説明

医療機器

【課題】薬液や水分のような液体がケースの開口部を通じてケース内に侵入しないように防滴性を確保し、静電気がこの開口部を通じてケース内に侵入しないように遮蔽することで、警報音を鳴動させる医療機器を提供する。
【解決手段】ケース11内に配置されるスピーカ89を有し、スピーカ89の音をケース89の外に伝えるためにケース89には開口部310が形成されている医療機器は、スピーカ89、開口部310が形成されているケース11の内面44Bの間に配置されて静電気と液体の侵入を防ぐフィルム303と、ケース11の内面44Bにおいて突出して形成され、スピーカ89とフィルム303を収容する収容部305と、スピーカ89とケース11の内面44Bの間において液体性を確保するための密閉手段350と、スピーカ89とフィルム303と密閉手段350を収容部305内に固定する固定手段370を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカを備える医療機器に関し、特に例えば体内に薬液を注入するための携帯型の輸液ポンプ等の医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者に薬液を投入するために使用する医療機器としては、例えば輸液ポンプが知られており、この輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入するのに広く使用されている。このような輸液ポンプのうち、例えば、医療機関だけでなく、一般の家庭において在宅でも使用できるようにコンパクトに形成した携帯型の輸液ポンプが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の携帯型の輸液ポンプは、外部から導入される薬液を通す可撓性の輸液チューブを着脱式のカセットに導く構成とされている。
【0003】
具体的には、該着脱式のカセットのケース内に可撓性の輸液チューブ(以下、「チューブ」と言う。)を導入し、このケースから一部露出させたチューブに対して、回転ローラを押しつけることにより、輸液チューブに蠕動様運動を与えて、輸液チューブから薬液を所定の流速(mL/h)で注液を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−506355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の携帯型の輸液ポンプでは、輸液ポンプに問題が生じた時には患者や医療従事者に対して警報を鳴動させるためのスピーカを備えている。このスピーカは、ケース内に配置されており、スピーカの音はケースに形成された開口部を通じてケースの外に出るようになっている。このため、輸液ポンプは次のような要求を満たす必要がある。
薬液や水分等の液体がケースの開口部を通じてケース内に侵入しないように防滴性を確保し、しかも静電気がケースの開口部を通じてケース内に侵入しないように静電気を遮蔽できるようにして、スピーカ等に関連した回路にノイズが侵入しないようにしなければならない。さらに、ケースの内部に液体が入ることを防ぎ、スピーカが静電気により影響を受けることがないようにする必要もある。
そこで、本発明は、薬液や水分のような液体がケースの開口部を通じてケース内に侵入しないように防滴性を確保し、静電気がこの開口部を通じてケース内に侵入しないように遮蔽することで、医療機器に問題が生じたときには、明確な警報音を鳴動させることができる医療機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療機器は、ケースと、前記ケース内に配置されるスピーカとを有し、前記スピーカの音を前記ケースの外に伝えるために前記ケースには開口部が形成されている医療機器であって、前記スピーカと、前記開口部が形成されている前記ケースの内面の間に配置されて静電気と液体の侵入を防ぐフィルムと、前記ケースの前記内面において突出して形成され、前記スピーカと前記フィルムを収容する収容部と、前記スピーカと前記ケースの内面の間において液密性を確保するための密閉手段と、前記スピーカと前記フィルムと前記密閉手段を前記収容部内に固定する固定手段とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、薬液や水分のような液体がケースの開口部を通じてケース内に侵入しないように防滴性を確保し、静電気がこの開口部を通じてケース内に侵入しないように遮蔽することで、医療機器に問題が生じたときには、スピーカは明確な警報音を鳴動させることができる。
【0007】
好ましくは、前記密閉手段は、前記スピーカの一方の面と前記フィルムの第1面の間に配置される第1パッキンと、前記フィルムの前記第1面とは反対側の前記フィルムの第2面と前記ケースの内面の間に配置される第2パッキンと、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、第1パッキンと第2パッキンを用いるだけで、収容部内におけるスピーカとフィルムとケースの内面との間の液密性を確保できる。
