説明

医療用観察システム

【課題】白飛びや黒潰れを除去するのに適した構成の医療用観察システムを提供すること。
【解決手段】所定の光を射出する光源と、該光を対象物上で走査する走査手段と、走査された光の反射光を受光して画像信号を検出する手段と、画像信号の検出タイミングに基づいて、各画像信号により表現される画像情報の画素配置を決定する手段と、決定された画素配置に従って各画像情報を空間的に配列して画像を作成する手段と、各画素に対応するタイミングで検出された画像信号の輝度値を検知する手段と、検知された輝度値に基づいて各画素に対応する対象物上の部位への光の照射時間を決定する手段と、決定された部位毎の照射時間に基づいて走査手段による光の走査速度を画素に対応する単位で制御する手段とで医療用観察システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観察対象を走査して観察画像を生成する医療用観察システムに関連し、詳しくは、極細径の光ファイバの先端を共振させて対象物を光走査して画像情報を取得する走査型医療用プローブを有する医療用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が患者の体腔内を観察するときに使用する医療機器として、電子スコープが一般的に知られている。電子スコープを使用する医師は、電子スコープの挿入部を体腔内に挿入して、挿入部の先端に備えられた先端部を観察対象近傍に導く。医師は、先端部に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子によって体腔内の生体組織を撮影するため、電子スコープやビデオプロセッサの操作部を必要に応じて操作する。医師は、各種操作を行った結果得られる生体組織の映像をモニタを通じて観察して検査や施術等を行う。
【0003】
このように電子スコープは、患者の体腔内に挿入されて使用される。そのため、電子スコープに関して、患者の負担を軽減すべく挿入部を細径化させる要望が恒常的にある。電子スコープを細径化させるためには、各種内蔵部品の配置等を工夫する以外に各種内蔵部品自体を小型化させることが望まれる。なお、電子スコープには、固体撮像素子以外に、固体撮像素子の周辺回路やシールド部材、絶縁部材、対物レンズ、照明レンズ、レンズ保持枠、光ファイババンドル等の多数の部品が内蔵されている。
【0004】
電子スコープの内蔵部品のなかでも特に固体撮像素子や光ファイババンドルは外形寸法が大きい。また、対物レンズや照明レンズ等の他の部品の設計上可能な最小寸法は、固体撮像素子の有効画素領域や光ファイババンドルの外形寸法等によって規定される。従って、小型な固体撮像素子や細径な光ファイババンドルを採用する場合には、細径な電子スコープを設計しやすい。しかし、一般に、固体撮像素子を小型化するほど解像度やダイナミックレンジ、SN比等の種々のパラメータに関して所望の性能を満たすことが難しくなる。また、光ファイババンドルを細径化、すなわち光ファイバの本数を削減した場合には、体腔内を照明するために十分な光量を導光できない問題が生じる。そのため、固体撮像素子や光ファイババンドルを安易に小型化や細径化させることはできない。
【0005】
そこで、固体撮像素子自体を不要とした構成を採用することによって、従来型の電子スコープ(つまり固体撮像素子を搭載した電子スコープ)よりも細径化させることが可能な医療用プローブが提案されている。
【0006】
この種の医療用プローブの一例として、共焦点顕微鏡の光学構成を応用して製作された走査型共焦点プローブが特許文献1に開示されている。走査型共焦点プローブは、単一の光ファイバの先端を動作させて所定の走査光により生体組織を所定の走査パターンで走査する。走査型共焦点プローブは、生体組織からの反射光のうち共焦点光学系の物体側焦点位置と共役の位置に配置されたピンホールを介した光のみを検出して光電変換しビデオプロセッサに順次出力する。ビデオプロセッサは、光電変換された信号を処理して画像化しモニタに出力する。医師は、このようにして得られた生体組織の映像を、電子スコープを使用した場合と同じくモニタを通じて観察して検査や施術等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3943927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
走査型共焦点プローブ等の細径な走査型医療用プローブによる走査光は、単一の光ファイバを介して生体組織に照射されるため微弱である。生体組織からの光を検出する光検出器は、微弱な反射光を確実に検出して後段の処理回路に再現性の高い画像を生成させるため、感度の高い光検出器が採用される。しかし、光検出器が高感度化するほど撮影画像のダイナミックレンジが狭くなり、明部の階調が失われて白飛びが生じ易くなる問題がある。同様に、暗部の階調が失われて黒潰れが生じ易くなる問題もある。ダイナミックレンジが狭い場合には、例えば照明光の光量を減少又は増加させても白飛びや黒潰れを良好に除去できないことが比較的多く、問題視されている。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発生した白飛びや黒潰れを除去するのに適した構成の医療用観察システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る医療用観察システムは、所定の光を射出する光源と、該光源から射出された光を対象物上で走査する走査手段と、該走査手段により走査された光の反射光を受光して画像信号を検出する画像信号検出手段と、該画像信号の検出タイミングに基づいて各画像信号により表現される画像情報の画素配置を決定する画素配置決定手段と、該画素配置決定手段により決定された画素配置に従って各画像情報を空間的に配列して画像を作成する画像作成手段と、各画素に対応するタイミングで検出された画像信号の輝度値を検知する輝度値検知手段と、該輝度値検知手段により検知された輝度値に基づいて各画素に対応する対象物上の部位への光の照射時間を決定する照射時間決定手段と、該照射時間決定手段により決定された部位毎の照射時間に基づいて走査手段による光の走査速度を画素に対応する単位で制御する走査速度制御手段とを有することを特徴としたシステムである。
