医療用診療装置
【課題】診療台の可動部を安全に駆動することを可能にする技術を提供すること。
【解決手段】医療用診療装置100は、可動部を有する患者シート1と、患者シート1に支持された患者Pを撮影するカメラ8aと、カメラ8aによって撮影された患者Pの姿勢を検出する姿勢検出部921と、患者が異常姿勢であることを姿勢検出部921が検出した場合に、警告を表示するモニター6とを備えている。
【解決手段】医療用診療装置100は、可動部を有する患者シート1と、患者シート1に支持された患者Pを撮影するカメラ8aと、カメラ8aによって撮影された患者Pの姿勢を検出する姿勢検出部921と、患者が異常姿勢であることを姿勢検出部921が検出した場合に、警告を表示するモニター6とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、診療台を備えた医療用診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科などの医療分野では、患者を診療台上に支持して、術者が診察や治療が行われている。また、歯科などの医療分野で使用される診療台は、シートとして構成されており、診療中に患者の背中を支持する背凭れが後側に傾動することによって、患者を座位姿勢から仰向け姿勢にて支持することができる。このような診療台は、特許文献1において、チェアとして開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたチェアに着席した患者は、注意が必要な姿勢をとりうる。例えば、子供などは、診療台の外側に手足を放り出して寝たり、背凭れと座面の隙間に無理に手指を入れたりする。この状態で、チェアの可動部を駆動すると、手や足が挟まれたり、巻き込まれたりする虞があった。また、患者が高齢者である場合、チェアに正座で着席することがある。このような場合、そのまま足を後側に折ったまま仰向けになることで、足の指先が背凭れと座面の間に挟まってしまう虞があった。このように、本来意図されていない患者の姿勢での診療台の可動部を安全に駆動する技術が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、診療台の可動部を安全に駆動することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、可動部を有する診療台と、前記診療台に支持された患者を撮影するカメラと、前記カメラによって撮影された前記患者の姿勢を検出する姿勢検出部と、前記患者が異常姿勢であることを前記姿勢検出部が検出した場合に、警告を通知する通知部とを備える。
【0007】
また、第2の態様は、第1の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部により、前記患者の姿勢が異常であると検出された場合に、前記診療台の前記可動部の操作を不能にする駆動制御部、をさらに備える。
【0008】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部は、検出された患者の姿勢とあらかじめ規定された姿勢パターンと比較することによって、患者が異常姿勢であることを検出する。
【0009】
また、第4の態様は、第3の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部は、患者の手または足が検出できない場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する。
【0010】
また、第5の態様は、第3の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部は、前記可動部を駆動したときに注意すべき領域としてあらかじめ規定された注意領域に、患者の手または足が位置することを検出した場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する。
【0011】
また、第6の態様は、第1から第5までの態様のいずれか1態様に係る医療用診療装置において、前記可動部を駆動したときに、あらかじめ規定された検出対象領域における異物を検出する異物検出部、をさらに備え、前記通知部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に警告を通知する。
【0012】
また、第7の態様は、第1から第6までの態様のいずれか1態様に係る医療用診療装置において、前記通知部は、前記警告を示す画像を表示する表示装置を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1から第7までの態様に係る医療用診療装置によれば、患者が異常な姿勢で診療台に支持されていると検出された場合に、警告を通知することができる。したがって、操作者が診療台の可動部を操作するときに、患者の異常姿勢による手や足が挟まれたり、巻き込まれたりする虞を防止することができる。
【0014】
また、第2の医療用診療装置によれば、患者の異常姿勢が検出された場合に、可動部を操作できなくすることで、手や足が挟まれたり、巻き込まれたりする虞を防止することができる。
【0015】
また、第3の態様に係る医療用診療装置によれば、あらかじめ規定された姿勢パターンに基づいて、異常姿勢を検出することができる。したがって、あらかじめ種々の姿勢パターンを規定しておくことによって、異常姿勢を精度よく検出することが可能になる。
【0016】
また、第4の態様に係る医療用診療装置によれば、患者の手または足を検出するようにすることによって、手や足が診療台に形成された隙間などに巻き込まれる虞を抑制することができる。
【0017】
また、第5の態様に係る医療用診療装置によれば、患者の手または足が注意領域に位置する場合に警告が通知される。したがって、注意領域を、診療台の可動部を駆動したときに、患者の手または足が挟まったり、巻き込まれたりする虞を未然に防ぐことができる。
【0018】
また、第6の態様に係る医療用診療装置によれば、検出領域に異物があった場合に、警告を通知する。したがって、診療台の可動部の駆動時に、患者の所持品(携帯電話など)や備品などの異物が診療台に巻き込まれるなどして、診療台が故障することを防止することができる。
【0019】
また、第7の態様に係る医療用診療装置によれば、患者が異常姿勢であることを示す警告を操作者が視覚的に把握することができる。したがって、効果的に患者の手または足が挟まったり、巻き込まれたりする虞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る医療用診療装置の全体を示す外観図である。
【図2】医療用診療装置の構成を示すブロック図である。
【図3】診療状況に応じた患者シートを示す側面図である。
【図4】診療状況に応じた患者シートを示す側面図である。
【図5】図3に示した状態の患者シートに、患者が正常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図6】図3に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図7】図4に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図8】図3に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図9】図4に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図10】図3に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図11】図3に示した状態の患者シートに、患者が着席しているときの様子を示す上面図である。
【図12】診療時における医療用診療装置の一連の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
{1. 実施形態}
図1は、実施形態に係る医療用診療装置100の全体を示す外観図である。また、図2は、医療用診療装置100の構成を示すブロック図である。図1,2に示したように、医療用診療装置100は、術者および患者が使用する診療台10と、診療台10を構成する各要素の駆動制御を行う制御部9とを備えている。
【0023】
{診療台の構成}
診療台10は、患者シート1(シート)と、スピットン2と、トレーテーブル3と、診療器具4と、フートコントローラ5と、トレーテーブル3に搭載されたモニター6(表示装置)と、無影灯7(照明装置)と、撮影部8とを備えている。医療用診療装置100は、患者シート1に着席した患者に対して、歯科医師やその助手などの術者が、診療器具4を使用して歯科診療を行うのに適した構成を備えている。なお、以下の説明において、診療行為には、診察行為および治療行為の双方が含まれる。また、患者が患者シート1に着席しているとは、患者が患者シート1に支持されている状態をいう。したがって、患者が患者シート1に着席しているとは、患者が座位姿勢にて支持されている場合だけではなく、患者シート1の背凭れ1bが後ろに倒れて、患者が仰向け姿勢をとっているような場合も含まれる。
【0024】
患者シート1は、患者の頭部を支持するヘッドレスト1aと、主に患者の背中を支持する背凭れ1bと、患者の臀部を支持する座面シート1cと、患者の両足が載置される足置き台1dとで構成されている。ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dは、シート駆動部1Mによって駆動される可動部として構成されている。具体的にシート駆動部1Mは、ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dのそれぞれを、診療状況に合わせて最適な位置に変位させる。
【0025】
図3および図4は、診療状況に応じた患者シート1の側面図である。なお、図3は、患者が患者シート1に座る前(導入時)または退席するとき(退席時)の患者シート1を示す側面図である。図4は、歯科治療のために患者を仰向け姿勢にするとき(治療時)の患者シート1を示す側面図である。
【0026】
図3および図4に示したように、本実施形態では、患者シート1に取りけられた駆動機構(シート駆動部1M)によって、ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dをそれぞれ変位させることができる。図2に示したように、シート駆動部1Mは、駆動制御部94のシート駆動制御部941により制御される。患者シート1の各部を駆動するシート駆動部1Mの構成については、従来の公知技術やこれに類似する技術を利用することが可能である。このため、シート駆動部1Mの詳細な構造の説明は省略する。
【0027】
例えば、座面シート1cは、内蔵された昇降機構によって、高さ(H)を変更することが可能となっている。これにより、患者の臀部を支える座面シート1cの上面の高さ位置を所定の範囲内で変更することができる。座面シート1cを昇降させることで、患者シート1全体を上下に変位させることが可能となっている。
【0028】
また、患者シート1は、背凭れ1bを、座面シート1cとの接続部を支点として、鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、水平線HLに対する背凭れ1bの傾斜角度(J)が調整することが可能となっている。
【0029】
また、患者シート1は、足置き台1dを、座面シート1cとの接続部を支点として、鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、水平線HLに対する足置き台1dの傾斜角度(K)を調整することが可能となっている。
【0030】
また、患者シート1は、ヘッドレスト1aを、背凭れ1bとの接続部を支点として鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、背凭れ1bに対するヘッドレスト1aの傾斜角度(L)を調整することが可能となっている。
