半導体発光素子
【課題】実施形態は、半導体表面と、樹脂と、の間の接着力を高めて剥離を抑制し、信頼度を向上させることが可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、半導体発光素子は、光を放射可能な第1半導体層と、前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面を有する第2半導体層を備える。前記第2半導体層は、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する。さらに、前記突起の少なくとも先端に設けられた誘電体膜と、前記第2領域の上に設けられた電極と、を備える。
【解決手段】実施形態によれば、半導体発光素子は、光を放射可能な第1半導体層と、前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面を有する第2半導体層を備える。前記第2半導体層は、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する。さらに、前記突起の少なくとも先端に設けられた誘電体膜と、前記第2領域の上に設けられた電極と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置、表示装置、信号機などに用いる発光素子には、高い光出力と長寿命とが求められる。半導体発光素子は、従来のバルブ光源に比べて長寿命であり、これらの用途に適する。
【0003】
半導体発光素子の発光面側の半導体層の表面に微細な凹凸を設けると、半導体から外部への光取出し効率を高くし光出力を向上できる。しかしながら、半導体表面に設けられた凹凸は、半導体発光素子と、それを封じる樹脂と、の間の接着力を低下させることがある。樹脂封止した半導体発光素子では、発光素子の発熱により、半導体と樹脂との間の線膨張係数の違いに起因した応力が生じる。この応力は、半導体から樹脂を引き剥がす方向に働く。このため、接着力の低下した半導体素子と樹脂との間に隙間が生じ、光出力を低下させる。そこで、半導体表面と、樹脂と、の間の接着力を高めて剥離を抑制し、信頼度を向上させることが可能な半導体発光素子が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−21845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、半導体表面と、樹脂と、の間の接着力を高めて剥離を抑制し、信頼度を向上させることが可能な半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、半導体発光素子は、光を放射可能な第1半導体層と、前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面を有する第2半導体層を備える。前記第2半導体層は、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する。さらに、前記突起の少なくとも先端に設けられた誘電体膜と、前記第2領域の上に設けられた電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式断面図である。
【図2】半導体層の表面に設けられた突起を模式的に示す部分断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造過程を示す模式断面図である。
【図4】(a)は、半導体層表面の突起(convex)の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は、突起を形成した半導体層の部分断面図である。
【図5】半導体層表面に設けられた突起のSEM像(Scanning Electron Microscope image)である。
【図6】厚さの異なる誘電体膜を形成した突起の断面を示すSEM像である。
【図7】(a)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の樹脂封止された断面を示すSEM像であり、(b)〜(d)は、高温加湿試験(Temperature & Humid Operation)後の部分断面を示すSEM像である。
【図8】第1の実施形態に係る半導体発光素子の高温加湿試験結果を示すグラフであり、(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束の変動率を示し、(b)は、駆動電流50mAにおける光束の変動率を示している。
【図9】比較例に係る半導体発光素子の高温加湿試験後の部分断面を示すSEM像である。
【図10】比較例に係る半導体発光素子の高温加湿試験結果を示すグラフであり、(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束の変動率を示し、(b)は、駆動電流50mAにおける光束の変動率を示している。
【図11】第2の実施形態に係る半導体素子のチップ面を示す模式図である。
【図12】第2の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式部分断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の構造を例示する模式部分断面図である。
【図14】第3の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子100を示す模式断面図である。半導体発光素子100は、例えば、可視光を放射する発光ダイオード(Light emitting Diode:LED)である。
【0010】
半導体発光素子100は、第1半導体層10と、第2半導体層20と、第3半導体層30と、を備える。第1半導体層10、第2半導体層20および第3半導体層30のそれぞれは、例えば、Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)の組成式で表される化合物を含む。
【0011】
第1半導体層10は、Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)からなる多重量子井戸(Multi-Quantum Well)を含む。第1半導体層10は、第2半導体層から注入される電子と、第3半導体層から注入される正孔と、を再結合させることにより、光を放射する。
【0012】
第2半導体層20は、n形クラッド層21と、n形電流拡散層22と、を含む。n形クラッド層21は、第1半導体層10と、n形電流拡散層22と、の間に設けられる。例えば、n形クラッド層21は、厚さ0.6μmのIn0.5Al0.5Pからなり、n形電流拡散層22は、厚さ3.5μm、キャリア濃度1.6×1018cm−3のIn0.5(Al0.7Ga0.3)0.5Pからなる。
【0013】
第2半導体層20は、第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面と、を有する。第1主面は、第1半導体層10に向き合うn形クラッド層21の主面21aである。第2主面は、n形電流拡散層22の主面22aである。第2半導体層20は、主面22aにおいて、複数の突起が設けられた第1領域22bと、突起のない第2領域22cと、を有する。さらに、第2半導体層20は、第1領域22bにおいて、少なくとも突起の先端に設けられた誘電体膜を含む。
【0014】
さらに、電極60が、第2領域22cの上に設けられる。電極60と、n形電流拡散層22と、の間には、n形コンタクト層29を設ける。n形コンタクト層29のキャリア濃度は、n形電流拡散層22のキャリア濃度よりも高く、電極60のコンタクト抵抗を低減する。
【0015】
第3半導体層30は、第2半導体層20とは導電形が異なり、第1半導体層10を介して第2半導体層20に対向する。第3半導体層30は、第1半導体層10の側からp形クラッド層31と、p形中間層33と、p形組成傾斜層(compositional graded layer)34と、p形GaP層35と、p形コンタクト層36と、を含む。
【0016】
例えば、p形クラッド層31は、厚さ0.6μmのIn0.5Al0.5Pからなり、p形中間層33は、厚さ0.05μmのIn0.5(Al0.7Ga0.3)0.5Pからなる。p形組成傾斜層34は、厚さ0.03μmのInx(AlyGa1−y)1−xPを含み、その組成がIn0.5(Al0.7Ga0.3)0.5PからGaPへ徐々に変化する。すなわち、組成Xが0.5から0(ゼロ)に、組成Yが0.7から0(ゼロ)に変化するよう形成される。p形GaP層35は、0.3μmの厚さを有し、p形コンタクト層36は、p形GaP層35よりもキャリア濃度が高い、厚さ0.1μmのGaPからなる。
【0017】
以下、第1半導体層10、第2半導体層20および第3半導体層30を含む積層体を発光体70と、称する。
【0018】
半導体発光素子100は、さらに、発光体70を支持する支持体40と、反射層50と、を備える。支持体40は、発光体70の電極60とは反対の側に設けられる。反射層50は、発光体70と支持体40との間に設けられ、第1半導体層10が放射する光を第2半導体層20の方向に反射する。反射層50は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)53と、金(Au)55と、を積層した構造(stacked layer)である。また、Auの代わりにAgを用いても良い。ITO53は、第1半導体層10から放射された光に対し透明であり、ITO53の中を伝播した光が、Au55またはAgの表面で反射される。
【0019】
さらに、第3半導体層30と、反射層50と、の間に電流ブロック層51が設けられる。電流ブロック層51は、主面22aに垂直な平面視において、電極60に重なる部分を絶縁するように設けられる。ITO53は、電流ブロック層51が設けられない部分において、p形コンタクト層36に接し、反射層50と、第3半導体層30と、を電気的に接続する。
