説明

半導体素子の熱電特性測定装置

【課題】 熱電素子に直流電流を流してゼーベック係数,電気抵抗率及び熱伝導率などの複数項目の熱電特性を測定するように構成された熱電特性測定装置において,室温より離れた温度領域での測定を可能にする。
【解決手段】 熱電特性測定装置は,電流線30及び熱電対36が接続された熱電素子16が収容される内側空間19を囲み,熱電素子16からの輻射熱を内側空間19へ反射する熱リフレクタ18と,熱リフレクタ18の温度を熱電素子16とほぼ同等の温度になるように制御する手段と、電流線30及び熱電対36の温度を熱電素子16とほぼ同等の温度になるように制御する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,熱電発電などの熱電変換の用途に用いられる半導体素子(以下,熱電素子という)がもつ熱電特性を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1にあるように,熱電素子に電流を流したときの熱電素子の温度を測ることにより熱電素子の複数項目の熱電特性,例えばゼーベック係数,電気抵抗率及び熱伝導率を測定する方法が知られており,その一つとして,例えば「トランジェント(Transient)法」と呼ばれる方法が知られている。「トランジェント法」を用いた測定装置は,熱電素子に直流電流を流し,熱電素子の両端部にかかる電圧と素子両端の温度差を計測し,これに基づいて,ゼーベック係数,電気抵抗率及び熱伝導率といった複数項目の熱電特性を同時的に求める。この装置では,熱電素子の両端部又は一端部に,熱電対や電流印加のための電線又は電極が取り付けられ,そして,室温付近の温度領域で測定が行なわれる。
【非特許文献1】Richard J. Buist, CRC Handbook of Thermoelectrics,Ed. Rowe, 1995, CRC press, inc. Chapter 18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱電素子が例えば熱電発電に用いられる場合,室温よりも高い温度領域での熱電特性が解析される必要がある。例えば,室温から摂氏300度程度までの温度領域の熱電特性が測定されることが要求される。
【0004】
しかし,上述した,熱電素子に直流電流を流してゼーベック係数,電気抵抗率及び熱伝導率などの複数項目の熱電特性を測定するように構成された従来の熱電特性測定装置では,室温より離れた温度領域での熱電特性の測定が困難である。その理由は,熱電素子と周囲環境との間に余計な熱流が発生し,この熱流が特性測定を妨害するからである。測定温度が室温から離れるほど,熱電素子と周囲環境との間の温度差が大きくなるので,余計な熱流が大きくなり,正確な測定をますます困難にする。
【0005】
従って,本発明の目的は,熱電素子に直流電流を流してゼーベック係数,電気抵抗率及び熱伝導率などの複数項目の熱電特性を測定するように構成された熱電特性測定装置において,室温より離れた温度領域での熱電特性の測定を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う,熱電素子に直流電流を流したときの前記熱電素子の温度を測ることにより,前記熱電素子の熱電特性を測定する装置は,前記直流電流を流すための電流線及び前記温度を測るための熱電対が取り付けられた熱電素子が収容される内側空間を囲み,前記熱電素子からの輻射熱を前記内側空間へ反射する熱リフレクタを備えている。
【0007】
好適な実施形態では,前記熱リフレクタの温度を前記熱電素子とほぼ同等の温度になるように制御する熱リフレクタ温度制御手段が更に設けられる。
【0008】
本発明の別の観点に従う,熱電素子に直流電流を流したときの前記熱電素子の温度を測ることにより,前記熱電素子の熱電特性を測定する装置は,前記熱電素子に直流電流を流すための電流線及び前記熱電素子の温度を測るための熱電対に結合され,前記電流線及び前記熱電対の温度を前記熱電素子とほぼ同等の温度になるように制御する電線温度制御手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱リフレクタを備えた熱電特性測定装置によれば,室温より離れた温度領域であっても,熱リフレクタが熱電素子からの輻射熱を反射して内部空間へ戻すため,熱電素子の実効輻射率が低減し,熱電素子と周囲環境との間の熱流が抑制されるので,測定の精度が向上する。
【0010】