【0011】
本発明に係る医療用観察システムによれば、画像の明るさが画素単位で調節可能であるため、例えば観察視野中の一部に現れた白飛びや黒潰れ等を良好に除去することができる。ダイナミックレンジが狭い場合にも全ての画素をダイナミックレンジに速やかに収めることができ、画像再現性が向上する。
【0012】
本発明に係る医療用観察システムは、全ての画素に対応する照射時間及び走査時間に基づいて画像を作成するレートを設定する画像作成レート設定手段を更に有する構成としてもよい。
【0013】
ここで、走査手段は、光を対象物に向けて伝送する光ファイバと、光ファイバの射出端が所定の軌跡を描くように該光ファイバを振動させる圧電アクチュエータとを有する構成としてもよい。この場合、走査速度制御手段は、部位毎の照射時間に基づいて、圧電アクチュエータの振動モードを画素に対応する単位で制御するように構成される。
【0014】
本発明に係る医療用観察システムは、輝度値検知手段により検知された輝度値と所定の参照値との差分値を計算する差分値計算手段を更に有する構成としてもよい。この場合、照射時間決定手段は、差分値計算手段により計算された差分値に基づいて照射時間を決定する。
【0015】
本発明に係る医療用観察システムは、例えばユーザ操作等によって上記参照値を設定する参照値設定手段を更に有する構成としてもよい。
【0016】
本発明に係る医療用観察システムは、輝度値検知手段により検知された輝度値が所定範囲外の値をとる画素に対応する部位に向けて光が射出されるタイミングで、該光の強度が規定強度より強く又は弱くなるように光源を駆動制御する光源制御手段を更に有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る医療用観察システムによれば、画像の明るさが画素単位で調節可能であるため、例えば観察視野中の一部に現れた白飛びや黒潰れ等を良好に除去することができる。ダイナミックレンジが狭い場合にも全ての画素をダイナミックレンジに速やかに収めることができ、画像再現性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の走査型医療用プローブの内部構成及びプロセッサの一部の構成を模式的に示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態のプロセッサ及びモニタの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の走査型医療用プローブの先端部の模式的な内部構造を示す側断面図である。
【図4】本発明の実施形態の走査型医療用プローブの先端部の内部構造を示す外観斜視図である。
【図5】観察対象上に形成されるスポットを説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態のプロセッサが有するDSPの構成を示すブロック図である。
【図7】タイミングTにおいて検出された画像情報と画素アドレスとの関係を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の医療用観察システムにおいて実行される通常調光処理のフローチャート図である。
【図9】本発明の実施形態の医療用観察システムにおいて実行される画素単位調光処理のフローチャート図である。
【図10】本発明の実施形態の医療用観察システムにおいて実行される画素単位調光処理の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の走査型医療用プローブを有する医療用観察システムについて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の走査型医療用プローブ100の内部構成及びプロセッサ200の一部の構成を模式的に示す模式図である。図2は、本実施形態のプロセッサ200及びモニタ300の構成を示すブロック図である。なお、図2においては、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200との接続関係等を明確にするため、走査型医療用プローブ100の一部の構成も模式的に示している。また、モニタ300は周知の構成を有した受像装置であるため、図2においてモニタ300の詳細な構成は図示省略している。これらの図面に示されるように、本実施形態の医療用観察システム1は、走査型医療用プローブ100、プロセッサ200、及びモニタ300を有している。
【0021】
プロセッサ200は、走査型医療用プローブ100を駆動制御するとともに走査型医療用プローブ100により取得される観察光に基づき画像信号を生成する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内に走査型医療用プローブ100を通じて走査光を照射する光源装置とを内蔵した一体型のプロセッサである。なお、別の実施形態では信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0022】
