説明

半導体電気化学センサ

試料中の水素イオンなどの検体の濃度を測定することに関連する基板、センサ、およびシステムをここで説明する。検体の存在に還元電位および/または酸化電位が感応する酸化還元活性部分が、半導体表面に固定化される。検体に還元電位および/または酸化電位が感応しない固定化された酸化還元活性部分は、基準として使用することができる。このような修飾された半導体表面を使用して行われるボルタンメトリー測定では、対象の試料中の検体の存在および/または濃度を正確に決定することができる。本発明の半導体電気化学センサは堅牢であり、較正または再較正を必要としないように作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2007年6月7日出願の米国仮出願第60/942,646号、2007年6月7日出願の米国仮出願第60/942,644号、2007年6月7日出願の米国仮出願第60/942,641号、および2007年6月13日出願の米国仮出願第60/949,805号の利益を主張する。上記出願のすべてをそれらの全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
検体濃度、特に水素イオン濃度すなわちpHの測定は、いくつかの研究、産業および製造のプロセスにおいて重要である。例えば、pHの測定は、飲食料品、生物燃料、バイオ医薬において、ならびに水および廃棄物の処理において日常的に実施される。
【0003】
多くの従来のpHセンサでは、pHを測定するのにガラス電極の使用を伴う電位差手法を用いる。この電位差手法にはいくつかの欠点がある。電位差センサの1つの制約は、絶えず較正が必要なことである。電位差pH電極は、バッテリと同様に、時間および使用に伴い消耗する傾向がある。電位差電極が経年変化するにつれ、そのガラス部材は抵抗が変化する傾向があり、そのため電極電位が変化することになる。このためガラス電極は、定期的に較正が必要である。正確なpH出力を得るために絶えず再較正が必要なことは、特に定期的に繰り返されるインラインのpH測定が必要な産業応用例では重大な妨げになる。再較正は特に、pH測定が生物材料を含有する媒体中で行われる生物工学環境において面倒である。従来のpHセンサのもう1つの重大な欠点は、ガラス電極が内部溶液を有し、これが場合により、測定されている溶液中に漏出することである。ガラス電極はまた、測定溶液中の化学種、例えばタンパク質によって汚損され、それによってガラス電極が汚損することもある。シリコン表面の電界効果トランジスタ構造を使用してpHを測定するイオン感応性電界効果トランジスタが開発されている(Bergveld Em他、IEEE Sensor Conference、Toronto、2003年10月、1〜26頁)。これらのデバイスにもまた制約がある。したがって、高信頼性で安定した検体センサ、特にpHセンサが依然として相当に必要とされている。
参照による組込み
【0004】
本明細書で言及するすべての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるべきと明確かつ個別に示された場合と同じ範囲まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、検体の存在を検出するセンサであって、酸化還元活性部分を上に固定化した表面を有する半導体電極を含み、この酸化還元活性部分は、前記検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、酸化還元活性部分は水素イオン濃度に感応する。いくつかの実施形態では、センサは複数の酸化還元活性部分を含み、これら酸化還元活性部分の少なくとも1つが検体の存在に感応し、少なくとも1つの別の酸化還元活性部分が前記検体の存在に実質的に感応しない。
【0006】
いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、水素イオンの存在に実質的に感応しない部分は、フェロセン、ポリビニルフェロセン、ビオロゲン、ポリビオロゲン、およびポリチオフェンからなる群から選択された置換基を有する。いくつかの実施形態では、水素イオンの存在に実質的に感応しない部分は、フェロセン、またはフェロセンの誘導体である。
【0007】
いくつかの実施形態では、検体は水素であり、水素イオンの存在に感応する酸化還元活性部分は、アントラセン、キノン、アンスロキノン(anthroquinone)、フェナントロキノン(phenanthroquinone)、フェニレンジアミン、カテコール、フェノチアジニウム(phenothiazinium)染料、モノ四級化N−アルキル−4,4’−ビピリジニウム(monoquaternized N-alkyl-4,4'-bipyridinium)、RuOx、およびNi(OH)からなる群から選択された置換基を含む。いくつかの実施形態では、水素イオンの存在に感応する酸化還元活性部分は、アントラセンを含む置換基を含む。いくつかの実施形態では、水素イオンの存在に感応する酸化還元活性部分は、アントラキノンまたはフェナントラキノンを含む置換基を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、検体の存在に感応する酸化還元活性部分は、検体の濃度に感応する。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分の酸化電位および/または還元電位は、10−3Mから10−10Mの範囲の検体濃度に感応する。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分の酸化電位および/または還元電位は、10−1Mから10−14Mの範囲の検体濃度に感応する。いくつかの実施形態では、センサは、pH3からpH10の水素イオン濃度を検出する。いくつかの実施形態では、センサは、pH1からpH14の水素イオン濃度を検出する。
【0009】
いくつかの実施形態では、センサは、水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.1pH単位の精度内で測定する。いくつかの実施形態では、センサは、水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.01pH単位の精度内で測定する。
【0010】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、電極の表面に共有結合される。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、電極の表面に固定化されたポリマーに結合される。
【0011】
いくつかの実施形態では、半導体電極はドープされる。いくつかの実施形態では、半導体電極はPドープされる。いくつかの実施形態では、半導体電極は、ホウ素でドープされたシリコン電極を含む。いくつかの実施形態では、半導体電極はNドープされる。いくつかの実施形態では、半導体電極は、リンでドープされたシリコン電極を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、半導体電極は、シリコンのモノリシック片を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、半導体電極は複合電極を含み、前記複合電極は、マトリクス中に半導体粒子を含む。いくつかの実施形態では、半導体電極は、導電基板に結合された複合電極を含む。いくつかの実施形態では、半導体粒子は、複合電極の両端間に導電経路が生成されるような量で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態では、電極はシリコンを含む。いくつかの実施形態では、電極は研磨されていないシリコンを含む。いくつかの実施形態では、電極は研磨されたシリコンを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、半導体電極は0.01〜1000Ω・cmの範囲内の固有抵抗を有する。いくつかの実施形態では、半導体電極は1〜100Ω・cmの範囲内の固有抵抗を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、センサは、外部標準液を用いて較正されなくても検体濃度を測定することができる。いくつかの実施形態では、センサは、エンドユーザによる最初の使用の後、較正されなくても検体に対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後でも、水素イオンに対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、センサは、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後でpHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で40分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で400分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、シリコン基板は複数の区域を含み、少なくとも第1の区域が検体に感応し、第2の区域が検体に感応しない。
【0018】
本発明の一態様は検体検知システムであり、酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を有する作用電極であって、酸化還元活性部分が、前記検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を有する作用電極と、対電極および任意選択で基準電極と、作用電極に複数の電位を供給する電源と、作用電極を通る電流を複数の電位で測定するデバイスとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、第2の半導体基板を含む第2の作用電極を含み、第2の半導体基板は、前記検体の存在に感応しない酸化電位および/または還元電位を有する第2の酸化還元活性部分を含む。いくつかの実施形態では、複数の電位を供給する電源は、矩形波ボルタンメトリー用の矩形波を加えることができるポテンシオスタットである。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに計算システムを含み、この計算システムは、電流を測定するデバイスと通信し、複数の電位で測定された電流から還元電位または酸化電位を計算する。
【0021】
いくつかの実施形態では、このシステムは、インラインセンサとして工程で使用される。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の電位で測定された電流を用いて検体濃度を決定し、この決定された検体濃度を用いてプロセスパラメータを制御する。
【0023】
いくつかの実施形態では、センサは、水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.1pH単位の精度内で測定する。いくつかの実施形態では、センサは、水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.01pH単位の精度内で測定する。
【0024】
いくつかの実施形態では、センサは、外部標準液を用いて較正されなくても検体濃度を測定することができる。いくつかの実施形態では、センサは、エンドユーザによる最初の使用の後、較正されなくても検体に対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後でも、水素イオンに対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、センサは、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で40分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で400分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる。
【0025】
本発明の一態様は、表面を有する半導体基板であり、この表面は、その上に固定化された酸化還元活性部分を含み、前記酸化還元活性部分が、検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す。
【0026】
いくつかの実施形態では、検体の存在に実質的に感応しない酸化電位および/または還元電位を有する第2の酸化還元活性部分もまた上に固定化される。
【0027】
いくつかの実施形態では、検体はイオンである。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンである。
【0028】
いくつかの実施形態では、半導体は無機半導体を含む。いくつかの実施形態では、半導体は有機半導体を含む。いくつかの実施形態では、無機半導体はシリコンまたはヒ化ガリウムを含む。いくつかの実施形態では、有機半導体はポリアセチレン、ポリチオフェンまたはポリピロールを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、半導体はシリコンを含む。いくつかの実施形態では、半導体は、研磨されていないシリコンを含む。いくつかの実施形態では、半導体は、研磨されたシリコンを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は表面に直接結合される。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は表面に共有結合される。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、リンカーを介して表面に共有結合される。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、半導体基板の表面に固定化されたポリマーに共有結合される。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、半導体基板の表面に共有結合されたポリマーに共有結合される。
【0031】
いくつかの実施形態では、半導体はドープされる。いくつかの実施形態では、半導体はNドープされる。いくつかの実施形態では、半導体はPドープされる。
【0032】
いくつかの実施形態では、基板が結晶シリコンを含み、その表面は大部分で1つの結晶面を示す。
【0033】
いくつかの実施形態では、基板は、上に固定化された酸化還元活性部分を各区域が含む複数の区域を有し、前記酸化還元活性部分は、検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す。いくつかの実施形態では、第1の区域が、第1の検体に感応する酸化還元部分を含み、第2の区域が、第2の検体に感応する酸化還元部分を含む。いくつかの実施形態では、本発明はさらに、第2の検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す第3の酸化還元活性部分を含む。いくつかの実施形態では、第2の検体はアンモニア、酸素、または二酸化炭素である。
【0034】
本発明の一態様は、表面を有する検体感応半導体電極を形成する方法であり、検体の存在に感応する酸化還元活性部分を表面に固定化することを含む。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分を固定化することにより酸化還元活性部分を表面に共有結合する。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、リンカーを介して表面に共有結合される。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分を固定化することは、ヒドロシリル化、遊離基反応、カルボジイミド結合、ディールス−アルダー反応、マイケル付加、またはクリックケミストリーを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、表面に固定化されたポリマーに共有結合される。
【0036】
いくつかの実施形態では、固定化のステップは、酸化還元活性部分を備えるモノマーまたはオリゴマーを含む重合を含む。いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分を備えるモノマーまたはオリゴマーの重合は、表面に共有結合された官能基との反応を含み、それによって、重合で形成されたポリマーが表面に共有結合される。いくつかの実施形態では、モノマーまたはオリゴマーは、表面に電子重合される。
【0037】
いくつかの実施形態では、固定化のステップは、ポリマーを表面にコーティングまたはキャスティングすることを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、半導体表面は、マトリクス中に半導体粒子を含めた複合電極を含む。
【0039】
本発明の一態様は、1つまたは複数の酸化還元活性部分で誘導体化された半導体表面を形成する方法であり、H終端半導体表面を1つまたは複数の酸化還元活性部分と接触させることを含み、少なくとも1つの酸化還元活性部分が検体の存在に感応し、各酸化還元活性部分が、H終端半導体表面と反応して共有結合を形成する官能基を含み、それによって、誘導体化された半導体表面を形成する。
【0040】
いくつかの実施形態では、半導体表面はシリコンを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの酸化還元活性部分が使用され、これら酸化還元活性部分のうちの1つは、検体の存在に感応しない。
【0042】
いくつかの実施形態では、H終端半導体表面は、フッ化水素酸で処理することによって形成される。
【0043】
いくつかの実施形態では、官能基はビニル基である。いくつかの実施形態では、官能基はアルデヒド基である。いくつかの実施形態では、官能基はジアゾニウム基である。
【0044】
本発明の一態様は、検体の濃度を決定する方法であり、前記検体に接触して電極を配置するステップであって、前記電極が、検体感応酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を有する半導体基板を含み、前記検体感応酸化還元活性部分が、検体の濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を示すステップと、電極に複数の電位を印加するステップと、電極を通る電流を複数の電位で測定して検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位を決定し、それによって検体の濃度を決定するステップとを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数の電位で電流を測定することによりピーク電流が得られ、それによって、このピーク電流を用いて検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位が決定される。
【0046】
いくつかの実施形態では、検体は水素イオンである。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、半導体基板を含む電極に結合された検体不感応酸化還元活性部分を含み、このような酸化還元活性部分が、検体に実質的に感応しない還元電位および/または酸化電位を有し、本発明はさらに、検体不感応酸化還元活性部分の酸化電位および/または還元電位を決定するステップと、検体感応部分の酸化電位および/または還元電位と検体不感応部分の酸化電位および/または還元電位との差から検体の濃度を決定するステップとを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、検体は溶液中に用意される。
【0049】
本発明の一態様は、ボルタンメトリーpHセンサを用いて水または廃棄物の処理プロセスの1つのステップでのpH値を測定するステップであって、pHセンサが、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分、および水素イオンに実質的に感応しない酸化還元活性部分を含むステップと、このpH値を用いて処理プロセスを監視または制御するステップとを含む方法である。
【0050】
本発明の一態様は、ボルタンメトリーpHセンサを用いて生物製剤プロセスにおける反応混合物のpH値を測定するステップであって、pH値を得るためにpHセンサが、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分、および水素イオン濃度に実質的に感応しない酸化還元活性部分を含むステップと、このpH値を用いて生物製剤プロセスを監視するステップとを含む方法である。
【0051】
いくつかの実施形態では、pH値は、反応混合物から得られた試料について測定される。
【0052】
本発明の一態様は、生物製剤プロセスを実施するためのリアクタであり、このリアクタは、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分を有するpHセンサと、水素イオン濃度に実質的に感応しない酸化還元活性部分とを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、pHセンサは、ボルタンメトリーpHセンサである。
【0054】
いくつかの実施形態では、リアクタは、使い捨てバイオリアクタである。いくつかの実施形態では、リアクタは、バイオプロセスフレキシブルコンテナである。
【0055】
本発明の一態様は、工業プロセスを実施する方法であり、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分、および水素イオン濃度に実質的に感応しない酸化還元活性部分を有するボルタンメトリーpHセンサを用いて工業プロセスの1つのステップでのpH値を測定するステップと、このpH値を用いて工業プロセスを実施するステップとを含む。
【0056】
本発明の一態様は、体液のイオン濃度を体内で測定するセンサであり、酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む、体液と接触するように構成された電極を含み、酸化還元活性部分は、前記イオンの濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を有する。
【0057】
本発明の一態様は、体液のイオン濃度を体内で測定する方法であり、体液と接触するセンサを配置するステップと、そのセンサを前記体液中に存在するイオンの濃度の値が得られるように動作させるステップとを含む。
【0058】
本発明の一態様は、反応混合物を収容する貯蔵器およびpHプローブを含むバイオリアクタであり、このpHプローブは、半導体表面を有する電極を含み、この半導体表面は、水素イオンの存在に感応する還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分を上に固定化している。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、水素イオンの存在に感応しない還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、水素イオンの存在に感応する還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分が上に固定化された半導体表面は、水素イオンの存在に感応しない還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分が上に固定化された半導体表面と同じものである。いくつかの実施形態では、プローブはさらに対電極を含む。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)ハウジングアセンブリ内に半導体電極センサを含む本発明の一実施形態を示す分解図である。(b)半導体電極センサを含む例示的なハウジングアセンブリを示す図である。
【図2】半導体電極センサに電気的に接続し複数の電位を供給する電源と、電流測定デバイスとを備えたユニットを含む本発明の一実施形態を示す図である。
【図3】2つのシリコン作用電極を備えるリアクタ内で検体を測定するためのプローブを含む本発明の一実施形態を示す図である。
【図4】H終端シリコン表面(Si−H)の調製の方法を示す図である。
【図5】共有結合によるフェロセン部分、ビニルフェロセン(VFc)およびフェロセンカルボキシアルデヒド(FcA)でのシリコン表面誘導体化を示す図である。
【図6】共有結合によりアントラセン部分、ビニルアントラセン(VA)およびアントラアルデヒド(AnA)で誘導体化されたシリコン表面を示す図である。
【図7】共有結合によりアントラセン(VA)部分とフェロセン(VFc)部分の両方で誘導体化されたシリコン表面を示す図である。
【図8】例示的な電気化学的電池の概略図および写真である。
【図9】1.23、4.61、7.33および9.33のpH溶液での、VFcで誘導体化されたシリコン試料に及ぼすpHの影響を示す矩形波ボルタモグラムである。
【図10】(a)1.23、4.61、7.33および9.33のpH溶液での、VAで誘導体化されたシリコン試料に及ぼすpHの影響を示す矩形波ボルタモグラムである。(b)VAで誘導体化されたシリコン試料を使用してpHに対するピーク電位を示すグラフである。
【図11】(a)1.23、4.65、5.52および9.52のpH溶液での、VA+VFcで誘導体化されたシリコン試料に及ぼすpHの影響を示す矩形波ボルタモグラム、(b)VA+VFcで誘導体化されたシリコン試料を使用してpHに対するピーク電位差を示すグラフである。
【図12】FcA+VAで誘導体化されたシリコン試料に及ぼす10サイクルのオートクレーブの影響を示す矩形波ボルタモグラムである。この電気化学的測定は、pH6.52の緩衝液でオートクレーブの前、およびオートクレーブの後に行われた。
【図13】FcA+AnAで誘導体化されたシリコン試料についての、最少の汚損を示す矩形波ボルタモグラムである。この電気化学的測定は、FcA+AnAで誘導体化された4つの異なるシリコン試料(a)、(b)、(c)および(d)について、細胞培養液中に6日間さらす前後にpH6.52の緩衝液で実施された。
【図14】FcA+AnAで誘導体化されたシリコン試料の、殺菌し6日間さらした後に細胞培養液中で得られた矩形波ボルタモグラムである。
【図15】(a)Si(100、N形、1〜5mΩ・cm)上のFcAの、pH7.33の緩衝液中での矩形波ボルタンメトリー応答のグラフであり、2,500回の連続動作のうちの50番目ごとの走査を示す。(b)Si(111、N形、0.02〜0.05Ω・cm)上のVFcの、pH7.33の緩衝液中でのボルタンメトリー応答のグラフであり、2,500回の連続動作のうちの50番目ごとの走査を示す。
【図16】pH7.33の緩衝液中での様々な温度(8、17、28、44、56℃)における、Acで誘導体化されたシリコン表面の矩形波ボルタンメトリー応答のグラフである。
【図17】シリコンベースのボルタンメトリーセンサを含む本発明のバイオリアクタの一実施形態の図である。
【図18】(a)アントラセンで誘導体化されたシリコンセンサについて細胞培養液中で7日間にわたって取得されたボルタモグラムである(10,000回の連続動作のうちの250番目ごとの走査)。(b)アントラセンのピーク電位の7日間にわたるグラフである。
【図19】pH1.63の溶液中で4種類のドープシリコンについて、(a)ビニルフェロセンで誘導体化されたシリコン基板のピーク電流、(b)フェロセンカルボキシアルデヒドで誘導体化されたシリコン基板のピーク電流を示すグラフである。
【図20】ビニルフェロセンで誘導体化された高ドープN形シリコンを有する4電極システムと、アントラセンカルボキシアルデヒドで誘導体化された低ドープP形シリコンとで得られた矩形波ボルタモグラムである。
