説明

医療機器

【課題】 気密性を確保し、観察窓に付着する付着物を除去する機能を備えた医療機器の実現。
【解決手段】 体内に導入される医療機器1は、内蔵物を気密保持し、使用前後に滅菌消毒処理される外装部2a,2b,3と、外装部2a,2b,3内に配設され、観察窓3aを介して体内を撮像する撮像手段30と、外装部2a,2b,3を体壁に固定する固定手段21と、外装部2a,2b,3の外側に配設され、観察窓3aに付着した付着物を除去し、使用後に交換される付着物除去手段4と、外装部2a,2b,3内に配設され、付着物除去手段4を磁力により非接触駆動させる駆動手段12,50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に導入されて留置固定した状態で患部を観察する医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、医療機器である内視鏡装置は、撮像手段である撮像装置を備えており、患者の体内へ導入されて、撮像装置によって撮影された観察像により、体内患部の各種検査、各種処置などを行うためのものである。また、内視鏡装置には、体内の管腔管路である、食道、胃、大腸、十二指腸などの消化臓器内に口腔、または肛門から導入するもの、臍部近傍から体壁を穿刺して貫通させて、腹腔内へ導入するものがある。このような内視鏡装置などの医療機器は、観察窓の曇り防止、汚れ防止、汚れ除去などのために、以下に記載するような種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、体内の体壁に留置固定して腹腔内を観察するための小型な医療用カメラが開示されている。この特許文献1には、撮像手段の観察窓を被覆して撮像手段が非撮影可能状態にする被覆手段を可変制御して、観察窓に汚れが付着することを防止する医療用カメラ(医療装置)の技術が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、内視鏡の観察窓を払拭するワイパを備えた内視鏡用洗浄シースが開示されている。この特許文献2には、内視鏡の挿入部を挿通する空洞部を有したシース本体に設けられた内視鏡の観察窓を払拭するワイパが引っ張りばねにより観察視野外で待機するように付勢され、このワイパに混合水を噴射して引っ張りばねと混合水の噴射圧とのバランスでワイパを移動させる内視鏡用洗浄シースの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−279202号公報
【特許文献2】特開2010−35825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、体内の外科手術のために、導入された撮影用の医療機器は、治療患部からの血液、粘膜などが飛散、または高周波治療器による患部の処置時に発生する煙により観察に支障が生じる。つまり、外科手術に用いられる医療機器では、患部の処置時に撮像装置の観察窓へ付着物が付着する場合が多い。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される従来構成の体内に留置される医療用カメラでは、観察窓に汚れが付着して除去する機能を備えていない。そこで、特許文献2に記載されるような従来構成の内視鏡用洗浄シースが備える内視鏡の観察窓の汚れを払拭するワイパを特許文献1に記載される医療用カメラに転用することができる。
【0008】
この従来の汚れを払拭するワイパは、衛生的な観点からディスポーザブルとして交換する構成である。また、ディスポーザブルのワイパを駆動する駆動要素がリユースの構成要素に含まれている。そのため、従来では、ディスポーザブルのワイパに直接的に駆動力を発生させる駆動要素が必要であり、その駆動要素がコスト的にリユースの構成要素となるケースが大半である。
【0009】
このようにワイパに直接的に駆動力を発生させる駆動要素をリユース側に配設すると、医療用カメラの水密性を確保し難くなるという課題がある。また、体内に導入される医療機器のリユース構成要素は、使用前後にオートクレーブなどにより高温高圧滅菌処理が行なわれるため、内蔵する電気的構成部品に対して水密性の確保が要求されている。
