説明

半導体装置

【課題】収容された基板を破損等させることなく取り出し可能な構成を低コストで実現し得る半導体装置を提供する。
【解決手段】金属製の下ケース20および上ケース30を組み付けてなる筐体11の収容空間S内に回路基板40が収容されており、この回路基板40に電気的に接続される複数のリード52は、環状に対向する下ケース20の外縁部22と上ケース30の外縁部32との間に塗布される絶縁性の接着剤61,62により両外縁部22,32に接触することなく保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装される基板を外部接続端子の一部が外部に導出するように筐体内に収容して構成される半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装される基板を外部接続端子の一部が外部に導出するように筐体内に収容して構成される半導体装置として、例えば、車両に搭載されるハイブリッドECU(Electric Control Unit:電子制御ユニット)の大型パッケージが知られており、このハイブリッドECUは、通常、回路基板をモールド樹脂で封止して構成されている。このような封止構造は、振動・耐湿・放熱性といった車載搭載に要求される性能を併せ持っており、制御対象となる機械機能部品を内部に組込み一体化したモジュール製品へ適用されている。
【0003】
また、封止構造を有する半導体装置として、下記特許文献1に示す電子装置が知られている。この電子装置は、上面に電子部品が載置される載置部を有した基体と、この基体上に載置部を取り囲むように取着された枠体と、この枠体に接合材を介して接合される蓋体とを具備している。そして、枠体の蓋体が接合される部位と蓋体の枠体が接合される部位との少なくとも一方に、珪素樹脂からなる剥離膜が被着されている。これにより、枠体と蓋体との接合強度を強く維持して電子部品収納用パッケージの内部の密閉度を高くしている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示される集積回路チップのパッケージでは、回路基板をキャリアとして使用し、このキャリアは、チップが固着される底面と、複数の溶接パッドが配設される上面と、収容室とを備えている。また、チップの溶接パッドとキャリアの溶接パッドとは、溶接ワイヤにより接続されおり、この溶接ワイヤとキャリアの溶接パッドとの接合部は、収容室の開口をキャップにて密封するために上面に配設される接着材により、被覆保護されている。
【0005】
また、下記特許文献3に開示されるメタルパッケージは、半導体素子を収容した金属容器体と、この容器体を気密封止した金属蓋体とを備えている。容器体の側壁部には端子取付穴が設けられており、この端子取付穴に通ずるろう材挿入穴が側壁部の端面から延在するように形成されている。そして、これら端子取付穴およびろう材挿入穴に充填されたろう材によって端子が側壁部に固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−237267号公報
【特許文献2】特開2002−313976号公報
【特許文献3】特開平09−181207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようなモールド樹脂封止構造の場合、多数の電子部品を基板実装、金属配線した回路基板をモールド樹脂で封止するため、基板単体を取り出すことができず、不良発生時の基板等の解析が非常に困難となる。この問題を解決するために、不良個所が特定できるように検査回路を予め基板等とともに封止することもできるが、搭載スペースやパッケージ信頼性といった別の問題が発生してしまう。また、ガラス封止構造の場合、筐体(ケース)は、抵抗溶接等により封止することができるが、外部接続端子部の耐湿性を確保するため、当該外部接続端子部をガラス封止する必要があり、高コストになってしまうという問題がある。
【0008】
また、上述した特許文献1に開示される構成では、パッケージが蓋体/枠体/基体の3構造からなっており、組付け工程が多くなり、高コストになることが懸念される。更に基体を前提としており、多層基板を前提としたハイブリッドECUの回路基板をこの基体として使用する場合、耐衝撃性を確保する為に、厚みを増やす等の処置が必要となり、大型パッケージ構造には適さないという問題がある。また、特許文献2に開示される構成では、多数の電子部品を実装する回路基板をキャリアとして使用する場合、耐衝撃性を確保する為に、厚みを増やす等の処置が必要となり、大型パッケージ構造には適さなさいという問題がある。また、特許文献3に開示される構成では、ガラス封止構造同様に外部接続端子をろう付けする必要があり、高コストになってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、収容された基板を破損等させることなく取り出し可能な構成を低コストで実現し得る半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の半導体装置は、金属製の第1ケース(20)および第2ケース(30)を組み付けることで閉塞された収容空間(S)を構成する筐体(11)と、前記収容空間内に収容される基板(40)と、一端が前記基板に電気的に接続され他端が前記筐体外に導出する複数のリード(52)と、を備える半導体装置(10,10a〜10e)であって、前記複数のリードは、環状に対向する前記第1ケースの外縁部(22)と前記第2ケースの外縁部(32)との間に塗布される絶縁性の接着剤(61,62,63)により両外縁部に接触することなく保持されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置において、前記接着剤は、前記第1ケースの外縁部と前記複数のリードとの間に塗布される第1接着剤(61)と、前記第2ケースの外縁部と前記複数のリードとの間に塗布される第2接着剤(62)と、からなり、前記第1接着剤および前記第2接着剤は