説明

医療用キャップ及びその製造方法

【課題】ゴム栓と、その周縁部を内壁で保持する外枠体との密着性に優れ、針刺しによってゴム栓と外枠体の位置ずれがなく、密閉性の確保に優れた医療用キャップ、その製造方法及び当該医療用キャップを備えた医療用容器を提供する。
【解決手段】本発明は、ゴム栓と、前記ゴム栓の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップであって、前記ゴム栓における接液面側の周縁部において前記下側枠部と接触する面は、当該下側枠部を成形する際の溶融樹脂との接触により軟化して融着され、前記針刺面の周縁部において前記上側枠部と接触する面は非融着状態で接触されており、更に、前記ゴム栓は、その接液面側の周縁部において前記下側枠部から押圧されることにより、当該接液面がその中央部に向かって凹状の状態で保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液容器、採血管等の医療用キャップ及びその製造方法に関する。特に、医療用に於いて針刺し可能な栓体を備えた医療用キャップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工腎臓による治療の際に使用される補充液等は点滴の場合と異なり、容量の大きい医療用容器を連結して長時間、連続的に使用される。このため、医療用容器に要求される性能も過酷な条件で評価される。例えば、瓶針を同時に3本刺し、24時間放置した後に抜針して液洩れがないことが要求される。
【0003】
前記の様な医療用容器としては、例えば、薬液等を収容する医療用バッグに、瓶針や注射針等でその薬液等を取り出し可能な医療用キャップを備えたものが用いられている。また、当該医療用キャップとしては、針刺し用のエラストマー樹脂からなる栓体を外枠体の内側に備えてなるものが用いられている。
【0004】
しかしながら、エラストマー樹脂からなる栓体を用いた従来の医療用キャップであると、前記の様に容量の大きい医療用容器を連結して長時間、連続的に使用する場合、当該医療用キャップから液洩れが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−118185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ゴム栓と、その周縁部を内壁で保持する外枠体との密着性に優れ、針刺しによってゴム栓と外枠体の位置ずれがなく、密閉性の確保に優れた医療用キャップ、その製造方法及び当該医療用キャップを備えた医療用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、医療用キャップ、その製造方法及び当該医療用キャップについて検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明に係る医療用キャップは、前記の課題を解決するために、ゴム栓と、前記ゴム栓の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップであって、前記ゴム栓における接液面側の周縁部において前記下側枠部と接触する面は、当該下側枠部を成形する際の溶融樹脂との接触により軟化して融着され、前記針刺面の周縁部において前記上側枠部と接触する面は非融着状態で接触されており、更に、前記ゴム栓は、その接液面側の周縁部において前記下側枠部から押圧されることにより、当該接液面がその中央部に向かって凹状の状態で保持されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成であると、ゴム栓はその周縁部において下側枠部から押圧されているので、ゴム栓はその周縁部から中心に向かって圧縮応力(カシメ力)が働いた状態となっている。その結果、接液面はその中央部に向かって凹状になっている。また、ゴム栓における接液面側の周縁部では、下側枠部と接触する面が、当該下側枠部を成形する際の溶融樹脂との接触により加熱され、軟化した状態で融着されている。その結果、前記構成の医療用キャップであると、接液面側の周縁部において、ゴム栓と外枠体の内壁との密着性が各段に向上しているので、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜き後の再シール性も向上させることができる。尚、前記「融着」とは、下側枠部を成形する際の溶融樹脂がゴム栓に接触することによりゴム栓の表面が軟化した状態となり、その様なゴム栓の微細な凹凸面に溶融樹脂が浸透した状態で密着していることを意味する。前記「非融着状態」とは、ゴム栓と外枠体の内壁とが融着しないで接している状態を意味する。また、前記「針刺面」とは、本発明の医療用キャップが薬液等を収容する医療用容器に装着され、薬液等を取り出す際に、ゴム栓において瓶針や注射針等による針刺しが行われる面を意味する。前記「接液面」とは、ゴム栓において薬液等が接する面を意味する。
【0010】