【0031】
図3に示したように、患者シート1に対して患者が着席したり離席したりさせる際には、シート駆動部1Mは、背凭れ1bを水平面に対して略垂直に立ち上げる。この患者導入時または退席時における患者シート1の各部は、患者の体格などに応じて駆動される。
【0032】
例えば、低身長または低体力の者(子供や老人など)が患者である場合、若者が患者である場合よりも、座面シート1cの高さ位置は低くなるように位置付けされる。このように、患者の導入時(または退席時)における座面シート1cの位置を患者毎に調整されることで、各患者が患者シート1に安全に着席することができる。
【0033】
また、図4に示したように、診療中においては、患者シート1のシート駆動部1Mは、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dを略水平に延びるように配置する。これにより、患者シート1上で患者を仰向け姿勢にて支持することができる。歯科治療時における患者頭部の最適位置は、術者の体格や好み、診療目的によって異なる場合がある。患者頭部の位置は、主に、ヘッドレスト1aの傾斜角度(L)を変更したり、座面シート1cの高さ(H)を変更したりすることで調整することができる。
【0034】
また、患者頭部の大きさや、患者が口を開けたときの口の大きさによっても、術者にとっての患者頭部の最適位置が異なる場合がある。このような点を考慮する場合には、術者と患者の組合せ毎に、治療時におけるヘッドレスト1aの傾斜角度(L)や座面シート1cの高さ(H)などが調整される。
【0035】
図1に戻って、スピットン2は、患者シート1の側部に備え付けられている。スピットン2は、排水口が形成されたスピットン鉢21、コップが載置されるコップ台22、コップに吸水するための給水栓23などを備えている。
【0036】
トレーテーブル3は、患者シート1から延びるアームに接続されており、患者シート1に対して手動または自動で回動移動できるように構成されている。トレーテーブル3は、ハンドピースである診療器具4を術者が取り上げることができるように保持する診療器具ホルダーを備えている。
【0037】
診療器具4は、例えばエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどの切削工具や、スケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジなどで構成される。なお、診療器具4は、これらに限定されるものではなく、口腔カメラや光重合照射器(いずれも図示せず)などであってもよい。また、診療器具4は、ミラーまたは注射器など、駆動部を持たない器具で構成されてもよい。
【0038】
フートコントローラ5は、診療を行う術者が、診療台10を構成する患者シート1、診療器具4などの可動部に対して、特定の動作を行わせるように操作するための操作部として構成されている。フートコントローラ5には、それぞれに特定の操作機能が割り当てられる、ペダル、スイッチなどの複数の操作入力部が設けられている。操作者(術者)は、この各操作入力部を操作することによって、それぞれに割り当てられている内容に応じて、可動部に特定の動作を行わせることができる。
【0039】
モニター6は、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイや、CRT(Cathode Ray Tube)モニターなどで構成される。モニター6は、後述する制御部9の認識部92からの信号に基づき、警告を表す警告画面を表示する。つまり、本実施形態では、モニター6が通知部として機能する。このように、警告の通知をモニター6を介して行うことにより、警告を医療用診療装置100の操作者(術者など)が視覚的に把握することができる。モニター6に表示される警告の内容については後述する。
【0040】
なお、通知部は、モニター6以外の装置で構成されていてもよい。例えば、点灯により警告を通知する表示灯や、音声により警告を通知するスピーカーなどで構成することも可能である。
【0041】
また、モニター6は、患者に関する各種カルテ情報や、X線写真など、診療において利用される各種情報を表示するように構成してもよい。モニター6にこれらの情報を表示させることによって、患者にも情報を容易に提示することができるため、円滑に診療を進めることができる。
【0042】
無影灯7は、患者シート1に着席している患者の口腔を照明する。特に診療時においては、無影灯7は、患者シート1に着席した患者の処置部位(ここでは口腔内の歯牙)に光を照射する。無影灯7は、関節アームに取り付けられている。術者は、関節アームを屈曲させることによって、無影灯7を上下または左右に移動させて適当な位置に配置させることができる。
【0043】
撮影部8は、上記無影灯7に取り付けられている。撮影部8は、無影灯7によって照明された患者の口腔部を撮影し、適当な画像処理を行って、モニター6などの表示装置に表示させる画像を取得する。このような口腔画像を、例えばモニター6に表示することで、診療時に術者がモニター6を見ながら患者に症状を説明することなどができる。また、診療中、術者が処置する様子を撮影してモニター6に表示されるようにしてもよい。また、撮影部8は、関節アームに取り付けられて無影灯7の近傍に配置されていてもよい。
【0044】
また撮影部8は、患者シート1の一部又は全部を撮影するカメラ8aを備えている。カメラ8aは、患者シート1に着席した患者を撮影する。本実施形態では、カメラ8aによって、患者の四肢(両手および両足)の位置を特定するため、患者の四肢を含むように撮影が行われる。カメラ8aにより取得される画像データは、画像処理部91に送信される。なお、撮影部8は、1台のカメラ8aのみで構成されている必要はなく、いくつかの領域を個別に撮影するように、複数台のカメラで構成されていてもよい。
【0045】
{制御部}
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えた一般的なコンピュータとして構成されている。制御部9は、診療台10を構成する各要素の動作を制御する機能を備えている。制御部9は、後述する患者の姿勢検出、異物検出を行ったり、診療台10の各駆動部を制御したりする。制御部9は、診療台10の外部に設けられていてもよいし、診療台10に内蔵されていてもよい。
【0046】
図2に示したように、制御部9は、画像処理部91、認識部92、駆動制御部94(シート駆動制御部941、診療器具駆動制御部94を含む。)として機能する。これらの機能は、制御部9が備えるCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。なお、これらの機能の一部または全部を、専用回路として構成することにより、ハードウェア的に実現されるようにしてもよい。
【0047】
制御部9は、ハードディスクなどの記録媒体を有する記憶部95に接続されている。なお、制御部9と記憶部95とは、LAN(Local Area Network)やイントラネット、インターネットなどの各種ネットワークを介して接続される。なお、記憶部95にサーバーとしての機能を持たせることにより、医療用診療装置100で使用される各種データを、記憶部95において集中的に管理することが可能となる。これにより、制御部9および制御部9以外の他の端末(図示省略)との間で、記憶部95が保持するデータを共有することが容易となる。したがって、データ取得やデータ保存の自由度を高めることができる。なお、記憶部95は、制御部9の内部に備え付けられていてもよい。
【0048】
画像処理部91は、撮影部8から送られてきた画像データに対して、コントラスト調整や特徴部の抽出など、認識部92による画像解析において必要な各種画像処理を行う。この画像処理によって取得された画像処理データは、認識部92に渡される。
【0049】
認識部92は、姿勢検出部921と異物検出部922とで構成されている。姿勢検出部921は、患者シート1に着席している患者の姿勢を解析して、患者が異常姿勢であるかどうかを検出する。なお、異常姿勢とは、患者シート1に着席した患者の正常な姿勢(正常姿勢)とは異なる姿勢をいう。ここで、正常姿勢は、安全に患者シート1の可動部を駆動することができるように設定される。また、異物検出部922は、あらかじめ規定された領域(検出対象領域)に、異物が存在するかどうかを検出する。まず、姿勢検出部921による姿勢検出について説明する。
【0050】
{姿勢検出}
姿勢検出部921は、カメラ8aによって取得された画像に基づいて、患者Pの四肢(両手および両足)の検出を行う。なお、姿勢検出部921は、四肢の先部分(手首から先の部分や足首から先の部分など)を検出したり、または、四肢の特徴部分(関節、先端部分、輪郭)を検出したりすることによって、患者が異常姿勢にあるかどうかを検出する。
【0051】
なお、四肢を検出する方法としては、画像処理部91によって取得された画像処理データの中において、皮膚色(例えば肌色)の部分を抽出する方法、形状に基づいて四肢を抽出する方法、または患者の標準的モデルを使って四肢の位置を推定する方法など、公知の技術を含む様々な技術を適用することができる。
【0052】
記憶部95に格納されている姿勢パターン951は、患者の正常姿勢を示すデータの集合となっている。本実施形態では、姿勢パターン951は、患者シート1に正常姿勢で着席したときの、患者の四肢(両手および両足)の位置に関するデータで構成されている。姿勢パターン951は、姿勢検出部921によって患者の異常姿勢が検出される際に参照される情報である。姿勢検出部921は、画像解析によって抽出された患者の四肢の位置と、姿勢パターン951に登録されている患者の四肢の位置とを比較することにより、患者シート1に着席している患者の姿勢が、異常姿勢であるかどうかを検出する。なお、姿勢パターン951は、制御部9に接続されているマウス、キーボードなどの各種入力デバイスからなる入力部61を介して、制御部9に入力される。入力部61を介して入力されたデータは、図示しない登録手段によって、姿勢パターン951として記憶部95に格納される。
【0053】
姿勢検出部921は、患者が異常姿勢であることを検出した場合、その検出結果を駆動制御部94(シート駆動制御部941)に渡す。駆動制御部94は、この検出結果に基づいて、シート駆動部1Mを制御することにより、操作部(フートコントローラ5やトレーテーブル3に設けられた操作スイッチなど)を介する患者シート1の可動部の駆動を一時的に停止させる。これにより、一時的に操作が行えなくなるため、患者の体が患者シート1の可動部に挟まれたり、巻き込まれたりする虞を抑制することができる。なお、姿勢検出部921によって、異常姿勢でないと判断された場合、このシート駆動制御部941による可動部の駆動制限は解除され、再び操作部を介して操作できる状態となる。また、異常姿勢であることが検出された場合、モニター6に異常姿勢であることを外部に通知するための画像がモニター6に表示される。
【0054】
ここで、姿勢検出部921による患者の異常姿勢を検出する方法について、図5〜図10を参照しつつより具体的に説明する。
【0055】
図5は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが正常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。患者Pが座位姿勢にて患者シート1に着席している場合、患者Pの両方の手PH,PHは、座面シート1cの両側に配置された肘掛け1e,1eに置かれていることが安全上望ましい。このような姿勢にあるときに、可動部の駆動を行わせることによって、安全に患者を支持することができる。つまり、患者シート1が導入時または退席時の状態にあるとき(すなわち、患者Pが座位姿勢にあるとき)は、両方の手PH,PHが左右の肘掛け1e,1eに置かれている状態が、正常姿勢とされる。したがって、座位姿勢にある場合、患者Pの手PHの位置が肘掛け1eにある状態が、正常姿勢の1つとして姿勢パターン951に登録される。