【0020】
電流ブロック層51は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)からなり、反射層50から電極60へ流れる電流の一部を狭窄する。これにより、電極60の直下の第1半導体層10の部分に流れる電流を抑制し、電極60に遮蔽されて外部に取り出すことができない発光を低減する。
【0021】
支持体40は、例えば、p形シリコン基板45と、その一方の主面45aの側に設けられた金属接合層41と、他方の主面45bの側に設けられた裏面電極46と、を有する。金属接合層41は、p形シリコン基板45の側からチタン(Ti)44と、白金(Pt)43と、Au42と、を積層した構造を有する。また、金属接合層41は、Ti/Pt/Ti/Auの組み合わせでも良い。一方、裏面電極46も、p形シリコン基板45の側からチタン(Ti)47と、白金(Pt)48と、Au49と、を積層した構造を有する。
【0022】
半導体発光素子100の製造過程において、反射層50の表面と、金属接合層41の表面と、を接触させ、発光体70と、p形シリコン基板45と、を接合する。例えば、反射層50のAu55と、金属接合層41のAu42と、を熱圧着し、支持体40が、発光体70を支持する構造を形成する。また、金属接合層41は、AuInによる液相拡散接合でも良い。
【0023】
図1に示すように、電流ブロック層51の端において、反射層50は段差を有し、接合した後の反射層50と、金属接合層41と、の間に空隙58が形成される。反射層50を金属接合層41よりも厚く設けることにより、空隙58の影響を無くし、支持体40と、発光体70と、の間の電気的な接合を確保することができる。例えば、電流ブロック層51の厚さ0.05μmに対し、ITO53の厚さを0.06μmとし、さらにAu55を積層する。
【0024】
本実施形態に係る半導体発光素子100は、支持体40の側に設けられた反射層50により、第1半導体層が放射する光を発光面(第1領域22b)の方向に伝播させ、外部に放出する。さらに、複数の突起を発光面22bに設けることにより、光取り出し効率を高くして光出力を向上させる。
【0025】
図2(a)〜図2(e)は、n形電流拡散層22の表面に設けられた突起を模式的に示す部分断面図である。
第1領域22bには、例えば、図2(a)に示す左右対称な形状の突起13を設けても良いし、図2(b)および図2(c)に示す非対称な傾斜した形状の突起14を設けても良い。図2(d)および図2(e)に示すように、さらに傾斜した形状の突起15であっても良い。
【0026】
図2(a)、図2(b)および図2(d)に示すように、誘電体膜17a、17bおよび17dは、突起13、14および15の先端に形成しても良い。
【0027】
図2(c)および図2(e)に示すように、誘電体膜17cおよび17eは、突起14および15の少なくとも片側の側面を覆うように形成しても良い。
【0028】
上記の例では、誘電体膜17a〜17eは、突起13〜15の表面の一部に設けられるが、突起13〜15の表面全体に設けても良い。
【0029】
誘電体膜17a〜17eは、例えば、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)および酸窒化珪素(SiON)のいずれかを含む。誘電体膜17a〜17eは、SiO2膜、SiN膜およびSiON膜から選択された少なくとも2つを含む積層膜であっても良い。これらの誘電体は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法を用いて形成することができる。
【0030】
次に、図3〜図5を参照して、突起15について説明する。図3(a)〜図3(c)は、半導体発光素子100の製造過程の一部を模式的に示す断面図である。図4(a)は、突起15の形状を模式的に示す部分断面図であり、図4(b)は、突起15を形成したn形電流拡散層22の部分断面図である。図5(a)〜図5(d)は、突起15のSEM像である。
【0031】
図3(a)に示すように、例えば、GaAs基板25の上に、第2半導体層20、第1半導体層10、第3半導体層およびn形コンタクト層29を順にエピタキシャル成長する。各層は、例えば、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて成長する。
【0032】
GaAs基板25の成長面25aは、(100)面に対して10度以上、20度以下の範囲で傾斜させる。すなわち、成長面25aは、(100)面に対して、10度以上、20度以下のオフ角を有する。なお、本明細書で言及する面方位は、等価な面を含む。例えば、(100)面は、(100)、(010)、(001)、(−100)、(0−10)、(00−1)で表される面を含む。
【0033】
さらに、成長面25aは、(111)面の方向に傾斜させることが望ましい。半導体材料が、III−V族化合物である場合、III族面である(111)A面、および、V族面である(111)B面のいずれの方向に傾斜させても良い。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、反射層50と、金属接合層41と、を接触させ、GaAs基板25と、p形シリコン基板45と、を接合する。続いて、図3(c)に示すように、p形シリコン基板45の上に、発光体70およびn形コンタクト層29を残して、GaAs基板25を除去する。
【0035】
次に、n形コンタクト層29を選択的に除去し、第2半導体層20の表面(第2主面)をエッチングすることにより、第1領域22bを形成する。前述したように、第2半導体層20の第2主面は、n形電流拡散層22の主面22aである。主面22aの結晶成長面は、(100)面に対して10度以上、20度以下の範囲で傾斜している。ここで、結晶成長面とは、例えば、n形電流拡散層22のマクロな表面であり、結晶成長により生じるミクロな構造(テラス等)をならし、平坦化した表面を言う。
【0036】
エッチング速度が面方位に依存する異方性エッチング法を用いて、主面22aをエッチングすることにより、傾斜した突起15を形成することができる。In0.5(Al0.7Ga0.3)0.5Pからなるn形電流拡散層22の場合、例えば、塩酸、酢酸および弗酸を含む水溶液を用いたウェットエッチングにより、突起15を形成する。
【0037】
図4(a)は、n形電流拡散層22に形成された突起15のを示す斜視図である。図4(b)は、図4(a)に示すK−K線に沿った模式断面図である。
【0038】
n形電流拡散層22に設けられた突起15は、K−K線に沿って突出し、側面15aと、側面15bと、を有する。図4(b)に示すように、側面15aは、成長面25aに平行な面に対し、角度αを持って傾斜している。一方、側面15bは、成長面25aに平行な面に対し、角度βを持って傾斜している。ここで、角度αと角度βを、「底角」と定義する。
【0039】
突起15の形状は、底角αおよびβを用いて特定することができる。図2(a)〜図2(c)に表した突起13および14では、底角αおよび底角βが90度以下である。一方、図2(d)および図2(e)に表した突起15では、底角βが90度以上である。
【0040】
図5(a)は、図4(a)に示すK−K線に沿った断面(方向DC)のSEM像である。図5(b)は、真上(方向DU)からのSEM像である。図5(c)は、正面側(方向DC)における斜め40度上方(方向DF40)からのSEM像である。図5(d)は、側面側における斜め40度上方(方向DS40)からのSEM像である。図5(a)〜図5(d)において、結晶成長面25aは(−100)面から[011]方向に15度傾斜している。
【0041】
図5(a)は、図4(a)に示す方向DCから見た突起15の断面であり、図4(b)に示す断面に対応する。方向DCから見た断面は、(011)面である。
図5(b)は、発光面22bの真上(方向DU)から見た突起15の形状を示している。
図5(c)は、正面側の斜め40度上方(方向DF40)から見た突起15の形状を示している。
図5(d)は、側面側の斜め40度上方となる方向(DS40)から見た突起の形状を示している。
【0042】
上記の通り、突起15は、主面22aに対して垂直な断面における底角が90度以上となる部分を含む。このように、底角が90度以上の突起15を設けた発光面22bからの光取り出し効率は、底角が90度以下の突起13および14(図2参照)を設けた発光面22bの取り出し効率よりも高くなる。
【0043】
突起15を設けた発光面22bの光取り出し効率は、突起の無い発光面の光取り出し効率の1.45倍以上である。さらに、底角βが90度以上、および、底角αが35度以上、45度以下である突起15を設けた発光面22bでは、突起の無い発光面に比べて光取り出し効率が、1.5倍に向上する。
【0044】
図6(a)〜図6(c)は、厚さの異なる誘電体膜を形成した突起15の断面を示す模式図およびSEM像である。各断面図は、厚さの異なる誘電体膜の突起15を覆う状態を模式的に示している。
【0045】
図6(a)は、厚さ50nmの誘電体膜17dに覆われた突起15の断面である。この場合、誘電体膜17dが突起15の先端のみを覆っている。誘電体膜を厚くするに従い、突起15の側面15a、15bを覆う面積が拡がってゆく。
【0046】
図6(b)は、厚さ100nmの誘電体膜17eに覆われた突起15の断面である。誘電体膜は、底角が90度よりも小さい側面15aの全体を覆うように形成されている。一方、底角が90度よりも大きい側面15bでは、表面の一部のみが誘電体膜17eに覆われている。
【0047】
図6(c)は、厚さ400nmの誘電体膜17fに覆われた突起15の断面である。誘電体膜17fが側面15aおよび15bの全体を覆っている。
【0048】
