説明

半導体の電気化学エッチング

【課題】半導体の金属密着性を向上させることができる、半導体の電気化学エッチング方法を提供する。
【解決手段】a)酸化エミッター層を有する前面、裏面、及びPN接合を有する半導体ウエハを提供し、b)半導体ウエハを1以上のビフルオリド源、1以上のフッ化物塩、又はこれらの混合物及び1以上の金属イオン源を含有する組成物に接触させ、c)該組成物に電流を発生させ、d)前もって決定された時間アノード電流を適用し、続いて前もって決定された時間アノード電流を切断し、このサイクルを半導体ウエハの酸化エミッター層にナノ細孔が形成されるまで繰り返し、そしてe)ナノ細孔の層上に金属が析出するようカソード電流及び光を適用する方法、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年12月13日に出願された米国仮出願第61/422,597号についての、35U.S.C.119(e)の下での優先権の利益を主張し、当該仮出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は半導体の電気化学エッチングに関するものである。より詳細には、本発明は半導体の金属密着を向上させる、半導体の電気化学エッチングに関する。
【背景技術】
【0003】
光起電力や太陽電池などの半導体の金属めっきは、半導体の表面と裏面への電気的伝導接触の形成を含む。この金属被覆は、半導体から電気的伝導接触へ障壁なく荷電粒子が移動することを確実にするよう、半導体にオーミック接触を形成する必要がある。電流のロスを最小にするために、金属化された接触格子は十分な電流伝導性、つまり高伝導性又は十分な高伝導トラック断面を有する必要がある。
【0004】
太陽電池の裏面をコーティングする金属について、上記要求を満たす多くの方法が存在する。例えば、太陽電池の裏面の電流伝導を向上するために、裏面のすぐ下へのP−ドーピングが行われた。通常、この目的のためにアルミニウムが使用される。アルミニウムは、例えば、蒸着によって、又は裏面にプリントされ打ち込まれるなどして適用され、またはそれぞれで合金化される。前面又は光入射側の金属被覆の際には、その目的は光子を捕捉できるようにできるだけ多くの表面を使用するために、活性半導体表面の影(shading)を最小にすることを達成することにある。
【0005】
薄膜技術を用いる金属コーティングは、導電トラックを金属化する従来法である。用いられるペーストは金属粒子を含有し、その結果として電気伝導性である。このペーストは、スクリーン、マスク、パッドプリンティング又はペーストライティングによって適用される。通常用いられる方法は、スクリーンプリンティング方法であり、80μmから100μmの最小ライン幅を有する指形状の金属被覆ラインが作成される。この格子幅であっても電気伝導ロスは明らかであり、接触抵抗は純粋な金属構造と比較して高い。これは、太陽電池の直列抵抗並びにフィルファクター及び効率に悪影響を与える。
【0006】
この効果はより小さいプリントオン導電トラック幅で増大する、なぜならライン幅が減少することによってより少ない銀金属がペーストから適用されるからである。金属粒子間の非導電性酸化物及びガラス成分は、この低減された導電性の重要な原因を構成する。
【0007】
前面のコンタクトを形成するためのより複雑な方法は、導電トラック構造の画定のためにレーザーもしくはフォトリソグラフィ技術を使用する。導電トラックは、続いて金属化される。通常、電気伝導性のために充分な接着強度及び所望の厚さを達成しようとして金属コーティングを適用するために、多くの場合種々の金属コーティング工程が用いられる。例えば、湿式化学金属コーティングプロセスが用いられる場合、パラジウム触媒の手段によって最初の微細金属コーティングが電流トラック上に析出される。これは多くの場合、ニッケルの無電解析出によって強化される。導電性を増大させるために、無電解または電解析出によってニッケル上に銅が析出される。続いて、銅を酸化から保護するために、銅はスズまたは銀の微細層で被覆される。
【0008】
めっきされたニッケル析出とシリコン半導体ウエハとの密着性は、第一には基体の表面形状及びめっき析出の内部応力によって影響される。ウエハへのニッケルの密着性はニッケルの上に析出される追加のめっき層によって引き起こされる圧力によっても影響される。半導体ウエハの表面形状は、製造業者によって、および半導体の種類、例えば単結晶か多結晶かによって、著しく異なる。多くの場合、許容できないレベルでの密着性の喪失なしでは表面構造はめっきされた金属析出の充分なアンカーリングを提供しない。この密着性の問題を処理する1つの方法は、ニッケルめっきの後すぐさま半導体ウエハを焼結しニッケルシリサイドを形成することである。ニッケルシリサイドは、その後に行われる銅又は銀による金属めっきに対して充分な結合強度を提供し、良好な密着性を維持しつづける。しかしながら、これは焼結の際の制御された雰囲気の使用とめっき操作を2つの工程に分ける必要が生じ、これは製造プロセスを複雑化する。加えて、ダイオードへのダメージや、短絡によるパフォーマンス低下の可能性がある。さらに、プロセス時間とコストの増加がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、半導体ウエハの金属密着の改良された方法についての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
方法は、a)酸化エミッター層を有する前面、裏面、及びPN接合を有する半導体ウエハを提供し、b)半導体ウエハを1以上のビフルオリド源、1以上のフッ化物塩、又はこれらの混合物及び1以上の金属イオン源を含有する組成物に接触させ、c)該組成物に電流を発生させ、d)前もって決定された時間アノード電流を適用し、続いて前もって決定された時間アノード電流を切断し、このサイクルを半導体ウエハの酸化エミッター層にナノ細孔が形成されるまで繰り返し、そしてe)ナノ細孔の層上に金属が析出するようカソード電流及び光を適用する方法、を含有する。
【0011】
方法は、また、a)酸化エミッター層を有する前面、裏面及びPN接合を有する半導体ウエハを提供し、b)半導体ウエハを1以上のビフルオリド源、1以上のフッ化物塩またはこれらの混合物を含有する組成物に接触させ、c)該組成物に電流を発生させ、d)前もって決定された時間アノード電流を適用し、続いて前もって決定された時間アノード電流を切断し、このサイクルを半導体ウエハの酸化エミッター層にナノ細孔が形成されるまで繰り返し、e)半導体ウエハを金属めっき溶液に接触させ、f)電流を金属めっき液に発生させ、ナノ細孔エミッター層の上に金属を析出させる方法、を含有する。