【0056】
なお、図5に示した患者シート1において、正常姿勢とされる患者Pの手PHの位置は、肘掛け1e上に限定されるものではない。例えば、患者Pの手PHが、患者Pの腰部、臀部の側方またはその上部にあるとき、または、腹部上側などにあるときも正常姿勢として姿勢パターン951に登録してもよい。
【0057】
図6は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図6に示した例では、図5の場合と同様に、患者Pが座位姿勢で患者シート1に着席している。しかしながら、患者Pの一方の手PH(左手首から先の部分)が臀部の下敷きになっている。特に図6に示した例では、手PHが背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11の近傍に置かれている。この状態で、可動部である背凭れ1bを後ろに傾動させた場合、患者Pの手PHが隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0058】
本実施形態では、姿勢検出部921が姿勢パターン951を参照して登録されている患者の正常姿勢と、図6に示したような患者姿勢とを比較する。図6に示した患者の姿勢は、姿勢検出部921により、姿勢パターン951に登録されているいずれの正常姿勢にも該当しないと判断される。つまり、姿勢検出部921は、患者Pが異常姿勢であることを検出する。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告が表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0059】
図7は、図4に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図7に示した例では、患者Pは仰向け姿勢で患者シート1に支持されている。また、一方の手PH(右手首から先の部分)は、座面シート1cに置かれているが、他方の手PH(左手首から先の部分)は、患者Pの腰部の下敷きになっている。特に図7に示した例では、手PHが背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11近傍に置かれている。この状態で患者シート1の可動部(特に背凭れ1b)を上側に傾動させた場合、患者Pの手PHが隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、患者シート1が図4、図7に示した状態にある場合(つまり、患者Pが仰向け姿勢で着席している場合)、患者の両方の手PHが、座面シート1c上に配置される状態が正常姿勢とされる。つまり、両方の手PHが座面シート1c上にある状態が、姿勢パターン951として登録される。これにより、図7に示した患者Pの姿勢は、姿勢検出部921によって異常姿勢と検出される。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告が表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0061】
図8は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図8に示した例では、患者Pは正座した着座姿勢で患者シート1に着席している。このため、患者Pの両方の足PF(特に足の甲及び指先)が、患者Pの臀部の下敷きとなっており、隙間11近傍に置かれている。この状態で患者シート1の可動部(特に背凭れ1b)を下側に傾動させた場合、患者Pの足先が隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、患者シート1が図3、図8に示した状態にある場合(つまり、患者Pが着座姿勢にある場合)、患者の両方の足PFが足置き台1d上に配置される状態が、正常姿勢とされる。つまり、両方の足PF,PFが足置き台1d上にある状態が、正常姿勢の1つとして姿勢パターン951にされる。これにより、図8に示した患者Pの姿勢は、姿勢検出部921によって異常姿勢と検出される。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告が表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0063】
図9は、図4に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図9に示した例では、患者Pは、仰向け姿勢で患者シート1に支持されている。そして、両方の足PFのうち、一方の足PF(右足)が足置き台1dの上部に置かれており、もう一方の足PF(左足)が足置き台1dの外側である周辺領域12にはみ出している。図9に示した状態で、患者シート1の可動部である足置き台1dを下側に傾動させた場合、足置き台1dの下側の空間1dS(図3および図4参照)に足PFが挟まれてしまう虞がある。また、座面シート1cを下降させた場合にも、空間1dSに足が挟まれてしまう虞がある。このため、このような姿勢は、異常姿勢として検出されることが望ましい。
【0064】
そこで、本実施形態では、患者シート1が図4、図9に示した状態にある場合(つまり、患者Pが仰向け姿勢で着席している場合)、患者の両方の足PFが、足置き台1dの上に配置される状態が正常姿勢とされる。つまり、両方の足PFが足置き台1d上にある状態が、正常姿勢の1つとして、姿勢パターン951に登録される。これにより、図9に示した患者Pの姿勢は、姿勢検出部921によって異常姿勢であると検出される。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告を表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0065】
以上が、姿勢検出部921により、患者の異常姿勢を検出する具体的な方法についての説明である。なお、患者の異常姿勢を検出する方法は、上述したものに限定されない。
【0066】
例えば、図6、図8に示したように、患者の手PHまたは足PFの一部または全部が、検出できない場合に、姿勢検出部921が患者の異常姿勢であると直ちに判断するようにしてもよい。これにより、手PHや足PFが患者シート1に形成された隙間11などに巻き込まれるといた虞を抑制することができる。
【0067】
また、患者シート1の可動部(ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1d)を駆動した場合に、注意すべき領域としてあらかじめ規定された注意領域に、患者の手PHまたは足PFが位置することを検出することによって、患者Pの姿勢を異常姿勢として検出するようにしてもよい。この態様について、図10を参照しつつ説明する。
【0068】
図10は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図10に示した例では、図5の場合と同様に、患者Pが座位姿勢で患者シート1に着席している。しかしながら、患者Pの一方の手PH(左手首から先の部分)が隙間11に置かれている。この状態で、可動部である背凭れ1bを後ろに傾動させた場合、患者Pの手PHが隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0069】
そこで、姿勢検出部921は、隙間11を含むようにして設定された注意領域R1に、患者Pの四肢(ここでは手PH、特に手首から先の部分)があることを検出した場合、患者Pが異常姿勢であると判断する。これにより、患者Pの手PHが注意領域R1に置かれていた場合、モニター6に異常姿勢である旨の警告が表示され、また、シート駆動部1Mによる患者シート1の可動部の駆動ができないように制御される。
【0070】
なお、図10に示したように、座面シート1cと足置き台1dの境界部分に相当する領域を注意領域R2として設定してもよい。姿勢検出部921によって、注意領域R2に、患者Pの手PH(特に手首から先の部分)や足PF(特に足首から先の部分)が置かれている場合に、患者が異常姿勢であると判断されるようにしてもよい。
【0071】
また、図9に示したように、足置き台1dの周辺領域12を注意領域R3に設定してもよい。姿勢検出部921によって、注意領域R3に患者Pの足PF(足首から先の部分)が置かれている場合に、患者が異常姿勢であると判断されるようにしてもよい。また、足が長い患者の場合、患者シート1の先端側から足先が出る場合があるため、注意領域R3を患者シート1の左右の領域に2分するように設定してもよい。
【0072】
以上のように、患者Pの手PHまたは足PFが注意領域R1〜R3に位置した場合、モニター6に警告が表示されるようにしてもよいし、シート駆動部1Mによる可動部の駆動ができなくなるようにしてもよい。注意領域R1〜R3を適切に設定することによって、患者シート1に形成された隙間などに患者の手または足が挟まったり、巻き込まれたりする虞を未然に防ぐことができる。
【0073】
{異物検出}
次に、異物検出部922による異物検出について詳細に説明する。上述したように、異物検出部922は、あらかじめ規定された検出対象領域において、異物の検出を行う。本実施形態では、異物とは、患者の所持品を含む物品であって、患者シート1に装着される装備品以外の物品をいう。異物検出部922によって異物が検出されると、その検出結果に基づいて、異物が検出されたことを示す内容の画像がモニター6に表示される。また検出結果は、シート駆動制御部941に渡される。シート駆動制御部941は、この検出結果に基づいて、シート駆動部1Mによる患者シート1の可動部の駆動が一時的に行われないように制御する。
【0074】
図11は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが着席しているときの様子を示す上面図である。背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11を含む領域が、検出対象領域R4として設定されている。また、座面シート1cと足置き台1dの間の隙間13を含む領域が検出対象領域R5に設定されている。また、図11に示した例では、隙間11に異物である携帯電話31が置かれている。
【0075】
隙間11や隙間13に異物が置かれていた場合、可動部である背凭れ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動すると、患者シート1に形成された隙間11,13に異物が挟まってしまうことにより、患者シート1の可動部が故障により駆動できなくなる虞がある。そこで、本実施形態では、異物検出部922によって検出対象領域R4,R5における異物検出を行うことによって、このような問題を回避する。
【0076】
なお、図11に示したように検出対象領域R4には、携帯電話31以外に、患者Pの体(両腕および胴体)が含まれている。したがって、図11に示したような画像が取得された場合には、異物検出を行うために、該画像の検出対象領域R4から患者Pの体に相当する部分を除いて(マスクして)携帯電話31のみを検出する必要がある。
【0077】
ここで、例えば患者の標準モデルを使うことによって、患者Pの体に相当する部分を除去することが可能である。具体的には、画像中の患者Pの特徴部分(頭部、手足の先端、関節、輪郭など)を検出し、これらの位置に合わせて、標準モデルを変形させる。これにより、図11に示した画像から、患者Pに相当する領域を抽出することができる。この抽出した領域をマスクすることによって、画像中から携帯電話31を高精度に検出することができる。
【0078】
{可動部駆動中における、患者の姿勢検出および異物検出}
