説明

半導体スイッチング素子のドライブ回路及びX線高電圧装置

【課題】半導体スイッチング素子の入力容量にチャージされた電荷を直流電源側に回生可能なドライブ回路、及びそれを利用したX線高電圧装置を提供する。
【解決手段】ゲート電極と第1の出力電極間に入力容量が形成された半導体スイッチング素子を駆動するため、直流電圧源とゲート電極間に第1のスイッチを接続し、第1の出力電極と直流電圧源の基準電位端間に第2のスイッチを接続し、第1,第2のスイッチをオンして半導体スイッチング素子をターン・オンさせる。また直流電圧源の直流電圧を昇圧し、昇圧電源と第1の出力電極間に第3のスイッチを接続し、第1,第2のスイッチのオフ期間に第3のスイッチをオンして半導体スイッチング素子をターン・オフさせ、第1,第2のトランジスタのオン期間に充電された入力容量の電荷を第3のスイッチのオン期間に直流電圧源に回生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子のドライブ回路に関する。またX線CT装置(X線コンピュータ断層撮影装置)に使用するX線高電圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、X線管からのX線ビームを被検体に照射し、被検体を透過したX線をX線検出器で検出し、その検出結果によるデータを画像処理して断層像を得るようにしている。
【0003】
一方、X線CT装置には、X線管に高電圧(管電圧)を供給するためにX線高電圧装置が搭載されている。X線高電圧装置は、商用交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧をインバータ回路で高周波の交流電圧に変換するようにしている。そしてこの高周波の交流電圧を高電圧トランスで昇圧し、この昇圧した交流電圧を整流することで直流高電圧を得て、この直流高電圧をX線管に印加してX線を発生するようにしている。
【0004】
特許文献1には、インバータ回路を含むCTシステム用のX線発生器が記載されている。この例では、直流電圧をインバータによって特定の周波数の交流電圧に変換し、高電圧タンクに供給する例が記載されている。
【0005】
また、直流電圧を高周波の交流電圧に変換するインバータ回路は、電力用半導体スイッチング素子を用いて構成しており、半導体スイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)が一般的に使用されている。
【0006】
上記半導体スイッチング素子(IGBT)を駆動するドライブ回路は、正と負の電源を用いるのが一般的であり、正、負の電源間に2つのトランジスタを直列に接続し、それらトランジスタの接続点(出力端)をIGBTのゲートに接続し、2つのトランジスタを交互にオン・オフすることで、IGBTをターン・オン又はターン・オフさせるようにしている。
【0007】
図6は、一般的なIGBTのドライブ回路の一例を示す。IGBTを駆動するため、2つの直列接続したトランジスタQ10,Q20が設けられ、トランジスタQ10,Q20の接続点を、抵抗R10を介してIGBTのゲートに接続している。また直流電源V10とV20を直列に接続し、トランジスタQ10のコレクタを直流電源V20のプラス側に接続し、トランジスタQ20のエミッタを直流電源V10のマイナス側に接続し、直流電源V10とV20の接続点をIGBTのエミッタに接続している。
【0008】
図6の回路において、IGBTをターン・オンさせる場合は、ドライブ回路の一方のトランジスタQ10をオンにして直流電源V20からの正電圧をIGBTのゲートに供給する。このときトランジスタQ20はオフしている。またIGBTをターンフさせる場合は、ドライブ回路の他方のトランジスタQ20をオンにして直流電源V10からの負電圧をIGBTのゲートに供給する。
【0009】
ところで、IGBTのゲートには入力容量Ciが存在し、IGBTのターン・オン時に、直流電源V20からトランジスタQ10を介して入力容量Ciに電流が流れ、入力容量Ciが充電され、IGBTのターン・オフ時に、入力容量Ciの充電電荷をトランジスタQ20を介して負電源側に放電するようにしている。
【0010】
しかしながら、このようなドライブ回路では、IGBTがターン・オンからターンフに切換わるたびに、ゲートにチャージした電荷を捨ててしまうため、入力容量Ciの大きな大電力用の半導体スイッチング素子をドライブする場合、スイッチング損失が大きくなるという欠点がある。
【0011】