【発明の効果】
【0012】
この方法は、半導体ウエハの酸化されたエミッター層上に実質的に均一なナノ細孔層を形成する。ナノ細孔層は、金属析出と半導体ウエハの間の向上された密着性を提供する。加えて、ナノ細孔層を形成するのに用いられるアノードのパルスプロセスは、金属層と半導体ウエハの間のオーミック接続を損なう程のダメージをエミッターが受けることとなるほどには半導体ウエハの酸化されたエミッター層にしみ込まない。その後の金属層は、密着性の悪化の心配なしに最初の金属層の上に析出し、よって金属化された半導体を含む装置の信頼性を向上させる。加えて、この方法は金属シリサイドの形成の必要をなくし、シリサイドプロセスに含まれる複雑な工程を除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、単結晶シリコンウエハの前面エミッター層の170,000倍のSEMであり、該シリコンウエハは、深さ61.2nmの均一なナノ細孔層を形成するために、アノードパルス方法を用いてビフルオリドナトリウムの水性酸性組成物でエッチングされたものである。
【図2】図2は、単結晶ウエハの前面エミッター層の100,000倍のSEMであり、該ウエハは、深さ104nmの均一なナノ細孔層を形成するために、アノードパルス方法を用いてビフルオリドナトリウムの水性酸性組成物でエッチングされたものである。
【図3】図3は、単結晶ウエハの前面エミッター層の75,000倍のSEMであり、該ウエハは、深さ80.9nmの均一なナノ細孔層を形成するために、アノードパルス方法を用いてビフルオリドナトリウムの水性酸性組成物でエッチングされたものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書を通して用いられる限り、用語「析出」及び「めっき」は交換可能に用いられる。用語「導電トラック」及び「電流ライン」は交換可能に用いられる。用語「組成物」及び「浴」は交換可能に用いられる。用語「選択的析出」は金属析出が基体上の特定の所望の領域において起こることを意味する。用語「lux=lx」は1ルーメン/mに等しい照明の単位であり、1ルクス=540テトラヘルツの周波数での1.46ミリワットの放射電磁(EM)力を表す。以下の略語は文脈が明らかに他のことを示さない限り、以下の意味を有する。℃=摂氏度;g=グラム;mL=ミリリットル;L=リットル;A=アンペア;dm=デシメートル;cm=センチメートル;μm=マイクロメートル;nm=ナノメートル;min.=分;sec.=秒;UV=紫外;IR=赤外;SEM=走査型電子顕微鏡;及びASTM=米国標準試験方法(American Standard Testing Method)。すべてのパーセンテージおよび比率は他に示されない限り重量基準である。すべての範囲は境界値を含み、このような数値範囲が合計で100%に制約されることが明らかである場合を除いて、任意に組み合わせ可能である。
【0015】
光起電力及び太陽電池は、単結晶、多結晶、またはアモルファスシリコン半導体ウエハから構成されうる。下記記載はシリコン半導体ウエハに関するものであるが、他の好適な半導体ウエハ、例えばガリウム−ヒ素、シリコン−ゲルマニウム及びゲルマニウムも使用されうる。シリコンウエハが用いられる際には、それらは典型的にはpベースのドーピングを有する。
【0016】
半導体ウエハは、円形、正方形、もしくは長方形の形状であり得、または他のいかなる好適な形状でありうる。このようなウエハは様々な大きさ及び表面抵抗を有しうる。例えば、円形ウエハは150mm、200mm、300mm、400mm、またはさらに大きい直径を有しうる。
【0017】
ウエハの裏面は金属化されている。いかなる従来の方法も用いられうる。裏面の全体が金属被覆されるか、またはグリッドが形成されるためのように裏面の一部が金属被覆される。このような裏面の金属化は種々の技術によって提供され、ウエハの前面の金属化に先だって行われる。ある実施形態では、金属被覆は銀含有ペースト、アルミニウム含有ペーストまたは銀及びアルミニウム含有ペーストなどのような電気導電ペーストの形態によって裏面に適用される。しかしながら、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛またはスズのような金属を含有するペーストも用いられうる。これらの導電ペーストは典型的にはガラスマトリックス及び有機バインダーに埋め込まれた導電粒子を含有する。導電ペーストは種々の技術、例えばスクリーン印刷(プリンティング)等によってウエハに適用される。ペーストが適用された後、ペーストは焼成されて有機バインダーが除かれる。アルミニウムを含有する導電ペーストが用いられている場合は、アルミニウムは部分的にウエハの裏面に拡散し、または銀も含むペーストが用いられている場合は、銀との合金を形成し得る。このようなアルミニウム含有ペーストの使用は、接触抵抗を向上させ、「p+」ドープ領域を提供することができる。相互拡散を伴うアルミニウムまたはホウ素の従来の適用によって、重度にドープした「p+」型領域も製造されうる。ある実施形態においては、アルミニウム含有ペーストは裏側に適用され、裏側の金属被覆の適用の前に焼成されうる。焼成されたアルミニウム含有ペーストの残渣は、場合によっては裏面の金属被覆の適用の前に除かれる。別の実施形態においては、ウエハの裏面にシード層が析出してもよく、金属被覆がシード層の上に無電解又は電気めっきによって析出されうる。
【0018】
反射を低減する改良された光入射ジオメトリを表面に付与するために、ウエハの前面は、場合によってはピラミッド構造の形成のような結晶配向テクスチャーエッチングにかけられうる。半導体接合を形成するために、リン拡散またはイオン注入がウエハの前面で生じ、n−ドープされた(n+またはn++)領域を形成し、PN接合を有するウエハを提供する。n−ドープされた領域はエミッター層とも称されうる。エミッター層は均一のエミッター層であるか、または選択的エミッター層である。均一なエミッター層は通常均一なドーパント濃度またはシート抵抗を有する。選択的エミッター層は複数のシート抵抗値を有する。典型的には、電流トラックが設置された領域はシート抵抗が低いかまたは高ドーピングであり、反射防止コーティングの領域は高抵抗または低ドーピングである。電流トラックの高ドーピング及び低抵抗はナノ細孔を形成する傾向にあるため、選択的エミッター層が好まれうる。
【0019】