本発明に係る医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決するために、ゴム栓と、前記ゴム栓の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体とを有する医療用キャップの製造方法であって、共通金型と第1金型を用いて、前記ゴム栓の載置が可能な載置部を内壁に有する上側枠部を成形し、前記ゴム栓を接液面側が上側となる様にして共通金型内に載置し、前記ゴム栓の直径よりも小さい直径を有するリング状突起部を有し、かつ、前記共通金型と組み合わせた際に前記下側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2金型を用いて、前記リング状突起部によりゴム栓の接液面における周縁部を押圧して、針刺面側を押し出すように前記共通金型と型閉じし、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して下側枠部を成形することにより、前記ゴム栓における接液面側の周縁部において、前記下側枠部と接触する面が前記溶融樹脂との接触により軟化して融着されており、かつ、前記針刺面の周縁部において、前記外枠体と接触する面が非融着状態で接触していることを特徴とする。
【0011】
前記方法であると、下側枠部の成形の際に、ゴム栓の接液面における周縁部を、第2金型が有するリング状突起部で押圧した状態で行う。その結果、ゴム栓はその周縁部から中心に向かって圧縮応力(カシメ力)が働き、接液面がその中央部に向かって凹状になった状態となる。これにより、ゴム栓と下側枠部との密着性を向上させることができる。また、下側枠部の成形の際に、下側枠部を構成する樹脂が熱により溶融した状態でキャビティ内に射出されるので、この溶融樹脂に触れたゴム栓の表面は加熱され軟化する。更に、溶融樹脂は軟化したゴム栓の微細な凹凸面に浸透し、これによりゴム栓と密着した状態(即ち、融着した状態)で下側枠部の成形が行われる。その結果、接液面側の周縁部において、ゴム栓と下側枠部の内壁との密着性が各段に向上し、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も向上させた医療用キャップが得られる。
【0012】
また、本発明に係る医療用容器は、前記の課題を解決するために、薬液を収容する本体と薬液を針で取り出す取出部とを少なくとも有する医療用容器であって、前記取出部が前記に記載の医療用キャップであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態に係る医療用キャップの製造方法であって、同図(a)は上側枠部にゴム栓を挿入した様子を表し、同図(b)は共通金型と第2金型との型閉じの様子を表し、同図(c)は共通金型と第2金型を型開きした様子を表す断面図である。
【図2】前記製造方法に用いる第2金型を概略的に示す斜視図である。
【図3】前記製造方法に用いる第2金型に於けるリング状突起部の先端の形状を模式的に表した拡大図である。
【図4】前記医療用キャップに用いる各種のゴム栓を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る医療用キャップを表す断面図である。
【図6】前記医療用キャップを薬液の取出部に適用した医療用容器を模式的に表す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る医療用キャップを表す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係るプルトップ型の医療用キャップを表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図1〜図8を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0015】
本実施の形態に係る医療用キャップは、ゴム栓と、前記ゴム栓の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する構造である。
【0016】
前記上側枠部の成形は、例えば、第1金型(図示しない)と共通金型11を用いて、射出成形により行う(図1(a)参照)。第1金型と共通金型11は、その型閉じの際に、円筒状の上側枠部の成形を可能にするキャビティが形成される構造となっている。
【0017】
次に、キャビティ内に、上側枠部の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を注入する。このときの射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂は所定時間冷却される。型開き後、上側枠部12が形成される。
【0018】
次に、図1(a)に示すように、上側枠部12の内部に、ゴム栓13をその針刺面(上面)13aが下向きとなる様に載置し、下側枠部の射出成形を行う。ゴム栓13を上側枠部12の内部に載置したとき、共通金型11と針刺面13aとの間には、間隙16が形成される。
【0019】
