説明

医療用ペースト混練装置及び医療用ペーストユニット

【課題】 混練操作が簡単・迅速に行え、また、作業者の肉体的負担も軽減可能な医療用ペースト混練装置を提供する。
【解決手段】 ペーストを入れるシリンダ3と、シリンダ3の軸心方向への直線運動と軸心回りの回転運動との組合せによりペーストを撹拌する撹拌部材と、撹拌部材からシリンダ3外に突出するロッド5と、ペースト押出用のピストンとを備えたペースト混練注入器1に使用するものであって、シリンダ支持部材10と、ロッド支持部材11と、モータ12とを備え、シリンダ支持部材10とロッド支持部材11は、シリンダ3とロッド5とをシリンダ3の軸心方向に対する相対的な直線運動と軸心回りの相対的な回転運動が可能なように夫々を支持するようになし、さらにモータ12によりシリンダ3とロッド5に前記相対的な直線運動と回転運動とを同時に行わせるようにした医療用ペースト混練装置9を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野で用いられるペーストを混練するための混練装置及びその混練装置を含む医療用ペーストユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、歯科を含む医療分野において、例えばリン酸カルシウム系骨ペーストを体内に注入して生体骨や歯の欠損部位を補ったり、金属やセラミックス等からなる人工骨を生体骨に接着する治療が行われている。
前記ペーストの注入には、ペーストを入れるシリンダと、そのシリンダ内に摺動自在に設けられ前記ペーストをノズル部から押し出すピストンとを有する専用の注入器が使われる。
このような医療用ペースト注入器には、例えばピストンの軸中心にロッドを突設した注射器型のものや、ピストンにロッドを設けず、専用の押出装置の押圧シャフトでピストンを押し込むものなどがある。
【0003】
しかして本出願人は、かかる医療用ペースト注入器に撹拌機能を付加したペースト混練注入器を開発し既に特許出願を行っている(特許文献1参照)。このペースト混練注入器1は、図8,図9に示したように、先端にノズル部2を形成した筒状形態であるシリンダ3と、該シリンダ3の軸心方向への直線運動とシリンダ3の軸心を中心とする回転運動との組合せによってシリンダ3内のペーストを撹拌するプロペラ形態の撹拌部材4と、該撹拌部材4から延びてシリンダ3外に突出するロッド5と、ペースト押出し用のピストン6(剛性駒部材6aと弾性駒部材60aの結合体)と、を備え、さらに前記ロッド5の軸部5aに雄ネジ5bを形成すると共に該雄ネジ5bを前記ピストン6の一部である剛性駒部材6aに形成した雌ネジ6bに螺合させてなる。かくしてピストン6は、ロッド5と螺合関係にあるため、ロッド5の直線的な動きに対して自ら回転することはなく、図9のようにロッド5と一体になってシリンダ3内を移動する。
【0004】
一方、ピストン6は、剛性駒部材6aの括れた首部6cとシリンダ3のフランジ7を図8のようにジョイント部材8で連結させることによりシリンダ3と一体にロックすることができ、そうした場合にはピストン6の剛性駒部材6aの雌ネジ6bが不動状態に固定されるから、ロッド5の回転運動が雄ネジ5bと雌ネジ6bの螺合により回転を伴う直線運動に変わる。従ってロッド5を回転させることにより、撹拌部材4に対しシリンダ3の軸心方向への直線運動とシリンダ3の軸心を中心とする回転運動とを同時に行わせることができる。なお、ロッド5の軸部5aの端部には円盤の周側壁に指掛用の溝5c,5c…を等ピッチに形成したハンドル部5dが設けられている。
【0005】
以上の構成であるペースト混練注入器1は、図8のようにシリンダ3のフランジ7にジョイント部材8を取り付けピストン6をロックした状態で矢示(I),(II)のようにロッド5を正逆回転させることによりシリンダ3内のペーストを撹拌部材4で撹拌することができ、さらにペーストが十分に混練された時点で図9のように前記ジョイント部材8をシリンダ3から外し、ロッド5をシリンダ3内に押し込むことによりピストン6を動かして、混練済みのペーストをノズル部2から外部に押し出すことができる。