姿勢検出部921または異物検出部922による患者の姿勢検出または異物検出は、患者シート1の可動部が停止している状態においてのみ行われるようにしてもよい。しかしながら、患者シート1の可動部が駆動している最中に行うようにすることも可能である。具体的には、患者シート1の可動部を、図3に示す位置と図4に示す位置との間で移動させている最中に、姿勢検出部921によって、患者の異常姿勢が検出されるようにしてもよい。また、異物検出部922によって、異物検出が行われるようにしてもよい。
【0079】
また、可動部駆動中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合、シート駆動制御部941によって、シート駆動部1Mを逆駆動するように制御することが可能である。例えば、可動部である背凭れ1bを傾動移動している最中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合、シート駆動部1Mを逆駆動することで、背凭れ1bを逆方向に傾動移動させることができる。また、座面シート1cを昇降させている最中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合に、シート駆動部1Mを逆駆動することで、座面シート1cを逆方向に昇降させることができる。なお、逆駆動は、各可動部の可動範囲の限界まで行われるようにしてもよいし、駆動される前の位置まで戻すようにしてもよい。また、逆駆動は、所定の時間(1〜2秒間)の間だけ行われるようにしてもよいし、所定の距離(または角度)分だけ行われるようにしてもよい。
【0080】
以上のように、可動部駆動中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合に、可動部の逆駆動が行われることによって、患者シート1に形成される隙間に患者の体または異物が巻き込まれたり、挟まれたりしても、それらを容易に取り出すことができる。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、可動部を逆駆動するようにしているが、患者の体が患者シート1の可動部に挟まれるような虞を防止するためには、可動部を安全な方向に駆動することが望ましい。例えば、背凭れ1bを倒すほど、背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11の間隔が大きくなるような場合、背凭れ1bを倒す方向に駆動する方が患者にとって安全である。また、座面シート1cは、上昇させることにより、足置き台1dの下側の空間1dSは大きくなる。(図3および図4参照)。このため、座面シート1cを下降させるよりも上昇させる方が、患者にとっては安全である。同様に、足置き台1dについても、上昇させる方が患者にとって安全である。
【0082】
可動部駆動中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合に、この安全な駆動方向を考慮して各可動部を駆動させることで、挟まれたり巻き込まれたりする虞を、より一層抑制することができる。
【0083】
{動作説明}
次に、診療時における医療用診療装置100の動作について説明する。
【0084】
図12は、診療時における医療用診療装置100の一連の動作を示す流れ図である。なお、以下の説明において、特に断らない限り、医療用診療装置100の動作は、制御部9によって制御されるものとする。また、以下に説明する医療用診療装置100の動作の各工程の流れは、一例にすぎない。したがって、各工程の内容によっては、複数の工程が並列に実行されたり、または、複数の工程について実行する順序が変更されたりしてもよい。
【0085】
まず、医療用診療装置100は、撮影部8のカメラ8aによって、患者シート1上の領域について、撮影を開始する(ステップS1)。そして、患者が着席していないときの画像と、撮影画像とが比較されることによって、患者が撮影されているかどうかが判定される(ステップS2)。ステップS2において、患者が撮影されていない場合は、引き続き撮影が行われる。
【0086】
ステップS2において、患者が撮影されている場合、医療用診療装置100は、静止画の取得を行う(ステップS3)。撮影された画像データは、画像処理部91によって画像処理が行われ、認識部92に渡される。
【0087】
次に、医療用診療装置100は、ステップS3において取得された静止画に基づいて、患者が異常姿勢であるかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、姿勢検出部921が、姿勢パターン951を参照することによって、患者の姿勢が異常姿勢にあるかどうかを検出する。
【0088】
ステップS4において、患者が異常姿勢ではないと判定された場合(ステップS4においてNO)、医療用診療装置100は、異物が検出されたかどうかを判定する(ステップS5)。具体的には、異物検出部922によって、あらかじめ設定された検出対象領域に異物が存在するかどうかが判定される。
【0089】
ステップS5において、異物が検出されなかった場合、医療用診療装置100は、操作部(フートコントローラ5など)を介した操作入力を受け付ける(ステップS6)。これにより、操作者は、フートコントローラ5などを操作することによって、患者シート1の可動部を駆動することができるようになる。
【0090】
次に医療用診療装置100は、動作を継続するかどうか判定する(ステップS7)。具体的には、所定の終了操作が、制御部9に対して入力されたかどうかで判断される。
【0091】
ステップS5またはステップS6において、患者の異常姿勢が検出されたり、または、異物が検出されたりした場合、医療用診療装置100は、患者シート1の可動部が駆動中であるかどうかを判定する(ステップS8)。
【0092】
可動部が停止している場合(ステップS8においてNO)、医療用診療装置100は、シート駆動制御部941により、操作を受け付けないようにすることで、患者シート1の可動部を操作不能にする(ステップS9)。また、医療用診療装置100は、モニター6に警告を表示する(ステップS10)。ステップS10においては、医療用診療装置100は、単に、可動部が駆動できない旨をモニター6に表示するようにしてもよいし、より具体的に、患者の異常姿勢を検出した旨、または、異物を検出した旨をモニター6に表示するようにしてもよい。
【0093】
また、可動部が駆動中である場合(ステップS8においてYES)、医療用診療装置100は、患者シート1の可動部の逆駆動を行う(ステップS11)。また、医療用診療装置100は、モニター6に警告を表示する(ステップS12)。ステップS12においては、医療用診療装置100は、単に、逆駆動をする旨をモニター6に表示するようにしてもよいし、より具体的に、患者の異常姿勢を検出した旨、または、異物を検出した旨をモニター6に表示するようにしてもよい。
【0094】
ステップS10またはステップS12の警告表示を行うと、医療用診療装置100は、ステップS3に戻って、以降の動作を実行する。以上が診療中における医療用診療装置100の一連の動作についての説明である。
【0095】
本実施形態に係る医療用診療装置100によると、患者の異常姿勢を検出したり、モニター6を介して操作者に警告を通知することができる。操作者は、この警告により、患者が注意な姿勢にあることを認識できるため、患者シート1の可動部を安全に操作することができる。また、異常姿勢が検出された場合に、可動部の駆動が制限することによって、操作者が患者シート1の可動部をより一層安全に操作することができる。
【0096】
また、医療用診療装置100においては、異物検出を行うことができるため、患者シート1に形成された隙間(隙間11など)に異物が巻き込まれることを防止することができる。したがって、可動部が故障することを抑制することができる。
【0097】
{2. 変形例}
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0098】
例えば、患者の年代(例えば子供、成人、老人)、性別、または体格によって、正常姿勢とされる四肢の位置が大きく異なる場合がある。そこで、姿勢パターン951において、正常姿勢が患者の年代や性別または体格毎のグループに分けられて登録されてもよい。このとき、姿勢検出部921が、患者の年代、性別または体格に応じて、参照する正常姿勢のグループが異なるようにする。これにより、患者の異常姿勢を精度よく検出したり、効率的に検出したりすることが可能になる。
【0099】
また、患者の姿勢の検出方法は、上記実施形態で説明したものに限定されるものではない。また、注意領域や異物領域の検出対象範囲は、上記実施形態で説明したものに限定されるものではなく、自由に設定することが可能である。
【0100】
また、上記実施形態では、医療用診療装置100は、歯科治療に適合するように構成されている。しかしながら、本発明は、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科、整形外科、形成外科、神経科、小児科、内科、皮膚科、放射線科、泌尿器科などのあらゆる医科分野や、口腔外科、矯正外科などを含む一般歯科、または、獣医科分野の各種分野の医療用診療装置について適用することが可能である。
【0101】
また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0102】
1 患者シート
10 診療台
100 医療用診療装置
11,13 隙間
12 周辺領域
1M シート駆動部
1a ヘッドレスト
1b 背凭れ
1c 座面シート
1d 足置き台
1dS 空間
1e 肘置き
31 携帯電話(異物)
5 フートコントローラ
6 モニター
61 入力部
8 撮影部
8a カメラ
9 制御部
91 画像処理部
92 認識部
921 姿勢検出部
922 異物検出部
94 駆動制御部
941 シート駆動制御部
95 記憶部
951 姿勢パターン
P 患者
PF 足
PH 手
R1〜R3 注意領域
R4,R5 検出対象領域
【技術分野】
【0001】
この発明は、診療台を備えた医療用診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科などの医療分野では、患者を診療台上に支持して、術者が診察や治療が行われている。また、歯科などの医療分野で使用される診療台は、シートとして構成されており、診療中に患者の背中を支持する背凭れが後側に傾動することによって、患者を座位姿勢から仰向け姿勢にて支持することができる。このような診療台は、特許文献1において、チェアとして開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたチェアに着席した患者は、注意が必要な姿勢をとりうる。例えば、子供などは、診療台の外側に手足を放り出して寝たり、背凭れと座面の隙間に無理に手指を入れたりする。この状態で、チェアの可動部を駆動すると、手や足が挟まれたり、巻き込まれたりする虞があった。また、患者が高齢者である場合、チェアに正座で着席することがある。このような場合、そのまま足を後側に折ったまま仰向けになることで、足の指先が背凭れと座面の間に挟まってしまう虞があった。このように、本来意図されていない患者の姿勢での診療台の可動部を安全に駆動する技術が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、診療台の可動部を安全に駆動することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、可動部を有する診療台と、前記診療台に支持された患者を撮影するカメラと、前記カメラによって撮影された前記患者の姿勢を検出する姿勢検出部と、前記患者が異常姿勢であることを前記姿勢検出部が検出した場合に、警告を通知する通知部とを備える。
【0007】
また、第2の態様は、第1の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部により、前記患者の姿勢が異常であると検出された場合に、前記診療台の前記可動部の操作を不能にする駆動制御部、をさらに備える。