【0008】
好ましくは、前記フィルムは円形状の樹脂フィルムであり、前記密閉手段の前記第1パッキンと前記第2パッキンは、シリコーンゴム,フッ素ゴム,熱可塑性エラストマーのいずれかでリング状に作られていることを特徴とする。
上記構成によれば、樹脂フィルムと第1パッキンと第2パッキンを用いるだけで、スピーカ側に液体が侵入するのを防ぎ、スピーカに静電気が侵入するのを防いでスピーカが静電気により影響を受けるのを防ぐことができ、スピーカは医療機器に問題が生じたときには、明確な警報音を鳴動させることができる。
【0009】
好ましくは、前記固定手段は、前記スピーカの他方の面に当接される取り付け具と、前記取り付け具に通したネジと、前記ケースの内面に設けられて前記ネジをねじ込むためのボス部と、により構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、スピーカと密閉手段とフィルムの積層体は、固定手段を用いて収容部内に確実に固定することができる。
【0010】
好ましくは、前記開口部には、前記ケース外部から液体が毛細管現象により内部に浸入しない程度の大きさでなる複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、液体の外部からの浸入を確実に防止して、内部構造が損傷しない液密構造を実現できる。
好ましくは、前記医療機器は、前記ケースである本体と、前記本体に配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、を有する輸液ポンプであることを特徴とする。
上記構成によれば、輸液ポンプを使用する際に、スピーカは輸液ポンプに問題が生じたときには、明確な警報音を鳴動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、薬液や水分のような液体がケースの開口部を通じてケース内に侵入しないように防滴性を確保し、静電気がこの開口部を通じてケース内に侵入しないように遮蔽することで、医療機器に問題が生じたときには、明確な警報音を鳴動させることができる医療機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の医療機器の一例である輸液ポンプの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いた様子を示す概略正面図である。
【図3】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いて、カセットを収容する様子を示す概略斜視図である。
【図4】輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】スピーカの取り付け構造を示す分解斜視図である。
【図6】図5に示すスピーカの取り付け構造のA−A線における断面図である。
【図7】スピーカの消費電力[P]等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の医療機器の一例である携帯型の輸液ポンプのカセット収納部のカバー(透明)を閉じた概略斜視図であり、図2はそのカセット収納部のカバーを開いた状態を示す概略正面図、図3は輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開き、カセットを収納した状態を示す概略斜視図である。
図1から図3に示す輸液ポンプ10は、医療機器の一例であり、例えば、略矩形の本体(筐体)11を有している。本体11は、前筐体49と後筐体44を有する。本体11は、輸液ポンプ10の構成物を収容するためのケースであり、好ましくは、耐薬品性、耐衝撃性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばハイインパクトスチロールやABS樹脂で形成されている。
【0014】
図1に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を閉めるように、開閉可能なカバー12を有しており、該カバー12を、ヒンジ13を中心として回動可能として開閉できる。カバー12は、図示しない付勢手段、例えば、ヒンジ13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、図2と図3に示すように、常時開方向に付勢されている。カバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチ等に係合されるようになっており、本体11の側部外縁に突出する解除ボタン16,16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチ等が解除されてカバー12を開けることができる。
【0015】