半導体発光素子100と、それを封じる樹脂と、の間の接着力を高くし、ハガレを抑制するには、例えば、図6(a)に示すように、少なくとも突起15の先端を誘電体膜が覆っていれば良い。より好ましくは、図6(b)のように、底角が90度以下の側面の全体を、誘電体膜17eが覆うように形成する。
【0049】
さらに、図6(c)に示すように、突起15の側面の全体を覆う誘電体膜を形成すると良い。一方、誘電体膜が厚すぎると、誘電体膜の応力により、n形電流拡散層22と誘電体膜との間で、剥離が生じ易くなる。そこで、誘電体膜の厚さは、500nm以下にすることが好ましい。すなわち、突起15を覆う誘電体膜の好ましい厚さは、50〜500nmである。ここで「誘電体膜の厚さ」は、突起15の側面に垂直な方向における誘電体膜の最大厚である。
【0050】
次に、図7〜図10を参照して、半導体発光素子100を用いた発光装置の高温加湿試験の結果を説明する。発光装置(図示しない)は、リードフレーム61にボンディングされた半導体発光素子100を含む。半導体発光素子100は、樹脂63により外界から遮蔽される。
【0051】
図7(a)は、半導体発光素子100の樹脂封止された断面を示すSEM像である。樹脂63は、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の屈折率は、1.55〜1.61であり、突起15(n形電流拡散層22)の屈折率N1(>3.0)と、誘電体膜の屈折率N2(SiO2:1.42)と、の間で、次式を満足する。
N1>N2、且つ、N2<N3 ・・・(1)
ここで、N3は、樹脂の屈折率である。これにより、樹脂封止による光取り出し効率の低下を抑制することができる。例えば、樹脂封止後の光出力の低下は、2〜3%に抑制される。
【0052】
さらに、樹脂63として、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂の屈折率は、1.43である。誘電体膜として屈折率1.80のSiN膜を用いると、次式を満足する。
N1>N2>N3 ・・・(2)
これにより、樹脂封止後の光出力の低下をさらに抑制することができる。
【0053】
図7(b)〜図7(d)は、高温加湿試験後の部分断面を示すSEM像である。図7(b)は、図7(a)中に示す部分AにおけるSEM像である。図7(c)は、部分BのSEM像、および、図7(d)は、部分CのSEM像である。
【0054】
高温加湿試験では、温度85℃、湿度85%の環境条件、駆動電流85mAの条件において、半導体発光素子100を連続動作させた。図7(b)〜図7(d)は、1500時間経過後の断面を示している。いずれのSEM像においても、n形電流拡散層22と、樹脂63と、が密着している。
【0055】
図8は、高温加湿試験における半導体発光素子100の光出力の変動を示すグラフである。縦軸に、半導体発光素子100が放出する光束の変動率を示し、横軸に、エージング時間を示している。
【0056】
図8(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束変動率を示し、図8(b)は、駆動電流50mAにおける光束変動率を示している。いずれも、光束の変動は、±10%以下であり、半導体発光素子100は安定して動作している。
【0057】
これに対し、図9および図10は、比較例に係る半導体発光素子を用いた場合の高温加湿試験の結果を示す。比較例に係る半導体発光素子では、突起を覆う誘電体膜が設けられていない。
【0058】
図9(a)〜図9(c)は、それぞれ、図7(a)に示すA〜Cに対応する部分のSEM像である。それぞれのSEM像において、n形電流拡散層22から樹脂63が剥離し、空隙65が形成されたことを確認できる。
【0059】
図10は、高温加湿試験結果を示すグラフである。図10(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束の変動率を示し、図10(b)は、駆動電流50mAにおける光束の変動率を示している。共に、500時間から1500時間の間に、光出力が大きく低下している。さらに、駆動電流2.5mAにおける光束の変動と、駆動電流50mAにおける光束の変動が同じである。これは、光束の低下が半導体発光素子の劣化ではなく、樹脂の剥離による劣化であることを示している。
【0060】
このように、本実施形態では、半導体発光素子の発光面に形成した突起の表面に誘電体膜を設ける。これにより、半導体発光素子と、それを封じる樹脂と、の間の接着力を高め、半導体発光素子の信頼度を向上させることができる。
【0061】
[第2実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る半導体発光素子200のチップ面を示す模式図である。半導体発光素子200では、電極60と、細線電極(narrow wire electrode)71と、が設けられる。電極60は、n形電流拡散層22の上に直接設けられ、細線電極71は、n形電流拡散層22の主面22a(第2主面)に沿って延在する。
【0062】
電極60は、例えば、パッド電極であり、半導体発光素子200を外部回路と接続する金属ワイヤ(図示しない)がボンディングされる。細線電極71は、電極60を介して流れる駆動電流を、n形電流拡散層22の発光面(第1領域22b)に広げるように配置される。図11に示すチップ面において、第1領域22bは、電極60および細線電極71を除く領域であり、前述した複数の突起が設けられる。
【0063】
図12および図13は、半導体発光素子200、および、その変形例に係る半導体発光素子210〜240の構造を例示する模式部分断面図である。各図に示す部分以外の構造は、図1に示す半導体発光素子100と共通する。
【0064】
図12(a)は、半導体発光素子200の部分断面を示す模式図である。本実施形態では、電極60とn形電流拡散層22との間に、n形コンタクト層29が設けられない。一方、細線電極71と、n形電流拡散層22と、の間に、n形コンタクト層29が設けられる。これにより、細線電極71のコンタクト抵抗を低減し、電流を発光面に全体に広げることが可能となる。電極60のコンタクト抵抗は、細線電極71のコンタクト抵抗よりも高くなる。これにより、電極60の直下に流れる電流を抑制して無効電流を低減することができる。結果として、半導体発光素子200の発光効率を向上させることが可能となる。
【0065】
図12(a)に示す半導体発光素子200では、誘電体膜17は、n形電流拡散層22の第1領域22bと、細線電極71と、を覆う。
【0066】
図12(b)に示す半導体発光素子210では、誘電体膜17は、第1領域22bと細線電極71とを覆う部分に加えて、チップの側面(少なくとも第2半導体層20の側面)を覆う部分17hを含む。チップ側面は、第1主面および第2主面に接する面である。
【0067】
図12(c)に示す半導体発光素子220では、第1領域22bを覆い、細線電極71の上には設けられない。例えば、誘電体膜17を形成した後に、細線電極71を形成する工程順を採用した場合に、このような構造となる。
【0068】
図12(a)〜図12(c)に示す構造に共通して、電極60の外周に沿った部分22dに誘電体膜17が形成されない。この部分22dに設けられた突起には、誘電体膜が形成されないが、チップ面に占めるこの部分22dの面積の割合は極めて小さく、樹脂の接着力に影響することはない。
【0069】
上記の通り、誘電体膜17は、少なくとも第1領域22bを覆うように設けられる。さらに、好ましくは、誘電体膜17は、細線電極71およびチップ側面を覆う部分を有する。これにより、半導体発光素子200および210と、樹脂と、の接着力をより高くすることができる。
【0070】
図13(a)に示す半導体発光素子230では、誘電体膜17は、第1領域22bと、細線電極71と、に加えて、電極60の外周を覆う部分17kを含む。誘電体膜17は、電極60の外周の段差を覆い、電極60と、樹脂と、の間の接着力を高くする。これにより、樹脂の剥離が抑制され、電極60の劣化、および、金属ワイヤの剥がれなどを防ぐことができる。
【0071】
図13(b)に示す半導体発光素子240では、誘電体膜17は、第1領域22bと、細線電極71と、電極60の外周と、を覆う部分に加えて、チップの側面(少なくとも第2半導体層20の側面)を覆う部分17hを含む。
【0072】
図13(a)および図13(b)に示す構造では、誘電体膜17が電極の側面を覆う。このため、例えば、金属の積層構造を含む電極に対し、水分の侵入による金属の腐食(例えば、Moの融解)を抑制する。
【0073】
図13(a)および図13(b)に示す構造は、例えば、電極60の面積が大きく、外周を覆う誘電体膜17を形成しても、金属ワイヤのボンディング領域を中央に確保できる場合に有効である。これに対し、図12(a)〜図12(c)に示す構造は、電極60の外周に誘電体膜17を形成すると、十分な面積を有するボンディング領域が確保できない場合に適している。
【0074】
[第3実施形態]
図14は、第3の実施形態に係る半導体発光素子300を示す模式断面図である。第1半導体層10および第2半導体層20の構成は、図1に示す半導体発光素子100と同じである。第3半導体層30は、p形GaP層35を含まず、p形組成傾斜層34がp形コンタクト層36に直接つながっている。第2半導体層20の第2主面22aには、第1領域22bと、第2領域22cと、が設けられる。第1領域22bには、複数の突起が設けられ、第2領域22cには、n形コンタクト層29を介して電極60が設けられる。
【0075】
一方、反射層50は、ITO53と、銀インジウム合金(AgIn)と、を含む。AgInは、可視光領域における反射率がAuよりも高く、半導体発光素子100よりも光出力を向上させることが可能である。反射層50と、発光体70と、の間には、電流ブロック層51が設けられる。
【0076】