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうち前記基板が保持されるケースに塗布される一方の接着剤のガラス転移温度が、他方の接着剤のガラス転移温度よりも高く設定されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の半導体装置において、前記接着剤は、前記第1接着剤および前記第2接着剤に加えて、前記第1接着剤と前記複数のリードとの間と前記第2接着剤と前記複数のリードとの間との双方に介在してこれら両接着剤よりもガラス転移温度が高い第3接着剤(63)とからなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記第1ケースの外縁部は、前記接着剤と接触する面(23a)が凹凸状に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記第2ケースの外縁部は、前記接着剤と接触する面(33a)が凹凸状に形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方の外面には、両ケースを分離する際に使用する治具(73,73a,73b)と係合可能な係合部(26,36)が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方には、前記収容空間と外部とを連通する開口(34)が形成されるとともに、この開口を覆うように通気性および防水性を有するフィルタ(35)が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記収容空間内に収容されて、一側面(51a)に前記基板が接合される平板状の金属フレーム(51)を備え、前記金属フレームは、その他側面(51b)にて前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方のケースに面接触して配置されることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の半導体装置において、前記金属フレームには、弾性変形可能な連結部(54a)を介して、前記第1ケースの外縁部と前記第2ケースの外縁部との間にて前記複数のリードとともに保持される保持部(53)が連結されており、前記連結部は、前記保持部が前記両外縁部間に保持された状態で前記金属フレームが前記一方のケースに面接触するときに、弾性変形することで前記金属フレームを前記一方のケースに向けて付勢するように形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の半導体装置において、前記金属フレームが面接触する前記一方のケースと異なる他方のケースには、前記基板を前記一方のケースに向けて弾性的に押圧する弾性部材(37)が設けられることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記基板は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方のケースに面接触して配置され、前記基板が面接触する前記一方のケースと異なる他方のケースには、前記基板を前記一方のケースに向けて弾性的に押圧する弾性部材(38)が設けられることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明では、金属製の第1ケースおよび第2ケースを組み付けてなる筐体の収容空間内に基板が収容されており、この基板に電気的に接続される複数のリードは、環状に対向する第1ケースの外縁部と第2ケースの外縁部との間に塗布される絶縁性の接着剤により両外縁部に接触することなく保持されている。
【0022】
これにより、半導体装置に不良が発生したことからその解析を実施する場合には、両ケースの外縁部間の接着剤による接着箇所からはがして第1ケースと第2ケースとを引き離すように分離することで、基板を破損等させることなく解析可能な状態に露出させることができる。
したがって、収容された基板を破損等させることなく取り出し可能な構成を低コストで実現することができる。
【0023】
請求項2の発明では、第1ケースの外縁部と複数のリードとの間に塗布される第1接着剤と、第2ケースの外縁部と複数のリードとの間に塗布される第2接着剤とは、第1ケースおよび第2ケースのうち基板が保持されるケースに塗布される一方の接着剤のガラス転移温度が、他方の接着剤のガラス転移温度よりも高く設定される。
【0024】
これにより、例えば、基板が第1ケースに保持される場合には、第1接着剤のガラス転移温度が、第2接着剤のガラス転移温度よりも高く設定されることとなる。この場合、接着剤の接着力を弱めるために接着箇所を加熱等すると、まず、第2接着剤の接着力が第1接着剤よりも先に弱くなる。そこで、第2接着剤の接着力のみが弱まった接着状態で第1ケースと第2ケースとを引き離すと、各リードが第1ケースの外縁部に接着されて第2ケースの外縁部に1つも接着されない状態で両ケースが分離される。このため、ケース分離時に各リードを介して基板に作用する応力が低減されて、両ケースの分離時における基板の破損等を確実になくすことができる。
【0025】
請求項3の発明では、接着剤は、上述したガラス転移温度が設定される第1接着剤および第2接着剤に加えて、第1接着剤と複数のリードとの間と第2接着剤と複数のリードとの間との双方に介在してこれら両接着剤よりもガラス転移温度が高い第3接着剤とから構成されている。
【0026】
このため、基板が第1ケースに保持されることから第1接着剤のガラス転移温度が第2接着剤のガラス転移温度よりも高く設定される場合、接着剤の接着力を弱めるために接着箇所を加熱等すると、まず第2接着剤の接着力が弱くなり、次に第1接着剤の接着力が弱くなり、第3接着剤の接着力は、他の接着剤と比べて長く維持される。そこで、第2接着剤の接着力のみが弱くなった接着状態で第1ケースと第2ケースとを引き離すと、各リードが第3接着剤および第1接着剤を介して第1ケースの外縁部に接着され第2ケースの外縁部に1つも接着されない状態で両ケースが分離される。これにより、ケース分離時に各リードを介して基板に作用する応力がより低減されて、両ケースの分離時における基板の破損等をより確実になくすことができる。