ゴム栓13としては、その接液面13bにラミネートフィルムを有しないものを使用する。これにより、ゴム栓13の接液面13bをラミネートするための製造コストの増加を抑制することができる。また、ラミネートフィルムを接液面13bにラミネートしたゴム栓においては、瓶針や注射針等を穿刺部に穿刺した際にラミネートフィルムが破れ、フラグメントと呼称されている瓶針等の孔径以下の微細なゴム片、フィルム片(コアリング)が発生する場合がある。しかしながら、本発明は当該ラミネートフィルムを使用しないため、フィルムが俎板の代用になることによるゴム片の発生がなく、またフィルム片の発生もない。更に、ゴム弾性を損なわない薄いラミネートフィルムの形成は製造上困難であるが、本発明ではその様な問題もない。ゴム栓13は、針刺面13aの周縁部には環状リブ13cが設けられ、接液面13bの周縁部には脱落防止の為の環状溝13dが設けられた構造を有する。前記環状リブ13cは、穿刺時のゴム栓13の変形を防止可能にする。尚、本発明のゴム栓としては、前記形状のものに限定されない。他の態様については、後段にて詳述する。
【0020】
また、ゴム栓13の直径は特に限定されず、通常は10〜40mmの範囲内で設定される。更に、ゴム栓13の直径は、上側枠部12の開口部に於ける内径Rに対し、0.1mm〜0.5mm程度小さめに設定されていることが好ましい。これにより、上側枠部12内へのゴム栓13のインサートの容易性を確保している。更に、ゴム栓13の厚みTは特に限定されず、通常は3〜15mmの範囲内で設定される。接液面13bの直径は特に限定されず、通常は5〜35mmの範囲内で設定される。また、環状溝13dの深さHは特に限定されず、通常は0.5〜3mmの範囲内で設定される。
【0021】
前記間隙16の距離、すなわちゴム栓13の針刺面13aと、共通金型11における針刺面13aと対向する面との距離Dは、0.2〜1.2mmの範囲内であることが好ましく、0.3〜0.7mmの範囲内であることがより好ましい。0.2mm未満であると、針刺面13aの中央部を凸状に膨らんだ状態にすることができない場合がある。その一方、1.2mmを超えると、下側枠部21の成形において型締めをした際に変形するゴム栓13の自由度が大きくなり過ぎて、ゴム栓13が金型のリング状突起部19の内側に入り込み、その結果、例えば、ゴム栓13が一方の側に偏って保持される等、歪んだ状態で成形される場合がある。尚、前記距離Dは、プルトップ型の外枠体の場合、ゴム栓13の針刺面13aと、上側枠部12における針刺面13aと対向する面との距離になる。また、共通金型11としても上側枠部12としても、上側枠部12の内部にゴム栓13を載置したときに、間隙が生じないものを使用してもよい。
【0022】
次に、前記共通金型11と第2金型18とを用いて前記下側枠部の成形を行う。共通金型11と第2金型18を型閉じをした際、下側枠部の成形が可能なキャビティ20が形成される。また、第2金型18はリング状突起部19を備えており、かつ、型閉じの際、ゴム栓13の針刺面13a側には間隙16が形成されている為、針刺面13aはリング状突起部19により押圧されて上方に押し出された状態となっている。また、ゴム栓13の接液面13b側も、リング状突起部19により凹状に窪んだ状態となっている。更に、ゴム栓の側周部13eと上側枠部12との間には間隙が生じている。後述するプルトップ型の場合もこれに準ずる。
【0023】
ここで、前記リング状突起部19は、例えば、図2(a)に示すように、一の連続するリング状突起としてもよく、図2(b)に示すように、円周上に高さの揃った複数のピンを立て、全体としてリング状突起部19’としてもよい。
【0024】
リング状突起部19の外径dは、ゴム栓13に於ける接液面13bの周縁部を押圧でき、その直径よりも小さければ特に限定されず、インサートするゴム栓13の形状、サイズに応じて適宜設定され得る。前記接液面13bの直径をsとし、かつ、これを基準とした場合、外径dは(s−0.2)〜(s−20)mmの範囲内であることが好ましく、(s−0.4)〜(s−15)mmの範囲内であることがより好ましい。dが(s−0.2)mm未満であると、型締めの際にゴム栓13の針刺面13aの端部までがリング状突起部19の内側に入り込み、これにより、例えばゴム栓13が一方の側に偏って保持される等の歪んだ状態で成形される場合がある。その一方、dが(s−20)mmを超えると、リング状突起部19の押圧に起因したゴム栓13の変形がリング状突起部19の内側ではなく外側に向かい、その結果、ゴム栓変形の逃げ代が無くなり型閉じが困難になる場合がある。尚、前記sは特に限定されず、通常は5〜35mmの範囲内で設定される。但し、ゴム栓が段差部を有しない場合、上面の直径sは、ゴム栓の直径と一致する。従って、この様な場合のsは、後述のゴム栓の直径の数値範囲内で設定される。
【0025】
前記リング状突起部19の先端部は、図3(a)に示す様に平坦面である他、同図(b)に示すように放電加工等により表面粗さを増大させたものや、同図(c)に示すようにその先端に微小な突起を備えた形状を有していてもよい。また、同図(d)に示すように、凹凸形状であってもよい。これらの形状であると、リング状突起部19がゴム栓13の接液面13bを確実に把持した状態でゴム栓13の押圧を可能にする。
【0026】