反射防止層はウエハの前面又はエミッター層に加えられる。加えて、反射防止層はパッシベーション層として働く。好適な反射防止層は、SiOのようなシリコン酸化層、Siのようなシリコン窒化層、シリコン酸化物とシリコン窒化物の組み合わせの層、及びシリコン酸化物、シリコン窒化物とTiOのような酸化チタン層との組み合わせを含むが、これらに限定されない。上記式において、xは酸素原子の数である。これらの反射防止層は種々の蒸着方法、例えば化学蒸着及び物理蒸着等のような多くの技術によって析出されうる。
【0020】
ウエハの前面は金属化されたパターンを含む。例えば、ウエハの前面は集電ライン及び電流バスパー(current busbar)から構成されうる。集電ラインは典型的にはバスパーを横断し、典型的には電流バスパーに対して相対的に微細な構造(すなわち寸法)を有する。
【0021】
一実施形態では、ウエハの前面又はエミッター層はシリコン窒化物のような反射防止層で被覆される。続いて前面上に開口部又はパターンが区画される。パターンは反射防止層を通過して到達し、ウエハの半導体本体の表面を露出させる。あるいは、ウエハの半導体本体の中に深さ1から100μmの深さで入り込む開口部の中に、トレンチが形成されうる。より深い、又はより浅いトレンチの深さが使用されうる。パターン形成のために種々のプロセス、例えば、レーザーアブレーション、機械的手段、及びリソグラフィプロセスなど当該技術分野で周知の方法が用いられるが、これらに限定されない。これらの機械的手段はソーイング(sawing)及びスクラッチングを含む。典型的なフォトリソグラフィプロセスは、像形成可能な物質をウエハ表面に配置し、その像形成可能な物質をパターン形成して反射防止層に開口部を形成し、そのパターンをウエハに移し、開口部に金属層を析出させ、そして像形成可能な物質を除去することを含む。ある実施形態では、像形成可能な物質は開口部に金属層を析出させる工程の前に除去される。別の実施形態では、像形成可能な物質は開口部に金属層を析出させる工程の後に除去される。像形成可能な物質が金属析出工程の間存在するとき、この像形成可能な物質は、典型的には、金属析出工程中に使用される放射線の波長を吸収するコントラスト染料のようなあらゆる染料を避ける。めっき工程中に存在する像形成可能な物質は、典型的には、40−60%の最小光透過率を有する染料を含む。
【0022】
像形成可能な物質が液体である場合、この物質はウエハ表面に、たとえば、これらに限定されないが、スピンコーティング、インクジェット印刷、カーテンコーティング及びローラーコーティングなどのいかなる好適な技術によっても配置されうる。像形成可能な物質がドライフィルムである場合には、この物質は真空ラミネーションによってウエハの表面上に配置されうる。
【0023】
像形成可能な物質は、マスクを通った化学線に像形成可能な物質を曝露することによりパターニングされる。化学線の選択は、選択された個々の像形成可能な物質に依存する。像形成可能な物質をパターニングするために、レーザー及び他の従来の化学線源が使用されうる。
【0024】
像形成可能な物質におけるパターンは、次いで、半導体ウエハ基体に転写される。パターン転写はウェット化学エッチング技術を使用して、またはドライエッチング技術を使用することにより行われうる。好適なドライエッチング技術には、限定されないが、反応性イオンエッチングのようなプラズマエッチングが挙げられる。パターンは典型的には、集電ラインである相対的に狭い断面寸法のライン、およびバスバーである相対的に厚い断面寸法のラインで構成される。バスバーは集電ラインを横断する。
【0025】
像形成可能な物質は、あらゆる好適なポリマー除去剤、例えば、ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズ(マサチューセッツ州、マルボロ)によって販売されているものを用いて除去されうる。このような除去剤はアルカリ性、酸性または本質的に中性でありうる。
【0026】
パターンを形成する半導体ウエハの露光された箇所は、ウエハの事前のクリーニングや取り扱いの間に除かれた本来の酸化物を戻すために、酸化される。本来の酸化物を戻すために従来の酸化剤が用いられ得る。酸化は通常、1−3重量%の過酸化水素水溶液によって行われる。他の酸化剤、次亜塩素酸塩、ペルオキシ硫酸塩、ペルオキシ有機酸塩及び過マンガン酸塩の水溶液も含まれるが、これらに限定されない。半導体ウエハが単結晶の場合、典型的には酸化剤溶液はpHが7より大きい、又は8−12のようなアルカリである。半導体ウエハがシリコンの場合、SiOx層が露光された箇所に形成される。典型的には、半導体ウエハは、酸化剤溶液で満たされたプロセスチャンバーに浸されまたは処理される。酸化は、半導体ウエハを周囲環境に曝露することによっても、自然に生じうる。
【0027】
半導体ウエハの露光された箇所又はパターンは、続いて、酸化されたエミッター層上にナノ細孔層を形成しその後金属めっきするために、1以上のビフルオリド源、1以上のフッ化物塩またはこれらの混合物及び1以上の金属イオンを含む、電気化学エッチング及び金属めっき組成物でエッチングされる。金属めっき組成物はでいる。従って、該組成物はエッチング組成物及び金属めっき組成物の双方を含む。別の実施形態では、1以上のビフルオリド源、フッ化物塩、またはこれらの混合物によるエッチングは、別途の組成物で行われることができ、別途の金属めっき組成物によるエッチングされたウエハの金属めっきが引き続いて行われる。従来の金属めっき組成物が用いられうる。
【0028】
ビフルオリド源化合物は、ナトリウムビフルオリド及びカリウムビフルオリドのようなアルカリ金属ビフルオリド、アンモニウムフルオリド、アンモニウムビフルオリド、フルオロボレート、フルオロホウ酸、スズビフルオリド、アンチモンビフルオリド、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、アルミニウムヘキサフルオリド及び脂肪族アミン、芳香族アミン及び窒素含有複素環化合物の四級塩を含むがこれらに限定されない。フルオリド塩は、ナトリウム及びカリウムフルオリドのようなアルカリ金属フルオリドを含むがこれらに限定されない。典型的には、ビフルオリド源化合物及びフルオリド塩は組成物中に、5g/Lから100g/Lの量で、例えば10g/Lから70g/L、または20g/Lから50g/Lのような量で含まれる。
【0029】
組成物に含まれうる酸は、スルファミン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びプロパンスルホン酸のようなアルカンスルホン酸;アルキロイルスルホン酸;トルエンスルホン酸、フェニルスルホン酸及びフェノールスルホン酸のようなアリールスルホン酸;アミドスルホン酸のようなアミノ含有スルホン酸;硫酸、硝酸及び塩酸のような鉱酸;アミノ酸;モノ−、ジ−及びトリカルボン酸を含むカルボン酸;これらのエステル、アミド及び他のいかなる非反応性無水物をも含むが、これらに限定されない。さらに、組成物は酸の混合物を含みうる。2以上のカルボン酸が組成物に含まれるとき、少なくとも1つはビフルオリド種由来の酸性プロトンを含む。これらの酸は通常種々の供給源、例えばアルドリッチケミカルカンパニーなどから商業的に入手可能である。通常、酸及び酸無水物は電気化学組成物中に1g/Lから300g/Lの量、例えば10g/Lから200g/Lまたは30g/Lから100g/Lのような量で含まれる。
【0030】
電気化学組成物は、化学量論量の1以上の酸及び1以上のビフルオリド源化合物又は1以上のフルオリド塩またはこれらの混合物を合わせることによって準備される。撹拌は、ビフルオリド化合物またはフルオリド塩が酸に溶解するまで行われる。非溶解性化合物を溶解するために、さらなる撹拌とともに水が加えられうる。
【0031】
または、1以上の酸無水物が少なくとも1つのビフルオリド源の水溶液に加えられ、上記の水との接触が少なくとも1つのカルボン酸を生成する。充分な酸無水物が水を獲得するのに化学量論的に使用され、1以上のカルボン酸が含有量1−5重量%で水溶性ビフルオリド源化合物溶液中に存在しうる。この組み合わせは続いて酸無水物ヒドラジン及びビフルオリド源化合物が溶解するまで撹拌される。すべての混合物が溶解するまで、さらなる撹拌とともに追加の水が加えられ得る。
【0032】
典型的には、電気化学組成物は1以上のアルカリ金属ビフルオリド、アンモニウムフルオリド及びアンモニウムビフルオリドをビフルオリド源化合物として含有する。より典型的には、ビフルオリド源化合物はナトリウム及びカリウムビフルオリドのようなアルカリ金属ビフルオリドである。ビフルオリド源化合物がアルカリ金属ビフルオリドである場合、1以上の、硫酸などの無機酸が電気化学組成物に含まれる。ビフルオリド源化合物がアンモニウムビフルオリド又はアンモニウムフルオリドである場合、1以上のカルボン酸が電気化学組成物中に含まれる。典型的には、酢酸のようなモノカルボン酸が含まれる。
【0033】
種々の金属がナノ細孔エミッター層上のシード層をめっきするのに用いられうるが、しかしながら、典型的には金属はニッケル及びその合金、パラジウム及びその合金、銀及びその合金及びコバルト及びその合金である。より典型的には、金属はニッケル又はパラジウムである。さらに典型的には、金属はニッケルである。ニッケルイオンは典型的にはニッケル塩の使用によって提供される。これらのニッケル化合物は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、スルファミン酸ニッケル及びニッケルリン酸塩を含むが、これらに限定されない。ニッケル化合物の混合物も用いられ得る。パラジウムイオンはパラジウム化合物の使用によって提供され、典型的にはパラジウム塩である。これらのパラジウム塩は、硝酸パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、塩化パラジウムカリウム、テトラクロロパラジウムナトリウム及び塩化テトラアミンパラジウムを含むがこれらに限定されない。パラジウム化合物の混合物も用いられ得る。銀イオンは銀化合物の使用により提供される。これらの銀化合物は、硝酸銀、酸化銀、シアン化銀ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム銀、及びメタンスルホン酸銀を含むがこれらに限定されない。コバルトイオンはコバルト化合物の使用によって提供される。コバルト化合物は、塩化コバルト、臭化コバルト、硫酸コバルト、シアン酸ナトリウムコバルト、硫酸アンモニウムコバルト及び酢酸コバルトを含むがこれらに限定されない。金属化合物は、金属イオン濃度として0.1から150g/Lの量、典型的には0.5から100g/L、さらに典型的には1から70g/Lの量の金属イオン濃度を提供するのに十分な量で含まれる。
【0034】
場合によっては、種々の界面活性剤が電気化学組成物中に用いられうる。エッチングまたは金属めっきの能力に影響を与えない限り、あらゆるアニオン性、カチオン性、両性、及びノニオン性界面活性剤が用いられることができる。界面活性剤は、従来の量で含まれることができる。
【0035】
場合によっては、電気化学組成物は1以上の追加の化合物を含む。これらの追加の化合物は、光沢剤、グレインリファイナー及び延性向上剤(ductility enhancer)を含むが限定されない。これらの追加の化合物は当該技術分野で周知であり、従来の量で用いられる。
【0036】
電気化学組成物は場合によっては緩衝剤を含む。例示される緩衝剤は、ホウ酸塩緩衝剤(ボラックスなど)、リン酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、及び水酸化物緩衝剤を含むがこれらに限定されない。用いられる緩衝剤の量は、電気化学組成物を1から6の、典型的には1から2の所望のレベルのpHに維持するのに十分な量である。
【0037】
半導体ウエハは、化学的に不活性なエッチング及びめっきセル中の電気化学組成物中に浸される。電気化学組成物の作動温度は10から100℃であり、例えば20から50℃である。反対側の電位(整流器)が半導体ウエハに適用される。不活性な対電極がセル中に浸される。典型的には対電極はパラジウムワイヤーまたはスクリーン電極である。セル、半導体ウエハ、電気化学組成物及び整流器は互いに電気的に接続される。
【0038】
アノード電位が電気化学組成物の中及び半導体ウエハで発生し、予め定められた時間維持され、つづいて電流は予め定められた時間切断され、このサイクルが充分な時間繰り返され、半導体ウエハの表面の酸化されたエミッター層の上に実質的に均一なナノ細孔層を形成し、同時に酸化されたエミッター層の表面に、半導体の電気的性能がそこなわれない程度にしみ込む。この方法は、実質的に均一なナノ細孔エミッター層を形成するためのエミッター層へのしみ込みと、金属析出を可能にするシート比抵抗のバランスであり、結果として優れた密着性を有する金属層と半導体ウエハのオーミック接触のバランスである。加えて、方法はエミッター層上の反射防止層への攻撃又はダメージを最小化することと、ナノ細孔エミッター層の同時形成とのバランスである。エミッター層の酸化された箇所は、金属がエミッター層に良く密着する深さまでの細孔が形成され、同時にエミッター層の比抵抗は金属をめっきするのに十分に導電性である。エミッター層にしみ込んだナノ細孔層が深ければ深いほど、エミッター層のシート比抵抗は大きくなる。一般的に、アノード電位の適用を開始する前に、実質的に均一なナノ細孔層はエミッター層のシート比抵抗が5%から40%に、例えば20%から30%のシート比抵抗に増加するまでエミッター層に充分に深くしみ込む。典型的には、均一なナノ細孔エミッター層のシート比抵抗は、200オーム/スクエア以下である。エミッター厚さのようなファクタとドーピングプロフィールが、エミッタ層ナノ細孔深さ及びエミッタ層比抵抗を考慮する要因である。特定の半導体ウエハへの金属めっき及び良好な金属密着性を達成するために、少ない実験がエミッター層ナノ細孔深さ及びエミッター層比抵抗を決定するために行われうる。