【図21】リング基準電極(RE)およびリング対電極(CE)を備えた4電極構成を有する本発明のプローブの例示的な一実施形態を示す図である。図21(a)は陰影付き図、図21(b)は線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明は、酸化還元活性剤で修飾した半導体電極をセンサとして製造し使用する構成物、デバイス、システムおよび方法に関する。本デバイスおよびシステムは、対象の検体の濃度をボルタンメトリーで測定するのに特に有用である。本発明のセンサは、酸化還元活性種を表面に含む半導体電極を利用する。半導体表面の少なくとも1つの酸化還元活性種は、対象の検体の存在および、または量に感応する酸化還元電位(還元電位または酸化電位)を有する。ボルタンメトリーを半導体電極上で実施し、ボルタンメトリーを用いて電極の表面の検体に感応する酸化還元基の酸化還元電位を測定することができる。次に、この酸化還元電位の測定値を用いて、検体、例えば溶液中の検体の濃度を決定することができる。いくつかの実施形態では、本発明の半導体電極は、複数の酸化還元活性種を有する。一態様では、少なくとも1つの酸化還元活性種が1つの検体に感応し、別の酸化還元活性種は、その検体の存在に感応しない。本発明の別の態様は、本デバイスまたはシステムを使用して水素イオン濃度、すなわちpHを測定することに関する。本発明の表面修飾半導体センサを使用して、様々な溶液のpHを測定することができる。本発明の表面修飾センサは堅牢で、高信頼性で、正確であり、かつ/または較正の必要がないように作製することができる。
【0063】
半導体は、本発明の方法のための基板およびセンサとしての利点を有する。例えばシリコンなどの無機半導体、および有機半導体の半導体表面は、表面修飾、例えば共有結合修飾に適する可能性がある。半導体は一般に電子帯構造を有し、その特性は、例えばドーピングによって改変することができる。場合によっては、使用される半導体はシリコンである。シリコンを基板および電極として使用することの1つの利点は、シリコンが大量生産に適していることである。特に、半導体加工技術は、シリコン電極を低コストで大量に製造するのに容易に利用できる。さらに、既存の半導体加工技術が、シリコン電極を構成する材料に電子的な機能性を組み込むことを実現可能にする。シリコンの別の利点は、それが例えば炭素、窒素、酸素との強い共有結合を形成し、それによって、その表面の容易で堅牢な修飾が、その意図された用途に必要な形で可能になることである。例えば、シリコン表面は、任意の適切な酸化還元剤が結合するように修飾することができる。シリコンはまた、広範囲の電位に対して劣化することなく安定である点でも、ボルタンメトリーを実施するのに有利な表面である。
【0064】
本発明の一態様は、検体濃度を最少の干渉で確実、安定に測定することができる表面修飾半導体の酸化還元センサである。本発明の一態様は、較正または再較正を必要としない半導体酸化還元センサである。水素イオンなどの検体を較正なしで検知できることには、検体測定、例えばインライン監視でいくつかの利点がある。例えば、これにより、単一点測定の場合の操作員の処理を容易にできる。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、インライン操作員に依存しない管理測定に含まれる。このようなインライン測定は、操作員に依存しないで行うことができ、かつ工程管理で、例えば工程管理のためのpH測定で用いることができる。本センサは、それだけには限らないが、検体の水素イオン濃度のリアルタイム測定値を含み、リアルタイム測定値が得られるように設定することができる。
【0065】
半導体基板
半導体基板は、当技術分野で知られているもの、および本明細書に記載のものを含む適切などんな半導体材料も含むことができる。半導体基板は、無機半導体または有機半導体とすることができる。半導体基板はドープすることができるが、ドープしなくてもよい。いくつかの実施形態では、半導体基板はシリコンを含む。
【0066】
本発明の半導体基板は一般に、導体と絶縁体の中間の導電性を有する固体材料である。この導電性は、その広い範囲にわたって恒久的または動的に変化しうる。
【0067】
本発明の無機半導体基板は、例えば、ダイヤモンド(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などのIV族元素半導体、炭化ケイ素(SiC)、ゲルマニウム化ケイ素(SiGe)などのIV族化合物半導体、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、アンチモン化インジウム(InSb)、ヒ化インジウム(InAs)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)などのIII−V族半導体、アルミニウムガリウムヒ素(AIGaAs、AlxGal−xAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs、InxGal−xAs)、インジウムガリウムリン(InGaP)、アルミニウムインジウムヒ素(AlInAs)、アルミニウムインジウムアンチモン(AlInSb)、窒化ガリウムヒ素(GaAsN)、ガリウムヒ素リン(GaAsP)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、アルミニウムガリウムリン(AlGaP)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、インジウムヒ素アンチモン(InAsSb)、インジウムガリウムアンチモン(InGaSb)などのIII−V族3元半導体合金、アルミニウムガリウムインジウムリン(AlGaInP、またInAlGaP、InGaAlP、AlInGaP)、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)、インジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP)、アルミニウムインジウムヒ素リン(AlInAsP)、窒化アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAsN)、窒化インジウムガリウムヒ素(InGaAsN)、窒化インジウムアルミニウムヒ素(InAlAsN)、窒化ガリウムヒ素アンチモン(GaAsSbN)などのIII−V族4元半導体合金、ガリウムインジウム窒素ヒ素アンチモン(GaInNAsSb)、ガリウムインジウムヒ素アンチモンリン(GaInAsSbP)などのIII−V族5元半導体合金、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化亜鉛(ZnTe)などのII−VI族半導体、カドミウム亜鉛テルル(CdZnTe,CZT)、水銀カドミウムテルル(HgCdTe)、水銀亜鉛テルル(HgZnTe)、水銀亜鉛セレン(HgZnSe)などのII−VI族3元合金半導体、塩化第一銅(CuCl)などのI−VII族半導体、セレン化鉛(PbSe)、硫化鉛(PbS)、テルル化鉛(PbTe)、硫化スズ(SnS)、テルル化スズ(SnTe)などのIV−VI族半導体、鉛スズテルル(PbSnTe)、タリウムスズテルル(TlSnTe)、タリウムゲルマニウムテルル(TlGeTe)などのIV−VI族3元半導体、テルル化ビスマス(BiTe)などのV−VI半導体、ならびにリン化カドミウム(Cd)、ヒ化カドミウム(CdAs)、アンチモン化カドミウム(CdSb)、リン化亜鉛(Zn)、ヒ化亜鉛(ZnAs)、アンチモン化亜鉛(ZnSb)などのII−V族半導体を含むことができる。
【0068】
本発明の無機半導体基板はまた、ヨウ化鉛(II)(PbI)、二流化モリブデン(MoS)、セレン化ガリウム(GaSe)、硫化スズ(SnS)、硫化ビスマス(Bi)などの積層半導体、銅インジウムガリウムセレン(CuIGS)、白金シリサイド(PtSi)、ヨウ化ビスマス(III)(BiI)、ヨウ化水銀(II)(HgI)、臭化タリウム(I)(TMBr)などの他の半導体、ならびに二酸化チタン、鋭錐石(TiO)、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、二酸化ウラン(UO)、三酸化ウラン(UO)などの種々の酸化物を含むこともできる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、半導体基板は有機半導体を含むことができる。この有機半導体は、半導体特性を有する任意の適切な有機材料である。本発明の有機半導体基板は、例えば小分子、短鎖(オリゴマー)および長鎖(ポリマー)を含むことができる。使用することのできる半導電性の小分子(例えば不飽和芳香族炭化水素)の例には、ペンタセン、アントラセン、ルブレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ペリレン、コロネン;ポルフィンおよびフタロシアニンの金属錯体、亜鉛1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポルフィン、銅フタロシアニン、、ルテチウムビスフタロシアニン、および塩化アルミニウムフタロシアニンなどの化合物がある。これらの小分子の適切な誘導体もまた、使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の有機半導体基板は薄膜を含むことができる。
【0070】
半導体性のポリマーまたはオリゴマーの例には、適切な共役炭化水素、あるいは複素環のポリマーまたはオリゴマーが含まれる。適切なポリマーまたはオリゴマーには、ポリアニリン、ポリピロール、およびポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、F8BT、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリ(フェロセニルビニレンフェニレンビニレン)、ポリ(フルオレン)、およびポリ(カルバゾール)、ならびにこれらの組合せが含まれる。これらのポリマーの誘導体、例えば、酸化還元活性種の結合に適した官能基側鎖を有する誘導体を使用することができる。
【0071】
半導体性のポリマーの他の例には、ポリ(アニリンスルホン酸)、ポリ(フェロセニルビニレンフェニレンビニレン)、ポリ(フルオレン)、およびポリ(カルバゾール)がある。本発明の有機半導体基板は、例えば有機電荷移動錯体、ならびにポリアセチレンから誘導されたポリアセチレン自体、ポリピロールおよびポリアニリンなどの「線状骨格」ポリマーを含むことができる。電荷移動錯体は、無機半導体と同様の伝導機構を示すことができる。これには、ホールおよび電子の伝導層とバンドギャップの存在が含まれる。この材料は、トンネリング、局在化状態、移動度ギャップ、およびフォノン支援ホッピングを示すことができる。有機半導体はドープすることができる。いくつかの実施形態では、本発明は、高度にドープした有機半導体、例えばポリアニリン(Ormecon)およびPEDOT:PSSを利用することができる。場合によって、有機半導体は、透明および/または柔軟になるように製造することができ、こうすることは、いくつかの実施形態において有用でありうる。
【0072】
本発明の半導体は一般に、バンドギャップを有するものとして特徴付けることができ、このバンドギャップは、半導体の価電子帯と伝導帯を分離するエネルギー量を表す。ドーパントを追加するとこのバンドギャップが小さくなり、それによって、価電子帯から伝導帯へ電子がより容易に昇位することが可能になる傾向がある。より狭いバンドギャップにより、半導体基板の伝導性がより高くなる。半導体基板のバンドギャップおよび伝導性の特性は、場合によりドーパントの導入によって制御することができる。場合によっては、十分に大きな比率のドーパントを付加することにより、本発明の半導体基板は、金属とほぼ同様に電気を伝導することができる。ドーパントすなわち不純物の種類に応じて、半導体のドープされた領域は、より多くの電子またはホールを有することができ、それぞれN形半導体材料およびP形半導体材料と呼ばれる。N形半導体とP形半導体の各領域の間の接合部が電界を生成し、この電界により電子およびホールが接合部から離れて利用可能になるが、この効果は、半導体デバイスの動作に重要である。また、不純物の量の密度差により、その領域内に小さな電界が生じ、この電界は、非平衡電子またはホールを加速するのに用いられる。
【0073】
いくつかの実施形態ではバンドギャップがあることが有利になりうる。例えば、電気化学を実施する場合に、ドープされた半導体のフェルミエネルギーが、ある一定の電位で溶液/分子の酸化還元電位と同じエネルギーにあると、一般には、(表面または溶液中で固定された)酸化還元種から基板まで、または基板から酸化還元種まで流れる電荷/電流の正味の移動がない。この電位は、フラットバンド電位と呼ばれることがある。フラットバンド電位の位置は、ドーパント濃度により影響を受ける。モット・ショットキー式(P.Schmuki、H.Bohni、およびJ.A.Bardwell、J.Electrochem.Soc.、1995年、142、1705頁を参照)を用いて、このフラットバンド電位を概算することができる。
【0074】
導体電極は一般に、フラットバンド電位を有さず、したがって、電流が酸化還元種から基板まで流れることができる広い電位窓を有する。例えば、導体電極が、いくつかの酸化還元活性種の混合物を含む水溶液にさらされた場合、これらの酸化還元種に対応する電流(すなわち非特異的吸着)が、これらの非特異的相互作用をさえぎるために付加的なこと、例えば希釈剤層を導体電極上に置くことが行われない限り、記録される。この非特異的相互作用は、半導体電極を使用することによって低減または除去され、この半導体は、限定された窓内で起こる電気化学反応に対してのみ半導体が電流を伝導できるように、限定された電位窓があるバンドギャップを有する。例えば、限定された窓は−1.0〜0Vの間とすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、溶液中の非特異的相互作用は、本発明の半導体電極を適切なドーパント濃度(モット・ショットキー式を用いて概算できる)で使用することによって低減させ、または除去することができる。
【0075】
本発明の各半導体の1つの有用な態様は、それらの結晶格子または非結晶領域内に不純物(ドーパント)を導入することによって、それらの伝導性を変更できることである。制御された不純物を半導体に加える工程は、ドーピングと呼ばれることがある。真性(純粋)半導体に加えられる不純物すなわちドーパントの量により、その伝導性の程度が変わる。ドープされた半導体は、外因性半導体と呼ばれることが多い。本発明の半導体は、真性半導体または外因性半導体とすることができる。
【0076】
適切なドーパントは、当技術分野で知られているように、ドーパントの原子およびドープされる材料の性質によって選択することができる。一般に、所望の制御された変化を生じるドーパントは、電子アクセプタまたは電子ドナーのどちらかに分類される。活性化するドナー原子(例えば、結晶格子内に組み込まれる)は、弱く結合された価電子を材料に提供し、それによって過剰の負電荷キャリヤを生成する。これら弱く結合された電子は、半導体中を比較的自由に動き回ることができ、したがって、電界の存在下で電気伝導を助長することができる。場合によっては、ドナー原子は、伝導バンド縁部の下に、しかしその非常に近くに、いくつかの状態を生じさせる。これらの状態での電子は、伝導バンドに達するまで熱的に励起され、場合によっては室温で自由電子になりうる。いくつかの実施形態では、活性化されたアクセプタドーパントが利用される。活性化されたアクセプタは、ホールを生成することができる。ドナー不純物でドープされた半導体は一般にN形と呼ばれ、アクセプタ不純物でドープされたものは一般にP形と呼ばれる。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の半導体は、ドナーとアクセプタの両方のドーパントを有することができる。いくつかの実施形態では、その半導体は、n形とp型の両方の電荷キャリヤを有することができる。このn形またはp形の名称は一般に、どちらの電荷キャリヤがその材料の多数キャリヤとして働くかを示す。反対のキャリヤは一般に小数キャリヤと呼ばれ、これは、場合によっては、多数キャリヤよりも低い濃度で熱励起により存在する。
【0077】
本明細書に記載のように、半導体がシリコンまたはゲルマニウムなどのIV族半導体の場合、適切な電子ドナーには、例えばリン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスが含まれる。いくつかの実施形態では、ドーパントはリンである。いくつかの実施形態では、ドーパントはアンチモンである。半導体がシリコンまたはゲルマニウムなどのIV族半導体の場合、適切な電子アクセプタには、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどが含まれる。いくつかの実施形態では、ドーパントはホウ素である。半導体がIV族とは別の族の元素を含む場合、当技術分野で知られているように、その族の外の元素がn形またはp形のドーパントとして働くことができる。
【0078】
ドーピングによる変更に加えて、半導体の抵抗は、場合により、例えば電界を印加することによって動的に変更することができる。半導体基板または半導体基板の領域内の抵抗/伝導性を電界の印加によって動的に制御できることは、いくつかの実施形態で有用なことがある。
【0079】
半導体基板は、半導体電極の製造に適したどんな形状にもすることができる。半導体基板は、半導体のモノリシック片、別の材料の上に堆積させた半導体のコーティング、または半導体粒子の粉末を含むことができる。半導体基板は、チップ、ウェハ、棒、針、ブロック、インゴットなどのモノリシック形状とすることができる。半導体基板は別法として、特定の形状、例えば粒子からなる粉末の形状とすることができる。この粒子は、任意の形とすることができ、あるいは繊維、シート、ビーズ、円盤または球の形状にすることもできる。基板は、それが粒子から構成される粉末の形状である場合、以下でより詳細に説明するように、一般に複合電極に形成される。
【0080】
本発明の半導体基板は、半導体の薄い層とすることができ、この層は、別の材料、例えば半導体基板を構成することになるガラス上に形成された半導体の薄い層の上に形成される。
【0081】
いくつかの実施形態では、電極を作製するために使用される半導体基板は、マトリクスまたはバインダ中に分散した半導体粒子を含む複合材料である。この半導体基板は、バインダ中に分散した半導体の粉末を含む複合材料で作製して、複合半導体基板を作製することができる。半導体粉末は、球、微結晶、棒、繊維、または他の任意のどんな形状にもすることができる。一実施形態では、複合電極は、ポリマーマトリクス中に分散した半導体微結晶でできている。マトリクスまたはバインダは、有機、無機、または有機金属のポリマーとすることができる。有用な無機ポリマー材料の非限定的な例には、ポリフォスファゼン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリゲレマン、ポリマー硫黄、ポリマーセレン、シリコーン、および前記のうちのどれかの混合物が含まれる。
【0082】
いくつかの実施形態では、ポリマーは有機ポリマーとすることができる。適切な有機ポリマー材料の非限定的な例には、それだけには限らないが、熱硬化性材料および熱可塑性材料が含まれる。本発明において有用なポリマーの非限定的な例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルと、ポリカーボネートと、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブテンなどのポリオレフィンと、スチレンとアクリル酸モノマーの共重合体などのアクリルポリマーと、メタクリレート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンおよび他のフルオロポリマーを含むポリマーと、前記のうちのどれかの混合物とが含まれる。
【0083】
バインダは絶縁性、半導体性、または導電性とすることができる。一実施形態では、バインダはポリマーなどの材料であり、これは絶縁材料である。絶縁バインダが使用される場合、電流は、分散した半導体粉末だけを通って流れる傾向がある。いくつかの実施形態では、バインダは導電性成分を含む。いくつかの実施形態では、バインダはポリアナリン、ポリアセチレン、ポリ(アルキルチオフェン)、ポリ(アルキルピロール)などの導電性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、導電性成分は、ニッケル粒子のような金属粒子などの導電性粒子、炭素粒子を含む他の導電性粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性成分は、導電性ポリマーなどの導電性成分が、酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位の範囲外にある還元電位および/または酸化電位を示すように選択される。
【0084】
複合半導体基板は、半導体粉末をモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと混合し、そのモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーを硬化させてポリマーマトリクスを形成することによって形成することができる。この重合は、当技術分野で知られた、または本明細書に開示された任意の方法で開始することができる。重合は、例えば、開始剤の存在下で熱または光化学によって開始することができる。重合は、1つまたは複数の架橋剤を用いて行うことができる。この架橋剤は、ポリマーマトリクスの物理的特性を調整し、そうして複合半導体基板の特性を調整するように選択することができる。複合半導体基板は、半導体粉末を溶融熱可塑性ポリマーと混合し、基板を形成し、その混合物を冷却させることによって形成することができる。複合半導体基板は、半導体粉末を溶剤中のポリマーまたはプレポリマーと混合し、その溶剤を気化させて複合材料を形成することによって形成することができる。上記の方法のうちのどの組合せも使用することができる。
【0085】
複合半導体基板の電気的特性は、半導体の量、粒子サイズ、および粒子形状により影響を受けることがある。一般に、複合材料中の半導体の量は、その材料全体にわたって導電経路をつくり出すのに十分なほどに多い。材料全体にわたって導電経路を設けるのに必要なこの材料の量は、浸透閾値と呼ばれることがある。導電性を得るための半導体粒子の量はまた、バインダの粘性、および混合物の量などの加工条件によって決まることもある。半導体の量は一般に、機械的強度および柔軟性などの材料の物理的特性が、その材料が有効でなくなる点まで悪化しない程度に設定される。半導体の量は一般に、複合材料の0.1体積百分率から70体積百分率になる。いくつかの実施形態では、半導体の量は、1体積百分率から50体積百分率になる。いくつかの実施形態では、半導体の量は、10体積百分率から40体積百分率になる。半導体の量は、1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、または50%〜60%とすることができる。
【0086】
複合半導体基板は、電極として有効な形状にコーティング、成形、および鋳造するなど、ポリマー材料を成形するために使用される方法によって形成することができる。複合半導体基板電極は一般に、電流および電位を加えるために導電線に接続される。その材料は、金属などの導電基板上に鋳造、コーティングおよび/または成形して、複合電極との間で電流を伝達するための導体を接続する導電接合部を形成することができる。
【0087】
本発明の半導体基板は一般に、電極として機能し、かつ結合された酸化還元活性部分の酸化および/または還元のための電流を伝達するのに十分な高い導電性を有する。半導体基板をさらに導電性にするために、半導体基板は、不純物すなわちドーパントを含んで導電性を増大させ、固有抵抗を低減させることができる。
【0088】
電気固有抵抗(伝導率の逆数)は、例えば0.1(オーム・センチメートル)、1(オーム・センチメートル)、10(オーム・センチメートル)、100(オーム・センチメートル)から1000または10,000(オーム・センチメートル)さえも越えて、黒鉛および通常の金属導体に匹敵するさらに高いものにすることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、半導体基板の固有抵抗は0.0001〜100,000Ω・cm(すなわちオーム・センチメートル)の範囲である。いくつかの実施形態では、半導体基板の固有抵抗は0.001〜10,000Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、半導体基板の固有抵抗は0.01〜1000Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、半導体基板の固有抵抗は0.1〜100Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、半導体基板の固有抵抗は1〜100Ω・cmの範囲内である。いくつかの実施形態では、半導体基板の固有抵抗は10〜90Ω・cmの範囲内である。いくつかの実施形態では、半導体基板は、P形で10〜90Ω・cmの固有抵抗を有するSi(100)の単結晶半導体である。場合によって、別々の固有抵抗を有する複数の半導体基板が使用される。例えば、本発明の1つのシステムは、1つの酸化還元活性種を結合させた1つの低ドープ半導体基板を含むことができ、また、別の酸化還元活性種を結合させたより高ドープの半導体表面を含むこともできる。例えば、本発明の1つのシステムは、アントラキノンなどのpH感応酸化還元活性部分を結合させた1つの低ドープ半導体表面と、フェロセンなどの水素イオン不感応酸化還元活性部分を結合させたより高ドープの第2の半導体表面とを含むことができる。
【0090】
場合によって、半導体基板の別々の領域を異なる程度でドープすることができる。例えば、マスクを使用して半導体の一部の領域を、他の領域を露出したままにしながら覆うことができることが半導体加工の技術分野でよく知られている。露出した領域は、ドーパントで選択的に処理して、一部の領域が他の領域と異なるようにドープされた半導体表面を得ることができる。様々なマスクを用いて複数のステップを使用することにより、半導体表面の別々の領域の導電特性を制御することができる。したがって、一部の領域は高い導電性、一部の領域は低い導電性を有することができ、一部の領域は大きなバンドギャップを有することができ、他の領域は小さなバンドギャップを有することができ、一部の領域はNドーピングを、一部の領域はPドーピングを有することができ、一部の領域はドーピングがない。さらに、これら様々な領域は、これら様々な領域に電気的にアドレス可能にするために、導電領域、例えば堆積させた金属、例えば金と接続することができる。
【0091】
シリコン基板
本発明のいくつかの態様では、半導体基板はシリコンを含む。本発明の一態様は、酸化還元活性部分が結合された表面を有するシリコン基板である。このシリコン基板は、非結晶シリコン、または様々な結晶形態を含むシリコンを含むことができる。このシリコン基板はまた、多結晶とすることもできる。いくつかの実施形態では、非結晶領域と結晶領域の両方を有することができる。いくつかの実施形態では、シリコンは、ナノ結晶またはマイクロ結晶のシリコンとすることができる。ナノ結晶シリコンおよびマイクロ結晶シリコンを用いて、非結晶相内に結晶シリコンの小さな粒子がある準結晶構造を有するシリコンの同素体の形態を説明することができる。シリコン基板が結晶質である場合、シリコン基板の表面は、様々な結晶面をその表面に有することができる。結晶シリコンは一般に、面心立方(fcc)形である。多結晶シリコンが使用される場合など、いくつかの実施形態では、その表面が複数の結晶面を露出することがある。単結晶シリコンが使用される場合は、場合によってシリコン基板は、その表面に表される、または主に表される1つまたは複数の結晶面を有するように作製することができる。いくつかの実施形態では、シリコン基板の表面は、(xxx)の結晶格子を有する1つまたは複数の結晶面を含み、ここでxは、格子に対応して結晶面を定義する整数である。いくつかの実施形態では、結晶面(100)、(010)、(001)、(110)、(101)または(112)が主に表面に表される。いくつかの実施形態では、シリコン基板は、その表面に主に表される(100)面を有する。
【0092】
本発明のシリコン電極は、研磨された、または研磨されていないシリコン基板を含むことができる。シリコンは一般に、シリコンの加工前、例えばトランジスタなどのフィーチャを構築する前に研磨される。電子的機能がシリコンセンサに組み込まれる実施形態など、いくつかの実施形態では、研磨されたシリコン表面が望ましいことがある。他の実施形態では、研磨されていないシリコン基板を使用することができる。研磨されていないシリコン基板は、研磨ステップを経たシリコン基板よりも安価になりうる。さらに、研磨されていないシリコン基板は、シリコンの所与の面積に対して研磨されたシリコン基板よりも大きい表面積を有することができる。
【0093】
本発明のシリコン電極は、多孔質シリコンを含むことができる。多孔質シリコンの1つの利点は、有効表面積が増大することである。表面積の増大は、その表面結合酸化還元部分の酸化および還元から、試料と接触するそのような部分の数がより多いことにより、より高い信号が得られるために有利になりうる。当技術分野で知られているように、表面があまりに多孔質である場合には、その堅牢性が小さくなる。したがって、多孔性の程度を制御して、個別の用途での重要な特性を最高にすることができる。多孔性シリコンは、シリコンウェハから、例えば定電流エッチング、化学エッチングまたは光化学エッチングによって調製することができる。いくつかの実施形態では、フッ化水素酸(HF)による化学エッチングを使用して多孔性シリコン基板を製造することができる。いくつかの実施形態では、シリコン基板の平均細孔サイズは1nmから500nmの範囲にある。細孔サイズは、例えば窒素ガス吸着またはHg多孔度計によって測定することができる。いくつかの実施形態では、多孔度の量は、1%と98%の間の範囲にある。いくつかの実施形態では、多孔度の量は、5%と75%の間の範囲にある。いくつかの実施形態では、多孔度の量は、10%と50%の間の範囲にある。いくつかの実施形態では、多孔度の量は、20%と40%の間の範囲にある。いくつかの実施形態では、多孔度は、1%〜5%、5%〜10%、10%〜30%、20%〜40%、30%〜50%、または40%〜60%である。多孔度測定は、面積百分率または体積百分率で行うことができる。
【0094】
さらに、多孔性シリコンは、既存のシリコンベースの集積回路(IC)製造プロセスと容易に融合させることができる。
【0095】
シリコン基板は、シリコン電極の製造に適した任意の形状にすることができる。シリコン基板は、シリコンのモノリシック片、別の材料の上に堆積させたシリコンのコーティング、またはシリコン粒子の粉末を含むことができる。シリコン基板は、チップ、ウェハ、棒、針、ブロック、インゴットなどのモノリシック形状とすることができる。シリコン基板は別法として、特定の形状、例えば粒子からなる粉末の形状とすることができる。この粒子は、任意の形とすることができ、あるいは繊維、シート、ビーズ、円盤、多面体または球の形状にすることもできる。基板は、それが粒子から構成される粉末の形状である場合、以下でより詳細に説明するように、一般に複合電極に形成される。
【0096】
いくつかの実施形態では、半導体電極は単結晶シリコンから作製される。この単結晶シリコンは、金属級シリコンの棒をまず一端で加熱して溶融させる製法である、ゾーン精製法とも呼ばれるゾーンメルティング法で作製することができる。次に、棒のうちのある短い長さを溶融状態に保ちながら、ヒータが一般にはゆっくりと棒の全長を下に移動し、シリコンが冷却するにつれてその後ろで再固体化する。ほとんどの不純物が、再固体化領域内ではなく溶融領域内に残る傾向があるので、このプロセスが完了したとき、棒の中の不純物のほとんどが一般に、最後に溶融された端部に移動している。次に、この端部は切除されて廃棄され、このプロセスが、さらに高い純度が望まれる場合には繰り返される。本発明の単結晶シリコンはまた、チョクラルスキー法(CZ−Si)によって製造することもでき、この方法は、安価になる傾向があり、また大きいサイズの結晶を製造することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、シリコン電極は多結晶である。本明細書では、「ポリシリコン」という用語を「多結晶シリコン」という用語と交換可能に用いる。いくつかの実施形態では、ポリシリコンが堆積される。多結晶シリコンは、低圧化学気相成長法(LPCVD)、プラズマ促進化学気相成長法(PECVD)、あるいは特定の処理の型で非結晶シリコンの固相結晶化法(SPC)によって堆積させることができる。これらのプロセスでは、例えば300℃を越える比較的高い温度が必要なことがある。多結晶シリコン電極はまた、プラスチックを溶融または損傷することなくプラスチック基板上に前駆体非結晶シリコン(a−Si)材料を結晶化するレーザ結晶化法を用いて、例えばポリマー基板上に作製することもできる。場合によっては、例えば、短い高強度紫外線レーザパルスが、堆積されたa−Si材料をシリコンの溶融点を超えるまで、基板全体を溶融することなく加熱するために使用される。温度勾配を制御することによって、電極上の結晶サイズを制御することができる。粒径は、例えば10ナノメートルから1マイクロメートルとすることができる。本発明の電極に関して低温でポリシリコンを製造する別の方法は、金属誘起結晶化法であり、この方法では、非結晶シリコン薄膜が、例えば150℃以上の温度で、アルミニウム、金または銀などの金属箔と接触しながら結晶化される。多結晶シリコン電極はまた、ワイヤなどの金属構造物の上に形成することができる。例えば、円筒形ワイヤの端部をポリシリコンでコーティングすることができ、このポリシリコンは、本明細書に記載のように、酸化還元活性種で誘導体化することができる。この構造物は、検体を含む媒体にアクセス可能なシリコン部分を有する電極または電極の一部分として、また電圧を供給し電流が流れるようにするシステムの各部分にシリコン電極を接続する役割を果たすワイヤとして使用することができる。
【0098】
非結晶シリコン(a−Si)に優るポリシリコンの1つの利点は、電荷キャリヤの移動度が単結晶シリコン中よりも数桁大きくなりうることであり、この材料はまた、電界および光誘起応力のもとでより大きな安定性を示すこともできる。
【0099】
本発明のシリコン基板は、シリコンの薄い層とすることができ、この層は、別の材料、例えばシリコン基板を構成することになるガラス上に形成されたシリコンの薄い層の上に形成される。
【0100】
いくつかの実施形態では、電極を作製するために使用されるシリコン基板は、マトリクスまたはバインダ中に分散した半導体粒子を含む複合材料である。このシリコン基板は、バインダ中に分散したシリコンの粉末を含む複合材料で作製して、複合シリコン基板を作製することができる。シリコン粉末は、球、微結晶、棒、繊維、または他の任意のどんな形状にもすることができる。一実施形態では、複合電極は、ポリマーマトリクス中に分散したシリコン微結晶でできている。マトリクスまたはバインダは、有機、無機、または有機金属のポリマーとすることができる。有用な無機ポリマー材料の非限定的な例には、ポリフォスファゼン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリゲレマン、ポリマー硫黄、ポリマーセレン、シリコーン、および前記のうちのどれかの混合物が含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態では、ポリマーは有機ポリマーとすることができる。適切な有機ポリマー材料の非限定的な例には、それだけには限らないが、熱硬化性材料および熱可塑性材料が含まれる。本発明において有用なポリマーの非限定的な例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルと、ポリカーボネートと、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブテンなどのポリオレフィンと、スチレンとアクリル酸モノマーの共重合体などのアクリルポリマーと、メタクリレート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンおよび他のフルオロポリマーを含むポリマーと、前記のうちのどれかの混合物とが含まれる。
【0102】
バインダは絶縁性、半導体性、または導電性とすることができる。一実施形態では、バインダはポリマーなどの材料であり、これは絶縁材料である。絶縁バインダが使用される場合、電流は、分散したシリコン粉末だけを通って流れる傾向がある。いくつかの実施形態では、バインダは導電性成分を含む。いくつかの実施形態では、バインダはポリアナリン、ポリアセチレン、ポリ(アルキルチオフェン)、ポリ(アルキルピロール)などの導電性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、導電性成分は、ニッケル粒子のような金属粒子などの導電性粒子、炭素粒子を含む他の導電性粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性成分は、導電性ポリマーなどの導電性成分が、酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位の範囲外にある還元電位および/または酸化電位を示すように選択される。
【0103】
複合シリコン基板は、シリコン粉末をモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと混合し、そのモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーを硬化させてポリマーマトリクスを形成することによって形成することができる。この重合は、当技術分野で知られた、または本明細書に開示された任意の方法で開始することができる。重合は、例えば、開始剤の存在下で熱または光化学によって開始することができる。重合は、1つまたは複数の架橋剤を用いて行うことができる。この架橋剤は、ポリマーマトリクスの物理的特性を調整し、そうして複合シリコン基板の特性を調整するように選択することができる。複合シリコン基板は、シリコン粉末を溶融熱可塑性ポリマーと混合し、基板を形成し、その混合物を冷却させることによって形成することができる。複合シリコン基板は、シリコン粉末を溶剤中のポリマーまたはプレポリマーと混合し、その溶剤を気化させて複合材料を形成することによって形成することができる。上記の方法のうちのどの組合せも使用することができる。
【0104】
複合シリコン基板の電気的特性は、シリコンの量、粒子サイズ、および粒子形状により影響を受けることがある。一般に、複合材料中のシリコンの量は、その材料全体にわたって導電経路をつくり出すのに十分なほどに多い。材料全体にわたって導電経路を設けるのに必要なこの材料の量は、浸透閾値と呼ばれることがある。導電性を得るために必要なシリコン粒子の量はまた、バインダの粘性、および混合物の量などの加工条件によって決まることもある。シリコンの量は一般に、機械的強度および柔軟性などの材料の物理的特性が、その材料が有効でなくなる点まで悪化しない程度に設定される。シリコンの量は一般に、複合材料の0.1体積百分率から70体積百分率になる。いくつかの実施形態では、シリコンの量は、1体積百分率から50体積百分率になる。いくつかの実施形態では、シリコンの量は、10体積百分率から40体積百分率になる。シリコンの量は、1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、または50%〜60%とすることができる。
【0105】
複合シリコン基板は、電極として有効な形状にコーティング、成形、および鋳造するなど、ポリマー材料を成形するために使用される方法によって形成することができる。複合シリコン基板電極は一般に、電流および電位を加えるために導電線に接続される。その材料は、金属などの導電基板上に鋳造、コーティングおよび/または成形して、複合電極との間で電流を伝達するための導体を接続する導電接合部を形成することができる。
【0106】
本発明のシリコン基板は一般に、電極として機能し、かつ結合された酸化還元活性部分の酸化および/または還元のための電流を伝達するのに十分な高い導電性を有する。シリコン基板をさらに導電性にするために、シリコン基板は一般に、導電性を増大させる不純物すなわちドーパントを含む。多結晶シリコンが使用される場合、多結晶シリコン電極は、ドープされた多結晶シリコン(in situドープ)として堆積させることができ、あるいは非ドープで堆積させ、続いてイオン注入または熱拡散処理によってリンまたはホウ素などの不純物ドーパントでドープすることができる。リンおよびホウ素などのドーパント不純物は、シリコン自体を通るよりもずっと速く、粒界に沿って拡散する傾向がある。
【0107】
シリコンなどのIV型半導体用のドーパントは、例えば電子ドナーまたは電子アクセプタとすることができる。適切な電子ドナーはリン、ヒ素、アンチモン、およびビスマスである。いくつかの実施形態では、ドーパントはリンである。いくつかの実施形態では、ドーパントはアンチモンである。適切な電子アクセプタはホウ素、アルミニウム、ガリウムなどである。いくつかの実施形態では、ドーパントはホウ素である。いくつかの実施形態では、電子アクセプタは、シリコン電極に耐薬品性を与えることができる。
【0108】
シリコン基板がウェハなどのモノリシック材料である場合、ドーパントは、シリコンのバルク全体にわたって分散させることができ、あるいはシリコンウェハの表面領域に限定することもできる。いくつかの実施形態では、例えばシリコン基板が、別々の酸化還元活性部分を伴う複数の区域を含む場合、ドーパントは、シリコン基板の表面の分離された各領域が導電性になるように分散させることができる。
【0109】
ドーパントは一般に、シリコンの0.01重量パーセントよりも多い量、一般にはシリコンの0.1パーセントを超える量が存在する。一般に、ドーパントは、シリコンの3重量パーセント未満であり、ほとんどの場合シリコンの6重量パーセント未満である。少量のドーパントの存在により、導電性が増大しうる。ドーパントはシリコン全体にわたって均一に分散されないことがあり、また局所的な濃度がシリコン材料の別々の領域間で異なることがある。
【0110】
電気固有抵抗(伝導率の逆数)は、例えば0.1(オーム・センチメートル)、1(オーム・センチメートル)、10(オーム・センチメートル)、100(オーム・センチメートル)から1000または10,000(オーム・センチメートル)さえも越えて、黒鉛および通常の金属導体に匹敵するさらに高いものにすることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、シリコン基板の固有抵抗は0.0001〜100,000Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、シリコン基板の固有抵抗は0.001〜10,000Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、シリコン基板の固有抵抗は0.01〜1000Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、シリコン基板の固有抵抗は0.1〜100Ω・cmの範囲である。いくつかの実施形態では、シリコン基板の固有抵抗は1〜100Ω・cmの範囲内である。いくつかの実施形態では、シリコン基板の固有抵抗は10〜90Ω・cmの範囲内である。いくつかの実施形態では、シリコン基板は、P形で10〜90Ω・cmの固有抵抗を有するSi(100)の単結晶シリコンである。場合によって、別々の固有抵抗を有する複数のシリコン基板が使用される。例えば、本発明の1つのシステムは、1つの酸化還元活性種を結合させた1つの低ドープシリコン基板を含むことができ、また、別の酸化還元活性種を結合させたより高ドープのシリコン表面を含むこともできる。例えば、本発明の1つのシステムは、アントラキノンなどのpH感応酸化還元活性部分を結合させた1つの低ドープシリコン表面と、フェロセンなどの水素イオン不感応酸化還元活性部分を結合させたより高ドープの第2のシリコン表面とを含むことができる。
【0112】
場合によって、シリコン基板の別々の領域を異なる程度でドープすることができる。例えば、マスクを使用してシリコンの一部の領域を、他の領域を露出したままにしながら覆うことができることが半導体加工の技術分野でよく知られている。露出した領域は、ドーパントで選択的に処理して、一部の領域が他の領域と異なるようにドープされたシリコン表面を得ることができる。様々なマスクを用いて複数のステップを使用することにより、シリコン表面の別々の領域の導電特性を制御することができる。したがって、一部の領域は高い導電性、一部の領域は低い導電性を有することができ、一部の領域は大きなバンドギャップを有することができ、他の領域は小さなバンドギャップを有することができ、一部の領域はNドーピングを、一部の領域はPドーピングを有することができ、一部の領域はドーピングがない。さらに、これら様々な領域は、これら様々な領域に導電領域、例えば堆積させた金属、例えば電気的にアドレス可能にするために、金と接続することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、Nisilが使用される。Nisilはニッケルとシリコンの合金である。いくつかの実施形態では、シリコンを4%〜5%含むNisilが使用される。いくつかの実施形態では、シリコンを4.4%含むNisilが使用される。いくつかの実施形態では、Nicrosilが使用される。Nicrosilはニッケル合金である。いくつかの実施形態では、クロムを14.4%、シリコンを1.4%、マグネシウムを0.1%含むNicrosilが使用される。
【0114】
場合によっては、例えば、シリコン基板が鋳造シリコンである場合、このシリコン基板は、鋳造性を与えるために例えば遷移金属のシリサイドを含む。遷移金属のシリサイドは、好ましい機械的特性を鋳造合金に与えることができる。本発明の二次電池のシリコン電極に存在する遷移金属シリサイドを得るのに有用な典型的な金属には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、コロンビウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、および銀が含まれる。最も一般的に、シリコン合金中のシリサイドとして存在する遷移金属は、マンガン、クロム、鉄、コバルト、ニッケルまたはモリブデンのシリサイドである。シリサイドの量は、満足な鋳造性を得るのには十分であるが、シリコンの特性に悪影響を及ぼすのに十分なほどには多くなく、すなわち遷移金属が元素で2パーセント以上から最高30パーセントまでである。
【0115】
酸化還元活性部分
いくつかの実施形態では、本半導体の表面は、酸化還元活性官能基で修飾された表面を含む。この表面の少なくとも1つの酸化還元活性官能基が、溶液中の物質の存在および、または量に感応する。いくつかの実施形態では、半導体表面は、検体に感応する少なくとも1つの酸化還元活性官能基と、試験されるべき検体に実質的に感応しない少なくとも1つの酸化還元活性官能基とを有する。このように使用されると、実質的に感応しない基は基準として働くことができ、それによって、測定の精度および再現性をより高くすることができる。
【0116】
酸化還元基は、化学的または物理的に表面に結合させることができる。酸化還元基は、半導体に共有結合させることができ、または半導体に吸着させることができ、あるいは表面に共有結合または非共有結合されたポリマーに結合させることができる。酸化還元基の共有結合、または一部が酸化還元基であるポリマーの共有結合は、電極の寿命および安定性を改善するのに有益である。シリコンおよびゲルマニウムなどの半導体材料は、炭素と共有結合を形成することができ、したがって、炭素ベースの分子との官能性を持たせるのに望ましい基板である。表面との共有結合は、半導体、例えばシリコンと、炭素、酸素、窒素、硫黄または他の原子との間の結合により可能である。いくつかの実施形態では、結合はシリコンと炭素の間である。いくつかの実施形態では、結合はシリコンと酸素の間である。物理的な結合は吸着によって行うことができ、例えば、酸化還元活性部分を含む脂肪酸に由来するものなどの分子の、半導体表面への自発的な自己集合を含むことができる。
【0117】
リンカー基が使用される場合、リンカーは小さな、例えば1〜3原子とすることができ、あるいはそれより長い、例えば20〜100原子とすることができ、あるいは大きいリンカーと小さいリンカーの間の任意のサイズとすることができる。短いリンカーが使用される場合、酸化還元活性部分は、表面近くに保持される。より長い原子団が使用される場合には、酸化還元活性部分は、表面から離れて例えば溶液中に移動できることもある。リンカー基は、親水基、疎水基、またはそれらの混合物を含むことができる。リンカー基は、例えば、炭化水素基、エステル基、エーテル基、アミド基、アミン基、カルボニル基、チオール基、オレフィン基、シリコーン基、あるいは他の有機、無機または有機金属の基を含むことができる。リンカー基は、遊離基重合、カチオン重合またはアニオン重合など、重合反応またはオリゴマー化反応によって形成することができる。リンカー基は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ビニルエーテル、またはアクリルアミドの繰返し単位を含むことができる。リンカーは、芳香環を含む環構造を有することができる。リンカー構造の変化を用いて、溶液中の酸化還元活性部分の移動度を変えることができる。
【0118】
本明細書で、部分(moiety)という用語は一般に、分子または置換基の一部分を指す。酸化還元活性部分は、高度に置換することができるが、それでもなお酸化還元活性部分として働くことができる。本明細書では、「酸化還元活性部分」、「酸化還元活性基」「酸化還元官能基」および「酸化還元基」という用語を交換可能に使用する。したがって、例えば、酸化還元活性部分フェロセンは、置換フェロセンと、フェロセンポリマーと、リンカー分子を用いて、またはリンカー分子なしで表面に共有結合させたフェロセンとを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分はポリマーに組み込むことができ、この酸化還元活性部分を含むポリマーは、半導体表面に固定化することができる。ポリマーの固定化は、化学的または物理的に行うことができる。ポリマーの固定化は、共有結合により、あるいは半導体表面へのポリマーの吸着により可能である。
【0120】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、半導体に結合された粒子に結合される。この粒子は一般に、導電性粒子である。粒子は半導体表面に、半導体表面と粒子の間で電流が流れることができるようにして付着される。粒子は表面に、化学的または物理的に付着させることができる。例えば、酸化還元活性部分は炭素粒子に付着させることができ、この炭素粒子は、半導体表面に付着させることができる。いくつかの実施形態では、この炭素粒子はカーボンナノチューブである。本発明のいくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブに付着した酸化還元活性基がある半導体の表面に付着させることができる。例えば、適切に配列された単一壁カーボンナノチューブ構造を単結晶シリコン表面に付着させて使用することができる。いくつかの実施形態では、例えば、フェロセンメタノール分子を、シリコン表面、例えば(100)表面に直接固定化された単一壁カーボンナノチューブ(SWCNT)アレイに付着させる。例えば、その表面に単一壁カーボンナノチューブを、YuらのElectrochimica Acta、52(2007年)、6206〜6211頁に記載の方法を用いて結合することができる。
【0121】
酸化還元活性部分は一般に、明確なサイクリックボルタンメトリーの酸化および/または還元ピークを伴う可逆性酸化還元活性を有する。適切な基準酸化還元試薬は、意図された用途に応じて応用例ごとに、または媒体ごとに異なりうる。
【0122】
酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位の位置は、酸化還元電位の測定の精度および品質を改善するように選択することができる。場合によっては、還元電位および、または酸化電位は、他の酸化還元活性種から離れるように選択することができる。シリコン表面は一般に、例えば、表面に結合された酸化還元活性部分の還元および酸化の測定に干渉することなく還元電位または酸化電位の測定が行われる広い窓を有する。シリコン表面は一般に、マイナス2Vからプラス2Vの間の酸化電位および/または還元電位を測定するために使用することができる。場合によっては、例えば媒体が水性媒体である場合、酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位を媒体の還元電位内または酸化電位内に入らないように選択して、干渉を最小限にすることができる。こうすることは、サイクリックボルタンメトリーが用いられる場合には有用なことがあるが、矩形波ボルタンメトリーが用いられる場合では重要度が低い。
【0123】
検体の存在に感応しない酸化還元活性部分は、そのような検体の存在時または不在時に、それらの酸化電位および/または還元電位の変化を示さない、またはほとんど示さないはずである。検体の存在に一般に不感応であり、特に水素イオンの存在に不感応である酸化還元活性部分には、フェロセン、ポリビニルフェロセン、Os(bpy)C1、Ru(bpy)C1、ビオロゲン、ポリビオロゲン、およびポリチオフェンが含まれる。高度の電気化学的可逆性を有する酸化還元試薬が一般に好ましい。図5は、シリコン表面に結合された水素イオン不感応酸化還元活性部分フェロセンの各例を示す。
【0124】
水素イオンに感応する非限定的な酸化還元活性部分には、キノン、アンスロキノン、フェナントロキノン、フェニレンジアミン、カテコール、フェノチアジニウム染料、およびモノ四級化N−アルキル−4,4’−ビピリジニウムが含まれる。いくつかの実施形態では、水素イオンに感応する酸化還元活性部分は、無機材料および金属酸化物を含むことができる。水素イオン感応無機酸化還元活性無機部分には、プルシアンブルー、Ni(OH)、およびRuOが含まれる。図6は、シリコン表面に共有結合された水素イオン感応酸化還元活性部分アントラセンの各例を示す。図7は、水素イオン感応酸化還元活性部分フェロセンおよび水素イオン不感応酸化還元活性剤アントラセンの両方を共有結合させたシリコン表面の各例を示す。
【0125】
いくつかの実施形態では、検体は一酸化炭素(CO)である。CO感応酸化還元活性剤の一例には、フェロセニルフェラゼチンジスルフィド(ferrocenyl ferrazetine disulfide)またはフェラゼチン−フェラゼチンジスルフィドがある。CO不感応酸化還元剤は、例えばフェロセンとすることができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、検体はアルカリ金属である。アルカリ金属感応酸化還元活性剤には、例えば、1,1’−(1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシシクロオクタデカン−7,16−ジイルジメチル)、フェロセニルチオール、および共有結合されたクリプタンドを含む他のフェロセン誘導体が含まれる。これらの材料は、例えば、HammondらのJ.Chem.Soc.Perkin.Trans.I、707頁(1983年)、MedinaらのJ.Chem.Soc.Chem.Commun.、290頁(1991年)、ShuおよびWrightonのJ.Phys.Chem.92、5221頁(1988年)に記載されている。通常は化学的に感応性がない酸化還元中心(フェロセン)が化学的認識部位と、酸化還元中心が化学的に感応性になるように共有結合する、上記のフェロセニルフェラゼチンおよびフェロセニルクリプタンドなどの例が含まれる。センサと基準官能基が共有結合する同様に適切な分子またはポリマーには、ShuおよびWrightonのJ.Phys.Chem.92、5221頁(1988年)に記載された、1−ハイドロ−1’−(6−(ピロール−1−イル)ヘキシル)−4,4’−ビピリジニウムビス(ヘキサフルオロフォスタート)などがある。
【0127】
場合によっては、複数の検体感応酸化還元活性部分を使用することができる。例えば、水素イオンに感応するとともに、CO、酸素、アンモニア、またはアルカリ金属などの別の第2の検体に感応する1つの酸化還元活性部分がありうる。この手法では、複数の検体の同時測定が可能になる。場合によっては、3つ以上の検体に感応する酸化還元活性剤を使用することができる。複数の検体に感応する酸化還元剤がある場合では、多くの場合に、精度を改善し、較正を最小限にするか回避するために、1つまたは複数の検体に感応しない酸化還元活性部分を半導体表面に同様に結合させて基準を設けることもまた望ましい。
【0128】