【0010】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、気密性(水密性)を確保し、観察窓に付着する付着物を除去する機能を備えた医療機器を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の医療機器は、体内に導入される医療機器において、内蔵物を気密保持し、使用前後に滅菌消毒される外装部と、前記外装部内に配設され、観察窓を介して体内を撮像する撮像手段と、前記外装部を体壁に固定する固定手段と、前記外装部の外側に配設され、前記外装部に設けられる観察窓に付着した付着物を除去し、使用後に交換される付着物除去手段と、前記外装部内に配設され、前記付着物除去手段を非接触駆動する駆動手段と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気密性を確保し、観察窓に付着する付着物を除去する機能を備える医療機器を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の腹腔内設置カメラの構成を示す斜視図
【図2】同、腹腔内設置カメラが腹腔内に設置された状態を示す部分断面図
【図3】同、腹腔内設置カメラの構成を示す分解斜視図
【図4】同、腹腔内設置カメラの構成を示す断面図
【図5】同、カップリング磁石構成のワイパユニットと能動側回動磁石ユニットの構成を示す斜視図
【図6】同、永久磁石の構成を示す平面図
【図7】同、図4のVII−VII線に沿った腹腔内設置カメラの断面図
【図8】同、ワイパユニットの初期位置を示す腹腔内設置カメラの断面図
【図9】本発明の第2の実施形態の腹腔内設置カメラの構成を示す断面図
【図10】同、図9のX−X線に沿った永久磁石の構成を示す断面図
【図11】同、電磁石から構成される駆動側ユニットによるワイパユニットを駆動させる動作を説明する図
【図12】本発明の第3の実施形態の腹腔内設置カメラの構成を示す分解斜視図
【図13】同、腹腔内設置カメラを断面で示し、内部構成を説明するための模式図
【図14】同、図13のXIV−XIV線断面図
【図15】同、図13のXV−XV線断面図
【図16】同、第1の変形例の腹腔内設置カメラの構成を示す断面図
【図17】同、図16のXVII−XVII線断面図
【図18】同、第2の変形例の腹腔内設置カメラの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明である医療機器について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0015】
さらに、本発明の医療機器である腹腔内設置カメラは、ここでは従来手技の腹腔鏡下外科手術を例に挙げて、以下に詳述するが、臍下部などに設けた一カ所の切開創から差し込んだトロッカーに、内視鏡や鉗子などを挿入して行う単孔式腹腔鏡下外科手術(腹壁内視鏡シングルサイト手術ともいう)、経管腔的内視鏡手術(NOTES)などのさらに低侵讐性を向上させた内視鏡下外科手術に適用することができる構成である。
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1から図7は、本発明の第1の実施の形態に係り、図1は腹腔内設置カメラの構成を示す斜視図、図2は腹腔内設置カメラが腹腔内に設置された状態を示す部分断面図、図3は腹腔内設置カメラの構成を示す分解斜視図、図4は腹腔内設置カメラの構成を示す断面図、図5はカップリング磁石構成のワイパユニットと能動側回動磁石ユニットの構成を示す斜視図、図6は永久磁石の構成を示す平面図、図7は図4のVII−VII線に沿った腹腔内設置カメラの断面図、図8はワイパユニットの初期位置を示す腹腔内設置カメラの断面図である。
【0017】
本実施の形態の医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)1は、図1から図4に示すように、カプセル形状を形成するように略球冠状として両側部分に位置する第1、第2の外装部2a,2bと、これら第1、第2の外装部2a,2bの間に回動自在に配置され、ここでの下部側に観察窓3aを備えた外形円柱状の外装部であるカメラ本体部3と、第1、第2の外装部2a,2bの間にカメラ本体部3を覆うように配設され、円筒外周部を2箇所刳り貫いた開口部となる切欠部4a,4bが形成された付着物除去手段であるワイパユニット4と、を有して主に構成されている。
【0018】
なお、第1の外装部2aの上部からは、ケーブル5が延設されている。このケーブル5の延出端には、外部機器に接続する電気コネクタ5aが設けられている。
【0019】
先ず、本実施の形態のカメラ1は、図2に示すように、腹腔鏡下外科手術に用いられ、患者の体腔の1つである腹腔101内の臓器などを治療するときに治療部位を撮影するために用いられる。