また,熱リフレクタ温度制御手段が更に設けられた場合には,熱電素子と周囲環境との間の熱流がさらに効果的に抑制されるので,測定の精度がより向上する。
【0011】
本発明の電線温度制御手段を備えた熱電特性測定装置によれば,室温より離れた温度領域であっても,電線温度制御手段が熱電素子に接続された電流線や熱電対の温度を熱電素子の温度とほぼ同等になるように制御するので,電流線や熱電対を通じて流れる熱電素子と周囲環境との間の熱流が抑制されるので,測定の精度がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は,本発明の一実施形態に従う熱電特性測定装置の全体構造を示す。
【0013】
図1に示すように,ヒータブロック10上に,板状の熱アンカ12が置かれ,この熱アンカ12上に,板状の試料ホルダ14が置かれ,この試料ホルダ14の表面上の中央部に熱電素子の試料16が固定される。試料16は,例えばn型Bi2Te3のような熱電変換機能をもつ半導体のブロックである。ヒータブロック10と熱アンカ12と試料ホルダ14は,間に隙間ができないよう密着している。
【0014】
ヒータブロック10は,図示しない制御装置により駆動され,試料ホルダ14が所定の設定温度になるように,その加熱量が制御される。熱アンカ12は,Al2O3又はAlNのような熱伝導性の良好な電気絶縁材料製の部品であって,試料16に接続された電流線30及び熱電対36の温度を試料16と同等にする役目をもつとともに,電流線30と熱電対36をそれぞれ電気的に絶縁し,かつ,試料ホルダ14と電流線30との間の電気的絶縁,及び試料ホルダ14と熱電対36との間の電気的絶縁を行う。ヒータブロック10と熱アンカ12と試料ホルダ14は,間に隙間ができないよう密着状態で結合されており,これらの部品間の熱伝達は良好である。
【0015】
試料ホルダ14は,例えば銅又はアルミニウムのような熱伝導性と電気伝導性の良好な金属製の板である。試料ホルダ14の表面は,光沢が出るよう平坦に加工され,例えばニッケルのような赤外線の反射率の良い金属でめっきされる。試料ホルダ14のニッケルめっきされた表面に,試料16の下端面が半田付け,蝋付け又はその他の電気的及び熱的に界面抵抗の低い冶金的方法で接合される。試料ホルダ14と試料16は電気的及び熱的に良好な導通状態にある。試料ホルダ14の表面のニッケルでめっき層は,試料16からの輻射熱(赤外線)を高い反射率で反射して試料16の実効輻射率を低減する役目と,試料ホルダ14の基材(例えば銅)が試料16に拡散することを防止する役目とを持つ。
【0016】
試料ホルダ14の表面上の試料16の近傍の2箇所に,測定用の直流電流を流すための電流線20と,試料ホルダ14の温度(実質的に試料16の下端温度)を測定するための熱電対24が,それぞれ半田22,26(又は蝋付けなどの電気的及び熱的に界面抵抗の低い冶金的方法)により接着される。
【0017】
試料16の上端面には,電極片28が接合され,この電極片28も,試料ホルダ14と同様,例えばニッケルめっきされた銅又はアルミニウムの小板である。この電極片28の上面の2箇所に,測定電流を流すための電流線30と,電極板28の温度(実質的に試料16の上端温度)を測定するための熱電対36が,それぞれ半田32,38(又は蝋付けなどの電気的及び熱的に界面抵抗の低い冶金的方法)により接着される。
【0018】
試料ホルダ14上に,箱型の熱リフレクタ18が被せられ,熱リフレクタ18によって囲まれた内部空間19内に,試料16やその周辺の熱電対や電流線20,30及び熱電対24,36が収容される。熱リフレクタ18は,例えば銅又はアルミニウムのような熱伝導性の良好な金属製の板である。熱リフレクタ18の表面(特に内部空間19に露呈する内面)は,光沢がでるよう平坦に加工され,例えばニッケルのような赤外線の反射率の良い材料でめっきされる。或いは,熱リフレクタ18は,例えばステンレス鋼のようにそれ自体が赤外線の反射率の高い材料で作られ,その内面は光沢が出るよう平坦に加工される。熱リフレクタ18の下端面は,試料ホルダ14の上面に間に隙間ができないよう密着状態で結合されており,両者間の熱伝導性は良好である。熱リフレクタ18は,試料16からの輻射熱(赤外線)を高い反射率で反射して内側空間19へ返し,それにより試料16の実効輻射率を低減する役目をもつ。熱リフレクタ18の内側空間19は,図示しない真空ポンプにより,10−2以下の真空状態にされる。また,熱リフレクタ18の一部分には貫通孔(図示せず)が設けられ,内部空間19内の電流線20,30及び熱電対24,36がその貫通孔を通って熱リフレクタ18の外部へ引き出されて,図示しない信号処理装置へ接続される。電流線20,30の通過孔は電気絶縁され,熱電対24,36の通過孔は極力小さくされる。
