説明

医療用薬液移送器

【課題】バイアル瓶内の薬液を輸液バッグに効率良く移送する。
【解決手段】バイアル瓶60に穿刺される瓶針30の薬液流路31、シリンジ40が接続される接続口15、及び輸液バッグ100のポート110に接続されるコネクタ50がキャビティ11と連通している。薬液流路とキャビティとの間の流路上に薬液流路からキャビティへ向かう薬液の一方向の流れを許可する第1逆止弁21が設けられ、コネクタとキャビティとの間の流路上にキャビティからコネクタへ向かう薬液の一方向の流れを許可する第2逆止弁22が設けられている。瓶針がバイアル瓶に穿刺されたとき、薬液流路とバイアル瓶とが連通し且つ気体流路を介してバイアル瓶と外界とが連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアル瓶内の薬液を輸液バッグに移送する際に使用される医療用薬液移送器に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアル瓶内の抗がん剤等の薬液を患者の静脈に点滴により投与する場合、通常、これに先立って、バイアル瓶内の薬液はシリンジを介して大容量の輸液バッグに移送され調製される。薬液の移送は、バイアル瓶のゴム栓にシリンジの先端に取り付けた瓶針を穿刺してバイアル瓶内の薬液をシリンジ内に吸引し、次いで、瓶針を輸液バッグのポートのゴム栓に突き刺して薬液を輸液バッグ内に注入することで行われる。
【0003】
患者に投与する薬液の量は、患者の体重又は体表面積などに基づいて決定される。決定された薬液の量に応じて必要なバイアル瓶の数が決定される。作業者は、必要な数のバイアル瓶内の薬液を輸液バッグに移送しなければならない。例えば、薬液が抗がん剤である場合、バイアル瓶の数が10本を超えることは珍しくない。
【0004】
薬液の移送に小容量のシリンジを用いた場合には、バイアル瓶から輸液バッグへの薬液の移送作業回数が多くなる。即ち、シリンジの先端に取り付けた瓶針を、バイアル瓶と輸液バッグとに交互に刺し替える回数が多くなり、移送作業が煩雑となる。
【0005】
薬液の移送に大容量のシリンジを用いて、複数本のバイアル瓶内の薬液を連続してシリンジ内に吸引して、その後、輸液バッグに薬液をまとめて注入すれば、瓶針を、バイアル瓶と輸液バッグとに交互に刺し替える回数を少なくすることができる。しかしながら、大容量のシリンジは、一般にプランジャの押し引き操作に大きな力が必要であるので、作業者の肉体的負担が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−483号公報
【特許文献2】特開2006−141714号公報
【特許文献3】特開2007−267986号公報
【特許文献4】特許第3103389号公報
【特許文献5】特表平8−506881号公報
【特許文献6】国際公開第2010/061742号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2010/061743号パンフレット
【特許文献8】特許第3389983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バイアル瓶内の薬液を輸液バッグに効率良く移送することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用薬液移送器は、薬液流路及び気体流路を備えた瓶針と、シリンジが接続される接続口と、輸液バッグのポートに接続されるコネクタと、前記薬液流路、前記接続口、及び、前記コネクタと連通したキャビティが内部に形成された移送器本体と、前記薬液流路と前記キャビティとの間の流路上に設けられ、前記薬液流路から前記キャビティへ向かう薬液の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限する第1逆止弁と、前記コネクタと前記キャビティとの間の流路上に設けられ、前記キャビティから前記コネクタへ向かう薬液の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限する第2逆止弁とを備える。前記瓶針がバイアル瓶のゴム栓に穿刺されたとき、前記薬液流路と前記バイアル瓶の内部とが連通し、且つ、前記気体流路を介して前記バイアル瓶の内部と外界とが連通する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のようにシリンジの先端の瓶針をバイアル瓶と輸液バッグとに交互に刺し替える作業は不要であるので、バイアル瓶内の薬液を輸液バッグに効率良く移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る医療用薬液移送器の概略構成を示した断面図である。