【0027】
請求項4の発明では、第1ケースの外縁部は、接着剤と接触する面が凹凸状に形成されるため、外縁部に塗布された接着剤の接着面積を広げるために外縁部同士が押圧される際には、この凹凸部に接着剤が流れ込むので、接着剤の外縁部間からのはみ出しを抑制することができる。
【0028】
請求項5の発明では、第2ケースの外縁部は、接着剤と接触する面が凹凸状に形成されるため、外縁部に塗布された接着剤の接着面積を広げるために外縁部同士が押圧される際には、この凹凸部に接着剤が流れ込むので、接着剤の外縁部間からのはみ出しを抑制することができる。
【0029】
請求項6の発明では、第1ケースおよび第2ケースの少なくとも一方の外面には、両ケースを分離する際に使用する治具と係合可能な係合部が形成されるため、上記治具を係合部に係合させた状態で当該治具を介して両ケースを引き離すための力を作用させることで、両ケースを容易に分離することができる。
【0030】
請求項7の発明では、第1ケースおよび第2ケースの少なくとも一方には、収容空間と外部とを連通する開口を覆うように通気性および防水性を有するフィルタが設けられるため、周囲の温度変化による筐体内の内部圧力変動が抑制される。これにより、内部圧力変動に起因する接着箇所の破損等が抑制されて、当該半導体装置の温度変化に対する信頼性を向上させることができる。
【0031】
請求項8の発明では、一側面に基板が接合される平板状の金属フレームがその他側面にて第1ケースおよび第2ケースのいずれか一方のケースに面接触して配置される。これにより、基板にて発生した熱は、金属フレームを介して上記一方のケースに伝熱されて当該一方のケースにて放熱されるので、収容された基板を破損等させることなく取り出し可能な構成を低コストで実現できるだけでなく、当該両ケースに収容される基板の放熱性を向上させることができる。
【0032】
請求項9の発明では、金属フレームには、弾性変形可能な連結部を介して、両外縁部間にて複数のリードとともに保持される保持部が連結されている。そして、連結部は、保持部が両外縁部間に保持された状態で金属フレームが上記一方のケースに面接触するときに、弾性変形することで金属フレームを当該一方のケースに向けて付勢するように形成されている。このため、弾性変形した連結部により、金属フレームが上記一方のケースに付勢されるので、金属フレームと上記一方のケースとの密着性が高められて、これら金属フレームと一方のケースとの間の伝熱を確実に促進することができる。
【0033】
請求項10の発明では、金属フレームが面接触する一方のケースと異なる他方のケースには、金属フレームを一方のケースに向けて弾性的に押圧する弾性部材が設けられるため、金属フレームと上記一方のケースとの密着性が高められて、これら金属フレームと一方のケースとの間の伝熱を確実に促進することができる。
【0034】
請求項11の発明では、基板が面接触する一方のケースと異なる他方のケースには、当該基板を上記一方のケースに向けて弾性的に押圧する弾性部材が設けられるため、基板と上記一方のケースとの密着性が高められて、これら基板と一方のケースとの間の伝熱を確実に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【図2】図1の半導体装置から筐体を除きその外形を二点鎖線にて示す平面図である。
【図3】図1の3−3線相当の切断面による断面図である。
【図4】図1の4−4線相当の切断面による断面図である。
【図5】環状接合面に塗布される接着剤の塗布位置を示す説明図である。
【図6】図1の半導体装置の製造工程を示す工程図である。
【図7】図6の製造工程を説明するための説明図である。
【図8】図6の製造工程を説明するための説明図である。
【図9】各リードがタイバーを介してブランケット部に連結された状態を示す説明図である。
【図10】第2実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
【図11】第3実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
【図12】図12(A)は、第4実施形態に係る半導体装置の要部を示す断面図であり、図12(B)は、係合凹部にケース分離用治具の係合片を係合した状態を示す断面図である。
【図13】第5実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
【図14】第5実施形態の変形例に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
【図15】第6実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
以下、本発明の半導体装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置10を示す平面図である。図2は、図1の半導体装置10から筐体11を除きその外形を二点鎖線にて示す平面図である。図3は、図1の3−3線相当の切断面による断面図である。図4は、図1の4−4線相当の切断面による断面図である。図5は、環状接合面23,33に塗布される接着剤61,62の塗布位置を示す説明図である。なお、図2では、筐体11の外形を波線で示す。また、図5では、接着剤61,62の塗布位置にハッチングを付して示している。
【0037】
本第1実施形態に係る半導体装置10は、例えば、車両に搭載されるハイブリッドECUの大型パッケージであって、図1〜図3に示すように、複数の電子部品が実装された回路基板40と、この回路基板40に電気的に接続される複数のリード52を有するリードフレーム50の一部とが、金属製の筐体11内に収容されて構成されている。
【0038】
