説明

医療用光照射装置

【課題】副作用を抑制しつつ腫瘍組織を適確に治療することができ、特に深部固形癌の治療に有効な医療用光照射装置を提供する。
【解決手段】先端が人体の内部に挿入されるカテーテルシャフト10と、非連続的に光を発する光源装置20と、を備え、光源装置20から発せられた光をカテーテルシャフト10の基端側から先端側へと伝達して人体に照射するための医療用光照射装置1であって、治療用薬剤を供給する薬剤供給源30と、薬剤供給源30から供給された薬剤をカテーテルシャフト10内部の基端側から先端側へと流通させて人体の特定部位に到達させるための薬剤供給流路31・32と、光源装置20から発せられた光をカテーテルシャフト10内部の基端側から先端側へと伝達する光ファイバ40と、光源装置20から発せられ伝達された光を拡散させるように光ファイバ40の先端に設けられた光拡散手段50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、肺癌、消化器癌、皮膚癌、膀胱癌等の表在性の上皮癌の治療を目的とした光線力学的治療(Photodynamic Therapy: 以下「PDT」と称する)が提案され、実用化されている。PDTは、生物細胞内に取り込まれた光感受性物質を利用し、光を照射することにより光感受性物質を活性化させ、その組織において有益な生物学的反応を得る治療方法である。
【0003】
現在においては、脆弱性プラークやアテローム性動脈硬化症等のような循環器系疾患の適応症の治療分野に、カテーテル及び光ファイバを使用したPDT用の光照射装置に関する技術が適用されている。例えば、光を目的組織に照射する際に障害となる血液を排除するバルーンカテーテルを利用して血液除去を行い、発光部分周辺から血液を取り除いた状態で光ファイバを介して目的組織に光を照射する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−534409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、将来的に、外科的手術や放射線治療が困難な深部固形癌(肝臓癌や膵臓癌)の治療分野にPDTが有効利用されることが期待されている。体内深層部における腫瘍組織はその成長のために周囲に血管を形成する。このため、近年においては、その血管を通じてカテーテルにより光感受性物質を腫瘍組織に浸透させ、かつ、このカテーテルを通じて光ファイバを腫瘍組織の近辺まで到達させることにより、光感受性物質と光を同時に腫瘍組織に到達させて腫瘍組織を破壊する、という治療方法の開発が進められている。
【0006】
前記特許文献1に開示された方法は、血管内に挿入したカテーテルから血管内壁への光照射治療を行う場合には有効であると考えられる。しかし、このような従来の方法は、PDTの有効利用が期待されている深部固形癌の治療分野において、体内深層部に存在する腫瘍組織への光照射治療を行う場合には、依然として改善の余地があった。体内の腫瘍組織に光を照射するためには、血管内に挿入したカテーテルの先端のさらに先に存在する腫瘍組織に向けて精確に光を照射する必要があるためである。また、従来採用されていた光ファイバでは、先端からの光の照射範囲が狭いため、腫瘍組織を広範囲にわたって治療することが困難であることが予測される。
【0007】
また、従来PDTで使用されていた光はレーザや紫外線等の特殊な光線であり、そのための特殊な光発生装置を必要とするため、光源装置自体の構造が複雑になることから、PDT実施に要する費用が嵩むという問題があった。さらに、このようなレーザ等の一定強度の光線を採用した場合には、連続照射に起因して、対象組織の光線に対する耐性が発生する可能性があり、これがPDTの有効性を制限する原因となることが考えられる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、副作用を抑制しつつ腫瘍組織を適確に治療することができ、特に深部固形癌の治療に有効な医療用光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る医療用光照射装置は、先端が人体の内部に挿入されるカテーテルシャフトと、光を発する光源装置と、を備え、光源装置から発せられた光をカテーテルシャフトの基端側から先端側へと伝達して人体に照射するための医療用光照射装置であって、治療用薬剤を供給する薬剤供給源と、薬剤供給源から供給された薬剤をカテーテルシャフト内部の基端側から先端側へと流通させて人体の特定部位に到達させるための薬剤供給流路と、光源装置から発せられた光をカテーテルシャフト内部の基端側から先端側へと伝達する光ファイバと、光源装置から発せられ伝達された光を拡散させるように光ファイバの先端に設けられた光拡散手段と、を備え、光源装置は、非連続的に光を発するように構成されるものである。
【0010】