【特許文献1】特開2000−237208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ペースト混練注入器1は、一方の手でシリンダ3を持ち、もう一方の手でハンドル部5dを回してペーストを混練するのであるが、ハンドル部5dを相当数回転させなければ混練完了に至らないため、作業者に肉体的負担を強い、また、混練開始から混練完了までの間、一人分の労力が奪われることになるため、チームワークを必要とする医療現場での他の作業者の負担が増大する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ペーストを入れるシリンダと、該シリンダの軸心方向への直線運動とシリンダの軸心を中心とする回転運動との組合せによってシリンダ内のペーストを撹拌する撹拌部材と、該撹拌部材から延びてシリンダ外に突出するロッドと、ペースト押出し用のピストンと、を備えたペースト混練注入器に使用するものであって、前記ペースト混練注入器のシリンダ側を支持するシリンダ支持部材と、前記ペースト混練注入器のロッド側を支持するロッド支持部材と、シリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を作動させる駆動手段と、を備え、前記シリンダ支持部材とロッド支持部材は、前記シリンダとロッドとを、シリンダの軸心方向に対する相対的な直線運動と、シリンダの軸心を中心とする相対的な回転運動が可能なように夫々を支持するようになし、さらに駆動手段によりシリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を作動させてシリンダとロッドに前記相対的な直線運動と相対的な回転運動とを同時に行わせるようにした医療用ペースト混練装置を提供する。
【0008】
また、請求項2に記載したように、前記ペースト混練注入器は、ロッドの軸部に雄ネジを形成すると共に該雄ネジを少なくともペースト撹拌時においてシリンダと一体である部材に形成した雌ネジに螺合させ、そうしてロッドの回転運動を回転を伴う直線運動に変換して撹拌部材によるペーストの撹拌を行わせるようにしたものであり、前記ロッド支持部材は、シリンダの軸心を中心とする回転力の前記ロッドへの伝達を可能とし且つシリンダの軸心方向へのロッドの移動を可能とするスプライン嵌め合い様の結合構造によりロッドを支持し、一方、シリンダ支持部材は、前記ペースト混練注入器のシリンダを固定的に支持するようにした請求項1記載の医療用ペースト混練装置を提供する。
【0009】
また、請求項3に記載したように、前記ペースト混練注入器は、ロッドの軸部に雄ネジを形成すると共に該雄ネジを少なくともペースト撹拌時においてシリンダと一体である部材に形成した雌ネジに螺合させ、そうしてロッドの回転運動を回転を伴う直線運動に変換して撹拌部材によるペーストの撹拌を行わせるようになし、さらにロッドのハンドル部の周壁面に軸部の軸心と平行な溝を刻設したものであり、前記ロッド支持部材は、支台に前記ハンドル部の溝に嵌まる棒状の摺動ガイド部を立設したものである請求項1又は2記載の医療用ペースト混練装置を提供する。
【0010】
また、請求項4に記載したように、前記ロッド支持部材にロッドの周りを囲うカバー部を設けた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用ペースト混練装置を提供する。
また、請求項5に記載したように、前記シリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を作動させる駆動手段が電動モータである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用ペースト混練装置を提供する。
また、請求項6に記載したように、前記電動モータに流れる電流又は印加する電圧の上昇を検知して過負荷による電動モータの停止を検出し、電動モータを逆回転させるようにした請求項5記載の医療用ペースト混練装置を提供する。
【0011】
また、請求項7に記載したように、前記電動モータにエンコーダーを設けてパルス信号を出力させ、撹拌の正常終了判定用に予め設定したパルス信号と前記パルス信号とを比較して撹拌エラーを検出するようにした請求項5又は6記載の医療用ペースト混練装置を提供する。
また、請求項8に記載したように、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医療用ペースト混練装置にペースト混練注入器を装着してなる医療用ペーストユニットを提供する。
また、請求項9に記載したように、前記シリンダ内にリン酸カルシウム粉末を装填してなる請求項8記載の医療用ペーストユニットを提供する。