複数の酸化還元活性部分が使用される場合、ピーク間に著しい干渉がないように保証することが重要になりうる。このことは特に、複数の酸化還元活性部分が半導体基板上の電気的にアドレス可能な同じ区域にある場合に望ましいことがある。これは、例えば、酸化電位と還元電位の十分な隔離があることを確実にすることによって、または酸化還元部分を物理的に分離することによって実現することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、半導体基板は、分離され別個に電気的にアドレス可能な複数の区域を有する。いくつかの実施形態では、別々の区域は別々の酸化還元活性部分を含む。別々の区域を使用することは、ボルタンメトリー測定を別々に実施することができ、それによって、同様な還元電位および/または酸化電位を有する複数の酸化還元活性剤の使用が可能になるという点で有益なことがある。
【0130】
別個に電気的にアドレス可能な区域は、従来の半導体加工方法、例えば表面の特定の領域に、例えばドーピングがある一定のレベルである表面の特定の領域に、構造物をつくり出すマスキングによって作製することができる。また、従来の半導体加工を用いて導電相互接続部を組み込み、その区域を別個にアドレス可能にすることもできる。マスキングはまた、半導体表面に酸化還元活性部分を結合する間に用いて、表面の別々の領域に特定の酸化還元活性部分を結合させることもできる。
【0131】
別個にアドレス可能な区域を有する半導体基板は、電気化学センサアレイを効果的につくり出すことができる。本発明の一態様は、酸化還元活性部分をそれぞれの区域が含む複数の区域からなる半導体電気化学センサアレイである。アレイは、検体感応酸化還元活性部分を伴う複数の区域と、検体不感応酸化還元活性部分を伴う1つまたは複数の区域とを有することができる。1つの区域は、単一の酸化還元活性部分、または複数の酸化還元活性部分を有することができる。アレイは、例えばpHとOの両方を測定するように構築することができ、1つの区域が、水素イオンに感応する酸化還元活性部分を含み、別の区域が、Oに感応する酸化還元活性部分を有し、第3の区域が、水素イオンにもOにも感応しない酸化還元活性部分を伴う。
【0132】
いくつかの実施形態では、別個にアドレス可能な区域からなるアレイまたは電極のアレイが使用され、この場合、同じ検体を測定するようにそれぞれが構築され、冗長化して使用される複数の区域または電極があり、同じ検体を測定することができる別の区域が同時に、あるいは他の区域または電極の代わりに、使用される。場合によっては、測定の品質を改善するために、複数の区域または電極が、例えばアレイの形で同時に使用される。場合によっては、複数の区域または電極が、例えばアレイの形で順次に使用され、1つの区域または電極が性能低下を示した場合、その検体の測定は、同様の特性を有するように構築された別の区域または電極で行われる。同様な区域または電極の順次的使用により、長期にわたって測定の信頼性を確保することができる。本発明の電極は堅牢に、かつ汚損に耐えるように調製することができるが、状況により、測定の経時的な性能低下が起こりうる。いくつかの実施形態では、最大電流(Imax)を長期にわたって監視することができる。例えば、最大電流がある一定のレベル未満に低下した場合、検体を引き続き測定するために冗長な区域または電極への切換が行われるようにシステムを構成することができる。複数の冗長な電極、例えば1個、2個、3個、4個、5個、10個、20個、またはそれを超える冗長な素子がありうる。
【0133】
本発明の半導体基板はまた、回路を含むこともできる。この回路は、例えば、酸化還元活性部分に供給される電流および電位を制御するために使用することができる。回路はまた、ボルタンメトリー測定に関連する信号を解析しデータを処理するために使用することもできる。回路はまた、温度など他のパラメータを測定できること、データを記憶できること、あるいは遠隔地にデータを送付しそこから命令を受け取ることができることなど、他の機能を有することもできる。回路は、例えば、演算増幅器などの増幅器を含むことができる。回路は、例えば、アナログ−デジタル変換器(ADC)を含むことができる。場合によっては、増幅およびADCの機能を半導体基板中に組み込むと、センサからの信号伝達の品質および信頼性がより高くなる。半導体基板上の回路を使用することは、区域のアレイが利用される場合に特に有用になりうる。回路は、半導体基板に出入りする電流の通過の管理を支援することができる。場合によっては、回路は、各区域を同時または順次にアドレスする方式を、例えば多重化(MUX)によって可能にすることができる。
【0134】
半導体電極センサ
本発明の一態様は、上述の半導体基板の、半導体電極センサへの組込みである。半導体基板を含む半導体電極センサは、1つまたは複数の検体の存在または不在の測定に使用することができ、あるいは試料中の検体の濃度を正確に測定するのに使用することができる。
【0135】
本発明の半導体電極センサは、水素イオン、アルカリ金属、CO、またはOを含む検体を測定するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、半導体電極センサは、水素イオン濃度すなわちpHを測定するのに使用される。
【0136】
半導体電極センサは、上述のように、ある検体の存在に感応する酸化還元活性部分を含む半導体基板を備える。この半導体電極センサはまた、ある検体の存在に感応しない酸化還元活性部分を含むこともできる。半導体電極センサは、複数の半導体基板を備えることができる。例えば、このセンサは、検体感応酸化還元活性部分を有する1つの半導体基板と、検体不感応酸化還元活性部分を有する別の半導体基板とを備えることができる。
【0137】
半導体電極センサは、ボルタンメトリーを実施するために電圧を供給しセンサに電流を流すことができるシステムに組み込まれるように構成される。したがって、センサ内の1つまたは複数の半導体基板は、電流と電圧を供給し測定するデバイスへの接続を可能にするように電気的に接続される。
【0138】
半導体電極センサは一般に、対電極も含む電気化学システム内の作用電極になり、いくつかの実施形態では基準電極になる。
【0139】
センサは、検出されるべき検体を有する試料と接触させる。試料は、一般に液体試料である。場合によっては、試料はゲル状、懸濁、溶融または半固体の媒体とすることができる。試料は、例えば食材でもよい。試料は、炭化水素、油、フッ化炭化水素、シリコーン、および水溶液を含むどんな種類の液体でもよい。検体が水素イオンである場合、水性媒体が一般に使用されるが、場合によって、極性プロトン性媒体または極性非プロトン性媒体が使用されることもある。このセンサは、水溶液中でpHを測定するのに有用である。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、検体が10−1Mから10−14Mの濃度範囲で存在する場合に、検体濃度を正確に測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、検体が10−3Mから10−10Mの濃度範囲で存在する場合に、検体濃度を正確に測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、濃度をプラスまたはマイナス100%、50%、30%、20%、10%、5%、2%または1%の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、10−3Mから10−10Mの範囲内の濃度をプラスまたはマイナス100%、50%、30%、20%、10%、5%、2%または1%の精度で測定することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では検体が水素イオンであり、本発明のセンサは、pH1からpH14の範囲のpHを正確に測定することができる。いくつかの実施形態では検体が水素イオンであり、本発明のセンサは、pH3からpH10の範囲のpHを正確に測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、pHをプラスまたはマイナス0.5、0.3、0.2、0.1、0.07、0.05、0.03、0.02または0.01pH単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、pH3からpH10の範囲のpHをプラスまたはマイナス0.5、0.3、0.2、0.1、0.07、0.05、0.03、0.02または0.01pH単位までの精度で測定することができる。
【0142】
本発明の半導体電極センサは、多様な種類の試料について検体濃度を正確に測定することができる。このセンサは堅牢に、かつ汚損に耐えるように作製することができ、したがって長期の測定での信頼性が高くなる。
【0143】
本発明の一態様は、定常的な較正を必要としない、あるいは場合により、いかなる較正も全く必要としないセンサである。従来の電位差センサは、例えば水素イオンを検知するのにガラス部材に依拠する。これらのタイプのセンサは一般に、通常は既知の検体濃度の標準液中に入れることによって、定期的に較正する必要がある。これらのタイプのセンサは一般に、1つの溶液から別の溶液に移るときに較正が必要であり、また同じ溶液中に保存されても、溶液の外にあっても、時間の経過につれてやはり較正が必要である。この状況は、例えば化学反応、生物化学反応、または発酵を監視しているときに、センサが監視している媒体の成分の経時的な変化があると悪化する。こうした場合では、電位差センサは、反応におけるある化学種の蓄積のために、あるいは存在する化学種によるセンサの汚損のためにドリフトすることがあり、較正が必要になる。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、これらのどの状況下でも較正する必要がない。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、溶液中で長期にわたって較正する必要がない。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、溶液中で、または保管して1時間、10時間、1日、2日、5日、1週間、2週間、1カ月、6カ月、1年、2年、またはもっと長く経った後に較正する必要がない。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、上記の各時間の後での検体濃度測定において50%、40%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.2%、または0.1%の精度である。センサでpHを測定するいくつかの実施形態では、センサは、上記の各時間の後で1、0.8、0.5、0.3、0.2、0.1、0.08、0.05、0.03、0.02または0.01pH単位の精度である。センサでpHを測定するいくつかの実施形態では、センサは、溶液中で、または保管して1週間後に0.1pH以内の精度である。
【0145】
いくつかの実施形態では、センサは、外部標準液を用いるどんな較正もなしで検体濃度を測定することができる。いくつかの実施形態では、センサは、エンドユーザによる最初の使用の後、較正されなくても検体に対する感応性が存続する。
【0146】
いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、細胞培養液に少なくとも1時間、3時間、6時間、9時間、12時間、18時間、または24時間、あるいは2日、3日、4日、6日、8日、12日、24日、48日、60日、90日、またはそれを超えてさらした後でも、水素イオンに対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、細胞培養液に少なくとも3日間さらした後でも、水素イオンに対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後でも、水素イオンに対する感応性が存続する。いくつかの実施形態では、センサは、細胞培養液にさらした後でpHを0.2単位の精度で測定することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で10分間、20分間、40分間、80分間、100分間、200分間、400分間または800分間のオートクレーブ処理の後で、pHを0.2単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で40分間のオートクレーブ処理の後で、pHを0.2単位の精度で測定することができる。いくつかの実施形態では、検体は水素イオンであり、センサは、121℃で400分間のオートクレーブ処理の後で、pHを0.2単位の精度で測定することができる。
【0148】
特性が変化しうる媒体中で長期間にわたって較正を必要としない本センサは、例えば埋込み型センサとして有用である。埋込み型センサは、皮膚の下または体内に、血液、唾液、母乳、羊水、リンパ液、汗、涙、または尿などの体液に接触して配置することができる。このセンサは、水素イオン、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたは酸素などの検体の濃度を測定することができる。
【0149】
埋込み型センサは、体液と接触するように構成された電極を有し、前記電極は、酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含み、その酸化還元活性部分は、前記イオンの濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を有する。埋込み型センサは、米国特許第6,738,670号に記載のような埋込み型医療デバイス内に含むことができる。例えば、センサを備えた埋込み型医療デバイスとしては、ペースメーカ、除細動器、薬物送達ポンプ、診断レコーダ、人工内耳などが含まれうる。埋込み型医療デバイスは一般に、治療に合わせてプログラムされてから、体内に、通常は臨床医および患者の好みを考慮に入れた上で選択された部位の皮下嚢状腔内に、埋め込まれる。いくつかの実施形態では、埋込みデバイスは飲み込むことができる形状であり、それによって、このデバイスが胃、上部腸、下部腸および結腸を含む消化管などの体内を通るときに遭遇する部位の性状の測定が可能になる。埋込みデバイス内のセンサによって得られる情報は、例えば無線通信によってリアルタイムでアクセスすることができ、あるいは体内を通過後にデバイスから取り込むことができる。ダウンリンク送信器としても知られる多様なプログラマを使用して、埋込み型医療デバイスとの間でデータを送受信することができる。ダウンリンク送信器の例には、医師プログラマ、患者プログラマ、プログラミングワンド、遠隔測定アクセスユニットなどのデバイスが含まれる。臨床医は、例えば、患者の治療を管理し埋込み型医療デバイスのデータを集めるために、医師プログラマを周期的に使用して埋込み型医療デバイスと通信することができる。半導体電極センサは、埋込み型医療デバイスに組み込む、または取り付けることができ、デバイスが埋め込まれた体の部位内の検体濃度のデータを提供することができる。患者は、臨床医によってプログラムされた治療調節を行うために、患者プログラマを使用して埋込みデバイスと通信することができる。医師プログラマも患者プログラマも、アンテナ位置表示器を有することができ、これは、適切な遠隔測定のために遠隔測定ヘッドが埋込みデバイスと十分密接に位置合わせされているときを示す。
【0150】
本発明の一態様は、酸化還元活性部分を含む半導体電極センサを体液に接触して配置するステップと、このセンサを動作させて前記体液中に存在する検体の濃度値を得るステップとを含む、体内で体液の濃度を測定する方法である。
【0151】
システム
本発明の一態様は、検体濃度を測定するシステムである。一実施形態では、このシステムは、検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を有する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を有する作用電極と、対電極および任意選択で基準電極と、作用電極に複数の電位を供給する電源と、作用電極を通る電流を複数の電位で測定するデバイスとを含む。本明細書で言及する作用電極は、上記の半導体電極センサを含む。多くの実施形態では、半導体表面がその上にまた、前記検体の存在に感応しない酸化電位および/または還元電位を有する第2の酸化還元活性部分も固定化していることが望ましい。検体の存在に感応しないこの酸化還元活性部分は、同じ半導体表面にあってよく、あるいは、システムと電気的に接触し、試料と接触する別の表面にあってもよい。このシステムは、作用電極、対電極、および任意選択で基準電極が試料と接触するように構成される。多くの実施形態では、試料は液体試料であり、各電極はそれぞれこの液体と接触する。場合によっては、試料は液体ではなくて、一般に固体電解質を含む固体、または気体である。
【0152】
いくつかの実施形態では、システムは2つ以上の電極を有する。例えば、いくつかの実施形態では、このシステムは、前記検体の存在に酸化電位および/または還元電位が感応する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む1つの作用電極と、前記検体の存在に酸化電位および/または還元電位が感応しない酸化還元活性部分を含む第2の作用電極とを有する。2つの作用電極を伴うシステムの例としては、2つの半導体ウェハまたはチップを有し、そのうちの一方が、pHに感応するアントラセンなどの酸化還元活性部分を有し、もう一方が、pHに感応しないフェロセンなどの酸化還元活性部分を有するシステムがある。場合によっては、各酸化還元活性種が上に固定化される半導体ウェハまたはチップは、異なる種類の半導体ウェハまたはチップである。例えば、pH感応部分が結合される半導体ウェハまたはチップが1つのドーピングレベルを有し、pH不感応部分が結合される半導体ウェハまたはチップが異なるドーピングレベルを有することができる。このタイプの構成は、場合によっては、ある1つの種類の酸化還元活性種がある1つの種類のドーピングで振幅、感度または安定性の面でよりよく機能し、別の酸化還元種が別の種類のドーピングで半導体ウェハまたはチップ上でよりよく機能するので、有益である。いくつかの実施形態では、pH感応部分、例えばアントラセンが、ドーピングのレベルが低い半導体ウェハに結合され、pH不感応部分、例えばフェロセンが、ドーピングのレベルが高いシリコンウェハに結合される。いくつかの実施形態では、pH感応部分、例えばアントラセンが上に結合される半導体ウェハは、1Ω・cmから1000Ω・cm、または10Ω・cmから90Ω・cm、または10Ω・cmから40Ω・cmの間の固有抵抗を有し、pH不感応部分、例えばフェロセンが上に結合される半導体ウェハは、0.001Ω・cmと0.1Ω・cmの間、または0.001〜0.005Ω・cmから0.02〜0.05Ω・cmの固有抵抗を有する。いくつかの実施形態では、N形半導体、例えばシリコンウェハがpH不感応部分、例えばフェロセンに対して使用される。いくつかの実施形態では、N形半導体、例えばシリコンウェハが、pH感応部分とpH不感応部分の両方に対して使用される。
【0153】
いくつかの実施形態では、システムは3つ以上の作用電極を有する。例えば、いくつかの実施形態では、システムは、第1の検体の存在に感応する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む1つの作用電極と、第2の検体の存在に感応する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む第2の作用電極と、第1の検体の存在にも第2の検体の存在にも感応しない酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む第3の作用電極とを有する。このシステムはまた、3つを超える作用電極を有することもでき、例えば、検体に感応する酸化還元活性部分をそれぞれが有する4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、20個、50個、またはそれを超える作用電極を有する。これらのシステムはまた、例えば基準を設けるために、検体に感応しない酸化還元種を有する1つまたは複数の半導体作用電極を有することができる。場合によっては、検体に感応しない複数の酸化還元種を使用することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、2つ以上の電極を含むプローブを備えることができる。このプローブは、その電極が試料と接触できるように電極を物理的に保持することができる。プローブは、作用電極を基準電極および/または対電極に接近して保持できるようにする。図21は、4つの電極、すなわち第1の作用電極(WE1)、第2の作用電極(WE2)、基準電極(RE)、および対電極(CE)を有する本発明のシステムのプローブの例示的な一実施形態である。図21(a)は、プローブの陰影付き図を示す。図21(b)は、プローブの線図を示す。図21に示されるように、場合によっては、基準電極および対電極が環状構成を有することが本発明では有益になりうる。別の実施形態では、基準電極または対電極のうちの1つだけが環状構成を有する。環状構成では、信号安定性を得ることができる場合がある。この実施形態は1つの構成を示すが、本発明で使用できる他の環状電極構成もある。
【0155】
いくつかの実施形態では、アントラセンなどの部分に対して低ドープの半導体、例えばシリコンウェハを使用することが有効である。理論に縛られない限りでは、半導体、例えばシリコンのバンドギャップは、半導体のドーピングのレベルに影響されることがあり、場合によって、ドーピングのレベルが適切な半導体を使用することは、適切なバンドギャップを有する適切な酸化還元活性部分をあつらえるのに有効であると考えられる。したがって、場合によっては、低ドープの半導体、例えばシリコンをアントラセンなどの部分と共に使用することが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、一方がフェロセン部分に対し最適化され、他方がアントラセン部分に対し最適化された2つの半導体作用電極を使用することが有効である。2つの作用電極が使用される場合、いくつかの実施形態では、2つの連続した電気化学測定が、(例えば矩形波ボルタンメトリーにより)同じ対電極および基準電極を使用して行われる。例えば、第1の測定は、(例えばアントラセン誘導体化された)基準電極1、対電極1および作用電極1を使用して−1.2〜−0.5Vの間で行うことができ、それに続いて第2の測定が、(例えばフェロセン誘導体化された)基準電極2、対電極2および作用電極2を使用して0〜0.5Vの間で行われる。次に、第1および第2の測定で検出されたピーク電位を保存し処理して、pH読取値を得ることができる。この種類のシステムおよび方法は、2ポテンシオスタットまたは2チャネルマルチプレクサを使用することによって実現することができる。同様の手法を、マルチポテンシオスタットまたはマルチチャネルマルチプレクサを用いて複数の作用電極に適用することができる。
【0156】
このシステムは、試料に対してボルタンメトリー測定を行うように構成される。1つの態様では、本発明は、上記の半導体電極センサと、電極に電圧を供給するポテンシオスタットと、電圧の関数として電流を検出する計器とを備えたボルタンメトリーpH検知システムによるpHの測定を含む方法を提供する。
【0157】
対電極は通常、本明細書に記載の測定を行うための電気化学回路を完成するのに必要である。対電極は一般に、その電位が測定中に著しく変化しないように、媒体に対し化学的に不活性な材料でできている。多くの応用例で適切な材料としては、白金、金、ステンレス鋼、および炭素が含まれる。
【0158】
基準電極は任意選択であり、本発明のいくつかの実施形態で第3の電極として使用される。3電極システムの場合では、一般に対電極により回路が完成し、それによって電流がセルを通って流れることができ、一方で基準電極は、その電流に関係なく一定の界面電位差を維持する。システムが検体感応酸化還元活性部分および検体不感応酸化還元活性部分を含む場合、検体不感応酸化還元活性部分は基準として機能することができ、それによって電位差を用いて検体濃度を決定することができる。システムが検体不感応部分を含む場合でさえも、いくつかの実施形態では、基準電極がなお使用される。いくつかの実施形態では、疑似基準電極もまた利用することができる。使用できる基準電極には、「標準水素電極(NHE)」としても知られる標準水素電極(SHE)、飽和カロメル電極(SCE)、銅−硫酸銅(II)電極、および銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極が含まれる。いくつかの実施形態で、十分な塩素が銀電極またはその付近に存在する場合には、銀電極が銀/塩化銀電極として働くことができる。場合によっては、例えば非水媒体中で、白金などの金属電極、または銀電極を基準電極として使用することができる。
【0159】
ボルタンメトリーを実施するために、システムは一般に、複数の電位を供給する電源を有する。ボルタンメトリーは、例えばサイクリックボルタンメトリー、パルスボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、リニアボルタンメトリー、または矩形波ボルタンメトリーとすることができる。複数の電位を供給する電源はポテンシオスタットとすることができ、例えば矩形波ボルタンメトリー用の矩形波を加えることができるポテンシオスタットとすることができる。
【0160】
一般に、検体濃度は、ボルタンメトリーを用いて、酸化還元活性部分の還元電位または酸化電位を示す電流ピークの位置を特定することによって決定される。いくつかの実施形態では、検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位の位置を用いて検体の濃度を決定する。この方法は、例えば、検体不感応酸化還元活性部分が使用されない場合に使用することができる。
【0161】
検体不感応酸化還元活性部分が使用される場合、検出は一般に、固定化された酸化還元活性部分の酸化(または還元)の電流ピークと関連する電位差デルタEを測定することによって実施され、この場合デルタEの大きさは、溶液中の検体、例えば水素イオン(H+)の濃度と関係づけることができる。検体不感応酸化還元活性部分では、媒体の変化に感応しない電気化学反応が得られ、基準としての役割を果たす。基準および指示薬の酸化または還元に対する電流ピークは、対電極を使用してボルタモグラムから決定される。
【0162】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、電流を測定するデバイスと通信する計算システムを含む。この計算システムは、ボルタンメトリー測定により複数の電位で測定された電流から還元電位または酸化電位を計算するアルゴリズムを有することができる。計算システムは検知システムの一部とすることができ、場合によって、検知システムを自己完結型にすることもできる。計算システムは、センサからの生データおよび/または処理データを記憶するためのメモリーを含むことができる。計算システムは伝送デバイスに接続することができ、このデバイスは処理データを無線、有線、ファイバまたは他の手段によって外部デバイスに伝送する。計算システムは、場合によりリアルタイムで送信できる信号および測定値を提供することができ、それによってシステムは、注意が必要な状況についてエンドユーザに警告することができる。送信される信号および測定値は、例えば、化学プロセスまたは生物化学プロセスなどの製造プロセスを調整するのに必要な情報を提供することができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、システムは、半導体電極センサを収容するハウジングで構成され、この半導体電極センサは、複数の電位を供給する電源、および電流測定デバイスを含むユニットに電気的に接続される。いくつかの実施形態では、このユニットはまた、少なくとも部分的にデータを分析する上記の計算システムも含む。ユニットは、例えばバッテリを備えた電源内蔵型とすることができ、あるいは外部電源への接続部を有することができる。ユニットは、ユーザが測定を制御し、センサからの出力を読み取ることができるように、ディスプレイおよび入力ボタンを有することができる。ユニットは、データを送出し命令を受け取るための、あるいは外部デバイスによって試験するための伝送機能を有することができる。
【0164】