図1の前筐体49における符号17は、開始停止スイッチであり、この開始停止スイッチ17は、図1において横方向に「停止―開始」のスライド操作をすることができる。符号18は液晶表示装置等で形成した表示部であり、運転状態や報知情報等を表示するようになっている。これらの他に、本体11は、図示しないモード選択スイッチ等を備えることができる。
前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば点滅することにより警報内容を、例えば患者あるいは周囲の家族の人に目視で報知するようになっている。
また、前筐体49の背面には、内蔵されたブザー88とスピーカ89からの音が使用者に聞き取れるように放音孔310が配置されている。ブザー88は警報内容を警報音で報知でき、スピーカ89は警報内容を鳴動することで音声で報知する機能を有する。
【0016】
図2と図3に示すように、本体11からカバー12を開くと、カセット収納部15が露出するようになっている。カセット収納部15は、本体11の厚みの約半分程度の寸法で形成された空間であり、この空間であるカセット収納部15には、図3に示すように、輸液チューブ21を引きこみかつ導出するためのカセット20を着脱可能にセットすることができるようになっている。
【0017】
本体11のカセット収納部15内には、図1から図3には図示していないが駆動部としてのモータが配置されている。また、カセット収納部15上には、輸液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの出力軸からの駆動力が、ロータユニット31に対して図示しない皿歯車等を介して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
図2に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば、4か所以上の図示例では5つの回転ローラであるチューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rが図2の矢印方向の回転することにより、順次図3に示す輸液チューブ21を順次押圧して、輸液チューブ21に対して蠕動様運動を付与することができる。このロータユニット31は、外部から薬液を導入するための輸液チューブ21に対して圧接し、この輸液チューブ21に対して蠕動様運動をさせて、薬液を送出するための輸液送り部の一例である。本発明の実施形態では、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出しているが、これに限らず、フィンガ方式で薬液を送出するようにしても良い。
【0018】
図1から図3に示す上記閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20の輸液チューブ21の内部が閉塞されているか否かを検出する。この閉塞検出部83には、カセット検出用の突起部材99が設けられている。この突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力により、カセット収納部15内においてC方向に沿って突出している。しかし、図3に示すように、カセット20がカセット収納部15内に収納された状態では、突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力に抗してD方向に押されることで、図2に示すスイッチ134がオンとなり、このスイッチ134のオン信号は制御部100に通知されるようになっている。すなわち、閉塞検出部83は、輸液チューブ21内が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知するものである。
【0019】
図2に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、該第1のスライダ32に隣接して第2のスライダ33が配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ32はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ33のそれぞれ係止片は、後述するカセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20を保持するとともに、該カセット20に内蔵された可撓性の輸液チューブ21をロータユニット31に対して押圧することができる。図2において、第2のスライダ33の右方の下側には、カセット20をカセット収納部15に配置する際の目印となる傾斜部34aを有するマーク34と、該マーク34の下方にはカセット20を装着する際のストッパとして機能する突起部35が設けられている。
【0020】
図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