【発明の効果】
【0012】
シリンダとロッドに相対的な直線運動と相対的な回転運動とを同時に行わせると、ロッドを介して撹拌部材とシリンダにも相対的な直線運動と相対的な回転運動が生じるため、シリンダ内のペーストが撹拌部材で撹拌される。そしてその相対運動が、駆動手段とシリンダ支持部材とロッド支持部材を介して行えるため、混練操作が簡単・迅速に行えるようになり、また、作業者の肉体的負担も軽減される。
【0013】
また、請求項2の医療用ペースト混練装置は、ロッド支持部材を、ペースト混練注入器のロッドをスプライン嵌め合い様の態様をもって結合する構造としたため、ロッドの回転運動を回転を伴う直線運動に変換する撹拌機構を備えたペースト混練注入器の機能が有効に活用でき、その分、低コストにできる効果がある。
【0014】
また、請求項3の医療用ペースト混練装置は、前記請求項2と同様の効果に加えて、ペースト混練注入器のハンドル部の周壁面に設けた主として指掛用の溝を、スプライン嵌め合い様の結合構造の一要素に取り入れたため、構造の簡素化、低価格化に優れた効果を発揮する。
【0015】
また、請求項4のようにロッド支持部材にロッドの周りを囲うカバー部を設けた場合には、内部機構と外部とを仕切ることができるため、外部に対してモータ等の複雑な内部機構の露出を防ぐことができる。
【0016】
また、請求項5のようにシリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を電動モータで駆動させるようにすれば、ペーストの撹拌を人手で行う場合に比べて撹拌の確実性・作業性が大きく向上する。
【0017】
また、請求項6のように電動モータに流れる電流又は印加する電圧の上昇を検知して電動モータを逆回転させるようにすれば、手入力による操作を何ら要することなくシリンダ容量の大小に自動的に対応するため、作業者がシリンダ容量の大小について全く意識する必要がなく、当然操作ミスも生じない。
【0018】
また、請求項7のように電動モータのパルス信号で撹拌エラーを検出するようにすれば、撹拌の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1は医療用ペーストユニットの分解斜視図、図2は医療用ペーストユニットの縦断面図、図3は図2のX−X線断面図、図4、図5は他の形態を示すX−X線相当断面図、図6、図7は他の形態を示す医療用ペーストユニットの縦断面図、図8はペースト混練注入器の撹拌時の状態を示す縦断面図、図9はペースト混練注入器の押出し時の状態を示す縦断面図である。
【0020】
本発明の医療用ペーストユニットは、図1に示したように、ペースト混練注入器1と、医療用ペースト混練装置9とからなり、また、医療用ペースト混練装置9は、シリンダ支持部材10と、ロッド支持部材11と、駆動手段たる電動モータ12と、装置基台13とからなる。
【0021】
前記ペースト混練注入器1については既に図8,図9によって説明したとおりであり、従ってここでの説明を省略する。
【0022】
医療用ペースト混練装置9のシリンダ支持部材10は、横向きの開口部10aを有する鞘(さや)形態であって、装置基台13の垂直板13a上方に棚板状に固着されている。このシリンダ支持部材10は、ペースト混練注入器1のシリンダ3を支持するものであって、シリンダ3の一方のフランジ7を前記開口部10aにくわえ込み、さらに該フランジ7をビス14で押さえて抜けないように固定する。一方、シリンダ3のもう一つのフランジ7には前記したジョイント部材8を装着してピストン6をシリンダ3にロックする。なお、本形態のシリンダ支持部材10は単純な鞘形態になっているが、これをジョイント部材8と同じ形状、すなわちピストン6の剛性駒部材6aの括れた首部6cに係合する形状にすることもできる。そうした場合にはジョイント部材8が不要になるため、シリンダ3の装着作業の作業性が向上する。
【0023】
一方、医療用ペースト混練装置9のロッド支持部材11は、装置基台13の垂直板13a下方に棚板状に固着した軸受板11aと、該軸受板11aの上面に回転自在に軸着した円形テーブル状の支台11bと、該支台11bの上面であって円周沿いに立設した丸棒形態の摺動ガイド部11c,11c…と、からなる。この摺動ガイド部11c,11c…は、図3に示したように支台11bの中心にロッド5のハンドル部5dを載置した状態でそのハンドル部5dの各溝5c,5c…に嵌まるように配置されている。なお、前記支台11bは軸受板11aの下面に固着した電動モータ12の出力軸12aに直結されており、該電動モータ12によって正逆回転可能である。