リング状突起部19の高さh1は、ゴム栓13の厚さ等に応じて適宜設定され得る。通常は、例えば0.1〜3mmの範囲内であることが好ましく、0.2〜1.5mmの範囲内であることがより好ましい。前記h1が0.1mm未満であると、ゴム栓13の接液面13bに於ける周縁部を十分に押圧することができない場合がある。その一方、h1が3mmを超えると、周縁部に対する押圧が過度になり、ゴム栓13の接液面13bが歪んだ形状になる。また、共通金型11と第2金型18の型締めが不十分になる弊害も生じる。また、リング状突起部19の内側における高さh2は、外側の高さh1よりも低く設定され得る。通常は、例えば0.5〜5mmの範囲内であることが好ましく、1〜3mmの範囲内であることがより好ましい。前記h2が0.5mm未満であると、ゴム栓13の接液面13bの周縁部を十分に押圧できない場合がある。その一方、h2が5mmを超えると、ゴム栓13の接液面13bの周縁部に対する押圧が過度になり、キャップが変形したり、ラミネート膜が破損する場合がある。尚、本実施の形態に於いて、リング状突起部19の外側に於ける高さh1と内側における高さh2とは同一でもよいが、リング状突起部19の内側の高さh2を高くした場合、ゴム栓13に対するカシメ効果を向上させることができる。
【0027】
次に、型閉じにより形成されたキャビティ20内に、下側枠部の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を注入する。このとき、溶融樹脂が有する熱によりゴム栓13の表面が軟化する。更に、溶融樹脂は軟化したゴム栓の微細な凹凸面に浸透する。その後、溶融樹脂が所定時間冷却されると、ゴム栓13と隙間なく密着した状態(即ち、融着した状態)で下側枠部が成形される。融着の度合は下側枠部の成形条件等に応じて変化するが、例えば、熱溶融し得るラミネートフィルムを備えたゴム栓を用いた場合と比較すると、応力を加えた際にゴム栓と下側枠部が分離する程度の融着状態である。尚、ゴム栓13の針刺面13a側における周縁部15と上側枠部12の接触部分は非融着の状態となっている。
【0028】
前記溶融樹脂の温度はゴム栓13との融着を生じさせ、かつ、上側枠部12と一体的に成型される程度であれば特に限定されず、具体的には、例えば160〜250℃の範囲内であることが好ましく、170〜240℃の範囲内であることがより好ましい。尚、射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0029】
型開き後、図1(c)に示すように、上側枠部12と下側枠部21とが一体となった外枠体22が形成され、本実施の形態に係る医療用キャップ10が得られる。
【0030】
ゴム栓13の製造方法としては特に限定されず、例えば、原材料のゴム組成物を圧潰しながら行うコンプレッション成形や射出成形により製造可能である。
【0031】
前記ゴム栓13に用いる材料としては特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等が例示できる。前記ブチルゴムであると医療用キャップの気体遮断性を向上させることができる。また、天然ゴム等のゴム弾性に優れた材料であると、瓶針や注射針等を差し込んだ際に発生するコアリングを低減させることができる。
【0032】
また、本発明で使用するゴム栓の形状としては特に限定されず、適宜必要に応じて変更可能である。例えば、図4(a)に示すように、針刺面40a側に上側枠部に設けられた環状溝と嵌合させる環状リブ40dを備え、接液面40b側に下側枠部に設けられた環状リブと嵌合させる環状溝40eを備えたゴム栓40であってもよい。環状リブ40dは穿刺時のゴム栓の変形を、環状溝40eは脱落を防止可能にする。また、図4(b)に示すように、針刺面41aはフラットな面を有し、接液面41bには下側枠部に設けられた環状リブと嵌合する環状溝41dを備えるゴム栓41であってもよい。また、図4(c)に示すように、針刺面42aには上側枠部に設けられた環状リブと嵌合する環状溝42dを備え、接液面42bには下側枠部に設けられた環状リブと嵌合する環状溝42eを備えるゴム栓42であってもよい。また、図4(d)に示すように、針刺面43a側に上側枠部に設けられた環状リブと嵌合する環状溝43dを備え、接液面43b側に脱落防止の為の段差部43eを備えたゴム栓43であってもよい。環状溝43dは、穿刺時のゴム栓13の変形を防止可能にする。
【0033】
また、前記外枠体22における上側枠部12及び下側枠部21を構成する材料としては、合成樹脂のうち、医療用用途としての安全性が確立されたものであれば足りる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、プルトップ型の場合、上側枠部12を構成する材料としては、例えば、熱可塑性エラストマーが好ましい。より具体的には、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に、上側枠部12又は下側枠部21の少なくとも何れかに着色剤等の任意の成分を添加してもよい。
【0034】