かかる構成を採用すると、カテーテルシャフトの先端を人体(例えば腫瘍組織周囲に形成された血管)の内部に挿入し、カテーテルシャフト内部の薬剤供給流路を経由して供給された治療用薬剤を人体の特定部位(例えば腫瘍組織)に到達させ、カテーテルシャフト内部の光ファイバを経由して伝達された光を患部に照射することにより、特定の治療効果(例えば腫瘍組織の破壊)を得ることができる。この際用いられる光は、光源装置から非連続的(所定の時間間隔で間欠的)に発せられるため、光線の連続照射に起因する副作用(対象組織の光線に対する耐性の発生等)を抑制することが可能となる。また、光ファイバの先端には、光源装置からの光を拡散させる光拡散手段が設けられているため、人体の特定部位(例えば腫瘍組織)の広範囲にわたって光を照射することができ、この結果、良好な治療効果をあげることが可能となる。また、正常組織に対する浸襲度が低いため、繰り返し長時間にわたり治療を行うことが可能となり、抗腫瘍効果を増強することができる。
【0011】
前記医療用光照射装置において、ストロボ光源を有する光源装置を採用することが好ましい。
【0012】
キセノンガスの良好な放電特性を利用して短時間発光を行うストロボ光源を採用することにより、レーザや紫外線等を採用した従来のPTD用光源装置と比較して、光源装置の構造を簡素にすることができる。この結果、装置全体の費用やPDT実施に要する費用を削減することが可能となる。
【0013】
また、前記医療用光照射装置において、ストロボ光源の発光周期を調整する発光周期制御手段を有する光源装置を採用することができる。かかる場合において、発光周期制御手段は、発光周期を例えば数十ms〜数百ms(発光周波数:数Hz〜数十Hz)の範囲で設定することができる。
【0014】
また、前記医療用光照射装置において、ストロボ光源の閃光時間を調整する閃光時間制御手段を有する光源装置を採用することができる。かかる場合において、閃光時間制御手段は、閃光時間のデューティ比(発光周期に対する閃光時間の割合)を例えば0.1以上に設定することができる。
【0015】
また、前記医療用光照射装置において、発する光の照射強度を調整する発光強度制御手段を有する光源装置を採用することができる。かかる場合において、照射強度を10000lux以上に設定する発光強度制御手段を採用することができる。
【0016】
このようにストロボ光源の発光周期や閃光時間のデューティ比を調整したり、光の照射強度を調整したりすることにより、一層良好な治療効果をあげることが可能となる。
【0017】
また、前記医療用光照射装置において、150°以上の照射角で光を照射させる光拡散手段を採用することができる。
【0018】
かかる構成を採用すると、光ファイバを経由して伝達された光を150°以上の照射角で照射することができるので、より良好な治療効果をあげることが可能となる。
【0019】
また、前記医療用光照射装置において、カテーテルシャフトの先端に設けられたバルーンと、膨張流体をカテーテルシャフト内部の基端側から先端側のバルーンへと供給するための流体供給流路と、をさらに備えることができる。
【0020】
かかる構成を採用すると、カテーテルシャフト内部の流体供給流路を経由して膨張流体をバルーンに供給することにより、バルーンを膨張させることができる。従って、例えばカテーテルシャフトの先端を人体の腫瘍組織周囲に形成された血管の内部に挿入した場合において、膨張させたバルーンにより腫瘍組織近傍の血管を一時的に閉塞することができる。この結果、腫瘍組織近傍の血管内の血液を一時的に除去して、腫瘍組織への光の到達効率を高めることができるので、より良好な治療効果をあげることが可能となる。
【0021】
また、前記医療用光照射装置において、カテーテルシャフト内部の流体供給流路を経由して供給した生理食塩水をカテーテルシャフトの先端から放出させるフラッシング機構を備えることもできる。
【0022】
かかる構成を採用すると、生理食塩水によって一時的に血流を薄めることにより、カテーテル先端から先に向けての光の透過性を高めることができる。従って、光の到達効率が高まり、より良好な治療効果をあげることが可能となる。なお、このフラッシング機構と前記したバルーン構造とを併用することにより、光の到達効率をより一層高めることが可能となる。
【0023】
また、前記医療用光照射装置において、治療用薬剤として光感受性物質を採用することが好ましい。光感受性物質としては、特に、アクリジンオレンジが好適である。また、前記医療用光照射装置は、深部固形癌(肝臓癌や膵臓癌)の治療に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、副作用を抑制しつつ腫瘍組織を適確に治療することができ、特に深部固形癌の治療に有効な医療用光照射装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る医療用光照射装置の構成を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る医療用光照射装置について説明する。本実施形態に係る医療用光照射装置は、肝臓癌や膵臓癌等の深部固形癌の治療に好適に使用されるものである。