【0019】
試料16の上端部の電極片28に接続されている電流線30と熱電対36は,その熱リフレクタ18外へ引き出された部分の途中箇所に,熱伝導性の良い材料で作られた熱アンカ圧着端子40,42,44を有している。この熱アンカ圧着端子40,42,44は,例えば螺子により,熱アンカ12に密着状態で結合されており,それにより,熱アンカ12と電流線30及び熱電対36との間の熱伝導性が良好になっている。
【0020】
以上の構成の測定装置において,試料16の熱電特性の測定は,図示しない信号処理装置により,熱電素子に直流電流を流して行う方法(例えばトランジェント法)を用いて概略次の処理手順で行なわれる。
【0021】
試料16の均熱を確保した状態で,試料16の上端部の電流印加前後の温度差が数度程度になるような大きさの直流電流を試料16に印加する。その後,試料16の温度分布が安定したところで電流を遮断する。電流遮断直前の試料16の上下端の温度,電流遮断直後の試料16上下端の電圧変化を観測し,最初に試料16の電気抵抗率,ゼーベック係数を算出する。その後,印加した電流,試料16の上下端の温度差,試料16の平均温度,ゼーベック係数の値から,熱伝導率と性能指数を求める。
【0022】
試料16の外部環境に対する熱の流出,流入が全く無いときは,無次元性能指数は,ハーマン法による公知の方程式(後述)により求めることが出来る。しかし,試料16の温度を室温以上又は以下の温度に設定した場合,実際には外部環境に対する熱の流出,流入を零にすることは不可能である。そのため,無次元性能指数の方程式から求めた性能指数,更に,先の計算で求めた電気抵抗率とゼーベック係数を用いて逆算した熱伝導率を初期値として解析計算を行い,より正確な熱伝導率,性能指数を求める。その計算方法の詳細は後に説明する。以上の測定を,試料16の温度を各設定温度にした状態で行うことで,試料16の温度毎の熱電性能を評価することができる。
【0023】
上述した測定において,試料16の熱伝導率は,ペルチェ吸熱とジュール熱と外部から流出入した熱の総和を試料16の上下端の温度差で割れば求められる。試料16の外部環境に対して流出入する熱は,試料16の上端の温度だけの関数に書き直すことが出来る。外部環境に対して流出入する熱の主な要因は試料16の熱輻射,試料16の上端に付けた電流線30及び熱電対36による熱伝導,大気による熱伝導,大気の対流による熱流である。これらの値は小さければ小さいほどより正確な測定が出来る。
【0024】
この測定装置では,試料16が真空中に設置されるため,まず,大気による熱伝導と,大気の対流による熱流を無視できる。次に,電流線30及び熱電対36による熱伝導は,電流線30及び熱電対36を細長くすることにより低減できるが,電流線30及び熱電対36に発生するジュール熱やノイズの少ない温度測定をすることを考慮すると,電流線30及び熱電対36を細長くするには限度がある。そこで,この測定装置では,電流線30及び熱電対36の中継地点が,試料ホルダ14とヒータブロック10の間に挿入された熱伝導性の良い熱アンカに結合されて,試料16とほぼ同等の温度にまで加熱される。それにより,設定温度が室温以上であっても以下であっても,電流線30及び熱電対36からの熱の流出入が極力小さく抑制される。電流線30及び熱電対36の熱伝導率は,その材質とサイズから比較的正確に見積もることが出来るため,電流線30及び熱電対36に起因する測定誤差を大幅に低減させることができる。
【0025】
最後に,最も大きな不確定要因になるのは試料16の実効輻射率であり,この値を出来るだけ小さく抑え,且つ正確に求めることにより,より正確な熱伝導率を見積もることが出来る。そこで,この測定装置では,試料16の周りにこれを包囲するように輻射熱を内方へ反射する熱リフレクタ18が配置され,熱リフレクタ18が試料16下部の試料ホルダ14に密着して試料16とほぼ同じ温度に保持されて,試料16からの輻射熱を反射して試料16の側へ戻す。それにより,設定温度が室温以上であっても以下であっても,試料16の実効的な輻射率が低減される。
【0026】
実際,この測定装置における試料16の実効的な輻射率を算出してみたところ,図2に示すように摂氏100度から300度程度の室温よりかなり高い温度領域においてさえ,実効輻射率は0.15程度の非常に低いものであることが確認された。
【0027】