図1は、生物化学リアクタ内の液体など、液体中の検体を測定する際に使用するセンサハウジング中に半導体センサ電極を接続する実施形態の図を示す。図1(a)は、ボルタンメトリー測定用の半導体電極センサを保持するとともに半導体電極センサへの電気的接続を行うアセンブリの分解図を示す。図1(a)で、半導体電極センサ(I)は、端部キャップ(II)によって金属化セラミック円板(III)に接触して所定の場所に保持される。このセラミック円板は、円板の前面と後面の両方の特定の領域内を金属化することができ、特定の金属化領域がビアで接続される。セラミック円板の一方の面に、半導体作用電極ならびに対電極、および任意選択で基準電極が存在することができる。例えば、半導体作用電極などの各電極は、特定の金属化領域にそれぞれ取り付けることができる。次に、円板は、電極を有する円板の面が、プローブが浸漬される媒体にさらされ、円板の他方の面が媒体から離れるようにハウジング内に取り付けられ、それによって、電圧を印加することができ、電極との間に電流が流れることができるように円板上の金属化領域への電気的接続が可能になる。封止ガスケット(IV)により、ハウジング(VI)のシャフト上のピン接点(V)と電気的に接触させながら、センサが浸漬される液体に対し封止する。図1(b)は、測定されるべき液体中に挿入するための組み立てられたハウジングを示す。ボルタンメトリー測定用の半導体電極への電気的接続を行うワイヤを封入するために、管継手が使用される。
【0165】
図2は、複数の電位を供給する電源および電流測定デバイスを含むユニットの一実施形態の図を示す。図2(a)は上面図を示し、図2(b)は後面図を示す。このユニットは、ボルタンメトリーを実施するための電極に接続する電気的な入力/出力コネクタを有する(4/20mA I/O)。ユニットは、交流電源用接続部を有する。ユニットは、データを送信し、命令を受け取り、また外部デバイスによって試験しデバッグするために、ユニバーサルシリアルバスインターフェース(USB I/F)およびRS−232シリアルポートを有する。ユニットはまた、ユーザが測定を制御し、センサからの出力を読み取ることができるように液晶ディスプレイ(LCD)を備え、またユーザインターフェースボタンを有する。
【0166】
図3は、本発明のシステムの一態様の別の例示的実施形態を示す。図3は、2つの半導体(シリコン)作用電極、基準電極、および対電極を含むプローブを示す。これらの電極は、複数の電位を作用電極、対電極、および任意選択で基準電極に供給する電源と、作用電極によって電流を複数の電位で測定するデバイスとにプローブを介して電気的に接続することができる。この実施形態では、2つの作用電極、基準電極、および対電極は、プローブの端部で円板上に収容され、それにより電極が、測定されるべき検体(1つまたは複数)を含む媒体と接触することができる。様々な電極の面積を変えてシステムの性能を改善することができる。この実施形態では2つの作用電極を示すが、いくつかの実施形態では1つの作用電極があり、他の実施形態では3個、4個、5個、10個、20個、またはそれを超える作用電極がある。いくつかの実施形態では、一方の作用電極が、pHに感応するアントラセンなどの酸化還元活性部分を有する半導体表面を含むことができ、他方の作用電極が、pHに感応しないフェロセンなどの酸化還元活性部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、アントラセンなどのpH感応部分が上に結合された半導体表面が、低ドープされたシリコンウェハを含み、フェロセンなどのpH不感応部分が上に結合されたシリコン表面が、より高ドープされたシリコンウェハを含む。
【0167】
半導体作用電極は、円板上の導電領域に接合することができる。円板を貫通する導電ビアにより、ハウジング内に収容された電極ピンへの電気的接続が可能になる。これらの電極ピンは、例えばワイヤに電気的に接続され、このワイヤは、プローブハウジング中を通ってからハウジングの外に出て、電極に電位を印加する電源と、電極を通過する電流を測定するデバイスとに電極を接続することができる。ねじ山、Oリング、および六角ボディにより、プローブをバイオリアクタまたは発酵槽などのリアクタ内に取り付けることができる。ねじ山によりプローブは、リアクタの壁を貫通した対応するねじ切り孔とはめ合わせることでき、このプローブを六角ボディでリアクタ内にしっかり締めることができ、ガスケットは封止の確立を助ける。いくつかの実施形態では、ユニットは、ねじ山を使用せずにリアクタ内に取り付けられ、ねじ山なしで取り付けると、ねじ山が使用された場合に存在するいくつかの故障モードを防止することができる。
【0168】
いくつかの実施形態では、システムは、インラインセンサとして工程で使用されるように構成される。インラインセンサは、進行中の工程で使用されるセンサとすることができる。いくつかの実施形態では、センサは容器内にあり、別の実施形態では、センサは処理液体が流れる導管またはパイプ内にある。いくつかの実施形態では、ボルタンメトリーによって複数の電位で測定された電流を用いて検体濃度を決定し、この決定された検体濃度を用いてプロセスパラメータを制御する。本発明のシステムは、堅牢に、かつ汚損に耐えるように作製することができる点で、また化学反応などの過程のように特性が変化する媒体中で長期間検体濃度を測定することができる点で、インライン検知に有用である。
【0169】
半導体電気化学センサを作製する方法
本発明の一態様は、電気化学センサを作製する方法である。この方法は一般に、表面を備えた半導体基板を有すること、ならびに検体に感応する還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分を半導体表面に固定化することを含む。
【0170】
本発明の一態様は、半導体表面を有する検体感応半導体電極を形成する方法であり、この方法は、検体の存在に感応する酸化還元活性部分を半導体表面に固定化することを含む。
【0171】
本センサの一部として有効な上記の半導体表面を構築するには、当技術分野で知られているもの、または本明細書に開示したものなど、任意の適切な方法を用いることができる。酸化還元基は、化学的または物理的に表面に固定化することができる。酸化還元基は、半導体表面と反応させて半導体に共有結合させることができる。別法として、酸化還元活性基は、半導体に吸着させることもできる。酸化還元活性基はまた、表面に共有結合または非共有結合するポリマーにその基を結合することによって固定化することもできる。酸化還元基、あるいは酸化還元基を一部分とするポリマーが表面に共有結合することは、電極の寿命および安定性の改善に有益でありうる。
【0172】
シリコンまたはゲルマニウムなどの半導体への官能基の共有結合の方法が知られている。シリコンは、例えば、炭素と共有結合を形成し、したがって炭素ベースの分子で官能性を持たせるのに望ましい基板である。表面との共有結合は、半導体、例えばシリコンと、炭素、酸素、窒素、硫黄、または他の原子との間の結合により可能である。いくつかの実施形態では、表面との結合部は半導体、例えばシリコンと、炭素の間にある。いくつかの実施形態では、表面との結合部は半導体、例えばシリコンと、酸素の間にある。
【0173】
いくつかの実施形態では、半導体表面との共有結合による酸化還元活性部分の固定化は、水素化半導体、例えば水素化シリコン(Si−H)表面との反応によって実現される。水素化半導体、例えば水素化シリコン表面は、例えば半導体を処理することによって、例えばシリコン表面を、例えば自然酸化状態にある表面をフッ化水素酸(HF)で処理することによって得ることができる。例えば、希釈(1〜3%)HF水処理、または40%NHF水処理を用いてSi−H終端表面を生成することができる。HFを含む標準的な手順によってエッチングされる場合、多孔性シリコンもまた、Si−H表面として使用することができる。図4は、HFの2.5%水溶液でウェハを処理することにより、シリコンウェハ上で自然酸化表面をSi−H表面に変換することを概略的に示す。Si−H表面はまた、他のプロセスによって、例えば米国特許第6,444,326号に記載のシランの分解によって形成することもできる。Si−H表面はまた、ゾルゲル型方法(例えば米国特許第5,017,540号および第5,326,738号参照)により表面シラノール部分をトリヒドロキシヒドリドシランなどの試薬と反応させることによって形成することもできる。水素化ゲルマニウム(Ge−H)表面でSi−Hと同じ種類の反応をさせて、共有結合された酸化還元活性試薬を生成することができる。Si表面またはGe表面に共有結合する適切な反応は、例えば、J.M.Buriak、Chem.Review、2002年、102(5)、1271頁に記載されている。他の半導体基板の水素化物もまた、酸化還元活性部分を共有結合するように調製し使用することができる。適切な水素化半導体には、シリコンゲルマニウムの水素化物(M.S.Carroll他、J.Electrochem Soc.、2000年、147(12)、4652頁)、ヒ化ガリウム(P.E.Gee他、J.Vacuum Sci.Tech.A:Vacuum Surf.Film、1992年、10(4)、892頁)、窒化ガリウム、ダイヤモンド薄膜(S.Yamashita他、米国特許第5,786,604号(1998年))、およびリン化インジウム(Y.Sun他、J.Appl.Phys.、2005年、97、124902)が含まれる。
【0174】
水素化半導体表面、例えばSi−H表面は、様々な官能基と反応させて共有結合を生成し、それによって半導体表面に酸化還元活性部分を結合することができる。Si−H表面、Ge−H表面または他の半導体−H表面では、例えば、不飽和部位にわたってSi−Hを付加することを含むヒドロシリル化反応に関与して、表面とのSi−C、Si−O、またはSi−N結合を形成することができる。ヒドロシリル化を含むこれらの反応で使用できる官能基には、アルケン、アルキン、イミン、カルボニルおよびオキシムが含まれる。ヒドロシリル化を含むこれらの反応は、金属触媒またはラジカル開始剤を用いて熱的、光化学的に実施することができる(Buriak、Chem Commun、1999年、1051〜1060頁参照)。Si−H表面または他の半導体−H表面もまた、例えばグリニャール試薬またはリチウム試薬によって、アルキルカルボアニオンまたはアリルカルボアニオンと反応させることができる。いくつかの実施形態では、Si−H表面または他の半導体−H表面は、アジド基、ジアゾ基、およびジアゾニウム基と反応することができる。適切なジアゾニウム反応は、例えば、Stewart他、J.Am.、Chem.Soc.126、2004年、370〜378頁に記載されている。
【0175】
図5は、Si−O結合によって共有結合性フェロセンを生成する、フェロセン酸化還元活性部分に結合されたアルデヒド官能基と表面Si−Hの反応を示す。図5はまた、Si−C結合によって共有結合性フェロセンを生成する、フェロセン酸化還元活性部分に結合されたビニル官能基と表面Si−Hの反応も示す。図6は、Si−O結合によって共有結合性アントラセンを生成する、アントラセン酸化還元活性部分に結合されたアルデヒド官能基と表面Si−Hの反応を示す。図6はまた、Si−C結合によって共有結合性アントラセンを生成する、アントラセン酸化還元活性部分に結合されたビニル官能基と表面Si−Hの反応も示す。図7は、水素イオンに感応する共有結合性酸化還元基(アントラセン)と、水素イオンに感応しない共有結合性酸化還元基(フェロセン)を有するシリコン表面を生成する、フェロセン酸化還元活性部分とアントラセン酸化還元活性部分の両方のビニル官能基による反応を示す。いくつかの実施形態では、アルデヒド基などのカルボニル基は、表面との結合を行うためにビニル官能基で置換される。
【0176】
酸化還元活性部分は、別法として、すべての官能基が通常は高温および真空によって除去された半導体、例えばシリコン表面との直接反応によって、表面に共有結合させることができる。例えば純シリコン表面は、例えばアルケンおよびアルキンと直接反応してSi−C共有結合を形成することができる。(Bateman他、Angew.Chem.Int.Ed.、1998年、37(19)、2683〜2685頁参照)。ジアゾニウム種もまた、熱または電気化学により表面に官能性を持たせるのに使用することができる。いくつかの実施形態では、超高真空技術を用いて、再構築Si表面との例えばアルキンとアルキンの[2+2]反応、またはジエンのディールス−アルダー反応([4+2])によって、本発明の官能性を持たせた表面を調製することができる。
【0177】
アルキルシラン、アルコキシシラン、クロロシランを用いた、シリカおよびガラスの表面などの酸化半導体表面のキャッピングもまた、半導体表面に官能性を持たせるのに使用することができる。
【0178】
半導体表面では、ヒドロキシ官能基(自然酸化物)を含む酸化物官能基を含有することができる。いくつかの実施形態では、本発明の半導体電極は、この酸化物官能基との共有結合によって修飾される。例えば、シリコンまたは他の半導体元素のヒドロキシ基は、例えばエステルおよびエーテルの形成を含む、炭素結合ヒドロキシ基に関し有機化学で知られている多くの反応を用いて、表面結合基に結合させることができる。1つの誘導体化方法には、表面に結合するためにカルボジイミドを使用することが含まれる。例示的なカルボジイミドには、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、または(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロライド)(EDC)が含まれる。
【0179】
酸化還元活性部分はまた、半導体表面の自然酸化物−Oまたは−OHとの反応によって、表面に共有結合させることもできる。様々な官能基を介して共有結合を形成するためにこのような反応を実施する多くの方法が知られている(Maoz他、J.Colloid.Interface Sci.、1984年、100、465〜496頁参照)。いくつかの実施形態では、間接的な手法を用いることができ、この手法では、別の反応性官能基を含むアルコキシシランを半導体表面の−O基または−OH基と反応させて、アルコキシシランを半導体表面に共有結合する。次に、アルコキシシラン上の別の反応性官能基を用いて、酸化還元活性部分を表面に共有結合させることができる。これらの実施形態では、アルコキシシランがリンカー、またはリンカーの一部分になることができる。別の反応性官能基は、酸化還元活性部分を結合するのに使用できるどんな反応性官能基でもよい。この官能基は、例えばオレフィン基、アセチレン基、アミン基、メルカプタン基、またはエポキシ基とすることができる。アルコキシシランを酸化還元活性部分に結合するのに用いられる反応には、例えば、ディールス−アルダー反応、マイケル付加、クリックケミストリー、またはエポキシ化学がありうる。酸化還元活性部分を含む半導電性ポリマーは、表面に重合させること、表面にグラフト重合させること、光重合させること、あるいは表面に前もって形成しキャスティングすることが可能である。
【0180】
いくつかの実施形態では、官能基を半導体表面に共有結合する上記の各反応は、後続のステップで酸化還元活性部分を表面に共有結合させるのに使用できる化学官能性を有するリンカー基またはリンカー基の一部分を結合するのに用いられる。
【0181】
酸化還元活性部分を半導体表面に共有結合するのに用いることができる反応には、ヒドロシリル化、遊離基反応、カルボジイミド結合、ディールス−アルダー反応、マイケル付加、エポキシ反応、またはクリックケミストリーが含まれる(Evans他、Australian Journal of Chemistry 60(6):384〜395頁(2007年)参照)。
【0182】
本発明の有機半導体基板は、いくつかの実施形態で、有機半導体の形成の後で酸化還元活性種を結合するように修飾することができる。例えば、有機半導体を薄膜に成型することができる。いくつかの実施形態では、有機半導電性ポリマー、例えばポリアナリン、ポリピロール、およびポリチオフェンが化学的酸化または電気化学的酸化によって調製される。それに続いて半導電性ポリマーは、例えば無機半導電性基板に酸化還元活性剤を結合することに関して記述した化学種を用いて修飾することができる。いくつかの実施形態では、半導電性ポリマーは、酸化還元活性種を半導電性ポリマーに結合するのに使用できる官能基を含むことができる。例えば、ポリ(アニリンスルホン酸)のスルホン酸基は、スルファミド形成を介してアミノフェロセン、1,1’−ジアミノフェロセン、およびアミノアントラセンを固定化するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、ピロール、チオフェンまたはアナリンのモノマーが、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、カルボン酸基、あるいは反応性のビニル基またはアリル基などの官能基を有することができる。次に、これらのモノマーを重合させること、例えば電子重合させることができ、酸化還元活性部分は、この重合したモノマー上の官能基に結合させることができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分は、半導電性ポリマー自体に、例えばポリマーの骨格の一部として取り込むことができる。例えば、酸化還元活性部分を主鎖中に含むポリ(フェロセニルビニレンフェニレンビニレン)、ポリ(フルオレン)、およびポリ(カルバゾール)中の酸化還元活性基は、検体すなわちpHの検知に用いることができる。
【0184】
場合によっては、半導体の表面は、金属または金属酸化物などの導電化合物で表面をコーティングすることによって修飾することができる。いくつかの実施形態では、半導体は金、銀、パラジウム、銅、白金、または他の金属でコーティングされる。これらの金属は、溶液から例えば電着によってコーティングすることができ、あるいはプラズマ堆積または金属気化などの真空技術によって表面にコーティングすることができる。半導体表面は、インジウム−スズ酸化物などの導電性または半導電性の酸化金属化合物でコーティングすることができる。これらの材料が半導体電極表面にコーティングされた場合、酸化還元活性剤は、半導体電極上の層に結合することで半導体電極に結合する。
【0185】
リンカー基が使用される場合、リンカーは小さな、例えば1〜3原子とすることができ、あるいはそれより長い、例えば20〜100原子とすることができる。リンカーはまた、小さなリンカーと大きいリンカーの間の任意のサイズとすることもできる。いくつかの実施形態では、リンカーが比較的短いために酸化還元活性部分が表面に近接することができ、電子の移動に有利になりうる。いくつかの実施形態では、リンカーは、酸化還元活性剤が半導体の表面から1原子、2原子、3原子、4原子、5原子、6原子、または7原子離れて保持されるように与えられる。短いリンカーが使用される場合には、酸化還元活性部分は表面近くに保持される。より長い原子団が使用される場合には、酸化還元活性部分は、表面から離れて例えばさらに溶液中に移動できることもある。リンカー基は、親水基、疎水基、またはそれらの混合物を含むことができる。リンカー基は、例えば、炭化水素基、アルケン基、アルキン基、エステル基、エーテル基、アミド基、アミン基、カルボニル基、チオール基、オレフィン基、シリコーン基、あるいは他の有機、無機または有機金属の基を含むことができる。リンカー基は、遊離基重合またはアニオン重合など、重合反応またはオリゴマー化反応によって形成することができる。リンカー基は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはアクリルアミドの繰返し単位を含むことができる。リンカーは、芳香環を含む環構造を有することができる。リンカー構造の変化を用いて、溶液中の酸化還元活性部分の移動度を変えることができる。リンカーがあまりに長く、また密に詰められている場合には、酸化還元活性部分が、電極表面への電子の移動が損なわれるほど表面から十分遠くに離れる可能性がある。こうした場合では、導電性のあるリンカーを有することが有効になりうる。
【0186】
酸化還元活性部分は高度に置換されることがあるが、それでもなお酸化還元活性部分として働くことができる。したがって、例えば、酸化還元活性部分のフェロセンには、置換フェロセン、フェロセンポリマー、およびリンカー分子を介して表面に共有結合されたフェロセンが含まれる。
【0187】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分をポリマーに組み込むことができ、酸化還元活性部分を含むこのポリマーは、半導体表面に固定化することができる。ポリマーの固定化は、化学的または物理的なものが可能である。ポリマーの固定化は、共有結合により、または半導体表面へのポリマーの吸着により可能である。
【0188】
酸化還元活性部分は、半導体表面に固定化できるどんな種類のポリマーにも組み込むことができる。酸化還元活性部分を組み込むことができるポリマーの種類には、RNA、DNAまたはタンパク質などのバイオポリマー、導電性ポリマー、フルオロポリマー、ポリテルペン、無機ポリマー、フェノール樹脂、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリケトン、ポルスルホン、およびビニルポリマーが含まれる。
【0189】
酸化還元活性部分を含むポリマーは、場合により、半導体表面で生成することができる。例えば、酸化還元活性部分を含むモノマーまたはオリゴマーを表面の領域内で重合させて、表面近くにポリマーを生成することができる。場合によっては、重合を半導体表面で開始して、その表面に共有結合されたポリマーを得ることができる。表面での重合は、例えば、半導体表面に結合されたジアゾ基により開始される遊離基反応によって開始させることができる。他の場合では、重合は、新生ポリマーが形成されるときにそれが表面に固定化されるように、溶液内で、例えば表面近くで開始させることができる。適切な溶媒条件を決定する方法が知られている。例えば、モノマーおよび/またはオリゴマーが可溶性であり、ポリマーが非可溶性であることを確立することによって、表面堆積を生じさせることができる。半導体表面は重合可能官能基を含むことができ、この官能基は、酸化還元活性部分を含むモノマーまたはオリゴマーと共重合でき、その結果、酸化還元活性部分を半導体表面に共有結合することになる。
【0190】
いくつかの実施形態では、酸化還元活性部分を含むポリマーは、半導体表面で電子重合させることができる。例えば、酸化還元活性部分を含むモノマーが溶液に加えられ、半導体表面を介して電流が供給されて、モノマーの電子重合が引き起こされる。いくつかの実施形態では、この電子重合の結果、電子重合されたポリマーが半導体表面に共有結合することが可能になる。他の実施形態では、電子重合により、例えば半導体−溶液界面で重合することが可能になり、形成されたポリマーが半導体表面に堆積することができ、その結果、ポリマーの固定化が表面への物理吸着によって起こる。ポリマーは、表面に重合させること、表面にグラフト重合させること、光重合させること、あるいは表面に前もって形成しキャスティングすることが可能である。
【0191】
ポリマーは、化学的または電気化学的に、電気化学的に検出できる方法で可逆に信号に応答して、個々のマイクロ電極上に堆積させ、重合させることができる。他のこのような材料については、R.W.MurrayがElectroanalytical Chemistry、vol.13、A.J.Bard監修(Marcel Dekker、ニューヨーク、1984年)に記述している。同文献の教示をはっきり限定して本明細書に組み込む。
【0192】
いくつかの実施形態では、ポリマーは半導体表面から離れて形成され、後でそこに固定化される。ポリマーは、溶液からの吸着、スピンコーティングおよびディップコーティングを含むコーティング、吹付け、印刷、電気塗装、または電着を含む様々な方法によって、表面に固定化することができる。
【0193】
いくつかの実施形態では、半導体電極は、H終端半導体表面を1つまたは複数の酸化還元活性部分と接触させることによって形成され、少なくとも1つの酸化還元活性部分が検体の存在に感応し、各酸化還元活性部分は、H末端半導体表面と反応して共有結合を形成し、それによって誘導体化半導体表面を形成することになる官能基を含む。いくつかの実施形態では、表面は少なくとも2つの酸化還元活性部分を含み、これら酸化還元活性部分の一方は、検体の存在に感応しない。
【0194】
構成物およびデバイスの使用
本発明の一態様は、検体の濃度を決定する方法である。一実施形態では、この方法は、前記検体に接触して電極を配置するステップであって、前記電極が、検体感応酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を有する半導体基板を含み、前記検体感応酸化還元活性部分が、検体の濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を示すステップと、電極に複数の電位を印加するステップと、電極を通る電流を複数の電位で測定して検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位を決定し、それによって検体の濃度を決定するステップとを含む。
【0195】
一態様では、この方法は、検体の濃度を(a)前記検体に接触させて、検体の濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を示す検体感応酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面がある半導体基板を含む電極を配置すること、(b)電極に複数の電位を印加すること、および(c)電極を通る電流を複数の電位で測定し、検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位を決定し、それによって検体の濃度を決定することによって、決定するステップを含む。
【0196】
検体の濃度を決定するこの方法は、上記のように水素イオンに感応する酸化還元活性部分を利用することによって、pHを測定するのに使用することができる。
【0197】
複数の電位で電流を測定することで、表面に固定化された1つまたは複数の酸化還元活性部分の酸化電位および、または還元電位を決定するボルタンメトリーを実施することが可能になる。この方法で使用されるボルタンメトリーは、例えばサイクリックボルタンメトリー、パルスボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、リニアボルタンメトリー、または矩形波ボルタンメトリーとすることができる。複数の電位を供給する電源はポテンシオスタットとすることができ、例えば矩形波ボルタンメトリー用の矩形波を加えることができるポテンシオスタットとすることができる。
【0198】
測定周波数は、データの品質に影響を及ぼすことがある。いくつかの実施形態では、矩形波ボルタモグラムは現在、ステップ高が2mV、振幅が25mV、および周波数が10Hzである。場合によっては、周波数を高くすることが有利になる。例えば、周波数を500Hzまで高くすると、スキャン速度がより速くなる可能性がある。場合によっては、より高い周波数で、観測される電流のレベルが高くなることが認められた。場合によっては、ピーク電流が、例えば動作周波数を高くするとより大きい負の電位にシフトすることもある。場合によっては、電位を高い周波数で変化させると、矩形波ボルタモグラムでノイズが多くなることがある。場合によっては、光が背景ノイズの一因となる場合があるので、電極を光から遮蔽することが有利である。
【0199】
この方法は、さらに、検体に実質的に感応しない還元電位および/または酸化電位を有する検体不感応酸化還元活性部分を含むことが多く、さらに、検体不感応酸化還元活性部分の酸化電位および/または還元電位を決定すること、および検体感応部分の酸化電位および/または還元電位と、検体不感応部分の酸化電位および/または還元電位との差から検体の濃度を決定することを含む。
【0200】
一般に、検体濃度は、ボルタンメトリーを用いて、酸化還元活性部分の還元電位または酸化電位を示す電流ピークの位置を特定することによって決定される。いくつかの実施形態では、検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位の位置を用いて検体の濃度を決定する。例えば、基準電極の電位に対する電流ピークの位置を用いることができる。この方法は、例えば、検体不感応酸化還元活性部分が使用されない場合に使用することができる。
【0201】