【0027】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る医療用光照射装置1の構成について説明する。医療用光照射装置1は、先端12が人体(腫瘍組織Tの周辺に形成された血管V)の内部に挿入されるカテーテルシャフト10と、治療用の光を発する光源装置20と、を備え、光源装置20から発せられた光をカテーテルシャフト10の基端11側から先端12側へと伝達して人体(腫瘍組織T)に照射させることにより、特定の治療効果(腫瘍組織Tの破壊)を得るものである。
【0028】
医療用光照射装置1は、図1に示すように、治療用薬剤としての光感受性物質Aを供給する薬剤供給源30、薬剤供給源30から供給された薬剤をカテーテルシャフト10内部の基端側から先端側へと流通させて人体の特定部位(腫瘍組織T)に到達させるための薬剤供給流路31・32、光源装置20から発せられた光をカテーテルシャフト10内部の基端側から先端側へと伝達する光ファイバ40、光源装置20から発せられ伝達された光を拡散させるように光ファイバ40の先端に設けられた光拡散手段50、カテーテルシャフト10の先端付近に設けられたバルーン60、膨張流体をカテーテルシャフト10内部の基端側から先端側のバルーン60へと供給するための流体供給流路61等をさらに備えている。
【0029】
カテーテルシャフト10は、細長い中空の可撓性部材であり、挿入される血管Vの内径よりも小さい外径を有している。カテーテルシャフト10の基端11は、使用時に人体の外部に残される一方、カテーテルシャフト10の先端12は、使用時に腫瘍組織Tの周辺に形成された血管Vの内部に挿入される。カテーテルシャフト10は、可撓性を有する合成樹脂材料やゴム材料で構成することができる。材料として特にシリコンやポリウレタンを採用すると、血管V内における血栓の形成を抑制することができるため、カテーテルシャフト1を血管V内に長期的に留置することが可能となり、好ましい。
【0030】
光源装置20は、ストロボ光源21と、ストロボ光源21の発光周期や閃光時間を調整する発光制御部22と、使用者によって操作される図示していない操作部と、を有しており、非連続的に光を発するように構成されている。ストロボ光源21は、キセノンガスの放電特性を利用して短時間発光を行う光源である。キセノンガスは、発光スペクトルが太陽光に近く、発光効率も良好であり、ガスの熱容量が小さいため、短時間発光が可能であるという特性を有する。このため、ストロボ光源21は、数百kHz以上の高周波発光や閃光時間数十ns以下の極短時間発光が可能である。
【0031】
本実施形態における発光制御部22は、ストロボ光源21の発光周期を数十ms〜数百ms(発光周波数:数Hz〜数十Hz)の範囲で設定するとともに、ストロボ光源21の閃光時間のデューティ比(発光周期に対する閃光時間の割合)を0.1以上に設定している。すなわち、発光制御部22は、本発明における発光周期制御手段及び閃光時間制御手段として機能するものである。
【0032】
本実施形態における発光制御部22は、このようにストロボ光源21の発光周期及び閃光時間を調整することにより、光源装置20の照射強度を10000lux以上に設定する。すなわち、発光制御部22は、本発明における発光強度制御手段としても機能するものである。
【0033】
薬剤供給源30から供給される光感受性物質Aとしては、アクリジンオレンジ、ヘマトポルフィリン、ポルフィリン、アミノリュブリックアシド、アクリフラビン、リボフラビン、ローダミン、アントシアニン、フタロシアニン等を挙げることができ、特にアクリジンオレンジを採用することが好ましい。アクリジンオレンジは、(1)DNAやRNAと結合する、(2)酸性の細胞内小器官に取り込まれる、(3)光に対して励起しエネルギを放出する、等の特性を有しており、腫瘍細胞に取り込まれ易い光感受性物質である。薬剤供給流路31・32は、カテーテルシャフト10の内部に配置されており、薬剤供給源30から供給された光感受性物質Aを基端側から先端側へと流通させ、腫瘍組織Tに到達させる。
【0034】
光ファイバ40は、カテーテルシャフト10の内部に配置されており、基端側の光源装置20から所定の発光周期及び閃光時間で照射されたストロボ光を先端側の腫瘍組織Tへと伝達する。光ファイバ40としては、石英系、合成樹脂系、多成分ガラス系のものを採用することができ、特に、柔軟性に優れた多成分ガラス系が好ましい。光ファイバ40は、光源装置20のストロボ光源21に接続されている。
【0035】
