説明

半導体レーザモジュール

【目的】 半導体レーザモジュールにおける電子冷却素子の負荷が減少し、外気温度の変化に対しても安定した光出力を得ることができるとともに、半導体レーザモジュールの組み立て工数が減少する半導体レーザモジュールを提供する。
【構成】 半導体レーザチップ、光学系および電子冷却素子を備え、半導体レーザチップを電子冷却素子で冷却しながら発光させる半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザチップ1が一体成形された熱伝導性のよい材料からなるサブマウント11上にヒートシンク2を介して搭載されてなり、前記サブマウント11は、その一面11bが電子冷却素子の冷却面に該冷却面の面積にほぼ等しい面積で熱接触する形状をなしており、また、半導体レーザチップ1の搭載部11aが、搭載された半導体レーザチップ1の放射端面の前方を遮らない形状をなして、放射方向に光学系の搭載部11dを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光通信システムなどの光源となる半導体レーザモジュールに関し、特に、半導体レーザチップが電子冷却素子上に搭載された半導体レーザモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザチップは温度により光出力などが変化する特性を有するため、半導体レーザチップを用いたモジュールでは、電子冷却素子を用いて半導体レーザチップの発熱を放熱し、その動作特性を安定化させている。従来の半導体レーザモジュールは、例えば図2R>2に示す構造をしている。図2において、半導体レーザチップ1はダイヤモンドなどからなるヒートシンク2を介して、CuWなどの熱伝導性のよい材料からなるキャリア3上に搭載されている。半導体レーザチップ1とヒートシンク2の接合、およびヒートシンク2とキャリア3の接合は高融点のAu−Sn半田を用いて行われている。このような構造で供給される半導体レーザモジュール用部品を、CuWなどの熱伝導性のよい材料からなるベース4上にAu−Sn半田で接合し、さらに、ベース4をInSnなどの低融点半田で電子冷却素子5に接合して半導体レーザモジュールを構成する。6は光学系、7はパッケージ、7aはパッケージ7に設けられた光透過用の窓である。
【0003】上記半導体レーザモジュールにおいて、ヒートシンク2は二つの機能を有する。一つの機能は、熱伝導性のよい材質を用い、半導体レーザチップ1とキャリア3との熱接触面積を広げて、半導体レーザチップ1とキャリア3間の熱抵抗を低減することである。もう一つの機能は、半導体レーザチップ1に近い熱膨張率を有し、歪み緩和材として温度変化による熱歪みにもろい半導体レーザチップ1を保護することである。また、キャリア3は半導体レーザチップ1からのレーザ光を遮らないように、かつ放熱性よく半導体レーザチップ1を搭載するためのものである。さらに、ベース4は、キャリア3と電子冷却素子5の接着面の形状が異なり、キャリア3の接着面積が電子冷却素子5の接着面よりも小さいため、この形状の相違をマッチングさせて、電子冷却素子5の放熱面を充分に使えるようにする機能を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のような半導体レーザモジュール用部品を用いると、キャリアとベース間の半田の濡れ性が悪く、そこに微小な気泡ができたり、半田付けの際に酸化が起こると、熱抵抗が増加して、半導体レーザチップからの発熱を効率的に放散できなくなる。そのため、電子冷却素子の冷却負担が大きくなり、半導体レーザモジュール全体としての消費電力が大きくなるという問題、および高温の環境では動作範囲が狭くなるという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を解決した半導体レーザモジュールを提供するもので、半導体レーザチップ、光学系および電子冷却素子を備え、半導体レーザチップを電子冷却素子で冷却しながら発光させる半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザチップが一体成形された熱伝導性のよい材料からなるサブマウント上にヒートシンクを介して、あるいは直接に搭載されてなり、前記サブマウントは、その一面が電子冷却素子の冷却面に該冷却面の面積にほぼ等しい面積で熱接触する形状をなしており、また、半導体レーザチップの搭載部が、搭載された半導体レーザチップの放射端面の前方を遮らない形状をなして、放射方向に光学系の搭載部を有することを特徴とするものである。
【0006】ここで、サブマウントとは、半導体レーザチップを搭載し、電子冷却素子に直接接合される一体ものを指し、熱伝導性のよい材質から構成されている。サブマウントを構成する材料が一体成形されているということは、均質で接合部がないということであり、それだけ熱伝導性がよい。
【0007】