反射層50は、さらに、Ti83/Pt84/Ti85の積層構造(multi-layer)と、Au55と、を含む。Ti/Pt/Tiの積層構造は、AgIn81と、Au55と、の間のバリア層として機能し、相互拡散を抑制する。すなわち、Pt84がAg、InおよびAuの相互拡散を抑制する。Ti83は、AgIn81と、Pt84と、の間の接着力を高め、Ti85は、Pt84と、Au55と、の間の接着力を高める。Au55は、接合層として機能し、支持体40と、発光体70と、を接続する。
【0077】
支持体40は、p形シリコン基板45と、金属接合層41と、裏面電極46と、を含む。金属接合層41は、p形シリコン基板45の発光体70の側の主面45aの上に設けられ、In88/Au89/Ti42/Pt43/Ti44の積層構造(multi-layer)を含む。
【0078】
In88は、Au55と、Au89と、の間を接続する。In88に含まれるインジウムは、Au55およびAu89の双方に拡散し、液相拡散接合を形成する。Inの融点は、200℃以下の低温であり、例えば、In88を介在させないAu−Auの熱圧着よりも低温で、支持体40と、発光体70と、を接合することができる。さらに、AuInが液相となり反射層50の段差を吸収するため、隙間のない接合界面を形成することができる。
【0079】
Ti42は、Au89とPt43との間の接着力を高める。Pt43は、p形シリコン基板45へのAuの拡散を抑制する。
【0080】
本実施形態においても、第1領域22bに誘電体膜が形成され、半導体発光素子300と、樹脂と、の間の接着力を高めることができる。誘電体膜は、少なくとも第1領域22bの突起の先端に設けられれば良く、好ましくは、突起の側面全体を覆うように設ける。
【0081】
第1実施形態〜第3実施形態では、第1半導体層10、第2半導体層20および第3半導体層30のそれぞれが、Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)を含む例について説明したが、これに限られる訳ではない。例えば、AlxGa1−xAs(0≦x≦1)、および、InxGa1−xAsyP1−y(0≦x≦1、0≦y≦1)のいずれかを含んでも良い。さらに、InxAlyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表される組成を有する化合物を含む場合にも適用可能である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置、表示装置、信号機などに用いる発光素子には、高い光出力と長寿命とが求められる。半導体発光素子は、従来のバルブ光源に比べて長寿命であり、これらの用途に適する。
【0003】
半導体発光素子の発光面側の半導体層の表面に微細な凹凸を設けると、半導体から外部への光取出し効率を高くし光出力を向上できる。しかしながら、半導体表面に設けられた凹凸は、半導体発光素子と、それを封じる樹脂と、の間の接着力を低下させることがある。樹脂封止した半導体発光素子では、発光素子の発熱により、半導体と樹脂との間の線膨張係数の違いに起因した応力が生じる。この応力は、半導体から樹脂を引き剥がす方向に働く。このため、接着力の低下した半導体素子と樹脂との間に隙間が生じ、光出力を低下させる。そこで、半導体表面と、樹脂と、の間の接着力を高めて剥離を抑制し、信頼度を向上させることが可能な半導体発光素子が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−21845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、半導体表面と、樹脂と、の間の接着力を高めて剥離を抑制し、信頼度を向上させることが可能な半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、半導体発光素子は、光を放射可能な第1半導体層と、前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面を有する第2半導体層を備える。前記第2半導体層は、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する。さらに、前記突起の少なくとも先端に設けられた誘電体膜と、前記第2領域の上に設けられた電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式断面図である。
【図2】半導体層の表面に設けられた突起を模式的に示す部分断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造過程を示す模式断面図である。
【図4】(a)は、半導体層表面の突起(convex)の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は、突起を形成した半導体層の部分断面図である。
【図5】半導体層表面に設けられた突起のSEM像(Scanning Electron Microscope image)である。
【図6】厚さの異なる誘電体膜を形成した突起の断面を示すSEM像である。
【図7】(a)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の樹脂封止された断面を示すSEM像であり、(b)〜(d)は、高温加湿試験(Temperature & Humid Operation)後の部分断面を示すSEM像である。
【図8】第1の実施形態に係る半導体発光素子の高温加湿試験結果を示すグラフであり、(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束の変動率を示し、(b)は、駆動電流50mAにおける光束の変動率を示している。
【図9】比較例に係る半導体発光素子の高温加湿試験後の部分断面を示すSEM像である。
【図10】比較例に係る半導体発光素子の高温加湿試験結果を示すグラフであり、(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束の変動率を示し、(b)は、駆動電流50mAにおける光束の変動率を示している。
【図11】第2の実施形態に係る半導体素子のチップ面を示す模式図である。
【図12】第2の実施形態に係る半導体発光素子の構造を例示する模式部分断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の構造を例示する模式部分断面図である。
【図14】第3の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子100を示す模式断面図である。半導体発光素子100は、例えば、可視光を放射する発光ダイオード(Light emitting Diode:LED)である。
【0010】
半導体発光素子100は、第1半導体層10と、第2半導体層20と、第3半導体層30と、を備える。第1半導体層10、第2半導体層20および第3半導体層30のそれぞれは、例えば、Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)の組成式で表される化合物を含む。
【0011】
第1半導体層10は、Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)からなる多重量子井戸(Multi-Quantum Well)を含む。第1半導体層10は、第2半導体層から注入される電子と、第3半導体層から注入される正孔と、を再結合させることにより、光を放射する。
【0012】
第2半導体層20は、n形クラッド層21と、n形電流拡散層22と、を含む。n形クラッド層21は、第1半導体層10と、n形電流拡散層22と、の間に設けられる。例えば、n形クラッド層21は、厚さ0.6μmのIn0.5Al0.5Pからなり、n形電流拡散層22は、厚さ3.5μm、キャリア濃度1.6×1018cm−3のIn0.5(Al0.7Ga0.3)0.5Pからなる。
【0013】
第2半導体層20は、第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面と、を有する。第1主面は、第1半導体層10に向き合うn形クラッド層21の主面21aである。第2主面は、n形電流拡散層22の主面22aである。第2半導体層20は、主面22aにおいて、複数の突起が設けられた第1領域22bと、突起のない第2領域22cと、を有する。さらに、第2半導体層20は、第1領域22bにおいて、少なくとも突起の先端に設けられた誘電体膜を含む。
【0014】
さらに、電極60が、第2領域22cの上に設けられる。電極60と、n形電流拡散層22と、の間には、n形コンタクト層29を設ける。n形コンタクト層29のキャリア濃度は、n形電流拡散層22のキャリア濃度よりも高く、電極60のコンタクト抵抗を低減する。
【0015】
第3半導体層30は、第2半導体層20とは導電形が異なり、第1半導体層10を介して第2半導体層20に対向する。第3半導体層30は、第1半導体層10の側からp形クラッド層31と、p形中間層33と、p形組成傾斜層(compositional graded layer)34と、p形GaP層35と、p形コンタクト層36と、を含む。
【0016】
例えば、p形クラッド層31は、厚さ0.6μmのIn0.5Al0.5Pからなり、p形中間層33は、厚さ0.05μmのIn0.5(Al0.7Ga0.3)0.5Pからなる。p形組成傾斜層34は、厚さ0.03μmのInx(AlyGa1−y)1−xPを含み、その組成がIn0.5(Al0.7Ga0.3)0.5PからGaPへ徐々に変化する。すなわち、組成Xが0.5から0(ゼロ)に、組成Yが0.7から0(ゼロ)に変化するよう形成される。p形GaP層35は、0.3μmの厚さを有し、p形コンタクト層36は、p形GaP層35よりもキャリア濃度が高い、厚さ0.1μmのGaPからなる。
【0017】
