説明

医薬活性化合物の製造方法

本発明は、塩基の存在下で、式(II)の化合物と式(III)の化合物(Xは脱離基、Pはアルカリ条件に耐えるアルコール類の保護基を意味する)との反応、次いで脱保護の工程および場合によりその薬学上許容される塩を得る工程による、クエチアピンを製造する方法に関する。上記の方法では、穏やかな温度条件下、短い反応時間で、有毒溶媒の使用を避けながら、高純度のクエチアピンを得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、医薬活性化合物の製造のための新規方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
特許EP240228には、クエチアピンのDCIで現在知られている、抗ドパミン作動活性のために有用な、例えば抗精神病または神経遮断剤として有用な、下記式(I)のジベンゾチアゼピン化合物:
【化1】

が記載されている。
【0003】
前記の特許は、イミノクロリド、特に11‐クロロジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンまたはその対応イミノエーテルと、2‐(2‐ピペラジン‐1‐イルエトキシ)エタノールとの反応による、式(I)の化合物の製造について記載している。
【0004】
その後の特許、EP282236には、同イミノクロリドとピペラジンとの反応、次いでヒドロクロレート形で得られた生成物とクロロエトキシエタノールとの反応による、式(I)の化合物の製造が記載されている。
【0005】
しかしながら、前記の方法は、高温(キシレン還流(Teb=137‐140℃)で、プロパノールおよびN‐メチルピロリドンの混合液の使用)で24〜30時間の長時間かけ、一方で望ましくないジアルキル化反応を防ぐために大過剰の試薬も必要としながら、行われている。
【0006】
その後、WO0155125には、式(I)の化合物を得る上で、先のものとは異なる方法が記載されている。その方法は、ハロエチルピペラジニルチアゼピンの誘導体をエチレングリコールと反応させることからなる。この方法では、対応アニオンを生成させるための極端に強い脱プロトン化剤であるナトリウムの使用と、二置換反応を最少化するための著しく過剰のエチレングリコール(30当量)の使用とを要する。過剰のエチレングリコールは後に多量の水で除去しなければならず、そのため多量の残留水性産物を生じてしまう。
【0007】
更に、WO9906381には、結晶化および固体物としての単離による、式(I)の化合物、塩基クエチアピンを精製するための方法が記載されている。しかしながら、この方法の実施では、塩基クエチアピンを結晶形で得られなかった。
【発明の説明】
【0008】
本発明の第一の面によると、本発明は、下記式(I)の11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン:
【化2】

またはその薬学上許容される塩を得るための新規方法であって、塩基の存在下で下記式(II)の2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノールと下記式(III)の化合物:
【化3】

(上記式中、Xは脱離基を意味し、Pはアルカリ条件に耐えるアルコール類の保護基を意味する)との反応、次いで脱保護の工程および最後にその薬学上許容される塩を得る工程を含む方法を開示する。
【0009】
本発明において、「アルカリ条件に耐えるアルコール類の保護基」とは、水性条件下でpH>10に耐えるアルコール類の保護基を意味する。アルコール類の保護基に関しては“Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition,T.W.Greene,Wiley Interscience,chapter 2”も参照。
【0010】
本発明において、「塩基の存在下」とは、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物または炭酸塩のようなアルカリまたはアルカリ土類有機または無機塩基の存在下を意味する。
【0011】
有利には、ヒドロキシル基を保護した式(III)の中間体の使用は、過剰の試薬の添加なしに、望ましくない二置換反応の発生を防ぐ。
【0012】
脱離基X(M.B.Smith,J.March.March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,New York(USA):John Wiley & Sons;2001,pp446参照)には、ハロゲン、またはアルキルスルホニルオキシ基、例えばメシレート、トリフレート、ノナフレートおよびトレシレート、またはアリールスルホニルオキシ基、例えばトシレート、ブロシレート、ノシレート、がある。好ましくは、Xはクロロまたはp‐トルエンスルホニルオキシ基(トシレート)である。
【0013】
好ましくは、保護基Pはエーテル型のもの、例えばメチル‐、エチル‐またはベンジルエーテルであり、それらすべてが場合により置換されている。
【0014】
好ましくは、保護基Pはテトラヒドロピラニル、ベンジルまたはトリチル(トリフェニルメチル)基である。更に好ましくは、Pはトリチル基である。
【0015】
反応は0〜130℃の広い温度範囲で行える。好ましくは、Pがテトラヒドロピラニルである場合は25〜70℃、Pがベンジルである場合は40〜70℃、およびPがトリチルである場合は80〜120℃の範囲である。
【0016】
好ましくは、本発明による方法は、相間移動触媒の存在下で、式(II)の化合物と式(III)の化合物との相間移動反応により行われる。有利には、相間移動反応によれば、より穏やかな温度条件下、より短い反応時間で反応を行える。
【0017】
有利には、式(II)の化合物と式(III)の化合物との相間移動反応は有機溶媒の不在下で行うことができ、そのため有毒溶媒の使用を避けられる。
【0018】
好ましくは、用いられる相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムビサルフェート、Aliquat 336、テトラブチルアンモニウムヨージドおよびエーテル 18‐コロナ‐6の中から選択される。
【0019】
好ましくは、塩基は、固形または水溶液の、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような、アルカリ水酸化物である。
【0020】
反応は下記式(IV)の中間体を経て生じる。
【化4】