従って,この測定装置によれば,室温から大きく外れた温度範囲において熱電素子の性能をより精度良く評価することが可能である。また,単体の熱電素子のみでなく,複数の熱電素子から構成される熱電モジュールの性能評価も可能である。
【0028】
なお,上述した実施形態では,熱リフレクタ18の温度を試料16とほぼ同等の温度にするために,熱リフレクタ18の下端面を試料ホルダ14に結合させている。変形例として,この構成に加えて,熱リフレクタ18の上面へヒータを導入し,熱リフレクタ18の均熱性を向上させるようにしてもよい。また,別の変形例として,電流線30及び熱電対36の温度を試料16とほぼ同等の温度にするための熱アンカ12は,ヒータブロック10と試料ホルダ14との間に配置される必要は必ずしもなく,別の場所に配置されてもよい。
【0029】
最後に,この測定装置で採用され得る,トランジェント法による熱電特性の測定処理の具体的な計算を説明する。
【0030】
図3は,試料を流れる熱流の模式図である。
【0031】
図3Aにおいて,試料16の上部(低温Tc側) の吸熱量(Qc)と,試料16の下部(高温Th側)の放熱量(Qh)は,それぞれ次の式で表される。
【0032】
Qc=αTcI−RI2/2−K(Th−Tc) ・・・式1
Qh=αThI+RI2/2−K(Th−Tc) ・・・式2
ここに,Kは熱コンダクタンス,
Iは試料16を流れる電流であり,
式1+式2より
Qc+Qh=α(Tc+ Th)I−2K(Th−Tc) ・・・式3
となる。
【0033】
次に,電流の方向を図3Bのように反転した場合を考えると,試料16の下部(低温Tc’側) の吸熱量(Qc’)と,試料16の上部(高温Th’側)の放熱量(Qh’)は,それぞれ次の式で表される。
【0034】
Qc’=αTc’I’−RI’2/2−K(Th’−Tc’) ・・・式4
Qh’=αTh’I’+RI’2/2−K(Th’−Tc’) ・・・式5
ここに,I’は試料16を流れる電流であり,
式4+式5より
Qc’+Qh’=α(Tc’+Th’)I’−2K(Th’−Tc’) ・・・式6
となる。
【0035】
式3+式6より
Qc+Qh+Qc’+Qh’=α{(Tc+ Th)I+(Tc’+ Th’)I’}−2K{(Th−Tc)+(Th’−Tc’)}・・・式7
が得られる。式7の右辺第1項を−Qp,第2項をQκとすると,式7は次のように書きかえられる。
【0036】
−Qp=Qκ+(Qc+Qh+Qc’+Qh’) ・・・式8
式8の括弧内の吸熱および放熱の原因が,輻射(Qri+Qre),大気の対流(Qc),大気による熱伝導(Qa)であるとすると,次式になる。
【0037】
−Qp=Qκ+Qri+Qre+Qc+Qa ・・・式9
ここで,試料16の上端部の電流線30及び熱電対36からの吸熱(Qw)と,試料16の下端部の試料ホルダ14への放熱(Qpl)を考えると,式9は次のように表すことができる。
【0038】
−Qp=Qpl+Qw+(Qκ+Qri+Qre+Qc+Qa)
ここで,外部の温度をTrt,電流線30及び熱電対36の熱コンダクタンスをKw,試料ホルダ14の熱コンダクタンスをKplとすると
Qpl+Qw=Kpl{(Th−Trt)+(Trt−Tc’)}+ Kw{(Trt−Tc)+(Th’−Trt)}
であるから,
Qpl+Qw=Kpl(Th−Tc’) + Kw(Th’−Tc) ・・・式10
が得られる。
【0039】
ここで,試料16の下端部の温度(Tbot)を一定にして,電流の向きを反転することにより上端部の温度(Ttop)の温度を下端部の温度(Tbot)の上下の温度に振っている。従って,Th=Tc’となり,Qpl=Kpl(Th−Tc’)=0となる。このとき,式9は次の様になる。
【0040】
−Qp=Qκ+Qw+Qri+Qre+Qc+Qa ・・・式11
式11に式7の第1項,第2項を代入すると,
α{(Tc+Th)I+(Tc’+Th’)I’}=2K{(Th−Tc)+(Th’−Tc’)}+Qw+Qri+Qre+Qc+Qa
よって,
α/K=[2{(Th−Tc)+(Th’−Tc’)}+{(Qw+Qri+Qre+Qc+Qa)/K}]/{(Tc+Th)I+(Tc’+Th’)I’}
である。
【0041】
ここで,Da=(Th−Tc)+(Th’−Tc’),ITa=(Tc+Th)I/2+(Tc’+Th’)I’/2,K=κ/L(L=l/s)とすると,
α/κ=[2Da+{(Qw+Qri+Qre+Qc+Qa)L/κ}]/(2LITa)
よって,
α/κ=Da[1+{(Qw+Qri+Qre+Qc+Qa)L/(2Daκ)}]/(LITa)
