説明

医療用コイルおよび医療用コイルの製造方法

【課題】患部の痛みを迅速に和らげることができる医療用コイルを提供する。
【解決手段】導線36と、導線36の周囲を被覆する絶縁被覆層37と、絶縁被覆層37の周囲を被覆する融着被覆層39とを備えた融着導線34を用いて、同じ方向に巻回された2つの渦巻き状コイル32a,32bからなり、2つの渦巻き状コイル32a,32bは、渦巻きの内側の端部どうしが電気的に接続され、渦巻きの外側の端部どうしが電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療に用いられるコイルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の痛みや凝りを和らげるために、患部に磁気をあてて治療する構成が従来より知られている。
例えば、図7に示すように、コイル2をリング状に形成し、このコイルリング1の中心には球状の突起物3が設けられている構成がすでに開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この構成によれば、このようなコイルリング1を生体疾患部分に押し当てることで疾患部分のプラスイオン蓄積を中和させ、疾患部分の痛みを和らげる効果があるとされている。
【0003】
さらに、図8に示すように、長尺方向に螺旋状に巻回したコイル2をテープ4によって患部に貼り付ける構成についてもすでに開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この構成によれば、コイル2自体を人体に押しつける押圧効果と微少電流による血行促進効果によって患部の凝りや痛みを和らげる作用があるとされている。
【0004】
【特許文献1】実開平5−62265号公報
【特許文献2】特開平8−117348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような構成のコイルは、コイル自身あるいは突起物を用いて患部を押圧する構成を採用しており、押圧による血流の向上などが望まれるものである。したがって、上述したようなコイルにおける治療は、慢性化した痛みに対して時間をかけて直していくということでは効果が有るかもしれない。
しかし、急激な痛みに対してはあまり劇的な効果が望めないという課題がある。
【0006】
本発明者等は、痛みを迅速に和らげることができる医療具について鋭意研究を重ねたところ、本発明の構成に想到した。
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、患部の痛みを迅速に和らげることができる医療用コイルおよびそれの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる医療用コイルによれば、導線と、導線の周囲を被覆する絶縁被覆層と、該絶縁被覆層の周囲を被覆する融着被覆層とを備えた融着導線を用いて、同じ方向に巻回された2つの渦巻き状コイルからなり、前記2つの渦巻き状コイルは、渦巻きの内側の端部どうしが電気的に接続され、渦巻きの外側の端部どうしが電気的に接続されていることを特徴としている。
この構成の医療用コイルを患部に当接させることにより、患部の痛みが迅速に和らぐことが実証されている。しかし、その原理については明らかではない。
【0009】
また、前記2つの渦巻き状コイルは、厚さ方向に隣接し、且つ径方向には同一位置となるように巻回されていることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明にかかる医療用コイルの製造方法によれば、請求項1または請求項2記載の医療用コイルを製造する製造方法であって、所定長さの直線状の融着導線の長さ方向中心を把持し、前記融着導線の両端部をそれぞれ同じテンションで引っ張りながら、前記把持した中心を巻き始めとして、前記融着導線を内側から外側に向けて巻回して渦巻き状に形成し、渦巻きの最外周に位置する巻線の両端部の融着被覆層および絶縁被覆層を剥がして導線どうしを電気的に接続固定することを特徴としている。
【0011】
また、前記融着導線を巻回中に、融着被覆層によって隣接する融着導線どうしを固定して成形することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用コイルによれば、患部の痛みや凝りを迅速に和らげることができる。
また、本発明の医療用コイルの製造方法によれば、患部の痛みや凝りを迅速に和らげることができるコイルを確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る医療用コイルの好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、医療用コイルの全体構成を示す斜視図であり、図2は、図1で示した医療用コイル30の一部(図1のA部分)を厚さ方向に切断したところの断面図を示す。