以下、第1半導体層10、第2半導体層20および第3半導体層30を含む積層体を発光体70と、称する。
【0018】
半導体発光素子100は、さらに、発光体70を支持する支持体40と、反射層50と、を備える。支持体40は、発光体70の電極60とは反対の側に設けられる。反射層50は、発光体70と支持体40との間に設けられ、第1半導体層10が放射する光を第2半導体層20の方向に反射する。反射層50は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)53と、金(Au)55と、を積層した構造(stacked layer)である。また、Auの代わりにAgを用いても良い。ITO53は、第1半導体層10から放射された光に対し透明であり、ITO53の中を伝播した光が、Au55またはAgの表面で反射される。
【0019】
さらに、第3半導体層30と、反射層50と、の間に電流ブロック層51が設けられる。電流ブロック層51は、主面22aに垂直な平面視において、電極60に重なる部分を絶縁するように設けられる。ITO53は、電流ブロック層51が設けられない部分において、p形コンタクト層36に接し、反射層50と、第3半導体層30と、を電気的に接続する。
【0020】
電流ブロック層51は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)からなり、反射層50から電極60へ流れる電流の一部を狭窄する。これにより、電極60の直下の第1半導体層10の部分に流れる電流を抑制し、電極60に遮蔽されて外部に取り出すことができない発光を低減する。
【0021】
支持体40は、例えば、p形シリコン基板45と、その一方の主面45aの側に設けられた金属接合層41と、他方の主面45bの側に設けられた裏面電極46と、を有する。金属接合層41は、p形シリコン基板45の側からチタン(Ti)44と、白金(Pt)43と、Au42と、を積層した構造を有する。また、金属接合層41は、Ti/Pt/Ti/Auの組み合わせでも良い。一方、裏面電極46も、p形シリコン基板45の側からチタン(Ti)47と、白金(Pt)48と、Au49と、を積層した構造を有する。
【0022】
半導体発光素子100の製造過程において、反射層50の表面と、金属接合層41の表面と、を接触させ、発光体70と、p形シリコン基板45と、を接合する。例えば、反射層50のAu55と、金属接合層41のAu42と、を熱圧着し、支持体40が、発光体70を支持する構造を形成する。また、金属接合層41は、AuInによる液相拡散接合でも良い。
【0023】
図1に示すように、電流ブロック層51の端において、反射層50は段差を有し、接合した後の反射層50と、金属接合層41と、の間に空隙58が形成される。反射層50を金属接合層41よりも厚く設けることにより、空隙58の影響を無くし、支持体40と、発光体70と、の間の電気的な接合を確保することができる。例えば、電流ブロック層51の厚さ0.05μmに対し、ITO53の厚さを0.06μmとし、さらにAu55を積層する。
【0024】
本実施形態に係る半導体発光素子100は、支持体40の側に設けられた反射層50により、第1半導体層が放射する光を発光面(第1領域22b)の方向に伝播させ、外部に放出する。さらに、複数の突起を発光面22bに設けることにより、光取り出し効率を高くして光出力を向上させる。
【0025】
図2(a)〜図2(e)は、n形電流拡散層22の表面に設けられた突起を模式的に示す部分断面図である。
第1領域22bには、例えば、図2(a)に示す左右対称な形状の突起13を設けても良いし、図2(b)および図2(c)に示す非対称な傾斜した形状の突起14を設けても良い。図2(d)および図2(e)に示すように、さらに傾斜した形状の突起15であっても良い。
【0026】
図2(a)、図2(b)および図2(d)に示すように、誘電体膜17a、17bおよび17dは、突起13、14および15の先端に形成しても良い。
【0027】
図2(c)および図2(e)に示すように、誘電体膜17cおよび17eは、突起14および15の少なくとも片側の側面を覆うように形成しても良い。
【0028】
上記の例では、誘電体膜17a〜17eは、突起13〜15の表面の一部に設けられるが、突起13〜15の表面全体に設けても良い。
【0029】
誘電体膜17a〜17eは、例えば、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)および酸窒化珪素(SiON)のいずれかを含む。誘電体膜17a〜17eは、SiO2膜、SiN膜およびSiON膜から選択された少なくとも2つを含む積層膜であっても良い。これらの誘電体は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法を用いて形成することができる。
【0030】
次に、図3〜図5を参照して、突起15について説明する。図3(a)〜図3(c)は、半導体発光素子100の製造過程の一部を模式的に示す断面図である。図4(a)は、突起15の形状を模式的に示す部分断面図であり、図4(b)は、突起15を形成したn形電流拡散層22の部分断面図である。図5(a)〜図5(d)は、突起15のSEM像である。
【0031】
図3(a)に示すように、例えば、GaAs基板25の上に、第2半導体層20、第1半導体層10、第3半導体層およびn形コンタクト層29を順にエピタキシャル成長する。各層は、例えば、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて成長する。
【0032】
GaAs基板25の成長面25aは、(100)面に対して10度以上、20度以下の範囲で傾斜させる。すなわち、成長面25aは、(100)面に対して、10度以上、20度以下のオフ角を有する。なお、本明細書で言及する面方位は、等価な面を含む。例えば、(100)面は、(100)、(010)、(001)、(−100)、(0−10)、(00−1)で表される面を含む。
【0033】
さらに、成長面25aは、(111)面の方向に傾斜させることが望ましい。半導体材料が、III−V族化合物である場合、III族面である(111)A面、および、V族面である(111)B面のいずれの方向に傾斜させても良い。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、反射層50と、金属接合層41と、を接触させ、GaAs基板25と、p形シリコン基板45と、を接合する。続いて、図3(c)に示すように、p形シリコン基板45の上に、発光体70およびn形コンタクト層29を残して、GaAs基板25を除去する。
【0035】
次に、n形コンタクト層29を選択的に除去し、第2半導体層20の表面(第2主面)をエッチングすることにより、第1領域22bを形成する。前述したように、第2半導体層20の第2主面は、n形電流拡散層22の主面22aである。主面22aの結晶成長面は、(100)面に対して10度以上、20度以下の範囲で傾斜している。ここで、結晶成長面とは、例えば、n形電流拡散層22のマクロな表面であり、結晶成長により生じるミクロな構造(テラス等)をならし、平坦化した表面を言う。
【0036】
エッチング速度が面方位に依存する異方性エッチング法を用いて、主面22aをエッチングすることにより、傾斜した突起15を形成することができる。In0.5(Al0.7Ga0.3)0.5Pからなるn形電流拡散層22の場合、例えば、塩酸、酢酸および弗酸を含む水溶液を用いたウェットエッチングにより、突起15を形成する。
【0037】
図4(a)は、n形電流拡散層22に形成された突起15のを示す斜視図である。図4(b)は、図4(a)に示すK−K線に沿った模式断面図である。
【0038】
n形電流拡散層22に設けられた突起15は、K−K線に沿って突出し、側面15aと、側面15bと、を有する。図4(b)に示すように、側面15aは、成長面25aに平行な面に対し、角度αを持って傾斜している。一方、側面15bは、成長面25aに平行な面に対し、角度βを持って傾斜している。ここで、角度αと角度βを、「底角」と定義する。
【0039】
突起15の形状は、底角αおよびβを用いて特定することができる。図2(a)〜図2(c)に表した突起13および14では、底角αおよび底角βが90度以下である。一方、図2(d)および図2(e)に表した突起15では、底角βが90度以上である。
【0040】
図5(a)は、図4(a)に示すK−K線に沿った断面(方向DC)のSEM像である。図5(b)は、真上(方向DU)からのSEM像である。図5(c)は、正面側(方向DC)における斜め40度上方(方向DF40)からのSEM像である。図5(d)は、側面側における斜め40度上方(方向DS40)からのSEM像である。図5(a)〜図5(d)において、結晶成長面25aは(−100)面から[011]方向に15度傾斜している。
【0041】
図5(a)は、図4(a)に示す方向DCから見た突起15の断面であり、図4(b)に示す断面に対応する。方向DCから見た断面は、(011)面である。
図5(b)は、発光面22bの真上(方向DU)から見た突起15の形状を示している。
図5(c)は、正面側の斜め40度上方(方向DF40)から見た突起15の形状を示している。
図5(d)は、側面側の斜め40度上方となる方向(DS40)から見た突起の形状を示している。
【0042】
上記の通り、突起15は、主面22aに対して垂直な断面における底角が90度以上となる部分を含む。このように、底角が90度以上の突起15を設けた発光面22bからの光取り出し効率は、底角が90度以下の突起13および14(図2参照)を設けた発光面22bの取り出し効率よりも高くなる。
【0043】
突起15を設けた発光面22bの光取り出し効率は、突起の無い発光面の光取り出し効率の1.45倍以上である。さらに、底角βが90度以上、および、底角αが35度以上、45度以下である突起15を設けた発光面22bでは、突起の無い発光面に比べて光取り出し効率が、1.5倍に向上する。
