後に、70℃の水100mL中に架橋UHMWPE2gから溶解された酸化防止剤が、対照水吸収から0.01単位よりも大きくない、297nmにおける抽出溶液吸収を生じる請求項24に記載のブレンド。
【請求項34】
架橋されたUHMWPEブレンドが酸化指数を有し、その酸化指数は、0.1%未満であり、かつ架橋されたUHMWPEブレンドは電子スピン共鳴で測定された、1×1017spins/g未満のフリーラジカルレベルを有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項35】
架橋されたUHMWPEブレンドが酸化指数を有し、その酸化指数は、0.1%未満であり、かつ架橋されたUHMWPEブレンドは0.200moles/dm3より大きい架橋密度を示す請求項24に記載のブレンド。
【請求項36】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも0.1wt%の酸化防止剤を有し、かつ2.0mg/Mcより小さいピンオンディスク摩耗速度を有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項37】
架橋されたUHMWPEブレンドが0.200moles/dm3より大きい架橋密度を示す請求項24に記載のブレンド。
【請求項38】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも0.1wt%の酸化防止剤を有し、かつ0.190moles/dm3より大きい架橋密度を示す請求項24に記載のブレンド。
【請求項39】
架橋されたUHMWPEブレンドが少なくとも0.1wt%の酸化防止剤を有し、0.200moles/dm3より大きい架橋密度を示し、かつ11,200ダルトンより小さい架橋間の分子量を有する請求項24に記載のブレンド。
【請求項40】
UHMWPEブレンドがカラーメーターで測定されるL*値、a*値、およびb*値を有し、L*値は90より大きく、a*値は−6より大きく、そしてb*値は17より大きい請求項24に記載のブレンド。
【請求項41】
固化されたブレンドを多孔質基板、ポリマーおよび酸化防止剤を含むポリマーの少なくとも1つに成形する請求項24に記載のブレンド。
【請求項42】
架橋されたUHMWPEブレンドが電子スピン共鳴で測定された、1×1017spins/g未満のフリーラジカルレベルを有する請求項24に記載のブレンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−523805(P2010−523805A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503206(P2010−503206)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/059909
【国際公開番号】WO2008/124825
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(502427840)ジンマー,インコーポレイティド (12)
【Fターム(参考)】