カセット20は、合成樹脂で形成された図示のような横長のケース体である。輸液チューブ21の一部分は、カセット20内に収容されており、輸液チューブ21は該ケース体の外縁に沿って矢印F方向から導入され、カセット20の右端部でほぼU字状に曲折され、そして矢印E方向に導出されている可撓性チューブ(輸液チューブともいう。)である。該輸液チューブ21に対しては、薬液が外部から矢印F方向に導入され、矢印E方向に導出され、輸液チューブ21の該矢印E方向の延長には留置針などが接続されており、輸液チューブ21内の薬液がこの留置針を通じて患者に対して輸液される。
【0021】
図3に示すように、輸液チューブ21内の輸液の移動を目視できるように、カバー12とカセット20は好ましくは透明部材で作られている。なお、カバー12には切欠き部19が設けられており、該切欠き部19から輸液チューブ21がカバー12の外部に導出されるようになっている。
また、図3に示すように、カセット20の下部の一端寄りには露出部24が形成されており、該露出部24はカセット20の一部を切欠き、輸液チューブ21の一部を外部に露出させている。この輸液チューブ21の露出部24には、ロータユニット31のチューブ押圧部31R(図2を参照)が押圧されることで、図3に示すように蠕動様運動が輸液チューブ21に付与されるようになっている。
【0022】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20のケース体を貫通している。
スリット22,23には、図2で説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33がそれぞれ入り込むようになっている。そして、図3に示すように、カバー12を矢印A方向に閉じた際には、ヒンジ13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、該カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
【0023】
このカセット20の矢印B方向への移動により、各係合用スリット22,23に入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(図2の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12を閉止した状態においては、カバー12の押圧部14と第1のスライダ32と第2のスライダ33に挟まれて固定されるとともに、輸液チューブ21はロータユニット31側に押圧されている。
【0024】
図3に示すカセット20には、縦スリット25a及び横スリット25bを有する逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26が収容されており、そのストッパ26の先端の当接部は付勢手段26aにより矢印C方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、輸液チューブ21の一部を押し潰して輸液チューブ21内の輸液の流れを止めている。横スリット25bには、スライダ29が配置されている。
図3のように、本体11のカセット収納部15内にカセット20を収納してカバー12を閉じると、カセット20の横スリット25bのスライダ29が、ストッパ26を付勢手段26aの力に抗して矢印D方向に押し込むことにより、ストッパ26の先端部は輸液チューブ21から離れる。これにより、輸液チューブ21は開放されて輸液チューブ21内の輸液の流れ止めは解除でき、輸液チューブ21には輸液を導入でき、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rの動きにより患者に対して輸液チューブ21を通じて薬液を送液できる。このとき、送液される設定流量の範囲は、例えば5〜300mL/hであり、輸液ポンプ10の総重量は、電池を入れた状態で約320gである。
【0025】
次に、図4を参照して、上述した輸液ポンプ10の電気的な構成を説明する。図4は、輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図4に示すブロック図では、本体11の前筐体49と後筐体44と、カバー12を示しており、カバー12側にはカセット20とこのカセット20の輸液チューブ21が配置されている。後筐体44には、ジャック78と電源回路80と電池(乾電池もしくは充電池)Bが配置され、ジャック78と電池Bが電源回路80に対して電気的に接続されている。ジャック78は、電源コネクタ127を介して、例えば100Vの商用交流電源に接続可能である。電源コネクタ127は、100Vの交流電源を所定の直流電圧に変換して電源回路80に供給する。
【0026】
図4に示すように、前筐体49には、ロータユニット31と、空液検出部82と、閉塞検出部83を備えている。ロータユニット31は、ギア31Gを介してモータMに連結されており、モータMはモータ駆動回路81からの駆動信号により、ロータユニット31を連続回転させることができる。回転検出回路81Tは、モータMの回転状態を検出して制御部100にモータの回転状態信号を送る。電源回路80は、モータ駆動回路18と制御部100とショックセンサ200に電気的に接続されており、モータ駆動回路18と制御部100に対して電源供給を行う。