【0014】
本実施形態における医療用コイル30は、同じ方向に渦巻き状に平巻きに巻回されて構成されている2つの渦巻き状コイル32a,32bを備えている。
医療用コイル30は、このような2つの渦巻き状コイル32a,32bが、医療用コイル30の厚さ方向に重ねられて配置され、平面視するとほぼ円形に形成されている。
【0015】
また、各渦巻き状コイル32a,32bは、渦巻きの内側の端部どうしが電気的に接続され、渦巻きの外側の端部どうしが電気的に接続されている。図1では、渦巻きの外側の端部どうしが接続されている箇所31が塗りつぶされて図示されている。
【0016】
各渦巻き状コイルのうち、一方の渦巻き状コイル32aは医療用コイル30の厚さ方向(厚さ方向を上下方向とした場合)の上側に配置され、他方の渦巻き状コイル32bは厚さ方向の下側に配置されるが、このとき各渦巻き状コイル32a,32bを構成する融着導線34a,34bは医療用コイル30の径方向の位置が一致するように配置されている。すなわち、図2のように断面視すると、上側の渦巻き状コイル32aの融着導線34aと下側の渦巻き状コイル32bの融着導線34bは、厚さ方向(上下方向)に沿って一直線に配置されており、径方向(横方向)にずれないように設けられる。
【0017】
なお、各渦巻き状コイル32a,32bを構成する融着導線34としては、導線36(銅などの金属製)の周囲をポリウレタン等の絶縁被覆37で被覆し、さらに絶縁被覆37の周囲を融着被覆39で被覆したものを採用している。
本実施形態では、融着被覆として熱融着性のある樹脂を採用しており、具体的には、ポリエステル系やポリアミド系の熱可塑性エラストマーを用いている。
【0018】
なお、図1および図2では、融着導線として丸線(断面が円形)を用いた場合について図示した。
しかし、本発明の医療用コイルでは、図3に示すように、平角線の融着導線44を用いてもよい。平角線である融着導線44の断面は正方形状となっている。
【0019】
平角線の融着導線44も、上述した丸線と同様の構成を有しており、断面正方形状の導線56(銅などの金属製)の周囲をポリウレタン等の絶縁被覆57で被覆し、さらに絶縁被覆57の周囲を融着被覆59で被覆したものを採用している。本実施形態では、融着被覆として熱融着性のある樹脂を採用しており、具体的には、ポリエステル系やポリアミド系の熱可塑性エラストマーを用いている。
【0020】
このような平角線44を用いた渦巻き状コイル42a,42bのうち一方の渦巻き状コイル42aは医療用コイル30の厚さ方向(厚さ方向を上下方向とした場合)の上側に配置され、他方の渦巻き状コイル42bは厚さ方向の下側に配置されるが、このとき各融着導線44a,44bは医療用コイル30の径方向の位置が一致するように配置されている。すなわち、上側の渦巻き状コイル42aの融着導線44aと下側の渦巻き状コイル42bの融着導線44bは、厚さ方向(上下方向)に沿って一直線に配置されており、径方向(横方向)にずれないように設けられる。
【0021】
上述してきた医療用コイル30の製造方法について、図4に基づいて説明する。なお、以下では、融着導線として、丸線を例として図示しているが、平角線であっても同様の方法を用いることができる。
まず、直線状の融着導線34を所定の長さ分だけ用意する(a)。次に、融着導線34を巻回するための巻き治具47に、融着導線34の長さ方向の中心を挟み込む(b)。
【0022】
ここで巻き治具47について説明する。巻き治具47は、互いに所定間隔をあけて配置された二本の棒状部材49,49を具備しており、この二本の棒状部材49,49の中間位置を軸線として回転可能に設けられている。すなわち、二本の棒状部材49,49は、モータ等の駆動手段(図示せず)に回転可能に設けられた基台50に取り付けられるか、または一体に構成されており、駆動手段の回転によって回転して融着導線34を巻き付ける。
【0023】
図4の製造工程の説明に戻る。
融着導線34の長さ方向の中心を、巻き治具47の二本の棒状部材49,49の間に挟み込んだのち、駆動手段を駆動させて二本の棒状部材49,49の周囲に融着導線34を渦巻き状となるように巻き付けていく(c)。このように、直線状の融着導線34の中心を把持し、この把持した部位が渦巻きの中心となるように、挟み込んだ部分を水平に回転させて外側に向かって巻き付けることによって、渦巻き状のコイルを生成できる。
【0024】