カメラ1は、腹腔101内に向けて腹壁102を穿孔して穿刺される、図示しないトラカールを介して、患者の腹腔101内へ導入される。そして、カメラ1は、腹腔101に穿刺された、図示しない穿刺針などによりケーブル5が掛止され、このケーブル5が腹壁102を貫通するように体外に引き出される。なお、ケーブル5には、この体内、ここでは腹腔101内への導入に際して、図示しないが、電気コネクタ5aを防滴するキャップが装着されるものである。
【0020】
次に、カメラ1のケーブル5は、患者の腹部側に準備されたカメラ固定手段である固定ユニット21の孔部21aに通され、腹壁102側に牽引される。そして、ケーブル5は、カメラ1が腹壁102に近づくように持ち上げられ、体外側へ牽引される。このように、カメラ1は、第1、第2の外装部2a,2bが腹壁102に当接された状態で腹腔101内に留置固定される。
【0021】
なお、固定ユニット21には、カメラ1のケーブル5を体外側で固定する固定レバー22が設けられている。この固定レバー22は、中途部にケーブル5が貫挿する孔部22aが形成され、この孔部22aの位置が固定ユニット21の孔部21aの位置とズレが生じるように固定ユニット21内に設けられたバネ23により、固定ユニット21の一側方向へ付勢されている。
【0022】
つまり、ユーザは、固定ユニット21の孔部21aと、固定レバー22の孔部22aが略一致する位置まで、固定レバー22をバネ23の付勢力に抗して固定ユニット21内へ押し込むと、ケーブル5を容易に牽引することができる。そして、ユーザは、固定レバー22の固定ユニット21内への押し込みを解除すると、バネ23の付勢力を受けて固定レバー22がスライドする。
【0023】
そのため、固定ユニット21の孔部21aの位置に対して、固定レバー22の孔部22aの位置にズレが生じるため、各孔部21a,22aに挿通するカメラ1のケーブル5は、固定ユニット21内で挟持固定される。こうして、カメラ1は、腹腔101内において腹壁102に第1、第2の外装部2a,2bの上部が当接して安定した状態で留置固定される。
【0024】
その後、ケーブル5の電気コネクタ5aに装着されている防滴用のキャップ(不図示)が取り外されて、図示しないビデオプロセッサなどの外部機器に接続される。なお、カメラ1は、ビデオプロセッサなどから電源が供給される構成となっている。
【0025】
ここで、上述した体内、ここでは、腹腔101内に留置固定されるカメラ1の具体的な各種構成要素について、図3、及び図4を用いて、詳しく説明する。
カメラ1の第1の外装部2aは、図3に示すように、外形円柱状のカメラ本体部3の端部が気密保持(水密保持)されるように圧入して嵌合される穴部2cが内部に形成されている。また、第1の外装部2aとカメラ本体部3を気密保持(水密保持)するために、Oリングなど気密保持(水密保持)部材を設けても良いし、第1の外装部2aとカメラ本体部3とが螺着する構成としても良い。また、カメラ本体部3は、第1、第2の外装部2a,2bと共に、内蔵する構成要素を気密保持(水密保持)する第3の外装部を構成している。
また、組付け時に第1、第2の外装部2a,2bが対向するそれぞれの端面部分には、ワイパユニット4をカメラ本体部3の長手軸回りの回動を保持するため、ワイパユニット4の側部を収容して保持する凹部2dが形成されている(図3では第2の外装部2bの凹部2dは不図示である)。
【0026】
付着物除去手段であるワイパユニット4は、上述した、開口部となる2つの切欠部4a,4bのそれぞれを仕切るように長手方向に沿った2つのアーム部41,42と、これら2つのアーム部41,42に一体に繋がれるように両側に位置する2つの円環部43,44と、一方の円環部43の内周に嵌着された円環状の永久磁石45と、を有して主に構成されている。なお、切欠部4a,4bは、2つに限定されることなく、観察窓3aが露出する大きさであれば幾つでも良く、それに応じてアーム部41,42の数を増やせば良い。
【0027】
このワイパユニット4の一方のアーム部41の内方の面上には、スポンジ、ゴムなどの弾性部材から形成されたワイパブレード40が配設されている。なお、ここでは、一方のアーム部41のみにワイパブレード40を配設したが、他方のアーム部42の内方側の面上にもワイパブレード40を配設しても良い。
【0028】
カメラ本体部3は、図4に示すように、中空形成されており、第1の外装部2aに接続される側とは反対側の端部が第2の外装部2bに気密保持(水密保持)された状態で嵌着されている。このカメラ本体部3には、制御部10と、モータドライバ11と、カメラユニット30と、が内蔵されている。
