説明

半導体装置の放射線照射試験方法

【課題】 より効率的に半導体装置の放射照射試験を実施することができる放射線照射試験方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置10の放射線照射試験方法であって、複数の半導体装置10を一方向50からみたときに重なるように配置し、前記一方向50に沿って複数の半導体装置10の全てを貫通する強度で放射線を照射する。一度に複数の半導体装置10に放射線を照射することができ、効率的に放射照射試験を実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の放射線照射試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙線が半導体装置の特性に影響を与えることが知られている。このため、例えば特許文献1に示すように、半導体装置に放射線(例えば、中性子線、陽子線、電子線、原子核線、素粒子線、または、電磁放射線等)を照射する試験が行われている。放射線照射試験の結果によって、半導体装置の放射線に対する耐性等を評価し、半導体装置の故障率等を推定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−251813号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、1つの半導体装置を試験装置内に設置して放射線照射試験を行っていた。しかしながら、放射線照射試験を行うと、試験装置内の部品が放射化する。例えば、通常は、半導体装置を治具に固定し、その治具を試験装置内に設置する。治具にはヒートシンク等の金属部分が設けられている。このため、放射線照射試験を実施すると、治具の金属部分が放射化する。したがって、試験装置内の放射線量が安全な量に低下するまで次の試験を行うことができない。放射線量が安全な量に低下するにはかなりの時間が必要であり、試験を効率的に実施することができなかった。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みて創作されたものであり、より効率的に半導体装置の放射線照射試験を実施することができる放射線照射試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置の放射線照射試験方法では、複数の半導体装置を一方向からみたときに重なるように配置し、前記一方向に沿って複数の半導体装置の全てを貫通する強度で放射線を照射する。
この試験方法では、重なるように配置した複数の半導体装置の全てを貫通する強度で放射線を照射する。放射線(特に、中性子線等の粒子放射線)は、物質に対する透過性が高いため、重なっている複数の半導体装置の全てを容易に貫通する。このため、一度で複数の半導体装置の試験を行うことができる。また、複数の半導体装置を重なるように配置するので、半導体装置の配置に必要なスペースは広くならない。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放射線照射試験方法では、試験装置を大型化することなく、一度で複数の半導体装置を試験することができる。効率的に試験を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施形態に係る放射線照射試験方法について説明する。本実施形態では、図1のIGBT10(半導体チップ)に中性子線を照射する試験について説明する。本実施形態の試験方法では、図1に示すように、IGBT10を治具20に実装する。治具20は、基部22と、絶縁基板24と、ターミナル26、28を備えている。基部22は、板状の部材であり、一方の表面に凹部22aが形成されている。絶縁基板24は、絶縁性の基板であり、凹部22aの底面中央部に固定されている。ターミナル26、28は、凹部22aの壁面に固定されている。本実施形態では、IGBT10を接着剤等によって絶縁基板24の表面に固定する。また、ワイヤーボンドによってIGBT10の各電極とターミナル26、28とを接続する。このようにIGBT10を実装した治具20を複数個用意する。
【0009】
各治具20にIGBT10を実装したら、各治具20を中性子線照射試験装置内に配置する。図1は、中性子線照射装置内における治具20の配置を示している。図1の矢印50は、中性子線の照射方向を示している。図1に示すように、照射方向50とIGBT10の表面が垂直となるように各治具20を並べる。また、照射方向50から見たときに、各IGBT10が重なるように各治具20を並べる。
また、各治具20を中性子線照射試験装置内に配置する際には、各治具20のターミナル26、28を図示しない配線によって外部回路に接続する。ここでは、図2に示すように、IGBT10を外部回路30に接続する。
【0010】
各治具20を中性子線照射装置内に配置したら、外部回路30の電源32(図2参照)をオンする。これによって、各IGBT10のコレクタ−エミッタ間に電圧を印加する。そして、中性子線照射装置を作動させて、照射方向50に沿って中性子線を照射する。このとき、中性子線照射装置内に配置した全ての治具20を貫通する強度で中性子線を照射する。このため、全てのIGBT10の内部を中性子線が通過する。これによって、中性子線照射時に各IGBT10中においてシングルイベントバーンアウト現象が生じるか否かを評価する。
【0011】
以上に説明したように、本実施形態の中性子線照射試験方法では、各IGBT10を照射方向50から見たときに重なるように配置し、照射方向50に沿って中性子線を照射する。中性子線は、物質中を透過し易い。したがって、全てのIGBT10中を中性子線が透過し、複数のIGBT10の特性を同時に評価することができる。効率的に試験を実施することができる。また、IGBT10(治具20)を重なるように配置するため、中性子線照射装置内で広いスペースが必要とならない。中性子線照射装置を大型化することなく試験を実施することができる。
【0012】
なお、図3は、変形例の中性子線照射試験方法におけるIGBT10の接続関係を示す回路図である。図3の例では、中性子線照射装置内に配置したIGBT10(すなわち、治具20)のうちの半分を外部回路60(すなわち、電源62)に接続し、残りの半分を外部回路70(すなわち、電源72)に接続している。このように中性子照射試験装置内の各IGBT10を異なる電源に接続することで、印加電圧が異なる場合のIGBT10の中性子線に対する特性を同時に評価することができる。
【0013】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】中性子線照射装置内におけるIGBT10(治具20)の配置を示す図。
【図2】中性子照射試験時のIGBT10の接続を示す回路図。
【図3】変形例の中性子照射試験時のIGBT10の接続を示す回路図。
【符号の説明】
【0015】
10:IGBT
20:治具
22:基部
22a:凹部
24:絶縁基板
26:ターミナル
28:ターミナル
30:外部回路
32:電源
50:照射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の放射線照射試験方法であって、
複数の半導体装置を一方向からみたときに重なるように配置し、前記一方向に沿って複数の半導体装置の全てを貫通する強度で放射線を照射する試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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