説明

医療用画像記録装置及び医療用画像記録再生装置、医療用画像記録方法及び医療用画像記録再生方法、並びにプログラム

【課題】医療用機器から出力される画像データを、医療用機器による検査時に観察した画像と同じ画像を表示可能に記録すると共に、任意のタイミングの記録画像に対して所望の特徴画像を得る。
【解決手段】医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録装置は、観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成する画像演算部75と、入力された表示用画像を表示する表示部15と、表示部15に出力する表示用画像を、観察画像、又は画像演算部75で生成された特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える表示画像切り替え部と、画像情報記録部とを備える。表示画像切り替え部により画像切り替えが実施されたタイミング情報、特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び観察画像の画像情報を、画像情報記録部により画像ファイルに記録するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用画像記録装置及び医療用画像記録再生装置、医療用画像記録方法及び医療用画像記録再生方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡検査の検査結果は、検査部位を診断した医師の所見や内視鏡からの静止画像を添付して検査レポートとして纏められるが、内視鏡検査後に検査結果を再度読影する場合等に、検査部位やその周囲の患部の状態をより詳細に観察したい場合がある。そのようなとき、内視鏡検査時に動画像を記録しておけば、この記録された動画像を参照して読影することが可能となる。静止画像に加えて、検査開始からの動画像を連続記録する機能を有する内視鏡装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
また近年、可視短波長の狭帯域光を検査部位に照射して、生体組織表層の毛細血管像や、粘膜表面の微細模様の強調表示を行う特殊光診断が可能な内視鏡装置が用いられている。この種の内視鏡装置では、可視短波長の狭帯域光を検査部位に照射することで、従来では得られなかった生体組織の微細構造を観察することができる。また、狭帯域光を照射する他にも、白色光の照射で得られた内視鏡からの観察画像に対して、分光演算処理により任意に選定された波長域の分光推定画像を形成して、同様の特殊光診断を可能にした内視鏡装置がある(例えば、特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−66057号公報
【特許文献2】特開2006−255323号公報
【特許文献3】特開2006−255324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の各内視鏡装置によれば、内視鏡検査後であっても、記録された動画像データを再生することで検査部位の情報を表示させることができ、検査後の読影が可能となる。しかしながら、記録される動画像データは、白色照明光による通常観察画像のみであり、内視鏡検査時のどのタイミングで通常観察画像から特殊光診断(分光推定画像による診断)による分光推定画像に切り替えて観察していたかの履歴が残らない。そのため、内視鏡検査後において、内視鏡検査時に術者が画像切り替えを行って観察した画像情報を検査時の通りに再現することができず、例えば検査時に病巣部を診察しているときに、術者がどのような条件の分光推定画像で患部を診断していたのか不明となる。
【0006】
一方、内視鏡画像を表示する表示部へ出力される信号をそのまま動画像データとして記録する場合、通常観察画像と分光推定画像との双方が記録される。しかし、含まれる波長成分が限られる分光推定画像として記録された画像情報からは通常画像を再現することができず、また特定の波長域の分光推定画像を求める分光演算処理を破綻なく正常に行うことができない。その結果、内視鏡検査後の読影時において、記録画像から患部を詳細に診察することは難しい状況となる。
そこで本発明は、医療用機器から出力される画像データを、医療用機器による検査時に観察した画像と同じ画像を表示可能に記録すると共に、任意のタイミングの記録画像に対して所望の特徴画像を得ることができる医療用画像記録装置及び医療用画像記録再生装置、医療用画像記録方法及び医療用画像記録再生方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記構成からなる。
(1) 医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録装置であって、
前記観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成する画像演算部と、
入力された表示用画像を表示する表示部と、
前記表示部に出力する表示用画像を、前記観察画像、又は前記画像演算部で生成された特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える表示画像切り替え部と、
前記表示画像切り替え部により画像切り替えが実施されたタイミング情報、前記特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び前記観察画像の画像情報を画像ファイルに記録する画像情報記録部と、
を備えた医療用画像記録装置。
(2) (1)の医療用画像記録装置と、
前記医療用画像記録装置で記録された画像ファイルを読み出し、該画像ファイルに記録された前記タイミング情報に同期して前記観察画像と前記特徴画像とを切り替えて前記表示部に表示する画像再生部と、
を備えた医療用画像記録再生装置。
(3) 医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録方法であって、
前記観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成し、
表示部に出力する表示用画像を、前記観察画像、又は前記特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える際、
該画像切り替えが実施されたタイミング情報、前記特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び前記観察画像の画像情報を画像ファイルに記録する医療用画像記録方法。
(4) (3)の医療用画像記録方法により記録された画像ファイルを読み出し、該画像ファイルに記録された前記タイミング情報に同期して、前記観察画像と前記特徴画像とを再生表示部に切り替えて表示する医療用画像記録再生方法。
(5) (3)の医療用画像記録方法をコンピュータに実行させるプログラム。
(6) (4)の医療用画像記録再生方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、医療用機器から出力される画像データを、医療用機器による検査時に観察した画像と同じ画像を表示可能に記録すると共に、任意のタイミングの記録画像に対して所望の特徴画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡を含む医療用画像記録装置のブロック構成図である。
