説明

医薬用錠剤

【課題】弾力性を有し通常の錠剤化方法では充分な錠剤強度を付与することのできない架
橋アミンポリマーを含有する錠剤を提供する。
【解決手段】特定の糖類、すなわち、マルトース又はトレハロースが、弾力性を有する架
橋アミンポリマーの成形性を改善することを見出した。即ち、本発明の錠剤は、架橋アミ
ンポリマーとマルトース又はトレハロースとを含む。本発明の錠剤は、架橋アミンポリマ
ーを含有する、適度な強度を有する錠剤で、製造工程や流通過程における保存安定性に優
れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性を有する架橋アミンポリマーを有効成分として含有する医薬用製剤に
おいて、特定の糖類を組み合わせることにより成形性が改善された錠剤及びその錠剤の製
造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン選択性吸着剤は、高リン酸血症、高シュウ酸尿症、高カルシウム血症、高カリウ
ム血症などの状態において人間の電解質バランス障害を矯正する治療に使用されている。
高リン酸血症は、腎不全患者に発生する。その患者の腎臓が充分にリン酸イオンを排出で
きないため、食事中の外因性リン酸の摂取分を補正できなくなる。Dowex樹脂やコレ
スチラミン樹脂などの強塩基性イオン交換材料に代表されるリン酸イオン結合剤が、リン
酸結合剤として使用されている。しかしながら結合能が低いため、用量を多くしなければ
ならず、患者の負担となっている。
近年開発された架橋ポリアリルアミン樹脂であるRenagel(登録商標)は、金属
を含まないリン酸イオン結合剤として販売されているが、対象となる患者群に対する推奨
用量は、6mg/dL未満のリン酸イオン濃度を維持するため、通常5g/日〜15g/
日となっており、患者は1回に4〜8錠の錠剤を服用することが要求されている。
最近になって、リン酸結合能が高い架橋アミンポリマーが報告されている(特許文献1
)。殊に、N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミ
ノブタンをエピクロロヒドリンで架橋した架橋アミンポリマーは、優れたリン酸吸着能を
有した非吸収性ポリマーであり、慢性腎不全等の腎機能の低下による高リン酸血症の治療
薬として有用である。しかしながら、弾力性を有するポリマーであるため、その錠剤化に
問題があった。
本発明者らは、当該架橋アミンポリマーに、種々の添加剤を加えて、通常の方法で錠剤
化することを試みたが、例えば、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールを用いた
場合、溶融造粒法又は撹拌増粒法のいずれの方法を用いても、錠剤強度がほとんどなく錠
剤化できなかった。又、リン酸結合剤を有効成分とする高リン酸血症治療薬は、リン酸イ
オンを吸着して体外に排出させるため、通常の医薬品に比べて服用量が多く、例えば、R
enagel(登録商標)では4〜8錠/1回の服用が必要である。よって、製剤化にお
ける担体量はなるべく少なくすることが要求され、担体含有量を増やして錠剤化を達成す
ることも困難であった。一方で、架橋アミンポリマーは非吸収性で弾力性のあるゴムのよ
うな素材であることから、顆粒剤や懸濁剤等の剤型は、口腔内にポリマーの粒子が残存し
不快感を伴うため、好ましいものではなかった。
【0003】
特許文献2、3には、10%以上の結晶セルロース及び/又は低置換度ヒドロキシプロ
ピルセルロースを配合し、かつ、水分含有量が1〜14%である架橋アミンポリマーを含
有する錠剤が開示されている。しかし、架橋アミンポリマーの水分をコントロールしなけ
ればならず、生産を考慮した場合一般的でない。実際に、弾力性を有する架橋アミンポリ
マーに結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを50%量配合し、圧縮
成形しても、硬度が10〜20N程度で実用の硬度には至らなかった(後記比較例2参照)
。なお、錠剤強度を示す単位であるN(ニュートン)は、9.807N=1kp=1kg
の関係にある。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/041902号パンフレット
【特許文献2】特開2003−105024号公報
【特許文献3】特許第3389493号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リン酸イオン結合剤として有用であるが、弾力性を有するため錠剤化が困難である架橋
アミンポリマーの錠剤化技術の開発が切望されている。また、服用量の多い架橋アミンポ
リマー含有薬剤の、服用時のコンプライアンスを向上させる製剤技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、弾力性のある架橋アミンポリマーはその高い弾性力により圧縮成形後も
塑性変形せず、元の形状に回復してしまうため、十分な錠剤強度の確保が困難であること
を知見し、架橋アミンポリマーの成形性を改善すべく鋭意検討した。その結果、意外にも
、特定の糖類、すなわち、マルトース又はトレハロースが、架橋アミンポリマーの成形性
を改善することを見出した。このような成形性改善の効果は、他の糖類又は添加剤には認
められず、マルトース又はトレハロースに特有の効果であった。
更に、当該錠剤化技術を応用して小粒の錠剤(ミニタブレット)とすることにより、服
用量の多い架橋アミンポリマー含有医薬、例えば、高リン酸血症治療剤の服用がしやすく
なることを知見し本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(19)に関する。
(1)弾力性を有する架橋アミンポリマーと、マルトース及び/又はトレハロースとを含
む錠剤。
(2)架橋アミンポリマーが、膨潤率が5未満であるリン酸イオン結合性ポリマーである
、前記(1)に記載の錠剤。
(3)架橋アミンポリマーが、下記一般式(I)で示されるアミンモノマーを100mo
l%〜400mol%のエピクロロヒドリンで架橋した架橋アミンポリマーである、前記
(2)に記載の錠剤。
【化1】

(式中、nは3、4、又は5である)
(4)架橋アミンポリマーが、N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピル
)−1,4−ジアミノブタンを200mol%〜300mol%のエピクロロヒドリンで
架橋したポリマーである、前記(3)記載の錠剤。
(5)架橋アミンポリマーに対して、マルトース及び/又はトレハロースを10〜100
w/w%含有する、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤。
(6)架橋アミンポリマーに対して、マルトース及び/又はトレハロースを20〜70w
/w%含有する、前記(5)記載の錠剤。
(7)更に錠剤重量に対して10〜30w/w%の結合剤を含有する、前記(5)記載の
錠剤。
(8)架橋アミンポリマーと、架橋アミンポリマーに対して10〜100w/w%のトレ
ハロースを造粒し、次いで錠剤重量に対して10〜30w/w%の結合剤を加えて、錠剤
に成形されたものである、前記(7)記載の錠剤。
(9)更に製薬的に許容される賦形剤を含有する、前記(8)記載の錠剤。
(10)更にフィルムコーティングを施されてなる、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の
錠剤。
(11)1錠の重量が10〜80mgである、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の錠剤。
(12)高リン酸血症治療剤である、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の錠剤。
(13)前記(11)記載の錠剤を、1回投与分として少なくとも5個を一括して包装す
ることを特徴とする製剤包装体。
(14)弾力性を有する架橋アミンポリマーを、マルトース及び/又はトレハロースを用
いて造粒し、次いで、打錠により成形することを特徴とする、架橋アミンポリマー含有錠
剤の製造方法。
(15)弾力性を有する架橋アミンポリマーに、マルトース及び/又はトレハロース溶液
を含浸させ、乾燥若しくは造粒し、次いで打錠により成形することを特徴とする、架橋ア
ミンポリマー含有錠剤の製造方法。
(16)架橋アミンポリマーが、一般式(I)
【化2】

(式中、nは3、4、又は5である)
で示されるアミンモノマーを100mol%〜400mol%のエピクロロヒドリンで架
橋した架橋アミンポリマーである前記(14)若しくは(15)記載の製造方法。
(17)架橋アミンポリマーが、N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピ
ル)−1,4−ジアミノブタンを200mol%〜300mol%のエピクロロヒドリン
で架橋したポリマーであり、その平均粒子径が40〜200マイクロメーターである、前
記(16)記載の製造方法。
(18)架橋アミンポリマーに対して、10〜100w/w%のマルトース及び/又はト
レハロースを用いるものである、前記(14)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(19)架橋アミンポリマーに対して、20〜70w/w%のトレハロースを用いて造粒
し、錠剤重量に対して10〜30w/w%の結合剤を加えて打錠することを特徴とする、
前記(18)に記載の製造方法。
(20)1錠の重量が10〜80mgとなるように打錠することを特徴とする、前記(1
4)〜(19)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の錠剤は、架橋アミンポリマーを含有する、適度な強度を有する錠剤で、製造工
程や流通過程における保存安定性に優れている。
また、本発明の1つである、ミニタブレットは、小粒であることから顆粒剤に近い感覚
で服用が容易であり、口腔内へのポリマー粒子の残存も無いことから、服用量の多い架橋
アミンポリマー含有医薬、殊に高リン酸血症治療剤の服用コンプライアンスの向上が期待
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の錠剤及びその製造法について詳述し説明する。
本発明で用いることのできる薬物は、弾力性を有する架橋アミンポリマーである。ここ
に、架橋アミンポリマーとは、アミノ基を有するモノマー若しくはポリマーを架橋剤で架
橋したポリマーであり、このようなポリマーとしては、WO2005/041902号国
際公開パンフレットに記載される種々の架橋アミンポリマーが挙げられる。弾力性を有す
る架橋アミンポリマーとは、例えば、後述の比較例1に示される一般的な錠剤化技術を適
用した場合に、医薬品として必要な硬度(少なくとも30N、好ましくは40N)を有す
る錠剤が得られない程度の弾力性を有する架橋アミンポリマーである。
一般にポリマーの膨潤率は、温度、イオン強度、ポリマー電荷密度、ポリマー−溶媒間
フローリー・ハギンス(Flory-Huggins)係数、架橋密度などのさまざまな変数に依存し
ている。本発明で用いる架橋アミンポリマーは、ほとんどが荷電したポリマーである(例
えば、リン酸イオン結合ポリアミンは、腸内pHでプロトン化した状態である)ので、そ
の膨潤作用は、高分子電解質ゲルに典型的である。膨潤率と細孔サイズとにはある程度の
相関関係があり、通常は、膨潤率が高い場合は細孔サイズが大きく、膨張率が低い場合は
細孔サイズが小さい。そして、膨張率が5以下の架橋アミンポリマーは、高い架橋密度を
有し小さい細孔を有することから、大きな分子を吸着することなく選択的にリン酸イオン
を吸着し、リン酸結合剤として有用性が高いが、一方で弾力性を有し通常の錠剤化技術で
は十分な硬度を有する錠剤を製造することが困難であった。
【0010】
よって、本発明の弾力性を有する架橋アミンポリマーとしては、その膨潤率が5〜1.
