説明

半固形状洗浄剤

【課題】 固形状、液体洗浄剤の中間的なものとしてジェル状洗浄剤があるが、その物性強度は小さく、反復使用に適さず、使用者からはもの足らなさが指摘されてきた。その欠点を克服して洗浄剤の市場に新たな切り口で参入しうる半固形状洗浄剤を開発する。
【解決手段】 洗浄剤の固形部の物性を強固にするため、固形部保持に有効な多糖類の組み合わせを種々検討した結果、コンニャクマンナンとカラギーナン、コンニャクマンナンとキサンタンガムの組み合わせが有効であることを確認した。これらにより固形部を構成する洗浄剤は市販のジェル状洗浄剤よりも著しく大きい「破断強度」、「引張り強度」をもち「半固形状洗浄剤」と呼びうるものであった。また、その配合比率、量を変えることにより物性を自在に調整することが可能で、他の液体洗浄剤を原料として用いることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形保持に係わる素材としてコンニャクマンナン、カラギーナン、キサンタンガムなどを含む多糖類の混合物を用いる洗浄剤で、従来のジェル状洗浄剤に共通した欠点、つまり物性面での脆弱性を克服した点を特色とする洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体の洗浄、衛生度の向上・保持の目的のため使用される洗浄剤には、古くは米ぬかなどが、その後油脂をアルカリにより凝固、つまりケン化せしめて得た固形石けんや液体洗浄剤などが広く用いられてきた。一方、それらの中間的物性、すなわちジェル状態にある洗浄剤も、未だ市場規模は小さいものの、一部において固定的な消費層を確保し、洗浄剤市場の一分野を占めるに至っている。
【0003】
ジェル状洗浄剤は単に身体の洗浄のみならず、独特の触感を楽しむという目的のため設計されたものである。しかし、ジェル状洗浄剤の市場は洗浄剤全体の中ではまだ微々たるものにとどまっている。その主たる理由は、ジェルの強度つまり物性が弱く、反復使用に耐えないこと、そのため1回限りの使い捨てになることがある。つまり、ジェル状洗浄剤に見られる欠点すなわち改善すべき点はその物性にある。
以下でここで用いる物性に関する用語についての解説及び定義付けを行う。
【0004】
まず、用語「ジェル」について説明する。通常、流動性があり粘性をもった物質を「ゾル」と称し、それを何らかの方法において固まらせたものを「ゲル」と称する。ゲルとは一般的には、靜置した場合に流動せず形を保つものを指す。ゲルとジェルとの区別は必ずしも明確ではないが、洗浄剤等の分野では、食品であるゼリーと類似した物性の洗浄剤を意味するものであり、ほぼ同じと解釈しうる。ここでは、以後この市場で広く認知され使用されている用語「ジェル」を使用する。
【0005】
また、「半固形状」なる用語は、以下で詳述するように、物性の強度に関する指標が、対照とするジェルのそれが小さいのに対して、著しく大きく両者の物性面から見た性質の差異を区別するために用いるものとする。なお区別の根拠となる指標は次に説明する「破断強度」および「引張り強度」である。物性に関する指標が「半固形状」と称するに足る強度をもった洗浄剤を「半固形状洗浄剤」とし、それに達しないものを「ジェル状洗浄剤」とする。
【0006】
物性の強度に係わる用語について説明する。用語の一つ「破断強度」とは一定形状(ここでは径30mm、高さ25mmの円柱形)に成型したジェル状洗浄剤および試作した半固形状洗浄剤に対して、一定形状(この場合は径20mmの円盤状)のプランジャーを用いて垂直方向に負荷し、対象が破壊されるまでに示した抵抗の最高値をグラム単位で表記したものである。
【0007】
物性に関する用語の二の「引張り強度」とは、一定形状(ここではリング状)に型抜きした試料の開口部に2本のL字型プランジャーを差し込み、試料を上下方向に引っ張り、試料が切れるまでに示した抵抗の最高値をグラムで示したものである。型抜きは厚さ5mmの平板状に成型した各種試料に特製のリング状型抜き器を押し込み、くり抜く方法をとった。
【0008】
そもそも、ジェル状洗浄剤は、固形石けんとは違った特性を持つのは当然であるが、洗浄剤である以上、両掌に挟んで揉まれたり、掴まれて身体にこすりつけられたりするものであり、そうした使用に耐えるものでなければならない。つまり、ジェル状洗浄剤には前記0006欄および0007欄で定義した「破断強度」と「引張り強度」とを高いレベルで併せ持つことが基本的に求められているものである。
【0009】
なお、市販のジェル状洗浄剤の内容成分は、洗浄に有効なラウレス硫酸ナトリウムなどの各種化学物質、香料、品質保持のためのアルコールなどが主体で、固形部を構成するものとして多糖類であるキサンタンガムあるいはカラギーナンがそれぞれ単独で用いられている。ここで開発した半固形状洗浄剤も、固形部を保持する以外の部分においては市販のものと変わるものではない。

【非特許文献1】手作り石けん&コスメティーク:山口美帆他著(宝島社刊)
【非特許文献2】手作り石けんと化粧品:山本美子著(ブティック社刊)
【特許文献1】特開2006−298916
【特許文献2】特開平8−310942
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ジェル状洗浄剤は、固形石けん、液体洗浄剤の中間的な物性であるが、高い芳香や独特の触感による、新規性などを特色として一部に固定的な愛好層を得て、この分野に一つのジャンルとして認知されるに足る位置を占めてきているのは前述したとおりである。
【0011】
しかしながら、それらの物性は非常に脆弱であり、崩れやすい、壊れやすいとの不満を使用者に抱かせるものであった。また、0008欄で示したようなこうした製品が本来具備すべき基本的な性質を満たさないものであった。
【0012】
その原因としては、それらの固形部分保持に係わる素材の選定および組み合わせに難があったためであり、その欠点を克服すればさらにこの分野での発展を可能にし、市場の拡大も期待できるものである。
【0013】
その点、つまりジェルの物性を強固に改良することが使用者側からは強く求められてきたものであり、製造者側には最大の課題として荷されてきたものである。換言すれば、この点の解決がこのタイプの洗浄剤の市場拡大にとってカギとなるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決する手段として、本発明は、固形部の強度を高めること、すなわち使用時における耐久性を高めること、具体的には「破断強度」および「引張り強度」を高めることを目的とした。そのため、これまで一般にはゼリーなどの生菓子類の製造に用いられてきた多糖類であるキサンタンガム、カラギーナン、粉末寒天、コンニャクマンナンなどから2種類以上組み合わせる方法を開発した。
【0015】
多糖類は、2種類以上のものを使用するが、そのうち1種はコンニャクマンナンであることを必要とし、他方のうち1種はカラギーナンあるいはキサンタンガムであることを必要とする。また、コンニャクマンナンとカラギーナン、あるいはキサンタンガムとの使用量、使用比率等によって「破断強度」、「引張り強度」を自在に調整することが可能であり、さらに必要に応じて別の多糖類を加えて調整することもできる。
【0016】
これらの混合物を加熱溶解せしめ、冷却することによって目的とする物性の組織化物を得ることができ、それらは、触感として、弾力が強くしっかりしたもの、軟らかく伸びのあるものなどを自在に調製できる。それらの物性値は多種多様であるが、基本的に「切れにくい」「ちぎれにくい」という性質を特徴的にもっており、この点が既存のジェルとの決定的な差異となっている。そのため、ここで発明した方法によるものを「半固形状洗浄剤」とし、市販のジェル状洗浄剤と区別するものである。
【0017】
なお、これら多糖類から構成される部分が半固形状洗浄剤の固形保持に係わるものであり、これに洗浄に効果を持つラウレス硫酸ナトリウムなどの各種化学物質、香料などを配合して最終製品としての半固形状洗浄剤を形成するものである。また、市販の液体洗浄剤を原料にしてこの方法により半固形状洗浄剤を得ることも可能である。いずれの方法によっても、使用時には洗浄に効果を持つ成分がその表面から溶け出して皮膚等の洗浄に作用する。一方、固形部は物性が強固であるため反復使用に耐えることができる。
【発明の効果】
【0018】
ここで発明した方法によれば、固形状、液体状の中間的物性で、既存のジェル状洗浄剤とも異なる、反復使用に耐えうる強度をもった半固形状洗浄剤を調製することができる。そのため、既存製品の欠点を克服したものとして、既存製品の代替品というよりも新規な製品として既存のジェル状洗浄剤に飽き足らなかった層を吸収し、その市場を引き継ぐことができる。
【0019】
ジェル状洗浄剤などの製品は、主として常に新規なものを追求する世代、すなわち若年層を対象としたものであり、潜在的市場は大きい。また、これまでは合成香料などで強い芳香を賦与した製品が主であったが、コンニャクマンナンつまり「こんにゃく」を強調し、香料等も天然の素材、地域性のある素材、話題性のある素材などに特化し、製品自体を地域に特徴的なものとして提供することも可能である。それにより、観光まで視野に入れた地域産業の活性化に寄与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の基本的実施形態について説明する。本発明は、基本的に複数の多糖類の組み合わせからできる組織で固形部を形成せしめ、これに合成界面活性剤であるラウレス硫酸ナトリウムなどの洗浄剤成分を均質に混合・分散させて得た半固形状洗浄剤とそれを製造する方法とから成る。
【0021】
以下に、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。しかしながら本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
本発明の効果を明瞭にするために、市販のジェル状洗浄剤2種(A,Bとする)の物性を対照とし、それにここで開発した方法により調製した半固形状洗浄剤の試作品の物性とを一つの表にまとめて示した。対照品2種の「破断強度」はそれぞれ53g,32gで、試作品の約1/20、1/35の数値であった。また、「引張り強度」については、市販のジェル状洗浄剤は形状を保てず、測定できない程度であったのに対し、試作品は47gという強度を示した。これにより、本発明による物性面での改善効果が明らかになり、既存のジェル状洗浄剤の物性改善にも効果があることが示された。
【0023】
【表1】

【実施例2】
【0024】
コンニャクマンナンと他の多糖類との使用量と物性との関係を明らかにするため、コンニャクマンナンとカラギーナンのそれぞれを等量ずつからなるゲル状試料を調製し、物性を測定した。なお、ここでは水100mlに対し、それぞれの多糖類を0.2、0.3、0.4、0.5gずつ用い4種類の試料を調製した。結果は表2に示したように、それぞれの使用量が多いほど「破断強度」、「引張り強度」とも大きくなり、触感としては、かたく、強固になり圧縮や捻りに対しても耐性が強くなることが示された。
【0025】
【表2】

【実施例3】
【0026】
コンニャクマンナンと他の多糖類(この場合、カラギーナンを用いた)を用い、実施例1に示したと同様の方法で市販の液体洗浄剤3種(C,D,Eとする)からの半固形状洗浄剤の調製を試みた。その結果、表3に示すように、いずれもある程度の破断強度を示し、半固形状になるものの、試料D,Eでは引張り強度を測定することができなかった。これは、コンニャクマンナン・カラギーナンからなる固形部と洗浄剤成分との均質化が十分ではなく、固形部のみが洗浄剤成分と分離し沈降する傾向が見られ、部分的に強固なゲルを形成したためであった。また、試料Fの破断強度は表1に示した対照品(試料A、B)のそれと大差のない数値であった。
【0027】
【表3】

【実施例4】
【0028】
そこで、実施例3の試料にさらにもう1種の多糖類(この場合は粉末寒天)を加え、同様の方法で調製し物性を測定したところ、表4に示したように試料D,Eでは「破断強度」、「引張り強度」ともに上昇し、試料Cでも「引張り強度」が大きくなった。これは、添加した粉末寒天がコンニャクマンナン・カラギーナンからなる多糖類の混合部分が洗浄剤成分と分離して沈降するのを防いだためである。この実施例および実施例3から、ここで発明した方法によれば市販の液体洗浄剤から目的とする物性の半固形状洗浄剤が得られることが示された。
【0029】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の産業上の価値としては、浴用剤、薬用化粧品の分野において、従来のジェル状洗浄剤とも異なる新規な製品を提供することにある。また、様々な物性のものを調製することが可能であり、洗浄剤の選択により特色ある製品を製造することができる。また、市販の液体洗浄剤およびジェル状洗浄剤の物性を簡便な手法で強化させることもできる。したがって、その応用される範囲は広く、利用される可能性は高い。
【0031】
また、固形部保持のため用いる多糖類のうち1種はコンニャクマンナンであることを必要とするが、コンニャクマンナンは食品用の素材であるこんにゃく粉として流通しており入手は容易である。これまで食品目的にしか利用されていなかったこんにゃく粉に新たな用途を開くことにより、この分野の産業を活性化する意義もある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形保持に係わる素材部分を2種類以上の多糖類の混合物により構成する半固形状洗浄剤。
【請求項2】
多糖類のうち1種がコンニャクマンナンであり、少なくとも他の1種がカラギーナンあるいはキサンタンガムのうちのいずれかであることを特徴とする半固形状洗浄剤。
【請求項3】
前記多糖類を0.2%〜1.0%含有することを特徴とする請求項1また2のいずれか1項に記載の半固形状洗浄剤およびその製造方法。
【請求項4】
液体洗浄剤と固形保持に係わる素材部分を2種類以上の多糖類の混合物により構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半固形状洗浄剤およびその製造方法。

【公開番号】特開2010−43147(P2010−43147A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206587(P2008−206587)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(591032703)群馬県 (144)
【Fターム(参考)】