【図2】内視鏡の一例としての外観図である。
【図3】画像記録再生部のブロック構成図である。
【図4】内視鏡の術者により観察画像の切り替えを実施した場合の観察画像と切り替え信号のタイムチャートである。
【図5】画像演算部の詳細なブロック構成図である。
【図6】観察画像を画像ファイルに記録する手順を示すフローチャートと、観察する側の内視鏡及び内視鏡制御装置と、画像記録する側の画像記録再生部との間の情報伝達の様子を示す説明図である。
【図7】画像ファイルの構成を模式的に表した説明図である。
【図8】画像記録再生部による画像ファイルの具体的な再生手順を示すフローチャートである。
【図9】再生表示の一例を示す説明図である。
【図10】通常画像再生モードにおける画像再生の様子を示す説明図である。
【図11】観察時画像再生モードにおける画像表示の様子を示す説明図である。
【図12】観察時画像再生モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図1に示す画像演算部の変形例1を表すブロック図である。
【図14】図1に示す画像演算部の変形例2を表すブロック図である。
【図15】撮像画像と血管画像との合成の様子を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本明細書においては、医療用画像記録装置、医療用画像記録再生装置が内視鏡画像を記録・再生する場合を例示的に説明する。即ち、画像記録装置が、内視鏡検査時に被検体を撮像した観察画像の動画像情報と、観察画像に対応する特定の特徴画像への表示切り替えタイミングを表すタイミング情報とを画像ファイルに記録する。これにより、記録された画像ファイルを画像再生装置が読み出して、この画像ファイルによる画像情報を再生する際に、内視鏡検査時に観察した画像を、観察した通りの内容の動画像として再生することを可能する。また、画像記録装置は、画像再生装置側において任意のタイミングで任意の分光演算を正常に施すことを可能にするように画像情報を記録する。
【0011】
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡を含む医療用画像記録装置のブロック構成図、図2は内視鏡の一例としての外観図である。
図1、図2に示すように、内視鏡11に接続される医療用画像記録装置100は、内視鏡制御装置13と、入力された表示用画像を表示する表示部15と、内視鏡制御装置13への指示を受け付ける指示入力部17と、内視鏡制御装置13に接続され内視鏡画像を記録する画像記録再生部19とを有して構成される。
【0012】
内視鏡11は、被検体に照明光を照射する照明窓21を有する照明光学系23と、被検体を観察する観察窓25と撮像素子27とを有する撮像光学系29とを有する電子内視鏡である。
【0013】
内視鏡制御装置13は、内視鏡11の照明光学系23に照明光を供給する光源部31と、撮像光学系29から出力される画像信号を信号処理するプロセッサ33からなり、内視鏡11が、図2に示すユニバーサルコード35とコネクタ37A,37Bを介して着脱自在に接続される。
【0014】
図2に示すように、内視鏡11は、内視鏡挿入部39と、内視鏡挿入部先端の湾曲操作や観察のための操作を行う内視鏡操作部41と、内視鏡11を内視鏡制御装置13に接続する前述のユニバーサルコード35とコネクタ37A,37Bを備える。
【0015】
内視鏡挿入部39は、可撓性を持つ軟性部43と、湾曲部45と、先端部(以降、内視鏡先端部とも呼称する)47が先端に向けてこの順で形成される。内視鏡先端部47には、図1に示す照明光学系23の照明窓21と、撮像光学系20の観察窓25が配置され、観察窓25の内方には、対物レンズユニット(図視略)を介して撮像素子27が配置される。
【0016】
湾曲部45は、図2に示す内視鏡操作部41に配置されたアングルノブ49の回動操作により湾曲自在にされている。この湾曲部45は、内視鏡11が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部47の照明窓21、観察窓25の方向を所望の観察部位に向けることができる。
【0017】
撮像光学系29は、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子27を備え、撮像素子27からは青(B)、緑(G)、赤(R)を含む基本色成分の強度情報を有するカラー画像の信号が出力される。
【0018】
撮像素子27には、タイミングジェネレータ(TG)51から出力される同期信号に基づいて駆動パルスを形成するドライバ回路53が接続されている。また、撮像素子27には、撮像素子27からの出力信号(画像信号)をサンプリングし、かつ増幅するCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)回路55が接続され、更にその先にA/D変換器57が設けられている。このCDS/AGC回路55から出力されるアナログの画像信号は、A/D変換器57によってデジタル画像信号に変換される。
【0019】
なお、撮像素子27は、RGB信号を出力する原色系の撮像素子の他、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、(及び緑(G))を含む補色系の撮像素子であってもよく、補色系の撮像素子である場合には、信号処理回路に補色系から原色系への色変換回路を設ければよい。
【0020】
上記の撮像光学系の構成によれば、照明窓21により照明された被検体を撮像素子27により撮像すると、ドライバ回路53の駆動により撮像素子27から被検体の撮像信号が出力され、この撮像信号はCDS/AGC回路55で相関二重サンプリングと自動利得制御による増幅が行われた後、A/D変換器57を介し、デジタル信号の画像信号としてプロセッサ33のDVP71へ供給される。
【0021】
スコープ制御部59は、撮像光学系29の各種回路を制御し、図2に示す内視鏡操作部41に配置された、詳細を後述する観察モード変更ボタンを含む各種操作ボタン61からの信号が入力される。また、スコープ制御部59はスコープ記憶部63が接続されており、スコープ記憶部63に予め記憶された各種情報に基づく処理が可能に構成されている。
【0022】
照明光学系23は、光源部31が有する白色照明用光源65からの出射光をファイババンドル67を通じて内視鏡11の照明窓21に導光しており、光源制御部69が白色照明用光源65の光量制御を行う構成となっている。
【0023】
プロセッサ33は、デジタル変換された画像信号に対し各種の画像処理を施すDVP(デジタルビデオプロセッサ)71が設けられており、このDVP71では、上記の撮像素子27からの画像信号に基づく、R,G,Bの画像情報の規格化処理を行った後、ノイズ除去、ホワイトバランス処理等を行い白色照明光による観察画像である通常画像が形成・出力される。
【0024】
また、プロセッサ33は、DVP71で形成・出力された白色照明光による観察画像である通常画像の情報を、詳細を後述する画像演算部75を通して信号変換部73に入力し、信号変換部73で、輝度(Y)信号と色差[C(R−Y,B−Y)]信号により構成されるY/C信号の形式に変換して、表示部15へ表示用の画像情報として出力する。
【0025】
画像演算部75は、内視鏡制御部77からの制御信号を受けて、DVP71から入力される通常画像の情報を、上記のようにそのまま信号変換部73に出力する場合と、通常画像の情報を分光演算処理してから信号変換部73に出力する場合とに切り替える。分光演算処理した場合の分光推定画像である特徴画像は、上記の通常画像と切り替えられて表示部15に表示される。