また、図4(c)に示すように、巻き付けの初期の状態では、棒状部材49,49の間に融着導線34を挟んですぐに巻き始めるのではなく、融着導線34の中心を挟んで左右両側で高さをずらしてから巻き始める。ずらす幅としては、それぞれ融着導線0.5本分ずらせばよい。このように、融着導線34の中心を挟んで両側の位置を高さ(コイルの厚さ)方向にそれぞれ融着導線0.5本分ずらすことで、中心を挟んで左右両側で巻回される融着導線34が上下方向(厚さ方向)で密着した状態で巻回される。
【0025】
なお、(c)および(d)に示すように、巻き付け時には、融着導線34の両端部34a,34bはそれぞれ同じ力で引っ張り、巻き終わり時にこの両端部34a,34bの位置が同じ位置となるようにする。
なお、融着導線34を渦巻き状に巻き付けていく際には、巻き付けた融着導線34を固定するために、巻線どうしを融着させるべく温風を巻き付け部分に吹き付ける。
【0026】
融着導線34の巻き付けが終了したのち、渦巻きの最外周の巻き終わり部分における融着導線34の両端部34a、34bの被覆を剥ぎ、両端部34a、34bをはんだ付け等で接続する。これにより、本実施形態における医療用コイルの製造が完了する。
【0027】
次に、図5に本発明の医療用コイルの等価回路を示し、図6に医療用コイルの実施形態について説明する。
本発明の医療用コイル30の等価回路は、図5に示すように構造的に巻き方向が逆となっている2つのコイル32a,32bが直列に接続されているものと考えて良い。
【0028】
この等価回路における上側のコイル32aの一端部32axと下側のコイル32bの他端部32byは、互いに接続された構成となっている。また、図5では図示していないが、実際には、上側のコイル32aの他端部32ayと、下側のコイル32bの一端部32bxとは接続されている。
なお、このような2つのコイルの接続を、差動接続と称する場合もある。差動接続とは、このような2つのコイルに電流を流した場合には、各コイルで生じる磁束が逆向きとなるような接続方法である。
【0029】
このように、巻き方向がそれぞれ逆の2つのコイル32a,32bが直列に接続されている医療用コイル30において、以下、便宜上図面の上側に位置するコイルを第1コイル32a、下側に位置するコイルを第2コイル32bと称する。
【0030】
例えば下方から上方に向けて磁束密度Bが存在するような場所に本発明の医療用コイル30が置かれた場合について考えてみる。
通常、磁界中にコイルを置いた場合、磁界の磁束密度Bに変動が無ければ、このコイルは動作しない。ただし、コイルに外部から電流が流された場合には、フレミング左手の法則に基づいて磁界中を動くようにコイルに力がはたらく。本発明の医療用コイルでは外部からの電流の印加はないため、フレミングの法則に基づく力は発生しない。
【0031】
また、磁束密度Bが変化している場合、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいて、磁界の変化を打ち消すような方向に両コイル32a,32bに誘導起電力が生じる。
このように考えると、この医療用コイルの作用は、磁界が変化している状態で現れるのではないかと考えられる。
【0032】
例えば、図6に示すように、人体Xからは微弱な磁界(磁束密度B)が発生しており、この磁界は常に変化しているという仮説をたててみる。これは、人体X内では、筋電流Iが流れており、筋電流Iに基づく磁界が人体Xの外側に生じているものであると考えられる。
【0033】
そして、この変化する磁界に対して本発明の医療用コイル30を置いてみる。すると、逆方向に巻かれた第1コイル32aおよび第2コイル32bの中心それぞれに変化する磁界が貫通し、第1コイル32aおよび第2コイル32bには、磁界の変化を打ち消す方向への逆起電力が生じようとするが、第1コイル32aと第2コイル32bは直列に接続されているので、実際に電流は流れないはずである。
このように、起電力が発生しようとしても、実際には各コイルに流れる電流が相殺して流れない状態となることで、コイル内部で高いエネルギー場が生じている可能性がある。そして、このエネルギー場の影響により、患部の痛みが治まるのではないかとも考えられる。
【0034】
このように、医療用コイル30内ではマクスウェルの古典電磁気学に基づく動作原理では、なぜ人体の痛みや凝りが迅速に和らぐのかは不明である。
なお、説として、人体の患部からは異常な電磁波な出力されており、この医療用コイルが異常な電磁波を吸収するからだという説が考えられている。
さらに別の説として、患部においては体内電流が異常となっており、体内電流が滞留していると考えられるが、医療用コイルが滞留している電流を上手く流すことができるのではないかという説も考えられている。
【0035】
次に、試験的に医療用コイルを使用した患者(病院にかかるほどではなく、普通に日常生活をしている)の臨床結果を記載する。
(1)74歳の男性。冬の朝、仕事を始めると鼻水が流れ出すという疾患があった。しかし、医療用コイルを鼻の両脇に貼り付けると、鼻水はすぐに止まった。