またX線CT装置では、大出力のX線高電圧装置を実現しようとすると、インバータ回路の動作周波数を高める必要があるが、従来のインバータ回路では動作周波数に比例してドライブ回路の損失が増加するため、小型化が難しく動作周波数をあまり高くすることができないという不具合があった。
【特許文献1】特開2005−21682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のX線高電圧装置では、インバータ回路の半導体スイッチング素子をオン・オフするたびにゲートにチャージした電荷を捨てているため、入力容量の大きな大電力素子をドライブする場合、スイッチング損失が大きくなっていた。また、X線CT装置のように、限られた空間にX線高電圧装置を収納する場合、小型化が難しいため、インバータ回路の動作周波数を高くすることができないという不具合があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、半導体スイッチング素子のゲート入力容量Ciにチャージされた電荷を電源に回生することができるドライブ回路、及びインバータ回路の動作周波数を高めることが可能なX線高電圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の本発明は、ゲート電極と第1の出力電極間に入力容量が形成された半導体スイッチング素子を駆動するドライブ回路において、第1の直流電圧源からの直流電圧によって動作し、前記半導体スイッチング素子をターン・オン制御する第1の回路と;前記第1の直流電圧源からの直流電圧を昇圧して第2の直流電圧を生成する第2の直流電圧源と、前記第2の直流電圧によって動作し、前記半導体スイッチング素子をターン・オフさせる第2の回路と;前記半導体スイッチング素子のターン・オン時に前記入力容量に蓄積された電荷をターン・オフ時に前記第1の直流電圧源に回生する回生回路と;を具備したことを特徴とする。
【0015】
また請求項5記載の本発明は、ゲート電極及び第1,第2の出力電極を有し前記ゲート電極と前記第1の出力電極間に入力容量が形成された半導体スイッチング素子を駆動するドライブ回路であって、第1の直流電圧源の出力電圧端子と前記半導体スイッチング素子のゲート電極間に主導電路が接続され、この主導電路と並列に逆極性のダイオードが接続された第1のトランジスタと;前記半導体スイッチング素子の前記第1の出力電極と前記第1の直流電圧源の基準電位端子間に主導電路が接続された第2のトランジスタと;前記第1の直流電圧源からの直流電圧を昇圧して第2の直流電圧を生成する第2の直流電圧源と;前記第2の直流電圧源の出力電圧端子と前記半導体スイッチング素子の前記第1の出力電極間に主導電路が接続された第3のトランジスタと;前記第1及び第2のトランジスタと、前記第3のトランジスタを交互にオン・オフ制御する制御回路と;を具備し、前記第1及び第2のトランジスタの導通によって前記半導体スイッチング素子をターン・オンさせて前記第入力容量を充電し、前記第3のトランジスタの導通によって前記半導体スイッチング素子をターン・オフさせて前記入力容量の充電電荷を前記ダイオードを介して前記第1の直流電圧源に回生することを特徴とする。
【0016】
さらに請求項8記載の本発明のX線高電圧装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換する直流電源部と;複数の半導体スイッチング素子を含み、これら複数の半導体スイッチング素子をオン・オフ制御して前記直流電源部からの直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と;前記インバータ回路からの交流出力電圧を昇圧する高電圧トランスと;前記高電圧トランスの出力電圧を直流電圧に変換してX線管に供給する高電圧整流回路と;から成り、前記インバータ回路の複数の半導体スイッチング素子をそれぞれ駆動するため、請求項1又は請求項5に記載のドライブ回路を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体スイッチング素子のゲート入力容量Ciにチャージされた電荷を第1の直流電圧源に回生することによって、電力損失を低減することができ、半導体スイッチング素子のゲートドライブ回路を小型化することができる。またX線高電圧装置のインバータの動作周波数を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明のX線高電圧装置の全体の構成を示すブロック図である。X線高電圧装置10は、整流回路12、平滑コンデンサ13、インバータ回路14、高電圧トランス15、高電圧整流回路16、平滑コンデンサ17から成っており、整流回路12には商用交流電源11が接続され、平滑コンデンサ17の両端にX線管18が接続されている。