【0026】
更に、DVP71は、通常画像の情報を記録画像生成部79に出力する。記録画像生成部(画像情報記録部)79は、内視鏡制御部77からの制御信号を受けて、画像ファイルとして記録する記録用の画像(動画像)データを生成し、インターフェース81を介して画像記録再生部19に出力する。記録画像生成部79が記録する観察画像としての画像データは、ホワイトバランス処理等の一般的な規格化処理がなされた後の、特定の特徴の強調処理を施す前の画像データである。
【0027】
内視鏡制御部77は、本体記憶部83と接続されており、本体記憶部83に予め記憶された各種情報やプログラムに基づいて、内視鏡画像の表示、記録等の各種制御を行う。また、内視鏡11のスコープ制御部59に接続されて、内視鏡11側と同期した制御が可能となっている。
【0028】
図3に画像記録再生部19のブロック構成図を示した。
画像記録再生部19は、記録画像生成部79(図1参照)から出力される記録用の画像データをインターフェース85を介して入力する記録再生制御部87と、それぞれ記録再生制御部87に接続された情報抽出部89、入力部91、画像情報記憶部93、画像関連情報記憶部95、特徴画像生成部97、ストレージ装置99、再生表示部101とを備える。
【0029】
画像記録再生部19は、画像記録再生部19単独で、上記の医療用画像記録装置100により生成された画像ファイルを再生する医療用画像再生装置としても機能する。また、画像記録再生部19を備えた医療用画像記録装置100全体は、医療用画像記録再生装置として機能する。
【0030】
記録再生制御部87は記録画像生成部79で生成された画像データを画像ファイルとしてストレージ装置99に記録する。ストレージ装置99は、画像記録再生部19に設ける他、内視鏡制御装置13に直接接続した構成や、内視鏡制御装置13にネットワークを介して接続した構成であってもよい。
【0031】
画像記録再生部19は、記録された画像ファイルを読み出して再生する際、情報抽出部89が、ストレージ装置99に記録された画像ファイルを解析して、観察画像を含む記録画像情報、及び観察画像に対する画像関連情報を抽出する。記録再生制御部87は、抽出した記録画像情報を画像情報記憶部93に記憶させ、画像関連情報を画像関連情報記憶部95に記憶させる。
【0032】
特徴画像生成部97は、画像情報記憶部93に記憶された観察画像と、画像関連情報記憶部95に記憶された画像関連情報を用いて、観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成する。入力部91は、再生表示部101に表示させる画像の内容や種類を、記録再生制御部87に入力する。
【0033】
<内視鏡観察画像の画像ファイルへの記録>
次に、上記構成の医療用画像記録装置100により、内視鏡検査時に被検体を撮像した観察画像の動画像情報と、観察画像に対応する特定の特徴画像への表示切り替えタイミングを表すタイミング情報とを画像ファイルに記録する処理について説明する。
【0034】
図4に内視鏡の術者により観察画像の切り替えを実施した場合の観察画像と切り替え信号のタイムチャートを示した。
内視鏡の術者が、図2に示す内視鏡11の内視鏡挿入部39を患者の体腔内に挿入して、体腔内の検査部位を診断する際、図1に示す内視鏡11の撮像素子27からの画像信号がプロセッサ33のDVP71に入力され、画像演算部75及び信号変換部73を通じて表示部15に白色照明光による観察画像である通常画像の情報が表示される。
【0035】
そして術者が、内視鏡操作部41(図2参照)の観察モード変更ボタン61を押下して、観察モードを通常観察モードから、特殊光診断を行う分光画像観察モードに変更すると、画像演算部75による分光演算処理が実施され、表示部15に表示される画像が、通常画像から分光推定画像1に変化する。更に観察モード変更ボタン61を押下する度に、画像演算部75における演算条件が変更され、分光推定画像1から分光推定画像2に、分光推定画像2から通常画像に、と変化する。
【0036】
上記の表示画像の切り替えは、プロセッサ33の内視鏡制御部77が、スコープ制御部59から出力される観察モード変更ボタン61の押下信号を受ける度に、画像演算部75に切り替え信号を出力して、画像演算部75が分光演算処理の内容を変更することで行う。つまり、画像演算部75は、観察モード変更ボタン61の押下に伴って内視鏡制御部77が出力する制御信号により、分光演算条件を変更させて互いに異なる複数種の分光推定画像1,分光推定画像2,・・・と、分光演算処理しない通常画像とを生成する。即ち、画像演算部75は、観察モード変更ボタン61の押下信号に同期して切り替える表示画像切り替え部として機能する。
【0037】
<分光推定画像の生成>
次に、画像演算部75による分光推定画像の生成手順について説明する。図5に画像演算部75の詳細なブロック構成図を示した。画像演算部75は、入力された画像信号をRGB信号に分解して出力する第1色変換回路111、RGB信号に対し分光推定画像のためのマトリクス演算を行う色空間変換処理回路113が設けられ、この色空間変換処理回路113は、選択された複数の波長λ1,λ2,λ3(波長セットと称する)の分光推定画像信号を出力する。分光推定画像は、対象とする画像(観察画像)に対する任意に設定された複数の波長の分光推定画像をマトリクス演算により求めた画像である。
【0038】
この色空間変換処理回路113のマトリクス演算に用いられ、本体記憶部83又はスコープ記憶部63(図1参照)に格納されているマトリクスデータ(1つのテーブル)は次の表1のようなものとなる。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1のマトリクスデータは、例えば400nmから700nmの波長域を5nm間隔で分けた61の波長域パラメータp1〜p61からなり、このパラメータp1〜p61は、マトリクス演算のための係数kpr,kpg,kpb(pはp1〜p61に該当する)から構成される。なお、この波長域パラメータは、内視鏡制御装置13の本体記憶部83やスコープ記憶部63に記憶されて、随時参照可能となっている。
【0041】
上記色空間変換処理回路113では、上記係数kpr,kpg,kpbと第1色変換回路111から出力されたRGB信号とにより、次の数式1のマトリクス演算が行われる。
【0042】
【数1】

【0043】
即ち、波長セットをλ1,λ2,λ3として、例えば表1のパラメータp21(中心波長500nm),p45(中心波長620nm),p51(中心波長650nm)を選択した場合は、係数(kpr,kpg,kpb)として、p21の(-0.00119,0.002346,0.0016)、p45の(0.004022,0.000068,‐0.00097)、p51の(0.005152,-0.00192,0.000088)を代入すればよいことになる。
【0044】
そして、上記色空間変換処理回路113には、1つの波長域(狭帯域)の分光画像(単色モード)と3つの波長域からなる分光画像(3色モード)とのいずれかを選択するモードセレクタ115が設けられ、このモードセレクタ115の後段に、増幅回路117が接続される。この増幅回路117は、分光推定画像を形成するためのλ1,λ2,λ3信号をそれぞれのゲイン値e,e,eにて増幅し、e×λ1、e×λ2、e×λ3の増幅信号を出力する。この増幅回路117に、増幅後のλ1,λ2,λ3の信号を従来のRGB信号に対応させた処理をするためにRs,Gs,Bs信号として入力して出力する第2色変換回路119が設けられる。