【0029】
なお、上述したカメラ本体部3に配設される観察窓3aは、サファイアガラス、アクリルなどによって断面円弧状に形成された透明部材である。また、カメラ本体部3の第1の外装部2aに接続される側の端面からは、水密にシーリングされた上述のケーブル5が延出している。つまり、カメラ本体部3内の各種構成要素、特に内蔵する電気的構成要素は、気密保持(水密保持)された状態となっている。
【0030】
制御部10は、カメラ本体部3から延設されるケーブル5と電気的に接続されている。この制御部10からは、フレキシブルプリント基板16,17が延設されている。フレキシブルプリント基板16,17は、モータドライバ11またはカメラユニット30に接続され、制御部10とモータドライバ11またはカメラユニット30の信号の授受、電源供給などが行なわれる。
【0031】
撮像手段(撮像部)であるカメラユニット30は、CCD、CMOSなどの固体撮像素子31と、この固体撮像素子31が実装された撮像基板32と、複数の対物レンズ33と、照明部である複数のLED照明34と、を有して構成されている。このカメラユニット30は、光電変換した画像信号を制御部10へ出力する。そして、制御部10は、ケーブル5を介して、外部機器であるビデオプロセッサ(不図示)へ画像信号を伝送する。なお、カメラユニット30により撮影された画像は、ビデオプロセッサにより画像処理されて、外部モニタに表示される(いずれも不図示)。
【0032】
モータドライバ11は、第2の外装部2b内に配設される駆動手段の1つであるモータ12と電気的に接続される。なお、モータドライバ11は、制御部10の制御信号に基づき、モータ12への電流のON/OFF、流れる方向などを制御するものである。
【0033】
モータ12は、第2の外装部2bに嵌合固定されたモータ保持枠13に保持されている。モータ保持枠13の外周側には、第2の外装部2b内で回動自在な円環状の磁石保持枠46と、この磁石保持枠46の外周に嵌着された円環状の永久磁石47と、を備えた駆動手段の1つを構成する能動側回動磁石ユニット50が配設されている。
【0034】
モータ12は、モータギヤ14がギヤボックス15内の平歯車の伝達ギヤに噛合し、このギヤボックス15の伝達ギヤが磁石保持枠46の内周面に刻設されたギヤ溝に噛合することで、能動側回動磁石ユニット50を回動駆動する。
【0035】
以上に説明した、第2の外装部2b内の各種構成要素も、上述したように、カメラ本体部3が第2の外装部2bに嵌着された状態において、気密保持(水密保持)される。
【0036】
本実施の形態のワイパユニット4は、滅菌消毒性が低いワイパブレード40を備えているため、使用毎に交換されるディスポーザブルタイプである。これに対して、カメラ1は、その他の全ての構成要素が使用前後に滅菌消毒されるリユースとなっている。
【0037】
すなわち、第1、第2の外装部2a,2b、およびカメラ本体部3は、使用前後に滅菌消毒処理されて、内蔵する構成要素を含めて、全てリユース構成となっている。なお、第1の外装部2aから延出するケーブル5の根元部分の気密性(水密性)を確保するために、第1の外装部2aにはパッキン18が配設されている。つまり、本実施のカメラ1は、上述したように、リユース構成である第1、第2の外装部2a,2bおよびカメラ本体部3により、内部の各種電気的構成要素が気密保持(水密保持)された状態で配設されている。
【0038】
以上のように構成された、本実施の形態のカメラ1は、図5に示すように、能動側回動磁石ユニット50がモータ12によって回動駆動されると、能動側回動磁石ユニット50の永久磁石47の引力(磁力)がワイパユニット4の永久磁石45に作用して、ワイパユニット4が能動側回動磁石ユニット50の動き(回動)に追従して回動される。したがって、カメラ1は、ワイパユニット4の永久磁石45が受動側磁石とし、能動側回動磁石ユニット50の永久磁石47が能動側磁石とした非接触のカップリング磁石機構を備えている。
【0039】
また、各永久磁石45,47は、図6に示すように、周回りにS/N極が6分割された6極の円環状磁石が用いられている。なお、各永久磁石45,47は、6極に限定されることなく、2極以上の偶数の極数であれば良いものである。
【0040】
このように、カメラ1は、カメラ本体部3の外周側で、ワイパユニット4が、例えば、図7に示すカメラ本体部3の長手方向回りの矢印方向に回動されて、ワイパブレード40が観察窓3aを通過する度に、観察窓3aの表面の曇り、汚れなどが払拭されて除去される構成とすることができる。つまり、ワイパユニット4は、ワイパブレード40がカメラ本体部3の外周面に接触した状態で、カメラ本体部3の外周回りに沿って回動する。