筐体11は、金属製の下ケース20および上ケース30を組み付けることで、回路基板40等を収容するための閉塞された収容空間Sを構成する。下ケース20は、上方が矩形状に開口するケース本体21と、この開口の周囲に四角環状に連結する外縁部22とを備えている。また、上ケース30は、下方が矩形状に開口するケース本体31と、この開口の周囲に四角環状に連結する外縁部32とを備えている。そして、下ケース20の外縁部22の上面(以下、環状接合面23という)と、上ケース30の外縁部32の下面(以下、環状接合面33という)とが、後述する接着剤61,62を介して環状に接合(接着)されることで、上記収容空間Sが構成される。
【0039】
また、上ケース30のケース本体31の中央には、円形状の開口34が設けられており、この開口34を塞ぐように、通気性および防水性を有するフィルタ35が設けられている。なお、下ケース20および上ケース30は、特許請求の範囲に記載の「第1ケース」および「第2ケース」の一例に相当し得る。
【0040】
回路基板40は、アルミナ等からなるセラミック層が複数層積層されて構成されるセラミック積層基板であり、リードフレーム50の中央に設けられる平板状の接合部51上に接着剤46を介して接合された状態で、下ケース20に保持されている。この回路基板40の表側面40aには、ICチップ41等の発熱素子やコンデンサ42等の各種電子部品が実装(搭載)されており、Au(金)線等のボンディングワイヤ43を介して表側面40a上の所定の配線パターンにそれぞれ接続されている。このように構成される回路基板40は、対応する各リード52に対してAl(アルミニウム)線等のボンディングワイヤ44を介してそれぞれ電気的に接続されている。また、回路基板40の裏側面40bには、接合部51等との絶縁を保つため、またキズ等から守るための絶縁保護膜45が形成されている。
【0041】
リードフレーム50は、回路基板40が一側面51aに接合される矩形状の接合部51と、この接合部51の周囲に配置されて回路基板40に電気的に接続される複数のリード52と、外部固定用の保持部として4つのブランケット部53とを備えている。各ブランケット部53は、各リード52と同一平面上に位置するように配置されて、接合部51の四隅に連結部54を介してそれぞれ連結されている。各連結部54は、各リード52を後述する第1接着剤61を介して下ケース20の環状接合面23に接着するとき、接合部51がその他側面51bにて下ケース20のケース本体21の底面21aに面接触するように、それぞれ形成されている。なお、接合部51は、特許請求の範囲に記載の「金属フレーム」の一例に相当し得る。
【0042】
各リード52は、回路基板40に電気的に接続される長手方向一端と異なる長手方向他端が、筐体11の外縁部22,32からそれぞれ外方に導出するように配置されている。また、各リード52は、図3および図5に示すように、長手方向中間部位にて、下面が下ケース20の環状接合面23に環状に塗布された第1接着剤61を介して当該環状接合面23に接着され、上面が上ケース30の環状接合面33に環状に塗布された第2接着剤62を介して当該環状接合面33に接着されている。これにより、図4に示すように、各リード52は、下ケース20の外縁部22と上ケース30の外縁部32との双方に直接接触することなく、接着剤61,62を介して挟持(保持)される。
【0043】
第1接着剤61および第2接着剤62は、絶縁性を有するエポキシ樹脂であって、第1接着剤61のガラス転移温度を、第2接着剤62のガラス転移温度よりも高く設定するため、第1接着剤61として、例えば、住友ベークライトECR−9250K(住友ベークライト株式会社製)が採用され、第2接着剤62として、例えば、住友ベークライトECR−9125K(住友ベークライト株式会社製)が採用されている。
【0044】
次に、本実施形態に係る半導体装置10の製造工程を、図6〜図9を用いて詳細に説明する。図6は、図1の半導体装置10の製造工程を示す工程図である。図7(A)〜(D)および図8(E)〜(G)は、図6の製造工程を説明するための断面図である。図9は、各リード52がタイバー55を介してブランケット部53に連結された状態を示す説明図である。
【0045】
まず、図6の第1工程と図7(A)とに示すように、上述のように構成される下ケース20および上ケース30を用意する。次に、図6の第2工程と図7(B)とに示すように、下ケース20の外縁部22の環状接合面23に接着剤61を環状に塗布するとともに、上ケース30の外縁部32の環状接合面33に接着剤62を環状に塗布する(図5参照)。続いて、図6の第3工程と図7(C)および図9とに示すように、接合部51と、この接合部51に各連結部54を介して連結する4つのブランケット部53と、各ブランケット部53にタイバー55を介して連結する各リード52とが形成されるリードフレーム50を用意する。次に、図6の第4工程と図7(D)とに示すように、上述のように構成される回路基板40を用意し、この回路基板40を、その裏側面40bに塗布される絶縁性の接着剤46を介して、リードフレーム50の接合部51上に接合する。
【0046】
そして、図6の第5工程と図8(E)とに示すように、各リード52が環状接合面23に直接接触することなくその下面にて第1接着剤61を介して環状接合面23に接着され、接合部51が下ケース20の底面21aに面接触するように、回路基板40が接合されたリードフレーム50を下ケース20に組み付ける。このとき、各リード52は、上記長手方向他端が外縁部22から外方にそれぞれ延出している。次に、図6の第6工程と図8(F)とに示すように、下ケース20を金属配線用治具71内に載置した状態で、ワイヤボンディングにより、回路基板40のパッド等と対応するリード52とをボンディングワイヤ44を介してそれぞれ電気的に接続する。
【0047】