【0024】
ロッド支持部材11は以上のように構成されているため、摺動ガイド部11c,11c…の中心にロッド5のハンドル部5dをセットした状態でスプライン嵌め合い様の結合構造になり、ロッド支持部材11の回転にロッド5が従動し、その状態で摺動ガイド部11cに案内されつつロッド5が直線方向に摺動し得る。
【0025】
次に医療用ペーストユニットによるペーストの混練方法について説明する。先ず、ペースト混練注入器1にはシリンダ3内にペースト原料(骨ペースト原料)たるリン酸カルシウム粉末が装填されており、ノズル部2がキャップ15で塞がれている。このペースト混練注入器1のシリンダ3内に硬化液を注入して医療用ペースト混練装置9に装着する。具体的には、先ずロッド5のハンドル部5dをロッド支持部材11の摺動ガイド部11c,11c…の中にセットし、続いてシリンダ支持部材10にシリンダ3のフランジ7を差し込んでビス14を締める。これによりシリンダ3がシリンダ支持部材10に支持され、ロッド5がロッド支持部材11に支持される。そしてさらにシリンダ3のもう一方のフランジ7にジョイント部材8を装着してピストン6をシリンダ3にロックする。
【0026】
次に電動モータ12を作動させ、ロッド支持部材11の支台11bを回転させる。そうするとその回転力が摺動ガイド部11c,11c…からハンドル部5dに伝達されロッド5が回転する。ロッド5の軸部5aの雄ネジ5bは、ジョイント部材8でシリンダ3にロックされたピストン6の雌ネジ6bに螺合しているから、ロッド5が回転すると雄ネジ5bのピッチに従い回転しつつ直線方向に移動する。従って、ロッド5の端部にある撹拌部材4がシリンダ3内を回転しながら上昇し、リン酸カルシウム粉末と硬化液とを撹拌して混練する。
【0027】
次に撹拌部材4がシリンダ3の奥端(図2において上端)に達するとロッド5の移動が停止し、それに伴い回転も止まる。これにより電動モータ12の出力軸12aも回転不能に陥るため、電動モータ12に流れる電流と印加する電圧が過負荷により急激に上昇する。従ってこの電流又は電圧の急激な上昇により、撹拌部材4が折り返し点に到達したと判断できるから電動モータ12を逆回転させる。そうするとロッド5が後退し、撹拌部材4も回転しながら後退する。撹拌部材4が元位置に戻ると前記と同様電動モータ12の電流・電圧が急激に上昇するから、電動モータ12を逆回転させ、再度撹拌部材4を前進させる。
【0028】
以上の動作を所定回数(例えば20往復)繰り返し、電動モータ12を停止させる。そして、フランジ7からジョイント部材8を外すと共にビス14を緩め、シリンダ支持部材10からフランジ7を抜いてペースト混練注入器1を医療用ペースト混練装置9から外す。そうしてシリンダ3のノズル部2からキャップ15を外してチューブ(図示せず)に付け替え、ハンドル部5dを使ってロッド5を押し込むとピストン6がシリンダ3内に入ってペーストを押し出す。
【0029】
なお、ペーストの混練不足に起因する不良の発生を防止するため、本発明は電動モータ12に公知のエンコーダー(図示せず)を設けて撹拌エラーを検出するようにしている。すなわち、先ず、正常に撹拌し終えた場合の電動モータ12のパルス信号を測定或は算出し正常終了判定用のパルス信号として記憶させる。そして、撹拌開始から撹拌終了に至るまでの電動モータ12の実際のパルス信号を出力し、撹拌の正常終了判定用に予め設定した前記パルス信号と比較する。この判定用のパルス信号と実際のパルス信号が一致しない場合、撹拌エラーと判断できる。もちろんこれらの処理は制御回路のプログラムに沿って電気的に行われるものであり、従って医療用ペースト混練装置9には図示しないが撹拌エラーを知らせる報知手段(報知ランプの点滅や警報音の発生など)が設けてある。この撹拌エラー情報によりペーストの混練不足が判るから、混練不足のペーストを誤って使用するおそれがない。
【0030】
以上本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では駆動手段として電動モータ12を使用したが、手回し式のハンドルを駆動手段としてもよい。
また、実施形態のロッド支持部材11は、支台11bに立設した摺動ガイド部11c,11c…でロッド5を囲っているが、例えば図4に示したようにロッド5の周りを囲うカバー部11dを設けるようにしてもよい。そうすることにより、内部機構と外部とを仕切ることができるため、外部に対してモータ等の複雑な内部機構の露出を防ぐことができる。なお、好ましくは図5に示したようにロッド支持部材11をカップ状にして摺動ガイド部11c,11c…とカバー部11dを一体にするとよい。そうすることにより、カバー部11dと摺動ガイド部11cが別体である場合に比べて低コストであり、また、丸棒状の摺動ガイド部11c,11c…を立設する場合に比べて組み立てが容易になるメリットがある。
【0031】
また、実施形態ではロッド5にハンドル部5dを設けたが、図6に示したようにロッド5のハンドル部5dを無くすることもできる。すなわち、ロッド5の軸部5aの先端にはハンドル部5d取付用の弾性爪片5e,5eが設けられているため、該弾性爪片5e,5eを利用してロッド支持部材11の角軸アタッチメント11eを装着する。この角軸アタッチメント11eは、支台11bの角穴11fに摺動可能な状態で貫通していて支台11bと一緒に回転する。また、角軸アタッチメント11eはロッド5が回転して上記の要領で移動すると支台11bの角穴11f内を摺動して一緒に移動する。なお、図6において符号11gは支台11bの下端に固着した歯車であり、該歯車11gに電動モータ12の歯車12bが噛合する。
【0032】
また、実施形態ではシリンダ3を不動状態に固定し、ロッド5を動かすようにしたが、図7に示したように、シリンダ支持部材10を装置基台13に対して摺動可能且つ回転不能に装着し、一方、ロッド支持部材11に対してロッド5を摺動不能且つ回転可能に装着するようにしてもよい。この場合、ロッド支持部材11の回転でロッド5を回転させると、前記雄ネジ5bと雌ネジ6bの螺合によりシリンダ3がシリンダ支持部材10ごと往復直線運動を行う。なお、図7において符号11hはロッド5のハンドル部5dを支台11bに固定するための押さえ金具である。
また、同様にロッド5を不動状態に固定してシリンダ3を回転可能且つ摺動可能にするか、或はシリンダ3を摺動不能且つ回転可能に装着し、ロッド5を摺動可能且つ回転不能に装着してもよい。これらの何れの態様によってもシリンダ3とロッド5に相対的な直線運動と相対的な回転運動を行わせることができる。
【0033】
また、実施形態ではペースト混練注入器1のロッド5の雄ネジ5bとピストン6の雌ネジ6bの螺合関係を利用してロッド5の回転運動を回転を伴う直線運動に変換するようにしたが、ロッド5とピストン6を単純な丸棒と丸孔の嵌め合わせに変更し、ロッド支持部材11の支台11bを回転させながら直線方向に移動させるようにしてロッド5に実施形態と同様の動きをさせてもよい。また、ロッド支持部材11でロッド5を(又はシリンダ支持部材10でシリンダ3を)定位置で回転させ、シリンダ支持部材10でシリンダ3を(又はロッド支持部材11でロッド5を)直線運動させる、というようにロッド支持部材11とシリンダ支持部材10の双方を駆動させるようにしてもよい。これらの場合ピストン6は、専用の押出装置の押圧シャフトで押し込むことになる。
【0034】
また、実施形態ではハンドル部5dの溝5cの数と摺動ガイド部11cの数を一致させたが、摺動ガイド部11cの数を溝5cの数より少なくしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】医療用ペーストユニットの分解斜視図である。
【図2】医療用ペーストユニットの縦断面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】他の形態を示すX−X線相当断面図である。
【図5】他の形態を示すX−X線相当断面図である。
【図6】他の形態を示す医療用ペーストユニットの縦断面図である。
【図7】他の形態を示す医療用ペーストユニットの縦断面図である。
【図8】ペースト混練注入器の撹拌時の状態を示す縦断面図である。
【図9】ペースト混練注入器の押出し時の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 …ペースト混練注入器
3 …シリンダ
4 …撹拌部材
5 …ロッド
5a …軸部
5b …雄ネジ
5c …溝
5d …ハンドル部
6 …ピストン
6b …雌ネジ
9 …医療用ペースト混練装置
10 …シリンダ支持部材
11 …ロッド支持部材
11b …支台
11c …摺動ガイド部
11d …カバー部