【0008】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部は、検出された患者の姿勢とあらかじめ規定された姿勢パターンと比較することによって、患者が異常姿勢であることを検出する。
【0009】
また、第4の態様は、第3の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部は、患者の手または足が検出できない場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する。
【0010】
また、第5の態様は、第3の態様に係る医療用診療装置において、前記姿勢検出部は、前記可動部を駆動したときに注意すべき領域としてあらかじめ規定された注意領域に、患者の手または足が位置することを検出した場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する。
【0011】
また、第6の態様は、第1から第5までの態様のいずれか1態様に係る医療用診療装置において、前記可動部を駆動したときに、あらかじめ規定された検出対象領域における異物を検出する異物検出部、をさらに備え、前記通知部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に警告を通知する。
【0012】
また、第7の態様は、第1から第6までの態様のいずれか1態様に係る医療用診療装置において、前記通知部は、前記警告を示す画像を表示する表示装置を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1から第7までの態様に係る医療用診療装置によれば、患者が異常な姿勢で診療台に支持されていると検出された場合に、警告を通知することができる。したがって、操作者が診療台の可動部を操作するときに、患者の異常姿勢による手や足が挟まれたり、巻き込まれたりする虞を防止することができる。
【0014】
また、第2の医療用診療装置によれば、患者の異常姿勢が検出された場合に、可動部を操作できなくすることで、手や足が挟まれたり、巻き込まれたりする虞を防止することができる。
【0015】
また、第3の態様に係る医療用診療装置によれば、あらかじめ規定された姿勢パターンに基づいて、異常姿勢を検出することができる。したがって、あらかじめ種々の姿勢パターンを規定しておくことによって、異常姿勢を精度よく検出することが可能になる。
【0016】
また、第4の態様に係る医療用診療装置によれば、患者の手または足を検出するようにすることによって、手や足が診療台に形成された隙間などに巻き込まれる虞を抑制することができる。
【0017】
また、第5の態様に係る医療用診療装置によれば、患者の手または足が注意領域に位置する場合に警告が通知される。したがって、注意領域を、診療台の可動部を駆動したときに、患者の手または足が挟まったり、巻き込まれたりする虞を未然に防ぐことができる。
【0018】
また、第6の態様に係る医療用診療装置によれば、検出領域に異物があった場合に、警告を通知する。したがって、診療台の可動部の駆動時に、患者の所持品(携帯電話など)や備品などの異物が診療台に巻き込まれるなどして、診療台が故障することを防止することができる。
【0019】
また、第7の態様に係る医療用診療装置によれば、患者が異常姿勢であることを示す警告を操作者が視覚的に把握することができる。したがって、効果的に患者の手または足が挟まったり、巻き込まれたりする虞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る医療用診療装置の全体を示す外観図である。
【図2】医療用診療装置の構成を示すブロック図である。
【図3】診療状況に応じた患者シートを示す側面図である。
【図4】診療状況に応じた患者シートを示す側面図である。
【図5】図3に示した状態の患者シートに、患者が正常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図6】図3に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図7】図4に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図8】図3に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図9】図4に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図10】図3に示した状態の患者シートに、患者が異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。
【図11】図3に示した状態の患者シートに、患者が着席しているときの様子を示す上面図である。
【図12】診療時における医療用診療装置の一連の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
{1. 実施形態}
図1は、実施形態に係る医療用診療装置100の全体を示す外観図である。また、図2は、医療用診療装置100の構成を示すブロック図である。図1,2に示したように、医療用診療装置100は、術者および患者が使用する診療台10と、診療台10を構成する各要素の駆動制御を行う制御部9とを備えている。
【0023】
{診療台の構成}
診療台10は、患者シート1(シート)と、スピットン2と、トレーテーブル3と、診療器具4と、フートコントローラ5と、トレーテーブル3に搭載されたモニター6(表示装置)と、無影灯7(照明装置)と、撮影部8とを備えている。医療用診療装置100は、患者シート1に着席した患者に対して、歯科医師やその助手などの術者が、診療器具4を使用して歯科診療を行うのに適した構成を備えている。なお、以下の説明において、診療行為には、診察行為および治療行為の双方が含まれる。また、患者が患者シート1に着席しているとは、患者が患者シート1に支持されている状態をいう。したがって、患者が患者シート1に着席しているとは、患者が座位姿勢にて支持されている場合だけではなく、患者シート1の背凭れ1bが後ろに倒れて、患者が仰向け姿勢をとっているような場合も含まれる。
【0024】
患者シート1は、患者の頭部を支持するヘッドレスト1aと、主に患者の背中を支持する背凭れ1bと、患者の臀部を支持する座面シート1cと、患者の両足が載置される足置き台1dとで構成されている。ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dは、シート駆動部1Mによって駆動される可動部として構成されている。具体的にシート駆動部1Mは、ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dのそれぞれを、診療状況に合わせて最適な位置に変位させる。
【0025】
図3および図4は、診療状況に応じた患者シート1の側面図である。なお、図3は、患者が患者シート1に座る前(導入時)または退席するとき(退席時)の患者シート1を示す側面図である。図4は、歯科治療のために患者を仰向け姿勢にするとき(治療時)の患者シート1を示す側面図である。
【0026】
図3および図4に示したように、本実施形態では、患者シート1に取りけられた駆動機構(シート駆動部1M)によって、ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dをそれぞれ変位させることができる。図2に示したように、シート駆動部1Mは、駆動制御部94のシート駆動制御部941により制御される。患者シート1の各部を駆動するシート駆動部1Mの構成については、従来の公知技術やこれに類似する技術を利用することが可能である。このため、シート駆動部1Mの詳細な構造の説明は省略する。
【0027】
例えば、座面シート1cは、内蔵された昇降機構によって、高さ(H)を変更することが可能となっている。これにより、患者の臀部を支える座面シート1cの上面の高さ位置を所定の範囲内で変更することができる。座面シート1cを昇降させることで、患者シート1全体を上下に変位させることが可能となっている。
【0028】
また、患者シート1は、背凭れ1bを、座面シート1cとの接続部を支点として、鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、水平線HLに対する背凭れ1bの傾斜角度(J)が調整することが可能となっている。
【0029】
また、患者シート1は、足置き台1dを、座面シート1cとの接続部を支点として、鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、水平線HLに対する足置き台1dの傾斜角度(K)を調整することが可能となっている。
【0030】
また、患者シート1は、ヘッドレスト1aを、背凭れ1bとの接続部を支点として鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、背凭れ1bに対するヘッドレスト1aの傾斜角度(L)を調整することが可能となっている。
【0031】
図3に示したように、患者シート1に対して患者が着席したり離席したりさせる際には、シート駆動部1Mは、背凭れ1bを水平面に対して略垂直に立ち上げる。この患者導入時または退席時における患者シート1の各部は、患者の体格などに応じて駆動される。
【0032】
例えば、低身長または低体力の者(子供や老人など)が患者である場合、若者が患者である場合よりも、座面シート1cの高さ位置は低くなるように位置付けされる。このように、患者の導入時(または退席時)における座面シート1cの位置を患者毎に調整されることで、各患者が患者シート1に安全に着席することができる。
【0033】
また、図4に示したように、診療中においては、患者シート1のシート駆動部1Mは、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dを略水平に延びるように配置する。これにより、患者シート1上で患者を仰向け姿勢にて支持することができる。歯科治療時における患者頭部の最適位置は、術者の体格や好み、診療目的によって異なる場合がある。患者頭部の位置は、主に、ヘッドレスト1aの傾斜角度(L)を変更したり、座面シート1cの高さ(H)を変更したりすることで調整することができる。
【0034】
また、患者頭部の大きさや、患者が口を開けたときの口の大きさによっても、術者にとっての患者頭部の最適位置が異なる場合がある。このような点を考慮する場合には、術者と患者の組合せ毎に、治療時におけるヘッドレスト1aの傾斜角度(L)や座面シート1cの高さ(H)などが調整される。
【0035】
図1に戻って、スピットン2は、患者シート1の側部に備え付けられている。スピットン2は、排水口が形成されたスピットン鉢21、コップが載置されるコップ台22、コップに吸水するための給水栓23などを備えている。
【0036】
トレーテーブル3は、患者シート1から延びるアームに接続されており、患者シート1に対して手動または自動で回動移動できるように構成されている。トレーテーブル3は、ハンドピースである診療器具4を術者が取り上げることができるように保持する診療器具ホルダーを備えている。
【0037】
診療器具4は、例えばエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどの切削工具や、スケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジなどで構成される。なお、診療器具4は、これらに限定されるものではなく、口腔カメラや光重合照射器(いずれも図示せず)などであってもよい。また、診療器具4は、ミラーまたは注射器など、駆動部を持たない器具で構成されてもよい。
【0038】