【0041】
そして、ワイパブレード40は、観察窓3aの表面を通過するとき、この表面上の付着物である曇りまたは粘膜、血液などの汚れを払拭して、観察窓3aの曇りまたは汚れを除去して清浄する。こうして、カメラ1は、観察窓3aの外表面に曇り、汚れなどが付着したとしても、容易、且つ確実に、観察窓3aに付着する付着物を除去することができる。
【0042】
また、カメラ1は、ワイパユニット4の回動駆動を、ビデオプロセッサにコントローラを接続して、ユーザが、適宜、コントローラを操作することで行なうようにしても良いし、電源が入っている間、常にワイパユニット4が回動駆動するようにしても良い。なお、ユーザが適宜、コントローラを操作することでワイパユニット4が回動する構成の場合、図8に示すように、ワイパユニット4の各アーム部41,42が観察窓3a上で停止しないようにして、観察窓3aが切欠部4a(または4b)により露出して視界が遮られないような、ワイパユニット4の回動初期位置を設定すると良い。
【0043】
以上の説明により、本実施の形態のカメラ1は、カップリング磁石機構により、非接触にて、ワイパユニット4を回動駆動する構成となっている。つまり、カメラ1は、駆動要素であるモータ12、能動側回動磁石ユニット50などがワイパユニット4に直接的に接触することなく、気密保持(水密保持)されたリユース側の内部に配設した構成として、ワイパユニット4を非接触にて回動駆動する構成となっている。
【0044】
これにより、カメラ1は、リユースの第1、第2の外装部2a,2bおよびカメラ本体部3のそれぞれを組付けた状態では、内部の特に電気的構成要素に対して気密性(水密性)が保たれた状態となっている。また、カメラ1は、ワイパユニット4を除く、第1、第2の外装部2a,2bおよびカメラ本体部3を使用前後にオートクレーブなどにより高温高圧滅菌処理を行なっても、第2の外装部2bおよびカメラ本体部3が組み付けられた状態にしておくことで、内部の特に電気的構成要素に対して気密性(水密性)が保たれた状態となり、内蔵する電気的構成要素に対して気密保持(水密保持)も行うことができる。なお、ケーブル5の端部に配設されるコネクタ5aには、防滴用のキャップが装着されるものである。
【0045】
以上の説明から、本実施の形態のカメラ1は、観察窓3aに付着する付着物を除去するワイパユニット4を非接触にて回動駆動する構成とし、内蔵する構成要素に対して気密性(水密性)を確保するようになっている。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、図9から図11を用いて、本発明に係る第2の実施の形態について、以下に説明する。なお、図9から図11は、本発明の第2の実施の形態に係り、図9は腹腔内設置カメラの構成を示す断面図、図9のX−X線に沿った永久磁石の構成を示す断面図、電磁石から構成される駆動側ユニットによるワイパユニットを駆動させる動作を説明する図である。
また、以下の説明において、上述した第1の実施の形態の医療機器であるカメラ1の構成要素と同一の構成要素について同じ符号を用い、それら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施の形態の医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)1は、上述の第1の実施の形態の能動側回動磁石ユニット50に変えて、電磁石52a〜52dからなる駆動手段である駆動側ユニットを用いて、非接触にて、ワイパユニット4を回動駆動する構成となっている。
【0048】
具体的には、図9に示すように、カメラ1は、制御部10にフレキシブルプリント基板16を介して電気的に接続される、ここでの切替手段である電流方向切替回路51を有し、第2の外装部2b内に電流方向切替回路51によって電流の向きが切替制御されて、磁界の向き(S/N極)が反転制御される磁性コイルでそれぞれが形成された、ここではワイパユニット4を回動駆動させる駆動側電磁石を構成する4つの第1〜第4の電磁石52a〜52d(図11参照)が内蔵されている。
【0049】
なお、本実施の形態のワイパユニット4に配設される永久磁石45は、図10に示すように、周回りにS/N極が8分割された8極の円環状磁石が用いられている。なお、この永久磁石45は、8極に限定されることなく、少なくとも4極以上の偶数の極数であれば良いものである。
【0050】