【0039】
一般的には、アノード電位の適用の間の電流密度は0.01A/dmから2A/dmの幅でありえ、例えば0.05A/dmから1A/dmである。しかしながら、少ない実験が特定の半導体ウエハへの好ましい電流密度設定、アノード電位を適用する時間、及びその向きの変更を決定するために行われうる。これらのパラメータは、エミッター層の開始時厚さ及びナノ細孔エミッター層の所望の厚さと同様に半導体ウエハの厚さに依存する。もしエミッター層のナノ細孔部分が深すぎると、半導体はダメージを受け、シート比抵抗は増加する。高すぎるシート比抵抗はエミッター層のナノ細孔箇所の上に形成されている導電トラックの電気的導電性を損なう。加えて、エミッターの表面での非均一なナノ細孔層は、後の金属めっき層の不十分な密着性の原因となる。典型的なアノード電位は0.5秒以上、例えば0.5秒から2秒、又は3秒から8秒など、の間適用される。サイクルの中でのアノード電流が続けられていない時間は1秒以上、例えば3秒から10秒、または10秒から50秒など、であり得る。サイクルの数は5から80、又は10から100のような幅であり得る。
【0040】
もしパターニングされた半導体ウエハがシリコン太陽電池であれば、光源は、例えば、蛍光灯又はLEDランプであり得、これらはシリコン太陽電池が光起電反応性である波長のエネルギーを提供する。種々の他の光源、例えば、75ワット及び250ワットランプのような白熱灯、水銀灯、ハロゲンランプ、及び150ワット赤外ランプなどが使用しうるが、これらに限定されない。光エネルギーは連続またはパルスのどちらでもありうる。パルス照明は、例えば、機械的なチョッパーで光を遮ることによって達成され得、または電子デバイスが使用され、所望のサイクルに基づいて周期的な電力を間欠的な光にすることができる。通常、光誘導めっきの間に半導体ウエハに適用される光の量は、400lxから10,000lxであり得、例えば500lxから7500lxである。
【0041】
半導体ウエハの前面を光エネルギーで照射することにより、前面上でめっきが起こる。衝突する光エネルギーが半導体に電流を発生させる。前面でのめっきの速度は光強度、浴温度、還元剤活性、開始時のウエハ状態、ドーピングレベル、ならびに当該技術分野の作業者に周知の他のパラメータを調整することにより制御可能である。100nm以上の、例えば100nmから2μm厚さの金属シード層が典型的に半導体ウエハに望まれており、正確な厚さは種々の要因、例えば用途、半導体サイズ、パターン及び形状に依存する。
【0042】
別の実施形態では、ナノ細孔エミッター層を形成するエッチング組成物と金属めっき組成は、別の溶液に含まれる。ウエハが実質的に均一なナノ細孔を形成するために処理されるエッチング液中に置かれた後、ウエハは続いて金属めっきのために別の金属めっき溶液に移される。もしウエハが本来の酸化物を回復するために酸化されるのであれば、ウエハはエッチングに先だって酸化される。別の実施形態では、金属は別の溶液でめっきされるが、エッチング組成物と酸化剤組成物は1つの組成物に統合される。半導体の前面が酸化された後、アノード電位が上述のように半導体ウエハに適用され、電位がアノード電位から0までパルスされ、半導体のエミッター層の酸化された箇所は選択的にエッチングされ、実質的に均一なナノ細孔層が形成される。この実施形態では、同じビフルオリド源化合物、フルオリド塩及び酸が、上述と同様に同じ量で用いられる。同様に、同じ酸化剤が上述と同様に同じ量で用いられる。
【0043】
続いて、典型的にはニッケル、パラジウム、コバルト又は銀の金属シード層が、光誘導金属析出によって実質的に均一なナノ細孔層の上に選択的に析出する。後ろ側の電位(整流器)は上述のように半導体ウエハに適用される。光は連続またはパルスであり得る。半導体は金属めっき組成物中に浸漬され、上述のように光が半導体に適用される。
【0044】
従来の電気的金属組成物が用いられ得る。典型的な電流密度は0.01A/dmから2A/dmであり、例えば0.05A/dmから1A/dmである。求められる個々の電流は、用いられるウエハの個々のサイズに依存する。用いられる電気めっき工程は従来のものである。ふさわしい電気金属めっき浴は文献に開示多くのものと同様、商業的に入手可能である。商業的に入手可能な電気ニッケル浴は、ロームアンドハース電子材料から入手可能なニッケル電気めっき製品の、NIKALTMおよびNICKEL GLEAMTMシリーズである。他の好適な電解ニッケルめっき浴の例は米国特許公報3,041,255に開示されているワット型浴である。
【0045】
金属シード層が上述の実施形態によってめっきされた後、1以上の追加の金属層が金属シード層上に析出しうる。このような追加の金属層は銅又は銀でありうる。従来の金属めっき浴が用いられうる。もし追加の金属層が銅であれば、酸化を防ぐためにスズストライク層が銅の上に析出されうる。もし追加の金属が銀であれば、銀ストライク層が銀の上に析出され得、追加の銀層がストライク層の上に析出されうる。これらの追加の金属層は従来の浴及びプロセスを用いて無電解、浸漬、電気、光開始金属めっきで析出されうる。典型的には、これらの金属層は1μmから50μmで、より典型的には5μmから25μmに及ぶ。ストライク層は0.25μmから2μmに及びうる。もし追加の金属層が電気的に析出すると、典型的な電流密度は0.1A/dmから3A/dmであり、より典型的には1A/dmから3A/dmである。合計電流要求量は用いられる特定のウエハのサイズに依存する。
【0046】
これらの追加の金属層の金属源は、金属ハライド;金属硝酸塩;酢酸塩、ギ酸塩及びグルコン酸塩のような金属カルボキシレート;金属-システイン錯体のような金属アミノ酸錯体;金属メタンスルホン酸塩及び金属エタンスルホン酸塩のような金属アルキルスルホン酸塩;金属アルキロールスルホン酸塩、金属鳥巣スルホン酸塩及び金属フェノールスルホン酸塩;及び金属シアン酸塩、を含むがこれらに限定されない。金属が銀のときは、金属塩はこれらの塩の溶解限界により典型的にはハロゲン化銀ではない。銅化合物の例としては、ピロリン酸銅、グルコン酸銅、硫酸銅及び塩化銅を含むがこれらに限定されない。スズ化合物の例は、塩化スズ、硫酸スズ及びメタンスルホン酸スズを含むがこれらに限定されない。金属化合物の混合物も用いられ得る。これらの混合物は同じ金属を有する金属化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい、例えば硝酸銀と銀-システイン錯体の混合物である。