【0044】
図6(a)〜図6(c)は、厚さの異なる誘電体膜を形成した突起15の断面を示す模式図およびSEM像である。各断面図は、厚さの異なる誘電体膜の突起15を覆う状態を模式的に示している。
【0045】
図6(a)は、厚さ50nmの誘電体膜17dに覆われた突起15の断面である。この場合、誘電体膜17dが突起15の先端のみを覆っている。誘電体膜を厚くするに従い、突起15の側面15a、15bを覆う面積が拡がってゆく。
【0046】
図6(b)は、厚さ100nmの誘電体膜17eに覆われた突起15の断面である。誘電体膜は、底角が90度よりも小さい側面15aの全体を覆うように形成されている。一方、底角が90度よりも大きい側面15bでは、表面の一部のみが誘電体膜17eに覆われている。
【0047】
図6(c)は、厚さ400nmの誘電体膜17fに覆われた突起15の断面である。誘電体膜17fが側面15aおよび15bの全体を覆っている。
【0048】
半導体発光素子100と、それを封じる樹脂と、の間の接着力を高くし、ハガレを抑制するには、例えば、図6(a)に示すように、少なくとも突起15の先端を誘電体膜が覆っていれば良い。より好ましくは、図6(b)のように、底角が90度以下の側面の全体を、誘電体膜17eが覆うように形成する。
【0049】
さらに、図6(c)に示すように、突起15の側面の全体を覆う誘電体膜を形成すると良い。一方、誘電体膜が厚すぎると、誘電体膜の応力により、n形電流拡散層22と誘電体膜との間で、剥離が生じ易くなる。そこで、誘電体膜の厚さは、500nm以下にすることが好ましい。すなわち、突起15を覆う誘電体膜の好ましい厚さは、50〜500nmである。ここで「誘電体膜の厚さ」は、突起15の側面に垂直な方向における誘電体膜の最大厚である。
【0050】
次に、図7〜図10を参照して、半導体発光素子100を用いた発光装置の高温加湿試験の結果を説明する。発光装置(図示しない)は、リードフレーム61にボンディングされた半導体発光素子100を含む。半導体発光素子100は、樹脂63により外界から遮蔽される。
【0051】
図7(a)は、半導体発光素子100の樹脂封止された断面を示すSEM像である。樹脂63は、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の屈折率は、1.55〜1.61であり、突起15(n形電流拡散層22)の屈折率N1(>3.0)と、誘電体膜の屈折率N2(SiO2:1.42)と、の間で、次式を満足する。
N1>N2、且つ、N2<N3 ・・・(1)
ここで、N3は、樹脂の屈折率である。これにより、樹脂封止による光取り出し効率の低下を抑制することができる。例えば、樹脂封止後の光出力の低下は、2〜3%に抑制される。
【0052】
さらに、樹脂63として、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂の屈折率は、1.43である。誘電体膜として屈折率1.80のSiN膜を用いると、次式を満足する。
N1>N2>N3 ・・・(2)
これにより、樹脂封止後の光出力の低下をさらに抑制することができる。
【0053】
図7(b)〜図7(d)は、高温加湿試験後の部分断面を示すSEM像である。図7(b)は、図7(a)中に示す部分AにおけるSEM像である。図7(c)は、部分BのSEM像、および、図7(d)は、部分CのSEM像である。
【0054】
高温加湿試験では、温度85℃、湿度85%の環境条件、駆動電流85mAの条件において、半導体発光素子100を連続動作させた。図7(b)〜図7(d)は、1500時間経過後の断面を示している。いずれのSEM像においても、n形電流拡散層22と、樹脂63と、が密着している。
【0055】
図8は、高温加湿試験における半導体発光素子100の光出力の変動を示すグラフである。縦軸に、半導体発光素子100が放出する光束の変動率を示し、横軸に、エージング時間を示している。
【0056】
図8(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束変動率を示し、図8(b)は、駆動電流50mAにおける光束変動率を示している。いずれも、光束の変動は、±10%以下であり、半導体発光素子100は安定して動作している。
【0057】
これに対し、図9および図10は、比較例に係る半導体発光素子を用いた場合の高温加湿試験の結果を示す。比較例に係る半導体発光素子では、突起を覆う誘電体膜が設けられていない。
【0058】
図9(a)〜図9(c)は、それぞれ、図7(a)に示すA〜Cに対応する部分のSEM像である。それぞれのSEM像において、n形電流拡散層22から樹脂63が剥離し、空隙65が形成されたことを確認できる。
【0059】
図10は、高温加湿試験結果を示すグラフである。図10(a)は、駆動電流2.5mAにおける光束の変動率を示し、図10(b)は、駆動電流50mAにおける光束の変動率を示している。共に、500時間から1500時間の間に、光出力が大きく低下している。さらに、駆動電流2.5mAにおける光束の変動と、駆動電流50mAにおける光束の変動が同じである。これは、光束の低下が半導体発光素子の劣化ではなく、樹脂の剥離による劣化であることを示している。
【0060】
このように、本実施形態では、半導体発光素子の発光面に形成した突起の表面に誘電体膜を設ける。これにより、半導体発光素子と、それを封じる樹脂と、の間の接着力を高め、半導体発光素子の信頼度を向上させることができる。
【0061】
[第2実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る半導体発光素子200のチップ面を示す模式図である。半導体発光素子200では、電極60と、細線電極(narrow wire electrode)71と、が設けられる。電極60は、n形電流拡散層22の上に直接設けられ、細線電極71は、n形電流拡散層22の主面22a(第2主面)に沿って延在する。
【0062】
電極60は、例えば、パッド電極であり、半導体発光素子200を外部回路と接続する金属ワイヤ(図示しない)がボンディングされる。細線電極71は、電極60を介して流れる駆動電流を、n形電流拡散層22の発光面(第1領域22b)に広げるように配置される。図11に示すチップ面において、第1領域22bは、電極60および細線電極71を除く領域であり、前述した複数の突起が設けられる。
【0063】
図12および図13は、半導体発光素子200、および、その変形例に係る半導体発光素子210〜240の構造を例示する模式部分断面図である。各図に示す部分以外の構造は、図1に示す半導体発光素子100と共通する。
【0064】
図12(a)は、半導体発光素子200の部分断面を示す模式図である。本実施形態では、電極60とn形電流拡散層22との間に、n形コンタクト層29が設けられない。一方、細線電極71と、n形電流拡散層22と、の間に、n形コンタクト層29が設けられる。これにより、細線電極71のコンタクト抵抗を低減し、電流を発光面に全体に広げることが可能となる。電極60のコンタクト抵抗は、細線電極71のコンタクト抵抗よりも高くなる。これにより、電極60の直下に流れる電流を抑制して無効電流を低減することができる。結果として、半導体発光素子200の発光効率を向上させることが可能となる。
【0065】
図12(a)に示す半導体発光素子200では、誘電体膜17は、n形電流拡散層22の第1領域22bと、細線電極71と、を覆う。
【0066】
図12(b)に示す半導体発光素子210では、誘電体膜17は、第1領域22bと細線電極71とを覆う部分に加えて、チップの側面(少なくとも第2半導体層20の側面)を覆う部分17hを含む。チップ側面は、第1主面および第2主面に接する面である。
【0067】
図12(c)に示す半導体発光素子220では、第1領域22bを覆い、細線電極71の上には設けられない。例えば、誘電体膜17を形成した後に、細線電極71を形成する工程順を採用した場合に、このような構造となる。
【0068】
図12(a)〜図12(c)に示す構造に共通して、電極60の外周に沿った部分22dに誘電体膜17が形成されない。この部分22dに設けられた突起には、誘電体膜が形成されないが、チップ面に占めるこの部分22dの面積の割合は極めて小さく、樹脂の接着力に影響することはない。
【0069】
上記の通り、誘電体膜17は、少なくとも第1領域22bを覆うように設けられる。さらに、好ましくは、誘電体膜17は、細線電極71およびチップ側面を覆う部分を有する。これにより、半導体発光素子200および210と、樹脂と、の接着力をより高くすることができる。
【0070】
図13(a)に示す半導体発光素子230では、誘電体膜17は、第1領域22bと、細線電極71と、に加えて、電極60の外周を覆う部分17kを含む。誘電体膜17は、電極60の外周の段差を覆い、電極60と、樹脂と、の間の接着力を高くする。これにより、樹脂の剥離が抑制され、電極60の劣化、および、金属ワイヤの剥がれなどを防ぐことができる。
【0071】
図13(b)に示す半導体発光素子240では、誘電体膜17は、第1領域22bと、細線電極71と、電極60の外周と、を覆う部分に加えて、チップの側面(少なくとも第2半導体層20の側面)を覆う部分17hを含む。
【0072】
図13(a)および図13(b)に示す構造では、誘電体膜17が電極の側面を覆う。このため、例えば、金属の積層構造を含む電極に対し、水分の侵入による金属の腐食(例えば、Moの融解)を抑制する。
【0073】
図13(a)および図13(b)に示す構造は、例えば、電極60の面積が大きく、外周を覆う誘電体膜17を形成しても、金属ワイヤのボンディング領域を中央に確保できる場合に有効である。これに対し、図12(a)〜図12(c)に示す構造は、電極60の外周に誘電体膜17を形成すると、十分な面積を有するボンディング領域が確保できない場合に適している。