また、4つの第1〜第4の電磁石52a〜52dは、図11に示すように、第1、第2の電磁石52a,52bまたは第3、第4の電磁石52c,52dのそれぞれが対を構成している。そして、第1、第2の電磁石52a,52bを結ぶ仮想線と、第3、第4の電磁石52c,52dを結ぶ仮想線とが永久磁石45の中心Oを通り、互いが所定の角度θを有するよう、第1、第2の電磁石52a,52bまたは第3、第4の電磁石52c,52dのそれぞれが永久磁石45の中心Oに対する点対称の位置に対角配置されている。
【0051】
また、第1、第2の電磁石52a,52bを結ぶ仮想線と、第3、第4の電磁石52c,52dを結ぶ仮想線とは、直角(90度)に交わらず、ここでは、90度以上の第1の所定の角度θと180度から所定の角度θを引いた第2の所定の角度(180−θ)となるように交わっている。
【0052】
これにより、例えば、図11に示すように、第3、第4の電磁石52c,52dがワイパユニット4の永久磁石45のS極の中央に対向しているとき、第1、第2の電磁石52a,52bが永久磁石45のS/N極の境界に対向した停止状態とする。
【0053】
この状態から、第1、第2の電磁石52a,52bに永久磁石45に作用する極性をS極となるような磁界を発生させ、第3、第4の電磁石52c,52dに永久磁石45に作用する極性をN極となるような磁界を発生させることで、永久磁石45のS/N極の境界に対向している第1、第2の電磁石52a,52bが磁力により永久磁石45のN極を引きつけ、永久磁石45のN極に対向している第3、第4の電磁石52c,52dが対向するN極を斥力により反発する。こうして、ワイパユニット4の回動初動を容易に行うことができる。
【0054】
以上に説明した構成としても、本実施の形態のカメラ1は、第1の実施の形態と同様な効果である観察窓3aに付着する付着物を除去するワイパユニット4を非接触にて回動駆動する構成とし、内蔵する構成要素に対して気密性(水密性)を確保できるばかりか、第1〜第4の電磁石52a〜52dの駆動側のユニットにより、省スペース化もできる。
【0055】
さらに、電流方向切替回路51による第1〜第4の電磁石52a〜52dの磁界切替を制御することで、ワイパユニット4の回動トルク、回動速度を簡単に制御することもできる。
【0056】
なお、第1、第2の電磁石52a,52bまたは第3、第4の電磁石52c,52dのいずれか一対を永久磁石45に作用するように磁界を発生させることで、図8に示したように、ワイパユニット4の各アーム部41,42が観察窓3a上で停止しないようにして、観察窓3aが切欠部4a(または4b)により露出して視界が遮られないような、ワイパユニット4の回動初期位置を設定することもできる。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、図12から図18を用いて、本発明に係る第3の実施の形態について、以下に説明する。なお、図12から図15は、本発明の第3の実施の形態に係り、図12は腹腔内設置カメラの構成を示す分解斜視図、図13は腹腔内設置カメラを断面で示し、内部構成を説明するための模式図、図14は図13のXIV−XIV線断面図、図15は図13のXV−XV線断面図、図16は第1の変形例の腹腔内設置カメラの構成を示す断面図、図17は図16のXVII−XVII線断面図、図18は第2の変形例の腹腔内設置カメラの構成を示す断面図である。
【0058】
また、以下の説明においても、上述した各実施の形態の医療機器であるカメラ1の構成要素と同一の構成要素について同じ符号を用い、それら構成要素の詳細な説明を省略する。
【0059】
先ず、本実施の形態の医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)1は、図12に示すように、第1の外装部2aが内部にカメラ本体部3およびワイパユニット4の上方側を覆う覆設部2eを有している。この覆設部2eは、カメラ1における下部にカメラ本体部3の観察窓3aが露出する開口2fが形成されるように、第1の外装部2aの外周部に沿って円弧状に延設している。そして、カメラ1は、第1の外装部2aと第2の外装部2bとが組付けられるとき、覆設部2eの端部が第2の外装部2bに形成された溝2gに嵌合するようになっている。
【0060】
また、本実施の形態のカメラ1は、上述の第2の実施の形態の駆動側ユニットのように、図13から図15に示す磁性コイルで形成した第1、第2の電磁石61,62を用いて、非接触にて、ワイパユニット4を回動駆動する構成となっている。
【0061】
