説明

医療用チューブ

【課題】医療用チューブに微小な傷があった場合でも、その部位をきっかけに破断することのない医療用チューブを提供すること。
【解決手段】医療用チューブ(10)は、第一の樹脂(1)と、第一の樹脂(1)と物性の異なる第二の樹脂(2)を含む医療用チューブから構成され、医療用チューブ(10)の長手方向断面視において、第一および第二の樹脂(1)、(2)が交互に配置されている。また、第一および第二の樹脂(1)、(2)は、医療用チューブ(10)の長手方向に略平行に配置されていてもよい、また、記第一および第二の樹脂(1)、(2)は、シリコーンゴムであってもよい、さらに、シリコーンゴムは、樹脂硬度が異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは医療用チューブとして多く使用されているチューブの1つである。カテーテルの中で手術後の術部からでてくる滲出液等を体外へ排出するドレナージチューブには、ポリ塩化ビニルやシリコーンゴムが使用されている。
【0003】
しかし、ポリ塩化ビニルは、ドレナージチューブとして十分な強度を有しているが、可塑剤の溶出が懸念されている。
また、シリコーンゴムは、可塑剤の溶出もなく、生体適合性はポリ塩化ビニルよりも優れているが機械的な強度がそれほど高くない。特に、引裂き強度が低いので、例えばドレナージチューブに微小な傷があると、その部位をきっかけとして破断しやすい。そのため、手技上の使用については、注意を払いながら行なう必要があった。
【0004】
シリコーンゴムの機械的強度を高める方法として、特定構造を有するオルガノポリシルアルキレンシロキサンを主成分とするシリコーンゴムが提案され、シリコーンゴム自体の引裂き強度を向上させる方法がとられている(例えば特許文献1)。しかし、特定構造を有するため、入手性や、加工コストの問題を抱えている。
【0005】
また、押し込み性や、トルク伝達性を向上させため、反発力の異なる複数の樹脂を使用し、かつ、先端側で一部の樹脂を蛇行させる方法も試みられている(例えば特許文献2)。しかし、微小な傷があった場合に引裂き強度を保持するには不十分であった。