【0027】
図4の空液検出部82と閉塞検出部83は制御部100に電気的に接続され、空液検出部82は、輸液チューブ21内が薬液により満たされているか気泡が存在するかを検出して、制御部100に通知する。閉塞検出部83は、輸液チューブ21が閉塞されて輸液チューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液が輸液チューブ21内に通過していないことを制御部100に通知する。
開始停止スイッチ17は、開始停止検出回路84に電気的に接続され、開始停止検出回路84は、開始停止スイッチ17が、図1に示す開始位置に位置されているか停止位置に位置されているかを検出して、その状態を制御部100に通知する。制御部100はCPU110を有しており、メモリ部111は、制御部100のCPU111に電気的に接続されている。メモリ部111は、CPU110との間で情報を記憶したり、記憶した情報を読み出したりするもので、しかもメモリ部111はCPU110により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)をも含んでいる。
【0028】
図4の表示部18は、制御回路18Tに電気的に接続され、点灯表示部LPは、制御回路85に電気的に接続されている。制御回路18Tと制御回路85は制御部100に電気的に接続され、制御部100の指令により、制御回路18Tは表示部18に必要な内容を表示させる。また、制御部100の指令により、制御回路85は点灯表示部18を例えば点滅させて、患者に点滅により警報があることを報知することができる。
ブザー88は、ブザー回路90に電気的に接続され、スピーカ89は、音声回路91に電気的に接続されている。ブザー回路90と音声回路91は、制御部100に電気的に接続されている。その他に、外部通信回路101が制御部100に電気的に接続されている。
【0029】
図4のブロック図に示すように、輸液ポンプ10は、ショックセンサ200と内部バッテリ201を有している。
図4に示すショックセンサ200は、本体11に加わる衝撃力を検出すためのセンサであり、例えば本体11の前筐体49内に配置されている。内部バッテリ201は、電源オフ時にショックセンサ200に電源を供給するためのバックアップ用のバッテリであり、例えばボタン電池である。
【0030】
図5は、スピーカ89の取り付け構造部300を示す分解斜視図である。図6は、図5に示すスピーカ89の取り付け構造部300のA−A線における断面図である。
図5と図6に示すスピーカ89の取り付け構造300は、ケースとしての本体11の後筐体44の内面44B内に配置されている。このスピーカ89の取り付け構造300は、例えば図2に示すように後筐体44の上部側に配置されているが、スピーカ89の取り付け構造部300の位置は、特に限定されず任意に選択できる。
【0031】
図5と図6に示すスピーカ89は、輸液ポンプに問題が生じたときに鳴動して患者や医療従事者等に対して警報内容を音声で報知する。この警報内容を報知する必要があるのは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入している際に、輸液ポンプが故障を起こしたことを、患者や医療従事者等に対して明確に至急知らせるためである。
この警報内容としては、例えば図4に示すモータMの動作不良や停止状態、電池Bの残量不足状態、薬液が輸液チューブ21内に通過していない状態、輸液ポンプを落としてショックセンサ200が予め定めた衝撃力以上の衝撃を受けたことを制御部100が検知した時等であり、スピーカ89が鳴動してその警報内容を音声で報知するために必要である。
【0032】
そこで、スピーカ89の取り付け構造部300を後筐体44の内面44Bに設けることにより、警報内容を患者や医療従事者等に明確に、確実に報知できるようにするために、薬液が後筐体44の内面44Bの開口部310を通じて本体(ケース)11内に侵入しないようにして本体11の防滴性を確保し、しかも静電気が後筐体44の内面44Bの開口部310を通じて本体11内に侵入しないようにしている。これにより、輸液ポンプに問題が生じたときには、スピーカ89は鳴動することで開口部310を通じて本体11の外部に明確な警報音を伝えることができるようになっている。
図5と図6に示すように、使用されるスピーカ89は、例えば円盤状の圧電スピーカである。圧電スピーカは、電極に信号電圧を加えることにより圧電体が歪み、その振動を音(空気の振動)として聞くものであり、小型で消費電力が少ないことから採用されているが、スピーカ89の種類は、圧電スピーカに限定されない。
図5に示すように、スピーカ89の取り付け構造部300は、取り付け具301と、リング状の第1パッキン302と、円形状のフィルム303と、リング状の第2パッキン304と、収容部305を有している。