【作用】上述のように、半導体レーザチップをサブマウントに搭載すると、サブマウントを電子冷却素子に直接に接合できるので、従来に比較して、半導体レーザチップと電子冷却素子間の接合部の数が減り、半導体レーザチップの放熱性が向上する。また、サブマウントは、その一面が電子冷却素子の冷却面に該冷却面の面積にほぼ等しい面積で熱接触する形状をなしており、また、半導体レーザチップの搭載部が、搭載された半導体レーザチップの放射端面の前方を遮らない形状をなして、放射方向に光学系の搭載部を有するため、この部分に光学系を搭載することにより、半導体レーザチップからの放射光を遮ることなく、光学系に入射させることができる。従って、サブマウントを電子冷却素子に接合し、光学系をサブマウントに搭載すれば、従来に比較して、キャリアをベースに接合する工程を省くことができ、半導体レーザモジュールの組み立て工数を減らすことができる。
【0008】
【実施例】以下、図面に示した実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる半導体レーザモジュールの一実施例に用いたサブマウントの斜視図である。図示されているように、半導体レーザチップ1がヒートシンク2を介してサブマウント11に搭載されている。半導体レーザチップ1とヒートシンク2間、およびヒートシンク2とサブマウント11間はAu−Sn半田で接合されている。
【0009】サブマウント11は、熱伝導性のよいCuWからなり、上面に凸部11aを有し、また、平坦な底面11bを有する一体化したブロックである。凸部11a上には、その側面11cに半導体レーザチップ1の放射端面を位置合わせするように半導体レーザチップ1が搭載されている。底面11bは電子冷却素子の冷却面とほぼ等しい面積を有している。このサブマウント11は、底面11bで電子冷却素子(図示されず)に熱的に良好に接合し、また、凸部11a以外の上面部分11dに光学系(図示されず)を搭載する。なお、半導体レーザチップ1は凸部11aの側面11cに半導体レーザチップ1の放射端面を位置合わせするように搭載されているので、光学系には、搭載された半導体レーザチップ1からの放射光が遮られることなく、入射する。
【0010】このサブマウント11を用いて半導体レーザモジュールを組み立てると、図2に示した従来例に比較して、半導体レーザチップと電子冷却素子間の接合部分が一箇所少なくなるので、半導体レーザチップからの発熱を効率的に放散できるとともに、組み立て作業の接合工数が減る。なお、本発明において、サブマウントの材質は熱伝導性がよく、接合部のない一体化したものであればCuWに限定されず、また、その形状はモジュールの機能に応じて各種の形状をなすものである。
【0011】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、半導体レーザチップ、光学系および電子冷却素子を備え、半導体レーザチップを電子冷却素子で冷却しながら発光させる半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザチップが一体成形された熱伝導性のよい材料からなるサブマウント上にヒートシンクを介して、あるいは直接に搭載されてなり、前記サブマウントは、その一面が電子冷却素子の冷却面に該冷却面の面積にほぼ等しい面積で熱接触する形状をなしており、また、半導体レーザチップの搭載部が、搭載された半導体レーザチップの放射端面の前方を遮らない形状をなして、放射方向に光学系の搭載部を有するため、半導体レーザモジュールにおける半導体レーザチップの放熱性が向上し、電子冷却素子の負荷が減少し、消費電力を低減し、安定した光出力を得ることができるとともに、外気温度の変動に対しても安定した光出力を得ることができるという優れた効果があり、また、半導体レーザモジュールの組み立て工数が減少するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる半導体レーザモジュールの一実施例に用いたサブマウントの斜視図である。
【図2】従来の半導体レーザモジュールの説明図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザチップ
2 ヒートシンク
11 サブマウント
11a 凸部
11b 底面
11c 側面
11d 上面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体レーザチップ、光学系および電子冷却素子を備え、半導体レーザチップを電子冷却素子で冷却しながら発光させる半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザチップが一体成形された熱伝導性のよい材料からなるサブマウント上にヒートシンクを介して、あるいは直接に搭載されてなり、前記サブマウントは、その一面が電子冷却素子の冷却面に該冷却面の面積にほぼ等しい面積で熱接触する形状をなしており、また、半導体レーザチップの搭載部が、搭載された半導体レーザチップの放射端面の前方を遮らない形状をなして、放射方向に光学系の搭載部を有することを特徴とする半導体レーザモジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平9−18088
【公開日】平成9年(1997)1月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−160846
【出願日】平成7年(1995)6月27日
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)