【0074】
[第3実施形態]
図14は、第3の実施形態に係る半導体発光素子300を示す模式断面図である。第1半導体層10および第2半導体層20の構成は、図1に示す半導体発光素子100と同じである。第3半導体層30は、p形GaP層35を含まず、p形組成傾斜層34がp形コンタクト層36に直接つながっている。第2半導体層20の第2主面22aには、第1領域22bと、第2領域22cと、が設けられる。第1領域22bには、複数の突起が設けられ、第2領域22cには、n形コンタクト層29を介して電極60が設けられる。
【0075】
一方、反射層50は、ITO53と、銀インジウム合金(AgIn)と、を含む。AgInは、可視光領域における反射率がAuよりも高く、半導体発光素子100よりも光出力を向上させることが可能である。反射層50と、発光体70と、の間には、電流ブロック層51が設けられる。
【0076】
反射層50は、さらに、Ti83/Pt84/Ti85の積層構造(multi-layer)と、Au55と、を含む。Ti/Pt/Tiの積層構造は、AgIn81と、Au55と、の間のバリア層として機能し、相互拡散を抑制する。すなわち、Pt84がAg、InおよびAuの相互拡散を抑制する。Ti83は、AgIn81と、Pt84と、の間の接着力を高め、Ti85は、Pt84と、Au55と、の間の接着力を高める。Au55は、接合層として機能し、支持体40と、発光体70と、を接続する。
【0077】
支持体40は、p形シリコン基板45と、金属接合層41と、裏面電極46と、を含む。金属接合層41は、p形シリコン基板45の発光体70の側の主面45aの上に設けられ、In88/Au89/Ti42/Pt43/Ti44の積層構造(multi-layer)を含む。
【0078】
In88は、Au55と、Au89と、の間を接続する。In88に含まれるインジウムは、Au55およびAu89の双方に拡散し、液相拡散接合を形成する。Inの融点は、200℃以下の低温であり、例えば、In88を介在させないAu−Auの熱圧着よりも低温で、支持体40と、発光体70と、を接合することができる。さらに、AuInが液相となり反射層50の段差を吸収するため、隙間のない接合界面を形成することができる。
【0079】
Ti42は、Au89とPt43との間の接着力を高める。Pt43は、p形シリコン基板45へのAuの拡散を抑制する。
【0080】
本実施形態においても、第1領域22bに誘電体膜が形成され、半導体発光素子300と、樹脂と、の間の接着力を高めることができる。誘電体膜は、少なくとも第1領域22bの突起の先端に設けられれば良く、好ましくは、突起の側面全体を覆うように設ける。
【0081】
第1実施形態〜第3実施形態では、第1半導体層10、第2半導体層20および第3半導体層30のそれぞれが、Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)を含む例について説明したが、これに限られる訳ではない。例えば、AlxGa1−xAs(0≦x≦1)、および、InxGa1−xAsyP1−y(0≦x≦1、0≦y≦1)のいずれかを含んでも良い。さらに、InxAlyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表される組成を有する化合物を含む場合にも適用可能である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射可能な第1半導体層と、
前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有する第2半導体層であって、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する第2の半導体層と、
前記突起の少なくとも先端部に設けられた誘電体膜と、
前記第2領域の上に設けられた電極と、
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層と、
前記第3半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記第1半導体層と、前記第2半導体層と、前記第3半導体層と、を支持する支持体と、
前記第3半導体層と前記支持体との間に設けられ、前記第1半導体層が放射する光を前記第2半導体層の方向に反射する反射層と、
前記電極から前記第2主面に沿って延在する細線電極と、
を備え、
前記第2主面に対して垂直な断面における前記突起の一方の底角は、90度以上であり、且つ、前記突起の他方の底角は、35度以上、45度以下であり、
前記誘電体膜は、前記突起における90度以下である他方の底角側の側面、または、前記突起の全体に設けられ、二酸化珪素、窒化珪素および酸窒化珪素のいずれかを含み、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれは、
Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)、
AlxGa1−xAs(0≦x≦1)、
および、InxGa1−xAsyP1−y(0≦x≦1、0≦y≦1)
で表される組成を有し、
前記第2主面の結晶成長面は、(100)面から10度以上、20度以下の範囲で結晶方位が傾斜し、且つ、(100)面から(111)III族面または(111)V族面の方向に傾斜し、
前記電極の下において、前記第3半導体層と、前記反射層と、の間に、電流ブロック層が選択的に設けられた半導体発光素子。
【請求項2】
光を放射可能な第1半導体層と、
前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有する第2半導体層であって、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する第2の半導体層と、
前記突起の少なくとも先端部に設けられた誘電体膜と、
前記第2領域の上に設けられた電極と、
を備えた半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2主面に対して垂直な断面における前記突起の一方の底角は、90度以上である請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2主面に対して垂直な断面における前記突起の他方の底角は、35度以上、45度以下である請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記誘電体膜は、少なくとも、前記突起における90度以下である他方の底角側の側面に設けられる請求項3または4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記誘電体膜は、前記突起の全体に設けられた請求項3または4に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記誘電体膜は、二酸化珪素、窒化珪素および酸窒化珪素のいずれかを含む請求項2〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記誘電体膜は、二酸化珪素膜、窒化珪素膜および酸窒化珪素膜から選択された少なくとも2つの膜を含む請求項2〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記突起と前記誘電体膜とを覆う樹脂をさらに備え、
前記第2半導体層の屈折率N1と、前記誘電体膜の屈折率N2と、前記樹脂の屈折率N3と、は、次式を満足する請求項2〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
N1>N2>N3
【請求項10】
前記突起と前記誘電体膜とを覆う樹脂をさらに備え、
前記第2半導体層の屈折率N1と、前記誘電体膜の屈折率N2と、前記樹脂の屈折率N3と、は、次式を満足する請求項2〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
N1>N2、且つ、N2<N3
【請求項11】
前記誘電体膜の膜厚の最大値は、50〜500nmである請求項2〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層をさらに備え、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれは、
Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)、
AlxGa1−xAs(0≦x≦1)、
および、InxGa1−xAsyP1−y(0≦x≦1、0≦y≦1)
で表される組成を有するいずれかの化合物を含む請求項2〜11のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記第2主面の結晶成長面は、(100)面から10度以上、20度以下の範囲で結晶方位が傾斜した請求項12記載の半導体発光素子。
【請求項14】
前記第2主面の結晶成長面は、(100)面から(111)III族面または(111)V族面の方向に傾斜した請求項13記載の半導体発光素子。
【請求項15】
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層をさらに備え、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれは、
InxAlyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)
で表される組成を有する化合物を含む請求項2〜11のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項16】
前記誘電体膜が前記電極の外周を覆った請求項2〜15のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項17】