4、好ましくは2.8〜2.0の架橋アミンポリマーが挙げられる。殊に、膨張率が5未
満、好ましくは2.8未満、より好ましくは2.7未満、更に好ましくは2.6未満であ
る架橋アミンポリマーが挙げられる。この膨潤率は中性pHの等張性溶液中で測定される
。当該膨潤率5〜1.4である架橋アミンポリマーは、高い弾性力を有するため、後述の
比較例に示すとおり、通常の錠剤化方法では充分な錠剤強度を付与することができないが
、本発明によれば、充分な錠剤強度を付与することができる。このように、本発明は膨潤
率5〜1.4である架橋アミンポリマーに適用することが好ましいが、それ以外の架橋ア
ミンポリマーに適用することを排除するものではない。かかる架橋アミンポリマーの配合
量としては、通常治療上有効な量であれば特に制限されないが、錠剤重量に対し、一般に
10w/w%以上であり、好ましくは40w/w%以上である。
【0011】
本発明で用いることのできる膨潤率5〜1.4である架橋アミンポリマーとしては、好
適にはWO2005/041902号国際公開パンフレットに記載の、前記一般式(I)
で示されるアミンモノマーを100mol%〜400mol%のエピクロロヒドリンで架
橋した架橋アミンポリマーを挙げることができる。また、その中でも特にN,N,N’,
N’−テトラキス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブタンを200mol%
〜300mol%のエピクロロヒドリンで架橋したポリマーであり、殊に平均粒子径が4
0〜200マイクロメーターを有するものが好適な架橋アミンポリマーとして挙げられる

【0012】
本明細書中で「膨潤率」とは、水溶液環境で平衡に達した状態で、1グラムの乾燥した
架橋ポリマーが吸収する溶媒のグラム数である。所定のポリマーについて膨潤率を複数回
測定した場合は、その測定値の平均をとって膨潤率とする。
【0013】
膨潤率は、さまざまな方法を使用して測定することができる。最も好ましい方法は重量
測定法であり、これは乾燥ポリマーの重量を測定し、過剰な量の液体に加える。場合によ
っては、この液体は蒸留水が用いられることもあるが、好ましくは血漿と等浸透圧の水溶
液を用い、最も好ましくは血漿と等張性でかつ中性pHの水溶液を用いる。例えば、0.
9%NaCl溶液が使用され得る。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)も使用され得る。
膨潤率測定に最も好ましい生理学的媒体は、0.9%NaCl溶液であって、pHを約6
.5〜約7.5にするために30mmol/LのMES(2-morpholinoethanesulfonic a
cid)を加えたものである。ポリマーは、平衡に達するまで液体に浸す。浸ったゲルを遠
心分離にかけ、上澄みを別容器に移し、湿潤ゲルの重量を測定する。遠心分離にかける際
は、重力加速度(g)が高すぎてゲルを壊してしまわないよう、注意が必要である。膨潤
率は、湿潤ゲルの重量から乾燥ポリマーの重量を引き、これを乾燥ポリマーの重量で割っ
て算出する。
【0014】
他の方法としては、染料法が挙げられる。この方法においては、ゲルと反応しないこと
がわかっている非常に大きな分子量の染料を水溶液として調製し、乾燥ポリマーを一定量
ずつ溶液に追加していく。ポリマーに対する溶液の重量比が、互いに近くなるように、か
つ、予測される膨潤率よりもわずかに高くなるように、調整する。染料は、非常に分子量
が大きい(例えば200,000g/molより大きい)ため、ゲルの中に水は浸透する
が、染料は浸透しない。この結果、染料濃度が増大し、これから膨潤率が測定される。有
用な染料の例は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で改変したデキストラ
ンである。本発明の架橋アミンポリマーの膨潤率はこれらの方法を含む当業者に公知の方
法によって測定される。
【0015】
本発明で用いられる糖類としては、マルトース又はトレハロースが挙げられる。また、
かかる糖類は1種又は2種を組合せて用いることができる。かかる糖類の配合量は、薬物
に対し、10〜100w/w%であり、好ましくは20〜70w/w%であり、更に好ま
しくは、40〜60w/w%である。
【0016】
本発明では、所望に応じて、他の結合剤を用いることが可能であり、例えば、水溶性高
分子が挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コポリビドンなどが挙げら
れる。その配合量は、錠剤重量に対して、5〜100w/w%であり、好ましくは10〜
30w/w%である。
【0017】
更に、本発明では、崩壊剤を配合することが可能であり、崩壊剤としては、例えば、カ
ルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース、クロスポビドンなどが挙げられる。その配合量は、錠剤重量に対して、5〜1
00w/w%であり、好ましくは10〜30w/w%である。
【0018】
上記、添加剤の他に、所望に応じて他の賦形剤を配合することも可能である。本発明に
用いられる他の賦形剤として、医薬的に許容される各種添加剤を配合することができる。
かかる添加剤としては、例えば、稀釈剤(増量剤)、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料
、滑沢剤、着色剤、安定化剤などが挙げられる。かかる添加剤は1種又は2種以上組合せ
て使用される。また、その配合量は、通常当業者が製薬的に使用する範囲内であれば特に
制限されない。
【0019】
本発明に用いられる希釈剤としては、例えば、微結晶セルロース、マンニトール、乳糖
などの糖類などを挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リ
ンゴ酸などが挙げられる。発泡剤としては、例えば、重曹などが挙げられる。人口甘味料
としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム
、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。香料では、例えば、レモン、レモンライム、
オレンジ、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネ
シウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タ
ルク、ステアリン酸などが挙げられる。着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤
色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、ベンガラなどが挙げられる。安
定化剤としては、薬物ごとに各種検討の上、選択される。これらの添加剤は、1種又は2
種以上組合せて、適宜適量添加することができる。
【0020】
本発明の錠剤が投与量の多い高リン酸血症治療剤等である場合は、服用する錠剤が多量
になることを避けるために、添加する担体の量は少ないことが望ましい。本発明において
、錠剤重量に対する架橋アミンポリマー以外の担体の総重量は、80%以下、好ましくは
70%以下、より好ましくは60%以下である。
【0021】
本発明の1つであるミニタブレット(小粒の錠剤)としては、10〜80mg/錠の錠
剤であり、好ましくは15〜60mg/錠、より好ましくは20〜50mg/錠、更に好
ましくは30〜40mg/錠の錠剤である。小粒であることから服用が容易であり、高リ
ン酸血症治療剤等の投与量の多い薬剤の投与に適する。十分な硬度を有する本発明のミニ
タブレットは、1回投与分をまとめて包装しても、割れたり欠けたりすることがない。本
発明は、当該ミニタブレットの1回投与分、少なくとも5個以上、好ましくは10個以上
を、それぞれを個別に包装することなく、纏めて1つに包装する製剤包装体をも包含する
。このような製剤包装体としては、例えば、ビニールやアルミシート等の袋状の包装体、
プラスチック製の筒状或いはボックス状の包装体、複数の錠剤を纏めて収納したPTP(
press through package)包装等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当
該包装体は、服用量の多い薬剤の1回分の錠剤を飲みやすく纏めて包装でき便利である。
また、架橋アミンポリマーは吸湿性を有することから、使用時まで錠剤を密閉できる点で
も有利である。
【0022】
以下、本発明の錠剤の製造法を説明する。
本発明の架橋アミンポリマー含有錠剤は、弾力性を有する架橋アミンポリマーを、マル
トース及び/又はトレハロースを用いて造粒し、次いで、打錠により成形することによっ
て製造することができる。各工程、特に製造条件等について以下に詳述する。
【0023】
工程(a):造粒工程
本発明において、架橋アミンポリマーがマルトース及び/又はトレハロースで造粒され
た形態をとるものであれば、その造粒方法は特に制限されない。かかる造粒方法としては
、例えば、溶融造粒法、噴霧乾燥法、流動層造粒、撹拌造粒法、又は転動造粒法などの各
種造粒法を用いることができる。例えば、溶融造粒法を用いる場合、架橋アミンポリマー
とマルトース及び/又はトレハロースをマルトース及び/又はトレハロースの融点以上に
加熱し、溶融させた後冷却し、更に粗砕し粒とする。また、例えば、攪拌造粒法を用いる
場合、架橋アミンポリマー、及び所望により賦形剤を攪拌造粒機中にて攪拌しながら、2
%〜60%W/W濃度のマルトース及び/又はトレハロースの溶液を噴霧または滴下させ
、造粒をすることができる。このとき、マルトース及び/又はトレハロースだけでなく、
所望により水溶性高分子など他の賦形剤も同時に用いることもできる。
上記は、造粒法の例示であり、種々の造粒法を選択することが可能である。
【0024】
工程(b):打錠工程
本発明において『打錠』は、自体公知の方法で行われるが、錠剤の形状を維持させるた
めの圧力で錠剤の形状とする方法であれば特に制限されない。工程(a)で製造した造粒
物に必要に応じ、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などを混合後、打錠する。かかる『打錠』は、
例えば、単発打錠機、ロータリー打錠機、外部滑沢打錠機等、通常の打錠機を用いて行う
ことができる。なお、ミニタブレットの場合は、それに適した打錠機の杵を使用すること
によって打錠することができる。
【0025】
また、本発明の架橋アミンポリマー含有錠剤は、弾力性を有する架橋アミンポリマーに
、マルトース及び/又はトレハロース溶液を含浸させ、乾燥若しくは造粒し、次いで打錠
により成形することによっても製造することができる。
架橋アミンポリマーをマルトース及び/又はトレハロース溶液中に浸す、或いはマルト
ース及び/又はトレハロースの溶液を噴霧または滴下させる等により、ポリマーに溶液を
含浸させた後、真空乾燥機等により乾燥し、所望により結合剤や他の賦形剤と共に、打錠
して成形することができる。或いは、マルトース及び/又はトレハロース溶液を含浸した
ポリマーを、乾燥後若しくはそのまま、所望により結合剤等と共に造粒し、次いで打錠し
て成形してもよい。マルトース及び/又はトレハロース溶液としては、2%〜60%W/
W濃度、或いは飽和溶液が好ましい。また、マルトース及び/又はトレハロース溶液に高
分子化合物等の他の賦形剤を添加して用いることもできる。
【0026】
本発明において、所望により錠剤にフィルムコーティングを施すことができる。そのコ
ーティング方法は特に制限されず、例えば、ドリアコータ(パウレック社製)やハイコー
タ(フロイント産業社製)等のコーティング機を用い、素錠にコーティング液を噴霧、乾