図2に示されるように、走査型医療用プローブ100は、基端部に光学コネクタ部110及び電気コネクタ部120を有している。また、プロセッサ200は、光学コネクタ部210及び電気コネクタ部220を有している。光学コネクタ部110が光学コネクタ部210に差し込まれることにより、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200が光学的に接続される。同じく、電気コネクタ部120が電気コネクタ部220に差し込まれることにより、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200が電気的に接続される。プロセッサ200とモニタ300は、所定のケーブルを介して電気的に接続される。なお、図1においては、走査型医療用プローブ100とプロセッサ200の接続関係等を分かり易くするため、光学コネクタ部110と210との接続部分を敢えて二つに分けて図示している。
【0023】
このように走査型医療用プローブ100、プロセッサ200、モニタ300がそれぞれ接続されて電源が投入されると、術者は、医療用観察システム1を使用して患者の体腔内を検査、施術等できるようになる。具体的には、術者は、走査型医療用プローブ100の挿入部130を体腔内に挿入して挿入部130の先端130aを観察対象近傍に導きつつ、プロセッサ200の操作パネル260を必要に応じて操作する。術者は、このような操作を行った結果得られる体腔内の生体組織の映像をモニタ300を通じて観察し検査や施術等を行う。
【0024】
なお、本実施形態においては、体腔内の生体組織を観察するために走査型医療用プローブ100単体が体腔内に直接挿入される。別の実施形態においては、例えば先端130aを観察対象近傍にスムーズに導くために挿入部130にガイドワイヤ等を添えて挿入するようにしてもよい。また、例えば電子スコープ等が有する鉗子チャンネルに挿入部130を挿入し通して先端部130aを観察対象近傍に近接させるようにしてもよい。
【0025】
プロセッサ200は、観察対象を走査するための光源としてR、G、Bの各波長に対応した光を発振するレーザ光源230R、230G、230Bを有している。なお、これら3つのレーザ光源は、例えば広帯域であるスーパーコンティニューム光等を発振する単一のファイバレーザに置き換えてもよい。また、光源は、レーザ光源に限らず例えばLED(Light Emitting Diode)等の他の形態の光源としてもよい。
【0026】
プロセッサ200は、該プロセッサ200の各回路の信号処理タイミング等を統括的に制御するシステムコントローラ240を有している。システムコントローラ240は、ドライバ232R、232G、232Bの各ドライバ回路に所定の変調制御信号を出力する。ドライバ232R、232G、232Bはそれぞれ、入力された変調制御信号に基づきレーザ光源230R、230G、230Bを直接変調する。具体的には、各ドライバ回路は、変調制御信号に基づき、同一振幅かつ同位相の電流を、対応するレーザ光源に流す。これにより、レーザ光源230R、230G、230Bは、R、G、Bの各波長に対応する同一強度のパルス光(以下、「Rパルス光」、「Gパルス光」、「Bパルス光」と記す。)を同期したタイミングで発振する。なお、各レーザ光源から発振されるレーザ光は、パルス光で無く連続光としてもよい。
【0027】
各レーザ光源から発振されたRパルス光、Gパルス光、Bパルス光は、光結合器234に入射される。光結合器234は、入射された各パルス光を位相を揃えた状態で結合して射出する。以下、説明の便宜上、光結合器234により結合されたパルス光を「結合パルス光」と記す。
【0028】
光源が単一のファイバレーザである場合には、各波長のパルス光を同期させるためのタイミング制御が不要である。そのため、レーザ光源周辺の回路構成等を簡素化できるメリットがある。また、既に結合された状態のパルス光が発振されるため、光結合器234が不要になるメリットもある。また、各レーザ光源からのレーザ光が連続光である場合にも、各波長の光を同期させるためのタイミング制御が不要である。
【0029】
光結合器234から射出された結合パルス光は、走査型医療用プローブ100が有するシングルモードファイバ112の入射端112aに入射される。シングルモードファイバ112は、光学コネクタ部110から先端部130aに亘って、走査型医療用プローブ100の外皮部材(後述の図3に示されるシース132)に収容されている。入射端112aに入射された結合パルス光は、シングルモードファイバ112内部を全反射を繰り返すことにより伝搬される。伝搬された結合パルス光は、先端部130a内部に配置されたシングルモードファイバ112の射出端112bから射出される。
【0030】
図3に、本実施形態の先端部130aの模式的な内部構造を側断面図で示す。また、図4に、本実施形態の先端部130aの内部構造を外観斜視図として示す。なお、以降においては、走査型医療用プローブ100の構成を説明するにあたり、便宜上、走査型医療用プローブ100の長手方向をZ方向、Z方向に直交しかつ互いに直交する二方向をX方向、Y方向と定義する。かかる定義によれば、例えば図3は、走査型医療用プローブ100の中心軸AXを含むY−Z平面での先端部130aの断面図となっている。
【0031】