よって,
α/κ=CDa/(LITa) ・・・式12
C=[1+{(Qw+Qri+Qre+Qc+Qa)L/(2Daκ)}=1+ QwL/(2Daκ)+Radi+Rade+Conv+Cair
・・・式13
ここに,Cは,補正因子(理想的な熱損の無い場合には1)であり,
Radi=4T3RiL/2κ Ri=σ×ε×Internal_surface_area
Rade=4T3ReL/2κ Re=σ×ε×External_surface_area
Conv=HL/2κ H=Convection_coefficient×External_surface_area
Conv=KaL/κ Ka=Air_conductivity×Internal_ surface_area
ここに,σはステファン−ボルツマン定数,
εは輻射率,
Internal_surface_areaは試料16を囲む環境の表面積,
External_surface_areaは試料16及び電極の表面積,
Convection_coefficientは対流係数,
Air_conductivityは空気の熱伝導率である,
となる。
【0042】
ここで計測中の試料16の電位の関係式は以下のようになる。
【0043】
Vo=α(Th−Tc)+αw(Th−Tc)
Vo’=α(Th’−Tc’)+αw(Th’−Tc’)
Vi=ρLI+Vo
Vi’=ρLI’+Vo
αw=電圧電線の絶対熱電能
上式からゼーベック係数αと電気抵抗率ρは以下
α=2Voa/Da−αw・・・式14
ρ=(Via−Voa)/(LIa)・・・式15
Voa=(Vo+Vo’)/2
Via=(Vi+Vi’)/2
Ia=(I+I’)/2
のように表せる。
【0044】
式14÷式12より,熱伝導率κは,
κ=2LITaVoa/(CDa2)+LITaαw/(CDa) ・・・式16
となり,式12×式14÷式15より,性能指数Zは,
Z=2CIaVoa/{ITa(Via−Voa)}−(CIaαw/Da)/{ITa(Via−Voa)} ・・・式17
となる。
【0045】
本測定装置では,はハーマン法で無次元性能指数を求める式
ZT=Voa/(Via−Voa)
よりZとκの初期値を求め,式16より繰り返し計算することにより,最終的なZとκとCを決定する。
【0046】
以上,本発明の実施形態を説明したが,この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず,本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は,その要旨を逸脱することなく,その他の様々な態様でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態にかかる熱電特性測定装置の斜視図。
【図2】同実施形態における測定温度と輻射率との関係を示す図。
【図3】試料を流れる熱流の模式図。
【符号の説明】
【0048】
10 ヒータブロック
12 熱アンカ
14 試料ホルダ
16 試料
18 熱リフレクタ
20,30 電流線
24,36 熱電対
40,42,44 熱アンカ圧着端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電素子(16)に直流電流を流したときの前記熱電素子(16)の温度を測ることにより,前記熱電素子(16)の熱電特性を測定する装置において,
前記直流電流を流すための電流線(20,30)及び前記温度を測るための熱電対(24,36)が取り付けられた前記熱電素子(16)が収容される内側空間(19)を囲み,前記熱電素子(16)からの輻射熱を前記内側空間へ反射する熱リフレクタ(18)を備えた熱電特性測定装置。
【請求項2】
前記熱リフレクタ(18)の温度を前記熱電素子(16)とほぼ同等の温度になるように制御する熱リフレクタ温度制御手段を更に備えた請求項1記載の熱電特性測定装置。
【請求項3】
熱電素子(16)に直流電流を流したときの前記熱電素子(16)の温度を測ることにより,前記熱電素子(16)の熱電特性を測定する装置において,
前記熱電素子(16)に直流電流を流すための電流線(30)及び前記熱電素子(16)の温度を測るための熱電対(36)に結合され,前記電流線(30)及び前記熱電対(36)の温度を前記熱電素子(16)とほぼ同等の温度になるように制御する電線温度制御手段を備えた熱電特性測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate