説明

医療用ゴム部材、滅菌済医療用ゴム部材及びゴム組成物

【課題】γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材、γ線等の照射による放射線滅菌処理してなる滅菌済医療用ゴム部材、及び、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材を製造するのに用いられるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】100質量部のシリコーンゴムと、20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有することを特徴とする医療用ゴム部材、50kgyの照射量でγ線を照射する放射線滅菌処理前後における引裂き強度の変化率が−25%以上0%以下であることを特徴とする滅菌済医療用ゴム部材、及び、100質量部のシリコーンゴムと、8質量部以上30質量部以下の無水ケイ酸とを含む、医療用ゴム部材に使用されるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ゴム部材、滅菌済医療用ゴム部材及びゴム組成物に関し、さらに詳しくは、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材、γ線等の照射による放射線滅菌処理してなる滅菌済医療用ゴム部材及び医療用ゴム部材を製造するのに使用されるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器等に、金属材料に代わってゴム材料又は樹脂材料等で形成された医療用ゴム部材又は医療用樹脂部材(以下、これらを医療用部材と称する。)が用いられている。このような医療用ゴム部材として、例えば、薬液瓶の薬液注入口を閉塞する医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ、人工心臓等の血液回路又は人工透析等の体液回路等における混注管に設けられる医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ等が挙げられ、また、これらの医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ等であって、注射針等が刺される針刺栓等が挙げられる。一方、医療用樹脂部材として、例えば、カテーテル、チューブ、輸血バッグ及び血液バッグ等が挙げられる。
【0003】
これらの医療用部材は、通常、製造の最終段階で、又は、使用前に、滅菌処理される。滅菌処理は、例えば、医療用部材を高温高圧で滅菌する高圧蒸気滅菌処理、医療用部材をエチレンオキサイドで処理するエチレンオキサイド滅菌処理、及び、医療用部材に放射線を照射する放射線滅菌処理等が挙げられる。これらの滅菌処理の中でも、適用範囲が広く、滅菌処理後の安全性を確保することができるうえ、医療用部材を十分に滅菌することができる放射線滅菌処理が、近年、採用されるようになってきている。
【0004】
ところが、放射線滅菌処理によって医療用部材を滅菌すると、特に、医療用部材を高い照射量で十分に滅菌すると、医療用部材を構成するゴム材料又は樹脂材料のその物性等が変化し、医療用部材が劣化することがある。放射線照射に伴う劣化を抑えることを目的とする医療用部材として、例えば、「生体内で利用される高分子に、高分子との比を0.01〜20重量部の範囲で多官能トリアジン化合物を含有させた組成物から成る放射線滅菌可能な医用材料」が特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材、γ線等の照射による放射線滅菌処理してなる滅菌済医療用ゴム部材、及び、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材を製造するのに用いられるゴム組成物を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、100質量部のシリコーンゴムと、20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有するゴム組成物を成形して成ることを特徴とする医療用ゴム部材であり、
請求項2は、前記医療用ゴム部材は、注射針が刺される医療用針刺栓である請求項1に記載の医療用ゴム部材であり、
請求項3は、前記医療用針刺栓は、医療用ゴムキャップ又は医療用ゴムボタンである請求項2に記載の医療用ゴム部材であり、
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用ゴム部材に放射線滅菌処理を施してなる滅菌済医療用ゴム部材であり、
請求項5は、前記滅菌済医療用ゴム部材は、50kgyの照射量でγ線を照射する放射線滅菌処理前後における引裂き強度の変化率が−25%以上0%以下であることを特徴とする請求項4に記載の滅菌済医療用ゴム部材であり、
請求項6は、100質量部のシリコーンゴムと、20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含む、医療用ゴム部材に使用されるゴム組成物である。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る医療用ゴム部材は、100質量部のシリコーンゴムと20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有するゴム組成物を成形して成るから、放射線滅菌処理において、γ線等の放射線を照射しても、その物性等が大きく変化することはない。したがって、この発明によれば、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材を提供することができ、また、γ線等の照射による放射線滅菌処理してなる滅菌済医療用ゴム部材を提供することができる。
【0009】
また、この発明に係るゴム組成物は、医療用ゴム部材としたときに、放射線滅菌処理において、γ線等の放射線が照射されても、その物性等が大きく変化することはないから、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材を製造するのに使用される。したがって、この発明によれば、γ線等の照射による放射線滅菌を行っても劣化しにくい医療用ゴム部材を製造するのに用いられるゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、この発明に係るゴム組成物について説明する。このゴム組成物は、100質量部のシリコーンゴムと20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有する。前記質量割合の無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有すると、医療用ゴム部材としたときに、放射線滅菌処理において、γ線等の放射線が照射されても、医療用ゴム部材の物性等が大きく変化することを防止することができる。その理由の1つとして、例えば、無水ケイ酸が医療用ゴム部材の表面全体を覆っていなくても、医療用ゴム部材に含有される無水ケイ酸によって、放射線照射による医療用ゴム部材内部への酸素分子の侵入及び/又は拡散を効果的に防ぐことができ、それ故、シリコーンゴムの分解を抑えて、医療用ゴム部材の耐放射線性が向上することが考えられる。したがって、この発明に係るゴム組成物は、医療用ゴム部材を製造するのに好適に使用される。
【0011】
ゴム組成物に含有される前記シリコーンゴムは、平均組成式:RSi0(4−n)/2(Rは、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12の一価脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1〜6の一価脂肪族炭化水素基であり、nは1.8〜2.5、好ましくは2.0〜2.2である。)で示されるオルガノポリシロキサンを好適に挙げることができる。
【0012】
前記Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0013】
このオルガノポリシロキサンは、分子中に少なくとも2個の前記アルケニル基を有するのが好ましく、すなわち、前記Rは、アルキル基及びアルケニル基であるのが好ましく、メチル基及びビニル基等が特に好ましい。アルキル基とアルケニル基との割合は、アルキル基が98〜99.999モル%で、アルケニル基が0.001〜2モル%であるのが好ましい。
【0014】
アルキル基及びアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンは、例えば、アルキルビニルポリシロキサン及び/又はジアルキルポリシロキサン等が挙げられる。ゴム組成物がこのようなシリコーンゴムを含有していると、医療用ゴム部材としたときに、医療用ゴム部材の耐薬品性、安全性及びゴム弾性等に優れる。シリコーンゴムは、これらの中でも、アルケニル基を有しないシリコーンゴムとしてジメチルポリシロキサン等が好ましく、アルケニル基を有するシリコーンゴムとしてメチルビニルポリシロキサン等が好ましい。
【0015】
オルガノポリシロキサンは、その重合度が500以上20,000以下であるのが好ましく、5,000以上15,000以下であるのが特に好ましい。オルガノポリシロキサンが前記範囲の重合度を有すると、医療用ゴム部材の機械的強度が向上する。オルガノポリシロキサンの重合度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって、標準ポリスチレン換算分子量として、測定されることができる。
【0016】
シリコーンゴムは、適宜製造してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、商品名「KE−530U」(信越化学工業株式会社製、重合度約8,000)、商品名「SH1123U」(ダウコーニング株式会社製、重合度約8,000)、及び、商品名「TSE211−3U」(GE東芝シリコーン株式会社製、重合度約8,000)等が挙げられる。
【0017】
シリコーンゴムは、一種がゴム組成物に含有されてもよく、また、二種以上がゴム組成物に含有されてもよい。
【0018】
この発明に係るゴム組成物に含有される前記無水ケイ酸は、乾式シリカ又は乾式法シリカとも称されることがあり、SiOの正四面体構造のすべての酸素をそれぞれ異なったケイ素が共有する三次元的に連なった分子構造を持っている(例えば、「化学辞典」(株式会社東京化学同人)参照。)。この無水ケイ酸は、通常、その含水量が多くとも5質量%であり、二酸化ケイ素の含有量が少なくとも95質量%である。無水ケイ酸は、その含水量が多くとも3質量%であるのが、放射線照射による物性等の変化を効果的に防止することができる点で、好ましい。なお、無水ケイ酸の含水量は、無水ケイ酸を、150℃に1時間加熱し、加熱前の質量と加熱後の質量との減少量を加熱後の質量で除した値を百分率で表した値である。
【0019】
無水ケイ酸は、湿式シリカと称される含水ケイ酸よりも見掛比重が小さく、通常、40〜70g/Lの見掛け比重を有する。無水ケイ酸が前記範囲の見掛比重を有すると、医療用ゴム部材の機械的強度が向上する。無水ケイ酸の見掛け比重は、ISO787/11に規定された測定方法に基づいて、メスシリンダに無水ケイ酸を入れて、タッピングした後に、その質量と体積から算出して求めた値である。
【0020】
無水ケイ酸は、BET比表面積が、100m/g以上400m/g以下であるのが好ましく、250m/g以上350m/g以下であるのが特に好ましい。無水ケイ酸が前記範囲のBET比表面積を有すると、放射線滅菌処理に対して、白濁等の外観上の変化が起こらず、また、引裂き強度、硬度等の機械的物性が大きく低下することを防止することができる。BET比表面積は、窒素ガス吸着量によって測定するBET1点法により測定された値である。
【0021】
無水ケイ酸は、その一次粒子径が、0.001μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.01μm以上1μm以下であるのが特に好ましい。無水ケイ酸が前記範囲の一次粒子径を有すると、後述するシリコーンゴムに対して均一に分散することができ、医療用ゴム部材としたときの機械的物性が向上する。一次粒子径は、膨潤圧縮法で測定したときの値である。
【0022】
無水ケイ酸は、通常、乾式法によって製造される。乾式法は、1000℃以上の高温下で、微粉無水ケイ酸粒子を生成させる方法で、燃焼法と加熱法とがある。燃焼法は、気化させた四塩化ケイ素と水素を混合し、1000℃以上1200℃以下の温度範囲で、空気中で燃焼させる方法であり、微細な粒子状の無水ケイ酸を製造することができる。加熱法は、ケイ砂とコークスをアーク炉中で加熱、還元させて発生するSiO蒸気を空気中の酸素で酸化させる方法であり、微細な粒子状の無水ケイ酸を製造することができる。
【0023】
無水ケイ酸は、適宜製造してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、商品名「Aerosil」(DEGUSSA社製、又は、日本アエロジル社製)、商品名「Cab−O−Sil」(Cabot社製)等の燃焼法により製造された無水ケイ酸が挙げられ、例えば、商品名「Fransil」(Fransil社製)、商品名「Arc Silica」(PPG Inc社製)等の加熱法により製造された無水ケイ酸が挙げられる。
【0024】
無水ケイ酸は、一種がゴム組成物に含有されてもよく、また、二種以上がゴム組成物に含有されてもよい。
【0025】
無水ケイ酸は、前記シリコーンゴム100質量部に対して、20質量部以上45質量部以下の割合で含有されているのが好ましく、30質量部以上45質量部以下の割合で含有されているのが特に好ましい。無水ケイ酸が前記範囲の割合でゴム組成物に含有されていると、医療用ゴム部材としたときに、医療用ゴム部材の物性等が放射線照射によって大きく低下することを効果的に防止することができる。
【0026】
ゴム組成物は、前記無水ケイ酸及び前記シリコーンゴムの他に、例えば、ゴムを含有する組成物に通常配合される各種添加剤等を含有していてもよい。具体的な各種添加剤としては、例えば、架橋剤、充填材、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、熱安定化剤、抗酸化剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、反応助剤、反応抑制剤、樹脂等が挙げられる。前記架橋剤としては、シリコーンゴムに架橋を生じさせるラジカル反応、付加反応、縮合反応等を利用して、シリコーンゴムを加硫、硬化させるものであれば、その硬化機構に制限はなく、従来公知の種々の架橋剤(硬化剤とも称する。)を用いることができる。架橋剤として、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、ジクミルパーオキサイド等のアルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられ、架橋剤の一種である付加反応硬化剤として、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒との組み合わせ等が挙げられ、また、架橋剤の一種である縮合硬化剤として、例えば、多官能のアルコキシシラン又はシロキサンと有機金属酸塩との組み合わせ等が挙げられる。架橋剤の配合量は、シリコーンゴムに対して通常選択される配合量の範囲内から選択される。前記架橋剤を除く前記各種添加剤は公知のものを特に制限されずに用いることができる。
【0027】
前記ゴム組成物は、無水ケイ酸と、シリコーンゴムと、所望により各種添加剤とを、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、ローラミル、バンバリーミキサ、二本ロール、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル及びビーズミル等の混合機を用いて、無水ケイ酸とシリコーンゴムと各種添加剤とが均一に混合されるまで、常温又は加熱下で混練して、得られる。ゴム組成物は、適宜製造してもよく、また、市販品を使用してもよい。
【0028】
この発明に係るゴム組成物は、前記したように、放射線滅菌処理において、γ線等の放射線が照射されても、物性等の変化が小さいから、医療用ゴム部材、特に、放射線滅菌処理され、注射針が刺される医療用ゴム部材を製造するのに、好適に用いられる。
【0029】
次に、この発明に係る医療用ゴム部材を説明する。この発明に係る医療用ゴム部材は、医療機器に装着されるゴム部材であればよく、例えば、薬液瓶の薬液注入口を閉塞する医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ、血液回路等における配管又は混注管に設けられる医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ等、さらに、これらの医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ等であって、注射針等が刺される針刺栓等が挙げられる。この発明において、注射針は、薬剤若しくは血液等を抽出若しくは注入する針であればよく、例えば、注射器に装着される針、患者の体内等に少なくともその一部が留置される留置針、又は、血液バッグ若しくは輸液バッグに装着される針等が挙げられる。
【0030】
医療用ゴム部材は、装着される医療機器(例えば、薬液瓶又は混注管)、特に、医療機器の装着部(例えば、薬液注入口又は薬液注入部)の形状及び寸法に応じて、任意の形状に成形され、任意の寸法に調整される。
【0031】
この医療用ゴム部材は、100質量部のシリコーンゴムと20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有する前記ゴム組成物を用いて製造され、例えば、100質量部のシリコーンゴムと20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有する前記ゴム組成物を成形して製造される。ゴム組成物を成形する方法は、特に限定されず、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、注型成形等の成形方法等が挙げられる。医療用ゴム部材が無水ケイ酸を含有するゴム組成物で形成されると、γ線等の放射線を照射しても、物性等が大きく変化を防止することができ、医療用ゴム部材が劣化しにくくなる。
【0032】
したがって、この発明に係る医療用ゴム部材は、シリコーンゴムと無水ケイ酸とを含有している。医療用ゴム部材に含有されるシリコーンゴムは前記ゴム組成物に含有されるシリコーンゴムと同様のシリコーンゴム又はこのシリコーンゴム同士が架橋したより高分子量のシリコーンゴムである。医療用ゴム部材に含有される無水ケイ酸は前記ゴム組成物に含有される無水ケイ酸と同様の無水ケイ酸である。なお、この発明に係る医療用ゴム部材においては、シリコーンゴムと無水ケイ酸とはそれぞれ独立に含有されていてもよく、また、これらの凝集体又は複合体等として含有されていてもよい。
【0033】
この発明に係る医療用ゴム部材は、JIS A硬度が25以上40以下であるのが好ましく、30以上35以下であるのが特に好ましい。医療用ゴム部材が前記範囲のJIS A硬度を有すると、シール性が向上し、また、注射針を抜き刺しするときの医療用ゴム部材の一部が欠落及び/又は脱落することを大幅に低減することができる。JIS A硬度は、JIS K6249に規定された測定方法により、測定することができる。
【0034】
この発明に係る医療用ゴム部材は、引裂き強度が25kN/m以上35kN/m以下であるのが好ましく、26kN/m以上33kN/m以下であるのが特に好ましい。医療用ゴム部材が前記範囲の引裂き強度を有すると、注射針を抜き刺しするときの医療用ゴム部材の一部が欠落及び/又は脱落することを大幅に低減することができる。引裂き強度は、JIS K6249に規定された測定方法(クレセント型)に規定された測定方法により、測定することができる。
【0035】
この発明に係る医療用ゴム部材は、前記成形方法によって所望の形状に製造された後、及び/又は、使用前に、γ線等の放射線を照射する放射線滅菌処理が施される。放射線滅菌処理は、常法により行えばよく、医療用ゴム部材を十分に滅菌するには、例えば、γ線等の放射線を20kgy以上50kgy以下の照射量で照射すればよい。
【0036】
このようにして放射線滅菌処理された医療用ゴム部材、すなわち、この発明に係る滅菌済医療用ゴム部材は、無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有し、放射線滅菌処理前の医療用ゴム部材における物性に比して、その物性の低下割合が小さい。例えば、50kgyの照射量でγ線を照射した滅菌済医療用ゴム部材のJIS A硬度は、放射線滅菌処理前の医療用ゴム部材のJIS A硬度に対する変化率が0%程度以上25%程度以下の範囲であり、好ましくは0%程度以上20%程度以下の範囲であり、特に好ましくは0%程度以上15%程度以下の範囲である。また、50kgyの照射量でγ線を照射した滅菌済医療用ゴム部材の引張強度は、放射線滅菌処理前の医療用ゴム部材の引張強度に対する変化率が−10%程度以上0%程度以下の範囲であり、好ましくは−8%程度以上0%程度以下の範囲である。50kgyの照射量でγ線を照射した滅菌済医療用ゴム部材の伸びは、放射線滅菌処理前の医療用ゴム部材の伸びに対する変化率が−30%程度以上0%程度以下の範囲である。さらに、50kgyの照射量でγ線を照射した滅菌済医療用ゴム部材の引裂き強度は、放射線滅菌処理前の医療用ゴム部材の引裂き強度に対する変化率が−25%程度以上0%程度以下の範囲であり、好ましくは−20%程度以上0%程度以下の範囲であり、特に好ましくは−17%程度以上0%程度以下の範囲である。ここで、JIS A硬度及び引裂き強度は前記方法により測定することができ、引張強度及び伸びはJIS K6249に規定された測定方法に規定された測定方法により、測定することができる。
【0037】
この発明に係る医療用ゴム部材は、無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有するゴム組成物を成形して成るから、放射線滅菌処理において、γ線等の放射線を照射しても、その物性等が大きく変化することはなく、劣化しにくい。その理由の1つとして、例えば、前記したように、無水ケイ酸が医療用ゴム部材の表面全体を覆っていなくても、医療用ゴム部材に含有される無水ケイ酸によって、放射線照射によるシリコーンゴムの分解を抑えて、耐放射線性が向上することが考えられる。その結果、この発明に係る医療用ゴム部材は、放射線滅菌処理されても、すなわち、この発明に係る滅菌済医療用ゴム部材は、医療用ゴム部材における亀裂等の発生を防止することができると共に、薬液の滲出、薬液の汚染防止等の医療用ゴム部材に要求される機能を十分に維持することができる。
【0038】
この発明に係る医療用ゴム部材が針刺栓として使用される場合には、医療用ゴム部材は、放射線滅菌処理されても、劣化しにくい特性に加えて、抜き刺しされる注射針によって、医療用ゴム部材の一部が医療用ゴム部材から欠落、脱落又は剥離することを防止することができる。その結果、この発明に係る医療用ゴム部材は、放射線滅菌処理されても、すなわち、この発明に係る滅菌済医療用ゴム部材は、必要量の薬液を薬液瓶から取り出した後にも、薬液瓶に収容された薬液を密封した状態を維持して、薬液の滲出及び薬液の汚染等を防止するという目的を達成することができる。
【0039】
また、この発明に係る医療用ゴム部材は、このように、γ線等の放射線を照射しても、劣化しにくいから、例えば、ゴム組成物の成形後及び使用前等に、放射線滅菌処理を複数回行うことができる。
【0040】
この発明に係る医療用ゴム部材の一実施例を、図面を用いて、説明する。医療用ゴム部材の一実施例は、図1及び図2に示されるように、薬液瓶30等の薬液注入口31等を閉塞する医療用ゴムキャップ1である。医療用ゴムキャップ1は、薬液瓶30の薬液注入口31に圧入されて薬液注入口31を閉塞するゴムキャップ本体10と、ゴムキャップ本体10の上部に円周方向に突出した頭部11とを備えてなり、注射針20が貫通する針刺栓の一例である。この医療用ゴムキャップ1におけるゴムキャップ本体10は、装着される薬液瓶30における薬液注入口31の断面形状に応じて円筒状に形成され、その径は薬液注入口31の内径よりもわずかに大きな寸法に調整されている。医療用ゴムキャップ1における頭部11は、円盤状に形成され、その径は薬液瓶30における薬液注入口31に設けられた鍔部32の外径とほぼ同じ寸法に調整されている。
【0041】
この医療用ゴムキャップ1は、無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有する前記ゴム組成物を射出成形して成り、それぞれ一種又は二種以上の無水ケイ酸及びシリコーンゴムを含有している。医療用ゴムキャップ1は、JIS A硬度が30以上35以下に調整されている。医療用ゴムキャップ1は、使用前に、例えば、γ線が照射量22.2kgyで照射され、滅菌済医療用ゴムキャップ2とされる。この滅菌済医療用ゴムキャップ2は、前記したように、その物性が医療用ゴムキャップ1の物性に対して大きく変化することはなく、例えば、50kgyの照射量でγ線を照射して滅菌しても、JIS A硬度、引張強度、伸び及び引裂き強度は、前記した範囲内にある。