(上記式中、Pは前記の通りである。)
【0021】
所望であれば、下記式(IV)の中間体は有機溶媒、好ましくはトルエンによる抽出で後に単離してもよい。
【0022】
次いで、脱保護の工程が行われ、これは常法による。好ましくは、脱保護は酸性媒体中で中間体(IV)の加水分解により行われ、式(I)の化合物を生じる。
【0023】
このように、保護基Pがテトラヒドロピラニルである場合、式(IV)の中間体は好ましくは単離されず、加水分解が水性鉱酸の存在下で直接行われる。
【0024】
保護基Pがベンジルである場合、中間体は好ましくは単離され、脱保護が、例えば酢酸中33%臭化水素酸の溶液で、酸加水分解により行われる。
【0025】
しかも有利には、保護基Pがトリチルである場合、得られた式(IV)の中間体は結晶固体物である。これは、有機溶媒、例えばメタノール、エチルメチルケトンまたはそれらの混合液、で再結晶化により精製しうる。この生成物の高純度はこうして得られる。次いで、前記の再結晶化された中間体は、後に、トルエン、メタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合液のような有機溶媒中、および所望であれば水の存在下、酢酸、トリフルオロ酢酸、p‐トルエンスルホン酸または塩酸、好ましくはp‐トルエンスルホン酸のような酸の存在下で、式(I)の最終化合物に加水分解される。こうして得られた式(I)の化合物は非常に高純度であり、該化合物の更なる精製は不要である。
【0026】
更に、中間体(IV)の脱保護が酢酸または無水物の存在下で行われる場合は、下記式(V)の中間体の形成が生じうる:
【化5】

この場合には、式(I)の最終生成物を得るために、更に反応が周囲温度で続けられる。
【0027】
最後に、所望であれば、式(I)の化合物は薬学上許容される塩の形で得られる。好ましくは、ヘミフマル酸塩(hemifumarate)が得られる。
【0028】
式(II)の中間体は、特許CH422793に記載されているように、前記のイミノクロリドと2‐ピペラジニル‐1‐エタノールとの反応により得ることができる。
【0029】
式(III)の中間体は:
a)下記式(VI)の中間体から
【化6】

文献に記載された常法で、アルカリ条件に耐えるアルコール類の保護基Pでヒドロキシル基を保護することにより、あるいは
b)下記式(VII)の中間体から
【化7】

常法で脱離基Xの挿入により、例えば、一般式HXの水素酸または塩化チオニルもしくは五塩化リンのような無機酸のハライドとの処理による、あるいは塩基の存在下でアルキルまたはアリールスルホニルクロリドとの処理による、ハロデヒドロキシル化反応により、得ることができる。
【0030】
特に、Pがテトラヒドロピラニルである式IIIの中間体(IIIa):
【化8】

(XはClまたはp‐トルエンスルホニルオキシである)は、X=Clである場合、文献(Synlett(1999),8,1261-1262)に記載されているように、様々な触媒の存在下で2‐クロロエタノールと3,4‐ジヒドロ‐2H‐ピランとの反応により容易に得ることができ、およびそれは、X=p‐トルエンスルホニルオキシである場合、文献(J.Org.Chem.(1993),58(16),4315-4325)に記載されているように、p‐トルエンスルホン酸の存在下で3,4‐ジヒドロ‐2H‐ピランと過剰のエチレングリコールとの反応、次いでトリエチルアミンの存在下でp‐トルエンスルホニルクロリドとの処理により得ることができる。
【0031】
特に、Pがベンジルである式IIIの中間体(IIIb):
【化9】