検体不感応酸化還元活性部分が使用される場合、検出は一般に、固定化された酸化還元活性部分の酸化(または還元)の電流ピークと関連する電位差デルタEを測定することによって実施され、この場合デルタEの大きさは、溶液中の検体、例えば水素イオン(H+)の濃度と関係づけることができる。すなわち、多くの実施形態において、デルタEは、検体感応酸化還元活性部分と検体不感応酸化還元活性部分の間の還元電位および/または酸化電位の電位差を表す。媒体の変化に感応しない電気化学反応をする検体不感応酸化還元活性部分は、基準としての役割を果たす。基準および指示薬の酸化または還元に対する電流ピークは、対電極を使用し、基準電極は必要とせずに、ボルタモグラムから決定することができる。
【0202】
この方法は、検体の濃度を決定するのに、複数の電位で測定された、電極を通る電流を用いる必要がある。測定された電流(例えば電流ピーク)を用いて濃度を決定することは、電流測定用のデバイスと通信する計算システムを使用することによって実現することができる。この計算システムでは、ボルタンメトリー測定による複数の電位で測定された電流から還元電位または酸化電位を計算するアルゴリズムを適用することができる。計算システムは検知システムの一部とすることができ、場合によって、検知システムを自己完結型にすることもできる。計算システムは、センサからの生データまたは処理データを記憶するために、そのメモリーを利用することができる。この方法はさらに、計算システムとセンサの間での伝送デバイスを介した通信を含むことができ、この伝送デバイスは、処理データを無線または有線によって外部デバイスに伝送する。
【0203】
この方法を実施するには通常、少なくとも1つの別の電極(対電極)を使用することが必要である。この対電極を使用して、本明細書に記載の測定を行うための電気化学回路を完成する。対電極は一般に、その電位が測定中に著しく変化しないように、媒体に対し化学的に不活性な材料でできている。多くの応用例で適切な材料としては、白金、金、ステンレス鋼、および炭素が含まれる。場合によっては、対電極は、半導体センサ電極も含むチップに組み込むことができる。
【0204】
基準電極は任意選択であり、検体濃度を測定する方法のいくつかの実施形態において追加電極として使用される。3電極システムの場合では、一般に対電極により回路が完成し、それによって電流がセルを通って流れることができ、一方で基準電極は、その電流に関係なく一定の界面電位差を維持する。システムが検体感応酸化還元活性部分および検体不感応酸化還元活性部分を含む場合、検体不感応酸化還元活性部分は基準として機能することができ、それによって電位差を用いて検体濃度を決定することができる。検体不感応部分もまた使用される場合でも、いくつかの実施形態では、基準電極がなお使用される。いくつかの実施形態では、疑似基準電極もまた利用することができる。使用することができる基準電極については前述している。
【0205】
多くの実施形態で、試料は液体試料であり、各電極は、それぞれこの液体と接触している。場合によっては、試料は液体ではなく、一般に固体電解質を含む固体であり、あるいは気体である。
【0206】
いくつかの実施形態では、この方法は、工程のインライン検知を含む。インラインセンサは、進行中の工程で使用されるセンサとすることができる。いくつかの実施形態では、この方法は、容器内のセンサを使用することを含み、別の実施形態では、このセンサは処理液体が流れる導管またはパイプ内にある。いくつかの実施形態では、この方法は、ボルタンメトリーによって複数の電位で測定された電流を用いて検体濃度を決定することを含み、この決定された検体濃度を用いてプロセスパラメータを制御する。本発明のシステムは、堅牢に、かつ汚損に耐えるように作製することができる点で、また化学反応、生物化学反応または発酵などの過程のように特性が変化する媒体中で長期間検体濃度を測定することができる点で、インライン検知に有用である。
【0207】
遠隔監視の一態様は、自動的に読取値を取り込むようにセンサをプログラムできることである。自動読取りは、周期的に行われるように、何かの事象が起こると行われるように、またはセンサが入力要求されたときに行われるようにプログラムすることができる。周期的な事象は、数秒程度から数カ月程度までに分けることができる。何かの事象が起こるのは、例えば、測定される溶液がある体積レベルに達する時点、あるいは製造工程の各ステップでの所与の点(例えばステップの開始時または終止時、あるいは容器に試薬を加えるとき)でありうる。
【0208】
遠隔監視は一般に、遠隔検知ユニットからの通信、および/または遠隔検知ユニットへの通信を含む。遠隔検知ユニットとの間の通信は、伝送線を用いて、かつ/または無線で行うことができる。例えばデジタル、アナログ、広帯域、狭帯域、またはそれらの組合せを含むどんな種類の信号も使用することができる。
【0209】
本発明の一態様は、諸プロセスにおけるプロセス管理の一部としての、半導体電極を用いたpHのボルタンメトリー監視である。一実施形態では、ボルタンメトリーpH測定が工業プロセスストリームで行われ、その測定によるpH値が、プロセスパラメータの調整について判断するための入力として使用される。一実施形態では、半導体電極を用いたボルタンメトリーpH測定によるpH値は、1つまたは複数の成分をプロセスに加えるべきかどうかを判断するために、かつ/またはその成分をどれだけ加えるかを判断するために使用される。いくつかの実施形態では、pH値は、プロセスの一部分において、例えば、酸性成分または塩基性成分の追加について判断するための入力としてpHを制御するために使用される。いくつかの実施形態では、pH値は、プロセスがある特定の段階に達したかどうか、例えば反応が完了しているかどうかを判断するために使用される。いくつかの実施形態では、pH値は、生物を含む反応に対し、その生物の健康および生産性を維持するための栄養素または他の成分の追加を決定するのに使用される。
【0210】
プロセス制御ステップは、センサからの所与のpH測定値により、人の介入なしでプロセスパラメータを変化させるように自動化することができる。別の実施形態では、人がpH測定値を観測し、その情報を用いてプロセスパラメータを変化させる決定を行う。
【0211】
プロセス制御ステップは、半導体電極を用いたボルタンメトリーpHシステムによって制御することができ、このシステムは、センサ、電圧源、電流測定検出器、および電流測定値からpHを決定するコンピュータを有する。ボルタンメトリーpHシステムは、プロセス制御システムまたはオペレータと、アナログまたはデジタルの手段によって、有線接続、無線接続、ファイバ、またはそれらの組合せで通信することができる。
【0212】
本発明の一態様は、半導体電極を用いたボルタンメトリーpH検知の方法であり、そのpHセンサは、較正の必要がほとんどない。本発明の一態様では、pHセンサは、較正の必要が実質的にない。
【0213】
半導体電極を用いたボルタンメトリーpH検知を使用することには、いくつかの利点がある。例えば、本発明のセンサは一般に、固体センサを使用する。本発明のセンサは、較正が必要にならないように、組込み内部標準液を有する。本発明のセンサは、破損しにくいように物理的に堅牢に構築することができる。本発明のセンサは、汚損の影響を比較的受けないように作製することができる。本発明のセンサは、エチレンオキシドにさらすこと、紫外線安定化、ガンマ照射、電子ビーム照射、および温度処理などの化学殺菌に耐えるように構築することができる。本発明のセンサは、オートクレーブ内で受けるような圧力のもとで高湿度および高温の処理に耐えるように構築することができる。
【0214】
半導体電極を用いたボルタンメトリーpH検知方法には、ステンレス鋼製リアクタ、ガラス製リアクタ(例えば製品開発用)、および使い捨てリアクタ(例えばプラスチック製試薬袋)で、例えばWave Biotech、Hyclone、Xcellerex、およびStedimなどの製造者によって記述されたリアクタの中で行われる反応が含まれる。
【0215】
本発明の一態様は、クロマトグラフィおよびタンジェンシャルフロー限外濾過を含む処理のための、半導体電極を用いたボルタンメトリーpH検知の方法を含む。
【0216】
本発明の別の態様は、薬物(薬剤)送達システムなどの遠隔監視システム内のセンサである。このようなシステムは、例えば、米国特許出願第2003/0153900号に記載されている。検体監視システム、または監視および薬物(薬剤)送達システムは、使い捨てモジュール、再使用可能モジュール、および携帯情報端末(PDA)モジュールに分割することができる。PDAは通常、携帯型装置であり、計算およびネットワーキングの機能と、出力部に例えばディスプレイを備え、入力部に例えばスタイラス、キーボードおよび/またはタッチスクリーン機能を備えたユーザインターフェースとを有する、例えば手持ち型デバイスである。この構成では、これら3つの構成の間で機能を最適に配分して、特定の利点を実現する。しかし、本発明はこの構成に限定されない。例えば、すべての電子回路、マイクロニードル、化学物質、センサ、機構、およびユーザインターフェースを含む1ユニットの使い捨てデバイスを代替方法として使用することができる。あるいは、より適切なことに、本発明の設計では、1つまたは複数のシステムモジュールの間で構成要素をどのようにも配分することができる。例えば、各構成要素は、システム全体のコスト、ユーザの安全、および/または性能関連事項に基づき、1つまたは複数のモジュールの間で分配することができる。
【0217】
使い捨てモジュールは、1度使用されたら安全および精度を維持するために廃棄されなければならない構成要素を含む。このモジュールは、完全性、無菌性、および/またはあらゆる再使用可能構成要素との電気機械的インターフェースを維持するためのどんな構造要素または機械要素も含むことが好ましい。したがって、このシステムモジュールは、例えば、マイクロニードル、マイクロ流体アセンブリ、膜、試薬化学物質、および付随するハウジング材料を含みうる。生物学的流体に接触するセンサの一部分は、例えば、使い捨てモジュールの一部とすることができる。このモジュールはまた、本体との密着を確立し維持するための機構を保持することを含み、それによって、検体監視/薬物(薬剤)送達システムの機械的保持を実現することができる。
【0218】
再使用可能モジュールは一般に、制御し、動きを自動化し、検体濃度を測定し、ユーザに警告し、PDAモジュールにデータを伝送する諸構成要素を含む。このモジュールはまた、保持機構を含むこともできる。一般に、このモジュールは、付随回路(例えばメモリ、支持電子回路など)を有するマイクロプロセッサと、例えば電圧供給および電流測定デバイスを含む検知回路と、モータなどの駆動機構と、電源(例えばバッテリ)と、携帯型計算デバイスまたはPDAと通信するように動作可能なインターフェースとを含む。このインターフェースは、無線周波、磁性または誘導性、光学式などとすることができる。再使用可能モジュールはまた、ユーザ操作介入が要求されていることをユーザに知らせるための可聴警報器または振動警報器を有することもできる。
【0219】
PDAモジュールは一般に、携帯情報端末(PDA)、手持ち型コンピュータなどの携帯型計算デバイスを介してデバイスを制御し、かつ/またはそれと対話するための別個のユーザインターフェースを含む。典型的な携帯型計算デバイスは、プロセッサと、メモリと、付随回路と、ディスプレイ(例えば単色またはカラーLCD)と、キーパッド、タッチスクリーン(例えばディスプレイと一体化されている)などの入力デバイスと、オペレーティングシステムとを含む。ディスプレイは、測定されるべき検体の値を示すことができ、検体の測定レベルにどのように応答するかについての指示をユーザに与えることができ、あるいは検体の測定レベルに応答してどんな自動処置が取られたかをユーザに伝えることもできる。
【0220】
現在、改善されたオペレーティングシステムソフトウェアおよびユーザインターフェースを備えた携帯型計算デバイスは、容易に入手することができる。これらのデバイスは、豊富で拡張された機能を得る可能性をもたらす。例えば、典型的なPDAは、比較的大きいスクリーンを含み、また無線通信機構、高度なオペレーティングシステム、および様々なビジネスおよびパーソナルソフトウェア(暦、予定表作成など)を含むこともできる。本発明は、好ましくは、改善されたユーザインターフェースと共に自立操作用の固有ソフトウェア(プログラム)を提供するPDAの使用を含む。
【0221】
例えば、PDAモジュールは、薬剤のレベルまたは挙動をより最適なレベルにより最適に調整するように患者ユーザを援助するための、情報に基づく判断を容易にするソフトウェアをユーザに提供することができる。このPDA構成は、ユーザインターフェースを提供し、好ましくはユーザに試験をプログラムし、または制御する能力を与える。ユーザは、個々の検体測定値を見ることができ、また検体レベルの傾向を日ごと、週ごと、または顧客指定の期間ごとにグラフで表示することができる。PDAを使用して、システムによって記録されたすべてのどんな測定値も表示することができる。適切なソフトウェアを使用して、ユーザは、薬剤レジメント(drug regiment)変更についての提案を得ることができる。場合によっては、ユーザは、自分の検体試験が行われるべき時間をプログラムすることができる。好ましくは、ユーザはまた、警報を発する上限および下限を設定することもできる。
【0222】
このシステムは、ユーザがいつでも変更を加えるようにプログラムすることができ、またユーザからの認証によって、その情報をシステムに無線でダウンロードすることができる。日中、ユーザは、検体読取値を調べるようにシステムによって警告されない限り、PDAを使用しなくてもよいこともある。ユーザは、すぐに測定を行いたい場合には、PDAから試験を開始することができる。ユーザがこの命令を選択し、それを認証して再使用可能モジュールに転送すると、PDAに確認が返される。
【0223】
一態様では、本発明は、ボルタンメトリーセンサを備えた薬剤送達カプセルを含む。いくつかの実施形態では、この薬剤送達カプセルは、本明細書に記載の半導体ベースのボルタンメトリーセンサを備える。本発明の薬剤送達カプセルは、検体の存在または量を検出することによって生物学的条件を内部で検知し、検知した検体のレベルに基づき、体(人体または動物の体)の消化管の内部で薬剤を投与する。カプセルは不活性であり、したがって飲込み可能であり、消費されずに消化管を通過することができる。1つまたは複数の検体のレベルを検知することによって、この飲込み可能な薬剤送達カプセルは、消化管の情報を検知し、あるいは他の臓器(例えば皮膚)の状態を示す消化管内の条件を検知する。ボルタンメトリー検体センサに加えて、カプセルは、より多くの種類の生物学的データを消化系を通して追跡できるように、1つまたは複数の他のセンサ(例えば化学センサ、電気センサなど)を収容する。検知されたその情報に応答して、カプセルは、遠隔送受信機から信号を送信または受信する必要なしで、また能動的な人またはコンピュータの管理なしで、消化管内に生物活性物質を投与することができる。薬剤送達カプセルは、例えば米国特許第6,929,636号に記載されている。
【0224】
ボルタンメトリーセンサを備えた飲込み可能薬剤送達カプセルは、例えば、センサ、コントローラ、メモリ、任意選択のプログラム可能論理回路、電源、マイクロアクチュエータ、薬剤収納モジュール、ならびに次のタイプの通信モジュール、すなわち無線周波、超音波および/または赤外線のうちの少なくとも1つを有する通信インターフェースを含むことができる。好ましい一実施形態では、少なくともメモリが、また好ましくはコントローラおよび/またはプログラム可能論理回路も、1つまたは複数の半導体チップの形の半導体ベース、例えばシリコンベースのモジュール上で実施される。
【0225】
いくつかの実施形態では、飲込み可能薬物送達カプセルは複数のセンサを有し、これらのセンサは、カプセルの外面に、人体内で標的になる体の状態または目標に各センサがさらされると予想される所望の所定の向きで配置される。各センサは、画像検出器など単一のタイプのセンサ、または異なるタイプのセンサ(例えば化学センサ、電気センサ、温度センサなど)を含むことができる。化学検出器は、pHまたは他の検体など、多くの検体の存在を検知する。
【0226】
本発明の飲込み可能薬剤送達カプセルは、センサとメモリの間の通信、メモリと人体外部の任意の遠隔コントローラとの間の通信、およびプログラム可能論理構成要素(1つまたは複数)との通信を調整するコントローラを有することができる。最後に、コントローラは、通信インターフェースとマイクロアクチュエータの両方を動作可能に制御することができる。コントローラは通常、論理コントローラであり、マイクロプロセッサを含む。コントローラはまた、一連の論理演算を行うことができる1つまたは複数の論理デバイス(例えば論理ゲート)を含むこともある。
【0227】
飲込み可能薬剤送達カプセルは一般に、メモリすなわち記憶デバイスを有し、これは通常、超高容量記憶デバイスであり、半導体チップ、例えばシリコンチップをベースとすることが多い。
【0228】
飲込み可能薬剤送達カプセルは一般に、薬剤収納モジュールおよびマイクロアクチュエータを有する。薬剤収納モジュールは、例えば消化管内に放出される薬剤または生物活性物質を保持するための容器である。したがって、薬剤収納モジュールはまた、カプセルの外面で開く、1つまたは複数の選択的に活動化される投与ポートも含む。マイクロアクチュエータは、薬剤収納モジュールにその内容物を放出させるように化学的に活動化される、または電気機械的に活動化される機構を有することができる。飲込み可能薬剤送達カプセルは、比較的無毒であるリチウムイオンバッテリなどの適切な電源を有する。あるいは、生体内環境に適する他の電源を使用することもできる。
【0229】
飲込み可能薬剤送達カプセルは一般に、カプセルが消化管内にある間のカプセルとの通信、および体の外部に離れて位置する遠隔送受信機との通信を容易に可能にする任意の適切な無線伝送技術(例えば超音波、無線周波など)を含む通信インターフェースを有する。しかし、カプセルが体から捕捉された後でカプセルと通信するには、無線ポートが使用されることが好ましい。同様に、無線ポートは、体内にカプセルを挿入する前に、コントローラ、メモリ、および/または論理構成要素をプログラミングするのに使用して、センサが動作しメモリと通信する方法、ならびにマイクロアクチュエータが動作しコントローラを介してメモリと通信する方法を決定することができる。
【0230】
使用の際、カプセルのボルタンメトリーセンサを含む各センサは、消化管内の検体濃度および生物学的データを検知し、この検知されたデータは、メモリに記憶するため、かつ/または、メモリおよび/または論理回路内の記憶データプロファイルと比較するためにコントローラに通される。所定の基準が満たされた後、コントローラは、マイクロアクチュエータを活動化して、薬剤収納モジュールから薬剤を消化管内に投与する。検知されたデータは、任意選択でメモリに記憶され、カプセルが消化管を出て捕捉された後に、通信インターフェースを介して取り出される。最後に、コントローラおよびメモリに追加して、またはそれらの代替として無線通信システムを任意選択で使用して、検知されたデータを評価し記憶することを容易にするとともに、選択的活動化によって適切な時間に薬剤を投与することができる。
【0231】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、塗料および仕上げ接着を強化するコーティング、クリーナおよびシーラーの製造などの製造工程、基板を輸送中および保管中に保護するための金属パッシベーション、品質および効率を高める塗料吹き付けブース処理、および汚染物質排出を制限する空気清浄器に使用することができる。これらの応用例では、信頼できるpHの測定が、そのプロセスの必須の部分になりうる。
【0232】
一態様では、本発明のセンサは、埋込み可能腐食測定器として使用することができ、これは、腐食速度、腐食可能性、導電性および塩化物濃度と、鉄筋強化構造物のpHレベルとに関する情報を提供することができる。このデバイスは、鋼の完全性を監視するのに使用することができる。本発明のデバイスおよびシステムでは、構造用鋼を参照材料の1つとして使用して、構造体内の補強鋼に直接電気的に接続する必要がない。開示された測定器は構造体内で鋼に近接する必要がないので、この測定器は、構造体内の重要な位置に、鋼の配置に関係なく分散させることができる。いくつかの実施形態では、そのシステムおよびデバイスは自己完結型で、必要なすべての検知電極および電子回路を組み込む。このデバイスは、米国特許第6,690,182号に記載されているように配置することができる。
【0233】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、ワイン製造において使用することができる。pHを含む様々な特性の測定が、(1)圧搾の間、(2)ブドウジュース中のほとんどの糖を酵母がエタノール(アルコール)に変換する、1週間から2週間かかることが多い1次発酵の間、(3)2次発酵の間、を含むプロセス全体を通して行われる。
【0234】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、醸造において使用することができる。pHの測定は、醸造の様々な段階、例えばマッシング(mashing)、ロータリング(lautering)、ロータータン(lauter tun)、マッシュフィルタ、煮沸、ワールプール(whirlpool)、麦芽汁冷却、発酵、コンディショニング、フィルタリング、および2次発酵において重要になりうる。較正がほとんど乃至全く必要なく、発酵プロセス中の汚損に耐えるように作製できるので有利である、本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、特に発酵時に重要になりうる。
【0235】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、バイオディーゼル、エタノール、ブタノール、およびガソリン、ディーゼル、ジェット燃料の代替物、ならびに上記のいずれかに使用されるべき添加物の生産を含む、生物燃料の生産において使用することができる。エタノールの生産には、セルロースを糖に変換するプロセスと、糖をエタノールに変換するプロセスの両方が含まれる。エタノールをトウモロコシまたはセルロースの供給材料からどのようにして生産するかについては、いくつかの重要な技術的相違があるが、エタノール生産に至る両経路では通常、グルコースおよび他の糖をエタノールに変換することを含む発酵ステップが必要である。現在、パン酵母であるサッカロミセスセレビシアにより、トウモロコシベースのエタノール工業で使用される1次微生物システムを実現している。本発明の方法は、サッカロミセスセレビシアおよび他の生物による燃料用エタノール生産に関連する。pHの制御は、生物燃料の生産用などの触媒生物燃料生産プロセスにおいて有効でありうる。
【0236】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、油の回収および精製において使用することができる。このセンサは、下げ孔デバイスに組み込んで、下げ孔環境内に存在する検体を測定することができる。このセンサは、油精製など、油を処理する別の態様で使用することもできる。
【0237】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、バイオ医薬、例えばバイオテクノロジーを使用して生産される医薬の生産において使用することができる。それには、例えば、治療または生体内診断の目的に使用されるタンパク質(抗体を含む)、核酸(DNA、RNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド)が含まれる。バイオ医薬は、天然(未加工)生物資源からの直接抽出以外の手段によって生産される。一例として、Genetechによって開発され、Eli Lillyから市販されている組換え型のヒトインスリン(rHI、商品名Humulin)がある。
【0238】
本発明の一態様は、バイオ医薬の生産用の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサであり、このバイオ医薬には、血液因子(例えば因子VIIIおよび因子IX)、血液溶解剤(例えば組織プラスミノーゲン活性化因子)、ホルモン(例えばインスリン、成長ホルモン、ゴナドトロフィン)、造血成長因子(例えばエリスロポエチン、コロニー刺激因子)、インターフェロン(例えばインターフェロン−α、β、δ)、インターロイキンベースの製品(例えばインターロイキン−2)、ワクチン(B型肝炎表面抗原)、モノクローナル抗体(例えばインフリキシマブ、バシリキシマブ、アブシキシマブ、ダクリズマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ、パリビズマブ、トラスツズマブ(ハーセプチン)、およびエタネルセプト)、ならびに腫瘍壊死因子および治療酵素などの他の製品が含まれる。
【0239】
本発明の一態様は、タンパク質を作製する方法であり、このようなタンパク質を生成する発酵反応を実施することを含み、発酵のpHが、水素イオンの存在に感応する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含むpHセンサを用いてpHを測定することによって、また測定されたpHを発酵反応のpHを制御するように用いることによって制御される。いくつかの実施形態ではpHの制御を手動とすることができ、その場合、例えば操作員がpHセンサからのpHを読み取り、この測定されたpHを用いて、pHを調整すべきかどうか、あるいはどれだけ調整すべきかを判断し、別の実施形態では制御を自動にすることができ、その場合には、pH測定値が測定器で読み取られ、この測定器は、受け取った測定値に基づいてpHを調整することができる。
【0240】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、様々な構成のバイオリアクタ内での微生物細胞(例えば組換え型大腸菌)、哺乳動物細胞系および植物細胞の培養から生産されるバイオ医薬で使用することができる。
【0241】
細胞培養では、細胞の健康を維持し、培養の生産量を最大にするために、多くは一連の厳しい条件のもとで細胞を成長させる必要がある。細胞は、細胞インキュベータ内で適切な温度およびガス混合物(例えば37℃、5%CO)で成長させ維持する。培養条件は細胞の種類ごとに広く変化し、特定の細胞の条件の変化により、発現される表現型が異なることになりうる。
【0242】
温度およびガス混合物とは別に、培養システムで最も一般に変えられる要素は成長培地である。成長培地の製法により、pH、グルコース濃度、成長因子、および他の栄養素の存在が変化しうる。pHの変化の影響は、場合により劇的なことがあり、pHを維持することが重要になりうる。本発明のデバイス、システム、および方法では、細胞の成長および健康を維持するために、pHを1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01pH単位以下の範囲内に制御することが可能である。本発明の半導体電極により、汚損が限定され、またいくつかの実施形態では較正の必要なしで、pHの正確な測定が可能になる。
【0243】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、完全に溶液中で成長させる細胞、および基板上で成長させる細胞に対して使用することができる。細胞の中には、血流中に存在する細胞など、生来表面に付着しないで生きるものがある。ほとんどの固体組織由来の細胞など、他のものは表面を必要とする。表面に付着させないで成長させる細胞は、懸濁培養物と呼ばれる。他の付着培養細胞は、組織培養プラスチック上で成長させることができるが、この組織培養プラスチックは、細胞外マトリクス成分(例えばコラーゲンまたはフィブロネクチン)でコーティングして、その付着性を増大させ、成長に必要な他のシグナルを与えることができる。
【0244】
本発明の一態様は、中で起こる反応または発酵が本発明の半導体ベースのボルタンメトリーセンサによって制御されるバイオリアクタまたは発酵槽である。一実施形態では、本発明は、半導体ベースのセンサを備えたバイオリアクタを含み、この半導体センサは、水素イオンなどの検体の存在に感応する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む。図17は、pHを測定するプローブを備え、それによって反応中にリアクタ内のpHを制御する、本発明のバイオリアクタの例を示す。このプローブは、水素イオンに感応する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面がある電極を含む。いくつかの実施形態では、プローブは2つの電極を含み、それぞれが半導体表面を含み、電極の一方でそこに、水素イオンに感応する酸化還元活性部分を固定化してあり、電極のもう一方でそこに、水素イオンに感応しない酸化還元活性部分を結合してある。いくつかの実施形態では、プローブはさらに対電極を含み、いくつかの実施形態では、プローブはさらに基準電極を含む。