【図2】図2Aは本発明の実施形態2に係る医療用薬液移送器において、バイアル瓶に穿刺する前の瓶針及びその周辺の概略構成を示した断面図、図2Bはバイアル瓶に穿刺した後の瓶針及びその周辺の概略構成を示した断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る医療用薬液移送器を構成する別のコネクタを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の本発明の医療用薬液移送器において、前記気体流路と前記外界との間に、前記外界から前記気体流路へ向かう気体の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限する第3逆止弁が設けられていることが好ましい。これにより、気体流路を通過した薬液が外界に漏れ出す可能性を低減することができる。
【0012】
前記気体流路と前記外界との間に、気体を通過させるが薬液を実質的に通過させない疎水性フィルターが設けられていることが好ましい。これにより、気体流路を通過した薬液が外界に漏れ出す可能性を低減することができる。
【0013】
前記瓶針は前記移送器本体に保持され、前記接続口は前記移送器本体に設けられていることが好ましい。これにより、シリンジと移送器本体と瓶針とを一体物として取り扱うことが可能となる。従って、例えば瓶針をバイアル瓶のゴム栓に穿刺したままバイアル瓶を上方に持ち上げてシリンジのプランジャの押し引きを行うなどの操作を容易に行うことができる。
【0014】
この場合、前記シリンジが前記瓶針と同軸上に配置されることが好ましい。これにより、バイアル瓶のゴム栓に瓶針を穿刺する作業を、シリンジの先端に装着された瓶針をバイアル瓶のゴム栓に穿刺する従来の作業と実質的に同じ感覚で行うことができる。
【0015】
また、前記コネクタは柔軟性を有するチューブを介して前記移送器本体に接続されていることが好ましい。これにより、コネクタが接続された輸液バッグを任意の位置に配置して薬液の移送作業を行うことができる。また、移送作業中、バイアル瓶やシリンジ等の位置や姿勢を自由に変化させることができる。
【0016】
上記の本発明の医療用薬液移送器において、前記瓶針の少なくとも先端を覆う可撓性を有する瓶針用シールドを更に備え、前記瓶針の前記先端が対向する前記瓶針用シールドの部分にはスリットが形成されていることが好ましい。これにより、瓶針をバイアル瓶に穿刺していないときに、薬液が瓶針から外界に漏れ出る可能性を低減することができる。
【0017】
前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁のうちの少なくも一方はダックビル型逆止弁であることが好ましい。より好ましくは、第1逆止弁及び第2逆止弁の両方がダックビル型逆止弁である。また、前記第3逆止弁はダックビル型逆止弁であることが好ましい。ダックビル型逆止弁を用いることにより、小型の医療用薬液移送器を実現することができる。
【0018】
前記コネクタが、前記輸液バッグの前記ポートと係合する係合爪を有する弾性変位可能なロックレバーを備えることが好ましい。これにより、ポートとコネクタとの接続状態を安定して維持することができる。従って、例えば外力などが加えられることによりコネクタがポートから外れて、薬液を漏らす可能性を低減することができる。
【0019】
前記コネクタが、前記輸液バッグの前記ポートに設けられたセプタムのスリットに挿入可能な管状体を備えることが好ましい。これにより、コネクタをポートに繰り返し抜き差しすることができる。また、コネクタに金属針を用いないのでコアリングを防止できる。ここで、「コアリング」とは、鋭利な金属針によってゴム栓の材料が削り取られて金属針内に入り込み、更に薬液内に混入することをいう。
【0020】
この場合において、前記コネクタが、前記管状体の少なくとも先端を覆う可撓性を有する管状体用シールドを更に備え、前記管状体の前記先端が対向する前記シールドの部分にはスリットが形成されていることが好ましい。これにより、コネクタが輸液バッグのポートに接続されていないときに、コネクタの管状体から薬液が漏れ出る可能性を低減することができる。
【0021】
前記接続口に、前記シリンジの先端のオスルアーを取り囲むロック部に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されていることが好ましい。これにより、接続口とシリンジとが分離可能な医療用薬液移送器において、接続口とシリンジとの接続部分で薬液が漏れ出る可能性を低減することができる。
【0022】
前記接続口にシリンジの外筒が一体的に設けられていてもよい。これにより、接続口と外筒との接続部分から薬液が漏れる可能性を低減することができる。
【0023】
前記瓶針に代えて、互いに独立した、前記薬液流路を備えた薬液用針と前記気体流路を備えた気体用針とを備えていてもよい。薬液用針と気体用針の2本の針を用いることにより、針の設計や製作が容易になる可能性がある。
【0024】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図中の寸法は、実際の寸法および寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る医療用薬液移送器1の概略構成を示した断面図である。医療用薬液移送器1は、キャビティ11と、キャビティ11に連通する3つの流路とが内部に形成された移送器本体10を備える。3つの流路のうちの1つは、キャビティ11と瓶針30の薬液流路31とを連通させる流路であり、他の1つはキャビティ11とシリンジ40とを連通させる流路であり、最後の1つはキャビティ11とコネクタ50とを連通させる流路である。
【0026】
移送器本体10は、キャビティ11に連通する3つの流路を略「T」字状に接続する分岐管12を含む。分岐管12の第1開口には瓶針30が装着され、第2開口にキャップ14が装着され、第3開口にはシリンジ40が接続される。移送器本体10を構成する分岐管12及びキャップ14の材料は特に制限はないが、例えば樹脂を用いることができ、具体的にはポリプロピレン、ポリカーボネートを例示することができる。
【0027】
薬液流路31とキャビティ11との間の流路上に第1逆止弁21が設けられている。第1逆止弁21は、分岐管12と瓶針30との間に挟持されている。また、コネクタ50とキャビティ11との間の流路上に第2逆止弁22が設けられている。第2逆止弁22は、キャップ14と分岐管12との間に挟持されている。
【0028】
瓶針30は、図1に示すようにバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺される。瓶針30内には、互いに独立した薬液流路31及び気体流路32が形成されている。薬液流路31は、瓶針30がバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺されたとき、バイアル瓶60の内部と連通する。これにより、薬液流路31を通じてバイアル瓶60内の薬液62をキャビティ11に流入させることができる。また、気体流路32は、瓶針30がバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺されたとき、バイアル瓶60の内部と外界とを連通させる。これにより、バイアル瓶60内の薬液62が薬液流路31を通じて流出するときに、外界から空気をバイアル瓶60内に流入させて、バイアル瓶60内が負圧になるのを防ぎ、薬液62のバイアル瓶60からの流出を容易にする。瓶針30は、ゴム栓61に穿刺することができる程度の鋭利な先端と機械的強度を有している。瓶針30の材料は、特に制限はないが、例えばポリカーボネート、ポリアセタール等の樹脂材料を用いることができる。瓶針30、薬液流路31、及び、気体流路32の各断面形状は、円形、楕円形など任意の形状を取り得る。瓶針30の寸法も特に制限はないが、外径は最大径方向において3〜6mmが好ましく、薬液流路31の内径は最大径方向において1〜3mmが好ましく、気体流路32の内径は最大径方向において0.5〜2mmが好ましい。
【0029】
気体流路32と外界との間の流路上に、気体流路32側から、第3逆止弁23及び疎水性フィルター25がこの順に設けられている。第3逆止弁23及び疎水性フィルター25は、キャップ34と瓶針30との間に挟持されている。キャップ34は、気体流路32と外界とを連通させるための貫通孔を有している。
【0030】
キャップ14の先端にチューブ59の一端が接続され、チューブ59の他端はコネクタ50に接続されている。
【0031】
チューブ59は柔軟性を有し、且つ、透明又は半透明であることが好ましい。チューブ59の材料は特に制限はないが、例えば樹脂を用いることができ、具体的にはポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレンを例示することができる。
【0032】
輸液バッグ100(図1にはその一部のみが示されている)は、柔軟且つ透明な同一寸法の2枚の樹脂シートを重ね合わせて、その周縁のシール領域101にて接合(例えばヒートシール)してなる袋状物である。ポート110及び補助ポート120を含むポート本体105は、2枚の樹脂シートの間に挟まれた状態で輸液バッグ100に取り付けられている。
【0033】
本実施形態1では、ポート110は、中央部に直線状のスリット(切り込み)が形成された円板状のゴム製の弁体(一般に「セプタム」と呼ばれる)111を備えた、いわゆるニードルレスポートである。ポート110の外周面は円筒面であり、この外周面には、周方向に連続する環状突起112が形成されている。ポート110に、コネクタ50が接続される。
【0034】
コネクタ50は、セプタム111のスリットに挿入される管状体51を備える。管状体51はチューブ59と連通している。コネクタ50は、更に、管状体51を挟んで配置された、弾性的に揺動可能な一対のロックレバー52a,52bを備える。ロックレバー52a,52bの先端の互いに対向する側の面には、係止爪53a,53bが形成されている。コネクタ50の材料は特に制限はないが、例えば樹脂を用いることができ、具体的にはポリプロピレン、ポリカーボネートを例示することができる。
【0035】
ポート110にコネクタ50を押し込むと、図1に示されているように、セプタム111のスリットに管状体51が挿入され、環状突起112と係止爪53a,53bとが係合する(ロック状態)。従って、セプタム111のスリットに管状体51が挿入された状態を安定して維持することができる。
【0036】
ロックレバー52a,52bの係止爪53a,53bとは反対側の操作部54a,54bを、互いに接近するように把持すると、ロックレバー52a,52bが弾性的に回動して、環状突起112と係止爪53a,53bとの係合が解除される。この状態でポート110からコネクタ50を引き抜けば、管状体51をセプタム111から抜き去ることができる。セプタム111から管状体51が抜き去られるとセプタム111のスリットは直ちに閉じる。このようにセプタム111はリシール性を有し、管状体51を繰り返し抜き差しすることができる。
【0037】
上記のような、ポート110の環状突起112と係合する係合爪53a,53bを有する弾性変位可能なロックレバー52a,52bを備えたコネクタ50、及びこのコネクタ50に適合するポート110の構成は、例えば特許文献1〜3に記載されている。
【0038】
シリンジ40は、外筒41と、外筒41内に挿入され、外筒41に対して押し引き可能なプランジャ45と、プランジャ45の先端に取り付けられたガスケット46とを備える。外筒41の先端には、オスルアー42と、オスルアー42を取り囲むロック部43とが設けられている。オスルアー42の外周面は、ISO594−1に規定の100分の6テーパー面を有していると好ましい。オスルアー42を分岐管12の接続口15内に挿入し、ロック部43の内周面に形成された雌ネジを分岐管12の接続口15の外周面に形成された雄ネジと螺合させることで、シリンジ40と分岐管12とが結合される。これにより、接続口15とオスルアー42との接続部分で薬液が漏れる可能性を低減することができる。接続口15の内周面は、オスルアー42の外周面に形成されたテーパ面と密着できるように、ISO594−1に規定の100分の6テーパー面が形成されていることが好ましい。
【0039】
第1逆止弁21は、薬液流路31とキャビティ11との間の流路上に設けられ、薬液流路31からキャビティ11へ向かう薬液の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限(阻止)する。第2逆止弁22は、コネクタ50とキャビティ11との間の流路上に設けられ、キャビティ11からコネクタ50へ向かう薬液の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限(阻止)する。第3逆止弁23は、気体流路32と外界との間の流路上に設けられ、外界から気体流路32へ向かう気体の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限(阻止)する。本実施形態1では、第1逆止弁21、第2逆止弁22、第3逆止弁23として、弾性材料(例えばシリコンゴム、イソプレンゴム)からなる一対のリップを備えた、いわゆるダックビル型逆止弁を用いている。ダックビル型逆止弁は、例えば特許文献4,5に記載されている。
【0040】
疎水性フィルター25は、気体流路32と外界との間の流路上に設けられる。疎水性フィルター25は、疎水性と通気性とを有しており、気体を通過させるが、薬液(液体)を実質的に通過させない特性を有している。疎水性フィルター25の材料としては特に制限はないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン他)、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。疎水性フィルター25は、これらの材料を用いた多孔質層や不織布などの平膜フィルタであることが好ましい。
【0041】
以上のように構成された本実施形態1の医療用薬液移送器1を用いてバイアル瓶60内の薬液62を輸液バッグ100に移送する方法の一例を以下に説明する。
【0042】
最初に、図1に示すように、接続口15にシリンジ40を接続し、また、コネクタ50を空の輸液バッグ100のポート110に接続する。次いで、バイアル瓶60のゴム栓61に瓶針30を穿刺する。このとき、シリンジ40のプランジャ45は外筒41内に深く押し込んだ状態にある。
【0043】
キャビティ11よりもバイアル瓶60を高い位置にして、瓶針30の先端の薬液流路31の開口を薬液62中に浸漬させる。このとき、バイアル瓶60内の薬液62が、万が一、気体流路32内に流入したとしても、第3逆止弁23及び疎水性フィルター25が薬液のキャップ34側への流出を阻止するので、薬液62が外界に漏れ出ることはない。この状態で、シリンジ40のプランジャ45を引く。バイアル瓶60内の薬液62は、薬液流路31、第1逆止弁21、キャビティ11を順に流れて、シリンジ40内に吸い込まれる。このとき、バイアル瓶60からの薬液62の流出量に応じた空気が、疎水性フィルター25、第3逆止弁23、気体流路32を順に通ってバイアル瓶60内に流入する。従って、バイアル瓶60内が負圧になることはない。
【0044】
次いで、シリンジ40のプランジャ45を押し込む。シリンジ40内の薬液は、上記とは逆にキャビティ11内に流れる。但し、第1逆止弁21は、薬液がキャビティ11から薬液流路31へ流れるのを制限する。従って、薬液は、キャビティ11から、第2逆止弁22、チューブ59、コネクタ50、ポート110を順に流れて、輸液バッグ100内に流れ込む。
【0045】
必要に応じてプランジャ45の押し引き操作を繰り返し、バイアル瓶60内の薬液62を全て輸液バッグ100内に移送する。第2逆止弁22は、薬液がチューブ59からキャビティ11へ流れるのを制限するから、プランジャ45を引いたときに、チューブ59や輸液バッグ100内の薬液が第2逆止弁22を通ってキャビティ11やシリンジ40内に逆流することはない。
【0046】
複数本のバイアル瓶60内の薬液を共通する輸液バッグ100に移送する場合には、空になったバイアル瓶60を新しいバイアル瓶60に交換して上記の操作を繰り返す。その後、ポート110とコネクタ50とを分離する。
【0047】
必要に応じてブドウ糖液や生理食塩水などを輸液バッグ100内に注入して、患者に投与する液状物(輸液)を調整する。この注入作業は、本実施形態1の医療用薬液移送器1を用いて行ってもよいし、他の器具を用いて行ってもよい。
【0048】
次いで、輸液バッグ100に輸液セット(図示せず)を接続する。輸液バッグ100と輸液セットの接続方法は、輸液セットの構成等に応じて適宜選択することができる。例えば、輸液バッグ100の補助ポート120に設けられたゴム栓121に輸液セットの上流側端に設けられた金属針を穿刺してもよい。あるいは、輸液セットの構成によっては、輸液セットの上流側端を、補助ポート120ではなく、コネクタ50が接続されていたポート110に接続してもよい。
【0049】
次いで、輸液セットの下流側端の金属針を患者の静脈に穿刺する。輸液バッグ100をイルリガートル台に吊り下げて、輸液セットを介して輸液バッグ100内の輸液を患者に投与する。
【0050】
以上のように、本実施形態1の医療用薬液移送器1によれば、瓶針30をバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺した状態でシリンジ40のプランジャ45を押し引きするだけで、バイアル瓶60内の薬液62を輸液バッグ100に移送することができる。従って、従来のようにシリンジの先端の瓶針をバイアル瓶60と輸液バッグとに交互に刺し替える作業は不要である。従って、複数のバイアル瓶60内の薬液62を輸液バッグ100に移送する場合であっても、薬液の移送作業は簡単となり、移送に要する時間も短縮できる。
【0051】
従って、本実施形態1の医療用薬液移送器1によれば、バイアル瓶60内の薬液62を輸液バッグ100に効率良く移送することができる。
【0052】
瓶針30をバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺した状態でシリンジ40のプランジャ45の押し引きを何度か繰り返すことにより、薬液流路31内の薬液を第1逆止弁16を通過させてキャビティ11側に移動させることができる。複数のバイアル瓶60内の薬液62を繰り返して輸液バッグ100に移送する場合には、このように薬液流路31内に薬液が存在しない状態にした後に、空になったバイアル瓶60から瓶針30を抜き去り、新たなバイアル瓶60に瓶針30を穿刺することが好ましい。これにより、瓶針30の先端から薬液が漏れ出す可能性を低減することができる。従って、薬液62が作業者の指などに付着する危険性を低減することができる。これは、薬液62が、例えば劇薬に指定された抗がん剤を含む場合に特に有効である。
【0053】
上記の実施形態1では、移送器本体10に瓶針30及びシリンジ40が直接接続されている。これにより、瓶針30と移送器本体10とシリンジ40とを一体物としてハンドリングできる。従って、例えば瓶針30をバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺したままシリンジ40を両手で保持してバイアル瓶60を上方に持ち上げてプランジャ45の押し引き操作を行うことができる。即ち、シリンジの先端に装着された瓶針を介してバイアル瓶内の薬液をシリンジに吸引する従来の薬液の移送作業と実質的に同じ感覚で薬液の移送作業を行うことができる。
【0054】
また、瓶針30とシリンジ40とは同軸上に配置されている。従って、バイアル瓶60のゴム栓61に対する瓶針30の穿刺作業も、シリンジの先端に装着された瓶針をバイアル瓶のゴム栓に穿刺する従来の穿刺作業と実質的に同じ感覚で行うことができる。
【0055】
一方、コネクタ50は、柔軟なチューブ59を介して移送器本体10と接続されているので、コネクタ50を接続した輸液バッグ100を任意の位置に配置して薬液の移送作業を行うことができる。また、移送作業中、バイアル瓶60やシリンジ40等の位置や姿勢を自由に変化させることができるので、移送作業を効率よく行うことができる。
【0056】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る医療用薬液移送器1を、実施形態1と異なる点を中心に説明する。以下の説明で参照する図において、実施形態1において参照した図1に示された部材と同じ部材には同一の符号が付されており、それらについての重複する説明を省略する。
【0057】
図2Aは、本実施形態2に係る医療用薬液移送器において、バイアル瓶60のゴム栓61に穿刺する前の瓶針30及びその周辺の概略構成を示した断面図である。本実施形態2では、瓶針30に瓶針用シールド(以下、単に「シールド」という)35が設けられている。シールド35は、蛇腹状の筒状部36と、筒状部36の一端に設けられたシールド板37とを備える。瓶針30の先端は、シールド板37の内面に当接又は近接している。シールド板37の瓶針30の先端が対向する部分には、直線状のスリット(切り込み)38が形成されている。筒状部36のシールド板37とは反対側の端部は、瓶針30に固定されている。シールド35は、瓶針30の先端又はその近傍の薬液流路31及び気体流路32の両開口を覆っている。シールド35は可撓性(柔軟性)を有する材料(例えばシリコンゴム、イソプレンゴム)で構成されている。
【0058】
上記のようにシールド35が装着された瓶針30をバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺する。図2Bは、瓶針30をバイアル瓶60のゴム栓61に穿刺した状態を示した断面図である。シールド板37がゴム栓61に当接した状態で、瓶針30の先端がシールド板37のスリット38を通過し、ゴム栓61に突き刺さっている。筒状部36は弾性的に圧縮変形している。
【0059】
この状態から、瓶針30をゴム栓61から引き抜くと、筒状部36はその弾性回復力によって伸長し、スリット38から瓶針30が抜き去られ、スリット38が閉じ、図2Aに示す初期状態に戻る。
【0060】
本実施形態2の薬液の移送操作は、実施形態1のそれと同じである。
【0061】
本実施形態2によれば、瓶針30をバイアル瓶60に穿刺していないときは、図2Aに示すように薬液流路31の開口及び気体流路32の開口を含む瓶針30の先端及びその近傍部分は、常にシールド35で覆われる。従って、薬液62が瓶針30から外界に漏れ出る可能性を低減することができる。従って、実施形態1よりも更に安全性を向上させることができる。
【0062】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じであり、実施形態1で説明したのと同様の効果を奏する。
【0063】
上記の実施形態1,2は一例であって、本発明はこれに限定されず、適宜変更することができる。
【0064】
例えば、上記の実施形態1,2では、キャビティ11が形成された移送器本体10に、瓶針30が保持されていたが、本発明はこれに限定されない。移送器本体10と瓶針30とが例えば柔軟なチューブで接続されていてもよい。また、上記の実施形態1,2では、シリンジ40が接続される接続口15は移送器本体10に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、移送器本体10に柔軟なチューブを接続し、当該チューブの終端をシリンジ40が接続される接続口15としてもよい。また、コネクタ50は、チューブ59を介することなく、移送器本体10に直接設けられていていもよい。
【0065】
接続口15とシリンジ40との接続部分の構成は上記の実施形態に限定されない。例えば、上記の実施形態1,2のように雄ネジと雌ネジとを螺合させるルアーロック機構を備えていなくてもよい。接続口15がセプタムを備え、シリンジ40の先端のオスルアーをセプタムのスリットに挿入することで、キャビティ11とシリンジ40とを連通させてもよい。
【0066】
上記の実施形態1,2では、シリンジ40と接続口15とは分離可能であった。これにより、薬液の移送作業ごとに、バイアル瓶60の容量や薬液の種類などに応じて最適なシリンジ40を選択して接続口15に接続することができる。但し、本発明はこれに限定されず、例えば、接続口15にシリンジ40の外筒41を一体成形等により一体的に形成してもよい。これにより、接続口15とシリンジ40との接続部分から薬液が漏れるのを防止することができる。
【0067】
上記の実施形態1,2では、第1逆止弁21、第2逆止弁22、第3逆止弁23としてダックビル型逆止弁を用いたが、本発明はこれに限定されない。第1逆止弁21及び第2逆止弁22としては、薬液の一方向の流れを許可し、逆方向の流れを禁止(阻止)することができる任意の逆止弁を使用することができる。また、第3逆止弁23としては、気体の一方向の流れを許可し、薬液の逆方向の流れを制限(阻止)することができる任意の逆止弁を使用することができる。第1逆止弁21、第2逆止弁22、第3逆止弁23として、例えばアンブレラタイプの逆止弁を使用することができる。また、第1逆止弁21、第2逆止弁22、第3逆止弁23のうちの少なくとも1つが他と異なるタイプの逆止弁であってもよい。
【0068】
第1逆止弁21は、薬液流路31とキャビティ11との間の薬液の流路上に設けられていればよく、その設置位置は上記の実施形態1,2に限定されない。同様に、第2逆止弁22は、コネクタ50とキャビティ11との間の薬液の流路上に設けられていればよく、その設置位置は上記の実施形態1,2に限定されない。例えば、第2逆止弁17がコネクタ50内に設けられていてもよい。
【0069】
上記の実施形態1,2では、第3逆止弁23及び疎水性フィルター25は瓶針30に搭載されていたが、第3逆止弁23及び疎水性フィルター25は、気体流路32と外界との間の流路上に設けられていればよく、その設置位置は上記の実施形態1,2に限定されない。例えば、瓶針30の気体流路32と第3逆止弁23及び疎水性フィルター25との間を柔軟なチューブ等で接続してもよい。上記の実施形態1,2とは逆に、気体流路32側から疎水性フィルター25、第3逆止弁23の順に配置してもよい。第3逆止弁23及び疎水性フィルター25のうちの一方又は両方を省略してもよい。
【0070】
コネクタ50の構成は上記の実施形態1,2に限定されない。例えば、図3に示すように、管状体51の先端を管状体用シールド55(以下、単に「シールド」という)で覆ってもよい(例えば特許文献6,7参照)。シールド55は、実施形態2で説明したシールド35と同様に、蛇腹状の筒状部56と、筒状部56の一端に設けられたシールド板57とを備える。管状体51の先端はシールド板57に密着する。管状体51の先端が対向するシールド板57の部分には直線状のスリット(切り込み)58が形成されている。シールド55は可撓性(柔軟性)を有する材料(例えばシリコンゴム、イソプレンゴム)で構成されている。ポート110にコネクタ50を押し込むと、ポート110の頂面110aによってシールド板57が押され、筒状部56が弾性的に圧縮変形し、管状体51の先端がスリット58を通ってこれから突き出し、次いで、管状体51がセプタム111のスリット113に挿入される。ポート110からコネクタ50を引き抜くと、管状体51はセプタム111から抜き去られ、筒状部56が弾性回復して図3に示す初期状態に戻り、スリット58が閉じる。このように、コネクタ50の管状体51の先端をスリット58が形成されたシールド55で覆うことにより、コネクタ50をポート110に接続していないときに管状体51から薬液が漏れる可能性を低減することができる。
【0071】
コネクタの構成は輸液バッグ100に設けられたポート110の構成に応じて適宜変更することができる。コネクタをポート110に接続した状態を保持するためのロック機構は、上記の実施形態に示したロックレバー52a,52bに限定されない。例えば、コネクタが、特許文献8に記載されているような、いわゆる回転式コネクタであってもよい。回転式コネクタは、管状体の周囲に、管状体に対して回転可能なロックコネクタを有している。ポートのセプタムのスリットに管状体を挿入した状態でロックナットを回転させてロックナットとポートとを係合させることができる。
【0072】
コネクタは、ポートと係合するロック機構を備えていなくてもよい。例えば、コネクタが、ポート110のセプタム111のスリットに挿入可能な管状体のみで構成されていてもよい。
【0073】
輸液バッグ100に設けられるポート110は、セプタム111を備えたニードルレスポートである必要はない。ポート110の構成は任意であり、ポート110の構成に応じてコネクタの構成を適宜選択することができる。
【0074】
輸液バッグ100の構成は特に限定はない。また、輸送される薬液の種類にも制限はない。
【0075】
上記の実施形態1,2では、1本の瓶針30内に互いに独立した薬液流路31及び気体流路32が形成されていた。このような瓶針30に代えて、互いに独立した、薬液流路31が形成された薬液用針と気体流路32が形成された気体用針とを用いてもよい。薬液用針及び気体用針は、樹脂材料又は金属材料を用いて作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の利用分野は特に制限はないが、バイアル瓶内の薬液を輸液バッグに移送する際に使用される医療用薬液移送器として広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 医療用薬液移送器
10 移送器本体
11 キャビティ
15 接続口
21 第1逆止弁
22 第2逆止弁
23 第3逆止弁
25 疎水性フィルター
30 瓶針
31 薬液流路
32 気体流路
35 瓶針用シールド
36 筒状部
37 シールド板
38 スリット
40 シリンジ
41 外筒
42 オスルアー
43 ロック部
45 プランジャ
50 コネクタ
51 管状体
52a,52b ロックレバー
53a,53b 係止爪
55 管状体用シールド
56 筒状部
57 シールド板
58 スリット
59 チューブ
60 バイアル瓶
61 バイアル瓶のゴム栓
62 薬液
100 輸液バッグ
110 ポート
111 セプタム
113 セプタムのスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液流路及び気体流路を備えた瓶針と、
シリンジが接続される接続口と、
輸液バッグのポートに接続されるコネクタと、
前記薬液流路、前記接続口、及び、前記コネクタと連通したキャビティが内部に形成された移送器本体と、
前記薬液流路と前記キャビティとの間の流路上に設けられ、前記薬液流路から前記キャビティへ向かう薬液の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限する第1逆止弁と、
前記コネクタと前記キャビティとの間の流路上に設けられ、前記キャビティから前記コネクタへ向かう薬液の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限する第2逆止弁と
を備え、
前記瓶針がバイアル瓶のゴム栓に穿刺されたとき、前記薬液流路と前記バイアル瓶の内部とが連通し、且つ、前記気体流路を介して前記バイアル瓶の内部と外界とが連通することを特徴とする医療用薬液移送器。
【請求項2】
前記気体流路と前記外界との間に、前記外界から前記気体流路へ向かう気体の流れを許可し、その逆に向かう薬液の流れを制限する第3逆止弁が設けられている請求項1に記載の医療用薬液移送器。
【請求項3】
前記気体流路と前記外界との間に、気体を通過させるが薬液を実質的に通過させない疎水性フィルターが設けられている請求項1又は2に記載の医療用薬液移送器。
【請求項4】
前記瓶針は前記移送器本体に保持され、前記接続口は前記移送器本体に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項5】
前記シリンジが前記瓶針と同軸上に配置される請求項1〜4のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項6】
前記コネクタは柔軟性を有するチューブを介して前記移送器本体に接続されている請求項1〜5のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項7】
前記瓶針の少なくとも先端を覆う可撓性を有する瓶針用シールドを更に備え、前記瓶針の前記先端が対向する前記瓶針用シールドの部分にはスリットが形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項8】
前記第1逆止弁及び前記第2逆止弁のうちの少なくも一方はダックビル型逆止弁である請求項1〜7のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項9】
前記第3逆止弁はダックビル型逆止弁である請求項2に記載の医療用薬液移送器。
【請求項10】
前記コネクタが、前記輸液バッグの前記ポートと係合する係合爪を有する弾性変位可能なロックレバーを備える請求項1〜9のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項11】
前記コネクタが、前記輸液バッグの前記ポートに設けられたセプタムのスリットに挿入可能な管状体を備える請求項1〜10のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項12】
前記コネクタが、前記管状体の少なくとも先端を覆う可撓性を有する管状体用シールドを更に備え、前記管状体の前記先端が対向する前記管状体用シールドの部分にはスリットが形成されている請求項11に記載の医療用薬液移送器。
【請求項13】
前記接続口に、前記シリンジの先端のオスルアーを取り囲むロック部に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている請求項1〜12のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項14】
前記接続口にシリンジの外筒が一体的に設けられている請求項1〜12のいずれかに記載の医療用薬液移送器。
【請求項15】
前記瓶針に代えて、互いに独立した、前記薬液流路を備えた薬液用針と前記気体流路を備えた気体用針とを備える請求項1〜14のいずれかに記載の医療用薬液移送器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−95834(P2012−95834A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246110(P2010−246110)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】