続いて、図6の第7工程と図8(G)とに示すように、各リード52が環状接合面33に直接接触することなくその上面にて第2接着剤62を介して環状接合面33に接着されるように、上ケース30を下ケース20にかぶせる。そして、環状接合面33および環状接合面23を、加熱装置72により上下方向から一定の圧力で押圧した状態で加熱する。この加熱により、接着剤61,62が硬化して、各リード52が環状接合面23,33に直接接触することなく接着剤61,62を介して挟持された状態で、外縁部22と外縁部32とが環状に強固に接合される。このように外縁部22と外縁部32とが環状に接合されると、上記収容空間Sが構成され、この収容空間S内に回路基板40が収容される。その後、両環状接合面23,33間から導出する各リード52を連結するタイバー55などを切断除去することで、図1に示す半導体装置10が完成する。
【0048】
このとき、回路基板40は、金属製の下ケース20および上ケース30により覆われて収容されることとなり、これら両ケース20,30が静電シールドとして機能する。このように、金属製の両ケース20,30を採用することで、モールド樹脂などにより回路基板40を封止(密封)する場合と比較して、収容された回路基板40に対して高いシールド効果を発揮することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置10では、金属製の下ケース20および上ケース30を組み付けてなる筐体11の収容空間S内に回路基板40が収容されており、この回路基板40に電気的に接続される複数のリード52は、環状に対向する下ケース20の外縁部22と上ケース30の外縁部32との間に塗布される絶縁性の接着剤61,62により両外縁部22,32に接触することなく保持されている。
【0050】
これにより、半導体装置10に不良が発生したことからその解析を実施する場合には、両ケース20,30の外縁部22,32間の接着剤61,62による接着箇所からはがして上ケース30と下ケース20とを引き離すように分離することで、各リード52は一部損傷する場合があっても、回路基板40を破損等させることなく解析可能な状態に露出させることができる。
したがって、収容された回路基板40を破損等させることなく取り出し可能な構成を低コストで実現することができる。
【0051】
また、上ケース30の外縁部22と複数のリード52の下面との間に塗布される第1接着剤61と、下ケース20の外縁部32と複数のリード52の上面との間に塗布される第2接着剤62とは、第1接着剤61のガラス転移温度が、第2接着剤62のガラス転移温度よりも高くなるように設定されている。すなわち、回路基板40が保持される下ケース20に塗布される第1接着剤61のガラス転移温度が、第2接着剤62のガラス転移温度よりも高く設定される。
【0052】
この場合、両接着剤61,62の接着力を弱めるために接着箇所を加熱等すると、まず、第2接着剤62の接着力が第1接着剤61よりも先に弱くなる。そこで、第2接着剤62の接着力のみが弱まった接着状態で下ケース20と上ケース30とを引き離すと、各リード52が下ケース20の外縁部22に接着され、上ケース30の外縁部32にはリード52が1つも接着されない状態で両ケース20,30が分離される。このため、ケース分離時に各リード52を介して回路基板40に作用する応力が低減されて、両ケース20,30の分離時における回路基板40の破損等を確実になくすことができる。
【0053】
さらに、上ケース30のケース本体31には、収容空間Sと外部とを連通する開口34を覆うように通気性および防水性を有するフィルタ35が設けられるため、周囲の温度変化による筐体11内の内部圧力変動が抑制される。これにより、内部圧力変動に起因する接着箇所の破損等が抑制されて、当該半導体装置10の温度変化に対する信頼性を向上させることができる。なお、開口34およびフィルタ35は、複数箇所設けられてもよいし、下ケース20に設けられても、上記効果を奏する。
【0054】
さらにまた、一側面51aに回路基板40が接合される接合部51は、その他側面51bにて下ケース20の底面21aに面接触して配置される。これにより、回路基板40のICチップ41等にて発生した熱は、接合部51を介して下ケース20に伝熱されて当該下ケース20にて放熱されるので、収容された回路基板40を破損等させることなく取り出し可能な構成を低コストで実現できるだけでなく、当該両ケース20,30に収容される回路基板40の放熱性を向上させることができる。
[第2実施形態]
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置について図10を参照して説明する。図10は、第2実施形態に係る半導体装置10aの要部を示す拡大断面図である。
本第2実施形態に係る半導体装置10aでは、環状接合面23,33間の接着剤の塗布状態が、上記第1実施形態に係る半導体装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の半導体装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図10に示すように、半導体装置10aでは、ケース接合用の接着剤として、下ケース20の環状接合面23に塗布される第1接着剤61と、上ケース30の環状接合面33に塗布される第2接着剤62とに加えて、組み付け前の各リード52の長手方向中間部位に上下方向から塗布される第3接着剤63とが採用されている。この第3接着剤63は、ケース20,30の組み付け時には、第1接着剤61と各リード52の下面との間と、第2接着剤62と各リード52の上面との間との双方に介在することとなる。
【0057】
特に、第3接着剤63は、ケース分離時の各リード52と環状接合面23,33との分離を容易とするため、第1接着剤61および第2接着剤62よりもガラス転移温度が高くなるように設定されており、例えば、絶縁性を有するエポキシ樹脂として、住友ベークライトECR−9240K(住友ベークライト株式会社製)が採用されている。
【0058】
このように、本第2実施形態に係る半導体装置10aでは、外縁部22,32を接合する接着剤は、上記第1実施形態にて述べた第1接着剤61および第2接着剤62に加えて、よりガラス転移温度が高い第3接着剤63とから構成されている。
【0059】
このように構成されることで、各接着剤61〜63の接着力を弱めるために接着箇所を加熱等すると、まず、第2接着剤62の接着力が弱くなり、次に、第1接着剤61の接着力が弱くなり、第3接着剤63の接着力は、他の接着剤61,62と比べて長く維持される。そこで、第2接着剤62の接着力のみが弱くなった接着状態で下ケース20と上ケース30とを引き離すと、各リード52が第3接着剤63および第1接着剤61を介して下ケース20の外縁部22に接着され上ケース30の外縁部32に1つも接着されない状態で両ケース20,30が分離される。これにより、ケース分離時に各リード52を介して回路基板40に作用する応力がより低減されて、両ケースの分離時における回路基板40の破損等をより確実になくすことができる。
【0060】
なお、本第2実施形態のように3層の接着剤を採用する場合には、コスト低減を図るために、第1接着剤61および第2接着剤62として同じ材料、例えば、住友ベークライトECR−9250K(住友ベークライト株式会社製)を採用することができる。
【0061】
なお、本実施形態に係る各接着剤61〜63等の特徴的構成は、他の実施形態や変形例にて適用されてもよい。
【0062】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る半導体装置について図11を参照して説明する。図11は、第3実施形態に係る半導体装置10bの要部を示す拡大断面図である。
本第3実施形態に係る半導体装置10bでは、環状接合面23a,33aの形状が、上記第1実施形態に係る半導体装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の半導体装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図11に示すように、半導体装置10bでは、上述した下ケース20および上ケース30に代えて、下ケース20aおよび上ケース30aが採用されている。下ケース20aの外縁部22は、第1接着剤61と接触する環状接合面23aが凹凸状に形成されている。また、上ケース30aの外縁部32は、第2接着剤62と接触する環状接合面33aが凹凸状に形成されている。
【0064】
このように、環状接合面23aおよび環状接合面33aが凹凸状に形成されるため、外縁部22,32に塗布された接着剤61,62の接着面積を広げるために外縁部22,32同士が押圧される際には、この凹凸部に接着剤61,62が流れ込むので、接着剤61,62の外縁部22,32間からのはみ出しを抑制することができる。
【0065】
なお、本実施形態に係る環状接合面23a,33a等の特徴的構成は、他の実施形態や変形例にて適用されてもよい。
【0066】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る半導体装置について図12を参照して説明する。図12(A)は、第4実施形態に係る半導体装置10cの要部を示す拡大断面図であり、図12(B)は、係合凹部26,36にケース分離用治具73の係合片73a,73bを係合した状態を示す断面図である。
本第4実施形態に係る半導体装置10cでは、ケース分離用の係合凹部26,36が設けられる点が、上記第1実施形態に係る半導体装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の半導体装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図12(A)に示すように、半導体装置10cでは、上述した下ケース20および上ケース30に代えて、下ケース20bおよび上ケース30bが採用されている。下ケース20bのケース本体21の外面を構成する側面には、内面側に凹む係合凹部26が複数設けられている。また、上ケース30bのケース本体31の外面を構成する側面には、内面側に凹む係合凹部36が複数設けられている。これら係合凹部26,36は、両ケース20b,30bを分離する際に、当該両ケース20b,30bに対して分離方向(図12にてα方向)の力を作用させるために使用するケース分離用治具73の係合片73a,73bが係合可能に形成されている。なお、係合凹部26および係合凹部36は、特許請求の範囲に記載の「係合部」の一例に相当し、ケース分離用治具73は、、特許請求の範囲に記載の「治具」の一例に相当し得る。
【0068】
そして、ケース分離時には、図12(B)に示すように、下ケース20bの係合凹部26と上ケース30bの係合凹部36とに係合片73aと係合片73bとをそれぞれ係合させた状態で、係合片73aおよび係合片73bを分離方向に引き離すことで、ケース分離用治具73を介して当該両ケース20b,30bを引き離すための上記分離方向の力を作用させる。
このように、上記分離方向の力を両ケース20b,30bに対して容易に作用させることができるので、両ケース20b,30bを容易に分離することができる。
【0069】
なお、下ケース20bには、内面側に凹む係合凹部26が形成されることに限らず、ケース分離用治具73の係合片73aが係合可能な係合部が形成されればよい。また、上ケース30bには、内面側に凹む係合凹部36が形成されることに限らず、ケース分離用治具73の係合片73bが係合可能な係合部が形成されればよい。
【0070】
また、ケース分離用の係合凹部26,36は、ケース本体21,31の外面を構成する側面と異なる部位に設けられてもよい。また、ケース分離用の係合凹部26,36は、複数設けられることに限らず、1箇所のみ設けられてもよいし、ケース本体21,31の形状によっては下ケース20と上ケース30とのどちらか一方に設けられてもよい。
【0071】
なお、本実施形態に係る係合凹部26,36等の特徴的構成は、他の実施形態や変形例にて適用されてもよい。
【0072】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る半導体装置について図13を参照して説明する。図13は、第5実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
本第5実施形態に係る半導体装置10dでは、回路基板40の放熱性を高めるため、リードフレーム50に代えてリードフレーム50aを採用する点が、上記第1実施形態に係る半導体装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の半導体装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0073】
図13に示すように、リードフレーム50aは、リードフレーム50に対して、接合部51と各ブランケット部53とを弾性変形可能な連結部54aによりそれぞれ連結するように形成されている。各連結部54aは、複数の段差部等が連続して連結することで弾性変形可能に形成されて、各ブランケット部53が両外縁部22,32間に保持された状態で接合部51が下ケース20の底面21aに面接触するときに、弾性変形することで接合部51を底面21aに向けて付勢するように形成されている。
【0074】
このため、弾性変形した各連結部54aにより、接合部51が下ケース20の底面21aに付勢されるので、接合部51と下ケース20の底面21aとの密着性が高められて、これら接合部51と下ケース20との間の伝熱を確実に促進することができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る連結部54a等の特徴的構成は、他の実施形態や変形例にて適用されてもよい。
【0076】
図14は、第5実施形態の変形例に係る半導体装置10dの要部を示す拡大断面図である。
図14に示すように、第5実施形態の変形例として、接合部51が面接触する下ケース20と異なる他方のケースである上ケース30には、回路基板40の表側面40aに弾性変形した状態で接触して押圧することで、接合部51を下ケース20の底面21aに向けて弾性的に押圧する弾性部材としてゴム製のブッシュ37が複数設けられてもよい。各ブッシュ37は、上ケース30のケース本体31の内面から下方に延出する突起31aに組み付けることで、所定の位置にそれぞれ保持されている。
【0077】
これにより、接合部51と下ケース20の底面21aとの密着性がさらに高められて、これら接合部51と下ケース20との間の伝熱をより確実に促進することができる。なお、接合部51を下ケース20の底面21aに向けて弾性的に押圧する部材として、ゴム製のブッシュ37を採用することに限らず、他の材質・形状等からなる弾性的に押圧可能な弾性部材を採用してもよい。
【0078】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る半導体装置について図15を参照して説明する。図13は、第6実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
本第6実施形態に係る半導体装置10eでは、回路基板40の放熱性を高めるため、リードフレーム50に代えてリードフレーム50bを採用するとともに弾性部材38を新たに採用する点が、上記第1実施形態に係る半導体装置と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の半導体装置と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0079】
図15に示すように、リードフレーム50bは、中央に設けられる接合部51cが回路基板40の外縁部に接合してその裏側面40bを露出させるように中抜き状に形成されている。また、接合部51cと各ブランケット部53とをそれぞれ連結する各連結部54は、各リード52を第1接着剤61を介して下ケース20の環状接合面23に接着するとき、接合部51に接合された回路基板40がその裏側面40bにて下ケース20のケース本体21の底面21aに面接触するように、それぞれ形成されている。
【0080】
また、上ケース30には、回路基板40の表側面40aに弾性変形した状態で接触して押圧することで、当該回路基板40の裏側面40bを下ケース20の底面21aに向けて弾性的に押圧する弾性部材としてゴム製のブッシュ38が複数設けられている。各ブッシュ38は、上ケース30のケース本体31の内面から下方に延出する突起31aに組み付けることで、所定の位置にそれぞれ保持されている。
【0081】
このように構成されることにより、裏側面40bと下ケース20の底面21aとの密着性がさらに高められて、回路基板40と下ケース20との間の伝熱をより確実に促進することができる。なお、回路基板40を下ケース20の底面21aに向けて弾性的に押圧する部材として、ゴム製のブッシュ38を採用することに限らず、他の材質・形状等からなる弾性的に押圧可能な弾性部材を採用してもよい。
【0082】
なお、本実施形態に係るブッシュ38等の特徴的構成は、他の実施形態や変形例にて適用されてもよい。
【0083】
なお、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上記第1実施形態において、ケース接合用の接着剤として、ガラス転移温度の異なる第1接着剤61および第2接着剤62を採用することに限らず、1種類の接着剤、例えば、第1接着剤61のみを採用してもよい。この構成では、上ケース30と下ケース20とを引き離すように分離すると、各リード52のうち一部が上ケース30に接着され残部が下ケース20に接着された状態で分離する場合がある。この場合、各リード52が一部損傷等しても、回路基板40に対して分離時の力が直接作用することもないので、回路基板40を破損等させることなく解析可能な状態に露出させることができる。なお、上記第3〜6実施形態においても同様である。
【0084】
(2)上記第1実施形態において、回路基板40にて発生した熱を下ケース20または上ケース30に伝熱して放熱するための放熱経路を構成する放熱部材を設けてもよい。下ケース20および上ケース30は、金属製であることから、モールド樹脂などにより回路基板40を封止(密封)する場合と比較して、回路基板40にて発生した熱を上記放熱部材を介して円滑に放熱することができる。なお、上記第2〜6実施形態においても同様である。