図3に示されるシース132は、可撓性を有する走査型医療用プローブ100の保護チューブである。シース132は、先端部130aから光学コネクタ部110にまで延びた形状を有し、走査型医療用プローブ100が有する各種内蔵部品を保護している。シース132の外径は、走査型医療用プローブ100が固体撮像素子等を搭載しない構成であるため、従来型の電子スコープの外径に比べて格段に細い。そのため、走査型医療用プローブ100は、従来型の電子スコープに比べてより一層の低浸襲性が達成されている。
【0032】
図3に示されるように、シース132内部には、支持体134が支持されている。シングルモードファイバ112の先端部112cは、支持体134の貫通穴に挿入され通されて片持ち梁の状態で支持されている。支持体134は、アクチュエータ136、138も支持している。アクチュエータ136、138は、圧電アクチュエータであり、圧電素子上の所定位置に電極が形成されている。各電極は、終端が電気コネクタ部120内部に収容された電線(不図示)と接続されている。各電線は、電気コネクタ部120と電気コネクタ部220とを接続させたときに、プロセッサ200が有するX軸ドライバ236X又はY軸ドライバ236Yに接続される。
【0033】
システムコントローラ240は、X軸ドライバ236X、Y軸ドライバ236Yの各ドライバ回路に所定の駆動制御信号を出力する。X軸ドライバ236Xは、フレームレートが通常レートであるとき、駆動制御信号に基づいて、交流電圧Xmをアクチュエータ136に印加する。Y軸ドライバ236Yは、フレームレートが通常レートであるとき、駆動制御信号に基づいて、交流電圧Xmと同一周波数であって位相が直交する交流電圧Ymをアクチュエータ138に印加する。なお、交流電圧Xm、Ymはそれぞれ、振幅がリニアに増加して、時間(Xm)、(Ym)かけて実効値(Xm)、(Ym)に達する電圧として定義される。上記のmは1より大きい自然数であり、次に説明される圧電アクチュエータの振動モードの次数にも対応する。
【0034】
アクチュエータ136、138はそれぞれ、交流電圧Xm、Ymが印加されたときにX方向、Y方向にm次の横振動モードで共振するように材料及び形状が選択され構成されている。シングルモードファイバ112の射出端112bは、アクチュエータ136及び138によるX方向及びY方向への運動エネルギーが合成されることにより、X−Y平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記す。)上において中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように回転する。射出端112bの回転軌跡は、印加される電圧に比例して大きくなり、実効値(Xm)、(Ym)の交流電圧が印加された時点で最も大きい径を有する円の軌跡を描く。
【0035】
シングルモードファイバ112の入射端112aに入射された結合パルス光は、各アクチュエータへの交流電圧の印加開始直後から印加停止までの期間(つまり、時間(Xm)又は(Ym)に相当する期間)、射出端112bから射出され続ける。以下、説明の便宜上、この期間を「サンプリング期間」と記す。
【0036】
シングルモードファイバ112の先端部112cの振動は、サンプリング期間の経過後、各アクチュエータへの交流電圧の印加が停止されるため、徐々に減衰されていく。かかる減衰に伴って、XY近似面上における射出端112bの円運動は徐々に減衰して、所定時間後に中心軸AX上で停止する。以下、説明の便宜上、サンプリング期間が終了してから射出端112bが中心軸AX上に停止するまでの期間を「制動期間」と記す。一フレームに対応する期間は、サンプリング期間と制動期間で構成される。
【0037】
シース112の先端は、集光レンズ140により封止されている。そのため、結合パルス光は、シングルモードファイバ112の射出端112bから射出されて一旦発散するものの、集光レンズ140により集光されて観察対象上にスポットSを形成する。かかるスポット径は、例えば数ミクロンオーダであり極めて小さい。なお、射出端112bにはコリメートレンズ(不図示)が取り付けられてもよい。この場合、結合パルス光は、射出端112bから平行光として射出されて集光レンズ140を介して観察対象上にスポットSを形成する。
【0038】
図5に、観察対象上に形成されるスポットSを説明するための図を示す。走査型医療用プローブ100は、一枚の画像を得るべく、一サンプリング期間中、観察対象上に渦巻パターンSPを描くようにn個のスポットSをスポットS、S、S、・・・、Sn−2、Sn−1、Sの順に形成する。各スポットSの間隔は、シングルモードファイバ112の射出端112bの運動速度や各レーザ光源の変調周波数等に依存して決まる。なお、渦巻パターンSPは、観察対象上にパルス光で無く連続光を走査した場合を想定して描かれた仮想的な走査軌跡である。
【0039】
サンプリング期間中のXY近似面におけるシングルモードファイバ112の射出端112bの位置(軌跡)は、実験等を重ねた結果予め求められている。また、射出端112bの位置と、各位置で結合パルス光が射出された場合に観察対象上でスポットSが形成されるであろう観察視野中の位置との関係も予め計算されている。更に、観察視野中のスポット形成位置と、各スポット形成位置からの反射パルス光を検出して画像化する際の画素位置との関係も予め計算されている。システムコントローラ240は、これらの既知情報に基づいて、X軸ドライバ236X、Y軸ドライバ236Yに対する制御(つまり、各アクチュエータに印加される交流電圧の制御)、及びドライバ232R、232G、232Bに対する制御(つまり、サンプリング期間中における各レーザ光源の変調制御)のそれぞれをフレームレートに応じた周期で繰り返す。