具体的には、光ファイバ40は、ストロボ光源21からの光が、光ファイバ40の前後左右の動きに影響されることなく、ストロボ光源21と光ファイバ40との接続面に常に正確に集光するように固定された接続方式(例えばFCコネクタ方式、SCコネクタ方式、LCコネクタ方式等)でストロボ光源21に接続されている。かかる方式により、ストロボ光源21から照射されたストロボ光を、光ファイバ40の動きに拘らず効率良く(ストロボ光の損失を抑制した状態で)光ファイバ40に伝達させることができる。
【0036】
光拡散手段50は、光源装置20から発せられ光ファイバ40を介して伝達されたストロボ光Lを広角にわたって照射(拡散)させるように光ファイバ40の先端に取り付けられている。光拡散手段50としては、ガラス材料や合成樹脂材料で構成された球状や多面体状の透明部材を採用することができる。また、光ファイバ40の先端から放射状に多数分岐する枝状部を有する透明部材を光拡散手段50として採用してもよい。本実施形態においては、150°以上の照射角で光を照射させる光拡散手段50を採用している。
【0037】
流体供給流路61は、カテーテルシャフト10の内部に設けられている。また、カテーテルシャフト10には、流体供給流路61を経由して供給された膨張流体をバルーン60に向けて流出させるための流出口62が設けられている。バルーン60は、図示されていない膨張流体源から流体供給流路61及び流出口62を経由して供給された膨張流体によって膨張するように構成される。バルーン60は、可撓性及び弾性を有する合成樹脂材料やゴム材料で構成することができる。
【0038】
なお、カテーテルシャフト10内部に、生理食塩水流通用の流体供給流路を別途設け、この流体供給流路を経由して供給した生理食塩水をカテーテルシャフト10の先端から放出させるフラッシング機構を採用することもできる。このようなフラッシング機構を採用すると、生理食塩水によって一時的に血流を薄めることにより、カテーテル先端から先に向けての光の透過性を高めることができる。従って、光の到達効率が高まり、より良好な治療効果をあげることが可能となる。このようなフラッシング機構を、バルーン構造と併用することにより、光の到達効率をより一層高めることが可能となる。
【0039】
次に、本実施形態に係る医療用光照射装置1の使用方法について説明する。
【0040】
まず、医師等の使用者は、体内深層部に存在する腫瘍組織Tの周辺に形成された血管Vの内部にカテーテルシャフト10を挿入し、カテーテルシャフト10の先端12が腫瘍組織Tに接するところまでカテーテルシャフト10を移動させる。次いで、使用者は、薬剤供給源30から光感受性物質Aを供給し、薬剤供給流路31・32を経由させて光感受性物質Aをカテーテルシャフト10の先端12まで流通させ、光感受性物質Aを腫瘍組織Tに到達させる。この際、光感受性物質Aが腫瘍組織Tに充分に浸透するように、薬剤供給源30から光感受性物質Aを所定の時間間隔で複数回にわたって供給する。
【0041】
続いて、使用者は、光源装置20の操作部を操作して発光制御部22に操作信号を入力することにより、特定の発光周期及び閃光時間でストロボ光源21からストロボ光を照射させる。このように照射されたストロボ光は、光ファイバ40を経由してカテーテルシャフト10の先端12まで伝達され、光拡散手段50によって拡散させられて腫瘍組織Tの特定部分(光感受性物質Aが浸透した部分)に広角にわたって照射される。これにより、腫瘍組織Tを効果的に破壊することが可能となる。なお、治療のためにストロボ光を照射する時間は、腫瘍組織Tの大きさや位置等によって適宜変更することができ、例えば(非閃光時間を含めた)通算で1分〜30分程度とすることができる。
【0042】
以上説明した実施形態に係る医療用光照射装置1においては、カテーテルシャフト10の先端12を人体(腫瘍組織T周囲に形成された血管V)の内部に挿入し、カテーテルシャフト10内部の薬剤供給流路31・32を経由して供給された光感受性物質Aを腫瘍組織Tに到達させ、カテーテルシャフト10内部の光ファイバ40を経由して伝達されたストロボ光を腫瘍組織Tに照射することにより、特定の治療効果(腫瘍組織Tの破壊)を得ることができる。この際用いられるストロボ光は、光源装置20から非連続的(所定の時間間隔で間欠的)に発せられるため、光線の連続照射に起因する副作用(対象組織の光線に対する耐性の発生等)を抑制することが可能となる。また、光ファイバ40の先端には、光源装置20からの光を拡散させる光拡散手段50が設けられているため、腫瘍組織Tの広範囲にわたって光を照射することができ、この結果、良好な治療効果をあげることが可能となる。また、正常組織に対する浸襲度が低いため、繰り返し長時間にわたり治療を行うことが可能となり、抗腫瘍効果を増強することができる。
【0043】
また、以上説明した実施形態に係る医療用光照射装置1においては、キセノンガスの良好な放電特性を利用して短時間発光を行うストロボ光源21を採用しているため、レーザや紫外線等を採用した従来のPTD用光源装置と比較して、光源装置20の構造を簡素にすることができる。この結果、装置全体の費用やPDT実施に要する費用を削減することが可能となる。