【0085】
(3)上記第1実施形態において、開口34およびフィルタ35は、上ケース30に設けられることに限らず、下ケース20に設けられてもよいし、内部圧力変動の影響が小さい場合には廃止してもよい。
【0086】
(4)上記第1実施形態において、接合部51の他側面51bと下ケース20の底面21aとの間に、両面51b,21a間の密着性を高めて伝熱を促進するため、ゲル状部材を充填してもよい。なお、上記第2〜5実施形態においても同様である。また、上記第6実施形態において、回路基板40の裏側面40bと下ケース20の底面21aとの間に、両面40b,21a間の密着性を高めて伝熱を促進するため、ゲル状部材を充填してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10,10a〜10e…半導体装置
11…筐体
20,20a,20b…下ケース(第1ケース)
22…外縁部
23,23a…環状接合面
26…凹部(係合部)
30,30a,30b…上ケース(第2ケース)
32…外縁部
33,33a…環状接合面
34…開口
35…フィルタ
36…凹部(係合部)
37,38…弾性部材
40…回路基板(基板)
50,50a,50b…リードフレーム
51,51c…接合部(金属フレーム)
52…リード
53…ブランケット部(保持部)
54,54a…連結部
61…第1接着剤
62…第2接着剤
63…第3接着剤
73…ケース分離用治具(治具)
S…収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1ケースおよび第2ケースを組み付けることで閉塞された収容空間を構成する筐体と、
前記収容空間内に収容される基板と、
一端が前記基板に電気的に接続され他端が前記筐体外に導出する複数のリードと、
を備える半導体装置であって、
前記複数のリードは、環状に対向する前記第1ケースの外縁部と前記第2ケースの外縁部との間に塗布される絶縁性の接着剤により両外縁部に接触することなく保持されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記接着剤は、前記第1ケースの外縁部と前記複数のリードとの間に塗布される第1接着剤と、前記第2ケースの外縁部と前記複数のリードとの間に塗布される第2接着剤と、からなり、
前記第1接着剤および前記第2接着剤は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうち前記基板が保持されるケースに塗布される一方の接着剤のガラス転移温度が、他方の接着剤のガラス転移温度よりも高く設定されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記接着剤は、前記第1接着剤および前記第2接着剤に加えて、前記第1接着剤と前記複数のリードとの間と前記第2接着剤と前記複数のリードとの間との双方に介在してこれら両接着剤よりもガラス転移温度が高い第3接着剤とからなることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ケースの外縁部は、前記接着剤と接触する面が凹凸状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2ケースの外縁部は、前記接着剤と接触する面が凹凸状に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方の外面には、両ケースを分離する際に使用する治具と係合可能な係合部が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方には、前記収容空間と外部とを連通する開口が形成されるとともに、この開口を覆うように通気性および防水性を有するフィルタが設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記収容空間内に収容されて、一側面に前記基板が接合される平板状の金属フレームを備え、
前記金属フレームは、その他側面にて前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方のケースに面接触して配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属フレームには、弾性変形可能な連結部を介して、前記第1ケースの外縁部と前記第2ケースの外縁部との間にて前記複数のリードとともに保持される保持部が連結されており、
前記連結部は、前記保持部が前記両外縁部間に保持された状態で前記金属フレームが前記一方のケースに面接触するときに、弾性変形することで前記金属フレームを前記一方のケースに向けて付勢するように形成されることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属フレームが面接触する前記一方のケースと異なる他方のケースには、前記基板を前記一方のケースに向けて弾性的に押圧する弾性部材が設けられることを特徴とする請求項8または9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記基板は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのいずれか一方のケースに面接触して配置され、
前記基板が面接触する前記一方のケースと異なる他方のケースには、前記基板を前記一方のケースに向けて弾性的に押圧する弾性部材が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−84665(P2013−84665A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221912(P2011−221912)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)