具体的には、第1、第2の電磁石61,62は、第1の外装部2aの電源供給部60に電気的に接続され、覆設部2eの側部にそれぞれ埋設されている。これら第1、第2の電磁石61,62は、覆設部2eの第2の外装部2bに嵌合される端部側に配設される導線部63を介して直列に接続されている。
【0062】
なお、本実施の形態のワイパユニット4は、各円環部43,44に円環状の永久磁石45が嵌着されている。ここでの各永久磁石45は、周回りにS/N極が6分割された6極の円環状磁石が用いられている。そして、これら永久磁石45も、6極に限定されることなく、少なくとも4極以上の偶数の極数であれば良いものである。
【0063】
また、円環部43に配設される永久磁石45および円環部44に配設される永久磁石45は、それぞれのS/N極性が中心回りに異なるように、各円環部43,44に嵌着されている(図14,15参照)。つまり、第1、第2の電磁石61,62は、電気的に直列に接続されており、電流が流されて発生する磁界の向きが異なるため、電源供給部60に対して、近傍側と、遠方側と、で発生する極性(S/N極)がそれぞれ異なるためである。
【0064】
ここでは、電源供給部60から第1の電磁石61側へ電流が供給されると、第1の電磁石61が各永久磁石45に作用する極性が電源供給部60に近接側でS極、遠方側でN極となるような磁界を発生させ、第2の電磁石62が各永久磁石45に作用する極性が電源供給部60に近接側でN極、遠方側でS極となるような磁界を発生させる。そして、電源供給部60から第2の電磁石62側へ電流が供給されると、第1、第2の電磁石61,62が発生する磁界の向きが変わる。これら電流の流れる方向を交互に切換えて繰り返すことで、各永久磁石45への第1、第2の電磁石61,62の発生する磁性方向の切替作用によって、ワイパユニット4が回動する。
【0065】
以上に説明した構成としても、本実施の形態のカメラ1は、第1の実施の形態と同様な効果である観察窓3aに付着する付着物を除去するワイパユニット4を非接触にて回動駆動する構成とし、内蔵する構成要素に対して気密性(水密性)を確保できる。
【0066】
(第1の変形例)
なお、カメラ1は、図16に示すように、磁性コイルの第1、第2の電磁石61,62をワイパユニット4に配設しても良い。
【0067】
具体的には、ワイパユニット4は、各アーム部41,42のそれぞれに第1、第2の電磁石61,62が埋設されている。なお、ここでのワイパユニット4は、第1の外装部2aの覆設部2eおよびカメラ本体部3の嵌合軸3bとの間に配設されたOリング73,74により、第1の外装部2aの覆設部2eおよびカメラ本体部3に対する回動時の気密(水密)が保持されている。
【0068】
カメラ本体部3は、上述の嵌合軸3bを有し、この嵌合軸3bがワイパユニット4に挿通して第1の外装部2aに嵌合している。つまり、ここでのワイパユニット4は、嵌合軸3bを外挿して、第1の外装部2aとカメラ本体部3の間で回動自在に配設されている。
【0069】
また、ワイパユニット4は、第1の外装部2aとの係合端部の周方向に略半分に絶縁されて区分けされた2つの電気接点部64,65が配設されている(図17参照)。これら2つの電気接点部64,65は、直列に接続された第1、第2の電磁石61,62と電気的に接続されている。
【0070】
そして、ここでの第1の外装部2aは、ワイパユニット4の各電気接点部64,65のそれぞれに電気的に接触する2つの電極66,67が配設されている。これら2つの電極66,67は、電源供給部60の配線に接続されている。
【0071】
また、第1の外装部2aの覆設部2eには、永久磁石71が埋設されている。この永久磁石71は、覆設部2eの円弧形状に合わせて、覆設部2eの略全域に埋設され、極性(S/N)が長手軸方向に2極とし、周方向に偶数、例えば、6極に分割されているものである。
【0072】
ここでも、電源供給部60から第1の電磁石61側へ電流が供給されると、第1の電磁石61が永久磁石71に作用する極性が電源供給部60に近接側でS極、遠方側でN極となるような磁界を発生させ、第2の電磁石62が永久磁石71に作用する極性が電源供給部60に近接側でN極、遠方側でS極となるような磁界を発生させる。
【0073】
ワイパユニット4が回動すると、ワイパユニット4の各電気接点部64,65と各電極66,67との接触が入れ替わり、電源供給部60から第2の電磁石62側へ電流が供給され、第1、第2の電磁石61,62が発生する磁界の向きが変わる。これら電流の流れる方向を交互に切換えて繰り返すことで、永久磁石71への第1、第2の電磁石61,62の発生する磁性方向の切替作用によって、ワイパユニット4が回動する。