【0033】
フィルム303は、スピーカ89と、ケースとしての本体11の後筐体44の内面44Bの間に配置されて静電気と液体の侵入を防ぐためのものである。リング状の第1パッキン302とリング状の第2パッキン304は、スピーカ89と後筐体44の内面44Bの間においてフィルム303と後筐体44の内面44Bの間の水密性(液密性)を確保するための密閉手段350を構成している。
収容部305は、後筐体44の内面44Bにおいて、中心軸LLを中心として内側に突出して形成されており、収容部305はスピーカ89とフィルム303とリング状の第1パッキン302とリング状の第2パッキン304を収容する。収容部305は、例えばケースである本体11の後筐体44の内面44B内に突出して形成されたプラスチック製の円筒状の部材である。この収容部305は、底面部309と段差部309Mを有しており、円形状の底面部309には、円形状の開口部310が複数個の貫通孔により形成されている。
1枚の取り付け具301と、2本のネジ321,322と、2つのボス部307,308は、スピーカ89とフィルム303とリング状の第1パッキン302とリング状の第2パッキン304を、収容部305内に固定する固定手段370を構成している。
【0034】
密閉手段350は、スピーカ89の一方の面89Aとフィルム303の第1面303Aの間に配置される第1パッキン302と、フィルム303の第2面303Bと後筐体44の内面44Bの段差部309M間に配置される第2パッキン304と、を有する。これにより、第1パッキン302と第2パッキン304を用いるだけで、収容部305内におけるスピーカ89とフィルム303とケースとしての本体11の内面44Bの段差部309Mとの間の液密性を確保できる。
フィルム303は例えば円形状の樹脂フィルムであり、密閉手段350は例えばシリコーンゴムによりリング状に作られている。これにより、樹脂フィルムと第1パッキン302と第2パッキン304を用いるだけで、液体が後筐体44の外部から開口部310を通じてスピーカ89側に侵入するのを防ぐとともに、静電気が後筐体44の外部から開口部310を通じてスピーカ89に侵入するのを防いで、スピーカ89やその他の本体11内の回路要素が静電気により影響を受けるのを防ぐことができる。このため、スピーカ89は液体や静電気の影響を受けずに、スピーカ89は輸液ポンプに問題が生じたときには、患者や医療従事者に対して明確な警報音を鳴動させることができる。
【0035】
固定手段370は、スピーカ89の他方の面89Bに当接される取り付け具301と、この取り付け具301に通したネジ321,322と、後筐体44の内面44Bに設けられてネジ321,322をねじ込むためのボス部307,308とにより構成されている。これにより、スピーカ89と密閉手段350とフィルム303の積層体は、固定手段370を用いて収容部305内に確実に固定することができる。
ところで、図5と図6に示す複数個の貫通孔を含む開口部310の貫通孔の直径は、薬液の表面張力を利用してこの薬液が本体11の外部から後筐体44の内面44B側に侵入しないようにできる大きさであり、しかも開口部310の貫通孔の直径はテストピンが入らない大きさに設定されている。すなわち、上述のようにこれらの開口部310の貫通孔の直径を設定するが、開口部310の貫通孔の直径が小さすぎると液体が開口部の毛細管現象により本体11の外部から開口部を通じて後筐体44の内面44B側に侵入してしまうので好ましくない。このように、開口部310の貫通孔の直径は、液体の毛細管現象による侵入を防ぐことができ、しかも医療用のテストピンが開口部310に入らないような大きさを採用している。
【0036】
なお、このテストピンとは、いたずらにより細い部材を本体11の外部から開口部310を通じて後筐体44の内面44B側に入れることを阻止するために、製品の製造工程で開口部310の貫通孔の寸法を確認するのに使用されるテスト用のピンである。
開口部310の貫通孔の直径Dの範囲としては、防滴性を持たせるために、好ましくは1.4mm〜1.6mmの範囲である。開口部310の貫通孔の直径Dが、1.4mmよりも小さいと、液体が毛細管現象により本体11の外部から開口部を通じて後筐体44の内面44B側に浸入してしまうので好ましくない。また、スピーカ音,ブザー音が聞き取れにくくなる。一方、開口部310の貫通孔の直径Dが、1.6mmよりも大きいと、テストピンが入ってしまったり、液体が浸入するので好ましくない。
【0037】
図5に示すように、収容部305の一部分には切欠き部306が形成されている。収容部305の周囲には、ボス部307,308が突出して形成されており、ボス部307,308は、収容部305の中心軸LLを中心として、180度反対の位置に形成されており、ボス部307,308にはそれぞれメネジ307A,308Aが形成されている。収容部305の内径は、スピーカ89の直径、第1パッキン302と第2パッキン304の直径、フィルム303の直径と同じに設定されている。