【0245】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、培養された細胞をうまく操作するのを支援するために使用することができる。培養では細胞が全体的に分裂し続けるにつれて、細胞が全体的に成長して利用可能な面積または容積を埋める。このため、信頼できるpHの測定により助けることができるいくつかの問題、すなわち、成長培地内の栄養素欠乏、アポトーシス/壊死(死んだ)細胞の蓄積、細胞周期停止を刺激して接触阻止として知られる細胞分裂の停止を引き起こす細胞間接触、乱交雑および望ましくない細胞分化を刺激する細胞間接触などの問題が発生することがある。場合により、これらの問題は、pHを単独で、または他の測定と組み合わせて監視することによって特定することができ、次いで、無菌技術に依拠することが多い組織培養条件を調整することによって、制御または修正することができる。これらの方法は、栄養素を求めて哺乳動物細胞と競合する、かつ/または細胞感染および細胞死を引き起こす細菌または酵母による汚染を回避することを目的とする。本発明のpH測定は、汚染微生物を排除するためのバイオセーフティフードまたは層流キャビネットの中で実施するのに適する。
【0246】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、植物組織培養、細菌および酵母の細胞培養、およびウイルス細胞培養におけるpH検知で使用することができる。
【0247】
本発明の一態様は、植物組織培養においてpHを検知する半導体電極ボルタンメトリーpHセンサである。本発明のpH測定は、植物細胞培養のどのステップでも用いることができる。植物細胞培養は通常、濾過された空気のもとの無菌条件下で実施される。環境からの生きている植物材料は、必然的にその表面(また場合により内部)が微生物で汚染されており、したがって、化学溶液(通常はアルコールおよび塩化第二水銀)中での出発材料(外植片)の表面殺菌は重要な第1のステップである。次に、外植片は通常、固体培地の表面に置かれるが、場合により、特に細胞懸濁培養が望ましいときには、液体培地内に直接入れられる。固体培地および液体培地は一般に、無機塩にいくつかの有機栄養素、ビタミンおよび植物ホルモンを加えたものからなる。固体培地は、通常は精製寒天であるゲル化剤を加えた液体培地から調製される。本発明のpH測定は、液体中、湿った土壌中、または寒天中で行うことができる。培地の組成物で特に植物ホルモンおよび窒素源(硝酸塩対アンモニウム塩またはアミノ酸)とpHは、最初の外植片から成長する組織の形態に重大な影響を及ぼしうる。例えば、過剰なオーキシンは根の増殖をもたらすことが多く、過剰なサイトカイニンでは新芽を生じることがある。
【0248】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、どんな細胞系でも使用することができ、この細胞系には、National Cancer Instituteの癌細胞系、ゼブラフィッシュZF4細胞およびAB9細胞、メイディンダービーイヌ腎臓MDCK上皮細胞系、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO細胞、昆虫細胞系Sf21、MCF−7(乳癌)、MDA−MB−438(乳癌)、U87(神経膠芽腫)、AI 72(神経膠腫)、HeLa(子宮頸癌)、HL60(前骨髄球性白血病)、A549(肺癌)、HEK 293細胞(腎臓−最初のHEK系はHeLaで汚染されている)、骨髄腫からクローン化したSHSY5Yヒト神経芽細胞腫細胞、T細胞白血球患者由来のJurkat細胞系、BCP−1細胞(PEL)、霊長類細胞系、ベロ(1962年開始のアフリカミドリザルChlorocebus腎臓上皮細胞系)、COS−7(アフリカミドリザル腎臓細胞)、ラット腫瘍細胞系、GH3(下垂体腫瘍)、9L(神経膠芽腫)、マウス細胞系、3T3細胞、MC3T3(胎児頭蓋冠)、C3H−10T1/2(胎児間葉)、NIH−3T3(胎児線維芽細胞)、無脊椎動物細胞系、C6/36 Aedes albopictus(ヒトスジシマカ)幼生、植物細胞系、タバコBY−2細胞(細胞懸濁培養として保存、植物細胞のモデル系列)が含まれる。
【0249】
本発明の一態様は、水浄化で使用するための半導体電極ボルタンメトリーpHセンサである。水浄化は、原水源から汚染物質を除去するプロセスであり、その目標は一般に、特定の物質を含むことを制限するように設計された処理プロファイルによって、特定の目的のための水を生成することである。水浄化は、人間の消費または飲料水のために浄化される水だけではない。本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサはまた、医療、薬理学、化学および工業の応用分野の要件に適合するように浄化される水に使用することもできる。本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、それだけには限らないが、紫外光、濾過、軟水化、逆浸透、限外濾過、分子ストリッピング、脱イオン化、および炭素処理を含む水浄化プロセスに使用することができる。水浄化では、粒状砂と、有機物質の懸濁粒子と、ジアルジア、クリプトスポリジウム、細菌、藻類、ウイルス、真菌などの寄生生物と、カルシウム、シリカ、マグネシウムなどのミネラルと、鉛、銅およびクロムなどの有毒金属とを除去することができる。浄化の中には浄化プロセスにおいてそれに含まれるもの、例えばにおい(硫化水素改善)、味(ミネラル抽出)、および外観(鉄封止)について選択的なものもありうる。
【0250】
どんな水源からの水も本発明に適用可能である。地下水(井戸水)は、それが取り出される帯水層によって元来事前に濾過されているので、飲料水を得るのに経済的な選択肢である。帯水層からの水は産出量に限界があり、水を再び満たすには数千年かかる。地表水(河川、湖、小川)はずっと豊富であり、飲料水をつくるのに使用される典型的な原水源であり、水の供給源として様々な汚染物質が存在しないかが注意深く監視される。本発明の方法は、これらの種類の水のpHをボルタンメトリーで測定することを包含し、この測定のpH値は、水の純度を判定するのに使用することができる。
【0251】
本発明の半導体電極ボルタンメトリーpHセンサは、ポンプ揚水および閉込め、選別、保存、事前コンディショニング、事前塩素処理、微細固形物の除去、微小有機体の除去、ならびに溶解したいくつかの無機物質および有機物質の除去を含む水浄化方法で使用することができる。
【0252】
蒸留水は一般に約7の平均pHを有し(アルカリ性でも酸性でもない)、海水は一般に8.3の平均pHを有する(わずかにアルカリ性)。水が酸性である場合(7未満)、石灰またはソーダ灰を加えてpHを高くすることができる。これら2つの添加物のうち石灰が、安価であるためにより一般的であるが、それが水の硬度を増加させることになる。しかし、ソーダ灰による中和では、水のナトリウム含有量が増加する。水をわずかにアルカリ性にすることは、凝集処理および凝固処理が効果的に働くことを確実にするのに役立ち、またパイプ内およびパイプ固定具内の腐食の危険性を最少にするのにも役立つ。pH値は、水が硬質である可能性が高いか軟質である可能性が高いかを判断するのに用いることができる。一般に、pHが低い水(<6.5)は酸性であり、軟性の傾向があり、腐食性である。したがって、水は、鉄、マンガン、銅、鉛および亜鉛などの金属イオンを含むことがある。場合によっては、このために有毒金属のレベルが上昇することになる。このことが金属パイプの早期の破損を引き起こす可能性があるとともに、金気または酸味、洗濯物の汚れ、ならびに流し台および配水管の特徴的な「青緑色」の汚れなどの関連する美的問題を有することもある。より重要なことには、これらのイオンまたは汚染物質に関連する健康危害の起こる可能性がある。低pH水の問題を処理する主要な方法には、中和剤の使用がある。中和剤は、塩基性溶液を水に供給して、水が家庭用給排水設備と反応すること、あるいは電食に関与することを防止する。pH>8.5の水は、その水が硬性であることを表しうる。硬水は、健康危害を招くおそれはないが、美的問題を引き起こすことがある。これらの問題には、水にアルカリ味がつくこと、皿、台所用品および洗濯物容器上に沈着物が形成すること、石鹸および洗剤を泡立てるのが困難なこと、ならびに衣類上に不溶性の沈殿物が形成することが含まれる。
【0253】
本発明の別の態様は、水域のpHなどの検体レベルを例えば水源管理のために検知することである。水域は、例えば湖、海洋、小川、または河川であってよい。遠く離れて使用されるべき、また頻繁な較正の必要なしで、またはどんな較正の必要も全くなしで使用されるべき本発明の能力により、遠く離れて水域内に配置されるべきシステム、デバイス、および電極が、そのような遠隔の水域内の水素イオンなどの検体の情報をもたらすことができる。
【0254】
本発明の一態様は、下水処理に関連するプロセスにおいてpHを測定するための半導体電極ボルタンメトリーpHセンサである。下水処理は上記と同じ各ステップを有することができるが、下水が汚染のレベルの高い水を指すこともある。未処理の流入水(下水)は、トイレ、風呂、シャワー、台所、流し台などからの液体または半固体の廃棄物でありうる。下水管を通して処分される家庭廃棄物が下水を構成しうる。地域によっては、下水はまた、工業および商業からの何らかの液体廃棄物も含む。
【0255】
本発明のpHセンサは、単独使用、または使い捨ての用途に適する。
【0256】
本発明のpHセンサは、小型化に適する。
【実施例】
【0257】
試薬および計測器
ビニルフェロセン、ビニルアントラセン、フッ化水素酸は、Sigma−Aldrich(Sigma−Aldrich社、米国)から購入し、フェロセンカルボキシアルデヒドおよびメシチレンはAlfa Aesar(Alfa Aesar社、米国)から入手し、9−アントラセン−カルボキシアルデヒドはAcros Organics(Acros Organics社、米国)から入手した。すべての化学物質は入手可能な最高グレードで入手し、さらなる精製はしないで使用した。
【0258】
片面研磨、一次平坦、500μm厚で(111)および(100)の方位を有する様々なシリコンウェハは、Virginia Semiconductorから次の仕様で購入した。i)P型(100、10〜90Ω・cmの固有抵抗)、ii)P型(100、0.001〜0.005Ω・cmの固有抵抗)、iii)N型(100、10〜40Ω・cmの固有抵抗)、iv)N型(100、0.02〜0.05Ω・cmの固有抵抗)、v)P型(111、0.001〜0.004Ω・cmの固有抵抗)、およびvi)N型(111、0.001〜0.005Ω・cmの固有抵抗)。
【0259】
電気化学測定値は、Autolabコンピュータ制御のポテンシオスタット(Ecochemie、オランダ、ユトレヒト)を、飽和カロメル基準電極(SCE、Radiometer、デンマーク、コペンハーゲン)、白金補助電極(Bioanalytical Systems社、米国)、およびシリコン(Virginia Semiconductor社、米国)作用電極からなる標準3電極構成で使用して記録した。
【0260】
1〜12の範囲の様々なpH溶液もまた、脱イオン水で次のように調製した。pH1.2は0.10Mの過塩素酸、pH2.2は0.05Mの過塩素酸、pH4.6は0.1Mの酢酸+0.10Mの酢酸ナトリウム、pH5.6は0.5Mの酢酸ナトリウム、pH6.5は0.025MのKPO+0.025MのKHPO、pH7.33は0.05MのKPO、pH9.3は0.10Mのホウ酸ナトリウム、pH13.5は0.1Mの水酸化ナトリウム。これらの溶液はまた、支持電解質として0.10Mの過塩素酸ナトリウムの付加物も含有した。これらの溶液のpHは、SevinMulti(Mettler Toledo)pHメータを使用して測定した。
【実施例1】
【0261】
H終端シリコン表面の調製
シリコンウェハ(方位が(111)または(100)、約1×1cmの切片に切断)を「ピラニア」溶液(高濃度HSO:30%Hが体積比で3:1)を用いて約80℃で30分間洗浄してから、脱イオン水で完全にすすいだ。(場合により、もっと小さい切片、例えば2mm×3.3mmまたは2mm×2.7mmを使用した。)その後、ウェハ切片を約80℃のH:HCl:HO(2:1:8)中で15分間酸化し、約80℃のH:NHOH:HO(2:1:8)中でさらに15分間酸化してから、多量の脱イオン水ですすいだ。次に、洗浄したSi(100)ウェハ切片を2.5%HF溶液で約15分間エッチングした。これらの処理手順により、自然シリコン酸化物層が除去されて、H終端表面が得られる。H終端基板は、脱イオン水で速やかにすすぎ、窒素ガスで乾燥させてから、ただちに誘導体化の実験に使用した。Si(100)(10〜90Ω・cm、P型)は以下の実験に使用した。
【実施例2】
【0262】
フェロセン部分によるH終端シリコン表面の誘導体化
ビニルフェロセン(VFc)またはフェロセンカルボキシアルデヒド(FcA)の約10mmolメシチレン溶液を丸底フラスコに入れ、窒素ガスまたはアルゴンガスで少なくとも30分間泡立たせた。次に、その溶液中にH終端シリコン基板の切片を浸漬し、油浴で約150℃の環流のもとに約12時間VFcまたはFcAと反応させた。反応中、溶液はまた、窒素(またはアルゴン)でパージして溶解した酸素を除去し、基板が酸化されるのを防止した。反応の後、VFcまたはFcAで誘導体化された基板は、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびメタノールですすいでから、窒素ガス流のもとで乾燥させた。フェロセン部分による実施例2で説明したH終端表面の誘導体化は、図5に示されている。
【実施例3】
【0263】
アントラセン部分によるH終端シリコン表面の誘導体化
ビニルアントラセン(VA)またはアントラアルデヒド(AnA)の約10mmolメシチレン溶液を丸底フラスコに入れ、窒素ガスまたはアルゴンガスで少なくとも30分間泡立たせた。次に、その溶液中にH終端シリコン基板の切片を浸漬し、油浴で約150℃の環流のもとに約12時間VAまたはAnAと反応させた。反応中、溶液はまた、窒素(またはアルゴン)でパージして溶解した酸素を除去し、基板が酸化されるのを防止した。反応の後、VAまたはAnAで誘導体化された基板は、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびメタノールですすいでから、窒素ガス流のもとで乾燥させた。アントラセン部分による実施例3で説明したH終端表面の誘導体化は、図6に示されている。
【実施例4】
【0264】
アントラセン部分とフェロセン部分の両方によるH終端シリコン表面の誘導体化
1:1の比のアントラセン(VAまたはAnA)とフェロセン(VFcまたはFcA)の10mmolメシチレン溶液を丸底フラスコに入れ、窒素ガスまたはアルゴンガスで少なくとも30分間泡立たせた。次に、その溶液中にH終端シリコン基板の切片を浸漬し、油浴で150℃の環流のもとに約12時間アントラセンとフェロセンの混合物と反応させた。反応中、溶液はまた、窒素(またはアルゴン)でパージして溶解した酸素を除去し、基板が酸化されるのを防止した。反応の後、誘導体化された基板は、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびメタノールですすいでから、窒素ガス流のもとで乾燥させた。図7は、VFcおよびVAを使用しアントラセンとフェロセンの両方によりシリコン表面が誘導体化される反応を示す。
【実施例5】
【0265】
様々なpH溶液中での誘導体化されたシリコンウェハの電気化学測定
図8に示す特別に設計された電気化学的電池内で、誘導体化されたシリコンウェハに対する矩形波ボルタンメトリー(SWV)を実施した。この電気化学測定は、標準3電極構成を使用して実施した。これらの実験では、誘導体化されたシリコンウェハを作用電極として使用し、またそれを電気化学的電池内で様々なpH溶液(約10mL)にさらした。SWVは、10Hzの周波数、2mVのステップ電位、および25mVの振幅で実施した。
【0266】
アントラセンまたはフェロセンで誘導体化されたシリコン基板の、様々なpH溶液での電流応答をSWVを用いて調査した。SWVは、単一の掃引で明確なボルタンメトリーピークを生成するので、それをシステムの電気化学プローブとして使用した。図9に、誘導体化されたフェロセン電極を使用してpH1.23から9.33まで様々なpH溶液で記録された、対応する矩形波ボルタモグラムが示されている。これらのボルタモグラムは、pH値が増大したときに、フェロセンの各ピークのピーク電位が同じピーク電位にとどまることを示している。これらの結果はフェロセンが、内部基準材料として機能できるpH不感応分子であることを示す。
【0267】
図10(a)に、誘導体化されたアントラセン電極を使用してpH1.23から13.63まで様々なpH溶液で記録された、対応するSWボルタモグラムが示されている。これらのボルタモグラムは、pH値が増大するにつれて、アントラセンに起因するピーク電位がより大きい負の電位に移動することを示している。図10(b)に、様々なpHに対する、対応するピーク電位のグラフが示されている。このグラフでは、pH1からpH14までの、pH単位当たり約55.1mVという対応する傾きを有する線形応答を明らかにしている。アントラセン複合物がpH感応分子として機能できることがこうして実証された。
【0268】
図11(a)に、誘導体化されたフェロセン+アントラセン電極を使用してpH1.23から9.33まで様々なpH溶液で記録された、対応するSWボルタモグラムが示されている。これらのボルタモグラムは、pH値が増加したとき、フェロセンピークが同じピーク電位にとどまるのに対して、アントラセンピークがより大きい負の電位に移動することを示す。図11(b)に、pHに対する2つのピーク電位間の差の、対応するグラフが示されている。このグラフでは、pH1からpH9.33までの、pH単位当たり約45.1mVという対応する傾きを有する線形応答を明らかにしている。
【実施例6】
【0269】
熱安定性
VA部とFcA部の両方により誘導体化されたシリコンについて、SWボルタモグラムをpH6.52の緩衝液中で室温で記録した。次に、この誘導体化されたシリコン試料をConsolidated Stills & Sterilizersで40分間オートクレーブし、このオートクレーブの後にSWボルタモグラムをpH6.52の緩衝液中で記録した。次に、同じ試料を再び同じ条件下で10回オートクレーブし、各オートクレーブの後にSWボルタモグラムをpH6.52の緩衝液中で記録した。
【0270】
pHセンサの熱安定性試験は、FcA+VAで誘導体化されたシリコン試料を使用して実施した。図12に、結果として得られたボルタモグラムが示されている。最初のオートクレーブの後に、フェロセンとアントラセンの両方で電流の減少が観察された。その後、両方のピーク電流は、後続のオートクレーブの各サイクルを通して比較的安定したままであり、実際のところ、各ピークは10サイクルでも安定したままであり、それによって、繰り返される加熱殺菌にセンサが耐えられることが示される。
【実施例7】
【0271】
汚損試験
FcA部分およびAnA部分により誘導体化された4つ別々のシリコンウェハについて、4つのSWボルタモグラムをpH6.52の緩衝液中で室温で記録した。次に、これらの誘導体化された試料をConsolidated Stills & Sterilizersで20分間オートクレーブしてから、5mLの細胞培養発酵培養液に6日間浸漬した。次に、これらの試料を細胞培養液から取り出し、SWボルタモグラムをpH6.52の緩衝液中で再び記録した。SWボルタモグラムはまた、同じシリコンウェハを使用して、細胞培養液中でも実施した。
【0272】
pHセンサの汚損試験は、誘導体化された5つのシリコン試料を使用して実施した。結果として得られたボルタモグラムを図13に示した。すべての場合で、アントラセンのピークは、6日間さらされた後でも安定したままである。フェロセンのピークは、さらされた後で低下するが、依然として確認可能である。これらの調査結果は、pHセンサが、細胞培養環境に6日間さらされた後でも依然として良好に動作できる状態にあることを示し、それによって、誘導体化されたセンサが汚損に耐えられることが示される。コントロールセンサを細胞または分泌タンパク質がない培養液中で6日間インキュベートした。このセンサのボルタモグラムは、実際の細胞発酵環境中でインキュベートされた4つのものと同様のプロフィルを示し(図14)、それによって、信号振幅の損失がどれも細胞破片堆積の作用ではなかったことが示唆される。
【実施例8】
【0273】
アントラセンおよびフェロセンで誘導体化されたSi表面の安定性
Ac+Fcで誘導体化されたシリコン表面の安定性試験は、PGSTAT12 autolabポテンシオスタットを使用し、pH4.65の緩衝液中で、Agに対して−0.8Vから0.8Vまで掃引する連続電気化学測定のもとで22日間実施した。Acのピークは、半値全幅(FWHM)が約60mVの明確なピークとして実験の過程全体を通して存続したが、Fcのピークは時間と共に広くなった。Fcのピークは、広くなったとはいえ依然として確認可能であり、基準として用いることができる。これらの調査結果は、2成分で誘導体化されたシリコン表面が、pH4.65の緩衝液中で22日間の連続動作の後でも依然として良好に動作できる状態にあることを示し、それによって、誘導体化された表面の緩衝液中での長期安定性が示される。
【0274】
一般に、Fcのピークは、高ドープされたシリコン基板上にFc分子が誘導体化された場合に最も明確で安定である。図15(a)は、Si(100、N形、1〜5mΩ・cm)上のFcAの、pH7.33の緩衝液中でのSWボルタンメトリー応答のグラフであり、2500回の連続動作のうちの50番目ごとの走査を示し、図15(b)は、Si(111、N形、0.02〜0.05Ω・cm)上のVFcの、pH7.33の緩衝液中でのボルタンメトリー応答のグラフであり、2500回の連続動作のうちの50番目ごとの走査を示す。場合によっては、VFc部分もFcA部分も、生成されるピーク電流の大きさの点で、P型基板よりもN型基板の上でよりよい反応を示す。Fcで誘導体化されたシリコン表面はすべてpH不感応であった。すなわちFcのピークは、様々なpH環境にさらされても移動しない。
【実施例9】
【0275】
温度変化
ネルンスト式は、酸化還元活性種の温度依存性を評価するための理論上の枠組みを与える。それにより、温度が上昇するにつれて、pHに対するピーク電位のグラフの傾きが大きくなることが予測される。
【0276】
【数1】

式1
【0277】
上式で、Epはピーク電位(V)、
【0278】
【数2】


は標準電極電位(V)、Rは一般気体定数(JK−1mol−1)、Tは絶対温度(K)、Fはファラデー定数(Cmol−1)、mおよびnはそれぞれ、酸化還元反応に関わる陽子および電子の数である。アントラセンの場合では、このような分子の水溶液中での酸化還元過程には2つの電子および2つの陽子が関わり、したがってm=n=2である。
【0279】
pH4.65、7.33、および9.35の3つのpH溶液についてSWボルタモグラムを記録した。図16は、pH7.33の緩衝液中で8〜56℃の温度範囲にわたる、Acで誘導体化されたシリコンの重ね合わせSWボルタモグラムを示す。同様の応答がpH4.65およびpH9.35でも得られた。温度上昇によってより大きい負の値へのピーク電位の移動があり、これは一部には、基準対の変化と、式量電位(
【0280】
【数3】


)の温度依存性と、式1の温度項との組合せに起因する可能性がある。各温度で実験的に得られたpHの関数としてのピーク電位の傾きについての分析が表1に作表されており、これは、ピーク電位に対するpHの傾きのグラフが温度によって変化することを示す。式1に見られるネルンスト式によって予測される理論上の傾きもまた、比較のために表1に列記してある。見ると分かるように、pHに対するピーク電位の傾きの変化はネルンスト的ではなく、実際は温度に相対的に不感応であり、約50℃までの温度範囲にわたって約2mV/pH単位だけ変化する。この依存性は、ガラス電極で観測しうる10mV/pHの変化と比較することができる。温度に伴う変化がこのように小さいことは、それが、Acで誘導体化されたこれらのシリコンウェハを高温でpHセンサとして使用できることを実証するという点だけでなく、それらシリコンウェハが温度変化によって大きく影響を受けないという点でも有益である。
【0281】
表1:ある温度範囲でのAcのピーク電位に対するpHのグラフの、理論上予測される傾きと実験的に得られた傾きとの比較。
【0282】
【表1】

【実施例10】
【0283】
細胞培養液中での能動測定中の安定性
汚損試験を、アントラセンで誘導体化されたシリコン(100)ウェハをインキュベータ内で(制御された37℃の温度および5%のCO含有量のもとで)使用して、μautolabタイプIIIポテンシオスタットに接続された3電極構成を使用する7日間の細胞培養(LP VA)液中での連続電気化学測定により実施した。3電極構成(電気化学的電池内)は、このオートクレーブされる構成に5mLの細胞培養液を加える前に、Consolidated Stills & Sterilizersのオートクレーブで40分間オートクレーブした。次に、培養液を含む電気化学的電池をインキュベートに移し、そこで連続電気化学測定を実施した。
【0284】
ボルタモグラムを7日間にわたり繰返し取得して、連続する10,000のボルタモグラムを得た。図18(a)は、7日間にわたって取得されたボルタモグラムを示す(10,000回の連続動作のうちの250番目ごとの走査)。アントラセンのピークは、Agに対して約−0.71Vのところに観測され、細胞培養液中での7日間のin−situ電気化学測定全体を通して不変のままであった。7日の期間にわたるアントラセンのピーク電位のグラフが図18(b)に示されている。これらの調査結果は、アントラセンで誘導体化されたシリコンが依然として良好に動作できる状態にあることを示すとともに、センサが溶液を7日間能動的に検知している間、ピーク電位は不変のままであることを示す。
【実施例11】
【0285】
2−アリル−1−ヒドロキシアントラキノンによるH終端シリコン表面の誘導体化
50mLのメチレンが入っている丸底フラスコ内に5mg2−アリル−1−ヒドロキシアントラキノンを入れた。窒素を少なくとも30分間泡立たせた。その後、H終端シリコンウェハをフラスコ内に入れ、油浴で150℃の環流のもとに2−アリル−1−ヒドロキシアントラキノンと12時間反応させた。反応中、溶液を窒素ガスでパージして溶解した酸素を除去し、基板が再酸化されるのを防止した。反応の後、2−アリル−1−ヒドロキシアントラキノンで誘導体化されたシリコンウェハをジクロロメタン、ヘキサンで、次にメタノールですすいでから、窒素ガス流のもとで乾燥させた。
【実施例12】
【0286】
半導体酸化物表面を使用するフェロセンによるシリコンウェハの誘導体化
Si(100)ウェハ切片を「ピラニア」溶液(3:1の体積比の高濃度HSO/30%H)を用いて100℃で30分間洗浄してから、脱イオン水で完全にすすいだ。その後、ウェハ切片を2:1:8のHCl/H/HO中で15分間約80℃で酸化し、それに続いて2:1:8のNHO/HH/HO中で15分間約80℃で酸化し、それから多量の脱イオン水ですすいだ。次に、酸化されたシリコンウェハを2%3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)のアセトン溶液に2分間浸漬し、その後アセトンですすいでアミノ終端単分子層を形成した。次に、これをDMSO中で10mg/mLのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および50mg/mLのフェロセンカルボン酸と12時間反応させた。この反応の後で、フェロセンで誘導体化されたシリコンウェハをジクロロメタン、アセトン、およびメタノールですすぎ、それから窒素流のもとで乾燥させた。
【実施例13】
【0287】
半導体酸化物表面を使用するアントラセンによるシリコンウェハの誘導体化