燥させフィルム層を形成させることにより製造することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する
ものではない。
【0028】
本実施例で使用した架橋アミンポリマーの製造例を以下に示す。本発明で用いる架橋ア
ミンポリマーは以下の製造例によって何ら限定されるものではない。
(架橋アミンポリマーの製造例)
N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブタン
(以下、tetramine-DABと略記する)由来の繰り返し単位を有する架橋アミンポリマーで
ある、N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブ
タンとエピクロロヒドリンのコポリマーは、不均一重合反応バッチ中でtetramine-DABと
エピクロロヒドリンを架橋することによって製造される。
【0029】
Tetramine-DAB(Sigma-Aldrich Cat. No. 460699、94.8g)を、1リットルの反応
容器に入れ、蒸留水(57.6g)を加え攪拌し、20℃まで冷却し、次いで、濃塩酸(
59.0g、37%)を加え30分間25±5℃を維持した。界面活性剤として分岐した
ドデシルベンセンスルホン酸ナトリウム塩(branched dodecylbenzene sulfonic acid so
dium salt、8.7gの30重量%水溶液として)及び蒸留水(6.1g)を加え、10
分間25±5℃で攪拌した(290rpm)。こうして得られたアミンストック溶液は、
tetramine-DAB 41.9重量%、HCl 9.7重量%、水47.3重量%及び表面活
性剤1.1重量%の重量%組成を有する。このアミンストック溶液にトルエン(282g
)を攪拌せずゆっくり加えた。この添加により二相層が観察された。アミンストック溶液
:トルエンの重量比は1:1.25である。反応物を攪拌(288−290rpm)する
と、反応槽の温度は1時間内に75℃に上げられ、トルエンの連続相中にアミンストック
溶液の懸濁液を形成した。これにエピクロロヒドリン(65.1g)を3〜4時間かけて
小さな実験ポンプでゆっくりと加えた。このとき、温度は75℃に維持された。エピクロ
ロヒドリン:tetramine-DABのモル比は2.35:1である。重合反応は攪拌(288−
290rpm)しながら、75℃で1時間行なわれ、次いで90℃に温度が上げられジー
ンスターク装置を用いて水を除去し、架橋アミンポリマーであるN,N,N’,N’−テ
トラキス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブタンとエピクロロヒドリンのコ
ポリマーを生成させた。反応混合物を50±5℃に冷却し、ガラスろ過器で吸引せずに濾
過し、トルエンで洗浄した(1x:500mL、50℃、3回に分けて)後、吸引により
軽く乾燥させ、水(480g)と濃塩酸(174.5g)で洗浄(3x:各2回に分けて
、最終的なpHが0〜1になるように)、蒸留水で洗浄(3x:各590mL、吸引無し
)、蒸留水(295g)、NaOH(63g、50%)及びメタノール(294g)で洗
浄(5x:吸引無し)、蒸留水で洗浄(5x:50℃、吸引無し、最終的なpHが7より
高くならないように)、及びメタノールで洗浄(200g)(3x:吸引無し)を行い、
吸引により乾燥させ、次に、箱型乾燥機の中で、60℃で最大の吸引下、重量に変化がな
くなるまで(18〜36時間)乾燥し、105〜120gのN,N,N’,N’−テトラ
キス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブタンとエピクロロヒドリンのコポリ
マーを得た。このコポリマーの膨潤率は2.5であり、粒子径範囲は40〜200マイク
ロメーターであった。
【0030】
《評価方法》
以下の各実施例では、錠剤硬度の評価を、シュロイニゲル(Schleuniger)錠剤硬度計
(シュロイニゲル社製)を用いて測定した。錠剤の硬度は、錠剤を砕くに要する力(単位
:N)で表され、数値が大きいほど錠剤は強い。
なお、医薬品として一般的に必要な硬度としては、錠剤の形状、大きさ、包装形態等、
種々の状況によって異なる。例えば、小さな錠剤では低い硬度で十分であり、一方、大き
な錠剤ではより高い硬度が必要とされる。例えば、以下の実施例で使用する直径12.0
mm、曲率12.0Rの杵を用いた重量500mgの錠剤の場合は、少なくとも40N、
好ましくは60N、より好ましくは80N以上の硬度が必要であり、硬度30Nに満たな
い場合は、医薬品の錠剤として強度不足である。
【0031】
《実施例1》
架橋アミンポリマー1000gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−05)に入れ、
トレハロース(旭化成製、トレハロースG)400gを精製水600gに溶かしたトレハ
ロース水溶液で造粒した後乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒品1400g
、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−SL)499.4g、低置換度
ヒロキシプロピルセルロース(信越化学製、L−HPC LH11)100g、ステアリ
ン酸マグネシウム(メルク社製)0.6gを混合した。その混合品をロータリー打錠機(
畑鐵工所製)で直径12.0mm、曲率12.0Rの杵を用い錠剤重量500mg、打錠
圧15kNで成形した。得られた錠剤の硬度は153Nであった。更にこの錠剤にオパド
ライII(カラコン社製)を35mgフィルムコートした。この時、錠剤の硬度は138N
であり、十分な強度を有していた。
【0032】
《実施例2》
架橋アミンポリマー500g、トレハロース(旭化成製、トレハロースG)400g、
エロジール(日本エアロジル、Aerosil200)4.5gを2軸エクストルーダー