(XはClである)は、文献で記載された様々な方法により、例えば、ピリジンの存在下で、エチレングリコールベンジルブロミドのリチウム塩を処理し、次いで塩化チオニルで処理することにより得ることができる(J.Org.Chem.(1979),44(7),1163-1166)。
【0032】
特に、Pがトリチルである式IIIの中間体(IIIc):
【化10】

(XはClである)は、文献(Farmaco(1949),4,45-48)に記載されているように、ピリジンの存在下でトリフェニルクロロメタンと2‐クロロエタノールとの反応により得ることができる。
【実施例】
【0033】
下記例へと続くが、これらは本発明の非制限的な説明のためである。
合成の例
例1
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
水酸化ナトリウムの50%水溶液26.2mlに、2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノール5g(14.7mmol)、2‐(2‐クロロエトキシ)テトラヒドロ‐2H‐ピラン10.43g(63.4mmol)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.49gを連続的に加える。混合液をよく攪拌しながら60℃で6時間加熱する。それを20〜25℃に冷却し、トルエン45mlおよび水26mlを激しく攪拌しながら加える。各相を分離し、有機相を水(2×26ml)で洗浄する。水32mlおよび35%塩酸5mlを加え、二相混合液を20〜25℃で3時間攪拌する。各相を分離し、水相をn‐ブタノール(10ml)およびトルエン(10ml)で連続洗浄する。次いで、水相がpH10に達するまで、トルエン45mlおよび炭酸カリウムの10%水溶液を加える。各相を分離し、水相をトルエン(10ml)で抽出する。合わせた有機相を真空下で蒸発乾固させ、淡黄色油状物として標題の生成物4.80g(85%)を得る。
IR(フィルム),cm−1:3045,2920,2855,1600,1570,1550,1455,1410,1305,1250,1240,1140,1115,1016,755.
H‐RMN(CDCl),δ(ppm):2.5‐2.8(m,6H,‐CH‐N(CH‐)‐CH‐),3.4‐3.8(m,11H,‐CH‐N(C=)‐CH‐ + ‐CH‐O‐CH‐CH‐OH),6.8‐7.6(m,8H,Ar).
【0034】
例2
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
2‐(2‐クロロエトキシ)テトラヒドロ‐2H‐ピラン10.43g(63.4mmol)に、2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノール5g(14.7mmol)、水酸化カリウム末5gおよび18‐コロナ‐6触媒0.49gを連続的に加える。混合液をよく攪拌しながら40℃で6時間加熱する。合成を例1のように進め、例1で得られた生成物の場合と同一のIRおよびH‐RMNスペクトルを有した、淡黄色油状物として標題の生成物4.65g(82%)を得る。
【0035】
例3
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
2‐(2‐クロロエトキシ)テトラヒドロ‐2H‐ピラン10.43g(63.4mmol)に、2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノール5g(14.7mmol)、水酸化カリウム末5gおよびAliquat 336触媒0.49gを連続的に加える。混合液をよく攪拌しながら40℃で20時間加熱する。合成を例1のように進め、例1で得られた生成物の場合と同一のIRおよびH‐RMNスペクトルを有した、淡黄色油状物として標題の生成物4.23g(75%)を得る。
【0036】
例4
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
水酸化ナトリウムの50%水溶液26.2mlに、2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノール5g(14.7mmol)、2‐(テトラヒドロピラン‐2‐イルオキシ)エチルのp‐トルエンスルホネート19g(63.3mmol)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.5gを連続的に加える。混合液をよく攪拌しながら60〜65℃で8時間加熱する。合成を例1のように進め、例1で得られた生成物の場合と同一のIRおよびH‐RMNスペクトルを有した、淡黄色油状物として標題の生成物5.08g(90%)を得る。
【0037】
例5
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
11‐{4‐〔2‐(2‐ベンジルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐1‐イル}ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン
水酸化ナトリウムの50%水溶液26.2mlに、2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノール5g(14.7mmol)、ベンジル‐(2‐クロロエチル)エーテル10.81g(63.3mmol)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.49gを連続的に加える。混合液をよく攪拌しながら60℃で9時間加熱する。それを20〜25℃に冷却し、トルエン45mlおよび水26mlを攪拌しながら加える。各相を分離し、有機相を水(2×26ml)で洗浄する。水75mlおよび35%塩酸5mlをトルエン相へ加え、二相混合液を20〜25℃で5分間攪拌する。各相を分離し、トルエン相を水10mlで洗浄する。トルエン90mlおよび25%水酸化アンモニウム10mlを、合わせた水相へ、攪拌しながら加える。各相を分離し、有機相を真空下で蒸発乾固させ、黄色油状物として11‐{4‐〔2‐(2‐ベンジルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐イル}‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン6.49g(93%)を得る。
IR(フィルム),cm−1:3040,2850,1585,1550,1430,1290,1090,1000,725.
H‐RMN(CDCl),δ(ppm):2.4‐2.8(m,6H,‐CH‐N(CH‐)‐CH‐),3.4‐3.8(m,10H,‐CH‐N(C=)‐CH‐ + ‐CH‐O‐CH‐CH‐O‐),4.6(s,2H,‐O‐C‐C),6.8‐7.6(m,13H,Ar).
【0038】
2‐〔2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エトキシ〕エチロアセテート
11‐{4‐〔2‐(2‐ベンジルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐1‐イル}ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン1g(2.11mmol)を酢酸中33%HBr5mlおよび酢酸5mlの混合液へ加える。混合液を攪拌しながら20〜25℃で1.5時間保つ。それを真空下で濃縮乾固する。得られた残渣を水25mlおよびジクロロメタン25mlで処理し、固体NaHCOで中和し、各相を分離する。水相をジクロロメタン(25ml)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮乾固させ、黄色油状物として2‐〔2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エトキシ〕エチロアセテート0.8g(89%)を得る。
IR(フィルム),cm−1:3045,2940,2860,1725,1600,1560,1440,1290,1235,1110,1035,1000,750,730.
H‐RMN(CDCl),δ(ppm):2.05(s,3H,‐COCH),2.5‐2.8(m,6H,‐CH‐N(CH‐)‐CH‐),3.4‐3.8(m,8H,‐CH‐N(C=)‐CH‐ + ‐CH‐O‐CH‐),4.2(t,2H,‐CH‐OAc),6.8‐7.6(m,8H,Ar).
【0039】
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
水酸化カリウム末0.27g(4.09mmol)をメタノール7ml中、2‐〔2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エトキシ〕エチロアセテート0.65g(1.53mmol)の溶液へ加える。混合液を攪拌しながら20〜25℃で3時間保ち、真空下で濃縮乾固する。残渣を1N HCl 25mlで処理する。得られた溶液をn‐ブタノール5mlおよびトルエン25mlで洗浄する。水相を20%水酸化ナトリウムの水溶液でpH10に塩基性化し、トルエン25および10mlで連続抽出する。合わせた有機相を真空下で蒸発乾固させ、例1で得られた生成物の場合と同一のIRおよびH‐RMNスペクトルを有した、淡黄色油状物として標題の生成物0.55g(94%)を得る。
【0040】
例6
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
11‐{4‐〔2‐(2‐トリチルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐1‐イル}ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン
2‐(4‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン‐11‐イルピペラジン‐1‐イル)エタノール40g(0.12mol)およびトリチル(2‐クロロエチル)エーテル44g(0.14mol)の混合物を、該混合物が完全に溶融するまで、100〜110℃にゆっくり加熱する。攪拌を開始し、水酸化カリウム末を5gずつ4回に分け45〜60分間かけて加え、その際に温度を100〜115℃に保つ。18‐コロナ‐6触媒1.6gを加え、混合物を攪拌しながら100〜115℃で2時間保つ。反応混合物が溶解するまで、トルエン300mlをゆっくり加え、次いで水100mlを加える。それを20〜25℃に冷却し、各相を分離する。有機相を水50ml中、塩化ナトリウム5gの溶液で洗浄し、有機相を真空下で蒸発乾固させる。トルエン80mlおよびメタノール160mlを40℃で加えることにより、残渣を溶解させる。混合液を攪拌しながら35〜40℃に保ち、生成物をメタノール250mlのゆっくりした添加により沈殿させる。懸濁液を0〜5℃に冷却し、固体物を濾過し、次いで45℃で乾燥させ、濃度90〜92%で11‐{4‐〔2‐(2‐トリチルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐1‐イル}ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン64gの粗生成物を得る。
【0041】
上記の粗生成物をエチルメチルケトン125mlおよびメタノール200mlの還流下で混合液の再結晶化により精製する。それを20〜25℃にゆっくり冷却し、混合液をこの温度で攪拌しながら1時間保つ。次いで、それを0〜5℃に冷却する。得られた固体物を濾過し、メタノール/エチルメチルケトン(5:1)の冷混合液50ml、最後に冷メタノール60mlで洗浄する。生成物を45℃で乾燥させ、高純度(>99.5%)の淡黄色固体物として11‐{4‐〔2‐(2‐トリチルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐1‐イル}ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン60.8g(82%)を得る。
m.p.:119‐121℃
IR(KBr),cm−1:3055,2940,2800,1575,1560,1450,1385,1245,1015,765,705.
H‐RMN(CDCl),δ(ppm):2.4‐2.8(m,6H,‐CH‐N(CH‐)‐CH‐),3.2(t,2H,‐CH‐O‐Tr),3.4‐3.8(m,8H,‐CH‐N(C=)‐CH‐ + ‐CH‐O‐CH‐),6.8‐7.6(m,23H,Ar).
【0042】
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン(塩基クエチアピン)
11‐{4‐〔2‐(2‐トリチルオキシエトキシ)エチル〕ピペラジン‐1‐イル}ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン1kg(1.6mol)、トルエン3.5L、メタノール1.5Lおよびp‐トルエンスルホン酸一水和物0.468kgの混合液を還流下で4時間保つ。溶媒を真空下で蒸発乾固させ、攪拌しながら水5L、トルエン2Lおよび35%塩酸0.2Lを加えることにより残渣を溶解させる。各相を分離する。有機相を水0.6Lで抽出する。合わせた水相にトルエン2.7Lおよび水酸化ナトリウムの50%水溶液をpH9.5まで加える。各相をデカントし、水相をトルエン0.6Lで抽出する。合わせた有機相を珪藻土で濾過し、真空下で蒸発乾固させ、例1で得られた生成物の場合と同一のIRおよびH‐RMNスペクトルを有した、淡黄色油状物として標題の生成物0.580kg(95%)を得る。
【0043】
11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピンヘミフマル酸塩
フマル酸94.4g(0.81mol)を20〜25℃でメタノール3.06L中、11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン0.580(1.52mol)の上記残渣の攪拌溶液に加える。固体物が5〜15分間後に沈殿してくる。攪拌を20〜25℃で30分間維持する。懸濁液を再び還流下で5分間加熱し、次いで10〜15℃に冷却する。懸濁液をこの温度で1時間攪拌する。固体物を濾過し、冷メタノール(2×0.5L)で洗浄し、次いで真空下45℃で乾燥させ、高純度(>99.7%)の標題の生成物0.63kg(94%)を得る。
m.p.:172‐174℃
IR(KBr),cm−1:3320,3075,2945,2870,1575,1415,1335,1130,1085,990,795,770.
H‐RMN(CDOD),δ(ppm):3.1‐3.5(m,6H,‐CH‐N(CH‐)‐CH‐),3.5‐3.9(m,10H,‐CH‐N(C=)‐CH‐+‐CH‐O‐CH‐CH‐OH),6.6(s,1H,ヘミフマル酸塩),6.9‐7.6(m,8H,Ar).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の11‐(4‐〔2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル〕‐1‐ピペラジニル)‐ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン:
【化1】