【0020】
整流回路12は、商用交流電源11からの交流電源電圧を直流電圧に変換する。平滑コンデンサ13は整流回路12の出力電圧を平滑するもので、整流回路12と平滑コンデンサ13は直流電源部となる。平滑コンデンサ13の一端を直流電圧端子とすると、他端は基準電位端子となる。
【0021】
インバータ回路14は、平滑コンデンサ13からの直流電圧を高周波の交流電圧に変換するもので、半導体スイッチング素子21a,21b,21c,21dと、それぞれの半導体スイッチング素子21a〜21dを駆動するドライブ回路22a,22b,22c,22dを含んでいる。
【0022】
インバータ回路14からの高周波の交流電圧は、高電圧トランス15によって昇圧され、高電圧整流回路16に供給され、直流高電圧に変換される。高電圧整流回路16からの直流高電圧は、さらに平滑コンデンサ17によって平滑される。
【0023】
X線管18は、アノード18aとカソード18kを有し、アノード18aとカソード18k間に平滑コンデンサ17によって平滑された直流高電圧(管電圧)が印加される。
【0024】
インバータ回路14の半導体スイッチング素子21a〜21dは、例えばIGBTで構成され、以下、IGBT21a〜21dとして説明する。
【0025】
IGBT21aとIGBT21bは直列に接続され、平滑コンデンサ13の両端間に接続される。同様にIGBT21cとIGBT21dも直列に接続され、平滑コンデンサ14の両端間に接続される。IGBT21a〜21dは、ドライブ回路22a〜22dによってそれぞれ駆動され、IGBT21aとIGBT21bは交互にオン・オフ動作し、IGBT21cとIGBT21dも交互にオン・オフ動作する。
【0026】
図2は、IGBT21a〜21dの動作タイミングを示す波形図であり、VaはIGBT21aのゲート電圧、VbはIGBT21bのゲート電圧、VcはIGBT21cのゲート電圧、VdはIGBT21dのゲート電圧をそれぞれ示している。
【0027】
図2において、タイミングT1,T3は、IGBT21aとIGBT21dがオンする期間であり、この期間は、IGBT21bとIGBT21cがオフする。このとき、IGBT21a→高電圧トランス15の一次巻線→IGBT21dへと電流が流れる。
【0028】
また、タイミングT2,T4は、IGBT21bとIGBT21cがオンする期間であり、この期間は、IGBT21aとIGBT21dがオフする。このとき、IGBT21c→高電圧トランス15の一次巻線→IGBT21bへと電流が流れる。
【0029】
こうして、高電圧トランス15の一次巻線には、タイミングT1,T3と、タイミングT2,T4で、それぞれ逆方向に電流が流れ、高電圧トランス15の二次巻線には高圧パルスが誘起され、高圧整流回路16によって整流することで直流高電圧が得られる。
【0030】
次に、本発明のIGBTのドライブ回路22a〜22dの詳細について、図3を参照して説明する。
【0031】
インバータ回路14は、IGBT21a〜21dと、ドライブ回路22a〜22dで構成されているが、ドライブ回路22a〜22dの構成は同一であるため、図3では、IGBT21aとドライブ回路22aから成る回路部(図1の点線14aで示す部分)を代表的に示している。
【0032】
IGBT21aは、ゲート電極、エミッタ電極、コレクタ電極を有し、エミッタ電極が第1の出力電極となり、コレクタ電極が第2の出力電極となる。以下の説明ではIGBT21aのゲート電極をゲート、第1の出力電極をエミッタ、第2の出力電極をコレクタと称して説明する。またIGBT21aのゲート・エミッタ間には入力容量Ciが存在する。
【0033】
図3において、トランジスタQ1,Q2は第1,第2のスイッチであり、IGBT21aを駆動するトランジスタである。トランジスタQ1のコレクタは、直流電圧源23のプラス側(出力電圧端子)に接続され、エミッタは抵抗R1を介してIGBT21aのゲートに接続されている。またトランジスタQ1の主導電路(コレクタ・エミッタ路)には、並列にダイオードD1が逆向きに接続されている。ここで、直流電圧源23の電圧をV1(例えば15V)とする。
【0034】
一方、トランジスタQ2のコレクタは、IGBT21aのエミッタに接続され、トランジスタQ2のエミッタは直流電圧源23のマイナス側(基準電位端子)に接続されている。トランジスタQ1,Q2のベースには、制御回路IC1からの制御信号S1,S2が供給され、トランジスタQ1,Q2はそれぞれ同時にオン・オフ駆動される。
【0035】