【0047】
通常、金属化合物はめっき浴に0.1から150g/Lの充分な量の金属イオン濃度を与える量で加えられる。金属イオンが銀イオンの場合、浴中の銀イオンの濃度は典型的には2から40g/Lの量である。これらの金属化合物は、ミルウォーキー、ウィスコンシン州のアルドリッチケミカルカンパニーなどの種々の供給源から通常商業的に入手可能である。商業的に入手可能な浴は、マルボロ、マサチューセッツ州のロームアンドハース電子材料から入手可能なCOPPERGREAMTMST901及び901A電気銅めっき浴と、ENLIGHTTMシルバープレート620電気銀めっき浴である。商業的に入手可能なスズめっき浴は、SOLDERONTMスズめっき組成物及び補助製品で、これらもロームアンドハース電子材料から入手可能である。
【0048】
種々の従来からの界面活性剤が金属めっき浴に用いられ得る。いかなるアニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性界面活性剤も用いることができる。界面活性剤は従来の量で含まれ得る。
【0049】
金属めっき浴は1以上の追加の従来からの化合物を含み得る。これらの追加の化合物は、導電塩、緩衝剤、光沢剤、グレインリファイナー、キレート剤、錯化剤、還元剤、レベラー及び延性向上剤を含むが限定されない。これらの追加の組成物は当該技術分野で周知であり、従来の量で用いられる。
【0050】
方法は、実質的に均一なナノ細孔層を半導体ウエハの前面のエミッター層の表面に形成する。ナノ細孔層は、金属析出と半導体ウエハの間の改良された密着性を提供する。加えて、ナノ細孔層形成に用いられる方法は、ニッケルシード層と半導体ウエハの間のオーミック接触が損なわれるほどには、半導体ウエハのエミッター層にしみ込まない。後に続く金属層は、それから、密着性の不良の心配なしに金属シード層上に析出し得、したがってめっきされた半導体を含むデバイスの信頼性を向上する。さらに、方法は金属シリサイドの形成の必要性、及びシリサイドプロセスに含まれる複雑な工程を除くことができる。
【0051】
電気化学エッチング方法は太陽電池に用いられるシリコンウエハの特定の例について述べられてきたが、しかしながら、シリコン以外の材料から製造される光電池デバイスにも、例えば、使用される光源などの必要に応じたふさわしい変更とともに、用いられることができる。
【0052】
下記例は発明の種々の観点を描写するために含まれるが、発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0053】
例1
前面にピラミッド型のエレベーションを有する、ドープされた単結晶シリコンウエハが準備された。そのウエハは、エミッター層を形成するウエハの前面にn+ドープ領域を有していた。ウエハは、エミッター層の下にPN接合も有していた。ウエハの前面は、SiNで構成された反射防止層でコートされていた。ウエハの前面は、反射防止層を通ってシリコンウエハの表面を露出させた電流トラックのためのパターンを有していた。それぞれの電流トラックは、ウエハの全長を超えていた。電流トラックは、ウエハの末端及びウエハの中心で、バスバーと接続していた。ウエハの裏面は、p+ドープされ、アルミニウム電極を有していた。
【0054】
ウエハは、電流トラックとバスバーを清浄化するために1重量%のフッ化水素酸溶液に浸された。清浄化は室温で1分間行われた。ウエハは水でリンスされた。ウエハからのコンタミネーションを除去するために、フッ化水素酸溶液は本来の酸化物もエミッター層の表面から除いた。
【0055】
ドープされた単結晶シリコンウエハは続いてENLIGHTTM1300スルファミン酸ニッケル電気めっき溶液を含有するメッキセルに浸漬された。ウエハの裏面アルミニウム電極は整流器に接続され、固体ニッケルアノードが浴中で対電極として機能した。ウエハはカソードとして機能し、ニッケルはアノードであった。浴、ウエハ及び対電極はすべて電気的に接続され、1A/dmのカソード電流が1分間適用された。めっきサイクルの間中、人工の光がウエハに適用された。光源は250ワットハロゲンランプであった。めっき温度幅は30℃から50℃であった。300nmのニッケルシード層が電流トラック及びバスバー上に析出した。
【0056】
ウエハは続いて、COPPER GREAMTM125電気銅めっき浴(ロームアンドハース電子材料から入手可能)を含有する電気めっきセルの中に置かれた。ウエハの裏面アルミニウム電極は整流器に接続され、リン酸化銅アノードが浴中で対電極として機能した。ウエハはカソードとして機能した。浴、ウエハ及び対電極はすべて電気的に接続され、1.5A/dmのカソード電流が14分間適用され、電流トラック及びバスバーのそれぞれのニッケルシード層の上に6−10μmの銅層が析出した。めっきの間中、人工光がウエハに適用された。光源は250ワットハロゲンランプであった。めっき温度幅は20℃から50℃であった。
【0057】
ウエハはめっきセルから取り出され、金属層と電流トラック及びバスバーとの間の密着性が調べられた。ASTMD3359−97標準テープ試験が、金属層の密着性を試験するために用いられた。バスパー上の金属層ははがれなかったが、すべての電流トラック上の金属層はウエハから剥離した。密着性はニッケルとウエハのシリコンの境界面で不適合であった。
【0058】
例2
銅の代わりに銀がニッケルシード層上に電気めっきされたことを除き、上記例1に記述された方法が繰り返された。銀はENLIGHTTM銀めっき620銀電気めっき浴を用いてニッケル上にめっきされた。電流密度は1.5A/dmであり、めっきは10分間行われた。人工光がめっきの間中ウエハに適用された。光源は250ワットハロゲンランプであった。めっき温度幅は20℃から40℃であった。8−10μmの銀層がニッケル上に析出した。
【0059】
ASTMD3359−97標準テープ試験が金属層の密着性を試験するために用いられた。バスパーと同様にすべての電流トラック上で、密着性はニッケルとウエハのシリコンの境界面で不適合であった。
【0060】
例3
