説明

半導体装置の製造方法

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明は、IC,LSIチップ等の実装方法に関するものである。
従来の技術 従来の技術を、第4図及び第5図を用いて説明する。まず初めに第4図(a)に示す様に、ポリイミド,ポリエステル等よりなる樹脂フィルム21の導体配線22を有する面にディスペンサー等により絶縁性樹脂25を塗布する。導体配線22は、Cu,Au等であり、絶縁性樹脂25は、紫外線硬化型あるいは熱硬化型のエポキシあるいはアクリル型である。次に、第4図(b)に示す様に、LSIチップ26のバンプ27と導体配線22を位置合わせし、LSIチップ26を絶縁性樹脂フィルム21に設置し、加圧ツール28でLSIチップ26を加圧する。この時、導体配線22とバンプ27の絶縁性樹脂25は押圧され、バンプ27と導体配線22は、電気的に接触する。次にLSIチップ26を加圧した状態で、絶縁性樹脂25を硬化する。絶縁性樹脂25の硬化の方法は、絶縁性樹脂25が紫外線硬化の場合は、樹脂フィルムの裏面あるいはLSIチップ26の側面より、紫外線29を照射し硬化する。また、熱硬化の場合は、加圧ツール28に加熱機構を設け、LSIチップ26を介して硬化する。次に、第4図(c)に示す様に、加圧を解除することにより、LSIチップ26が、樹脂フィルム21に固着されるとともに、導体配線22とLSIチップ26が電気的に接続されるものである。
発明が解決しようとする課題 前記従来の技術では、絶縁性樹脂を用いてLSIチップを配線基板に接続する方法であるため、非常に微細な電極ピッチのLSIの接続に有利な方法であるか、配線基板が樹脂フィルムの場合、次に示す様な問題点を有していることが判明した。
(1)樹脂フィルムは、フレキシビリティーがある為、容易に変形し、第5図に示す様に、樹脂フィルムは、LSIチップに対して容易に剥離し、導体配線とLSIチップのバンプは電気的に接続不良となり、信頼性の低いものである。
(2)樹脂フィルムは吸温性がある為、空気中の水分は、樹脂フィルムを介して、容易にLSIチップを固着している絶縁性樹脂に到達し、絶縁性樹脂が膨張することにより、接続不良が発生する。
(3)LSIチップのバンプと導体配線の電気的な接触はLSIチップを樹脂フィルム間にある絶縁性樹脂の硬化収縮力により保持されているが、樹脂フィルムは弾性力が非常に小さい為、絶縁性樹脂の硬化収縮力により容易に変形し、LSIチップと樹脂フィルム間の収縮力が小さく、信頼性の低いものである。
したがって、本発明はLSIチップに対して剥離のない半導体実装体を提供することを目的とする。また本発明は、耐湿性にすぐれ、信頼性の高い半導体実装体を得ることを目的とする。
課題を解決するための手段 本発明は、一主面に導体配線を有する長尺状の絶縁性フィルムをリール供給し、前記絶縁性フィルムの裏面側に補強板を接着する工程と、絶縁性フィルムの導体配線を有した面に絶縁性樹脂を塗布する工程と、前記絶縁性フィルムの導体配線と前記半導体素子の突起電極を位置合わせし、前記半導体素子を前記絶縁性フィルムに加圧しその状態で前記絶縁性樹脂を硬化させ前記突起電極と前記導体配線を電気的に接続する工程と、前記半導体素子が接続された長尺状の絶縁性フィルムを順次リールで巻き取る工程とを有する半導体装置の製造方法を提供する。また一主面に導体配線を有する長尺状の絶縁性フィルムをリール供給し、前記絶縁性フィルムの裏面側に補強板を接着する工程において、前記補強板は樹脂フィルムに接続する半導体素子と同等以上の大きさの補強板を接着する工程である半導体装置の製造方法を提供する。
作用 上記手段によれば、LSIチップ等の半導体素子が固着された領域における樹脂フィルムは、補強板で支持されている為、曲り等の変形が生じず、LSIチップに対する剥離の力は作用しない、また、耐湿性も向上し信頼性の高いものとなる。すなわち、本発明では、(1)樹脂フィルムとしてTAB用のテープを用いてLSIチップの接続後にリールに巻き取っても、LSIチップの領域には樹脂フィルムの曲りが生じず、LSIチップに剥離の力は作用せず、信頼性の高い接続が得られる。
(2)補強板により、絶縁性樹脂への水分の浸入を低減できる為、耐湿性が向上する。
(3)絶縁性樹脂の硬化収縮による、樹脂フィルムの変形が生じない為、LSIチップと樹脂フィルムの間には、十分な収縮力が作用し、LSIチップのバンプと導体配線の接触の保持が非常に信頼性の高いものとなる。
(4)TAB用のテープを用い、リールに巻き取ることができる為、生産性に富み非常にコストの安いものとなる。
実施例 本発明の一実施例を第1図,第2図とともに説明する。まず、第1図(a)に示す様に、ポリイシド,ポリエステルフィルム等よりなる樹脂フィルム1の後にLSIチップを固着する面と反対の面に、補強板4を接着剤3を用いて固着する。補強板4は、ガラス,Al,Cu,セラミック等よりなり、その厚みは、0.2〜1.0mm程度であり寸法は、LSIチップ1を同等以上の寸法を有する。接着剤3は、エポキシ,アクリル等である。導体配線2は、CuにNi,Auめっきを施したものを用いる。樹脂フィルム1は、長尺状、短尺状どちらでもよく、長尺の場合は、巻き取られたリールから供給されるTAB方式のテーブを用いることができる。
次に第1図(b)に示す様に、樹脂フィルム1の導体配線2を有する面に、絶縁性樹脂5をディスペンサー等により塗布する。絶縁性樹脂5はアクリル,エポキシ,シリコーン等の紫外線硬化型あるいは、熱硬化型の樹脂である。本実施例では、絶縁性樹脂5は、樹脂フィルム1側に塗布したが、後に搭載するLSIチップ側に塗布してもよい。