12 …電動モータ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーストを入れるシリンダと、該シリンダの軸心方向への直線運動とシリンダの軸心を中心とする回転運動との組合せによってシリンダ内のペーストを撹拌する撹拌部材と、該撹拌部材から延びてシリンダ外に突出するロッドと、ペースト押出し用のピストンと、を備えたペースト混練注入器に使用するものであって、
前記ペースト混練注入器のシリンダ側を支持するシリンダ支持部材と、
前記ペースト混練注入器のロッド側を支持するロッド支持部材と、
シリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を作動させる駆動手段と、を備え、
前記シリンダ支持部材とロッド支持部材は、前記シリンダとロッドとを、シリンダの軸心方向に対する相対的な直線運動と、シリンダの軸心を中心とする相対的な回転運動が可能なように夫々を支持するようになし、さらに駆動手段によりシリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を作動させてシリンダとロッドに前記相対的な直線運動と相対的な回転運動とを同時に行わせるようにしたことを特徴とする医療用ペースト混練装置。
【請求項2】
前記ペースト混練注入器は、ロッドの軸部に雄ネジを形成すると共に該雄ネジを少なくともペースト撹拌時においてシリンダと一体である部材に形成した雌ネジに螺合させ、そうしてロッドの回転運動を回転を伴う直線運動に変換して撹拌部材によるペーストの撹拌を行わせるようにしたものであり、
前記ロッド支持部材は、シリンダの軸心を中心とする回転力の前記ロッドへの伝達を可能とし且つシリンダの軸心方向へのロッドの移動を可能とするスプライン嵌め合い様の結合構造によりロッドを支持し、
一方、シリンダ支持部材は、前記ペースト混練注入器のシリンダを固定的に支持するようにしたことを特徴とする請求項1記載の医療用ペースト混練装置。
【請求項3】
前記ペースト混練注入器は、ロッドの軸部に雄ネジを形成すると共に該雄ネジを少なくともペースト撹拌時においてシリンダと一体である部材に形成した雌ネジに螺合させ、そうしてロッドの回転運動を回転を伴う直線運動に変換して撹拌部材によるペーストの撹拌を行わせるようになし、さらにロッドのハンドル部の周壁面に軸部の軸心と平行な溝を刻設したものであり、
前記ロッド支持部材は、支台に前記ハンドル部の溝に嵌まる棒状の摺動ガイド部を立設したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の医療用ペースト混練装置。
【請求項4】
前記ロッド支持部材にロッドの周りを囲うカバー部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用ペースト混練装置。
【請求項5】
前記シリンダ支持部材及び/又はロッド支持部材を作動させる駆動手段が電動モータであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用ペースト混練装置。
【請求項6】
前記電動モータに流れる電流又は印加する電圧の上昇を検知して過負荷による電動モータの停止を検出し、電動モータを逆回転させるようにしたことを特徴とする請求項5記載の医療用ペースト混練装置。
【請求項7】
前記電動モータにエンコーダーを設けてパルス信号を出力させ、撹拌の正常終了判定用に予め設定したパルス信号と前記パルス信号とを比較して撹拌エラーを検出するようにしたことを特徴とする請求項5又は6記載の医療用ペースト混練装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医療用ペースト混練装置にペースト混練注入器を装着してなることを特徴とする医療用ペーストユニット。
【請求項9】
前記シリンダ内にリン酸カルシウム粉末を装填してなることを特徴とする請求項8記載の医療用ペーストユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−20746(P2007−20746A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205049(P2005−205049)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】