取り付け具301は、ほぼS字型を有する薄板部材であり、例えばステンレスのような金属あるいはプラスチックにより作られている。取り付け具301の一端部と他端部には、それぞれネジ穴301A,301Bが設けられている。
【0038】
リング状の第1パッキン302とリング状の第2パッキン304は、同じ材質で同じ大きさのものであり、例えば劣化しにくいシリコーンゴム,フッ素ゴム,熱可塑性エラストマー等により作られている。第1パッキン302と第2パッキン304は、静電気と液体を図1に示す後筐体44の外側から後筐体44の複数の開口部310を通じて本体11内に侵入させないようするための密閉部材である。
円形状のフィルム303は、第1パッキン302と第2パッキン304の間に挟まれるようにして配置される。このフィルム303は、静電気と液体の侵入を防ぎ、しかもスピーカ89が鳴動した時にビビリ音が発生しないようするために、柔らかい材料、例えばポリエチレン製のフィルムである。フィルム303の厚みは、例えば100μmである。
【0039】
次に、図5と図6を参照して、スピーカ89を取り付ける作業を説明する。
スピーカ89、第1パッキン302、フィルム303、そして第2パッキン304を、中心軸LLに沿って上から順番に積み重ねた状態で積層体330を構成して、この積層体330を収容部305内に挿入する。そして、スピーカ89の他方の面(上面)89Bに取り付け具301を載せた後、2本のネジ321,322は、取り付け具301のネジ穴301A,301Bにそれぞれ通してボス部307,308のメネジ307A,308Aにそれぞれねじ込む。
これにより、スピーカ89、第1パッキン302、フィルム303、そして第2パッキン304の積層体330は、取り付け具301により下方向に押された状態で収容部305内に収容して保持される。フィルム303と第1パッキン302と第2パッキン304は、静電気と液体の侵入を防ぎ、しかもスピーカ89が鳴動した時にビビリ音が発生しないようすることができる。
【0040】
フィルム303が、第1パッキン302と第2パッキン304の間に挟まれるようにして配置され、これらの第1パッキン302と第2パッキン304は、静電気と液体を図1に示す後筐体44の外側から後筐体44の複数の開口部310を通じて、本体11内に侵入させないようするための密閉部材であることから、積層体330と収容部305の内壁部分の間に、例えば例えば液状シリコーンゴムゴム等のポッティング(注型封止による固定)材としての充填材を流し込む作業が不要である。このため、スピーカ89等を含む積層体330の装着作業が容易にできる。
スピーカ89が搭載されている後筐体44に対応する部分にだけ、小さな開口部(貫通穴)310が形成され、スピーカ89が発生する音が開口部310を通じて本体11の外部に伝わり易い構造である。しかも、この開口部310はフィルム303で覆っており、この薄いフィルム303の周囲縁部分は、第1パッキン302と第2パッキン304による挟まれて保持され、フィルム303と後筐体44の収容部305の内面との隙間は、第1パッキン302と第2パッキン304で塞ぐことができる。これにより、輸液ポンプ10の本体11における防滴性を確保しつつ本体11内への静電気の侵入を防止している。
【0041】
本発明の実施形態の輸液ポンプは、本体11の防滴性を担保するために、図5に示すスピーカ89が搭載されている本体11の後筐体44においても薬液や水分等の液体に対して高い液密性を備える必要がある。そこで、スピーカ89が搭載されている後筐体44に対応する部分にだけに小さな開口部(貫通穴)310が形成され、スピーカ89が発生する音が開口部310を通じて本体11の外部に伝わり易い構造としている。そして、この開口部310の内側をフィルム303で覆い、フィルム303と後筐体44の収容部305の内面との隙間を第1パッキン302と第2パッキン304で塞ぐことで、防滴性を確保しつつ静電気の侵入を防止している。本発明の実施形態の輸液ポンプは、薬液がケースである本体11の開口部310を通じて本体11内に侵入しないように防滴性を担保でき、静電気がケースである本体11の開口部310を通じてケース内に侵入しないようにして、輸液ポンプに問題が生じたときには、スピーカ89は明確な警報音を鳴動させて、患者や医療従事者に対して確実に報知することができる。
【0042】
ところで、図4に示す音声回路91の音声合成集積回路(IC)には、スピーカ89から発生する警報データが保管されており、音声回路91は、制御部100の指示により、スピーカ89を動作させることで、所望の音声を鳴動させることができる。この場合に、携帯型の輸液ポンプが小型であり持ち運びが容易であるサイズと重量の範囲で、スピーカ89が、所望の音量のビープ音を鳴動させると、電池を消耗させて電源電圧の安定性を損なう場合がある。この小型の輸液ポンプでは、内部回路の電源容量が制限されるが、所望の音量のビープ音を鳴動させて警報を発しても、電源回路80の安定性や電池Bの電圧の消耗を著しく損なわないようになっている。
図7は、スピーカ89の消費電力[P]等を示す図である。