【0045】
なお、DVP71では、RGB信号の他、輝度(Y)信号と色差(R−Y,B−Y)信号からなるY/C信号を形成するものであってもよい。その場合、画像演算部75でY/C信号をRGB信号に変換して、上記のマトリクス演算を行うことになる。
【0046】
<動画記録の制御例>
次に、内視鏡検査を行う際の観察画像を動画像の画像ファイルとして記録する手順について説明する。図6に観察画像を画像ファイルに記録する手順を示すフローチャートと、観察する側の内視鏡11及び内視鏡制御装置13と、画像記録する側の画像記録再生部19との間の情報伝達の様子を示した。
【0047】
まず、内視鏡11を含む医療用画像記録装置100の電源をONにして内視鏡検査の準備を行う(S11)。そして、内視鏡11を、被検体となる患者の体腔内に挿入する直前又は直後に、術者が操作ボタン61の押下操作等の記録開始指示を行う。このときの記録開始指示の信号は、スコープ制御部59、内視鏡制御部77を通じて画像記録再生部19に送信される(S12)。画像記録再生部19では、記録開始指示の信号を受けて記録のための準備を行う(S21)。
【0048】
そして、内視鏡11から記録開始指示を行った後、内視鏡制御部77は、内視鏡11から出力されてくる画像信号をDVP71から記録画像生成部79に出力すると共に、内視鏡11の現在の観察モード(通常観察モード、分光推定画像観察モード等)をスコープ制御部59から読み出して、この現在の観察モードの情報を記録画像生成部79に出力する。記録画像生成部79は、画像信号と、観察モードの情報から記録用画像の情報を生成し、この記録用画像の情報を画像記録再生部19に出力する(S13)。
【0049】
画像記録再生部19は、受け取った記録用画像の情報をストレージ装置99(図3)に画像ファイルとして記録を開始する(S22)。これにより、画像記録再生部19による内視鏡11の観察画像の動画像記録が開始される。
【0050】
次に、術者が操作ボタン61の押下操作を行って観察モードを変更すると(S14)、前述の図4に示すように、内視鏡制御部77は、表示部15に出力する画像情報を、押下操作の度に通常画像、分光推定画像1、分光推定画像2、・・・に切り替える。即ち、表示部15に画像情報を出力する信号変換部73には、画像演算部75から出力される分光推定画像と、DVP71から出力されたままの通常画像とが選択的に入力され、これにより、表示部15の表示内容が変更される。
【0051】
一方、記録画像生成部79は、DVP71から出力される通常画像が入力されると共に、観察モード変更が実施されたタイミング情報、及び分光推定画像を生成するための画像生成情報である波長セット(λ1,λ2,λ3)の情報が入力される。タイミング情報や指定した波長セットの情報は、スコープ制御部59から内視鏡制御部77を通じて記録画像生成部79に入力される。
【0052】
即ち、術者が観察モードを変更した場合、内視鏡制御部77は、画像演算部75が分光演算処理に使用する波長セットを変更し(S15)、観察モードの変更タイミングを表すタイミング信号と、変更した波長セットの情報とを記録画像生成部79に出力する。記録画像生成部79は、これらの情報を纏めて画像記録再生部19に出力する。そして、画像記録再生部19は、入力された上記情報を観察画像の情報と同期させて画像ファイルに記録する(S23)。
【0053】
そして、画像演算部75は、分光推定画像観察モードとされた場合には、変更後の波長セットに対応する分光推定画像を生成し(S16)、表示部15に分光推定画像を出力する(S17)。この場合、画像演算部75は、DVP71から出力される通常画像、本体記憶部83(又はスコープ記憶部63)に記憶された前述のマトリクスデータ、及び設定された波長セットの各情報に基づいて分光推定画像を生成する。
【0054】
内視鏡制御部77は、撮像素子27からの画像信号による通常画像、又は上記生成された分光推定画像のいずれかを信号変換部73に出力して表示部15に表示させる(S17)。
【0055】
以上のS14〜S18のステップを内視鏡検査が終了するまで繰り返す(S18)。そして、検査が終了したとき、内視鏡制御部77は画像記録再生部19に記録終了の指示信号を出力する(S19)。すると画像記録再生部19は、動画像の記録を終了させてストレージ装置99に画像ファイルを保存する(S24)。
【0056】
<画像ファイルの形式>
次に、画像記録再生部19がストレージ装置99に記録する画像ファイルの形式について説明する。
上記の動画像を記録する画像ファイルの形式としては、モーションJPEG形式等の汎用の画像ファイル形式を用いることができる。モーションJPEG形式は、画像の圧縮方式であるJPEGを応用して動画データを生成する圧縮・記録方式であり、圧縮されたJPEG画像を各コマに配置して動画を再生するものである。このモーションJPEGは、標準規格に定義されているモーションJPEG2000形式と同様である。
【0057】
図7は画像ファイルの構成を模式的に表した説明図である。画像記録再生部19(図3参照)がストレージ装置99に記録する画像ファイルは、内視鏡検査開始から終了までの観察画像を記録した動画像データ121であり、多数枚のJPEG画像123からなる。個々のJPEG画像は、複数のセグメントから構成され、先頭のSOIから末尾のEOIまでの間にヘッダ領域125と画像記録領域127がある。
【0058】
JPEG画像123のヘッダ領域125には、前述の画像切り替えを実施したタイミング情報や波長セットの情報が記録され、画像記録領域127には観察画像の画像情報が記録される。即ち、画像切り替えが実施されたタイミング情報と分光推定画像を生成するための画像生成情報を含む画像関連情報と、観察画像の情報とを一つの画像ファイルに記録する。これにより、データ入出力が高速に行え、画像ファイルの管理も容易になる。
【0059】
上記の観察画像の情報は、内視鏡11から出力される画像信号から連続して供給され、画像関連情報に含まれるタイミング情報や波長セットの情報は、図1に示す内視鏡11の操作ボタン61、指示入力部17等の操作に連動して、又は直接入力されて設定されることになる。また、波長セットの情報は、最初(初回)の分光推定画像の表示に対するデフォルト値を有して設定されているものとする。
【0060】
なお、画像ファイル形式としては、モーションJPEG形式に他にも、MPEG−4 AVC、H.264形式等の公知の形式を採用することができる。
【0061】
<記録された画像ファイルの再生手順>
次に、画像記録再生部19のブロック構成図である図3を再び参照して、上記のように記録された画像ファイルを読み出し、画像ファイルの記録画像を再生する基本的な手順について説明する。画像記録再生部19を備えた医療用画像記録装置100は、画像の記録と再生とを共に行うことができる。
【0062】
記録再生制御部87は、ストレージ装置99から画像ファイルを読み出して、画像ファイルを情報抽出部89に送る。情報抽出部89は、観察画像を含む記録画像情報、及び画像切り替えが実施されたタイミング情報と分光推定画像を生成するための波長セットの情報を含む画像関連情報を抽出する。
【0063】
そして、記録再生制御部87は、抽出した記録画像情報を画像情報記憶部93に記憶させ、画像関連情報を画像関連情報記憶部95に記憶させて、これら情報に基づいて、特徴画像生成部97が内視鏡検査時に観察した分光推定画像である特徴画像を生成する。
【0064】
特徴画像生成部97は、内視鏡検査時の観察画像(通常画像、分光推定画像)、予め用意された波長セットにより演算処理して求めた分光推定画像、任意の波長セットを入力して演算処理して求めた分光推定画像を選択的に画像生成する機能を有している。つまり、画像記録再生部19は、各種画像の再生モードが用意され、各再生モードを任意に選択することができる。
【0065】
ここで、画像記録再生部19による画像ファイルの具体的な再生手順を図8のフローチャートを用いて説明する。
まず、記録再生制御部87は、ストレージ装置99に記録された多数の画像ファイルを再生表示部101に表示させる。操作者は、どの画像ファイルを再生するかを再生表示部101を見ながら入力部91から指定する(S31)
【0066】
記録再生制御部87は、入力部91から指定された画像ファイルをストレージ装置99から読み出し(S32)、情報抽出部89により画像ファイル形式を解析して、記録された各情報を抽出する。抽出した各情報のうち、記録画像の情報は、画像情報記憶部93に出力し、画像切り替えが実施されたタイミング情報と分光推定画像を生成するための波長セットの情報は、画像関連情報記憶部に出力する(S33)。このとき情報抽出部89は、JPEG画像に圧縮された記録画像を展開して、RGBの画像信号に変換する。
【0067】
そして、記録再生制御部87は、画像情報記憶部93に記憶された通常画像を再生表示部101に再生表示する。これにより、通常画像の再生表示が行われる(S34)。
【0068】
このときの再生表示部101の表示例を図9に示した。再生表示部101には画像ファイルに記録された画像情報131が表示されている。また、再生表示部101の表示画面内には、画像情報の再生、停止、先送り、巻き戻し等の再生操作を行う再生操作領域133と、表示する画像情報の種類を選定する画像選定領域135A,135B,135Cとが配置される。
【0069】
画像選定領域135Aには、画像ファイルに記録された内視鏡検査時の観察画像である通常画像を表示させる通常画像ボタン137、内視鏡検査時に画像切り替えを実施した通りに再現させる観察時画像再生ボタン139が配置される。また、画像選定領域135Bには、予め用意された波長セットにより分光推定画像を生成させる複数の波長セット選択ボタン141が配置され、画像選定領域135Cには、分光推定画像を生成するための波長セットの波長値を入力する入力ボックス143が配置されている。
【0070】
操作者は、再生表示部101の表示内容を見て、入力部91(マウスやキーボード)により、ポインタ145の移動や選択操作、数値入力を行うことで、再生モードを任意に選択することができる。操作者による再生モードの切り替え指示があったとき(S35)、記録再生制御部87は、指定された再生モードに応じた画像表示処理を行う(S36)。この再生モードの切り替えは、画像ファイルの最後まで随時行うことができる(S37)。
【0071】
<通常画像再生モード>
通常画像を再生表示するモードでは、画像情報記憶部93に記憶された観察画像を再生表示部101に再生する。つまり、図10に示すように、常時、内視鏡11の撮像素子27からの画像信号である通常画像が連続表示される。
このモードによれば、内視鏡検査時に分光推定画像を観察していた場合でも、その検査部位の通常画像を確認することができ、診断精度を向上できる。
【0072】
<観察時画像再生モード>
内視鏡検査時における観察画像を再生表示するモードでは、例えば図4に示す通常画像、分光推定画像1、分光推定画像2、通常画像の順で画像切り替えを実施して観察した場合、図11に示すように、通常画像から分光推定画像1、分光推定画像2、通常画像の順で内視鏡検査時と同じタイミングで画像切り替えを行って再生表示する。
【0073】
この場合の処理手順の内容を図12にフローチャートで示した。記録再生制御部87(図3参照)は、ストレージ装置99から画像ファイルを読み出し(S41)、情報抽出部89によって画像関連情報記憶部95に記憶された画像切り替えが実施されたタイミング情報を参照して、モード変更履歴の有無を確認する(S42)。モード変更履歴があった場合には、画像関連情報記憶部95に記憶された波長セットの情報を取得して(S43)、特徴画像生成部97が、画像情報記憶部93に記憶された画像情報に対し、取得した波長セットの情報に基づいて分光推定画像を生成する(S44)。
【0074】
記録再生制御部87は、再生表示部101に表示する画像情報を切り替えて、生成された分光推定画像を表示する。一方、タイミング情報にモード変更履歴がない場合は、画像切り替えを行うことなくそのままの画像表示を続ける。
【0075】
このモードによれば、画像ファイルを、内視鏡検査時の観察した画像と同じ画像の動画像で再生でき、内視鏡の術者の注目した検査部位を忠実に検査時と同じ状態で再現できる。これにより、内視鏡の術者による検査部位の診断結果、所見の内容を容易に再確認でき、また、術者以外の者が読影する場合にも、術者の観察の意図が伝わりやすくなる。
【0076】
<波長セット選択モード>
任意の波長セットを選定して分光推定画像を生成し、表示するモードでは、図9の画像選定領域135Bに示すように、予め登録された複数種の波長セットの中から任意の波長セットを選定して、この選定した波長セットの分光推定画像を生成、表示する。予め設定される波長セットとしては、具体的には、表2に示す波長セットが挙げられる。
【0077】
【表2】

【0078】
上記の波長セットを選択的に用いることで、簡単にして所望の特徴画像を得ることができる。また、上記の波長セットの他にも、図9の画像選定領域135Cに示すように、入力ボックス143に分光推定画像を生成するための波長セットの波長値を任意に入力すれば、観察目的に応じた所望の特徴画像にすることができる。
【0079】
以上説明した医療用画像記録装置、医療用画像再生装置、医療用画像記録再生装置によれば、内視鏡検査で記録された動画像の画像データを、内視鏡検査時に画像表示して観察した画像と同じ画像を表示可能にすると共に、任意のタイミングの記録画像に対して分光演算を正常に行って所望の分光画像を得ることができる。これにより、内視鏡検査後において、内視鏡検査時に術者が画像切り替えを行って観察した画像情報を、その検査時の通りに再現でき、術者が患部を診断していた通りの条件の分光推定画像で読影を行うことができる。また、内視鏡検査時に分光演算の内容によらず、任意のタイミングで、任意の分光推定画像を生成できる。よって、記録画像から患部を詳細に診察することが可能となり、画像診断の利用範囲を拡げることができる。
【0080】
<変形例1>
次に、医療用画像記録装置、医療用画像再生装置、及び医療用画像記録再生装置の変形例について説明する。
図13に図1に示す画像演算部75の変形例1を表すブロック図を示した。
図1に示す医療用画像記録装置100においては、画像演算部75にてマトリクス演算を行う色空間変換処理回路113により分光推定画像の演算処理が行われるが、ここでは、画像演算部75Aにおいて、DVP71からのRGB信号が分岐されて分光演算処理部155に入力され、撮像画像を図5の分光推定画像の生成手順を示したように分光演算を行い、可視短波長の画像成分を強調したB強調画像Bkを生成する。
【0081】
このB強調画像Bkは、380〜450nmの波長成分の画像情報、特に400〜420nmの可視短波長域の画像情報が含むようにする。この可視短波長の画像情報には、生体組織表層の毛細血管像や、粘膜表面の微細模様の情報が高い強度で含まれている。B強調画像Bkは、分光演算処理により求めることができるが、これ以外にも、B信号のゲインを変更して画像データの輝度値を調整する処理で求めてもよい。