本実施の形態の製造方法により得られる医療用キャップ10において、針刺面13aは、中央部に向かって凸状に膨らんだ状態となっている。その一方、ゴム栓13の接液面13bはその周縁部において下側枠部21の融着面から圧縮応力を受けているので、中央部が凹状に窪んだ状態となっている。これにより、本実施の形態に係る医療用キャップ10は、針抜けに対する保持力、及び復元力が向上し、針抜け後の再シール性にも優れたものにできる。尚、ゴム栓ではなく熱可塑性エラストマー樹脂からなる栓体であると、同様の条件下で下側枠部を成形した場合、栓体の接液面側における中央部は凸状に膨らんだ状態となる。これは、下側枠部を形成する溶融樹脂が共通金型と第2金型のキャビティ内に注入された際に、当該溶融樹脂の熱が栓体の接液面側における周縁部を軟化させたことにより、その周縁部のみ圧縮応力が緩和され応力の方向が変化した結果と推察される。
【0035】
以上の様にして得られる本発明の医療用キャップ10は、例えば、図6に示すように、薬液を収容する本体51と薬液を針で取り出す取出部52とを少なくとも有する医療用容器50において、取出部52に適用することができる。この場合において、医療用容器50が取出部52に連結された連結用チューブ53により相互に連結されており、薬液の長時間の連続供給を可能にしている。この様な方法により各医療用容器50を連結すると、全ての医療用容器中に薬液を並行して同様に消費させることが可能になる。各連結用チューブ53には針が設けられており、取出部52の医療用キャップ10におけるゴム栓の針刺面13aに穿刺されている。更に、複数の医療用容器50の内の任意の一つには、薬液取出用チューブ54が取り付けられている。当該薬液取出用チューブ54には針が設けられており、医療用キャップ10のゴム栓における針刺面13aに穿刺されている。本発明の医療用キャップであると、この様な使用態様に於いて連続使用をしても液洩れを防止すると共に、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も良好である。
【0036】
(その他の事項)
本発明は前記に示した態様に限定されるものではなく、当該発明の効果を奏する範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記では、外枠体として下側枠部がフランジを有する構造を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されない。例えば、図7(a)に示す医療用キャップ70のように、上側枠部71とフランジの無い下側枠部72とが一体的に成形された外枠体73を備えるものが例示できる。ゴム栓13と下側枠部72との接触面は融着した状態となっている。また、ゴム栓13と上側枠部71とは非融着状態で接している。この様な構造の医療用キャップ70であっても、ゴム栓13と外枠体73の内壁との密着性を向上させるので、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も向上させることができる。
【0037】
また、図7(b)に示す医療用キャップ70’のように、上側枠部74とフランジの無い下側枠部75が相互に嵌合して一体的に成形された外枠体76を備えるものであってもよい。この様な構造であると、上側枠部74と下側枠部75をより一層接合接合することができ、機械的強度が向上する。この様な構造の医療用キャップ70’であっても、ゴム栓13と外枠体76の内壁との密着性を向上させるので、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜け後の再シール性も向上させることができる。
【0038】
また、本発明は、図8に示すように、上側枠部12’がプルトップ型の外枠体22’を備えた態様の医療用キャップ30であってもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0040】
(実施例1)
本実施例では、前述の図1に示した方法に従い、図5に示す医療用キャップ10の製造を行った。外枠体22の材料としてはポリプロピレンを用い、ゴム栓13の材料としてはイソプレンを用いた。また、成形機としては、日精樹脂工業(株)製の射出成形機(商品名;DC100−200)を使用した。
【0041】
前記ゴム栓13の形状寸法は下記の通りである。
ゴム栓13の直径R:24mm
針刺面13a及び接液面13bの直径S:18mm
環状溝13dの深さH:1.5mm
厚さT :10.95mm
【0042】
リング状突起部の形状寸法は下記の通りである。
外側の高さh1:0.5mm
内側の高さh2:1.4mm
幅w:0.5mm
外径d:20mm
先端形状:プレーン
【0043】
上側枠部12の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:220℃
射出圧力 :4.9MPa
射出時間 :3.4秒
第1金型温度及び共通金型温度:43℃
【0044】
下側枠部21の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:220℃
射出圧力 :3.9MPa
射出時間 :3.2秒
第2金型温度及び共通金型温度:43℃
【0045】
(比較例1)
本比較例においては、下側枠部の成形に用いる第2金型として、リング状突条部を備えないものを使用したこと以外は、前記実施例1と同様にして本比較例に係る医療用キャップを作製した。
【0046】
(比較例2)
