説明

医療用材料

【課題】次世代の先端医療用具や人工臓器の開発のために、タンパク質や血球等の生体成分との相互作用が小さい等の生体適合性に優れたCMBを用いて得られる、超親水性の医療用材料及び該医療用材料を用いた医療用器具を提供すること。
【解決手段】式(I):


で表されるN-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタインを含有するモノマー組成物を、基材表面でブラシ状に重合させてなるポリマーブラシを含有してなる医療用材料、及び該医療用材料を用いてなる医療用器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用材料及び該医療用材料を用いた医療用器具に関する。さらに詳しくは、各種カテーテル、ガイドワイヤー、人工血管、血液透析膜、内視鏡、バイオチップ、細胞培養シート、糖鎖合成機器、分子シャペロン材料等の医療用器具に用いられ得る医療用材料及び該医療用材料を用いた医療用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、臨床で使用されるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等の医療用材料に用いられるポリマーは単に工業用材料用のものを転用したものであるため、血液適合性に関しては決して十分とは言えず、血液との接触に伴うタンパク質の表面吸着が原因で血栓が発生しやすい。血栓が形成されると血流を停止させたり、生成した血栓が血流と共に移動し、肺血栓症、脳血栓症、心筋梗塞、静脈炎等の合併症を引き起こしたりするおそれがある。
【0003】
従って、これらの医療材料を実際に用いる場合は、抗血液凝固剤を併用することが一般であるが、抗血液凝固剤の投与が長期に渡った場合、肝臓障害、出血時間の延長、アレルギー反応等の様々な副作用を生じるおそれがある。
【0004】
そこで、これらの課題を解決するために、リン脂質極性基であるホスホコリルコリンを高分子鎖の側鎖に持つポリ2−メタクリロリルオキシエチルホスホコリン(MPCポリマー)を用いた医療材料が提案されており、MPCポリマーは生体膜と同じ両性型のリン脂質を持つことで生体適合性に優れ、例えばその表面には血漿タンパク質が吸着されず、血小板の粘着や活性化などが誘発されないといった特徴を有することが示されている(特許文献1、2等参照)。
【0005】
しかしながら、MPCポリマーを構成する2-メタクリロリルオキシエチルホスホコリンは、その製造に煩雑な操作が必要とされ、純度を高めることが難しいこと、得られた結晶が直ぐに潮解して取り扱い難いこと等が影響して、合成高分子としては比較的高価である。
【0006】
一方、特許文献3、4には、MPCに比べると比較的安価で取り扱いも容易なグリシン型の両性基を持つN-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン(CMB)のポリマーも、前記MPCポリマーと同じく優れた生体適合性を持つことが開示されている。
【特許文献1】特開昭54−63025号公報
【特許文献2】特開2000−279512号公報
【特許文献3】特開2007−130194号公報
【特許文献4】国際公開第2005/113620号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3、4には、CMBと疎水性モノマーとの共重合体をあらかじめ作製し、材料表面に製膜する方法が記載されているが、疎水性モノマーを全く使用しない場合や、極端に減らした場合、水に対して溶解してしまい、材料表面の生体適合性を保持できなくなる可能性がある。また、異なる方法として材料表面に自己組織化させ、表面と共有結合する方法も記載されているが、CMBの繰り返し単位を大きくすることが難しく、親水性を保持することが困難である。
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、次世代の先端医療用具や人工臓器の開発のために、タンパク質や血球等の生体成分との相互作用が小さい等の生体適合性に優れたCMBを用いて得られる、超親水性の医療用材料及び該医療用材料を用いた医療用器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
で表されるN-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタインを含有するモノマー組成物を、基材表面でブラシ状に重合させてなるポリマーブラシを含有してなる医療用材料、及び該医療用材料を用いてなる医療用器具に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用材料は、次世代の先端医療用具や人工臓器の開発のために、タンパク質や血球などの生体成分との相互作用がないか、あっても小さい等の優れた生体適合性を有するCMBを用いて得られるものであり、超親水性を有するものである。さらに、本発明の医療用材料に用いられるCMBは、天然物に比べて安価に入手することのできるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の医療用材料は、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン(CMB)を含有するモノマー組成物を、基材表面でブラシ状に重合させて、得られるものである。モノマー組成物をブラシ状に重合させることにより、基材表面に自己組織化した膜を形成させる場合と比較して、タンパク質の非特異的吸着が格段に少なくなり、また、表面の親水性が高まり、水の濡れやすい表面を構築することができる。
【0014】
基材としては、特に限定されないが、医療用材料として一般的な素材を用いることができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロース、セルロース誘導体、ポリシリコーン、ガラス、セラミック、金属等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は組み合わせて使用してもよい。
【0015】
CMBは、式(I):
【0016】
【化2】

