説明

半導体の固定方法、半導体モジュール、それに用いるシート

【課題】LED等の半導体を搭載した回路基板から熱を効率よく放熱でき、長期に渡り信頼性高く半導体を稼動できる半導体モジュールを提供する。
【解決手段】
筐体上に、半導体を搭載した回路基板を、両面に粘着層または接着層を有するシートを介して設けてなる半導体モジュールであって、前記シートの大きさが、筐体と回路基板とが相対する面よりも小さなことを特徴とする半導体モジュールであり、好ましくは、粘着層または接着層を有するシートが、無機充填剤を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものであることを特徴とする前記の半導体モジュールであり、更に好ましくは、半導体がLEDであることを特徴とする前記の半導体モジュールである

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)等の半導体の固定方法、半導体モジュール並びにそれに用いるシートに関する。詳しくは、回路基板(例えば、金属基板、ガラスエポキシ基板等)に搭載された発光ダイオード(以下、単に「LED」と記す)から発生する熱を効率よく放出できるモジュールの構造に関わり、放熱性、絶縁性、信頼性に優れたLEDをはじめとする半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、 薄型テレビ、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ等の電子機器は高性能化が著しく、ますます小さい搭載面積下に多数の発熱性電子部品が高密度に組み込まれるようになってきている。それに伴い、放熱対策は益々重要となっており、用いられる放熱部材には低熱抵抗化、高性能化、高機能化の要求が高まっている。
【0003】
その中で、LEDを光源に使用したLED光源ユニットがいろいろな分野で用いられてきているが、例えば、液晶表示装置のバックライトの光源においてはCFL(冷陰極管)といわれる小型の蛍光管を使用されることが一般的であった。
【0004】
前記CFL(冷陰極管)の光源は、放電管の中にHg(水銀)を封入していて、放電により励起された水銀から放出される紫外線がCFL(冷陰極管)の管壁の蛍光体にあたり可視光に変換される構造が採用されている。このため、最近は環境面の配慮から、有害な水銀の使用していない代替光源の使用が求められている。
【0005】
新たな光源として、LEDを使用したものが提案されているが、LEDは光に指向性があり、特にフレキシブル回路基板等への面実装タイプでは一方向に光りが取り出されるため、従来のCFL(冷陰極管)を用いた構造とは異なり、光のロスも少ないことから面状光源方式のバックライト光源に使用されている。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−293925号公報
【0006】
LEDを光源としたバックライトは、低価格化と発光効率向上および環境規制に伴い、液晶表示装置のバックライトとして普及し始めている。同時に液晶表示装置の高輝度化および表示領域の大型化に伴い、発光量を向上させるためLEDのフレキシブル基板等への搭載数増加と大出力化がますます進んでいる。
【0007】
しかしながら、LEDの光源は発光効率が低いため、LEDが発光する際に入力電力の大半が熱として放出される。LEDは電流を流すと熱を発生し、発生した熱によって高温となり、この程度が著しいとLEDが破壊されてしまう。LEDを光源としたバックライトにおいても、この発生熱がLEDとそれを実装した基板とに蓄熱され、LEDの温度上昇に伴い、LED自身の発光効率の低下を招く。しかも、バックライトを明るくするために、LEDの実装数を増加させたり入力電力を増加させると、その発熱量が増大することから、一層、この熱を除去することが重要である。
【0008】
LED実装基板の蓄熱を低減し、LEDチップの温度上昇を小さくするために、LED実装基板のLEDチップ実装面にLEDチップが実装される実装金属膜と、LEDチップに駆動電流を供給する金属駆動配線と、放熱を目的とした金属膜パターンが形成され、LEDチップ実装面と対向する面に放熱様金属膜が形成され、LEDチップ実装基板の厚み方向に、一方主面側の金属パターンと他方主面側の放熱用金属膜とを接続する金属スルーホールを形成して、LEDからの発熱を金属スルーホールより裏面の金属膜に放熱することが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2005−283852号公報
【0009】