フートコントローラ5は、診療を行う術者が、診療台10を構成する患者シート1、診療器具4などの可動部に対して、特定の動作を行わせるように操作するための操作部として構成されている。フートコントローラ5には、それぞれに特定の操作機能が割り当てられる、ペダル、スイッチなどの複数の操作入力部が設けられている。操作者(術者)は、この各操作入力部を操作することによって、それぞれに割り当てられている内容に応じて、可動部に特定の動作を行わせることができる。
【0039】
モニター6は、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイや、CRT(Cathode Ray Tube)モニターなどで構成される。モニター6は、後述する制御部9の認識部92からの信号に基づき、警告を表す警告画面を表示する。つまり、本実施形態では、モニター6が通知部として機能する。このように、警告の通知をモニター6を介して行うことにより、警告を医療用診療装置100の操作者(術者など)が視覚的に把握することができる。モニター6に表示される警告の内容については後述する。
【0040】
なお、通知部は、モニター6以外の装置で構成されていてもよい。例えば、点灯により警告を通知する表示灯や、音声により警告を通知するスピーカーなどで構成することも可能である。
【0041】
また、モニター6は、患者に関する各種カルテ情報や、X線写真など、診療において利用される各種情報を表示するように構成してもよい。モニター6にこれらの情報を表示させることによって、患者にも情報を容易に提示することができるため、円滑に診療を進めることができる。
【0042】
無影灯7は、患者シート1に着席している患者の口腔を照明する。特に診療時においては、無影灯7は、患者シート1に着席した患者の処置部位(ここでは口腔内の歯牙)に光を照射する。無影灯7は、関節アームに取り付けられている。術者は、関節アームを屈曲させることによって、無影灯7を上下または左右に移動させて適当な位置に配置させることができる。
【0043】
撮影部8は、上記無影灯7に取り付けられている。撮影部8は、無影灯7によって照明された患者の口腔部を撮影し、適当な画像処理を行って、モニター6などの表示装置に表示させる画像を取得する。このような口腔画像を、例えばモニター6に表示することで、診療時に術者がモニター6を見ながら患者に症状を説明することなどができる。また、診療中、術者が処置する様子を撮影してモニター6に表示されるようにしてもよい。また、撮影部8は、関節アームに取り付けられて無影灯7の近傍に配置されていてもよい。
【0044】
また撮影部8は、患者シート1の一部又は全部を撮影するカメラ8aを備えている。カメラ8aは、患者シート1に着席した患者を撮影する。本実施形態では、カメラ8aによって、患者の四肢(両手および両足)の位置を特定するため、患者の四肢を含むように撮影が行われる。カメラ8aにより取得される画像データは、画像処理部91に送信される。なお、撮影部8は、1台のカメラ8aのみで構成されている必要はなく、いくつかの領域を個別に撮影するように、複数台のカメラで構成されていてもよい。
【0045】
{制御部}
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えた一般的なコンピュータとして構成されている。制御部9は、診療台10を構成する各要素の動作を制御する機能を備えている。制御部9は、後述する患者の姿勢検出、異物検出を行ったり、診療台10の各駆動部を制御したりする。制御部9は、診療台10の外部に設けられていてもよいし、診療台10に内蔵されていてもよい。
【0046】
図2に示したように、制御部9は、画像処理部91、認識部92、駆動制御部94(シート駆動制御部941、診療器具駆動制御部94を含む。)として機能する。これらの機能は、制御部9が備えるCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。なお、これらの機能の一部または全部を、専用回路として構成することにより、ハードウェア的に実現されるようにしてもよい。
【0047】
制御部9は、ハードディスクなどの記録媒体を有する記憶部95に接続されている。なお、制御部9と記憶部95とは、LAN(Local Area Network)やイントラネット、インターネットなどの各種ネットワークを介して接続される。なお、記憶部95にサーバーとしての機能を持たせることにより、医療用診療装置100で使用される各種データを、記憶部95において集中的に管理することが可能となる。これにより、制御部9および制御部9以外の他の端末(図示省略)との間で、記憶部95が保持するデータを共有することが容易となる。したがって、データ取得やデータ保存の自由度を高めることができる。なお、記憶部95は、制御部9の内部に備え付けられていてもよい。
【0048】
画像処理部91は、撮影部8から送られてきた画像データに対して、コントラスト調整や特徴部の抽出など、認識部92による画像解析において必要な各種画像処理を行う。この画像処理によって取得された画像処理データは、認識部92に渡される。
【0049】
認識部92は、姿勢検出部921と異物検出部922とで構成されている。姿勢検出部921は、患者シート1に着席している患者の姿勢を解析して、患者が異常姿勢であるかどうかを検出する。なお、異常姿勢とは、患者シート1に着席した患者の正常な姿勢(正常姿勢)とは異なる姿勢をいう。ここで、正常姿勢は、安全に患者シート1の可動部を駆動することができるように設定される。また、異物検出部922は、あらかじめ規定された領域(検出対象領域)に、異物が存在するかどうかを検出する。まず、姿勢検出部921による姿勢検出について説明する。
【0050】
{姿勢検出}
姿勢検出部921は、カメラ8aによって取得された画像に基づいて、患者Pの四肢(両手および両足)の検出を行う。なお、姿勢検出部921は、四肢の先部分(手首から先の部分や足首から先の部分など)を検出したり、または、四肢の特徴部分(関節、先端部分、輪郭)を検出したりすることによって、患者が異常姿勢にあるかどうかを検出する。
【0051】
なお、四肢を検出する方法としては、画像処理部91によって取得された画像処理データの中において、皮膚色(例えば肌色)の部分を抽出する方法、形状に基づいて四肢を抽出する方法、または患者の標準的モデルを使って四肢の位置を推定する方法など、公知の技術を含む様々な技術を適用することができる。
【0052】
記憶部95に格納されている姿勢パターン951は、患者の正常姿勢を示すデータの集合となっている。本実施形態では、姿勢パターン951は、患者シート1に正常姿勢で着席したときの、患者の四肢(両手および両足)の位置に関するデータで構成されている。姿勢パターン951は、姿勢検出部921によって患者の異常姿勢が検出される際に参照される情報である。姿勢検出部921は、画像解析によって抽出された患者の四肢の位置と、姿勢パターン951に登録されている患者の四肢の位置とを比較することにより、患者シート1に着席している患者の姿勢が、異常姿勢であるかどうかを検出する。なお、姿勢パターン951は、制御部9に接続されているマウス、キーボードなどの各種入力デバイスからなる入力部61を介して、制御部9に入力される。入力部61を介して入力されたデータは、図示しない登録手段によって、姿勢パターン951として記憶部95に格納される。
【0053】
姿勢検出部921は、患者が異常姿勢であることを検出した場合、その検出結果を駆動制御部94(シート駆動制御部941)に渡す。駆動制御部94は、この検出結果に基づいて、シート駆動部1Mを制御することにより、操作部(フートコントローラ5やトレーテーブル3に設けられた操作スイッチなど)を介する患者シート1の可動部の駆動を一時的に停止させる。これにより、一時的に操作が行えなくなるため、患者の体が患者シート1の可動部に挟まれたり、巻き込まれたりする虞を抑制することができる。なお、姿勢検出部921によって、異常姿勢でないと判断された場合、このシート駆動制御部941による可動部の駆動制限は解除され、再び操作部を介して操作できる状態となる。また、異常姿勢であることが検出された場合、モニター6に異常姿勢であることを外部に通知するための画像がモニター6に表示される。
【0054】
ここで、姿勢検出部921による患者の異常姿勢を検出する方法について、図5〜図10を参照しつつより具体的に説明する。
【0055】
図5は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが正常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。患者Pが座位姿勢にて患者シート1に着席している場合、患者Pの両方の手PH,PHは、座面シート1cの両側に配置された肘掛け1e,1eに置かれていることが安全上望ましい。このような姿勢にあるときに、可動部の駆動を行わせることによって、安全に患者を支持することができる。つまり、患者シート1が導入時または退席時の状態にあるとき(すなわち、患者Pが座位姿勢にあるとき)は、両方の手PH,PHが左右の肘掛け1e,1eに置かれている状態が、正常姿勢とされる。したがって、座位姿勢にある場合、患者Pの手PHの位置が肘掛け1eにある状態が、正常姿勢の1つとして姿勢パターン951に登録される。
【0056】
なお、図5に示した患者シート1において、正常姿勢とされる患者Pの手PHの位置は、肘掛け1e上に限定されるものではない。例えば、患者Pの手PHが、患者Pの腰部、臀部の側方またはその上部にあるとき、または、腹部上側などにあるときも正常姿勢として姿勢パターン951に登録してもよい。
【0057】
図6は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図6に示した例では、図5の場合と同様に、患者Pが座位姿勢で患者シート1に着席している。しかしながら、患者Pの一方の手PH(左手首から先の部分)が臀部の下敷きになっている。特に図6に示した例では、手PHが背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11の近傍に置かれている。この状態で、可動部である背凭れ1bを後ろに傾動させた場合、患者Pの手PHが隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0058】
本実施形態では、姿勢検出部921が姿勢パターン951を参照して登録されている患者の正常姿勢と、図6に示したような患者姿勢とを比較する。図6に示した患者の姿勢は、姿勢検出部921により、姿勢パターン951に登録されているいずれの正常姿勢にも該当しないと判断される。つまり、姿勢検出部921は、患者Pが異常姿勢であることを検出する。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告が表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0059】
図7は、図4に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図7に示した例では、患者Pは仰向け姿勢で患者シート1に支持されている。また、一方の手PH(右手首から先の部分)は、座面シート1cに置かれているが、他方の手PH(左手首から先の部分)は、患者Pの腰部の下敷きになっている。特に図7に示した例では、手PHが背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11近傍に置かれている。この状態で患者シート1の可動部(特に背凭れ1b)を上側に傾動させた場合、患者Pの手PHが隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、患者シート1が図4、図7に示した状態にある場合(つまり、患者Pが仰向け姿勢で着席している場合)、患者の両方の手PHが、座面シート1c上に配置される状態が正常姿勢とされる。つまり、両方の手PHが座面シート1c上にある状態が、姿勢パターン951として登録される。これにより、図7に示した患者Pの姿勢は、姿勢検出部921によって異常姿勢と検出される。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告が表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0061】