またはその薬学上許容される塩を得るための方法であって、
塩基の存在下で、下記式(II)の化合物と下記式(III)の化合物:
【化2】

(上記式中、Xは脱離基を意味し、Pはアルカリ条件に耐えるアルコール類の保護基を意味する)との反応、次いで脱保護の工程および最後にその薬学上許容される塩を得る工程、を含んでなる方法。
【請求項2】
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応が、相間移動触媒の存在下で、相間移動により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相間移動触媒が、テトラブチルアンモニウムビサルフェート、Aliquat 336、テトラブチルアンモニウムヨージド、18‐コロナ‐6エーテルの中から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
相間移動反応が有機溶媒の不在下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
塩基がアルカリまたはアルカリ土類有機または無機塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
塩基がアルカリまたはアルカリ土類水酸化物または炭酸塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
塩基が、固形または水溶液のアルカリ水酸化物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Xがハロゲンまたはアルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
Xがメシレート、トリフレート、ノナフレート、トレシレート、トシレート、ブロシレートまたはノシレートである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルコール類の保護基Pがエーテル型である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
エーテル型のアルコール類の保護基Pが、テトラヒドロピラニル、ベンジルおよびトリチル(トリフェニルメチロ)から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エーテルタイプのアルコール類の保護基Pがトリチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脱保護の工程が、下記式(IV)の中間体:
【化3】

(上記式中、Pは請求項1に記載された意味を有する)の酸性媒体中における加水分解を含んでなる、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2007−501837(P2007−501837A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523068(P2006−523068)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002527
【国際公開番号】WO2005/014590
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506044775)インケ、ソシエダ、アノニマ (8)
【氏名又は名称原語表記】INKE,S.A.
【Fターム(参考)】