【0042】
医療用ゴムキャップ1が滅菌処理されて成る滅菌済医療用ゴムキャップ2は、図2に示されるように、薬液瓶30の薬液注入口31にゴムキャップ本体10が、薬液注入口31の鍔部32と頭部11の底面とが当接するまで、圧入されて、薬液瓶30に装着される。そして、薬液瓶30に収納された薬液33を取り出す際には、図2に示されるように、滅菌済医療用ゴムキャップ2に注射針20を刺して、注射針20を滅菌済医療用ゴムキャップ2に貫通させ、例えば、薬液瓶30を傾斜又は転倒させて、注射針20から薬液33を抽出する。その後、注射針20を滅菌済医療用ゴムキャップ2から抜き取る。このようにして一連の動作が終了するが、医療用ゴムキャップ1は無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有するゴム組成物を成形して成るから、放射線滅菌処理されても劣化せず、また、劣化しにくい。したがって、医療用ゴムキャップ1の使用前に放射線滅菌処理されて成る滅菌済医療用ゴムキャップ2は、その物性が医療用ゴムキャップ1に対して大きく変化することはないから、滅菌済医療用ゴムキャップ2における亀裂の発生等を防止することができると共に、滅菌済医療用ゴムキャップ2に注射針20を容易に貫通させることができ、薬液33の滲出及び薬液33の汚染等を避けて必要量の薬液33を取り出すことができる。
【0043】
さらに、滅菌済医療用ゴムキャップ2は、注射針20を刺しても、滅菌済医療用ゴムキャップ2の一部が滅菌済医療用ゴムキャップ2から欠落、脱落又は剥離することを防止することができるから、必要量の薬液33を薬液瓶30から取り出した後にも、薬液瓶30に収容された薬液33を密封した状態を維持して、薬液33の滲出及び薬液33の汚染等を防止するという目的を達成することができる。
【0044】
また、医療用ゴムキャップ1及び滅菌済医療用ゴムキャップ2は、放射線滅菌処理を複数回行うことができる。
【0045】
この発明に係る医療用ゴム部材の別の一実施例を、図面を用いて、説明する。医療用ゴム部材の別の一実施例は、図3及び図4に示されるように、混注管40等の薬液注入部43等を閉塞する医療用ゴムボタン3である。医療用ゴムボタン3は、例えば、人工心臓等の血液回路の一部を構成する配管41及び42に介装された混注管40に装着される医療用ゴムキャップであり、混注管40における三方分岐部の薬液注入部43に圧入されて薬液注入部43を閉塞し、注射針20が貫通する針刺栓の一例である。この医療用ゴムボタン3は、装着される混注管40における薬液注入部43の断面形状に応じて円盤状に形成され、その径は装着される混注管40における薬液注入部43の内径よりもわずかに大きな寸法に調整されている。
【0046】
この医療用ゴムボタン3は、無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有する前記ゴム組成物を射出成形して成り、それぞれ一種又は二種以上の無水ケイ酸及びシリコーンゴムを含有している。医療用ゴムボタン3は、JIS A硬度が30以上35以下に調整されている。医療用ゴムボタン3は、使用前に、例えば、γ線が照射量22.2kgyで照射され、滅菌済医療用ゴムボタン4とされる。この滅菌済医療用ゴムボタン4は、前記したように、その物性が医療用ゴムボタン3の物性に対して大きく変化することはなく、例えば、50kgyの照射量でγ線を照射して滅菌しても、JIS A硬度、引張強度、伸び及び引裂き強度は、前記した範囲内にある。
【0047】
医療用ゴムボタン3が滅菌処理されて成る滅菌済医療用ゴムボタン4は、図4に示されるように、混注管40の薬液注入部43に圧入されて、混注管40に装着される。そして、混注管40に薬液(図示しない。)等を注入又は混注管40を流通する体液等を抽出する際には、図4に示されるように、滅菌済医療用ゴムボタン4に注射針20を刺して、注射針20を滅菌済医療用ゴムボタン4に貫通させ、注射針20から混注管40の薬液注入部43に薬液等を注入又は混注管40を流通する体液等を抽出等する。その後、注射針20を滅菌済医療用ゴムボタン4から抜き取る。このようにして一連の動作が終了するが、医療用ゴムボタン3は無水ケイ酸とシリコーンゴムとを含有するゴム組成物を成形して成るから、放射線滅菌処理されても劣化せず、また、劣化しにくい。したがって、医療用ゴムボタン3の使用前に放射線滅菌処理されて成る滅菌済医療用ゴムボタン4は、その物性が医療用ゴムボタン3に対して大きく変化することはないから、滅菌済医療用ゴムボタン4における亀裂の発生等を防止することができると共に、滅菌済医療用ゴムボタン4に注射針20を容易に貫通させることができ、混注管40を流通する血液等の滲出及び汚染等を避けて必要な薬液等を混注管40に注入又は混注管40を流通する体液等を抽出することができる。
【0048】