【0082】
画像演算部75A内には、DVP71からのR,G,B成分をそのまま再生画像とする場合と、R,G成分と分光演算処理部155で生成されたB強調画像Bk成分を合成したR,G,Bk成分の合成画像(特徴画像)を再生画像とする場合とのいずれかに切り替えるスイッチ159を有する。R,G,B成分そのままあるいはB強調画像Bk成分を合成したR,G,Bk成分の再生画像153Aは信号変換部73に入力されて、表示部15に画像が表示される。
この構成によれば、通常画像である撮像画像と、生体組織表層の毛細血管像や、粘膜表面の微細模様が強調表示される特徴画像とを、スイッチ159によって自在に切り替えることができる。スイッチ159は、プロセッサ33の内視鏡制御部77が、スコープ制御部59から出力される観察モード変更ボタン61の押下信号を受ける度に、画像演算部75Aに切り替え信号を出力して、切り替えを行う。
【0083】
また、B強調画像Bkは、記録画像生成部79に出力される。記録画像生成部79では、DVP71からの撮像画像を観察画像の画像情報として、また、画像演算部75AによるB強調画像Bkと前述の切り替え信号のタイミング情報等を画像関連情報として、それぞれ画像ファイルのフォーマットに変換する。ここでは、撮像画像とB強調画像との複数種の画像情報を記録するため、画像ファイルの形式としては、マルチピクチャーフォーマットの形式等を用いる。
内視鏡制御装置13は、この画像ファイルのデータをインターフェース81を介して画像記録再生部19に出力する。そして、画像記録再生部19は、入力されてきた画像ファイルを図3に示すストレージ装置99に記録する。
【0084】
上記のように画像記録再生部19で記録された画像ファイルの画像再生は次のように行う。
図3に示す記録再生制御部87は、ストレージ装置99に記録された画像ファイルを解析して、記録画像情報として撮像画像、画像関連情報としてB強調画像、タイミング情報を画像関連情報として抽出する。そして、画像情報記憶部93は撮像画像を記憶し、画像関連情報記憶部95はB強調画像、タイミング情報を記憶する。特徴画像生成部97は、画像情報記憶部93、画像関連情報記憶部95を参照して再生画像を生成し、これを所望のタイミングで再生表示部101に表示する。
【0085】
この構成によれば、観察画像である通常画像である撮像画像と、生体組織表層の毛細血管像や、粘膜表面の微細模様が強調表示されるB強調画像とを、自在に切り替えて再生表示部101に表示することができる。双方の画像切り替えは、前述のタイミング情報に同期して切り替える他に、入力部91からの切り替え指示で行うこともできる。この表示切り替え方式によれば、B強調画像が直接記録されているため、画像切り替え時に画像演算処理を行うことがなく、画像切り替えの応答性を高めることができる。これにより、スムーズな画像切り替え動作が可能となり、しかも、画像切り替えが随時可能になるので、読影時における診断精度が向上する。
【0086】
<変形例2>
また、上記のB強調画像を記録する方式の他にも、特定波長帯の画像成分を強調したパターン強調画像を生成し、このパターン強調画像から血管位置等を表すパターン抽出画像を記録する方式であってもよい。
図14にこの場合の画像演算部75Bのブロック図を示した。
分光演算処理部163は、撮像画像を図5の分光推定画像の生成手順を示したように分光演算を行い、特定波長帯の画像成分を強調したパターン強調画像165を生成する。このパターン強調画像165は、撮像画像を分光演算処理した分光推定画像であり、例えば可視短波長の画像成分を強調して、特に生体組織表層の毛細血管像や、粘膜表面の微細模様を強調表示したパターンとすることができる。その他にも、可視長波長の画像成分を強調して、粘膜深部の血管情報を強調表示したパターンとすることができる。
【0087】
比較処理部166は、このパターン強調画像165と再生画像153Bとを比較して、特定のパターン、例えば、毛細血管像や微細模様のパターンや粘膜深部の血管パターンのみを抽出したパターン抽出画像167を求める。パターン抽出画像167としては、パターン強調画像165と再生画像153Bとを比較処理して血管位置データを求め、この血管位置データを用いて、個々の血管像の線像に対する座標データ、又はベクトルデータから血管像を解析的に再現した画像とすることで、特徴画像としての血管パターン画像として生成することもできる。
【0088】
血管位置データの求め方としては、まず、パターン強調画像と撮像画像とを比較して、その差分情報から血管像となる多数の線像のパターンを抽出する。そして、このパターン抽出結果から、血管一本一本の座標値を個別に求める。この血管像抽出処理は、例えば、一次微分を用いたキャニー法等のエッジ検出と、そのエッジ検出によって検出したエッジから孤立点を除去することによって行うことができる。この血管パターン画像は、ビデオキャプチャボードを装着したコンピュータ装置によるコンピュータグラフィックス技術によって生成することもできる。
【0089】
パターン抽出画像167は、切り替えスイッチ169を介して再生画像153Bと合成され、信号変換部73に入力されて、表示部15に画像が表示される。表示画像としては、再生画像153Bをそのまま再生画像とする場合と、パターン抽出画像167を用いた特徴画像を表示させる場合とがスイッチ169により切り替えられる。スイッチ169は、上記変形例1と同様にプロセッサ33の内視鏡制御部77が、スコープ制御部59から出力される観察モード変更ボタン61の押下信号を受ける度に切り替えを行う。
【0090】
図15に再生画像153Bと血管パターンを表すパターン抽出画像167との合成の様子を模式的に示した。パターン抽出画像167は、再生画像153Bに視認性が低い状態で僅かに表示される生体組織表層の毛細血管や粘膜表面の微細模様である。このパターン抽出画像167が、再生画像153Bに加算平均された合成画像として再生されることで、特徴情報を視認性を高めた状態で画像再生が可能となる。また、実際の観察色以外の色で血管像を映出させることも容易にできる。
【0091】
なお、前述したパターン抽出画像167は、変形例1と同様に記録画像生成部79に出力され、画像ファイルのフォーマットに変換されて、画像記録再生部19のストレージ装置99に記録される。再生においても、同様に、前述したタイミング情報と同期させて、内視鏡検査時と同じタイミングで再生表示部101への表示画像を切り替えることができる。また、特徴画像生成部97が図5に示す分光推定画像の生成機能を備えることで、内視鏡検査時に分光推定画像を生成した際に用いた波長セットや、入力部91から入力された任意の波長セットにより分光推定画像を生成して、切り替え表示することもできる。つまり、通常画像と、検査時に表示部15に表示させた各種の特徴画像とを自在に切り替え表示、或いは同時に表示することができる。
【0092】
また、開示した医療用画像記録方法、再生方法は、図1に示す画像演算部75、記録画像生成部79、内視鏡制御部77等のハードウェアで構成することとしたが、各部が行う処理をCPUが行う構成とし、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアとして実現することとしてもよい。あるいは、各部が行う処理の一部をソフトウェアで構成することとしてもよい。その場合には、ワークステーションやパソコン等の汎用のコンピュータシステムを用いることができる。つまり、各処理を実現するためのプログラムを予め用意し、このプログラムをコンピュータシステムのCPUが実行することによって実現することができる。
【0093】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。例えば、本明細書においては、医療用機器として内視鏡を用いて説明しているが、超音波診断装置、X線診断装置、核磁気共鳴診断装置等、他の種類の医療用機器に対しても同様の画像記録、再生を行うことができる。
また、画像ファイルに記録する観察画像の情報を、撮像素子が出力するRAWデータのままで記録してもよい。その場合、画像データをより忠実に再現することができる。
【0094】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録装置であって、
前記観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成する画像演算部と、
入力された表示用画像を表示する表示部と、
前記表示部に出力する表示用画像を、前記観察画像、又は前記画像演算部で生成された特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える表示画像切り替え部と、
前記表示画像切り替え部により画像切り替えが実施されたタイミング情報、前記特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び前記観察画像の画像情報を画像ファイルに記録する画像情報記録部と、
を備えた医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、医療用機器から出力される画像データを、医療用機器による検査時に観察した画像と同じ画像を表示可能に記録することができる。
【0095】
(2) (1)の医療用画像記録装置であって、
前記画像演算部が、前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットを用いてマトリクス演算により分光推定画像を求め、該分光推定画像を前記特徴画像として出力するものであり、
前記画像関連情報が、前記画像生成情報として前記波長セットの情報を含む医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、画像ファイルの出力時(検査時)において設定された波長セットの分光推定画像を再現することができる。
【0096】
(3) (1)又は(2)の医療用画像記録装置であって、
前記特徴画像が、400〜420nmの可視短波長域の分光強度を他の可視波長帯の分光強度より高めた画像である医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、生体組織表層の毛細血管像や、粘膜表面の微細模様の情報を明瞭に観察することができる。
【0097】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つの医療用画像記録装置であって、
前記画像ファイルの形式が、モーションJPEG形式である医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、多数枚の静止画であるモーションJPEG画像を用いることで、画像情報が圧縮されて記録され、画像ファイルの容量を小さくすることができる。
【0098】
(5) (4)の医療用画像記録装置であって、
前記画像情報記録部が、前記画像関連情報と、前記観察画像の画像情報とを一つの画像ファイルに記録する医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、データ入出力が高速に行え、画像ファイルの管理も容易になる。
【0099】
(6) (4)又は(5)の医療用画像記録装置であって、
前記画像記録部が、前記画像関連情報を前記JPEG形式のヘッダ領域に、前記観察画像の画像情報を前記JPEG形式の画像記録領域に記録する医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、画像関連情報と、画像情報とをそれぞれ異なる領域に記録することで、画像情報と画像関連情報との対応付けが容易に行える。
【0100】
(7) (1)〜(6)のいずれか1つの医療用画像記録装置であって、
前記医療用機器が内視鏡である医療用画像記録装置。
この医療用画像記録装置によれば、医療用機器が内視鏡であることで、画像ファイルを、内視鏡検査時の観察した画像と同じ画像で再生でき、内視鏡の術者の注目した検査部位を忠実に検査時と同じ状態で再現できる。これにより、内視鏡の術者の検査部位の診断結果、所見の内容を容易に再確認でき、また、術者以外の者が読影する場合にも、術者の観察の意図が伝わりやすくなる。
【0101】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つの医療用画像記録装置と、
前記医療用画像記録装置で記録された画像ファイルを読み出し、該画像ファイルに記録された前記タイミング情報に同期して、前記観察画像と前記特徴画像とを再生表示部に切り替えて表示する画像再生部と、
を備えた医療用画像記録再生装置。
この医療用画像記録再生装置によれば、医療用機器から出力される画像データを、医療用機器による検査時に観察した画像と同じ画像を表示可能にすることができる。
【0102】
(9) (8)の医療用画像記録再生装置であって、
前記画像ファイルから読み出した前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットの分光推定画像をマトリクス演算により求めることで前記特徴画像を生成する特徴画像生成部を備え、
前記画像関連情報が、前記波長セットの情報を含む医療用画像記録再生装置。
この医療用画像記録装置によれば、画像ファイルの出力時(検査時)において設定された波長セットの分光推定画像を再現することができる。
【0103】
(10) 医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録方法であって、
前記観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成し、
表示部に出力する表示用画像を、前記観察画像、又は前記特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える際、
該画像切り替えが実施されたタイミング情報、前記特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び前記観察画像の画像情報を画像ファイルに記録する医療用画像記録方法。
(11) (10)の医療用画像記録方法であって、
前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットを用いてマトリクス演算により分光推定画像を求め、該分光推定画像を前記特徴画像として出力し、
前記画像関連情報に、前記画像生成情報として前記波長セットの情報を含ませる医療用画像記録方法。
(12) (10)又は(11)の医療用画像記録方法により記録された画像ファイルを読み出し、該画像ファイルに記録された前記タイミング情報に同期して、前記観察画像と前記特徴画像とを再生表示部に切り替えて表示する医療用画像記録再生方法。