【0044】
また、以上説明した実施形態に係る医療用光照射装置1においては、ストロボ光源21の発光周期を数十ms〜数百ms(発光周波数:数Hz〜数十Hz)の範囲で設定するとともに、ストロボ光源21の閃光時間のデューティ比を0.1以上に設定し、総じてストロボ光源21の照射強度を10000lux以上に設定することができる。また、医療用光照射装置1においては、光ファイバ40を経由して伝達された光を150°以上の照射角で照射することができる。これらの相乗作用により、良好な治療効果をあげることが可能となる。
【0045】
また、以上説明した実施形態に係る医療用光照射装置1においては、カテーテルシャフト10内部の流体供給流路61を経由して膨張流体をバルーン60に供給することにより、バルーン60を膨張させることができる。従って、膨張させたバルーン60により腫瘍組織T近傍の血管Vを一時的に閉塞することができ、腫瘍組織T近傍の血管V内の血液を一時的に除去して、腫瘍組織Tへのストロボ光の到達効率を高めることができる。この結果、良好な治療効果をあげることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1…医療用光照射装置
10…カテーテルシャフト
11…基端
12…先端
20…光源装置
21…ストロボ光源
22…発光制御部(発光周期制御手段、閃光時間制御手段、発光強度制御手段)
30…薬剤供給源
31・32…薬剤供給流路
40…光ファイバ
50…光拡散手段
60…バルーン
61…流体供給流路
A…光感受性物質(治療用薬剤)
L…ストロボ光
T…腫瘍組織
V…血管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が人体の内部に挿入されるカテーテルシャフトと、光を発する光源装置と、を備え、前記光源装置から発せられた光を前記カテーテルシャフトの基端側から先端側へと伝達して人体に照射するための医療用光照射装置であって、
治療用薬剤を供給する薬剤供給源と、
前記薬剤供給源から供給された薬剤を前記カテーテルシャフト内部の基端側から先端側へと流通させて人体の特定部位に到達させるための薬剤供給流路と、
前記光源装置から発せられた光を前記カテーテルシャフト内部の基端側から先端側へと伝達する光ファイバと、
前記光源装置から発せられ伝達された光を拡散させるように前記光ファイバの先端に設けられた光拡散手段と、を備え、
前記光源装置は、非連続的に光を発するように構成される、
医療用光照射装置。
【請求項2】
前記光源装置は、ストロボ光源を有する、
請求項1に記載の医療用光照射装置。
【請求項3】
前記光源装置は、前記ストロボ光源の発光周期を調整する発光周期制御手段を有する、
請求項2に記載の医療用光照射装置。
【請求項4】
前記光源装置は、前記ストロボ光源の閃光時間を調整する閃光時間制御手段を有し、
前記閃光時間制御手段は、前記閃光時間のデューティ比を0.1以上に設定するものである、
請求項2又は3に記載の医療用光照射装置。
【請求項5】
前記光源装置は、発する光の照射強度を調整する発光強度制御手段を有し、
前記発光強度制御手段は、前記照射強度を10000lux以上に設定するものである、
請求項1から4の何れか一項に記載の医療用光照射装置。
【請求項6】
前記光拡散手段は、150°以上の照射角で光を照射させるものである、
請求項1から5の何れか一項に記載の医療用光照射装置。
【請求項7】
前記カテーテルシャフトの先端に設けられたバルーンと、
膨張流体を前記カテーテルシャフト内部の基端側から先端側の前記バルーンへと供給するための流体供給流路と、を備える、
請求項1から6の何れか一項に記載の医療用光照射装置。
【請求項8】
前記カテーテルシャフト内部の流体供給流路を経由して供給した生理食塩水を前記カテーテルシャフトの先端から放出させるフラッシング機構を備える、
請求項1から7の何れか一項に記載の医療用光照射装置。
【請求項9】
前記治療用薬剤は、光感受性物質である、
請求項1から8の何れか一項に記載の医療用光照射装置。
【請求項10】
前記光感受性物質は、アクリジンオレンジである、
請求項9に記載の医療用光照射装置。
【請求項11】
深部固形癌の治療に用いられるものである、
請求項1から10の何れか一項に記載の医療用光照射装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−87855(P2011−87855A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245657(P2009−245657)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(509296616)
【出願人】(509296627)株式会社アクリオージュ (1)
【Fターム(参考)】