【0040】
観察対象上に形成された各結合パルス光のスポットSは、観察対象上で反射されて集光レンズ140を介してシース132内部に入射される。ここで、図4に示されるように、支持体134の端面134aには、円環状に並ぶ複数の貫通穴が形成されている。各貫通穴には検出用ファイバ142が埋設されている。図4において図示省略するが、各検出用ファイバ142は支持体134の後方で束ねられており、光ファイババンドル142Bを構成している。
【0041】
シース132内部に戻された反射パルス光は、各検出用ファイバ142の入射端142aに入射される。入射端142aに入射された反射パルス光は、ファイババンドル142B(検出用ファイバ142)内部を終端に向かって伝搬される。光ファイババンドル142Bの終端は、光学コネクタ部110に収容されており、光学コネクタ部110と光学コネクタ部210との連結部分を介してプロセッサ200の光分離器238と結合されている。
【0042】
なお、ファイババンドル142Bは、数十本程度(例えば80本)の光ファイバを束ねたものに過ぎない。そのため、ファイババンドル142Bは、従来型の電子スコープやファイバスコープの光ファイババンドル(例えば数百〜千本の光ファイバを束ねた光ファイババンドル)と比べて遙かに径が細い。また、本実施形態において、検出用ファイバ142は最低限一本あればよい。検出用ファイバ142が一本の場合には、走査型医療用プローブ100をより一層細径化させることができる。
【0043】
光分離器238は、光ファイババンドル142Bからの反射パルス光をR、G、Bの各波長の反射パルス光(以下、「反射Rパルス光」、「反射Gパルス光」、「反射Bパルス光」と記す。)に分離して、光検出器250R、250G、250Bに出力する。
【0044】
前述したように、結合パルス光は、単一のシングルモードファイバ112により導光されて観察対象を照射する。そのため、観察対象上で反射される反射パルス光の光量は非常に少ない。このような微弱な光を確実にかつ低ノイズで検出するため、光検出器250R、250G、250Bの各光検出器には光電子増倍管等の高感度光検出器が採用されている。
【0045】
光検出器250R、250G、250Bは、受光された各波長の反射パルス光を光電変換してアナログ信号を生成し後段の回路に出力する。各光検出器により検出された各波長の反射パルス光に応じたアナログ信号は、サンプリング及びホールドされて、A/Dコンバータ252R、252G、252Bによりデジタル信号列に変換される。変換されたデジタル信号列は、DSP(Digital Signal Processor)254に入力される。
【0046】
図6に、本実施形態のDSP254の構成をブロック図で示す。DSP254は、図6に示されるように、R、G、Bの各波長に対応するデジタル信号列用に物理的に又は論理的に分離された領域254aR、254aG、254aBを持つ波形蓄積用メモリ254aを有している。波形蓄積用メモリ254aは、A/Dコンバータ252R、252G、252Bからの各デジタル信号列を各対応領域にラッチする。なお、各対応領域にラッチされたデジタル信号列は、波形蓄積用メモリ254aの容量を考慮して一定時間経過後順次破棄される。
【0047】
DSP254は、図6に示されるように、画像情報生成回路254bを有している。画像情報生成回路254bは、上記の既知情報に基づいて作成された、結合パルス光のスポットSが形成される観察視野中の位置(別の側面によれば画像を構成する画素のアドレス)と、各スポットSからの反射パルス光が検出されるタイミングTとを関連付けたテーブルを保持している。画像情報生成回路254bは、上記テーブルを参照しつつ各対応領域にラッチされたデジタル信号列を監視して、各タイミングTにおける各波長に対応する信号を各画素アドレスの画像情報(すなわち、領域254aRの信号をR色の輝度値、領域254aGの信号をG色の輝度値、領域254aBの信号をB色の輝度値)として検出する。画像情報生成回路254bは、検出された各画素アドレスの画像情報を画像情報記憶メモリ254cに出力する。
【0048】
図7を用いて、各タイミングTにおいて検出された画像情報と画素アドレスとの関係を具体的に説明する。ここでは、説明の便宜上、最終的に生成される画像が19×19からなる画素配置で構成されるものとする。画像情報生成回路254bは、上記テーブルに基づいて、スポットSに対応するタイミングtにおける領域254aR、254aG、254aBの各領域の信号を検出する。画像情報生成回路254bは、検出された各領域の信号を画素アドレス(10,10)に関連付けて画像情報記憶メモリ254cに出力する。以降のスポットS、S・・・に対応するタイミングT、T・・・における各領域の信号も順次検出して、画素アドレス(9,9)、(9,11)・・・に関連付けて画像情報記憶メモリ254cに順次出力する。
【0049】
画像情報記憶メモリ254cには、画像情報生成回路254bからの画像情報が順次書き込まれる。画像情報を有さない画素アドレスに関しては、画像情報生成回路254bが例えば所定のマスキングデータを生成して画像情報記憶メモリ254cに出力して書き込む。画像情報記憶メモリ254cはフレームバッファであり、画像情報生成回路254bにより生成されたスポットS〜Sに対応する一フレーム分(全画素)の画像情報をバッファリングする。画像情報読み出し回路254dは、システムコントローラ240によるタイミング制御に従い、画像情報記憶メモリ254cにバッファリングされた画像情報を読み出して、映像信号出力回路256に出力する。