また直流電圧源23のプラス側は、昇圧型のDC/DCコンバータ24に接続され、直流電圧は昇圧される。DC/DCコンバータ24は第2の直流電圧源となり、その出力端子はトランジスタQ3の主導電路(エミッタ・コレクタ路)を介してIGBT21aのエミッタ及びトランジスタQ2のコレクタに接続されている。
【0036】
トランジスタQ3は第3のスイッチであり、そのベースには、制御回路IC1からの制御信号S3が供給され、トランジスタQ1,Q2がオンする期間はオフし、トランジスタQ1,Q2がオフする期間はオンするように制御される。
【0037】
DC/DCコンバータ24は、コンデンサC1、リアクトルL1、スイッチ用のトランジスタQ4、ダイオードD2、コンデンサC2、及びトランジスタQ4をオン・オフ制御する制御回路IC2を有している。
【0038】
DC/DCコンバータ24は、制御回路IC2によってトランジスタQ4をオン・オフし、そのオン・オフ比率を制御することによって、昇圧した出力電圧V2を得ることができる。また抵抗R2,R3の分圧回路によって、出力電圧V2に比例した電圧を制御回路IC2にフィードバックするで、出力電圧V2を一定に保つようにしている。
【0039】
DC−DCコンバータ24のトランジスタQ4のオン時間をTon、オフ時間をToffとすると、デューティ比Dは、以下の(1)式で求められる。
【0040】
D=Ton/(Ton+Toff) ・・・(1)
また、直流電圧源23の電圧をV1とすると、DC−DCコンバータ24の出力電圧V2は、(2)式で求められる。
【0041】
V2 = V1・1/(1−D) ・・・(2)
次に図3の動作を、図4を参照して説明する。図4のS1,S2,S3は、それぞれトランジスタQ1,Q2,Q3のベースに供給される制御信号の波形を示している。
【0042】
IGBT21aをオンするためのゲート・エミッタ間の電圧をVon、IGBT21aをオフするためのゲート・エミッタ間の電圧をVoffとすると、例えばVon は15V、Voffは−9Vである。したがって、DC−DCコンバータ24の出力電圧V2は、(3)式で求められる。
【0043】
V2=Von−Voff ・・・(3)
これにより、V2=15V−(−9V)=24V となり、DC−DCコンバータ24のトランジスタQ4のオン・オフ比率を制御して、出力電圧V2として24Vを得るようにする。
【0044】
次に、IGBT21aをオンするときの動作について説明する。このとき、図4の期間T1で示すように、トランジスタQ1とQ2は制御信号S1,S2によってオンとなり、トランジスタQ3は制御信号S3によってオフとなる。これにより、IGBT21aがターン・オンする。
【0045】
この期間T1は、直流電圧源23→トランジスタQ1のコレクタ・エミツタ路→抵抗R1→入力容量Ci→トランジスタQ2のコレクタ・エミツタ路の経路で電流が流れ、IGBT21aの入力容量Ciを電圧15Vに充電する。
【0046】
一方、IGBT21aをオフするときは、図4の期間T2で示すように、トランジスタQ1、Q2は制御信号S1,S2によってオフとなり、トランジスタQ3は制御信号S3によってオンとなる。これにより、IGBT21aがターン・オフする。
【0047】
この期間T2は、DC−DCコンバータ24の出力端(24V)→トランジスタQ3のエミッタ・コレクタ路→入力容量Ci→抵抗R1→ダイオードD1→直流電圧源23の経路で電流が流れ、IGBT21aの入力容量Ciは、−9Vに充電される。
【0048】
この期間T2の電流は、直流電圧源23を充電する向きに流れるため、IGBT21aをオンするときに使われた入力容量Ciの電荷が直流電圧源23に回生される。したがって、IGBT21aをターン・オンするときは直流電圧源23から電力が供給されるが、IGBT21aをターン・オフするときは直流電圧源23に電力が戻ってくる。このときは、抵抗R1によって若干のロスは生じるが、抵抗R1以外に損失は発生しない。
【0049】
これにより、IGBT21aのゲートドライブ回路の電力損失を低下させることができる。またIGBT21aをオンするときに使われた電荷が直流電圧源23に回生されるため、ゲートドライブ回路22a〜22dの動作電源として高電圧の直流電源を設ける必要がなく、直流電圧源23を小型化することができる。
【0050】
図5は、直流電圧源23の一例を示す回路図である。
【0051】
直流電圧源23は、直流電圧V0が一次巻線に供給されるトランス25と、トランス25の一次巻線に直列に接続されたスイッチ素子Q5と、スイッチ素子Q5を駆動する制御回路IC3と、トランス25の複数の二次巻線にそれぞれ接続された整流回路26,27を有してなる。
【0052】