【0074】
(第2の変形例)
さらに、図18に示すように、磁性コイルの第1、第2の電磁石61,62に変えて、導線75として、この導線75で発生する磁界により、永久磁石71への磁気的作用を与えて、ワイパユニット4が回動するようにしても良い。ここでの、永久磁石71は、極性(S/N)が内外方向に2極とし、周方向に偶数、例えば、6極に分割されているものである。
【0075】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態、および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0076】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0077】
1…腹腔内設置カメラ
2a…第1の外装部
2b…第2の外装部
2c…穴部
2d…凹部
3…カメラ本体部
3a…観察窓
4…ワイパユニット
4a,4b…切欠部
5…ケーブル
5a…電気コネクタ
10…制御部
11…モータドライバ
12…モータ
13…モータ保持枠
14…モータギヤ
15…ギヤボックス
16,17…フレキシブルプリント基板
18…パッキン
21…固定ユニット
22…固定レバー
30…カメラユニット
31…固体撮像素子
32…撮像基板
33…対物レンズ
34…LED照明
40…ワイパブレード
41,42…アーム部
43,44…円環部
45…永久磁石(受動側)
46…磁石保持枠
47…永久磁石(能動側)
50…能動側回動磁石ユニット
101…腹腔
102…腹壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に導入される医療機器において、
内蔵物を気密保持し、使用前後に滅菌消毒処理される外装部と、
前記外装部内に配設され、観察窓を介して体内を撮像する撮像手段と、
前記外装部を体壁に固定する固定手段と、
前記外装部の外側に配設され、前記外装部に設けられる前記観察窓に付着した付着物を除去し、使用後に交換される付着物除去手段と、
前記外装部内に配設され、前記付着物除去手段を非接触駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
前記付着物除去手段が前記外装部に回動自在に配設され、
前記駆動手段が前記付着物除去手段を磁力により回動駆動することを特徴とする請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記付着物除去手段が第1の磁石を備え、
前記駆動手段が前記第1の磁石に磁気的作用する第2の磁石を備えていることを特徴とする請求項2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記第1の磁石および前記第2の磁石のうちの一方が円環状の永久磁石、他方が複数の電磁石であって、前記永久磁石が周方向に複数の異なる極性が交互に配設され、前記複数の電磁石を前記永久磁石に対向するように周回りに配列し、
前記電磁石の極性を切替える切替手段を有して、前記付着物除去手段を回動駆動することを特徴とする請求項3に記載の医療機器。
【請求項5】
前記複数の電磁石が4つであって、前記永久磁石の中心の点対称の位置に配置された2つの前記電磁石が前記切替手段により同一磁性に切替えられる対を構成し、
一方の対を構成する前記2つの電磁石を結ぶ第1の仮想線と、他方の対を構成する前記2つの電磁石を結ぶ第2の仮想線と、が直角に交わらない前記永久磁石の対向位置に前記4つの電磁石を配置したことを特徴とする請求項4に記載の医療機器。
【請求項6】
一方の対を構成する前記2つの電磁石が前記永久磁石の極性の中央に対向する位置にあるとき、他方の対を構成する前記2つの電磁石が前記永久磁石の異なる極性の境界に対向する位置にあることを特徴とする請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記付着物除去手段は、円筒外周部に形成された前記観察窓が露出する複数の開口部、前記複数の開口部を仕切る複数のアーム、および前記複数のアームの少なくとも1つに配設された前記観察窓の表面を払拭するワイパブレードを備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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