【0050】
映像信号出力回路256は、入力された画像情報を所定の規格に準拠した映像信号に変換してモニタ300に出力する。これにより、モニタ300に、R色、G色、B色からなる観察対象のカラー画像が表示される。
【0051】
DSP254は、モニタ300に表示される画像を適正な明るさにするため、システムコントローラ240と連携動作して、図8に示される通常調光処理を撮影期間中継続的に実行している。なお、以降の本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0052】
前述のように、画像情報記憶メモリ254cには、画像情報生成回路254bからの画像情報が順次書き込まれる(S1)。画像情報記憶メモリ254cは、書き込まれた画像情報のうち各画素に対応するG色の輝度値を検出して、ヒストグラム処理回路254eに順次出力して保持させる(S2)。S1及びS2の処理は、全画素のG色の輝度値がヒストグラム処理回路254eに出力され保持されるまで繰り返し実行される(S1、S2、S3:NO)。
【0053】
全画素のG色の輝度値がヒストグラム処理回路254eに出力され保持されると(S3:YES)、次いで、S4の処理が実行される。すなわち、S4の処理においてヒストグラム処理回路254eは、全画素のG色の輝度値を用いてヒストグラム処理を行う。ヒストグラム処理回路254eは、生成されたヒストグラムデータを用いて画面全域の輝度を平均化して、実測輝度値として第一調光回路254fに出力する。なお、実測輝度値を計算する際の測光方式は、画面全域の輝度を平均化する方式に限らず、分割測光方式や中央重点測光方式、スポット測光方式等の他の方式を採用してもよい。測光範囲は、例えば操作パネル260上のGUI(Graphical User Interface)等により設定可能である。また、実測輝度値の計算に利用する輝度値は、G色以外の色の輝度値としてもよく、或いは複数の色の輝度値としてもよい。
【0054】
第一調光回路254fは、被写体像の基準となる明るさを示す目標輝度値を保持している。S5の処理において第一調光回路254fは、ヒストグラム処理回路254eからの実測輝度値を目標輝度値と比較して差分を計算する。第一調光回路254fは、計算された差分に基づいて所定の輝度補正値を生成して、システムコントローラ240に出力する。なお、目標輝度値は、操作パネル260で設定されている設定輝度値に応じて変更される。システムコントローラ240は、第一調光回路254fからの輝度補正値に基づいて変調制御信号を補正する。システムコントローラ240は、補正された変調制御信号をドライバ232R、232G、232Bの各ドライバ回路に出力する。レーザ光源230R、230G、230Bの各レーザ光源は、補正後の変調制御信号に基づくドライバ回路による変調制御により、被写体像の明るさ(実測輝度値)が目標輝度値に収束するように調節された強度のパルス光を発振する。その結果、モニタ300に表示される画像の明るさは、大凡、ダイナミックレンジに収まる適正な明るさに収束する。
【0055】
しかし、上記の通常調光処理を行っているにも拘わらず、撮影状況によってはハレーションが観察視野の一部に現れて階調が失われ、白飛びが発生することがある。また、観察視野中に結合パルス光が照射され難く暗部になり易い部位がある場合には、当該部位に対応する画素で階調が失われて黒潰れが発生することがある。特に、本実施形態のように光検出器の感度高くダイナミックレンジが狭い場合には、白飛びや黒潰れが比較的発生し易い。そこで、医療用観察システム1は、観察視野中の一部の領域に散発的に現れる白飛びや黒潰れの発生を抑制して(つまり、ダイナミックレンジに収めて)、画像が適正な明るさでかつ正常に再現されるように、図9に示される画素単位調光処理を実行する。
【0056】
本実施形態の画素単位調光処理は、例えば静止画を撮影するときに割り込み処理として実行される処理であって、操作パネル260によるフリーズ操作をトリガーとして実行開始される。なお、画素単位調光処理は、動画撮影時に随時実行されてもよい。かかる場合、画素単位調光処理は、図8に示される通常調光処理と並列に実行されてもよく、又は単独で実行されてもよい。
【0057】
画像情報記憶メモリ254cは、図9に示されるように、書き込まれた画像情報のうち各画素に対応するG色の輝度値を検出して、第二調光回路254gに順次出力する(S11)。第二調光回路254gは、例えば第一調光回路254fと同一の目標輝度値を保持している。
【0058】
S12の処理において第二調光回路254gは、入力されたG色の輝度値を画素毎に目標輝度値と比較して差分値を計算する。第二調光回路254gは、計算された画素の差分値に基づいて、該画素に対応する部位上での結合パルス光の照射時間を計算して決定し、決定された照射時間に適した該部位上での結合パルス光の走査速度を計算する。第二調光回路254gは、計算結果に基づいて、該部位(画素)に対応する照射時間、走査速度の各補正値を生成して補正値記憶メモリ270に順次出力し記憶させる。S11及びS12の処理は、全ての画素に対応する補正値が補正値記憶メモリ270に出力され記憶されるまで繰り返し実行される(S11、S12、S13:NO)。全ての画素に対応する補正値が補正値記憶メモリ270に出力され記憶されると(S13:YES)、システムコントローラ240は、補正値記憶メモリ270にアクセスして、各画素に対応する照射時間、走査速度の各補正値を読み出す(S14)。