【0017】
で表される化合物である。CMBからなるポリマーは、その表面に存在する水のクラスターが保持されており、タンパク質や血小板の吸着が極めて少ないという利点がある。従って、CMBを用いることにより、生体適合性に優れたポリマーが得られる。
【0018】
CMBは、例えば、特開平9−95474号公報、特開平9−95586号公報、特開平11−222470号公報等に記載されている方法により、容易に高純度で調製することができる。
【0019】
CMBの含有量は、モノマー組成物中、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0020】
モノマー組成物には、表面の耐水性付与や、レオロジー特性の制御の観点から、式(II):
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は有機基を示す)
で表される重合性モノマーが含有されていてもよい。
【0023】
式(II)において、R1は水素原子またはメチル基、R2は有機基を示す。R2が示す有機基の代表例としては、−COOR3基(R3は炭素数1〜22のアルキル基を示す)、−COO−R4−OH基(R4は炭素数1〜4のアルケニレン基を示す)、−CONR56基(R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)、−OCO−R7基(R7はメチル基又はエチル基を示す)、式(III):
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R8は炭素数3〜5のアルキレン基を示す)で表される基、式(IV):
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R9は炭素数2〜9のアルキル基、R10は水素原子又はメチル基)で表される基等が挙げられる。R2の中では、−COO−R4−OH基、−CONR56基、−COOR3基及び式(III)で表される基は、生体適合性の観点から好ましい。
【0028】
式(II)で表される重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、スチレン、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等の単官能モノマー、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0029】
上記重合性モノマーの中では、生体適合性の観点から、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」は、「アクリ」又は「メタクリ」を意味する。
【0031】
式(II)で表される重合性モノマーの好適な量は、本発明の医療用材料が接触する生体部位、使用目的等により異なるため一概には決定できないが、樹脂の親水性、耐水性、生体成分吸着性、剛性、加工成型のやりやすさ等にも関与する。これらの観点から、重合性モノマー(B)の量は、モノマー組成物中、95重量%以下が好ましく、生体適合性の観点から、90重量%以下がより好ましい。
【0032】
モノマー組成物の重合は、分子量分布を制御するという観点から、原子移動ラジカル重合法により行うことが好ましく、本発明の医療用材料は、例えば、基材の表面で、モノマー組成物を、重合開始剤の存在下で、原子移動ラジカル重合法(ATRP)により重合させて、基材表面にポリマーブラシを形成させる工程を経て、作製することができる。
【0033】
重合開始剤としては有機シラン系化合物であることが好ましい。有機シラン系化合物としては、(11-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ)ウンデシルトリクロロシラン、(4-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ)ブチルトリクロロシラン、(6-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ)ヘキシルトリクロロシラン、(8-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ)オクチルトリクロロシラン等の反応性シラン含有開始剤が挙げられる。