(2)72歳の女性。腰痛のため前屈みであるいていたが、医療用コイルを腰に3つ貼り付けたところ、少しずつ直立して歩けるようになった。
(3)75歳の男性。就寝中に左足のすねがつった。医療用コイルを患部の最も痛い箇所に貼り付けたところ、数秒で痛みが治まった。
【0036】
(4)60歳の男性。足のふくらはぎがつった。医療用コイルを患部にあてたところ、その部分の痛みがすぐに無くなった。指先で、医療用コイルを少しずつ移動させると、移動した箇所における痛みがすぐに消えていった。また、難聴であるため、耳の後に医療用コイルを貼り付けてみた。すると、雑音が少し減って聞こえやすくなったような気がした。
なお、ふくらはぎがつったときに、ズボンの上から医療用コイルを当ててみたが効果が無かった。
(5)72歳の女性。花粉症。耳の後に医療用コイルを貼ったところ、すぐに鼻水が止まった。
【0037】
(6)66歳の男性。慢性的な腰痛があり、腰の痛む部分2箇所に医療用コイルを貼り付けた。1日以上そのまま貼り付けたが、効果は無かった。
(7)33歳の男性。長時間のパソコン作業による肩こり、頭痛があった。肩から首筋にかけて医療用コイルを左右2個ずつ6時間貼り付けた。肩こりは治らなかったが、頭痛は弱くなった。
(8)58歳の男性。肩甲骨に痛みがあったので、医療用コイルを貼ったところ痛みが無くなった。痛みが無くなったので、医療コイルを剥がしたところ、後日同じ箇所が痛くなった。そこで、医療用コイルを該当箇所に貼ったところ痛みが無くなった。
【0038】
上述したいくつかの例からすると、瞬間的な症例、例えば外部または内部の要因による筋肉痙攣、鼻水、花粉症などには、非常に効果が高い。
一方、慢性的な症例、例えば慢性的な腰痛や肩凝りなどに対しては効果が薄い。
【0039】
なお、医療用コイルを貼った箇所が暖まってくるという声が聞かれた。したがって、温熱療法的な作用効果もあるかもしれない。
【0040】
以上、本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る医療用コイルの斜視図である。
【図2】図1に示した医療用コイルの断面図である。
【図3】平角線を用いた医療用コイルの断面図である。
【図4】医療用コイルの製造工程を説明する説明図である。
【図5】医療用コイルの等価回路図である。
【図6】医療用コイルの原理説明図である。
【図7】医療用に用いられるとした従来のコイルの説明図である。
【図8】従来のコイルの他の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
30 医療用コイル
31 接続部分
32a,32b 渦巻き状コイル
34 融着導線
37 絶縁被覆層
39 融着被覆層
47 巻き治具
49 棒状部材
50 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線と、導線の周囲を被覆する絶縁被覆層と、該絶縁被覆層の周囲を被覆する融着被覆層とを備えた融着導線を用いて、同じ方向に巻回された2つの渦巻き状コイルからなり、
前記2つの渦巻き状コイルは、渦巻きの内側の端部どうしが電気的に接続され、渦巻きの外側の端部どうしが電気的に接続されていることを特徴とする医療用コイル。
【請求項2】
前記2つの渦巻き状コイルは、
厚さ方向に隣接し、且つ径方向には同一位置となるように巻回されていることを特徴とする請求項1記載の医療用コイル。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の医療用コイルを製造する製造方法であって、
所定長さの直線状の融着導線の長さ方向中心を把持し、
前記融着導線の両端部をそれぞれ同じテンションで引っ張りながら、前記把持した中心を巻き始めとして、前記融着導線を内側から外側に向けて巻回して渦巻き状に形成し、
渦巻きの最外周に位置する巻線の両端部の融着被覆層および絶縁被覆層を剥がして導線どうしを電気的に接続固定することを特徴とする医療用コイルの製造方法。
【請求項4】
前記融着導線を巻回中に融着被覆層によって、隣接する融着導線どうしを固定して成形することを特徴とする請求項3記載の医療用コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−29518(P2010−29518A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196158(P2008−196158)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(508230466)
【出願人】(508231234)
【出願人】(508230488)
【Fターム(参考)】