(13) (12)の医療用画像記録再生方法であって、
前記画像ファイルから読み出した前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットの分光推定画像をマトリクス演算により求めることで前記特徴画像を生成し、
前記画像関連情報に、前記波長セットの情報を含ませる医療用画像記録再生方法。
(14) (10)又は(11)の医療用画像記録方法をコンピュータに実行させるプログラム。
(15) (12)又は(13)の医療用画像記録再生方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0104】
11 内視鏡
13 制御装置
15 表示部
17 指示入力部
19 画像記録再生部(医療用画像再生装置)
27 撮像素子
29 撮像光学系
33 プロセッサ
39 内視鏡挿入部
41 内視鏡操作部
61 操作ボタン
63 スコープ記憶部
71 デジタルビデオプロセッサ
73 信号変換部
75,75B,75C 画像演算部
77 内視鏡制御部
79 記録画像生成部
81 インターフェース
83 本体記憶部
85 インターフェース
87 記録再生制御部
89 情報抽出部
91 入力部
93 画像情報記憶部
95 画像関連情報記憶部
97 特徴画像生成部
99 ストレージ装置
100 医療用画像記録装置
101 再生表示部
111 第1色変換回路
113 色空間変換処理回路
115 モードセレクタ
117 増幅回路
119 第2色変換回路
121 動画像データ
123 JPEG画像
125 ヘッダ領域
127 画像記録領域
131 画像情報
135A,135B.135C 画像選定領域
137 通常画像ボタン
139 観察時画像再生ボタン
141 波長セット選択ボタン
143 入力ボックス
145 ポインタ
153,153A 再生画像
159 スイッチ
163 分光演算処理部
167 パターン抽出画像
169 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録装置であって、
前記観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成する画像演算部と、
入力された表示用画像を表示する表示部と、
前記表示部に出力する表示用画像を、前記観察画像、又は前記画像演算部で生成された特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える表示画像切り替え部と、
前記表示画像切り替え部により画像切り替えが実施されたタイミング情報、前記特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び前記観察画像の画像情報を画像ファイルに記録する画像情報記録部と、
を備えた医療用画像記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療用画像記録装置であって、
前記画像演算部が、前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットを用いてマトリクス演算により分光推定画像を求め、該分光推定画像を前記特徴画像として出力するものであり、
前記画像関連情報が、前記画像生成情報として前記波長セットの情報を含む医療用画像記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の医療用画像記録装置であって、
前記特徴画像が、400〜420nmの可視短波長域の分光強度を他の可視波長帯の分光強度より高めた画像である医療用画像記録装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の医療用画像記録装置であって、
前記画像ファイルの形式が、モーションJPEG形式である医療用画像記録装置。
【請求項5】
請求項4記載の医療用画像記録装置であって、
前記画像情報記録部が、前記画像関連情報と、前記観察画像の画像情報とを一つの画像ファイルに記録する医療用画像記録装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載の医療用画像記録装置であって、
前記画像記録部が、前記画像関連情報を前記JPEG形式のヘッダ領域に、前記観察画像の画像情報を前記JPEG形式の画像記録領域に記録する医療用画像記録装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の医療用画像記録装置であって、
前記医療用機器が内視鏡である医療用画像記録装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の医療用画像記録装置と、
前記医療用画像記録装置で記録された画像ファイルを読み出し、該画像ファイルに記録された前記タイミング情報に同期して、前記観察画像と前記特徴画像とを再生表示部に切り替えて表示する画像再生部と、
を備えた医療用画像記録再生装置。
【請求項9】
請求項8記載の医療用画像記録再生装置であって、
前記画像ファイルから読み出した前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットの分光推定画像をマトリクス演算により求めることで前記特徴画像を生成する特徴画像生成部を備え、
前記画像関連情報が、前記波長セットの情報を含む医療用画像記録再生装置。
【請求項10】
医療用機器から出力される被検体の観察画像を記録する医療用画像記録方法であって、
前記観察画像に含まれる特定の特徴を強調処理した特徴画像を生成し、
表示部に出力する表示用画像を、前記観察画像、又は前記特徴画像を含む画像のいずれかに切り替える際、
該画像切り替えが実施されたタイミング情報、前記特徴画像を生成するための画像生成情報、を含む画像関連情報、及び前記観察画像の画像情報を画像ファイルに記録する医療用画像記録方法。
【請求項11】
請求項10記載の医療用画像記録方法であって、
前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットを用いてマトリクス演算により分光推定画像を求め、該分光推定画像を前記特徴画像として出力し、
前記画像関連情報に、前記画像生成情報として前記波長セットの情報を含ませる医療用画像記録方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11記載の医療用画像記録方法により記録された画像ファイルを読み出し、該画像ファイルに記録された前記タイミング情報に同期して、前記観察画像と前記特徴画像とを再生表示部に切り替えて表示する医療用画像記録再生方法。
【請求項13】
請求項12記載の医療用画像記録再生方法であって、
前記画像ファイルから読み出した前記観察画像に対し、任意に設定された複数の波長からなる波長セットの分光推定画像をマトリクス演算により求めることで前記特徴画像を生成し、
前記画像関連情報に、前記波長セットの情報を含ませる医療用画像記録再生方法。
【請求項14】
請求項10又は請求項11記載の医療用画像記録方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項15】
請求項12又は請求項13記載の医療用画像記録再生方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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