上記例1と同じ種類の単結晶ウエハが準備された。ウエハは金属めっきラックに置かれ、裏面アルミニウム電極は金属めっきラックと直接導通された。セルの後側とめっきラックの間の液の浸透が最少になるように、セルとラックの間の境界面はウエハの周囲にそって密閉された。アノードサイクルの間、整流器からの電流はラックを通り、裏側コンタクトを通ってセルの中に流れた。
【0061】
電流トラック及びバスバーは続いて、シリコン表面を確実に酸化するために、5重量%の過酸化水素水溶液で酸化された。前段落で記載されているようにラックに置かれたウエハは、続いてスルファミン酸ニッケルからの10g/Lのニッケルイオン、45g/Lのビフルオリドナトリウム、15g/Lのスルファミン酸を含むめっきセル中の水溶性組成物に浸漬された。ウエハを乗せたラックは整流器に接続され、白金ワイヤーが対電極として用いられた。水溶性組成物、ウエハ及び白金ワイヤーが互いに電気的に接続された。アノード電流が30秒、電流密度0.2A/dmでウエハに適用された。水溶性組成物は室温であった。
【0062】
電流トラックとバスバーが実質的に均一なナノ細孔層を形成するためにエッチングされた後、人工光がウエハに適用され、整流器の極性が逆にされ、カソードのセルとアノードの白金電極がつくられた。光源は250ワットのハロゲンランプであった。電流密度は0.1A/dmで残され、100nmから500nmのニッケルシード層がエッチングされた導電トラックとバスバーの上にめっきされた。光誘導めっきは30秒間行われた。
【0063】
ニッケルめっきされたウエハは続いてENLIGHT420電気銅めっき浴(ロームアンドハース電子材料から入手可能である)を含む電気めっきセルに置かれた。ウエハの裏面アルミニウム電極は整流器に接続され、銅アノードが浴中で対電極として作用した。ウエハはカソードとして作用し、白金ワイヤーはアノードとして作用した。浴、ウエハ及び対電極はすべて電気的に接続され、2A/dmのカソード電流が14分間適用され、電流トラック及びバスバー双方のニッケルシード層上に6−10μmの銅層が析出した。めっきの間、人工光が再びウエハに適用された。光源は250ワットのハロゲンランプであった。めっき温度は20℃から50℃の幅であった。
【0064】
ウエハはめっきセルから除かれ、めっき層と電流トラック及びバスバーの密着性がテストされた。ASTMD3359−97標準テープテストがめっき層の密着性を調べるために用いられた。テープの上にはまったく金属が観察されず、またニッケルとシリコンの境界面でさえも、ウエハからのめっき層の剥離はまったく示唆されなかった。
【0065】
例4
銅の代わりに銀がニッケルシード層上にめっきされた他は、上記例3に記述された方法が繰り返された。銀はニッケル上に、濃度1g/Lの銀イオンを含むENLIGHTTMシルバープレート620銀ストライク電気めっき液を用いてめっきされ、続いてENLIGHTTMシルバープレート620銀めっき浴による銀層が銀ストライク層上にめっきされた。ストライク液中で2から2.5Vの電圧が30秒から1分適用され、その後ウエハはすぐさま別の銀浴に移され、2A/dmで10分間めっきされた。人工光源は250ワットのハロゲンランプであった。めっき温度は20℃から40℃の幅であった。8から10μmの銀層がニッケル上に析出した。
【0066】
ASTMD3359−97標準テープテストがめっき層の密着性の試験に用いられた。電流トラック及びバスバー上のすべての析出金属はそのままで残っていた。テープの上にはまったく金属が観察されず、またニッケルとシリコンの境界面でさえも、ウエハからのめっき層の剥離はまったく示唆されなかった。
【0067】
例5
例1に記述されたのと同じタイプの単結晶ウエハが例3で記述されたようにラックに置かれた。
【0068】
ウエハは続いて、めっきセルに入った15g/Lのビフルオリドナトリウムと30g/Lのスルファミン酸を含む水溶性組成物の中に浸漬された。ウエハを乗せたラックは整流器に接続され、白金ワイヤーが対電極として使用された。水溶性組成物、ウエハ及び白金ワイヤーは互いに電気的に接続された。組成物はおだやかに撹拌され、室温に維持された。最初に、1.2Vで0.1A/dmのアノード電流が2秒間ウエハに適用され、続いて電流は1秒間停止された。アノードから0電流のパルスが30サイクル繰り返された。実質的に均一なナノ細孔エミッター層を形成するために電流トラックとバスバーがエッチングされた後、セルは水溶性組成物から除かれ、脱イオン水でリンスされた。
【0069】
ドープされた単結晶シリコンウエハはラックに置かれ、続いてENLIGHTTM1300電気ニッケルめっき化学種を含むめっきセルに浸漬された。ウエハを乗せたラックは整流器と接続され、固体ニッケルアノードが液中で対電極として作用した。ウエハはカソードとして作用した。浴、ウエハ及び対電極はすべて電気的に接続され、1A/dmのカソード電流が1分間適用された。めっきサイクルの間中、人工光がウエハに適用された。光源は250ワットのハロゲンランプであった。めっき温度は30℃から50℃の幅であった。めっきは、電流トラック及びバスバーにニッケルシード層が300nm析出するまで続けられた。
【0070】
ニッケルめっきされたウエハは続いてENLIGHTTM420電気銅めっき浴を含む電気めっきセル中に置かれた。ウエハを乗せたラックは整流器と接続され、銅アノードが浴中で対電極として作用した。浴、ウエハ及び対電極はすべて電気的に接続され、2A/dmのカソード電流が14分間適用され、電流トラック及びバスバー上のニッケルシード層上に6−10μmの銅が析出した。めっきの間、人工光が再びウエハに適用された。光源は250ワットのハロゲンランプであった。めっき温度は20℃から50℃の幅であった。
【0071】
ウエハはめっきセルから除かれ、電流トラック及びバスバーのめっき層の密着性がテストされた。ASTMD3359−97標準テープテストが金属層の密着性のテストに用いられた。バスバー上の金属層ははがれなかったが、電流トラックのいくつかの点在する箇所がウエハからはがれた。密着性の不適合が生じた箇所は、ウエハのシリコンとニッケルの間の境界面であった。
【0072】
例6
細孔の整流器サイクルの数が30から45に増やされた他は、例5の方法が繰り返された。他の準備及び条件はすべて同じであった。
【0073】
ウエハはめっきセルから除かれ、電流トラックとバスバーの金属層の密着性が試験された。ASTMD3359−97標準テープテストが金属層の密着性のテストに用いられた。電流トラック及びバスバー上のすべての析出金属はそのままで残っていた。テープの上にはまったく金属が観察されず、またニッケルとシリコンの境界面でさえも、ウエハからのめっき層の剥離はまったく示唆されなかった。
【0074】
例7
細孔の整流器サイクルの数が30から60に増やされた他は、例5の方法が繰り返された。他の準備及び条件はすべて同じであった。
【0075】
ウエハはめっきセルから除かれ、電流トラックとバスバーの金属層の密着性が試験された。ASTMD3359−97標準テープテストが金属層の密着性のテストに用いられた。電流トラック及びバスバー上のすべての析出金属はそのままで残っていた。テープの上にはまったく金属が観察されず、またニッケルとシリコンの境界面でさえも、ウエハからのめっき層の剥離はまったく示唆されなかった。
【0076】
例8
例5の方法が、エッチング溶液中で細孔シリコン層を形成するところまで繰り返された。
【0077】
エミッター層は続いてAMRAY1910二次電子顕微鏡で観察された。実質的に均一なナノ細孔層がエミッター層のピラミッド構造の表面に形成された。図1はピラミッド構造のひとつの表面の、170,000倍のSEMである。図1と長方形の囲みによる例示に示されるように、深さ61.2nmのナノ細孔層(囲みの左上の角から右下角)がエミッター層のピラミッド構造の表面上に形成された。囲いの幅は42.9nm(左から右)と測定され、囲みの高さは43.7nm(上から下)と測定された。
【0078】
例9
例7の方法が、エッチング溶液中でシリコンの細孔層を形成するところまで繰り返された。
【0079】
加えて、ナノ細孔形成前のエミッター層のシート比抵抗(ρ)がジャンダルエンジニアリング(Jandal Engineering Ltd.)の型番HM20を用いて17オーム/スクエアで測定された。ナノ細孔形成は、アノード電流を0にするパルスが60サイクル行われたことを除き、上述と同様に行われた。ナノ細孔形成の後エミッター層のシート比抵抗(ρ1)が測定され、23オーム/スクエアと決定された。エミッター層シート比抵抗は6オーム/スクエア又は39%増加し、エミッター層表面ナノ細孔上への金属めっきは、良好な密着性を示すであろう範囲内であった。
【0080】
エミッター層は続いてAMRAY1910二次電子顕微鏡で観察された。実質的に均一なナノ細孔層がエミッター層のピラミッド構造の表面に形成された。図2はピラミッド構造のひとつの表面の、100,000倍のSEMである。図2と長方形の囲みによる例示に示されるように、深さ104nmのナノ細孔層(囲みの左上の角から右下角)がエミッター層のピラミッド構造の表面上に形成された。囲いの幅は55.7nm(左から右)と測定され、囲みの高さは88.3nm(上から下)と測定された。
【0081】
例10
例6の方法が、エッチング溶液中でシリコンの細孔層を形成するところまで繰り返された。
【0082】
ナノ細孔形成は、アノード電流を0にするパルスが45サイクル行われたことを除き、上述と同様に行われた。エミッター層は続いてAMRAY1910二次電子顕微鏡で観察された。実質的に均一なナノ細孔層がエミッター層のピラミッド構造の表面に形成された。図3はピラミッド構造のひとつの表面の、75,000倍のSEMである。図3と長方形の囲みによる例示に示されるように、深さ80.9nmのナノ細孔層(囲みの左上の角から右下角)がエミッター層のピラミッド構造の表面上に形成された。囲いの幅は43.2nm(左から右)と測定され、囲みの高さは68.4nm(上から下)と測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸化エミッター層を有する前面、裏面、及びPN接合を有する半導体ウエハを提供し、
b)該半導体ウエハを1以上のビフルオリド源、1以上のフッ化物塩、又はこれらの混合物及び1以上の金属イオン源を含有する組成物に接触させ、
c)該組成物に電流を発生させ、
d)前もって決定された時間アノード電流を適用し、続いて前もって決定された時間アノード電流を切断し、このサイクルを半導体ウエハの酸化エミッター層にナノ細孔が形成されるまで繰り返し、
e)ナノ細孔の層上に金属が析出するようカソード電流及び光を適用する
方法。
【請求項2】
ビフルオリド源が、アルカリ金属ビフルオリド塩、アンモニウムフルオリド、アンモニウムビフルオリド、フルオロボレート、フルオロホウ酸、スズビフルオリド、アンチモンビフルオリド、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、アルミニウムヘキサフルオリド及び脂肪族アミン、芳香族アミン及び窒素含有複素環化合物の四級塩であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、スルファミン酸、スルホン酸、鉱酸、アミノ酸及びカルボン酸から選択される酸を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属イオンがニッケルイオン、パラジウムイオン、コバルトイオン又は銀イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属がニッケル、パラジウム、コバルト又は銀である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)酸化エミッター層を有する前面、裏面及びPN接合を有する半導体ウエハを提供し、
b)該半導体ウエハを1以上のビフルオリド源、1以上のフッ化物塩源またはこれらの混合物を含有する組成物に接触させ、
c)該組成物に電流を発生させ、
d)前もって決定された時間アノード電流を適用し、続いて前もって決定された時間アノード電流を切断し、このサイクルを半導体ウエハの酸化エミッター層にナノ細孔が形成されるまで繰り返し、
e)半導体ウエハを金属めっき溶液に接触させ、
f)電流を金属めっき液に発生させ、ナノ細孔エミッター層の上に金属を析出させる、
方法。
【請求項7】
金属がニッケルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに銅又は銀をニッケルの上に析出させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに銅のスズストライクを析出させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに銀の上に銀ストライクを析出させることを含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126999(P2012−126999A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−270791(P2011−270791)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)