【0034】
重合開始剤の量は、モノマー100モルに対して、0.001〜10モルが好ましく、0.01〜5モルがより好ましい。
【0035】
モノマー組成物の重合は、例えば、基材を、モノマー組成物、重合開始剤、及び有機溶剤の混合液中に浸漬させて、行うことができる。基材としてガラス板等の水酸基を有する基材を、重合開始剤として有機シラン系化合物を用いる場合は、予め、基材表面にシランカップリング処理を施し、有機シラン系化合物を付着させることが好ましい。
【0036】
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、n-ヘキサン、c-ヘキサン等の炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル類等通常の溶液重合用いられる溶剤が挙げられる。有機溶剤は、予め不活性ガス等を用いて脱気したものを用いることが好ましい。
【0037】
有機溶剤の使用量は、モノマー組成物を含む溶液中のモノマー組成物の濃度が、10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0038】
さらに、重合の際には、臭化銅、塩化銅等の1価の銅の塩、ビピリジル、トリスアミノジエチルアミン等の多価塩基、エチル-2-ブロモイソブチレート等の遊離の開始剤等を共存させてもよい。
【0039】
モノマー組成物を重合させる際の、温度、時間等の重合条件は、重合性モノマーや重合開始剤の種類によって適宜選択されるものであり、特に限定されず、モノマー組成物の重合は、不活性ガス雰囲気下、常温でも進行するが、得られるポリマー中の未反応モノマーの残存量は少量であるほど好ましい。モノマー組成物の重合は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気中で行うことが好ましい。
【0040】
重合反応の終了や反応系内における未反応モノマーの有無は、ガスクロマトグラフィー等の一般的な分析方法にて確認することができる。
【0041】
モノマー組成物の重合体の重量平均分子量は、ポリマーのレオロジー特性や、親水、疎水バランスの観点から、1,000〜1,000,000が好ましく、5000〜100,000がより好ましい。重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定される。
【0042】
基材表面上に、CMBを用いて得られたポリマーブラシを有する本発明の医療用材料は、高い親水性を呈し、タンパク質の吸着も阻害される。そのため、本発明の医療用材料は、公知の医薬品、医薬部外品、医療用器具等に用いることができる。医療用器具としては、ドラックデリバリーシステム材、pH調整剤、成型補助材、包装材、人工血管、血液透析膜、カテーテル、ガイドワイヤー、コンタクトレンズ、血液フィルター、血液保存パック、内視鏡、人工臓器、バイオチップ、細胞培養シート、糖鎖合成機器、分子シャペロン材料等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
〔工程1:基材表面へのシランカップリング処理〕
(11-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ)ウンデシルトリクロロシラン(Br-PUCS)1.82g(4mmol)をトルエン15mLに溶解させ、カップリング溶液を調製した。両面にそれぞれ1時間ずつUV/オゾン洗浄を行ったガラス板(24mm×12mm)をサンプル瓶に入れ、ガラス板が完全に浸るようにカップリング溶液を加えて蓋をし、常温で反応させ(スキーム1)。18時間反応させた後、ガラス板を取り出しトルエンを用いて洗浄し、窒素ガスで乾燥させて、表面上に重合開始剤であるBr-PUCS 2が付着したガラス板1を得た(図1(a))。
【0045】
【化6】