【0059】
S15の処理においてシステムコントローラ240は、補正値記憶メモリ270から読み出された各画素に対応する照射時間の補正値に基づいて変調制御信号を補正する。各レーザ光源は、補正後の変調制御信号に従って変調されて、結合パルス光のパルス幅が画素単位でコントロールされる。システムコントローラ240は、更に、補正値記憶メモリ270から読み出された各画素に対応する走査速度の補正値に基づいて駆動制御信号を補正する。アクチュエータ136及び138は、補正後の駆動制御信号に従って交流電圧が印加されて、横振動モードの次数が画素単位でコントロールされる。
【0060】
アクチュエータ136及び138は、例えば明部の画素(例えば白飛びした画素)に対応するタイミングにおいてm+1次以上の次数の横振動モードで共振されて、該画素に対応する部位上での結合パルス光の走査速度を高速化させる。高速化された走査速度の結合パルス光は、該走査速度に適した時間(通常時(m次の横振動モードによる共振時)より短い時間)該部位に照射される。該部位への照射時間が短くなり、反射パルス光の光量が減少するため、該画素の輝度値が低下して目標輝度値に近付くこととなる。アクチュエータ136及び138は、例えば暗部の画素(例えば黒く潰れた画素)に対応するタイミングにおいてm−1次以下の次数の横振動モードで共振されて、該画素に対応する部位上での結合パルス光の走査速度を低速化させる。低速化された走査速度の結合パルス光は、該走査速度に適した時間(通常時より長い時間)該部位に照射される。該部位への照射時間が長くなり、反射パルス光の光量が増加するため、該画素の輝度値が増加して目標輝度値に近付くこととなる。
【0061】
各レーザ光源から発振されるレーザ光が連続光である場合、システムコントローラ240は、各レーザ光源に出力される変調制御信号を補正する必要が無い。かかる場合、S12の処理において第二調光回路254gは、計算された画素の差分値に基づいて、該画素に対応する部位上での連続光の照射時間を計算して決定し、決定された照射時間に適した走査速度を計算する。第二調光回路254gは、計算結果に基づいて、該部位(画素)に対応する走査速度の補正値を生成して補正値記憶メモリ270に順次出力し記憶させる。S15の処理においてシステムコントローラ240は、補正値記憶メモリ270に記憶された走査速度の補正値に基づいて駆動制御信号を補正することにより、連続光の走査速度(照射時間)を画素単位でコントロールして各画素の輝度値を適正な値に調節する。なお、ここでのS11、S13、S14の処理の説明は、パルス光の場合のS11、S13、S14の処理の説明と重複するため省略している。
【0062】
システムコントローラ240は、全ての画素に対応する部位に結合パルス光が照射された時点で各アクチュエータへの交流電圧の印加を停止するように構成されている。具体的には、システムコントローラ240は、照射時間及び走査速度の補正値に基づいて全ての画素に対応する部位への結合パルス光の合計走査時間を計算し、計算結果を元にサンプリング期間を算出する。システムコントローラ240は、算出されたサンプリング期間に基づいてフレームレートを計算して再設定する。システムコントローラ240は、各レーザ光源及び各ドライバ回路の制御と並行に、プロセッサ200の各種回路を再設定されたフレームレートに対応したタイミングで制御して、静止画像を生成する。静止画撮影後は、画素単位調光処理が終了して照射時間、走査速度、フレームレート共に通常の設定に復帰する。
【0063】
なお、システムコントローラ240は、照射時間及び走査速度の補正前後で解像度や画素配置が変化するのを避けるため、常に、各スポットSが観察対象上に線速度一定又は角速度一定で形成されるように各レーザ光源によるパルス光の発振タイミングをCLV(Constant Linear Velocity)制御又はCAV(Constant Angular Velocity)制御する。
【0064】
図10(a)〜(c)を参照して、画素単位調光処理の具体例に説明する。図10(a)〜(c)の各図の縦軸は、XY近似面上におけるシングルモードファイバ112の射出端112bのX方向又はY方向の振幅(単位:mm)を示し、横軸は、時間(単位:sec)を示す。振幅は、射出端112bが中心軸AX上に位置するときを0とする。各図中、振幅が増大する期間がサンプリング期間であり、振幅が減衰する期間が制動期間である。図10(a)は、フレームレートが通常レートであって各アクチュエータの横振動モードがm次であるときの射出端112bの振幅と時間との関係を示している。
【0065】
例えば画像の明るさが画面全域に亘って暗い場合を考える(図10(b)の例)。かかる場合、アクチュエータ136及び138は、サンプリング期間中継続してm−1の次数の横振動モードで共振されて、結合パルス光の走査速度を低速化させる。低速化された走査速度の結合パルス光は、該走査速度に適した時間(通常時より長い時間)該部位に照射される。サンプリング期間が延びてフレームレートが低速化するものの、反射パルス光の光量が観察視野全域で増加するため、全ての画素の輝度値が増加して画面全体が明るくなる。
【0066】
次に、画面中央部が暗く(例えば黒く潰れて)かつ画面周辺部が明るい(例えば白飛びした)画像を補正する場合を考える(図10(c)の例)。かかる場合、アクチュエータ136及び138は、画面中央部に対応するサンプリング期間st中m−1の次数の横振動モードで共振されて、結合パルス光の走査速度を低速化させる。画面周辺部に対応するサンプリング期間st中は、m+1の次数の横振動モードで共振されて、結合パルス光の走査速度を高速化させる。画面中央部の画素に対応する部位は、低速化された走査速度で通常時より長い時間照射される。画面周辺部の画素に対応する部位は、高速化された走査速度で通常時より短い時間照射される。そのため、画面中央部の輝度が増加すると共に画面周辺部の輝度が低減されて、画面全体の明るさが適正な明るさに近付く。