さらに、滅菌済医療用ゴムボタン4は、注射針20を刺しても、滅菌済医療用ゴムボタン4の一部が滅菌済医療用ゴムボタン4から欠落、脱落又は剥離することを防止することができるから、必要な薬液等を混注管40に注入又は混注管40を流通する体液等を抽出した後にも、混注管40を流通する血液等を密封した状態を維持して、混注管40を流通する血液等の滲出及び汚染等を防止するという目的を達成することができる。
【0049】
また、医療用ゴムボタン3及び滅菌済医療用ゴムボタン4は、放射線滅菌処理を複数回行うことができる。
【0050】
この発明における医療用ゴム部材は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記医療用ゴムキャップ1及び医療用ゴムボタン3は円筒状又は円盤状に成形されているが、この発明において、医療用ゴム部材は、円筒状又は円盤状に限定されることなく、例えば、矩形、多角形又は流線形等の形状に成形されてもよい。
【0051】
前記医療用ゴムキャップ1及び滅菌済医療用ゴムキャップ2は、ゴムキャップ本体10と頭部11とを備えているが、この発明において、医療用ゴムキャップ及び滅菌済医療用ゴムキャップは頭部を有しないゴムキャップ本体で構成されてもよい。また、前記医療用ゴムボタン3及び滅菌済医療用ゴムボタン4は円盤状に成形されているが、この発明において、医療用ゴムボタン及び滅菌済医療用ゴムボタンはその上部に円周方向に突出する頭部と備えていてもよい。
【0052】
前記医療用ゴムキャップ1、滅菌済医療用ゴムキャップ2、医療用ゴムボタン3及び滅菌済医療用ゴムボタン4はいずれも、注射針等が刺される針刺栓であるが、この発明において、医療用ゴム部材は、薬液瓶の薬液注入口又は人工心臓等の血液回路若しくは人工透析等の体液回路等における混注管の薬液注入部を単に閉塞する栓であってもよく、また、注射針等が刺されない、すなわち、ニードレスタイプの医療用ゴム部材であってもよい。ニードレスタイプの医療用ゴム部材は、軸線方向に貫通し、薬剤の取出し及び注入を可能にするスリットを備えて成る、例えば、薬液瓶の薬液注入口を閉塞する医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ、人工心臓等の血液回路又は人工透析等の体液回路等における混注管に設けられる医療用ゴムボタン又は医療用ゴムキャップ等が挙げられる。
【実施例】
【0053】
(実施例1〜5及び比較例1〜3)
下記の組成を有するゴム組成物1〜5(実施例1〜5)及びゴム組成物6〜8(比較例1〜3)をそれぞれ射出成形して、JIS K6249に規定の「ダンベル型試験片」を複数作製した。このようにして作製した各ダンベル型試験片の一部について、その上面及び下面に照射量25kgyずつ(合計50kgy)、コバルト60より発するγ線を照射し、照射済試験片とした。ダンベル型試験片(この発明における医療用ゴム部材に相当する。)及び照射済試験片(この発明における滅菌済医療用ゴム部材に相当する。)を用いて、JIS K6249に規定の測定方法に準拠して、JIS A硬度、引張強度、伸び及び引裂き強度を測定し、照射済試験片の測定値とダンベル型試験片の測定値との差をダンベル型試験片の測定値で除して、変化率(%)を算出した。その結果を表1に示す。
【0054】
(ゴム組成物1)
メチルビニルポリシロキサン(重合度約8,000、ビニル基含有量0.25モル%)100質量部、無水ケイ酸(BET比表面積200m/g、見掛比重約50g/L、1次粒子径約12nm、商品名「アエロジル200」、日本アエロジル株式会社製)32.5質量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.7質量部
(ゴム組成物2)
メチルビニルポリシロキサン(重合度約8,000、ビニル基含有量0.25モル%)100質量部、無水ケイ酸(BET比表面積110m/g、見掛比重約50g/L、1次粒子径約16nm、商品名「アエロジルR972」、日本アエロジル株式会社製)32.5質量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.7質量部
(ゴム組成物3)
メチルビニルポリシロキサン(重合度約800、ビニル基含有量0.25モル%)100質量部、無水ケイ酸(BET比表面積200m/g、見掛比重約50g/L、1次粒子径約12nm、商品名「アエロジル200」、日本アエロジル株式会社製)32.5質量部、メチルハイドロジェンポリシロキサン4質量部、白金系触媒を白金換算で5ppm
(ゴム組成物4)
前記ゴム組成物1における無水ケイ酸の含有量を32.5質量部から20質量部へ変更したゴム組成物
(ゴム組成物5)
前記ゴム組成物1における無水ケイ酸の含有量を32.5質量部から45質量部へ変更したゴム組成物
【0055】
(ゴム組成物6)
メチルビニルポリシロキサン(重合度約8,000、ビニル基含有量0.25モル%)100質量部、含水ケイ酸(BET比表面積200m/g、二次粒子径18μm、商品名「シリカ製ニプシルVN−3」、東ソー株式会社製)42質量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.7質量部