この直流電圧源23は、スイッチ素子Q5を所定のデューティ比でオン・オフすることにより、トランス25の一次巻線から二次巻線に電力エネルギーが供給され、整流回路26,27で整流し、平滑することにより、所定の電圧を得ることができる。尚、整流回路26は、整流用のダイオードD3と平滑用コンデンサC3を有し、整流回路27は、整流用のダイオードD4と平滑用コンデンサC4を有してなる。
【0053】
整流回路26,27の出力電圧は、スイッチング素子Q5のオン・オフのデューティ比と、トランス25の一次巻線と二次巻線の巻数比で決まり、整流回路26の出力電圧をドライブ回路22aの直流電圧V1(図3)として使用することができる。また整流回路27の出力電圧は、ドライブ回路22bの直流電圧V1として使用することができる。他のドライブ回路22c,22dの直流電圧V1も同様にして得ることができる。
【0054】
整流回路26の出力電圧をドライブ回路22aの電源電圧V1として利用した場合、整流回路26の出力電圧端子28は、図3のトランジスタQ1のコレクタ及びDC/DCコンバータ24に接続され、整流回路26の基準電位端29はトランジスタQ2のエミッタに接続される。
【0055】
したがって、IGBT21aがターン・オフの期間、出力電圧V1はDC/DCコンバータで昇圧されてトランジスタQ3に供給され、かつ入力容量Ciの電荷が抵抗R1、ダイオードD1を介して整流回路26に回生されることになる。
【0056】
一般的に、IGBTの動作周波数を高くした場合、入力容量Ciの電荷を放電する回数が増えるため、動作周波数が高くなるほど電力損失が大きくなり、ゲートドライブ回路が大型化する傾向にある。特にX線CT装置の架台のように限られたスベースに実装するには小型化する必要があり、このためIGBTの動作周波数をあまり高くすることができないという不具合があった。
【0057】
この点、本発明ではIGBTの入力容量Ciの電荷を直流電圧源23に回生することにより、電力損失を低下させることができ、動作周波数を高く設定することができるためドライブ回路を小型化することができる。したがって、X線CT装置の架台に実装する場合もスペース的に有利となる。
【0058】
尚、以上の説明では、半導体スイッチング素子としてIGBTを用いた例を述べたが、電圧制御可能な電力用スイッチング素子としては、MOSFETを利用することもできる。また特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のX線高電圧装置の一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明のX線高電圧装置に使用するインバータ回路の動作を説明するタイミングチャート。
【図3】本発明のインバータ回路に使用するIGBTドライブ回路の一実施形態を示す回路図。
【図4】本発明のIGBTドライブ回路の動作を説明するタイミングチャート。
【図5】本発明のIGBTドライブ回路の直流電圧源の一例を示す回路図。
【図6】一般的なIGBTドライブ回路を示す回路図。
【符号の説明】
【0060】
10…X線高電圧装置
11…交流電源
12…整流回路
13…平滑コンデンサ
14…インバータ回路
15…高電圧トランス
16…高電圧整流回路
18…X線管
21a〜21d…半導体スイッチング素子(IGBT)
22a〜22d…ドライブ回路
23…直流電圧源
24…昇圧型DC/DCコンバータ
Ci…入力容量
Q1,Q2,Q3…スイッチ(トランジスタ)
D1…回生用ダイオード
IC1…制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と第1の出力電極間に入力容量が形成された半導体スイッチング素子を駆動するドライブ回路において、
第1の直流電圧源からの直流電圧によって動作し、前記半導体スイッチング素子をターン・オン制御する第1の回路と、
前記第1の直流電圧源からの直流電圧を昇圧して第2の直流電圧を生成する第2の直流電圧源と、
前記第2の直流電圧によって動作し、前記半導体スイッチング素子をターン・オフさせる第2の回路と、
前記半導体スイッチング素子のターン・オン時に前記入力容量に蓄積された電荷をターン・オフ時に前記第1の直流電圧源に回生する回生回路と、を具備したことを特徴とする半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項2】
前記半導体スイッチング素子は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項3】