(東洋精機製、ラボプラストミル型)に入れ、温度205℃〜215℃で加熱溶融した。
冷却後、コーミル(パウレック製)にて粗砕し、20Meshの篩で篩過した。この造粒
品904.5g、低置換度ヒロキシプロピルセルロース(信越化学製、L−HPC LH
11)28.56g、ステアリン酸マグネシウム(メルク社製)0.94gを混合した。
その混合品をロータリー打錠機(X20、畑鉄工所製)で長径14mm、短径7mmの杵
を用い錠剤重量467mg、打錠圧15kNで成形した。得られた錠剤の硬度は168N
であり、十分な強度を有していた。
【0033】
《実施例3》
架橋アミンポリマー5g、マルトース5g(林原商事製、SUNMALT)を物理混合
した後、マントルヒータにて、温度200℃で加熱溶融した。冷却後、乳鉢粉砕し、20
Meshの篩で篩過した。この混合物をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0m
m、曲率12.0Rの杵を用い錠剤重量500mg、打錠圧15kNで成形した。得られ
た錠剤の硬度は268Nであり、十分な強度を有していた。
【0034】
《実施例4》
架橋アミンポリマー1000gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−05)に入れ、
トレハロース(旭化成製、トレハロースG)400gを精製水600gに溶かしたトレハ
ロース水溶液で造粒した後乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒品3.5g、
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−SL)1.249g、各種崩壊剤
[コリドンCL(BASFジャパン製)、Ac−Di−Sol(旭化成製)、Primo
jel(DMV製)、部分アルファー化デンプン(旭化成製、PCS)、又はカルメロー
スカルシウム(五徳薬品製、ECG−505)]0.25g、ステアリン酸マグネシウム
(メルク社製)0.0015gを混合した。この混合物をオートグラフ(島津製作所製)
で直径12.0mm、曲率12.0Rの杵を用い錠剤重量500mg、打錠圧15kNで
成形した。得られた錠剤の硬度は以下の表の通りであり、いずれも十分な強度を有してい
た。
【0035】
【表1】

【0036】
《実施例5》
架橋アミンポリマー300gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−01)に入れ、ト
レハロース(旭化成製、トレハロースG)180gを精製水450gに溶かしたトレハロ
ース水溶液で造粒した後乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒物400mg、
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−SL)100mgを混合した。こ
の混合物をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0Rの杵を用
い錠剤重量500mg、打錠圧15kNで成形した。得られた錠剤の硬度は106Nであ
った。
【0037】
《実施例6》
架橋アミンポリマー1000gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−05)に入れ、
トレハロース(旭化成製、トレハロースG)400を精製水600gに溶かしたトレハロ
ース水溶液で造粒した後乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒物をオートグラ
フ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0Rの杵を用い錠剤重量500mg
、打錠圧15kNで成形した。得られた錠剤の硬度は40Nであった。
【0038】
《実施例7》
架橋アミンポリマー300gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−01)に入れ、ト
レハロース(旭化成製、トレハロースG)180gを精製水450gに溶かしたトレハロ
ース水溶液で造粒した後乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒物400mg、
低置換度ヒロキシプロピルセルロース(信越化学製、L−HPC LH11)25mg、
コポリビドン(BASFジャパン製、コリドンVA64)125mgを混合した。この混
合物をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0Rの杵を用い錠
剤重量500mg、打錠圧15kNで成形した。得られた錠剤の硬度は182Nであった

【0039】
《実施例8》
リン酸結合性ポリマー250gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−01)に入れ、
トレハロース(旭化成製、トレハロースG)100gを精製水150gに溶かしたトレハ
ロース溶液で造粒した後、乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒品35g、ヒ
ドロキシプロピルセルロース(日本曹達、HPC−SL)12.49g、ステアリン酸マ
グネシウム(メルク社製)0.015gに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越
化学、L−HPC LH11)をそれぞれ2.5g、5g、7.5g加え、それぞれ混合
した。
それぞれの混合物をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0
Rの杵を用いリン酸結合性ポリマー重量が250mgとなるように秤取し、打錠圧15k
Nで成形した。得られた錠剤の硬度はそれぞれ、131N(L−HPC LH11量2.