(ゴム組成物7)
前記ゴム組成物1における無水ケイ酸の含有量を32.5質量部から15質量部へ変更したゴム組成物
(ゴム組成物8)
前記ゴム組成物1における無水ケイ酸の含有量を32.5質量部から50質量部へ変更したゴム組成物
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例6〜10及び比較例4〜6)
前記ゴム組成物1〜5(実施例6〜10)及びゴム組成物6〜8(比較例4〜6)をそれぞれ射出成形し、図1に示される形状を有する医療用ゴムキャップ1を複数製造した。このようにして製造した医療用ゴムキャップ1の一部を、照射量39.2kgyでコバルト60より発するγ線を医療用ゴムキャップ1の全面に均等に照射して、図1及び図2に示される形状を有する滅菌済医療用ゴムキャップ2を製造した。各医療用ゴムキャップ1及び各滅菌済医療用ゴムキャップ2は、外径5.5mm、長さ1.8mmのゴムキャップ本体10と、外径8.2mm、厚さ5.3mmの頭部11とを備えていた。各医療用ゴムキャップ1及び各滅菌済医療用ゴムキャップ2のゴムキャップ本体10を、図2に示されるように、薬液瓶30の薬液注入口31(内径5.2mm(ゴムキャップ本体10の外径に対して95%)、外径8.2mm)に圧入した。薬液注入口31に装着された各医療用ゴムキャップ1及び各滅菌済医療用ゴムキャップ2に、図2に示されるように、注射器の注射針(18G)20を貫通するまで刺し、次いで、刺した注射針20を引き抜いた。この注射針20の刺し及び抜きを1サイクルとして、連続して10サイクル行い、各医療用ゴムキャップ1及び各滅菌済医療用ゴムキャップ2の状態を目視で確認した。各医療用ゴムキャップ1及び各滅菌済医療用ゴムキャップ2についてこの試験を複数回行い、次のように評価した。いずれの試験においても、医療用ゴムキャップ1又は滅菌済医療用ゴムキャップ2の一部が欠落、脱落又は剥離しなかった場合を「○」、複数回の試験のうち少なくとも1回の試験において、医療用ゴムキャップ1又は滅菌済医療用ゴムキャップ2の一部が欠落、脱落又は剥離した場合を「△」、複数回の試験のうちほとんどの試験において、医療用ゴムキャップ1又は滅菌済医療用ゴムキャップ2の一部が注射針の針穴形状に欠落、脱落又は剥離した場合を「×」とした。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、この発明の一実施例である医療用ゴムキャップを示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明の一実施例である滅菌済医療用ゴムキャップに注射針を刺した状態を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明の別の一実施例である医療用ゴムボタンを示す概略斜視図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例である滅菌済医療用ゴムボタンに注射針を刺した状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 医療用ゴムキャップ
2 滅菌済医療用ゴムキャップ
3 医療用ゴムボタン
4 滅菌済医療用ゴムボタン
10 ゴムキャップ本体
11 頭部
20 注射針
30 薬液瓶
31 薬液注入口
32 鍔部
33 薬液
40 混注管
41、42 配管
43 薬液注入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部のシリコーンゴムと、20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含有するゴム組成物を成形して成ることを特徴とする医療用ゴム部材。
【請求項2】
前記医療用ゴム部材は、注射針が刺される医療用針刺栓である請求項1に記載の医療用ゴム部材。
【請求項3】
前記医療用針刺栓は、医療用ゴムキャップ又は医療用ゴムボタンである請求項2に記載の医療用ゴム部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用ゴム部材に放射線滅菌処理を施してなる滅菌済医療用ゴム部材。
【請求項5】
前記滅菌済医療用ゴム部材は、50kgyの照射量でγ線を照射する放射線滅菌処理前後における引裂き強度の変化率が−25%以上0%以下であることを特徴とする請求項4に記載の滅菌済医療用ゴム部材。
【請求項6】
100質量部のシリコーンゴムと、20質量部以上45質量部以下の無水ケイ酸とを含む、医療用ゴム部材に使用されるゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11518(P2009−11518A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175724(P2007−175724)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】