本比較例においては、ゴム栓に代えてスチレン系熱可塑性エラストマーからなる栓体を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして本比較例に係る医療用キャップを作製した。
【0047】
(穿刺針の保持力試験)
前記実施例及び比較例で得られた医療用キャップに対し、オートクレーブにより106℃で25分間の滅菌処理を行った。その様な医療用キャップを40サンプル用意し、金属針(16G金属針)及び樹脂針(400樹脂針)をそれぞれゴム栓又は栓体に刺したときの保持力について調べた。各医療用キャップを引っ張り圧縮試験機にセットし、ゴム栓又は栓体の中央部に、前記試験機に取り付けた下記の穿刺針を垂直に突き刺した後、該穿刺針を200mm/minの速度で上昇させ、該穿刺針がゴム栓又は栓体から抜けるときの力(単位;N)を測定した。穿刺針としては、前記2種類の針を用いて行い、それぞれ最大値、最小値、平均値及び標準偏差を求めた。結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(穿刺針の液漏れ試験)
前記実施例及び比較例で得られた医療用キャップに対し、オートクレーブにより106℃で25分間の滅菌処理を行った。次に、各医療用キャップを試験用圧力缶体に取り付け、その点滴部位にテルモ株式会社製連結管(商品名;TC−00503B)を穿刺し4時間放置した。その後、抜針し、液漏れするかを調べた。尚、検体数は200個とした。結果を下記表2に示す。
【0050】
次に、前記と同様にして滅菌処理を行った各医療用キャップを2Lの水を入れた2Lバッグに取り付け、その針刺し部位にニプロ(株)製連結管(商品名;15−D12)を3本穿刺した。その状態で24時間放置後、抜針しその時の液漏れ量を測定した。尚、検体数は200個とした。結果を下記表2に示す。
【0051】
【表2】

【符号の説明】
【0052】
10、30、70、70’ 医療用キャップ
11 共通金型
12、12’ 上側枠部
13 ゴム栓
13a 針刺面
13b 接液面
13c 環状リブ
13d 環状溝
13e 側周部
15 周縁部
16 間隙
18 金型
19 リング状突起部
20 キャビティ
21 下側枠部
22、22’ 外枠体
40〜47 ゴム栓
40a〜47a 針刺面
40b〜47b 接液面
40c〜47c 側周部
40d、46d 環状リブ
40e、41d、44d、44e、45d 環状溝
42d、45e、46e、47d 段差部
50 医療用容器
51 本体
52 取出部
53 連結用チューブ
54 薬液取出用チューブ
71、74 上側枠部
72、75 下側枠部
73、76 外枠体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム栓と、前記ゴム栓の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップであって、
前記ゴム栓における接液面側の周縁部において前記下側枠部と接触する面は、当該下側枠部を成形する際の溶融樹脂との接触により軟化して融着され、前記針刺面の周縁部において前記上側枠部と接触する面は非融着状態で接触されており、
更に、前記ゴム栓は、その接液面側の周縁部において前記下側枠部から押圧されることにより、当該接液面がその中央部に向かって凹状の状態で保持されている医療用キャップ。
【請求項2】
ゴム栓と、前記ゴム栓の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体とを有する医療用キャップの製造方法であって、
共通金型と第1金型を用いて、前記ゴム栓の載置が可能な載置部を内壁に有する上側枠部を成形し、
前記ゴム栓を接液面側が上側となる様にして共通金型内に載置し、
前記ゴム栓の直径よりも小さい直径を有するリング状突起部を有し、かつ、前記共通金型と組み合わせた際に前記下側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2金型を用いて、前記リング状突起部によりゴム栓の接液面における周縁部を押圧して、針刺面側を押し出すように前記共通金型と型閉じし、
前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して下側枠部を成形することにより、
前記ゴム栓における接液面側の周縁部において、前記下側枠部と接触する面が前記溶融樹脂との接触により軟化して融着されており、かつ、前記針刺面の周縁部において、前記外枠体と接触する面が非融着状態で接触している医療用キャップの製造方法。
【請求項3】
薬液を収容する本体と薬液を針で取り出す取出部とを少なくとも有する医療用容器であって、前記取出部が請求項1に記載の医療用キャップであることを特徴とする医療用容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−220758(P2010−220758A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70375(P2009−70375)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000225278)内外化成株式会社 (27)
【Fターム(参考)】