図8は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図8に示した例では、患者Pは正座した着座姿勢で患者シート1に着席している。このため、患者Pの両方の足PF(特に足の甲及び指先)が、患者Pの臀部の下敷きとなっており、隙間11近傍に置かれている。この状態で患者シート1の可動部(特に背凭れ1b)を下側に傾動させた場合、患者Pの足先が隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、患者シート1が図3、図8に示した状態にある場合(つまり、患者Pが着座姿勢にある場合)、患者の両方の足PFが足置き台1d上に配置される状態が、正常姿勢とされる。つまり、両方の足PF,PFが足置き台1d上にある状態が、正常姿勢の1つとして姿勢パターン951にされる。これにより、図8に示した患者Pの姿勢は、姿勢検出部921によって異常姿勢と検出される。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告が表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0063】
図9は、図4に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図9に示した例では、患者Pは、仰向け姿勢で患者シート1に支持されている。そして、両方の足PFのうち、一方の足PF(右足)が足置き台1dの上部に置かれており、もう一方の足PF(左足)が足置き台1dの外側である周辺領域12にはみ出している。図9に示した状態で、患者シート1の可動部である足置き台1dを下側に傾動させた場合、足置き台1dの下側の空間1dS(図3および図4参照)に足PFが挟まれてしまう虞がある。また、座面シート1cを下降させた場合にも、空間1dSに足が挟まれてしまう虞がある。このため、このような姿勢は、異常姿勢として検出されることが望ましい。
【0064】
そこで、本実施形態では、患者シート1が図4、図9に示した状態にある場合(つまり、患者Pが仰向け姿勢で着席している場合)、患者の両方の足PFが、足置き台1dの上に配置される状態が正常姿勢とされる。つまり、両方の足PFが足置き台1d上にある状態が、正常姿勢の1つとして、姿勢パターン951に登録される。これにより、図9に示した患者Pの姿勢は、姿勢検出部921によって異常姿勢であると検出される。これにより、シート駆動部1Mによる駆動制御が制限されたり、または、モニター6に警告を表示されたりする。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0065】
以上が、姿勢検出部921により、患者の異常姿勢を検出する具体的な方法についての説明である。なお、患者の異常姿勢を検出する方法は、上述したものに限定されない。
【0066】
例えば、図6、図8に示したように、患者の手PHまたは足PFの一部または全部が、検出できない場合に、姿勢検出部921が患者の異常姿勢であると直ちに判断するようにしてもよい。これにより、手PHや足PFが患者シート1に形成された隙間11などに巻き込まれるといた虞を抑制することができる。
【0067】
また、患者シート1の可動部(ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1d)を駆動した場合に、注意すべき領域としてあらかじめ規定された注意領域に、患者の手PHまたは足PFが位置することを検出することによって、患者Pの姿勢を異常姿勢として検出するようにしてもよい。この態様について、図10を参照しつつ説明する。
【0068】
図10は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが異常姿勢で着席しているときの様子を示す上面図である。図10に示した例では、図5の場合と同様に、患者Pが座位姿勢で患者シート1に着席している。しかしながら、患者Pの一方の手PH(左手首から先の部分)が隙間11に置かれている。この状態で、可動部である背凭れ1bを後ろに傾動させた場合、患者Pの手PHが隙間11に巻き込まれてしまう虞がある。
【0069】
そこで、姿勢検出部921は、隙間11を含むようにして設定された注意領域R1に、患者Pの四肢(ここでは手PH、特に手首から先の部分)があることを検出した場合、患者Pが異常姿勢であると判断する。これにより、患者Pの手PHが注意領域R1に置かれていた場合、モニター6に異常姿勢である旨の警告が表示され、また、シート駆動部1Mによる患者シート1の可動部の駆動ができないように制御される。
【0070】
なお、図10に示したように、座面シート1cと足置き台1dの境界部分に相当する領域を注意領域R2として設定してもよい。姿勢検出部921によって、注意領域R2に、患者Pの手PH(特に手首から先の部分)や足PF(特に足首から先の部分)が置かれている場合に、患者が異常姿勢であると判断されるようにしてもよい。
【0071】
また、図9に示したように、足置き台1dの周辺領域12を注意領域R3に設定してもよい。姿勢検出部921によって、注意領域R3に患者Pの足PF(足首から先の部分)が置かれている場合に、患者が異常姿勢であると判断されるようにしてもよい。また、足が長い患者の場合、患者シート1の先端側から足先が出る場合があるため、注意領域R3を患者シート1の左右の領域に2分するように設定してもよい。
【0072】
以上のように、患者Pの手PHまたは足PFが注意領域R1〜R3に位置した場合、モニター6に警告が表示されるようにしてもよいし、シート駆動部1Mによる可動部の駆動ができなくなるようにしてもよい。注意領域R1〜R3を適切に設定することによって、患者シート1に形成された隙間などに患者の手または足が挟まったり、巻き込まれたりする虞を未然に防ぐことができる。
【0073】
{異物検出}
次に、異物検出部922による異物検出について詳細に説明する。上述したように、異物検出部922は、あらかじめ規定された検出対象領域において、異物の検出を行う。本実施形態では、異物とは、患者の所持品を含む物品であって、患者シート1に装着される装備品以外の物品をいう。異物検出部922によって異物が検出されると、その検出結果に基づいて、異物が検出されたことを示す内容の画像がモニター6に表示される。また検出結果は、シート駆動制御部941に渡される。シート駆動制御部941は、この検出結果に基づいて、シート駆動部1Mによる患者シート1の可動部の駆動が一時的に行われないように制御する。
【0074】
図11は、図3に示した状態の患者シート1に、患者Pが着席しているときの様子を示す上面図である。背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11を含む領域が、検出対象領域R4として設定されている。また、座面シート1cと足置き台1dの間の隙間13を含む領域が検出対象領域R5に設定されている。また、図11に示した例では、隙間11に異物である携帯電話31が置かれている。
【0075】
隙間11や隙間13に異物が置かれていた場合、可動部である背凭れ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動すると、患者シート1に形成された隙間11,13に異物が挟まってしまうことにより、患者シート1の可動部が故障により駆動できなくなる虞がある。そこで、本実施形態では、異物検出部922によって検出対象領域R4,R5における異物検出を行うことによって、このような問題を回避する。
【0076】
なお、図11に示したように検出対象領域R4には、携帯電話31以外に、患者Pの体(両腕および胴体)が含まれている。したがって、図11に示したような画像が取得された場合には、異物検出を行うために、該画像の検出対象領域R4から患者Pの体に相当する部分を除いて(マスクして)携帯電話31のみを検出する必要がある。
【0077】
ここで、例えば患者の標準モデルを使うことによって、患者Pの体に相当する部分を除去することが可能である。具体的には、画像中の患者Pの特徴部分(頭部、手足の先端、関節、輪郭など)を検出し、これらの位置に合わせて、標準モデルを変形させる。これにより、図11に示した画像から、患者Pに相当する領域を抽出することができる。この抽出した領域をマスクすることによって、画像中から携帯電話31を高精度に検出することができる。
【0078】
{可動部駆動中における、患者の姿勢検出および異物検出}
姿勢検出部921または異物検出部922による患者の姿勢検出または異物検出は、患者シート1の可動部が停止している状態においてのみ行われるようにしてもよい。しかしながら、患者シート1の可動部が駆動している最中に行うようにすることも可能である。具体的には、患者シート1の可動部を、図3に示す位置と図4に示す位置との間で移動させている最中に、姿勢検出部921によって、患者の異常姿勢が検出されるようにしてもよい。また、異物検出部922によって、異物検出が行われるようにしてもよい。
【0079】
また、可動部駆動中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合、シート駆動制御部941によって、シート駆動部1Mを逆駆動するように制御することが可能である。例えば、可動部である背凭れ1bを傾動移動している最中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合、シート駆動部1Mを逆駆動することで、背凭れ1bを逆方向に傾動移動させることができる。また、座面シート1cを昇降させている最中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合に、シート駆動部1Mを逆駆動することで、座面シート1cを逆方向に昇降させることができる。なお、逆駆動は、各可動部の可動範囲の限界まで行われるようにしてもよいし、駆動される前の位置まで戻すようにしてもよい。また、逆駆動は、所定の時間(1〜2秒間)の間だけ行われるようにしてもよいし、所定の距離(または角度)分だけ行われるようにしてもよい。
【0080】
以上のように、可動部駆動中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合に、可動部の逆駆動が行われることによって、患者シート1に形成される隙間に患者の体または異物が巻き込まれたり、挟まれたりしても、それらを容易に取り出すことができる。したがって、患者シート1の可動部を安全に駆動することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、可動部を逆駆動するようにしているが、患者の体が患者シート1の可動部に挟まれるような虞を防止するためには、可動部を安全な方向に駆動することが望ましい。例えば、背凭れ1bを倒すほど、背凭れ1bと座面シート1cとの間の隙間11の間隔が大きくなるような場合、背凭れ1bを倒す方向に駆動する方が患者にとって安全である。また、座面シート1cは、上昇させることにより、足置き台1dの下側の空間1dSは大きくなる。(図3および図4参照)。このため、座面シート1cを下降させるよりも上昇させる方が、患者にとっては安全である。同様に、足置き台1dについても、上昇させる方が患者にとって安全である。
【0082】
可動部駆動中に、患者の異常姿勢または異物が検出された場合に、この安全な駆動方向を考慮して各可動部を駆動させることで、挟まれたり巻き込まれたりする虞を、より一層抑制することができる。
【0083】
{動作説明}
次に、診療時における医療用診療装置100の動作について説明する。
【0084】