【0067】
このように、本実施形態の画素単位調光処理によれば、画面全体の明るさを一様に調節する通常調光処理と異なり、輝度値の調節が画素単位で行われる。そのため、観察視野の一部に発生する白飛びや黒潰れを良好に除去して全画素をダイナミックレンジに収めることができ、画像再現性が向上する。本実施形態のように光検出器の感度高くダイナミックレンジが狭い場合にも、全画素の輝度値がダイナミックレンジに容易に収まる。
【0068】
ところで、走査速度を画素単位で補正して全ての画素の輝度値を目標輝度値に収束させた場合は、撮影画像の濃淡が失われて平面的になり、観察対象を正常に再現した画像にはならない。そこで、照射時間、走査速度の各補正値(つまり、輝度値の補正量)に制限を設けて、輝度値調節後の画像に濃淡を積極的に残存させるようにしてもよい。例えば暗部の画素(例えば黒く潰れた画素や目標輝度値に対して著しく暗い画素等)は、ダイナミックレンジに収まるものの目標輝度値に対して依然として暗いままであるように補正量を制限する。明部の画素(例えば白飛びした画素や目標輝度値に対して著しく明るい画素等)も、ダイナミックレンジに収まるものの目標輝度値に対して依然として明るいままであるように補正量を制限する。
【0069】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば図9の画素単位調光処理を実行して、走査速度を補正し結合パルス光の照射時間を減少又は増加させても依然として白飛びや黒潰れが解消されないことがあり得る。かかる場合、これらの補正に併せて、更に、結合パルス光の強度を画素単位でコントロールする方法が考えられる。すなわち、システムコントローラ240は、白飛びや黒潰れが発生したダイナミックレンジ外の画素に対応するタイミングでは所定強度より低強度又は高強度の結合パルス光を照射させて、それ以外のタイミングでは所定強度の結合パルス光を照射させる。これにより、白飛びや黒潰れが発生していた画素をダイナミックレンジに収めることができ、画像再現性が向上する。
【符号の説明】
【0070】
1 医療用観察システム
100 走査型医療用プローブ
200 プロセッサ
240 システムコントローラ
254 DSP
254e ヒストグラム処理回路
254f 第一調光回路
254g 第二調光回路
300 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光を射出する光源と、
前記射出された光を対象物上で走査する走査手段と、
前記走査された光の反射光を受光して画像信号を検出する画像信号検出手段と、
前記画像信号の検出タイミングに基づいて、各該画像信号により表現される画像情報の画素配置を決定する画素配置決定手段と、
前記決定された画素配置に従って各前記画像情報を空間的に配列して画像を作成する画像作成手段と、
各前記画素に対応するタイミングで検出された画像信号の輝度値を検知する輝度値検知手段と、
前記検知された輝度値に基づいて各前記画素に対応する前記対象物上の部位への前記光の照射時間を決定する照射時間決定手段と、
前記決定された前記部位毎の照射時間に基づいて前記走査手段による前記光の走査速度を前記画素に対応する単位で制御する走査速度制御手段と、
を有することを特徴とする医療用観察システム。
【請求項2】
全ての前記画素に対応する前記照射時間及び前記走査時間に基づいて前記画像を作成するレートを設定する画像作成レート設定手段を更に有することを特徴とする、請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項3】
前記走査手段は、
前記光を前記対象物に向けて伝送する光ファイバと、
前記光ファイバの射出端が所定の軌跡を描くように該光ファイバを振動させる圧電アクチュエータと、
を有し、
前記走査速度制御手段は、前記部位毎の照射時間に基づいて、前記圧電アクチュエータの振動モードを前記画素に対応する単位で制御することを特徴とする、請求項1または請求項2の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項4】
前記輝度値検知手段により検知された輝度値と所定の参照値との差分値を計算する差分値計算手段を更に有し、
前記照射時間決定手段は、前記計算された差分値に基づいて前記照射時間を決定することを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項5】
前記参照値を設定する参照値設定手段を更に有することを特徴とする、請求項4に記載の医療用観察システム。
【請求項6】
前記輝度値検知手段により検知された輝度値が所定範囲外の値をとる画素に対応する部位に向けて前記光が射出されるタイミングで、該光の強度が規定強度より強く又は弱くなるように前記光源を駆動制御する光源制御手段を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の医療用観察システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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