前記第2の直流電圧源は、前記第1の直流電圧源からの直流電圧を昇圧する昇圧型DC/DCコンバータで成ることを特徴とする請求項1記載の半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項4】
前記第1の回路は、前記第1の直流電圧源の出力電圧端子と前記半導体スイッチング素子のゲート電極間に接続した第1のスイッチと、前記半導体スイッチング素子の前記第1の出力電極と前記第1の直流電圧源の基準電位端子間に接続した第2のスイッチを有し、
第2の回路は、前記第2の直流電圧源の出力電圧端子と前記半導体スイッチング素子の前記第1の出力電極間に接続された第3のスイッチを有して成り、
前記第1,第2のスイッチのオンによって前記半導体スイッチング素子をターン・オンさせ、前記第1,第2のスイッチのオフ期間に前記第3のスイッチをオンして前記半導体スイッチング素子をターン・オフさせることを特徴とする請求項1記載の半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項5】
ゲート電極及び第1,第2の出力電極を有し前記ゲート電極と前記第1の出力電極間に入力容量が形成された半導体スイッチング素子を駆動するドライブ回路であって、
第1の直流電圧源の出力電圧端子と前記半導体スイッチング素子のゲート電極間に主導電路が接続され、この主導電路と並列に逆極性のダイオードが接続された第1のトランジスタと、
前記半導体スイッチング素子の前記第1の出力電極と前記第1の直流電圧源の基準電位端子間に主導電路が接続された第2のトランジスタと、
前記第1の直流電圧源からの直流電圧を昇圧して第2の直流電圧を生成する第2の直流電圧源と、
前記第2の直流電圧源の出力電圧端子と前記半導体スイッチング素子の前記第1の出力電極間に主導電路が接続された第3のトランジスタと、
前記第1及び第2のトランジスタと、前記第3のトランジスタを交互にオン・オフ制御する制御回路と、を具備し、
前記第1及び第2のトランジスタの導通によって前記半導体スイッチング素子をターン・オンさせて前記入力容量を充電し、前記第3のトランジスタの導通によって前記半導体スイッチング素子をターン・オフさせて前記入力容量の充電電荷を前記ダイオードを介して前記第1の直流電圧源に回生することを特徴とする半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項6】
前記半導体スイッチング素子は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)であることを特徴とする請求項5記載の半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項7】
前記第2の直流電圧源は、前記第1の直流電圧源からの直流電圧を昇圧する昇圧型DC/DCコンバータで成ることを特徴とする請求項5記載の半導体スイッチング素子のドライブ回路。
【請求項8】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換する直流電源部と、
複数の半導体スイッチング素子を含み、これら複数の半導体スイッチング素子をオン・オフ制御して前記直流電源部からの直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路からの交流出力電圧を昇圧する高電圧トランスと、
前記高電圧トランスの出力電圧を直流電圧に変換してX線管に供給する高電圧整流回路とから成り、
前記インバータ回路の複数の半導体スイッチング素子をそれぞれ駆動するため、請求項1又は請求項5に記載のドライブ回路を用いたことを特徴とするX線高電圧装置。
【請求項9】
前記インバータ回路は、
前記直流電源部の直流電圧端子と基準電位端子間に接続された、第1,第2半導体スイッチング素子で成る直列回路と、第3,第4半導体スイッチング素子で成る直列回路とを具備し、
第1,第2半導体スイッチング素子の接続点と、前記第3,第4半導体スイッチング素子の接続点との間に前記高電圧トランスの一次巻線を接続し、
前記第1,第4の半導体スイッチング素子と、前記第2,第3の半導体スイッチング素子を交互にオン・オフ制御することを特徴とする請求項8記載のX線高電圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−226723(P2008−226723A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65463(P2007−65463)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】