図12は、診療時における医療用診療装置100の一連の動作を示す流れ図である。なお、以下の説明において、特に断らない限り、医療用診療装置100の動作は、制御部9によって制御されるものとする。また、以下に説明する医療用診療装置100の動作の各工程の流れは、一例にすぎない。したがって、各工程の内容によっては、複数の工程が並列に実行されたり、または、複数の工程について実行する順序が変更されたりしてもよい。
【0085】
まず、医療用診療装置100は、撮影部8のカメラ8aによって、患者シート1上の領域について、撮影を開始する(ステップS1)。そして、患者が着席していないときの画像と、撮影画像とが比較されることによって、患者が撮影されているかどうかが判定される(ステップS2)。ステップS2において、患者が撮影されていない場合は、引き続き撮影が行われる。
【0086】
ステップS2において、患者が撮影されている場合、医療用診療装置100は、静止画の取得を行う(ステップS3)。撮影された画像データは、画像処理部91によって画像処理が行われ、認識部92に渡される。
【0087】
次に、医療用診療装置100は、ステップS3において取得された静止画に基づいて、患者が異常姿勢であるかどうかを判定する(ステップS4)。具体的には、姿勢検出部921が、姿勢パターン951を参照することによって、患者の姿勢が異常姿勢にあるかどうかを検出する。
【0088】
ステップS4において、患者が異常姿勢ではないと判定された場合(ステップS4においてNO)、医療用診療装置100は、異物が検出されたかどうかを判定する(ステップS5)。具体的には、異物検出部922によって、あらかじめ設定された検出対象領域に異物が存在するかどうかが判定される。
【0089】
ステップS5において、異物が検出されなかった場合、医療用診療装置100は、操作部(フートコントローラ5など)を介した操作入力を受け付ける(ステップS6)。これにより、操作者は、フートコントローラ5などを操作することによって、患者シート1の可動部を駆動することができるようになる。
【0090】
次に医療用診療装置100は、動作を継続するかどうか判定する(ステップS7)。具体的には、所定の終了操作が、制御部9に対して入力されたかどうかで判断される。
【0091】
ステップS5またはステップS6において、患者の異常姿勢が検出されたり、または、異物が検出されたりした場合、医療用診療装置100は、患者シート1の可動部が駆動中であるかどうかを判定する(ステップS8)。
【0092】
可動部が停止している場合(ステップS8においてNO)、医療用診療装置100は、シート駆動制御部941により、操作を受け付けないようにすることで、患者シート1の可動部を操作不能にする(ステップS9)。また、医療用診療装置100は、モニター6に警告を表示する(ステップS10)。ステップS10においては、医療用診療装置100は、単に、可動部が駆動できない旨をモニター6に表示するようにしてもよいし、より具体的に、患者の異常姿勢を検出した旨、または、異物を検出した旨をモニター6に表示するようにしてもよい。
【0093】
また、可動部が駆動中である場合(ステップS8においてYES)、医療用診療装置100は、患者シート1の可動部の逆駆動を行う(ステップS11)。また、医療用診療装置100は、モニター6に警告を表示する(ステップS12)。ステップS12においては、医療用診療装置100は、単に、逆駆動をする旨をモニター6に表示するようにしてもよいし、より具体的に、患者の異常姿勢を検出した旨、または、異物を検出した旨をモニター6に表示するようにしてもよい。
【0094】
ステップS10またはステップS12の警告表示を行うと、医療用診療装置100は、ステップS3に戻って、以降の動作を実行する。以上が診療中における医療用診療装置100の一連の動作についての説明である。
【0095】
本実施形態に係る医療用診療装置100によると、患者の異常姿勢を検出したり、モニター6を介して操作者に警告を通知することができる。操作者は、この警告により、患者が注意な姿勢にあることを認識できるため、患者シート1の可動部を安全に操作することができる。また、異常姿勢が検出された場合に、可動部の駆動が制限することによって、操作者が患者シート1の可動部をより一層安全に操作することができる。
【0096】
また、医療用診療装置100においては、異物検出を行うことができるため、患者シート1に形成された隙間(隙間11など)に異物が巻き込まれることを防止することができる。したがって、可動部が故障することを抑制することができる。
【0097】
{2. 変形例}
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0098】
例えば、患者の年代(例えば子供、成人、老人)、性別、または体格によって、正常姿勢とされる四肢の位置が大きく異なる場合がある。そこで、姿勢パターン951において、正常姿勢が患者の年代や性別または体格毎のグループに分けられて登録されてもよい。このとき、姿勢検出部921が、患者の年代、性別または体格に応じて、参照する正常姿勢のグループが異なるようにする。これにより、患者の異常姿勢を精度よく検出したり、効率的に検出したりすることが可能になる。
【0099】
また、患者の姿勢の検出方法は、上記実施形態で説明したものに限定されるものではない。また、注意領域や異物領域の検出対象範囲は、上記実施形態で説明したものに限定されるものではなく、自由に設定することが可能である。
【0100】
また、上記実施形態では、医療用診療装置100は、歯科治療に適合するように構成されている。しかしながら、本発明は、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科、整形外科、形成外科、神経科、小児科、内科、皮膚科、放射線科、泌尿器科などのあらゆる医科分野や、口腔外科、矯正外科などを含む一般歯科、または、獣医科分野の各種分野の医療用診療装置について適用することが可能である。
【0101】
また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0102】
1 患者シート
10 診療台
100 医療用診療装置
11,13 隙間
12 周辺領域
1M シート駆動部
1a ヘッドレスト
1b 背凭れ
1c 座面シート
1d 足置き台
1dS 空間
1e 肘置き
31 携帯電話(異物)
5 フートコントローラ
6 モニター
61 入力部
8 撮影部
8a カメラ
9 制御部
91 画像処理部
92 認識部
921 姿勢検出部
922 異物検出部
94 駆動制御部
941 シート駆動制御部
95 記憶部
951 姿勢パターン
P 患者
PF 足
PH 手
R1〜R3 注意領域
R4,R5 検出対象領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を有する診療台と、
前記診療台に支持された患者を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された前記患者の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記患者が異常姿勢であることを前記姿勢検出部が検出した場合に、警告を通知する通知部と、
を備える医療用診療装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部により、前記患者の姿勢が異常であると検出された場合に、前記診療台の前記可動部の操作を不能にする駆動制御部、
をさらに備える医療用診療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部は、検出された患者の姿勢とあらかじめ規定された異常姿勢パターンと比較することによって、患者が異常姿勢であることを検出する医療用診療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部は、患者の手または足が検出できない場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する医療用診療装置。
【請求項5】
請求項3に記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部は、前記可動部を駆動したときに注意すべき領域としてあらかじめ規定された注意領域に、患者の手または足が位置することを検出した場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する医療用診療装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の医療用診療装置において、
前記可動部を駆動したときに、あらかじめ規定された検出対象領域における異物を検出する異物検出部、をさらに備え、
前記通知部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に警告を通知する医療用診療装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の医療用診療装置において、
前記通知部は、前記警告を示す画像を表示する表示装置を含む医療用診療装置。
【請求項1】
可動部を有する診療台と、
前記診療台に支持された患者を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された前記患者の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記患者が異常姿勢であることを前記姿勢検出部が検出した場合に、警告を通知する通知部と、
を備える医療用診療装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部により、前記患者の姿勢が異常であると検出された場合に、前記診療台の前記可動部の操作を不能にする駆動制御部、
をさらに備える医療用診療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部は、検出された患者の姿勢とあらかじめ規定された異常姿勢パターンと比較することによって、患者が異常姿勢であることを検出する医療用診療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部は、患者の手または足が検出できない場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する医療用診療装置。
【請求項5】
請求項3に記載の医療用診療装置において、
前記姿勢検出部は、前記可動部を駆動したときに注意すべき領域としてあらかじめ規定された注意領域に、患者の手または足が位置することを検出した場合に、前記患者の姿勢を前記異常姿勢として検出する医療用診療装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の医療用診療装置において、
前記可動部を駆動したときに、あらかじめ規定された検出対象領域における異物を検出する異物検出部、をさらに備え、
前記通知部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に警告を通知する医療用診療装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の医療用診療装置において、
前記通知部は、前記警告を示す画像を表示する表示装置を含む医療用診療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−196400(P2012−196400A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63934(P2011−63934)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】
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