【0046】
〔工程2:基材表面からのCMBの重合〕
サンプル瓶に、臭化銅(CuBr)30.9mg(0.2143mmol)、2,2’-ビピリジル67.0mg(0.4286mmol)及びCMB 1.007g(4.317mmol)を入れ、エチル-2-ブロモイソブチレート 32μL(0.2143mmol)、アルゴンガスバブリングで脱気したメタノール 10mL、及び工程1でシランカップリング処理を施したガラス板を入れ、アルゴンガスで空気を追い出し、蓋を閉めて、原子移動ラジカル重合(ATRP)を開始した(スキーム2)。エチル-2-ブロモイソブチレートは遊離のCMBポリマーを得るための遊離の開始剤として用いた。6時間後、蓋を開け、空気と溶液を接触(失活)させて反応終了とし、ガラス板を取り出して、エタノール、水で洗浄した後、窒素ガスで乾燥させ、表面にCMBのポリマー鎖3からなるポリマーブラシ4を有するガラス板を得た(図1(b))。
【0047】
【化7】

【0048】
なお、上述の工程2で得られたCMBのポリマーブラシ部分の分子量を把握する目的で、Br-PUCSが付着したガラスを用いずに、単独でCMBポリマーを合成した。
即ち、サンプル瓶に、臭化銅(CuBr)30.9mg(0.2143mmol)、2,2’-ビピリジル67.0mg(0.4286mmol)及びCMB 1.007g(4.317mmol)を入れ、エチル-2-ブロモイソブチレート 32μL(0.2143mmol)及びアルゴンガスバブリングで脱気したメタノール 10mLを入れ、アルゴンガスで空気を追い出し、蓋を閉めて、原子移動ラジカル重合(ATRP)を開始した。6時間後、蓋を開け、空気と溶液を接触(失活)させて反応終了とし、ガラス板を取り出して、エタノール、水で洗浄した後、窒素ガスで乾燥させ、遊離したCMBポリマーを得た。得られたCMBポリマーの重量平均分子量Mwは15600であり、n数(重合度)は平均で43.52であった。
【0049】
よってガラス表面にもCMBのn数が43.52のポリマー鎖が並んでいるものと推測される。
【0050】
比較例1
CMB 5.0gにエタノール25mLを加え、重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル70.8mg、連鎖移動剤として2-メルカプトエタノール0.15mLを加えて70℃で24時間重合させた後、濃縮し、さらに水に溶解させて透析により分画し(分画分子量1000)、凍結乾燥することにより、生成した重合体を回収した(収量3.6g)。得られた重合体の重量平均分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィーで調べたところ、11400であった。次に、得られた重合体1.0gをそれぞれ有機溶媒(メタノール)9gに溶解し、洗浄したカバーガラス上に滴下し、スピンコート法により製膜した。
【0051】
〔親水性評価〕
未修飾のガラス板、実施例1、比較例1で得られたガラス板を、精製水に24時間、浸した後、乾燥させた。浸水前と浸水・乾燥後のガラス板の水の接触角を計測した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
〔BCA(ビシンコニン酸, Bicinchonianate)法によるタンパク質吸着測定〕
未修飾のガラス板と実施例1で得られたガラス板を用い、BCA法を用いてタンパク質であるBSA(牛血清アルブミン, Bovine Serum Albumin)の吸着測定を行った。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
以上の結果より、実施例1の方法で得られたガラス板は、比較例1のガラス板に対して、水に対して長時間、浸漬した後も、表面の超親水性を保持することができ、また、タンパク質の吸着も防止されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の医療用材料は、各種カテーテル、ガイドワイヤー、人工血管、血液透析膜、内視鏡、バイオチップ、細胞培養シート、糖鎖合成機器、分子シャペロン材料等の医療器具に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1で行った医療用材料の製造過程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガラス板
2 Br-PUCS
3 ポリマー鎖
4 ポリマーブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で表されるN-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタインを含有するモノマー組成物を、基材表面でブラシ状に重合させてなるポリマーブラシを含有してなる医療用材料。
【請求項2】
モノマー組成物が、さらに、式(II):
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は有機基を示す)
で表される重合性モノマーを含有してなる、請求項1記載の医療用材料。
【請求項3】
モノマー組成物の重合が、原子移動ラジカル重合法により行われる、請求項1又は2記載の医療用材料。
【請求項4】
原子移動ラジカル重合法に用いられる重合開始剤が有機シラン系化合物である、請求項3記載の医療用材料。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の医療用材料を用いてなる医療用器具。

【図1】
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【公開番号】特開2010−57745(P2010−57745A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227242(P2008−227242)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】