スピーカ89から発生するビープ音は、音量を振幅[V]で規定し、音程を周波数[f]で規定する。このビープ音とは、単一の波形で構成される音で、これは単純な電子回路で合成でき、輸液ポンプのような医療機器の動作上の警告音を利用者である患者や医療従事者等に対して音声で知らせ、この警告音は何らかの動作が終了した際や、異常があるために動作を続行できない場合などに発せられる。
図7(A)に示すように、スピーカ89の消費電力[P]は、斜線で示すサイン波の波形面積で規定され、電源に対する過渡的な影響は、傾き[a]で規定される。つまり、振幅[V]と周波数[f]を一定に保ち、図7(A)の消費電力[P]を電力損失の大きい正弦波や矩形波ではなく、図7(B)に示す単発のパルスにより所定の周波数を形成して消費電力[P]を調整することで消費電力の改善をする。しかも、図7(C)に示すように傾き[a]を調整することにより電源安定度の改善をすれば、電源能力に無理のないビープ音を発生することができ、防滴性の放音孔から報知することができる。
【0043】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
本発明の実施形態である携帯型の輸液ポンプ10は、医療機器の好ましい例として説明したが、これに限らず、本発明の医療機器は、例えば他の種類の輸液ポンプあるいはシリンジポンプ等、ケースに対してスピーカを備え、スピーカの音をケースの外に伝える開口部を有する医療機器をも含む。
また、図5と図6に示すスピーカ89は、円盤状であったが、その他の形状、直方体状や立方体形状のスピーカであっても良く、第1パッキン302と、フィルム303と、第2パッキン304と、収容部305の形状は、そのスピーカの形状に合わせて作る必要がある。
【符号の説明】
【0044】
10・・・輸液ポンプ(医療機器の一例)、11・・・本体(ケースともいう)、44・・・後筐体、44B・・・後筐体の内面、49・・・前筐体、89・・・スピーカ、300・・・スピーカの取り付け構造部、301・・・取り付け具、302・・・第1パッキン、303・・・フィルム、304・・・第2パッキン、305・・・収容部、330・・・積層体、350・・・密閉手段、370・・・固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に配置されるスピーカとを有し、前記スピーカの音を前記ケースの外に伝えるために前記ケースには開口部が形成されている医療機器であって、
前記スピーカと、前記開口部が形成されている前記ケースの内面の間に配置されて静電気と液体の侵入を防ぐフィルムと、
前記ケースの前記内面において突出して形成され、前記スピーカと前記フィルムを収容する収容部と、
前記スピーカと前記ケースの内面の間において液密性を確保するための密閉手段と、
前記スピーカと前記フィルムと前記密閉手段を前記収容部内に固定する固定手段と
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
前記密閉手段は、前記スピーカの一方の面と前記フィルムの第1面の間に配置される第1パッキンと、前記フィルムの前記第1面とは反対側の前記フィルムの第2面と前記ケースの内面の間に配置される第2パッキンと、を有することを特徴とする請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記フィルムは円形状の樹脂フィルムであり、前記密閉手段の前記第1パッキンと前記第2パッキンは、シリコーンゴム,フッ素ゴム,熱可塑性エラストマーのいずれかでリング状に作られていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の医療機器。
【請求項4】
前記固定手段は、前記スピーカの他方の面に当接される取り付け具と、前記取り付け具に通したネジと、前記ケースの内面に設けられて前記ネジをねじ込むためのボス部と、により構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の医療機器。
【請求項5】
前記開口部には、前記ケース外部から液体が毛細管現象により内部に浸入しない程度の大きさでなる複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医療機器。
【請求項6】
前記医療機器は、前記ケースである本体と、前記本体に配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、を有する輸液ポンプであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196339(P2012−196339A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63124(P2011−63124)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】