前記第2半導体層は、前記第1主面および前記第2主面に接する側面を有し、
前記誘電体膜は、前記側面の少なくとも一部を覆う請求項2〜16のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項18】
前記電極から前記第2主面に沿って延在する細線電極をさらに備え、
前記誘電体膜は、前記細線電極を覆う請求項2〜17のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項19】
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層と、
前記第3半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記第1半導体層と、前記第2半導体層と、前記第3半導体層と、を支持する支持体と、
前記第3半導体層と前記支持体との間に設けられ、前記第1半導体層が放射する光を前記第2半導体層の方向に反射する反射層と、
をさらに備えた請求項2〜18のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項20】
前記電極の下において、前記第3半導体層と、前記反射層と、の間に、電流ブロック層が選択的に設けられた請求項19記載の半導体発光素子。
【請求項1】
光を放射可能な第1半導体層と、
前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有する第2半導体層であって、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する第2の半導体層と、
前記突起の少なくとも先端部に設けられた誘電体膜と、
前記第2領域の上に設けられた電極と、
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層と、
前記第3半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記第1半導体層と、前記第2半導体層と、前記第3半導体層と、を支持する支持体と、
前記第3半導体層と前記支持体との間に設けられ、前記第1半導体層が放射する光を前記第2半導体層の方向に反射する反射層と、
前記電極から前記第2主面に沿って延在する細線電極と、
を備え、
前記第2主面に対して垂直な断面における前記突起の一方の底角は、90度以上であり、且つ、前記突起の他方の底角は、35度以上、45度以下であり、
前記誘電体膜は、前記突起における90度以下である他方の底角側の側面、または、前記突起の全体に設けられ、二酸化珪素、窒化珪素および酸窒化珪素のいずれかを含み、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれは、
Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)、
AlxGa1−xAs(0≦x≦1)、
および、InxGa1−xAsyP1−y(0≦x≦1、0≦y≦1)
で表される組成を有し、
前記第2主面の結晶成長面は、(100)面から10度以上、20度以下の範囲で結晶方位が傾斜し、且つ、(100)面から(111)III族面または(111)V族面の方向に傾斜し、
前記電極の下において、前記第3半導体層と、前記反射層と、の間に、電流ブロック層が選択的に設けられた半導体発光素子。
【請求項2】
光を放射可能な第1半導体層と、
前記第1半導体層に向き合う第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有する第2半導体層であって、前記第2の主面において、複数の突起が設けられた第1領域と、前記突起が設けられていない第2領域と、を有する第2の半導体層と、
前記突起の少なくとも先端部に設けられた誘電体膜と、
前記第2領域の上に設けられた電極と、
を備えた半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2主面に対して垂直な断面における前記突起の一方の底角は、90度以上である請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2主面に対して垂直な断面における前記突起の他方の底角は、35度以上、45度以下である請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記誘電体膜は、少なくとも、前記突起における90度以下である他方の底角側の側面に設けられる請求項3または4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記誘電体膜は、前記突起の全体に設けられた請求項3または4に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記誘電体膜は、二酸化珪素、窒化珪素および酸窒化珪素のいずれかを含む請求項2〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記誘電体膜は、二酸化珪素膜、窒化珪素膜および酸窒化珪素膜から選択された少なくとも2つの膜を含む請求項2〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記突起と前記誘電体膜とを覆う樹脂をさらに備え、
前記第2半導体層の屈折率N1と、前記誘電体膜の屈折率N2と、前記樹脂の屈折率N3と、は、次式を満足する請求項2〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
N1>N2>N3
【請求項10】
前記突起と前記誘電体膜とを覆う樹脂をさらに備え、
前記第2半導体層の屈折率N1と、前記誘電体膜の屈折率N2と、前記樹脂の屈折率N3と、は、次式を満足する請求項2〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
N1>N2、且つ、N2<N3
【請求項11】
前記誘電体膜の膜厚の最大値は、50〜500nmである請求項2〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層をさらに備え、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれは、
Inx(AlyGa1−y)1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1)、
AlxGa1−xAs(0≦x≦1)、
および、InxGa1−xAsyP1−y(0≦x≦1、0≦y≦1)
で表される組成を有するいずれかの化合物を含む請求項2〜11のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記第2主面の結晶成長面は、(100)面から10度以上、20度以下の範囲で結晶方位が傾斜した請求項12記載の半導体発光素子。
【請求項14】
前記第2主面の結晶成長面は、(100)面から(111)III族面または(111)V族面の方向に傾斜した請求項13記載の半導体発光素子。
【請求項15】
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層をさらに備え、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれは、
InxAlyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)
で表される組成を有する化合物を含む請求項2〜11のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項16】
前記誘電体膜が前記電極の外周を覆った請求項2〜15のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項17】
前記第2半導体層は、前記第1主面および前記第2主面に接する側面を有し、
前記誘電体膜は、前記側面の少なくとも一部を覆う請求項2〜16のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項18】
前記電極から前記第2主面に沿って延在する細線電極をさらに備え、
前記誘電体膜は、前記細線電極を覆う請求項2〜17のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項19】
前記第1半導体層を介して前記第2半導体層に対向し、前記第2半導体層とは導電形が異なる第3半導体層と、
前記第3半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記第1半導体層と、前記第2半導体層と、前記第3半導体層と、を支持する支持体と、
前記第3半導体層と前記支持体との間に設けられ、前記第1半導体層が放射する光を前記第2半導体層の方向に反射する反射層と、
をさらに備えた請求項2〜18のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項20】
前記電極の下において、前記第3半導体層と、前記反射層と、の間に、電流ブロック層が選択的に設けられた請求項19記載の半導体発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2013−110384(P2013−110384A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195558(P2012−195558)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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