【特許文献1】特開平5−24739号公報
【特許文献2】特開2001−190680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、医療用チューブに微小な傷があった場合でも、その部位をきっかけに破断することのない医療用チューブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による医療用チューブは、第一の樹脂と、前記第一の樹脂と物性の異なる第二の樹脂を含む医療用チューブであって、前記チューブの長手方向断面視において、前記第一および第二の樹脂が交互に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る医療用チューブは、物性の異なる樹脂が交互に配置されている。これにより、第一の樹脂で発生した微小な傷をきっかけに、引裂きが伝播しても、第二の樹脂の界面で引裂きの伝播を止めることができる。このため、微小な傷をきっかけに破断することのない医療用チューブが実現される。
【0009】
さらに、前記第一および第二の樹脂は、前記医療用チューブの長手方向に略平行に配置されている。これにより、医療用チューブを回転させた場合でもドレナージチューブとして十分な柔らかさを保持することができる。
【0010】
さらに、前記第一および第二の樹脂は、シリコーンゴムであり、また、前記シリコーンゴムは、樹脂硬度が異なるようにしてもよい。これにより、引裂きに強い樹脂硬度の高い部分で微小な傷が発生しても、相対的な引裂き強度が大きいので、手技中の外力で引き裂けるのを防ぐことができる。また、樹脂硬度が低いところで微小な傷が発生したとき、引張による引裂きの伝播を樹脂硬度の高いところで止めることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、医療用チューブに微小な傷があった場合でも、その部位をきっかけに破断することのない医療用チューブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明による医療用チューブの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による医療用チューブの一実施形態を示す断面斜視図である。医療用チューブ(10)は、第一の樹脂(1)と、第一の樹脂(1)と物性の異なる第二の樹脂(2)を含む医療用チューブから構成され、医療用チューブ(10)長手方向断面視において、第一および第二の樹脂(1)、(2)が交互に配置されている。
【0014】
第一および第二の樹脂(1)、(2)は、医療用チューブ(10)の長手方向に略平行に配置されていてもよい。また、記第一および第二の樹脂(1)、(2)は、シリコーンゴムであってもよい。さらに、シリコーンゴムは、樹脂硬度が異なっていてもよい。
【0015】
また、X線造影のために、硫酸バリウムなどを混ぜたシリコーンゴムのラインを付設してもかまわない。
【0016】
第一の樹脂(1)および第二の樹脂(2)はシリコーンゴムであることが好適であり、第一の樹脂(1)が第二の樹脂(2)よりも硬度が高いことが好適であるが、場合によっては第二の樹脂(2)が第一の樹脂(1)よりも硬度が高くても良い。
【0017】
第一の樹脂(1)はショアA硬度で40度から90度が好ましく、第二の樹脂(2)はショアA硬度で10度から50度であることが好ましい。特に第一の樹脂(1)は70度から80度が好ましく、第二の樹脂(2)は20度から30度が好ましい。樹脂硬度がこの範囲内にあると、柔軟性を損なうことなく、引裂きに強い医療用チューブとすることができる。
【0018】
シリコーンゴムは、特に限定されず、例えば、有機過酸化物硬化型、Si−H結合と脂肪族不飽和結合との、白金族金属系触媒によるハイドロシリレーション反応を利用する付加反応型等、種々の縮合硬化型のものが挙げられるが、本発明においては、連続成形及び密閉系内成形に優れる観点から、有機過酸化物硬化型、または、付加反応型が好ましく、特に、押し出し接着性に優れた付加反応架型が好ましい。また樹脂間の接着性や硬化時の特性から第1樹脂(1)と第二の樹脂(2)のシリコーンゴムは同じ硬化反応型であることが好ましい。
【0019】
医療用チューブ(10)の断面において第一の樹脂(1)の面積が30%から90%であり第二の樹脂(2)の面積が10%から70%であることが好ましい。特に第一の樹脂(1)の断面積が50%から60%であり第二の樹脂(2)の断面積が40%から50%であることが好ましい。断面積がこの範囲内にあると、柔軟性を損なうことなく、引裂きに強い医療用チューブとすることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により、さらに説明するが、本発明はこれによってなんら限定される物ではない。
【0021】
(実施例)
第一の樹脂(1)に信越化学工業株式会社のKE−571−U(付加反応型シリコーンゴム、硬度70A)を使用し、第二の樹脂(2)に旭化成ワッカー株式会社のELSTOIL C1525(付加反応型シリコーンゴム、硬度25A)を使用した。第一の樹脂(1)をφ40mm押出成形機で使用し、第二の樹脂(2)はφ40mm押出成形機の樹脂流れ方向に対し先端ダイス部分で90°方向に取り付けられたφ20mm押出成形機で使用した。先端ダイスの部分で第一の樹脂(1)と第二の樹脂(2)が図1の形状に合流するようにして外径3.25mm内径1.6mmのチューブを成形し、その後、加硫を行った。第二の樹脂(2)は放射状に12箇所組み込まれれる用に成形した。断面積の割合は第一の樹脂(1)が60%であり第二の樹脂(2)が40%であった。
【0022】
(比較例)
信越化学工業株式会社のKE−571−U(付加反応型シリコーンゴム、硬度70A)を使用し、外径3.25mm内径1.6mmのチューブを成形し、加硫した。
【0023】
実施例及び比較例で得られたチューブを16cmに切断し、チューブ中央部をメス刃(フタバ替刃メスNO.11)で傷深さが2mmになるようにTD方向の傷を付けた場合と傷をつけてないチューブを準備した。これらのチューブを用いて速度200mm/分で引張試験を実施した。
このときの破断時の荷重および傷の有無による破断時の荷重低下率を表1に記載する。
【0024】
【表1】

表1が示すように、本発明の医療用チューブは従来の単一シリコーンチューブに比べて、傷が入ったときの強度低下が低い。シリコーンゴムなので優れた抗血栓性、組織適合性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の医療用チューブを示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 第一の樹脂
2 第二の樹脂
10 医療用チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂と、前記第一の樹脂と物性の異なる第二の樹脂を含む医療用チューブであって、
前記医療用チューブの長手方向断面視において、前記第一および第二の樹脂が交互に配置されていることを特徴とする医療用チューブ。
【請求項2】
前記第一および第二の樹脂は、前記医療用チューブの長手方向に略平行に配置されている請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項3】
前記第一および第二の樹脂は、シリコーンゴムである請求項1または2に記載の医療用チューブ。
【請求項4】
前記シリコーンゴムは、樹脂硬度が異なる請求項3に記載の医療用チューブ。


【図1】
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【公開番号】特開2007−236451(P2007−236451A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59490(P2006−59490)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】