Si(100)ウェハ切片を「ピラニア」溶液(3:1の体積比の高濃度HSO/30%Hが)を用いて100℃で30分間洗浄してから、脱イオン水で完全にすすいだ。その後、ウェハ切片を2:1:8のHCl/H/HO中で15分間約80℃で酸化し、それに続いて2:1:8のNHO/HH/HO中で15分間約80℃で酸化し、それから多量の脱イオン水ですすいだ。次に、酸化されたシリコンウェハを2%3−APTESのアセトン溶液に2分間浸漬し、その後アセトンですすいでアミノ終端単分子層を形成した。次に、これをDMSO中で10mg/mLのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および50mg/mLのアントラセンカルボン酸と12時間反応させた。この反応の後で、アントラセンで誘導体化されたシリコンウェハをジクロロメタン、アセトン、およびメタノールですすぎ、それから窒素流のもとで乾燥させた。
【実施例14】
【0288】
様々なドープSi(100)基板に共有結合されたフェロセン
フェロセンをH終端シリコン基板およびビニルフェロセンを介して以下の4つのシリコン表面に共有結合した。i)Si(100)N型(0.02〜0.05オーム・cm)−高ドープN型、ii)Si(100)P型(0.005〜0.020オーム・cm)−高ドープP型、iii)Si(100)N型(10〜40オーム・cm)−低ドープN型、およびiv)Si(100)P型(10〜90オーム・cm)−高ドープP型。4つすべての基板で、明確なフェロセンのピークが観測された。高ドープ基板では一般に、対応する低ドープ基板よりも大きな電気化学電流を生じた。理論に縛られない限りでは、この差は、高ドープ基板がより多くの電荷キャリヤを含むこと、すなわち伝導性がより大きいことにより説明することができる。同様の観測結果が、フェロセンカルボキシアルデヒドの溶液中で電気化学を実施した場合にも観測された。図19に、4つの種類のドープシリコンについて、(a)ビニルフェロセンにより誘導体化されたシリコン基板、および(b)フェロセンカルボキシルアルデヒドにより誘導体化されたシリコン基板の、pH1.63の溶液中でのピーク電流を示す表がある。
【実施例15】
【0289】
4電極システム
(i)対電極、(ii)基準電極、(iii)ビニルフェロセンにより誘導体化された高ドープN型シリコンウェハ、および(iv)アントラセンカルボキシアルデヒドにより誘導体化された低ドープP型シリコンウェハ、を含む4つの電極を有するシステムを構築した。図20は、ビニルフェロセンにより誘導体化された高ドープN型シリコンウェハと、アントラセンカルボキシアルデヒドにより誘導体化された低ドープP型シリコンウェハとからなる4電極システムを用いて得られたボルタモグラムを示す。これらのボルタモグラムはpH7.03の溶液中で得られ、ピーク電位は、200回の連続走査にわたって安定であった(50番目ごとの走査を示す)。
【0290】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態を図示し説明してきたが、このような実施形態が例としてのみ提示されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく多数の変形、変更、および置換えがここで当業者には思いつくであろう。本明細書に記載した本発明の実施形態の様々な代替形態が、本発明を実施する際に使用できることを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義するものであり、またそれによって、これらの特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内の方法および構成物が包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の存在を検出するセンサであって、酸化還元活性部分を上に固定化した表面を有する半導体電極を含み、前記酸化還元活性部分が、前記検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示すセンサ。
【請求項2】
前記検体が水素イオンであり、前記酸化還元活性部分が水素イオン濃度に感応する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記センサが複数の酸化還元活性部分を含み、前記酸化還元活性部分の少なくとも1つが検体の存在に感応し、少なくとも1つの別の酸化還元活性部分が前記検体の存在に実質的に感応しない、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記検体が水素イオンであり、水素イオンの存在に実質的に感応しない前記部分が、フェロセン、ポリビニルフェロセン、ビオロゲン、ポリビオロゲン、およびポリチオフェンからなる群から選択された置換基を有する、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
水素イオンの存在に実質的に感応しない前記部分が、フェロセン、またはフェロセンの誘導体である、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記検体が水素であり、前記水素イオンの存在に感応する前記酸化還元活性部分が、アントラセン、キノン、アンスロキノン、フェナントロキノン、フェニレンジアミン、カテコール、フェノチアジニウム染料、モノ四級化N−アルキル−4,4’−ビピリジニウム、RuO、およびNi(OH)からなる群から選択された置換基を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
水素イオンの存在に感応する前記酸化還元活性部分が、アントラセンを含む置換基を含む、請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
水素イオンの存在に感応する前記酸化還元活性部分が、アントラキノンまたはフェナントラキノンを含む置換基を含む、請求項6に記載のセンサ。
【請求項9】
検体の存在に感応する前記酸化還元活性部分が前記検体の濃度に感応する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項10】
前記酸化還元活性部分の前記酸化電位および/または還元電位が、10−3Mから10−10Mの範囲の前記検体の濃度に感応する、請求項9に記載のセンサ。
【請求項11】
前記酸化還元活性部分の前記酸化電位および/または還元電位が、10−1Mから10−14Mの範囲の前記検体の濃度に感応する、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記センサが、pH3からpH10の水素イオン濃度を検出する、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記センサが、pH1からpH14の水素イオン濃度を検出する、請求項11に記載のセンサ。
【請求項14】
前記センサが、水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.1pH単位の精度内で測定する、請求項11に記載のセンサ。
【請求項15】
前記センサが、水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.01pH単位の精度内で測定する、請求項11に記載のセンサ。
【請求項16】
前記酸化還元活性部分が前記電極の前記表面に共有結合される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項17】
前記酸化還元活性部分が、前記電極の前記表面に固定化されたポリマーに結合される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項18】
前記半導体電極がドープされる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項19】
前記半導体電極がPドープされる、請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記半導体電極が、ホウ素でドープされたシリコン電極を含む、請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
前記半導体電極がNドープされる、請求項18に記載のセンサ。
【請求項22】
前記半導体電極が、リンでドープされたシリコン電極を含む、請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
前記半導体電極がシリコンのモノリシック片を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項24】
前記半導体電極が複合電極を含み、前記複合電極がマトリクス中に半導体粒子を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項25】
前記半導体電極が、導電基板に結合された複合電極を含む、請求項24に記載のセンサ。
【請求項26】
前記半導体粒子が、前記複合電極の両端間に導電経路が生成されるような量で存在する、請求項25に記載のセンサ。
【請求項27】
前記電極がシリコンを含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項28】
前記電極が、研磨されていないシリコンを含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項29】
前記電極が、研磨されたシリコンを含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項30】
前記半導体電極が0.01〜1000Ω・cmの範囲内の固有抵抗を有する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項31】
前記半導体電極が1〜100Ω・cmの範囲内の固有抵抗を有する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項32】
前記センサが、外部標準液を用いて較正されなくても検体濃度を測定することができる、請求項3に記載のセンサ。
【請求項33】
前記センサが、エンドユーザによる最初の使用の後、較正されなくても前記検体に対する感応性が存続する、請求項32に記載のセンサ。
【請求項34】
前記検体が水素イオンであり、前記センサが、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後でも水素イオンに対する感応性が存続する、請求項32に記載のセンサ。
【請求項35】
前記センサが、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる、請求項34に記載のセンサ。
【請求項36】
前記検体が水素イオンであり、前記センサが、121℃で40分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項37】
前記センサが、121℃で400分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる、請求項36に記載のセンサ。
【請求項38】
前記シリコン基板が複数の区域を含み、少なくとも第1の区域が検体に感応し、第2の区域が検体に感応しない、請求項1に記載のセンサ。
【請求項39】
検体検知システムであって、
(a)酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を有する作用電極であって、前記酸化還元活性部分が、前記検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を有する作用電極と、
(b)対電極および任意選択で基準電極と、
(c)前記作用電極に複数の電位を供給する電源と、
(d)前記作用電極を通る電流を前記複数の電位で測定するデバイスとを含む、システム。
【請求項40】
第2の半導体基板を含む第2の作用電極をさらに含み、前記第2の半導体基板が、前記検体の存在に感応しない酸化電位および/または還元電位を有する第2の酸化還元活性部分を含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
複数の電位を供給する前記電源が、矩形波ボルタンメトリー用の矩形波を加えることができるポテンシオスタットである、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
計算システムをさらに含み、前記計算システムが、電流を測定するデバイスと通信し、複数の電位で測定された電流から還元電位または酸化電位を計算する、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記システムがインラインセンサとして工程で使用される、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
複数の電位で測定された前記電流を用いて検体濃度を決定し、前記決定された検体濃度を用いてプロセスパラメータを制御する、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記センサが水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.1pH単位の精度内で測定する、請求項39に記載のシステム。
【請求項46】
前記センサが水素イオン濃度をプラスまたはマイナス0.01pH単位の精度内で測定する、請求項39に記載のシステム。
【請求項47】
前記センサが、外部標準液を用いて較正されなくても検体濃度を測定することができる、請求項40に記載のシステム。
【請求項48】
前記センサが、エンドユーザによる最初の使用の後、較正されなくても前記検体に対する感応性が存続する、請求項40に記載のシステム。
【請求項49】
前記検体が水素イオンであり、前記センサが、細胞培養液に少なくとも6日間さらした後でも、水素イオンに対する感応性が存続する、請求項40に記載のシステム。
【請求項50】
前記センサが、前記細胞培養液に少なくとも6日間さらした後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記検体が水素イオンであり、前記センサが、121℃で40分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる、請求項40に記載のシステム。
【請求項52】
前記センサが、121℃で400分間のオートクレーブ処理の後で、pHをプラスまたはマイナス0.2単位の精度で測定することができる、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
表面を有する半導体基板であって、前記表面が、その上に固定化された酸化還元活性部分を含み、前記酸化還元活性部分が、検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す、半導体基板。
【請求項54】
前記検体の存在に実質的に感応しない酸化電位および/または還元電位を有する第2の酸化還元活性部分もまた上に固定化される、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項55】
前記検体がイオンである、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項56】
前記検体が水素イオンである、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項57】
前記半導体が無機半導体を含む、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項58】
前記半導体が有機半導体を含む、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項59】
前記無機半導体がシリコンまたはヒ化ガリウムを含む、請求項57に記載の半導体基板。
【請求項60】
前記有機半導体がポリアセチレン、ポリチオフェンまたはポリピロールを含む、請求項58に記載の半導体基板。
【請求項61】
前記半導体がシリコンを含む、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項62】
前記半導体が、研磨されていないシリコンを含む、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項63】
前記半導体が、研磨されたシリコンを含む、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項64】
前記酸化還元活性部分が前記表面に直接結合される、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項65】
前記酸化還元活性部分が前記表面に共有結合される、請求項64に記載の半導体基板。
【請求項66】
前記酸化還元活性部分が、リンカーを介して前記表面に共有結合される、請求項64に記載の半導体基板。
【請求項67】
前記酸化還元活性部分が、前記半導体基板の前記表面に固定化されたポリマーに共有結合される、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項68】
前記酸化還元活性部分が、前記半導体基板の前記表面に共有結合されたポリマーに共有結合される、請求項67に記載の半導体基板。
【請求項69】
前記半導体がドープされる、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項70】
前記半導体がNドープされる、請求項69に記載の半導体基板。
【請求項71】
前記半導体がPドープされる、請求項69に記載の半導体基板。
【請求項72】
基板が結晶シリコンを含み、その表面が大部分で1つの結晶面を示す、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項73】
前記基板が、上に固定化された酸化還元活性部分を各区域が含む複数の区域を有し、前記酸化還元活性部分が、検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す、請求項53に記載の半導体基板。
【請求項74】
第1の区域が、第1の検体に感応する酸化還元部分を含み、第2の区域が、第2の検体に感応する酸化還元部分を含む、請求項73に記載の半導体基板。
【請求項75】
第2の検体の存在に感応する酸化電位および/または還元電位を示す第3の酸化還元活性部分をさらに含む、請求項54に記載の半導体基板。
【請求項76】
前記第2の検体がアンモニア、酸素、または二酸化炭素である、請求項75に記載の半導体基板。
【請求項77】
表面を有する検体感応半導体電極を形成する方法であって、
検体の存在に感応する酸化還元活性部分を前記表面に固定化するステップを含む、方法。
【請求項78】
前記酸化還元活性部分を固定化するステップで前記酸化還元活性部分を前記表面に共有結合する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記酸化還元活性部分が、リンカーを介して前記表面に共有結合される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記酸化還元活性部分を固定化するステップが、ヒドロシリル化、遊離基反応、カルボジイミド結合、ディールス−アルダー反応、マイケル付加、またはクリックケミストリーを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項81】
前記酸化還元活性部分が、前記表面に固定化されたポリマーに共有結合される、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記固定化するステップが、酸化還元活性部分を備えるモノマーまたはオリゴマーを含む重合を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
酸化還元活性部分を備えるモノマーまたはオリゴマーの前記重合が、前記表面に共有結合された官能基との反応を含み、それによって、重合で形成された前記ポリマーが前記表面に共有結合される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記モノマーまたはオリゴマーが前記表面に電子重合される、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記固定化するステップが、前記ポリマーを前記表面にコーティングまたはキャスティングするステップを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記半導体表面が、マトリクス中に半導体粒子を含めた複合電極を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項87】
1つまたは複数の酸化還元活性部分で誘導体化された半導体表面を形成する方法であって、
H終端半導体表面を1つまたは複数の酸化還元活性部分と接触させるステップを含み、少なくとも1つの酸化還元活性部分が検体の存在に感応し、各酸化還元活性部分が、H終端半導体表面と反応して共有結合を形成する官能基を含み、それによって、誘導体化された半導体表面を形成する、方法。
【請求項88】
前記半導体表面がシリコンを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
少なくとも2つの酸化還元活性部分が使用され、前記酸化還元活性部分のうちの1つが前記検体の存在に感応しない、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記H終端半導体表面が、フッ化水素酸で処理することによって形成される、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記官能基がビニル基である、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
前記官能基がアルデヒド基である、請求項87に記載の方法。
【請求項93】
前記官能基がジアゾニウム基である、請求項87に記載の方法。
【請求項94】
検体の濃度を決定する方法であって、
(a)前記検体に接触して電極を配置するステップであって、前記電極が、検体感応酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を有する半導体基板を含み、前記検体感応酸化還元活性部分が、前記検体の濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を示すステップと、
(b)前記電極に複数の電位を印加するステップと、
(c)前記電極を通る電流を前記複数の電位で測定して前記検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位を決定し、それによって前記検体の濃度を決定するステップとを含む、方法。
【請求項95】
前記複数の電位で電流を測定するステップでピーク電流が得られ、それによって、前記ピーク電流を用いて前記検体感応酸化還元活性部分の還元電位および/または酸化電位が決定される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記検体が水素イオンである、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
半導体基板を含む電極に結合された検体不感応酸化還元活性部分をさらに含み、このような酸化還元活性部分が、前記検体に実質的に感応しない還元電位および/または酸化電位を有し、前記検体不感応酸化還元活性部分の酸化電位および/または還元電位を決定するステップと、前記検体感応部分の酸化電位および/または還元電位と前記検体不感応部分の酸化電位および/または還元電位との差から前記検体の濃度を決定するステップとをさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記検体が溶液中に用意される、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
(a)ボルタンメトリーpHセンサを用いて水または廃棄物の処理プロセスの1つのステップでのpH値を測定するステップであって、前記pHセンサが、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分、および水素イオンに実質的に感応しない酸化還元活性部分を含むステップと、
(b)前記pH値を用いて前記処理プロセスを監視または制御するステップとを含む、方法。
【請求項100】
(a)ボルタンメトリーpHセンサを用いて生物製剤プロセスにおける反応混合物のpH値を測定するステップであって、前記pHセンサがpH値を得るために、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分、および水素イオン濃度に実質的に感応しない酸化還元活性部分を含むステップと、
(b)前記pH値を用いて生物製剤プロセスを監視するステップとを含む、方法。
【請求項101】
前記pH値が、前記反応混合物から得られた試料について測定される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
生物製剤プロセスを実施するためのリアクタであって、水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分を有するpHセンサと、水素イオン濃度に実質的に感応しない酸化還元活性部分とを有する、リアクタ。
【請求項103】
前記pHセンサがボルタンメトリーpHセンサである、請求項102に記載のリアクタ。
【請求項104】
前記リアクタが使い捨てバイオリアクタである、請求項102に記載のリアクタ。
【請求項105】
前記リアクタがバイオプロセスフレキシブルコンテナである、請求項104に記載のリアクタ。
【請求項106】
工業プロセスを実施する方法であって、
(a)水素イオン濃度に感応する酸化還元活性部分、および水素イオン濃度に実質的に感応しない酸化還元活性部分を有するボルタンメトリーpHセンサを用いて工業プロセスの1つのステップでのpH値を測定するステップと、
(b)前記pH値を用いて前記工業プロセスを実施するステップとを含む、方法。
【請求項107】
体液のイオン濃度を体内で測定するセンサであって、酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む、体液と接触するように構成された電極を含み、前記酸化還元活性部分が、前記イオンの濃度に感応する酸化電位および/または還元電位を有する、センサ。
【請求項108】
体液のイオン濃度を体内で測定する方法であって、体液と接触する請求項107のセンサを配置するステップと、前記センサを前記体液中に存在する前記イオンの濃度の値が得られるように動作させるステップとを含む、方法。
【請求項109】
反応混合物を収容する貯蔵器およびpHプローブを含むバイオリアクタであって、前記pHプローブが、半導体表面を有する電極を含み、前記半導体表面が、水素イオンの存在に感応する還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分を上に固定化している、バイオリアクタ。
【請求項110】
前記プローブがさらに、水素イオンの存在に感応しない還元電位および/または酸化電位を有する酸化還元活性部分を上に固定化した半導体表面を含む、請求項109に記載のバイオリアクタ。
【請求項111】
水素イオンの存在に感応する還元電位および/または酸化電位を有する前記酸化還元活性部分が上に固定化された前記半導体表面が、水素イオンの存在に感応しない還元電位および/または酸化電位を有する前記酸化還元活性部分が上に固定化された前記半導体表面と同じものである、請求項109に記載のバイオリアクタ。
【請求項112】
前記プローブがさらに対電極を含む、請求項109に記載のバイオリアクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−529462(P2010−529462A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511375(P2010−511375)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/066165
【国際公開番号】WO2008/154409
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509334527)センサー イノベーションズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】