この金属スルーホールを備えた基板の放熱は、スルーホールより電流がリークするため、絶縁性を確保した、無機充填剤を含有するシリコーン系樹脂からなる電気絶縁性シート(以下、「放熱シート」という。)を使用しないと放熱モジュール自身の絶縁性が確保できない問題があった。また、従来の産業用電源等に用いる放熱シートの場合は、TO−3P等の小型トランジスタ形状がほとんどであり、筐体に貼り付ける場合、1箇所から2箇所のネジ止めで固定することが可能であったが、液晶テレビ等の大面積基板を放熱させたい場合など、ネジ止め箇所が多すぎる場合、実生産には向かない問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術の状況に鑑み、本発明の目的は、回路配線基板(例えば、金属基板、ガラスエポキシ基板等)に搭載されたLED等の半導体から発生する熱を効率よく放出するのに用いられるモジュールであり、放熱性、絶縁性、信頼性に優れた半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目標を達成するため鋭意検討を重ねた結果、LED等の半導体を搭載した回路基板と筐体とを両面に接着性または粘着性を持った電気絶縁性のシートで接着する構造を採用することによって、優れた放熱性、絶縁性、信頼性を有する半導体モジュールが提供できることを見いだし本発明に到達した。
【0012】
本発明は、半導体を搭載した回路基板を筐体に固定する半導体の固定方法であって、回路基板と筐体とを両面に粘着層または接着層を有するシートを用いて固定し、しかも前記シートの大きさが回路基板と筐体とが相対する面よりも小さいことを特徴とする半導体の固定方法であり、シートの大きさが、回路基板と筐体とが相対する面の外周よりも0.01〜5mm小さいことを特徴とする前記の半導体の固定方法であり、好ましくは、半導体がLEDであり、回路基板がライトソース基板であることを特徴とする前記の半導体の固定方法である。
【0013】
本発明は、筐体上に、半導体を搭載した回路基板を、両面に粘着層または接着層を有するシートを介して設けてなる半導体モジュールであって、前記シートの大きさが、筐体と回路基板とが相対する面よりも小さなことを特徴とする半導体モジュールであり、粘着層または接着層を有するシートが、無機充填剤を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものであることを特徴とする半導体モジュールであり、好ましくは、半導体がLEDであることを特徴とする前記の半導体モジュールである。
【0014】
本発明は、前記の半導体モジュールに用いる両面に粘着層または接着層を有するシートであって、無機充填剤を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものであることを特徴とするシートであり、好ましくは、シートの熱伝導率が1W/mK以上であり、絶縁破壊電圧が1kV以上であることを特徴とする前記のシートであり、さらに好ましくは、シートが、UL94規格のVTM−2以上の難燃性を有することを特徴とする前記のシートである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体の固定方法によれば、半導体で発生する熱が回路基板、さらにシートを通じて、筐体に放散されるが、シートが両面に接着層または粘着層を有しているので、回路基板から筐体への熱移動がスムーズに行うことができるという効果が得られる。更に、シートの大きさが回路基板と筐体とが相対する面よりも小さいので、長期に渡って半導体が使用されても、粘着層や接着層が筐体と回路基板との相対する面からあふれ出て、その部分でショート等の電気的な不都合を生じることがなく、半導体を長期に渡り信頼性高く稼動させることができる。
【0016】
本発明の半導体モジュールは、前記したとおりに、その構造ゆえに熱放散性に優れ、長期の電気絶縁性にも優れるので、半導体を信頼性高く稼動させることができるという効果が得られる。
【0017】
本発明のシートは、優れた電気絶縁性と高い熱伝導性を有し、しかも両面に粘着層または接着層を有しているので、前記特定構造の半導体モジュールを容易に提供して、信頼性高く半導体を稼動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、シートが両面に接着層または粘着層を有していること、更に、シートの大きさが回路基板と筐体とが相対する面よりも小さいことが本質的である。前者により、半導体で発生する熱をスムーズに筐体に放熱し半導体の温度が過度に高くならないことで半導体の信頼性を高めるが、それのみでは十分でない。本発明者の検討によれば、粘着層または接着層を有するシートを半導体等の部材の固定に使用するとき長期間を経ると粘着層または接着層の一部が変形、移動して部材間よりはみ出ることがあり、そのはみ出た部分で埃が付着し、その埃が吸水し、ショート等の電気的異常が発生することがある。本発明は、当該課題についても解決し、半導体の長期に渡る稼動について一層信頼性高くするものである。
【0019】
前記シートの大きさについては、回路基板と筐体とが相対する面の外周よりも小さければ本発明の目的を達成し得るが、外周部を基準として、0.01〜5mm小さいサイズとすることが好ましい。つまり、0.01mm以上あれば部材間に粘着層または接着層の成分がはみ出すこともないし、5mm以下で熱伝導のための面積が不足してモジュールの放熱特性を低下することもない。また、本発明において、半導体がLEDであり、回路基板がライトソース基板であることが好ましい。
【0020】
本発明の半導体モジュールは、前記説明とおりに、特定の構造を有しているので、その故に長期に渡り半導体が信頼性高く稼動する特徴を有している。
【0021】
本発明の半導体モジュールでは、粘着層または接着層を有するシートとして、後述するとおりに、無機充填剤を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものであることが好ましい。当該シートの使用により半導体が一層長期に渡って稼動することができるという信頼性を高めることができる。また、半導体としてLEDが好ましい。
【0022】
以下、前記の半導体の固定方法、半導体モジュールに用いられるシートについて詳述する。
【0023】
本発明において、両面に粘着層または接着層を有するシートとしては、両面に粘着層または接着層を有するシートであって、無機充填材を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものが好ましく選択される。
【0024】
放熱シートの絶縁性は1kV以上の絶縁破壊電圧が好ましい。回路基板で絶縁性を確保できない金属スルーホールを形成したFR−4基板などは特に放熱シートで絶縁性を確保する必要がある。放熱シートの絶縁性について上限値を定める技術上の理由はないものの、入手できる放熱シートの絶縁破壊電圧は10kV程度までである。
【0025】
放熱シートの熱伝導率は、1W/mK以上が好ましい。熱伝導率が1W/mK以上であれば、放熱性が十分で電子部品に悪影響を与えることが避けられる。特にLEDを実装した回路基板の場合に1W/mK以上であれば、発生した熱によってLEDが高温となり、破壊されてしまうこともなく好ましい。また、熱伝導率の上限値に関しては、制限はないものの入手できる放熱シートの最高値は16W/mK程度である。
【0026】
放熱シートの充填材としては、ボロンナイトライド、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などの絶縁セラミックスフィラーを使用することが出来る。放熱シートとした場合の熱伝導率が1W/mK以上になるように充填量を調整することが好ましい。また、前記充填材とともにガラスクロスを併用することが好ましい。LED等の半導体を実装した回路基板と放熱フィンや筐体の間に貼り付けて装着する事が可能であり、ネジ止めを無くす事や、基板の左右2箇所等とするなど極力ネジ止め本数を少なくすることが可能である。LED等の半導体を搭載した回路基板を確実に筐体へ接着することが可能であり、局所的な剥離による密着不具合がおこらず、安定した放熱性、長期信頼性を達成できる。
【0027】
放熱シートの両面に設ける接着層または粘着層は、回路基板との接合力、筐体との接合力、更に、モジュールを組み立てる際の変形能、硬化後の熱伝導性等を考慮して選択されるが、本発明者の検討によれば、アクリル系樹脂からなることが好ましい。
【0028】
接着層または粘着層の厚みについては、前記特性を考慮して定めればよいが、アクリル系樹脂等を採用する際には、更に耐熱性をも考慮する必要がある。本発明者の検討によれば、アクリル系樹脂からなる接着層または粘着層の厚みとしては、10〜50μmが好ましい。10μm以上であればモジュールの放熱性が確保できるし、50μm以下で難燃性が低下することもない。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、シートはUL94規格のVTM−2以上の難燃性を有する。従い、電子機器等に装着する場合に問題なく使用でき、ワールドワイドに難燃部材として使用可能である。
【実施例】
【0030】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
市販の放熱シート(電気化学工業社製「BFG20」、以下「BFG」と略す、熱伝導率4.1W/mK)及び(電気化学工業社製「M20」、以下「M」と略す、熱伝導率1.4W/mK)に、アクリル系接着剤(綜研化学社製「SKダイン101VLB」)100質量部に対し、硬化剤(日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45E」)を0.2質量部加え、トルエン溶剤に希釈後、放熱シートの両面または片面に塗布した。
【0031】
縦30mm、横300mm、厚み1mmの金属スルーホール付きFR−4回路基板に0.5Wの発熱量のLEDを20個搭載し、前記の両面または片面に接着層を有する放熱シートを介して、縦50mm、横320mm、厚み2mmの放熱フィンとしてのアルミニウム板に貼り付けて、LEDモジュールを作製した。FR−4回路基板と放熱フィンは、左右2箇所のみネジ止めした。貼り付けた放熱シートのサイズを表1に示す。
【0032】
得られたLEDモジュール及び両面または片面に接着層を有する放熱シートについて、以下に従い、(1)実装時の放熱性、(2)接着信頼性、(3)絶縁信頼性を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0033】
(1)実装時の放熱性
LEDモジュールに通電してLEDを点灯し、1時間後の放熱シートの上下の温度を計測し、温度差を求めた。
【0034】
(2)接着信頼性
LEDモジュールの放熱シートで貼り付けた面が地面に対し垂直となるようにして85℃、85%の湿度環境下に放置し、1000時間後に剥離が生じるか目視にて評価を行った。
【0035】
(3)絶縁信頼性
F−4回路基板の大きさを縦30mm、横300mm、厚み2mmのものに代え、放熱シートを介して、縦50mm、横320mm、厚み2mmのアルミニウム板に貼り付け、左右2箇所のみネジ止めした。アルミニウム板の上下に85℃、85%の湿度環境下、直流1kVの電圧を印可し、絶縁破壊が発生するかどうか1000時間までの試験を行った。
【0036】
結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例、比較例から分かるように、本発明のLEDモジュールは、放熱性が高く、LED実装時の温度上昇も小さく、LEDが破壊するおそれがない。これは、両面に接着層を有する放熱シートで回路基板と筐体である放熱フィンとが密着しており、過酷な環境下でも剥離する恐れがないこと、更に、前記シートはライトソース基板より小さいため、大気中に浮遊した埃等が粘着層に付着することなく、その結果埃の吸水等により絶縁破壊が起こらず、過酷な環境下でも1kV以上の絶縁性を示し、十分な安全係数を考慮した上で電気製品に使用可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の半導体の固定方法、並びにその結果得られる半導体モジュールは、放熱性、絶縁性、信頼性に優れるという特徴を有しているので、液晶テレビのバックライトモジュール、カーナビ、パソコンモニターのバックライトモジュール、自動車用ランプ、室内照明として使用可能であり、産業上非常に有用である。
【0040】
本発明のシートは、前記特徴ある半導体モジュールを容易に提供できるので、産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を搭載した回路基板を筐体に固定する半導体の固定方法であって、回路基板と筐体とを両面に粘着層または接着層を有するシートを用いて固定し、しかも前記シートの大きさが回路基板と筐体とが相対する面よりも小さいことを特徴とする半導体の固定方法。
【請求項2】
シートの大きさが、回路基板と筐体とが相対する面の外周よりも0.01〜5mm小さいことを特徴とする請求項1記載の半導体の固定方法。
【請求項3】
半導体がLEDであり、回路基板がライトソース基板であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体の固定方法。
【請求項4】
筐体上に、半導体を搭載した回路基板を、両面に粘着層または接着層を有するシートを介して設けてなる半導体モジュールであって、前記シートの大きさが、筐体と回路基板とが相対する面よりも小さなことを特徴とする半導体モジュール。
【請求項5】
粘着層または接着層を有するシートが、無機充填剤を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものであることを特徴とする請求項4記載の半導体モジュール。
【請求項6】
半導体がLEDであることを特徴とする請求項4または請求項5記載の半導体モジュール。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の半導体モジュールに用いる両面に粘着層または接着層を有するシートであって、無機充填剤を含有するシリコーン樹脂からなる放熱シートの両面にアクリル系樹脂層を設けたものであることを特徴とするシート。
【請求項8】
シートの熱伝導率が1W/mK以上であり、絶縁破壊電圧が1kV以上であることを特徴とする請求項8記載のシート。
【請求項9】
シートが、UL94規格のVTM−2以上の難燃性を有することを特徴とする請求項7または請求項8記載のシート。

【公開番号】特開2008−166406(P2008−166406A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352701(P2006−352701)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】