次に第1図(c)に示す様に、LSIチップ6のバンプ7を導体配線2を位置合わせし、LSIチップ6を樹脂フィルム1に設置し、その後、加圧ツール8にてLSIチップ6を加圧する。この時、バンプ7と導体配線2の間の絶縁性樹脂5は周囲に押し出され、バンプ7と導体配線2は電気的に接触する。バンプ7は、Au,Cu,In等よりなり、その厚みは2〜10μm,サイズは、10〜50μmφ程度である。
次に、LSIチップ6を加圧した状態で、絶縁性樹脂5を硬化する。硬化の方法は、絶縁性樹脂5が紫外線硬化型の場合は、樹脂フィルム1の補強板4側、または、補強板4が不透明な場合は、LSIチップ6の側面より、紫外線9を照射し硬化させる。また、絶縁性樹脂5が熱硬化型の場合は、加圧ツールに加熱機構を設け、LSIチップ6を介して加熱硬化する。いづれの場合でも、硬化時間は、数秒〜数十秒程度である。この時、絶縁性樹脂5は硬化収縮するが、樹脂フィルム1には、補強板4が固着されている為、樹脂フィルム1には、硬化収縮よる変形が生じず、LSIチップ6と樹脂フィルム1の間には十分な収縮力が作用し、後に加圧ツール8を取り除いても、バンプ7と導体配線2の接触は保持される。
次に、第1図(d)に示す様に、加圧ツール8を解除し、LSIチップ6を樹脂フィルム1に固着するとともに、バンプ7と導体配線2を電気的に接続する。
また、樹脂フィルム1としてTAB用のテープを用いた場合のLSIチップ6接続後外観図を第2図に示す。樹脂フィルム1には、搬送のためのガイド孔10が設けられ、LSIチップ6の樹脂フィルム1への接続は連続的に行われる。また、接続が終了した樹脂フィルム1は、第3図に示す様なリール11に巻き取られる。この時、樹脂フィルム1は容易に曲がるか、LSIチップ6が固着された裏面には、補強板4が固着されている為、LSIチップ6の領域の樹脂フィルム1には曲りが生じない為、LSIチップ6からの樹脂フィルム1の剥離は生じない。このように、樹脂フィルムと半導体素子を直接樹脂で固着・接続した半導体実装体の大量製造において、本発明の方法による効果は極めて大である。
発明の効果 以上のように本発明では、樹脂フィルムの裏面に補強板を固着している為、次に示す効果がある。
(1)樹脂フィルムにTAB用のテープを用いLSIチップの接続後にリールに巻き取っても、LSIチップの領域には樹脂フィルムの曲りが生じず、LSIチップに剥離の力は作用せず、信頼性の高い接続が得られる。
(2)補強板により、絶縁性樹脂への水分の浸入を低減できる為、耐熱性が向上する。
(3)絶縁性樹脂の硬化収縮による、樹脂フィルムの変形が生じない為、LSIチップと樹脂フィルム間には、十分な収縮力が作用し、LSIチップのバンプと導体配線の接触の保持が非常に信頼性の高いものとなる。
(4)TAB用のテープを用い、リールに巻き取ることができる為、生産性に富み非常にコストの安いものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の実装工程別断面図、第2図はTAB用テープへのLSIチップの接続状態を示す図、第3図R>図はTAB用テープのリールを示す図、第4図は従来の実装工程断面図、第5図は従来の実装体の断面図である。
1……樹脂フィルム、2……導体配線、3……接着剤、4……補強板、5……絶縁性樹脂、6……LSIチップ、7……バンプ、8……加圧ツール、9……紫外線、10……ガイド孔、11……リール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】一主面に導体配線を有する長尺状の絶縁性フィルムをリール供給し、前記絶縁性フィルムの裏面側に補強板を接着する工程と、絶縁性フィルムの導体配線を有した面に絶縁性樹脂を塗布する工程と、前記絶縁性フィルムの導体配線と前記半導体素子の突起電極を位置合わせし、前記半導体素子を前記絶縁性フィルムに加圧しその状態で前記絶縁性樹脂を硬化させ前記突起電極と前記導体配線を電気的に接続する工程と、前記半導体素子が接続された長尺状の絶縁性フィルムを順次リールで巻き取る工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】一主面に導体配線を有する長尺状の絶縁性フィルムをリール供給し、前記絶縁性フィルムの裏面側に補強板を接着する工程において、前記補強板は接続する半導体素子と同等以上の大きさの補強板を接着する工程であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。

【第2図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第1図】
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【第4図】
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【特許番号】第2797669号
【登録日】平成10年(1998)7月3日
【発行日】平成10年(1998)9月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−189045
【出願日】平成2年(1990)7月16日
【公開番号】特開平4−74447
【公開日】平成4年(1992)3月9日
【審査請求日】平成8年(1996)6月21日
【出願人】(999999999)松下電器産業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭54−99970(JP,A)
【文献】特開 昭61−90453(JP,A)
【文献】特開 昭63−117436(JP,A)