5g)、133N(L−HPC LH11量5g)、134N(L−HPC LH11量
7.5g)であり、崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量にかか
わらず十分な強度を有していた。
【0040】
《実施例9》
リン酸結合性ポリマー250gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−01)に入れ、
トレハロース(旭化成製、トレハロースG)100gを精製水150gに溶かしたトレハ
ロース溶液で造粒した後、乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒品35g、低
置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学、L−HPC LH11)を2.5g、
ステアリン酸マグネシウム(メルク社製)0.015gにヒドロキシプロピルセルロース
(日本曹達、HPC−SL)をそれぞれ、7.5g、12.5g、17.5g加え、それ
ぞれ混合した。
それぞれの混合物をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0
Rの杵を用いリン酸結合性ポリマー重量が250mgとなるように秤取し、打錠圧15k
Nで成形した。得られた錠剤の硬度はそれぞれ、80N(HPC−SL量7.5g)、1
31N(HPC−SL量12.5g)、179N(HPC−SL量17.5g)であり、
いずれにおいても十分な強度を有する錠剤が得られた。
【0041】
《実施例10》
リン酸結合性ポリマー250gを攪拌造粒機(パウレック社製、VG−01)に入れ、
トレハロース(旭化成製、トレハロースG)100gを精製水150gに溶かしたトレハ
ロース溶液で造粒した後、乾燥し、20Meshの篩で篩過した。この造粒品350g、
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達、HPC−SL)124.9g、低置換度ヒド
ロキシプロピルセルロース(信越化学、L−HPC LH11)25g、ステアリン酸マ
グネシウム(メルク社製)0.15gを混合した。
その混合品をオートグラフ(島津製作所製)で、直径4mm、曲率4Rの杵を用い、錠
剤重量30mg、打錠圧4kNで打錠しミニタブレットを製造した。更にこのミニタブレ
ットにオパドライII(カラコン社製)を2mgフィルムコートした。得られたミニタブレ
ットの硬度は46Nであった。これは取り扱いに十分な強度を有していた。
【0042】
《実施例11》
架橋アミンポリマー100gに対して各種添加剤を100g(架橋アミンポリマーに対
して100重量%)の割合で添加し混合した。この混合物を2軸エクストルーダー(東洋
精機製、ラボプラストミル型)に入れ加熱溶融した。冷却後、乳鉢で粉砕した。この造粒
品をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0Rの杵を用い錠剤
重量500mg、打錠圧15kNで成形した。各錠剤の硬度は以下の通りであった。本発
明の錠剤、すなわち、トレハロース若しくはマルトースを添加した場合は、錠剤は十分な
強度を有していたが、比較として添加した他の添加物の場合は、錠剤化できなかったり、
十分な強度を有する錠剤が得られなかった。
【0043】
【表2】

【0044】
《実施例12》
架橋アミンポリマー10gを、各種糖類の飽和溶液に投入し、しばらく静置した。静置
後、真空乾燥機にて乾燥し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC−L)
を乾燥上がり品に対して20重量%添加し、オートグラフ(島津製作所製)で直径12.
0mm、曲率12.0Rの杵を用い錠剤重量500mg、打錠圧15kNで成形した。各
錠剤の硬度は以下の通りであった。本発明の錠剤、すなわち、トレハロース若しくはマル
トースを添加した場合は、錠剤は十分な強度を有していたが、他の糖で製造した場合は、
十分な強度を有する錠剤が得られなかった。
【0045】
【表3】

【0046】
《比較例1》
攪拌造粒を用いた一般的な製造法による錠剤化検討として、架橋アミンポリマー5g、
D−マンニトール2.7g(東和化成製、マンニットP)、結晶セルロース(旭化成製、
セオラスPH101)1g、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol、旭化
成製)1gをコーヒーミルに入れ、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC
−L)3gを精製水7gに溶かしたHPC−L水溶液3gで造粒した後乾燥し、20Me
shの篩で篩過した。この造粒物をオートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、
曲率12.0Rの杵を用い錠剤重量500mg、打錠圧15kNで成形した。得られた錠
剤の硬度は0Nであり、通常の処方・製造方法では錠剤化できないことが認められた。
【0047】
《比較例2》
架橋アミンポリマー250mgに対して添加剤として、D−マンニトール(東和化成製
、マンニットP)、乳糖(DMVジャパン製、乳糖200M)、結晶セルロース(旭化成
製、セオラスPH101)、低置換度ヒロキシプロピルセルロース(信越化学製、L−H
PC LH11)のいずれかを250mg(架橋アミンポリマーに対して100重量%)
の割合で添加し、オートグラフ(島津製作所製)で直径12.0mm、曲率12.0Rの
杵を用い錠剤重量500mg、打錠圧15kNで成形した。得られた錠剤の硬度は以下の
ようになり、錠剤化できなかったり、十分な強度を有する錠剤を得ることはできなかった

【0048】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、医薬製剤の用途に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性を有する架橋アミンポリマーと、マルトース及び/又はトレハロースとを含む錠
剤。
【請求項2】
架橋アミンポリマーが、膨潤率が5未満であるリン酸イオン結合性ポリマーである、請
求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
架橋アミンポリマーが、下記一般式(I)で示されるアミンモノマーを100mol%
〜400mol%のエピクロロヒドリンで架橋した架橋アミンポリマーである、請求項2
に記載の錠剤。
【化1】

(式中、nは3、4、又は5である)
【請求項4】
架橋アミンポリマーが、N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピル)−
1,4−ジアミノブタンを200mol%〜300mol%のエピクロロヒドリンで架橋
したポリマーである、請求項3記載の錠剤。
【請求項5】
架橋アミンポリマーに対して、マルトース及び/又はトレハロースを10〜100w/
w%含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項6】
架橋アミンポリマーに対して、マルトース及び/又はトレハロースを20〜70w/w
%含有する、請求項5記載の錠剤。
【請求項7】
更に錠剤重量に対して10〜30w/w%の結合剤を含有する、請求項5記載の錠剤。
【請求項8】
架橋アミンポリマーと、架橋アミンポリマーに対して10〜100w/w%のトレハロ
ースを造粒し、次いで錠剤重量に対して10〜30w/w%の結合剤を加えて、錠剤に成
形されたものである、請求項7記載の錠剤。
【請求項9】
更に製薬的に許容される賦形剤を含有する、請求項8記載の錠剤。
【請求項10】
更にフィルムコーティングを施されてなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項11】
1錠の重量が10〜80mgである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項12】
錠剤が高リン酸血症治療剤である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項13】
請求項11に記載の錠剤を、1回投与分として少なくとも5個を一括して包装すること
を特徴とする製剤包装体。
【請求項14】
弾力性を有する架橋アミンポリマーを、マルトース及び/又はトレハロースを用いて造
粒し、次いで、打錠により成形することを特徴とする、架橋アミンポリマー含有錠剤の製
造方法。
【請求項15】
弾力性を有する架橋アミンポリマーに、マルトース及び/又はトレハロース溶液を含浸
させ、乾燥若しくは造粒し、次いで打錠により成形することを特徴とする、架橋アミンポ
リマー含有錠剤の製造方法。
【請求項16】
架橋アミンポリマーが、一般式(I)
【化2】

(式中、nは3、4、又は5である)
で示されるアミンモノマーを100mol%〜400mol%のエピクロロヒドリンで架
橋した架橋アミンポリマーである請求項14若しくは15記載の製造方法。
【請求項17】
架橋アミンポリマーが、N,N,N’,N’−テトラキス−(3−アミノプロピル)−
1,4−ジアミノブタンを200mol%〜300mol%のエピクロロヒドリンで架橋
したポリマーであり、その平均粒子径が40〜200マイクロメーターである、請求項1
6記載の製造方法。
【請求項18】
架橋アミンポリマーに対して10〜100w/w%のマルトース及び/又はトレハロー
スを用いるものである、請求項14〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
架橋アミンポリマーに対して20〜70w/w%のトレハロースを用いて造粒し、錠剤
重量に対して10〜30w/w%の結合剤を加えて打錠することを特徴とする、請求項1
8記載の製造方法。
【請求項20】
1錠の重量が10〜80mgとなるように打錠することを特徴とする、請求項14〜1
9のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−132700(P2009−132700A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285323(P2008−285323)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】